磯部正文
1972年生まれ、広島県出身。1994年にHUSKING BEEを結成し、翌年に名門パンクレーベル「Snuffy Smiles」からアナログ盤でデビュー。1997~2000年に行われた「AIR JAM」にはすべて参加(昨年のAIR JAM復活時にも磯部正文BANDで参加)するなど、シーンの第一線で活躍を続け、5枚のアルバムを残して2005年に解散(現在、一時的に再結成中)。その後、MARS EURYTHMICSでの活動を経てソロに。プロデュースにヒダカトオルを迎えたアルバム『SIGN IN TO DISOBEY』のリリース、Matthew Pryor(THE GET UP KIDS)、Christopher Conley(SAVES THE DAY)とのスプリット参加など精力的に活動し、昨年11月にミニアルバム『Deliver』をリリース。現在はHUSKING BEEで活動を共にした平林一哉とのチャリティCD『The Orb of Day』もライブ会場限定で発売中。
The Orb of Day
磯部正文 / 平林一哉
2012.2.11 (土)
磯部正文 弾き歌い「ドンドンとお邪魔します」
横浜THUMBS UP ライブ会場にて販売開始!!
全4曲収録│\1,000 (tax in) HICC-3328
M-1 愛と今日の歌 磯部正文 / 平林一哉
M-2 ランプ 平林一哉
M-3 夢パトロール 磯部正文
M-4 ロバの口真似 磯部正文 / 平林一哉
SHIMOKITAZAWA SOUND CRUISING出演者インタビュー第8弾は、2010年以降ソロとして活動している元HUSKING BEE、MARS EURYTHMICSの磯部正文が登場! ストイックな楽曲制作秘話から、最近はモノマネも披露しているというちょっとビックリな話まで、ライブへの期待がますます高まるインタビューをどうぞ!
バンド時代はケンカチックなフリもした
──ソロになってから約2年経ちましたけど、ここまでを振り返っていかがですか?
磯部:すごい勉強になってますね。バンドを組むとスケジューリングだったり、個々のエゴだったり、バランス感が難しいなと思ったりするんですけど、ソロの場合はそういう感覚的なところがラクチンというか。バンドだと「やるぜ!」とか、「あそこはこうだ!」とか、時には土足で踏み込んだりもしていたので。
──今までのバンド時代は、バンド内で激しいやり取りもあったんですか?
磯部:わざとね。熱を持たせるために。仲良しバンドはなぁ…なんて思ってたので。若い時期でしたし、捨てるものはないんだから、ガツガツやろうぜみたいな。なぁなぁにならないように、時にはケンカチックなフリもしましたし。でも、ソロの時はね、(田渕)ひさ子ちゃんに「おい!」みたいなのはありませんから。
──それは想像できないですね(笑)。
磯部:みんな仲良いというか。こういうやり方もあるんだなって勉強になりました。でも一方で、バンドだから言えることもあるんだなっていうことも確認できましたけどね。どちらの良さにも気付けたので、それはこれからタメになるだろうなって。
──曲の作り方とかも変わってきたりは?
磯部:多少は変化してますね。ビョークの言う通り、年齢相応に音楽を作ったほうがいいだろうなと思っているので。まぁ、自分のやってきた感じから、あんまり逸れないほうがいいなとは思いますけど。いきなり演歌チックになっても、お客さんはポカーンとしちゃうでしょうし、あんまりパンクからは逸れずに。
──最近の磯部さんの作品は、自分らしさみたいなものを意識されてる感じがします。
磯部:やっぱりハスキン(HUSKING BEE)からの蓄積がありますから、どうしてもハスキンっぽさっていうのは出てくるんでしょうけど、それでいいかなと思ったり。まぁ、ポップで強くて、元気になるみたいな。なかには落とし目の曲もありますけど、そういうバランスのほうがいいのかなと。
──それに加えて、言葉がすごく届きやすくなったイメージがあります。
磯部:ほんとごく最近なんですけど、もう70才くらいの友達の親が(最新ミニアルバムの)『Deliver』を「聴きやすい」って言ってくれたらしいんです。老若男女に聴いてもらえる音楽を目指してるので、それはちょっとうれしかったし、なかなかすごいことだなと思って。すごいコアな曲まで理解してもらうのは難しいでしょうけど、「琴鳥のeye」とかはわかるような気がするんですよね。説明が要らないよさというか、“らくらくホン”みたいな曲になったかなって(笑)。
ゲロ吐きそうな日々にも慣れちゃった
──最近は曲のアイディアはどういうところから湧いてくることが多いですか?
