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山下達郎 |
生まれ変わった"西のホーム"で熱唱! 新たな伝説の幕開けを飾る。 |
2013.5.3.FRI “山下達郎 LIVE at フェスティバルホール” フェスティバルホール(大阪府) |
5月3、4日。大阪・フェスティバルホールのリニューアルオープンを記念して開催された山下達郎2デイズ・スペシャル公演。彼にとってフェスティバルホールは東京・中野サンプラザと並ぶ西のホームグラウンド。1980年5月の初公演以来、ツアーのたびにこのステージに立ち伝説を作ってきた。達郎にとって2008年12月以来となる今回のライヴ、新しいフェスティバルホールの完成を祝う彼からのとっておきのプレゼントだった。
「こんばんは、大阪! 新しいフェスティバルホールへようこそ!」 山下達郎のそんな第一声でコンサートは始まった。オープニング・ナンバーは「新・東京ラプソディー」……いや、違う。歌詞を“東京”から“大阪”へと変えて歌われた「新・大阪ラプソディー」だ。“そう来たか”と言わんばかりのざわめきが、次の瞬間、大歓声へと変わる。客席の熱気もすごいが、今夜は達郎も出だしからテンションが高い。旧フェス時代に自らが刻んできた歴史の記憶を、新しく生まれ変わったステージにカラダ全体で伝えようとしているかのようだ。2曲目以降も、「LOVE SPACE」「MUSIC BOOK」と、いずれもライヴでは久々に演奏されるレア曲ばかり。「せっかくフェスのこけら落としなので普段やりたくてもやれなかった曲を」と、2夜限りのスペシャル公演にふさわしい選曲が用意されていた。
今年でリリース30周年を迎えるアルバム『MELODIES』の収録曲「あしおと」もめったにライヴでは披露されなかった楽曲。30年前のスタジオ・ヴァージョンとはまたひと味違う、熟した歌声の艶めかしさにときめいた。普段歌わない曲を歌うのは、入手困難なプラチナ・チケットを手にして集まってくれたファンへの感謝でもあり、新しいフェスで再び一から新たな歴史を作っていくにあたって自らに課した冒険でもある。「練習していても見せ場の高音パートは3日にいっぺんくらいしか出ない。でも、浅田真央さんだっていつも3回転できるわけじゃないから……」と笑わせて歌い始めた「ドリーミング・デイ」もすごかった。天井直撃のホームランのようなハイトーンに割れんばかりの大喝采。フェンダー・ローズ・ピアノの前に座った達郎が弾き語りで歌い始めた「FUTARI」にも不意を突かれた。そういえば、アルバム『FOR YOU』収録のオリジナル・ヴァージョンには、昨年急逝した佐藤博による迫真のピアノ演奏がフィーチャーされていた。熱い追悼の思いもこめられた1曲だったのかもしれない。驚き、そして感激で場内はしんと静まり返る。
初めてフェスのステージに立ったのが1980年5月27日、27歳のときだった。あれから33年。今年で還暦を迎えた。伝統ある旧フェス解体にあたっては率直に苦言も呈してきた。が、それだけに新フェスで始まる新たな歴史への期待と意気込みもひとしお。すでに1月の段階で会場の下見に訪れるなど音響的な問題の試行錯誤も積み重ねてきた。が、何よりも大事なのはこの地にある“気”。新フェスになっても、ステージから眺める客席には昔と変わらぬフェスならではの“気”が感じられるという。だから、大丈夫。これから客席とステージ上で新しいフェスを育てていける。そんな確信が充ち満ちたパフォーマンスが続いた。
この夜、もっとも感動的だったのは「DANCER」が歌われた瞬間だ。彼が24歳の時に発表したこの曲は、高校時代、安保闘争の嵐の中で人生が変わってしまった高校時代の先輩のことを思って書いたものだとか。MCでそう説明されるまで、歌詞に描かれた抽象的な言葉の真意を理解しきれていなかった。今回達郎はあえてそれを説明し、“精一杯の心の吐露”として、おそらく33年ぶりにステージで演奏した。つねづね、音楽家は平和な世の中だからこそやっていけるのだと語っている達郎。最近の内憂外患な世情を嘆き、願わくば平和な世の中であってほしいという彼の思いが、静かに、しかし確かな手応えとともに伝わってきた。この曲と、それに続く「希望という名の光」が時代を超えてつながってゆく美しさが心に染みた。達郎の歌声の“力”。歌詞に込められたメッセージそのものではなく、この歌声をずっといつまでも聞くことができる幸せを味わい続けられる平和な世の中であるために自分は何ができるだろう……。そんな気持ちを、彼の歌声が呼び覚ましてくれた。
ステージ終盤はもちろん大盛り上がり。特に、ほんの数日前、大阪ならこの曲をやらないとダメだろうと……と寝る前にひらめき急遽セットリストに加えられた「BOMBER」から「LET'S DANCE BABY」への流れが圧巻だった。いろいろな歌のフレーズがひと節ずつ歌い込まれることでおなじみの「LET'S DANCE BABY」間奏コーナーは、♪はるばる来たぜ大阪~に始まり、「大阪ストラット」「大阪しぐれ」「大阪で生まれた女」と大阪づくし。同じ年に同じレーベルからソロ・デビューした盟友、故・桑名正博がファニー・カンパニーの一員としてリリースしたデビュー曲「スイートホーム大阪」を歌い、上を指さして「マサやん、聴いとるか!」と叫んだシーンも印象的だった。
