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後編

中西:日本代表に話を移したいんですけど、先ほど少しお話がありましたが、どういう戦い方が理想的な姿になるんですか。
向井:まあ、日本代表強化委員長(宿沢広朗)も戦い方を指示して、それで評価させていただくと言われてるんで。とりあえず、基本的には1 本取られたら2 本取り返すという攻撃型のチームを作っていきたいなと。
中西:世界のラグビーを相手になかなか勝てない現状があるわけじゃないですか。当然フィジカルコンタクトがあるスポーツですから、体の大きさが不利に働くことってあるじゃないですか。それを乗り越えるためにはいろいろな課題が出てきましたけど、向井さんはどのように考えていらっしゃいますか。
向井:やはりグラウンドを広く使ったりとか、彼らはコンタクトをしますけどコンタクトの数を少しでも減らして裏に出るというか。
中西:そうでしょうね。
向井:そういうようなことを考えていかないと。昔はそういうことをやれてたし、やってたんですけど、ディフェンスのシステムが非常に画一化されて、1 人のプレーヤーに3 人、4 人という形でくる。止まった状態から走り出すのはたぶん日本人の方が速いと思うんですよね。そのようなところの局面を多く作って、なおかつ当たらないで前に出れるのはキックしかないですので、それをどううまく活用するかだと思うんですね。
中西:キックをどう活用するか。具体的に言うとハイパントだったり。
向井:ハイパントは外国チームには身長の高い選手もかなりいて、厳しい部分もあるかもしれませんけど、裏に転がすとかですね。
中西:サッカーだったらよくあるのが、長いボールを最前線へ蹴ってそのまま。そういうのはダメなんですかね。
向井:それは昨年サラセンズが来たとき、サラセンズのスタンドオフがコーナーに蹴ってトライを奪うというシーンがありましたけど。
中西:国立競技場ですよね。
向井:ああいう形でのトライの仕方もある。
中西:僕はあれを見たときに、本当にこんなことしていいんだ、できるんだって気がしたんですけど。この中にも見に行かれた方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、サッカーのサイドチェンジのようなボールを左サイドから右サイドに蹴って、キャッチしてそのままトライしたんですよね。ああいう精度の高いキックと瞬発力がある選手が、キックしたボールを受けてそのままトライする形なんですかね。
向井:まあ、瞬発力というより、あの場面はキッカーが非常に有能でしたよね。そういうことができるようにするとか。裏に出れるようなグラバーキックとか。そういうのをミックスしていかないと。80分間の中で時間がもたない。
中西:スタンドオフからのキックは非常に重要になってきますね。
向井:スタンドだけじゃないけどね。
中西:全員そうでしょうね。
向井:オプションの数があればあるだけ相手は的を絞りにくいからね。
中西:そうですね。それはサッカーでも一緒ですけど、いろいろなキックの種類があればあるほど、それがパスだったりランだったりキックだったりってことになるんですけど。相手に的を絞らせないという意味でも、全員がキックできたり、全員がタックルできたりっていうのがあれば選択肢は広がりますからね。そういうところは大切だと思いますか。

向井:そういうようなことを頭の中で考えています。
中西:逆に、キックでそういう精度の高いボールを蹴られる人は誰ですか。
向井:キックパスを使うのは淵上(宗志、コカ・コーラウエストジャパン)君。あとはミラー(アンドリュー、神戸製鋼)選手は、ここに蹴ってくれって言えばそこに蹴れるものを持っている。グラバーキックについてはセンターにいる外国人選手(ジョージ・コニア/NEC、ルーペン・パーキンソン/サニックス)とか。あとは栗原選手にしても、左右のキックは使えると思いますよ。
中西:今のを聞いて堀越さん、どうですか。今のシステムというか、戦い方というのは。
堀越:はい。前に向井監督と話をしたときに、当たらないで昔日本がやっていたアウト・イン、アウト・アウト等のプレーを今のディフェンス・システムだとなかなかできなくなっているということで、キックの話は聞いていたので。それは非常に面白い試合であると思うんですよね。ただ、サッカーと同じように、情報がドンドン回って、昔は日本がテストマッチするときも年に1 回あるかないかだったんで、イングランドが来たりして、たまにこっちがいろんなことをすると向こうは対応できなくていいゲームをすることがあったと思うんですね。でも今は情報化社会ですから、それがだんだんできなくなっているんで。そこら辺がどれくらい考えられるかと思うんですけど。そこはおもしろくもあり、どうなるのかなって両方。
