SHIMOKITAZAWA SOUND CRUISING出演者インタビュー第4弾は、エレクトロニック・シーンの異端児としてジャンルを飛び越えた活躍を続けるDE DE MOUSEが登場。自身の近況についてはもちろん、一家言あるという最近のシーンについてまで、歯に衣着せぬ発言が炸裂! 音楽ファンはもちろん、全音楽関係者必読のインタビューをどうぞ!
ライブ主体で動いてきたこの1年
──去年の3月でavexを離れて独立されたそうですね。
DE DE MOUSE:やっぱり自分でやるのは大変と言ったら大変なんだけど、気持ち的には清々しいというか。自分で判断してなんでもやれるわけですもんね。たとえば色々な人の顔色を窺うとか、神経をすり減らすような大変さはなくなりました。単純にスケジュールが忙しいとか、体力的なキツさはありますけど、スピード感はすごく増していて。人手やお金の関係でできないこともあるけど、楽しいし、やりがいもありますね。
──去年の6月からは、渋谷WWWで「not」という自主イベントも始められましたよね。
DE DE MOUSE:以前は毎年リキッドルームでイベントをやっていたんですけど、もうちょっと実験的なことをやりたかったんです。WWWは映像設備が充実しているので、4面のスクリーンで映像を使ったりとか。「not」っていう名前も、今までのDE DE MOUSEのイメージに対して、自分はこれだけじゃないんだよっていう意味があって。それまでのDE DE MOUSEを聴きたかった人が来ると、あの曲聴けなかったとかもあったと思うんですけど、1年やってみて、だいたいお客さんが求めてることもわかったんですよね。だからといって、ただお客さんが求めてることだけをやるつもりもなくて。お客さんは大事にしたいと思ってるけど、同じものでもいいと言ってくれる人、最低だと言う人、両方いるわけじゃないですか。どっちの意見も取り入れることはできないけど、ちゃんとその人たちの意見をすくい上げることは大事だと思ってて。そういったなかで、これを次はどうつなげていこうかっていうのを常に考えるようになりましたね。
──新しい体制になって1年が経ちましたけど、この1年はどうでした?
DE DE MOUSE:ライブ主体で動いてきましたけど、すごくマニアックなクラブ系のイベントから、SONARからCOUNTDOWN JAPANみたいな両極端のフェスまで出ていろいろやってきたなかで、改めて感じたのは、やっぱり最終的にお客さんが覚えているものはメロディーなんだなって。昔は単純に盛り上げればいいみたいなところもあったんですけど、今は出るイベントの空気を見て、今日は聴かせる感じにしようとか、今日はオールナイトのイベントだから盛り上げようとか、振れ幅広くライブできてるんじゃないかなと思いますね。
音楽シーンのなかで民族大移動が起きている
──DE DEさんにも出演していただくSHIMOKITAZAWA SOUND CRUISINGですが、お客さんにはどういう楽しみ方をしてもらいたいですか?
DE DE MOUSE:DJで踊るのもいいし、ライブを見るのもいいし、いろんな選択肢があるのはいいですよね。とりあえずなんか見て、お腹が空いたら「餃子の王将」に行ったらいいと思います。がんばってひとつでも多くのアーティストを見るのもいいけど、無理するよりは余裕を持って楽しんだほうがいいと思うんですよ。本当はライブハウスで飲んだり食べたりしたほうがイベント的にはいいんだろうけど、ちょっと敷居が高くなっちゃうと、すぐみんな来なくなっちゃうから。そのくらいの感覚でいいんじゃないですかね。
──「夜遊び」もイベントのテーマのひとつなんですけど、最近は夜遊びされてますか?