アンコールを終え、最後の挨拶をするためにバンドと共に整列した際、最前列の観客が手にしていた横断幕に目にとめた達郎は、それを受け取って客席に掲げてみせた。そこには“最高の音楽ありがとう”の文字。それは観客みんなの気持ちだった。と同時に、達郎から観客への感謝の思いでもあったのだろう。「お互いにカッコよく歳をとっていきましょう」という最後のメッセージが、たまらなくカッコよかった。
text by 能地祐子 photo by 菊地英二
8/27(火) 埼玉・戸田市文化会館
8/30(金) 栃木・宇都宮市文化会館
9/2(月) 宮城・東京エレクトロンホール宮城
9/3(火) 宮城・東京エレクトロンホール宮城
9/6(金) 福島・郡山市民文化センター 大ホール
9/10(火) 広島・上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
9/11(水) 広島・上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
9/14(土) 岡山・倉敷市民会館
9/16(月・祝) 広島・ふくやま芸術文化ホール(福山リーデンローズ)
9/18(水) 島根・島根県民会館
9/22(日) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
9/23(月・祝) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
9/28(土) 大阪・フェスティバルホール
9/29(日) 大阪・フェスティバルホール
10/3(木) 長崎・長崎ブリックホール
10/4(金) 佐賀・佐賀市文化会館
10/7(月) 宮崎・宮崎市民文化ホール
10/8(火) 鹿児島・鹿児島市民文化ホール
10/13(日) 静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
10/14(月・祝) 静岡・アクトシティ浜松 大ホール
10/17(木) 高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール
10/19(土) 愛媛・ひめぎんホール メインホール
10/22(火) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
10/23(水) 埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
10/26(土) 東京・中野サンプラザホール
10/27(日) 東京・中野サンプラザホール
11/1(金) 愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
11/2(土) 愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
11/5(火) 神奈川・神奈川県民ホール
11/6(水) 神奈川・神奈川県民ホール
11/10(日) 長野・まつもと市民芸術館
11/14(木) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
11/15(金) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
11/19(火) 東京・府中の森芸術劇場 どりーむホール
11/22(金) 東京・NHKホール
11/23(土・祝) 東京・NHKホール
11/27(水) 北海道・旭川市民文化会館 大ホール
11/30(土) 北海道・ニトリ文化ホール(さっぽろ芸術文化の館)
12/1(日) 北海道・ニトリ文化ホール(さっぽろ芸術文化の館)
12/5(木) 新潟・新潟県民会館 大ホール
12/6(金) 新潟・長岡市立劇場
12/9(月) 石川・金沢歌劇座
12/10(火) 富山・富山オーバード・ホール
12/14(土) 青森・リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
12/15(日) 青森・リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
12/18(水) 大阪・フェスティバルホール
12/19(木) 大阪・フェスティバルホール
12/23(月・祝) 東京・中野サンプラザホール
12/24(火) 東京・中野サンプラザホール
全曲リマスタリング!1家に1枚のオールタイム・ベスト!山下達郎がシュガー・ベイブとしてレコード・デビューした1975年から最新曲までを網羅した3枚組みの本作は、全レーベルをまたいで選曲された初の完全ベスト盤。
自身による選曲で新たにリマスタリングされた名曲の数々に加え、初回限定盤のボーナスディスクには『硝子の少年』のデモ・ヴォーカルVer.や『希望という名の光』の2012アコースティック Ver.というレア・トラックを収録。
山下達郎とぴあのコラボレーションが実現!山下達郎を大フィーチャーした「ぴあ」の表紙は、おなじみの及川正通による描き下ろし。独占ロング・インタビュー、100問突撃!「100Q-Returns」、"生タツ"ドキュメンタリーと題した613のパフォーマンスの記録をはじめさまざまなデータベースや、竹内まりやのインタビューも掲載。はみだしも復活!
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