磯部:流されやすいんで。去年は震災以降のいろんなことに流されましたね。やっぱり目にしますし、直接話したりもしますし、現地に行くといろいろ思いますし。で、あんまり揺れを感じてない西のほうに行くと、そこでまた違うことを感じますし。そのなかで全体的に伝わる曲を心がけるというか。9.11の時もそうでしたけど、何かが起こった時に、あんまり一点集中したくないクセがあって。地球のこの辺で何かがあって、それを助けるのか、放置するのか、同じ曲を聴いても、聴いた人それぞれのバランスがあるだろうし、そのなかで言葉を選ぶということは常に考えてます。昔からのクセというか。
──バランス感覚が大事というか。
磯部:そうですね。ハスキンのときに「8.6」っていう曲を作ったんですけど、要するに広島に原爆が落ちてこうだったんだってだけじゃない曲にしたいっていう。僕はたまたまそこに生まれて、いろんなこと感じたけど、離れて見えることもあるし。あんなに悲惨だったとか、戦争はよくないっていうだけの曲じゃないようにしたいというか。心ある人は誰もがそう思うだろうけど、心があったからといって、あのことが起こったわけじゃないというか。いろんなことが複雑すぎて。
──そこまで考えていると、詞を作る時は、ものすごい悩むんじゃないですか?
磯部:もうその時期は去りましたね。大変っちゃ大変ですけど、もう使命感というか、楽しくなってきて。たった5文字が1ヵ月くらい出てこなかったりして、そういう時は毎日ゲロ吐きそうなんですけど、最近は辛いのにも慣れちゃった。「もう吐いちゃおうかな?」みたいな。そういう日々のほうがしっくりハマる日が絶対に来るので。
──そこまで磯部さんを駆り立てる原動力って?
磯部:いざ曲ができあがって、じゃあ歌詞書くぞっていう時が最高に楽しいんですよ。曲ができるまでも時間はかかりますけど、最後にメロディーに言葉をはめていく瞬間が、もうエクスタシーすぎて。ヤミツキになっちゃってるんですよね。歌詞書くの辛い人からは想像もつかないと思いますけど。
──それは昔から今までずっと変わってない?
磯部:変わってないですね。白紙の状態がいちばん楽しい。「これから何書くんだろうな?」みたいな時って、もう「やった!」みたいな感じですよ。
最近はライブ中にモノマネも…
──SHIMOKITAZAWA SOUND CRUISINGには弾き語りで出演ということですが、弾き語りをやる時に意識されていることは?
磯部:最近はあんまり緊張しなくなっちゃったので。
──今までは緊張してたんですか?
磯部:めっちゃ緊張してましたよ。今までの人生を総合すると、やっぱすごいなと思うのは、全然緊張してなさそうな感じでふわっとやる人。ガッチガチで不器用なかっこよさもありますけど、僕はサクッとやる人を尊敬してしまうんですよね。それで、最近はモノマネとかも、いろいろ踏まえて。
──えっ、磯部さんがモノマネを?
磯部:そう。僕は、去年とかは、「マジメであります!」みたいなのが少し残ってたんですけど、ヒダカ(トオル)さんと一緒にツアーをまわった時に、ヒダカさんが「磯部さんはけっこうモノマネするんで、期待してて」みたいな。
──無茶ぶりですね(笑)。
磯部:やらざるをえないなって。それで、(声マネしながら)「これがさぁ、すごくさぁ」って哀川翔さんのマネをすると、みんなドッカン笑うわけですよ。他にも(また声マネしながら)「私は~、あの頃~」とか麻生元首相のマネしたり。
──まさか今、目の前で見れるとは思いませんでした(笑)。
磯部:最初はMCだけでやってたんですけど、最近は曲でもやるようになって。例えば、スピッツの「ハチミツ」をちょっとキー変えて歌うのが好きで、すごいマジメに歌わせてもらってたんですけど、長渕剛さんのマネして歌ってみたり。なんか申し訳ないんですけど、みんな無茶苦茶爆笑してくれるんで。まぁ、そういう曲があって、マジメな曲もあってのほうが、ほのぼのするのかなって。そのくらいのノリになってきましたね。前はマジメにずっとやってましたから。
──いつの間にそんなことをされるようになってたんですね。
磯部:ヒダカさんのせいです。いや、ヒダカさんのおかげです(笑)。
──では最後に、イベントに参加するお客さんには、どう楽しんでほしいですか?
磯部:お酒を飲み過ぎないことですかね。その日見たライブのこと覚えてなかったりとか、途中で寝ちゃったりとかするとちょっとね…。だから、程よく飲んで、音楽を楽しんでもらえたら最高なんだけど。くれぐれもケンカだけはしないでね。