DE DE MOUSE:夜遊びは好きですよ。最近は時間がなくて、あんまり行けなくなっちゃったけど。こないだ渋谷のVISIONに行ったら、久しぶりにナンパな遊び箱みたいなのを見た気がして、すっごいいいなと思いました。最近はナンパ目的からただ踊りに来たからとかクラブの空気に浸りたいとか飲み会で盛り上がったからクラブにでもみたいな色々な層が合間見えているクラブが無かったんですよ、そういう人が来なくなっちゃったというか。昔は渋谷で飲んで、「じゃあ、この後、オールナイトのイベント行こうぜ!」ってWOMBとかasiaとかAIRやunitに行く人も多くて、けっこうスーツ姿の人もいたんですよね。でも、最近は確実に減ってて。ネットの影響力もあるのかもしれないけど、若い子たちはクラブに行かなくても楽しんでるんですよ。別に知らない音楽聴いて、酒飲んだりするよりも、深夜に2chで議論交わしてるほうが楽しいみたいな。
──最近はお酒を飲む若者自体減ってるらしいですからね。
DE DE MOUSE:日本ってあまりにも娯楽が多すぎるというか。ちょっと歩けば自販機ある、コンビニある、カラオケボックスある、安い居酒屋も山のようにある、クラブ行く必要なんかないじゃんっていう。そんな状況で、それでも若い子たちが足を運ぶものってなると、アニメだったりに特化したイベントだったり。みんなが知ってるアニメの主題歌を大声で歌って盛り上がって、「あー、楽しかった」って言って帰って行くっていう。音楽に対する熱って別に変わってないんだけど、民族大移動みたいなことが起きてるんですよね。僕は学生の頃にテクノブームが直撃した世代だけど、当時の大人たちからしたら、あんな電気で作ったつまんないリズムだけの曲でひたすら踊ってバカじゃないのって、さんざんけなされてたと思うんですよ。それが、今のアニメだったり、初音ミクだったりになってるだけで。
面白いものをやってやろうっていう気持ちがあるイベントは評価したい
──そんな状況のなか、これからの夜遊びはどうなっていくべきだと思いますか?
DE DE MOUSE:やっぱりどうやって面白いものをやるかだと思うんですよ。結果がどうあったとしても、面白いものをやってやろうっていう気持ちがあるイベントは、僕は評価したいし、うれしいですよね。単純にネームバリューのあるDJだけ並べて、300人入って大成功とかだとダメだと思うんです。そんなんなら学生のやるイベントの方がよほど気合い入っていますよ。スキルや経験のある今までイベントをやってきた人たちが新しい土壌をがんばって作り出そうとか、ちゃんとイベントに向き合おうっていう気持ちがあるものじゃないと。だからSHIMOKITAZAWA SOUND CRUISINGみたいなイベントには期待しています。
──夜遊びのシーンも、考え直さなきゃいけないタイミングに来てるっていうことですね。
DE DE MOUSE:深夜帯にやるイベントで見る名前は全員一緒とか、ここのライブハウスで見るバンドはみんな一緒とか。同じところで、同じようなことがひたすら繰り返されてたら、誰も足なんて運ばないですよ。若い子たちもそんなお金もあるわけでもないから、毎週2500円とか3000円とか払えないだろうし。それプラスお酒代だから。そういったなかで、どうやって楽しみを見つけるか、僕たちが考えていかないといけない。
──ちゃんとお金を払って足を運ぶ価値があるイベントを続けないと、シーンは育たないですもんね。
DE DE MOUSE:こういう時代になってしまった元凶って、僕ら世代にあると僕はすごく感じてて。10年15年前までは、とりあえずシングルを出しても1万枚とか売れた時代だったから、自分たちのことだけ考えてても成立してたんだけど、それじゃ今は成り立たない。後に続く若い世代がちゃんと音楽で生きていくためにはっていうのを、いい年になってきたら考えないと。大人になりきれない大人が増えてきちゃってるのがひとつ問題なのかなって。今までは子供の気持ちでもやれたかもしれないけど、今は子供じゃやれないんですよ。それを教育できる大人もいないし、教育されることから逃げちゃう人があまりに多くて。たった1年どこかのハコにいて辞めましたとか、どっかで1年ブッキングやってましたとか言っても何も変わらないから。でも、これはある程度年齢と経験を得てきた人に対しての言葉なので、若い子たちはその場で楽しいと思うことをどんどん吸収してほしいですね。若い頃のそういう気持ちとか経験ってすごく大事だったりするじゃないですか。初めてクラブに行って、お酒を飲んで、あのとき超楽しかったなとか。もしかしたら次も何かの出会いがあるかもしれないとか、そういう淡い期待が次も足を運ぶきっかけになるから。SHIMOKITAZAWA SOUND CRUISINGが、そういうきっかけになってくれればうれしいですね。
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