見逃せない公演が目白押しですが、30~40代の舞台人の新境地を目撃できそうな3作品をオススメします。
『音のいない世界で』は長塚圭史待望の新作。2008年の『SISTERS』で鮮烈な演技を見せた松たか子を再び主演に迎え、子どもから大人まで楽しめる、新しい劇世界が誕生しそう。
『地獄のオルフェウス』では、『リチャード三世』好演の記憶さめやらぬ岡本健一が演出に回り、テネシー・ウィリアムズの戯曲に挑みます。俳優としての豊富な経験が、どう演出に活かされるのか?
『新春浅草歌舞伎』には市川海老蔵が14年ぶりに出演。第2部で、新之助時代にここで初役を勤めた『勧進帳』の弁慶を披露します。新しい歌舞伎座開場を控えためでたい初春に、でっかい弁慶を見たいものです。
ライター/編集者
市川安紀さん
脂の乗った俳優の二人芝居は今が見ごろ食べごろと思われます。堤真一&千葉哲也『TOPDOG/UNDERDOG』。兄弟の機微をすくい取る小川絵梨子演出に注目です。
ストーカー事件に身も震える昨今ですが、歌舞伎なら「籠釣瓶花街酔醒」。美しさは罪、男心を弄んではいけません。「そんなつもりじゃなかった」は禁句です。尾上菊之助初の花魁八ツ橋、魔性の女に翻弄されたいです。
近年の蜷川幸雄の仕事ぶりは質量共に圧倒的ですが、日本語、アラビア語、ヘブライ語が飛び交うギリシャ悲劇『トロイアの女たち』はイスラエルの俳優たちとの共同作業。予断を許さない情勢だけに公演の実現はとてつもない意義があります。77歳、闘う演出家の本領発揮を見届けたいです。
演劇ライター
上野紀子さん
劇団桟敷童子『泳ぐ機関車』
劇団員総出で観客を迎え入れ、開演前の客席からすでにノスタルジックな劇空間へと誘ってくれる桟敷童子の世界は一度は味わわないとソン。『泥花』『オバケの太陽』に続く“炭坑三部作”の最終章にあたる本作は絶対に見逃せません。
『組曲虐殺』
井上ひさし最後の戯曲。初演と同キャスト、スタッフが集結しての再演が嬉しい。貴重なチャンス!
韓国ミュージカル『ウェルテルの恋』
ゲーテの恋愛小説を原作に作られた韓国創作ミュージカルが日本初上陸。圧巻の歌唱力&表現力を持ちながら容姿端麗!の実力派ミュージカル俳優、主演(Wキャスト)のキム・ダヒョン、チョン・ドンソクの二人にぜひ注目を。
WEBページのデザインを作成する中で、面白そうだなぁと思った演劇公演をご紹介します。
キャラメルボックス『キャロリング』
人気作家・有川浩さんがキャラメルボックスのために書き下ろした小説を舞台化ということで、文章から立ち上がる新たな世界が見られる予感がします。そして和気あいあいとした役者さんたちの雰囲気に、冬の風で冷えてしまった身体と心を暖めてもらいに行ってきます!
『100万回生きたねこ』
小学生の頃読んだあの絵本がミュージカルに。演出・脚本・出演者のラインナップを眺めても、どんな舞台になるのか想像がつかないところが楽しみ!リニューアルした東京芸術劇場は、企画からポスターデザインまで、新しい空気と挑戦を感じます。
『阿修羅のごとく』
日常に潜む繊細な喜びや痛みを描き出す向田邦子の脚本が、どのように舞台化されるのか期待大です。さらに豪華な出演者陣をひとつの舞台上で見られるのもすごい!美しき四姉妹の姿をこの目で拝みたいです。
YCAM 『THE END』
渋谷慶一郎、岡田利規、1973年生まれの2人の才能のコラボレーション。今までにない全く新しいオペラは、人間が登場しない代わりに、ボーカロイド・初音ミクがアリアを歌う。既に、追加公演が決まったよう。
『新日本フィルハーモニー交響楽団 』
ダニエルさんは、今や巨匠の風格を漂わせ世界中を席捲しつつある。新日フィルで、豊かなレパートリーを聴かせてくれるのは、日本のファンには有り難い。ショスタコーヴィチは、ちょっと想像つかないなあ。
『水戸室内管弦楽団』
大野さんが、水戸室内管に初登場とあれば、新型特急E657系スーパーひたちで馳せ参じよう。ブリテン「ノクターン」は痺れそうだが、メインがシューベルトの6番というのも、いかにも、マエストロらしい選曲で納豆喰う(納得)がいきますね。水戸だけに。
12/1(月)~12/2(日)
<山口>
11/28(水) ~ 12/8(土)
<東京・埼玉 >
1/13(日) ・ 1/14(月・祝)
<茨城>
この時期、クラッシック・コンサートはヴェートーベン第九とクリスマスコンサートに染まりますなぁ~。そのあたりの主流にはふれない注目ライブを。
まずはスミ・ジョー。アジア人でソプラノ歌手として成功したたぐいまれな存在。ソプラノでもより高い声域で、かつ切れのありる清んだ歌声。あのキーがよく出るなぁと聞くたびに声域のすごさに感激。そのうえでよくあんなに早いフレーズを切れよく表現できるなぁと仰天します。昨年のリサイタルではシゴトの都合で泣く泣く友人にチケットを手渡した残念な思い出があるので、今年こそはライブで彼女の歌声を聞きたいです!
もう一つは「セビリアの理髪師」。ロッシーニの代表するオペラなのに何故か日本での上演は少ない作品。オペラでは比較的入りやすいストーリー、そしてロッシーニ節が聞いた軽快なメロディ。ライブでは観たことないので、ぜひとも観てみたい。
ライター
野上瑠美子さん
『生きちゃってどうすんだ』
すでにぴあでチケット購入済みです。演劇がこんなに好きになったのは、松尾スズキさんのおかげだと思う。そんな人の50歳節目の一人芝居。観ないわけがない。
『祈りと怪物 ~ウィルヴィルの三姉妹~』KERAバージョン
言わずと知れた演劇界の事件ですね。蜷川さんの方も観たいけど、毒っ気のある芝居が好きなので、やはりKERAさんの演出バージョン押しで。
『音のいない世界で』
長塚圭史さん(作演出も)、近藤良平さん、首藤康之さん、松たか子さん。これだけ好きな人しか出てない公演も珍しい。観る前からいろいろ想像して、ちょっとニヤついてしまいます。
フリーライター
佐藤さくらさん
映画を観て育ち、舞台を観て大人になった私がオススメしたいのは、映画をもとにした舞台作品。とはいえ、映画版で有名な『テイキング・サイド』などは、原作者で脚本も担当したロナルド・ハーウッドが劇作家なので、舞台版のこちらもある意味“本家”。
一方、映画『アパートの鍵貸します』をもとに、あのニール・サイモンが台本を書き下ろしたミュージカル『プロミセス・プロミセス』や、名匠木下恵介の生誕100年を記念して新派が舞台化した『お嬢さん乾杯』なども期待大。よく「(原作を)読んでから(映画を)観るか、観てから読むか」というキャッチコピーがあるが、この冬はぜひ「(映画を)観てから(舞台を)観るか、観てから観るか」を体験してほしい。