中西:箕内さんは今の話を聞いて、当然常に聞いていらっしゃるとは思うんですけど、チームとしてはそれをやっていこうという意思統一は少しずつできているんですか。
箕内:そうですね。実際にそういう選手を選ばれていると思うんですけど、去年からやってきたメンバーもいるし、そこら辺が軸になって、向井さんのおっしゃるラグビーができるんじゃないかと思います。
中西:やってて手応えは少し出てきたんですか。
箕内:でも、まだそこまで強い相手と試合をしていないんで。
中西:そうですよね。本当に強い相手ってわけじゃないですからね。
箕内:今年からやっていくんで、そのなかでどれが通用するのかしないのか見極めて。
中西:それがやっぱりさっき言ったワールドカップまでの5 試合のなかで試さなきゃいけないというか、これはできる、これはできないってことなんですかね。
向井:そうですね。全員をスピード選手で揃えるのもそうでしょうし。いろいろと考えていることはあります。
中西:今回ワールドカップで2 勝は・・・というのがいろいろなところで出てるんですけど、大体どの辺りを狙って。
向井:今日もフィジーの広報の方が来ているんでそれは言わないようにしてますけど。逆に2 勝というよりも、敗者復活戦で上がってくるチームはまだ決まっていませんけど、そこには勝たなきゃいけない。その次にどこだって言われると、今日本が置かれている状況からするとここだろうというのは、ターゲットを設けてですね、今考えていますけど。それよりも、昨年のトークバトルでも言ったんですけど、トライを奪う。攻撃が通用する、つまりトライを奪ったなかで、海外のチームからオファーがくるような選手が出てくれば、逆に日本のラグビーレベルは上がっているんだと思われると思いますんで。そういうところをまず、私たちコーチ陣の指針として。勝つということはまず2 勝というと次に3 勝になって、全勝になってしまいますが。勝ちというのではなくて、前回のときからどういうところがレベルが上がってきて、ここまで日本は来ました。次の2007年に向かっては、こういうところまで持っていければ必ずここまでは行けますよ、というような指針を確実に出せるようなゲームをしていきたい。
中西:ベースを上げて、一歩一歩前進していくことが大事だと。
向井:一気に勝てと言われても、オールブラックス(ニュージーランド代表)に勝てと言われてもなかなか難しいと思うんで。
中西:サッカーも、いきなりワールドカップでブラジルに勝てって言われても勝てないですからね。
向井:やはり段階を踏んで、ここまではやったというものを確実にやっていきたい。
中西:堀越さんは客観的に見ていて、どこに勝てる可能性があると思いますか。
堀越:僕も一応第2 回、第3 回とワールドカップに出ているじゃないですか。で、やっぱりワールドカップでは全部勝つつもりで、選手は。
中西:そうですよね。
堀越:で、負けても「勝てたな」と思うわけですよ。
中西:そういう気持ちがないと次につながりませんからね。
堀越:でも結局何か足りないところがあって、それをアイルランドとかウェールズとかのスコッド(代表選手)は知っているわけだから。それを向井監督が言ったように、どこまでができて、どこまでができないのか。勝つ負けるももちろんですけれども、選手の方にフィードバックされればいいなと思うんですよね。僕たちは勝ったけど負けたけど、じゃあなんで勝ったの負けたのっていうのは当時はなかったように思いますんで。それが出てきてくれればなと思います。そうすると、それが次の4 年後に蓄積されて。勝ったけど負けたけど、こんなことができた、こんなことができなかったってなってくればいいんではないかなと思います。全く話は違うんですけど、今僕はU-19のコーチもやってまして、今年ワールドカップがあるんですけど、U-19の方も毎年世界大会がありまして。去年はイタリアでその前はチリで。毎年U-19の大会をやっているんですけど、そういうところの選手たちからドンドン代表クラスが出たりしている。さっき言われたように、その選手のなかにはフランス側からオファーを受けたりする選手もいるんですよ。そういう選手を発掘しながらで頑張ってますんで。そういう選手たちが向井監督のところに流れていって。
中西:それが下部組織というか、代表の下部組織のところからドンドンドンドン、レベルアップして上に上がってきてほしい。
堀越:そうですね。そういうのがあるんで、ここにもいろいろな記者の方がいると思うんで、そっちの方もぜひたくさん取り上げていただいて。そうすると子供たちは新聞や雑誌に載っているということで、励みになるんですよね。
中西:マスコミに取り上げられることで。
堀越:そういうのをぜひやっていただきたいなと思います。
中西:堀越監督がやっておられるU-19の方から情報をもらえれば、フル代表の方から下ろしていく情報もそうなってきますよね。
向井:それは統一したもので。
中西:ワールドカップの中で出てきた問題、もしくは成功したところをU-19にフィードバックしていったり。今ちょっと話が出ました、海外の件ですけど、これはサッカーの世界でもそうですが、これからは触れずにはいられない部分だと思うんですけど。今、大畑選手とか斉藤(祐也、コロミエ)選手とか海外のチームに行ってますけど、これについてはどうですか、向井さん。
向井:向こうに行って高いレベルでよりやりたいということについては、人間の心理だと思うんですよね。日本でチャンピオンになって、その次はもっと上でやってみたい。そこは彼らが行ってよりレベルアップして、ジャパンが強くなればいいことじゃないかなと思いますけど。
中西:向井監督は、海外に行ってもまれて、いい状態であればいつでも代表に呼ぶと。
向井:ケガをしていると難しいですけど。
中西:それはちょっと厳しいですよね。
向井:ゲームが非常に多いわけですよね。レギュラーになると。ハードなゲームで自分のいいところをより磨いて、セットプレーの精度が高くなるんであれば、呼ぶ可能性は非常に高いんではないかと。
中西:サッカーは、今までだと代表チームの強化のために、代表チームでプレーしほしいというスタイルを取っていたんですね。ヨーロッパから長い時間をかけて帰ってきて、代表チームで試合をしてくれというのが多かったんですけど。今回ジーコ監督になってからは逆に、代表チームのために日本に帰ってきて、コンディションを崩すようであれば帰ってこなくっていい。海外でレギュラーを取って海外でプレーした方がレベルが上がると。それが最終的にはチームの力になるんで、今は代表のこともあるけれども、向こうで1 日も長く、1 試合でも多くプレーしてレギュラーを取るということに重点が置かれるようになってきたんですけど。それについてはどうですかね。
向井:前監督のトルシエ(フィリップ)のように組織的な戦い方をするか、個々のレベルを上げて1 対1 で勝負をできる選手を作るか、というところだと思います。基本的に一番いいのは、箕内選手が朝昇龍関みたいな形でドンドンまっすぐ行って、5 人連れていってもらえれば、あと4 人は余りますよね。そういうようなことができるんだったらそれでいいんですけど。でも1 対1 でまず勝てないと、勝つ可能性がなくなってくるわけですよね。日本も1 対1 で当たった場合には勝てる可能性が高いというような部分をどう多くするかが、勝ちに持っていく一つの方法だと思います。箕内君は当たりが強い。それにパスもできる。逆に言うとコンタクトだけ強い、パスがないとすれば、今言われたように海外に行ってプレ-の幅を広げてほしい。当たってパスができる、当たってターンができる。そういうものをレベルアップして戻ってきてもらえれば、ジャパンはより攻撃力が増すと思いますね。私はそういう考えの方が強いのかな。
中西:堀越さん、U-19でフランスにスカウトされた選手がいるって話をしていましたけど、そういう選手の持っている資質というのは具体的にどんなものなんですかね。
堀越:基本的には大きい、速い、強いというところが一番大きい。
中西:あとはここっていうのはあるんですか。
堀越:僕が知っているのは、同志社大学のフランカーの奥薗(祐基)。その選手がU-19でフランスに行ったときに誘われたと。でも年間300 万円ぐらいだったので断ったと。キャプテンもやったりして、非常に当たりも激しくて、誘われたんじゃないかなと思うんですけど。それは彼の将来性も買ってということですよね。今の状況で本当にオファーされるかどうかっていうのは。僕は海外でプレーをやってないので、いくらテレビで見ても、なんとなくはわかるんですけど。
中西:箕内さんは具体的に海外でやられたことがあるじゃないですか。そのときの自分に抱いた印象というのは、日本とは全く違ったものでしたか。
箕内:日本の中ではすごい大きい方で、当たっても相手が飛んじゃうみたいなところがあるんですけど、海外だと練習の中でもたまに飛ばされたりすることもありましたし。強さっていうのが全然違いますね。
中西:そういうのは、未だかつてない驚きだったんですか。
箕内:すごくいい経験になりました。
中西:それはやっぱり向井さんがさっきおっしゃったように、自信になっている部分って大きいんですか。海外の選手とやってもやれたというか。
箕内:そうですね。すごい自信になりましたね。
中西:逆に、海外でやってみて自分に足りなかったところはどこですか。
箕内:コンタクトの強さが全然足りないなと思いましたね。
中西:まだ足りないんですか。逆に他選手とやってもここは絶対負けないぞというところは。
箕内:どこですかね。
中西:でも、海外で自分自身何もできなかったという感覚はないんでしょ。
箕内:そうですね。最初は何をしてるんだろうっていう感覚はあったんですけど。最後の方は15分の1 になってやってたんで。これはできないなっていうのはなかったですね。
中西:向井さん、それがもうすでに自信になっているってことですよね。
向井:そうですね。15人の中の1 人で通用したということですから。今箕内君が言ったように、当たって飛ばされた感覚を味わったということが非常に大切なんです。それは相手を知ったということ。それを知らないで、自分が一番、絶対間違いないっていうんじゃなくて、当たられてこういうコンタクトがあると知れば、そのレベルに達する姿勢をまた自分で努力して。そういう部分は非常にいい経験だったと思いますね。
中西:帰って来てから意識した部分はどこですか。言い方は悪いですけど、当たりとして物足りない部分はありますよね。
箕内:帰ってきてすぐに社会人だったんで、ちょっと不安な部分もあったんですけど。ある程度社会人のなかでも通用できたし。やっぱり外国人選手は強いものを持っていたし。逆に日本にいてもいい経験ができるかなと、僕はそう思いました。
中西:それはやっぱり日本での良さというか。
向井:そうですね。Jリーグも同じように、外国人選手が入ってきてレベルを上げてもらって、外国人コーチが来てシステムを作ってというような形で。ラグビーも非常に似ていて、外国人プレーヤーが入ってきて、なおかつそのなかにコーチが入ってきて、システムを作って練習にフィットネスなりを入れて。練習というとトータルなんだけれども、コンタクトをするための体作りとか、走るためのフィットネスは当たってとか、ただ走るだけとかそういうのもありましたけど、いろいろなものがありまして。社会人もしっかりと世界に近づいてきてると思いますよ。
中西:外国人選手がリーグに来て、一番この人は見習ってほしい人って誰ですか。こういう選手がいれば、日本代表のレベルが上がるというような。
堀越:僕はスクラムハーフなので、バショップ(グレアム、サニックス)選手みたいなスクラムハーフだと非常にいいと思うんですよね。ポイントに行くのもすごく速いし、パスも本当に上半身で投げられるし。キックも、狙ったところに寸分の狂いもなく上げて落とす。その辺のスキルがあって、それからスクラムハーフはディフェンスが求められていまして、そのディフェンスも非常に強いと。そういうスクラムハーフが出てくれば非常に。ラグビーは速くなっていますから、そういう意味ではジャパンが一段上がる可能性が。
中西:日本代表スコッドが決まりましたが、向井さん、攻撃において軸になるのは誰になるんですかね。
向井:6 、7 、8 、と11、14、15です。
中西:キャプテンである箕内選手には当然期待をしていると思いますけど、その他の期待している選手は誰ですか。
向井:1 つ取られたら2 つ3 つ取り返す攻撃力がある選手と、あとやはりセットプレー、スクラムとかラインアウトとかのマイボールを確実にとれる選手。プロップ、フッカーのところには大変期待をしております。新しく入った立川(大介、関東学院大学)君、松尾(大樹、東芝府中)君、山本(貢、関東学院大学)君については、ラインアウトで長いスローイングが可能なんで、そういうような部分のオプションも考えながらやっていくことができるのかな。
中西:そういう使い方も。
向井:ボールが来ないと箕内選手の仕事、大畑、栗原、小野澤選手といったスピードランナーにボールを渡すことができませんので、まずはボールを確保する。
中西:堀越さんはこのメンバーを見てどうですか。
堀越:そうですね。
向井:自分を入れてくれって。
堀越:僕ももうちょっとやっていたかった。僕が神戸製鋼を辞めてしばらくは、僕みたいなハーフが必要なかったんですよ。そしてまた、パスをさばけるハーフが、特に日本の中では必要になってきているんで、もう一回やりたいなって思っているんですよ。そうですね。監督が考えた選手が選ばれてるなと。
中西:一貫性は感じられますよね。
堀越:はい。特に最後は足の速い選手。
中西:切れ味の鋭い選手ばかりですよね。
堀越:そうですね。松田(努、東芝府中)君が入っているのがうれしいんですけど。入ったときからずっと一緒にやってきて、彼が伸びるのを感じながらやっていましたから。
中西:僕も33歳で同年代なんで、すごくイメージが強いんですけど。松田選手を入れた理由というのは、向井監督。
向井:後ろのディフェンス力というか、あとはパスを2 対1 でも放れるというか。そういうところは彼の老練さというか。フィットネスについても、小野澤君に抜かれないで止めているのは彼しかいない。1 対1 で抜かれないっていうのは。小野澤君っていうのはタックルのしどころがないんですけど、抜かれてもまた後ろから追いかけていって止めているっていうのを買いました。
中西:あとは外国人選手がだいぶ入ってきていますけど、彼らはこの中で非常に力になる選手ですよね。
向井:そうですね。外国人選手については、日本人との組み合わせに応じて選びました。ロックの久保(晃一、ヤマハ発動機)君なんて、昨年から非常に伸びているんですけど、彼自身はフランカー、7 番か8 番をやるプレイヤ-なんですけど、なぜあそこに選んだかというと、やはり機動力がほしいと。機動力があるともう一人のロックについてはガチッとした重いのが必要かなという形で、ルアタンギ(バツベイ、東芝府中)とパーカー(アダム、東芝府中)。ルアタンギ選手は重過ぎてなかなか走れませんので、私のところに来るまでは10キロ痩せてきなさいと指令を出しました。
中西:ミラー選手がケガをしたそうで心配なんですけど、大丈夫なんですか。
向井:そうですね。そこはケガもあるんですけど、彼のラインを引っ張る力。もう一つ栗原選手は非常にプレースキックがいいですが、ミラー選手も非常にいい。これは確実に2 枚ないし3 枚揃えていないと、一人いなくなったとき誰が蹴るんだという状況に陥らないように。 
中西:貴重な得点源ですからね。
向井:そうですね。敵陣に入って得点が取れる能力、なおかつ淵上君についてもプレースキックがいいですから。ミラー選手にしても淵上選手にして、もう一つドロップゴールという飛び道具も持っていますから。その辺の得点源ということで彼らを選んだ。
中西:箕内さん、このメンバーを率いるわけですけど、十二分にワールドカップを戦い抜けるという感じですかね。
箕内:そうですね。ケガ人とか出てメンバーが変わる可能性はありますけど。結果を出すのにふさわしい選手が選ばれたと思います。
中西:あとはさっきも言いましたけど、ケガですよね。3 月12日に一度集まるわけですけど、箕内選手のようにシーズンが終わってすぐに集まらないといけない選手もいれば、少し休む選手も当然いるわけですよね。コンディションを合わせるのは難しいっていうのはありますよね。
向井:昨年はスケジュールに休みを入れないで書いてたら、選手たちから「休みはないんですか」と言われまして。今シーズンはスケジュール表に「rest」って休みも入っています。その辺は見ていただければ選手も大丈夫だと思います。
中西:箕内選手もうれしそうな顔をしたんで。でもそれは、休暇も仕事のうちという。
向井:そうですね、回復も。だけど一つだけここで言いたいのは、ワールドカップ出場は5 回目ですけれども、今まで通り同じことをやってれば、たぶん今までと同じだと思うんですよね。何かやり切って、やり切ったなかで、選手たちが「これは必ず負けないよ」というものを何かを作って勝負に行きたいなって思います。
中西:3 月12日からの代表に期待しつつ、質問コーナーにしたいと思います。質問がある方、手を挙げてください。
客:向井さんに質問です。先日スコッドが発表されたんですけど、去年は確かコニア選手が代表に選ばれたのに、辞退するということがあったんですけど、今年は大丈夫なんでしょうか。
向井:今年は大丈夫です。間違いないです。
客:選ばれている人は全員?
向井:そうですね。今、契約の問題で各企業と調整中なんですが、ダメだというところはないんで大丈夫だと思います。
客:以前のトークバトルで、堀越さんが前回のワールドカップで元木(由記雄、神戸製鋼)さんあたりから聞いた話として、ディフェンスの際に最初はドリフトディフェンスでしたが、アウトサイドブレイクをされて大変だったと。で、マークマークに変えた。それでもダメで結局詰めていったらかく乱して、それなりにいいディフェンスをしたとおっしゃってたんですけど。そういうことを踏まえて、今回のワールドカップのディフェンスに関する勝算というのはどのくらい考えていらっしゃるんですか。
向井:ディフェンスについては、抜かれている局面はどこかって言うと、よくよく見てみると、1 対1 でタックルを外される部分が非常に多いんですよね、システムと言うよりも。1 対1 で抜かれちゃって、次のカバーのプレーヤーがタックルに行ったが勢いがついているのでなかなかタックルできないで、それでまた次のプレーヤーというような形で。つまり3 対1 。そういうようなことでスペースに走り込まれてトライを奪われるというところなんで、やはり基本的に1 対1 のタックル力というのを上げていこうと思っています。エリアによっては押し上げたような速い詰めも必要でしょうけれども、1 対1 で、マークは誰でと。ただつけていってパスされたでは、スペースに走り込まれますんで。そういうところの使い分けは、今回選んだプレーヤーのディフェンス能力はかなり高いと思っていますし、それに詰められるスピードっていうのもある。待っているディフェンスでも今までよりは前に出られるんじゃないかと思っていますんで。その辺は最後の仕留めるところの問題をもう少し改善していきたいと思っています。
中西:大丈夫でしょうか。続いて質問のある方。
客:向井監督と堀越監督に質問なんですが、例えば若年層の、たぶん大学だと思うんですけど、非常に大学リーグが盛り上がっているのですが、いろいろ弊害があると思うんですね。先ほどおっしゃられました明治と早稲田の指導の違いで、統一した指導法方が取れないとか。例えば向井監督や堀越監督が大学ラグビーに求めることはどのようなことがあるか、教えてください。
向井:大学は昔から伝統の戦いというような形で盛り上がっていたところがあるんですね。これは日本の文化なんで仕方ないと思うんですよ。で、基本的に代表が強くなって、代表が一番人気がなければいけないんですけど。大学に求めると言えば、基本的なベースの部分、パスであるとかタックルであるとか、まあセンタープレーヤーであったら、右でも左でも蹴れるとか、そういうベースな部分を確実に教育というか、自分の中に持っていてほしい。次に上の段階に来たときに、攻撃のオプションが増えることになるんで。早稲田の山下(大悟)君、大田尾(竜彦)君であれば、長いボールを放れるので、攻撃のオプションを一つ増やせるということになりますから。
堀越:僕も基本的には同じで。僕のチームも基本的なことからまず入っていって。もちろんラグビーはいろんな形がありますから、ラックにするのかモールにするのか、いろいろなプレ-ができるように大学の方にはしてもらいたいですし、大学は毎年選手が変わりますんで、無理をさせることが多々あるんで、無理をさせ過ぎないで、丈夫な身体を作りながらいい選手を輩出してくれればなと思います。
中西:ラスト1問いきましょう。
客:向井監督と箕内選手に質問させていただきたいんですが、ワールドカップは1週間おきに試合があると思うんですけど、ファンの方はみんなお金を貯めていると思うんですけど、2 試合を見るのは結構大変かなと思います。
中西:休みも取れないですし、時間もかかりますし、お金もかかりますしね。
客:ファンの人に集まってほしい試合とか、盛り上がってほしい試合とかありましたら。
中西:それは全部だと思いますよ。特にってことですか。
客:気持ち的に。
中西:どうですかね。ものすごく答えにくいとは思いますけど。でも、初戦じゃないですか。初戦はまず大事ですよね。
向井:初戦は大事ですよ。それと基本的に敗者復活戦で上がってきてチームは叩きたいと思っていますんで。
中西:箕内さんは。
箕内:全試合大事になってくると思うんで、もっとお金を貯められて。
中西:確かに全部見てほしいですからね。でも1 か月も仕事を休んだらクビになっちゃいますからね。
箕内:そのくらい頑張るんで、お願いします。
中西:会社は辞めない方がいいですよ。でも、初戦は僕は大事だと思いますよ。初戦で勢いに乗れるといいと思うんで。ものすごい難しい質問でしたね。じゃあ、質問コーナーを終わりにして、最後に今日のゲストの皆さんに一言いただいて、締めていきたいなと思います。まずは堀越監督お願いします。
堀越:今日はお忙しいなかというか、まず「ぴあ」さん、僕を呼んでくれてありがとうございます。今回も心配したんですけどこのお2 人がいるんで安心だと思って、お客さんがたくさん来てくれるかなって心配しながら足を運びました。でも、いい話というか、いい形でできたんじゃないかなって思います。ラグビーはまだまだこれから発展していくと思いますので、ここに来てくださった皆さんの・・・僕えらいことになってますね。
中西:そんなことないですよ。
堀越:えー、皆さんの応援がないとサッカー同様盛り上がらないと思いますんで、今年はワールドカップがありますが、ワールドカップだけでなく先ほども言いましたU-19やユースの方にも目を向けていただいて、応援していただきたいと思います。本日はありがとうございました。
会場:拍手
中西:続いて、日本代表キャプテン箕内選手。
箕内:率直に言って、試合より緊張しました。
中西:そうですよね。普通、監督が隣にいたらあまり話せませんからね。
箕内:話すのは得意じゃないんで。とても有意義な時間が過ごせたと思います。今年はトップリーグとワールドカップ。まあ日本のラグビーを盛り上げていくよう頑張りますんで、応援よろしくお願いします。
会場:拍手
中西:そして、日本代表、向井監督。
向井:本日はお忙しいなか、集まっていただいてありがとうございます。今、箕内君はトップリーグとワールドカップと言いましたけど、ワールドカップとトップリーグですから。まずワールドカップで結果を出せるように、彼とも、スタッフとも、プレーヤーとも頑張っていきたいと思います。ラグビーに足を運んでいただければ、一つ一つのプレーに感動させられるようなチームを作りたいと思いますんで。タックルやスクラムをする選手の顔であったり、そういうところを見ていただくためには、足を運んでいただけないとなかなか感じられないと思いますんで。ぜひグランドに足を運んでいただいて、「下手くそ」の一言でもいいですから、そういうことを言っていただければ励みになるんで。応援よろしくお願いします。本日はありがとうございました。
会場:拍手
中西:本当に、今年のワールドカップにかける意気込み、これからラグビー界をどうしていこうかという強い気持ちを感じられる会でしたよね。今日は本当にお三方、お忙しいところ来ていただきましてありがとうございました。本当に有意義な時間だと思いますし、これからもぜひともこういう会があったときには、もう二度と出たくないというコメントは聞きたくないので、できればまた来ていただけると幸いです。僕は毎回サッカーの方をやらせていただいていますけど、他のスポーツの方の話を聞くと、またすごく考えさせられる部分がたくさんあるんですよね。サッカー界もこうしなきゃいけないんじゃないかって。本当に勉強になることがありましたし、ラグビーがもっと盛り上がってほしいですからね。もっと頻繁にやってもらいたいですね。皆さん、また来てくれますよね。またこういう機会があったら足を運んでもらいたいと思います。またワールドカップの前でもいいですし、終わった後なんかにやってほしいと思いますね。これはもう「ぴあ」さんにお願いするしかないんで。今日は僕も至らない点がたくさんあったと思うんですが、皆さんのおかげですごく楽しくできました。ありがとうございました。

構成・文:CREW
撮影:源賀津己