宮澤:ダメだなぁ。 井原:もうねぇ 中西:じゃあ、自分が全盛期だった頃を思い浮かべてくださいよ。 宮澤:僕がやりたかったのは、ラインを上げたり下げたりみたいな感じだったから、トルシエ(フィリップ、前日本代表監督)監督みたいな3バックはイヤだったけどな。足が遅いのがバレるから。でも、3バックではやりたかった。ただ4バックの一角となると、身長もないしファウルは嫌いだし。 会場:笑い 宮澤:でも、フィードするのは好きだったから。 中西:3バックの左とかいいじゃないですか。左利ですだし。 宮澤:まあな。でも、俺みたいな口だけの人間はダメよ。態度でガーンと行かなきゃ。 井原:でも、口も結構必要だから。 中西:大事ですよね。 宮澤:井原さんにそう言ってもらえるとうれしいなあ。 中西:そうですねぇ。 宮澤:本当にそうだよね。コミュニケーションだから。 中西:サッカーは、というよりディフェンスは口ですよ。 宮澤:口、口って言うと悪い人に見えるけど、コミュニケーションって言うと大逆転だもんな。 中西:前の選手をどう動かすかとかね。僕は自分のところにボールを来ないように来ないようにさせてましたからね。 井原:それでいいんだもんね。 宮澤:それ基本だよね。他の選手を働かせて。 宮澤:そういうことは、井原大先生もしたでしょ。 井原:当たり前ですよ。 宮澤:井原さんは中盤に指示を出してました? 井原:出してた方だと思いますけどね。 宮澤:指示? それとも「どうなってるんだよ!」って怒って。 中西:そんなことは言わないと思いますよ。 宮澤:でも、ディフェンスって押されまくったとき、キレそうになることあるよね。 井原:たまにはありますけどね。両方じゃないのかな。 宮澤:でも、周りに言ってくれる人がいたもんな。 中西:アハハハ。 宮澤:秋田ってやっぱり言う? 井原:言いますよ。 宮澤:自分のところの状況じゃなくて、中盤に対しても言うよな。 井原:言います。 宮澤:ほらな、言う人がいるんだよ。井原さんが益々かっこよく見えてくるな。 井原:みんな言いますって! 中西:井原さんって、ギリギリでやっている印象がないですよね。僕なんかは遅いからスライディングでしか間に合わない。井原さんはきっちり体を入れてボールを取って、自分のボールにしてから前に出す。 宮澤:デカいゲームとかに強いんだよな。'98年のワールドカップはうまく行ったな。最高の調子だったろ。 井原:いやぁ、わからないですよ。 宮澤:わかってくれよ。 井原:ワールドカップのときはケガしてたからね。 宮澤:別に今日は褒めようと思って来てるわけじゃないよ。ケガしてたけど、間合いもピッタリで。間合いがうまくいってないときって下がるんだけど、うまくいってるときって、ほら。ワールドカップのときもさ、オルテガ(アリエル、トルコ・フェネルバチェ)の前にググッと入って。オルテガが下手くそに見えたもんな。本当よ、あのときうまくいってただろ。 井原:そういうときもありましたね。 宮澤:あったね。俺は解説のときそうコメントしてたよ。間合いが読めてて、ゆっくり行ける。慌てないでフッと前に入るから相手がぶつかってくるみたいな。1対1の場合、ディフェンスってそういうことがあるよね。 中西:次の「サイドバックの三都主を見てみたい?」は、僕と井原さんは「no」で、宮澤さんは「yes」。 宮澤:長い距離のオーバーラップとか、人に使われる動きでスピードに乗ったときに上がっていくとか、そういう状況を一回作ってみたい。オランダなんかは中盤の左サイドは必ずサイドバックでやらせてみたりするじゃん。 中西:コクー(フィリップ、FCバルセロナ)とかね。 宮澤:そういう試しも、彼のプレイの幅を広げるんじゃないかなと思うし。うまくいけばね、左サイドの切り札になれるサイドバックは欲しいから。試すことはいいと思うけど。まあ、ジーコは3・5・2のウイングバックは後ろには使わないかもしれないけど。 井原:3バックのサイドならいいけど、4バックのサイドは難しいかな思ったんですよね。バックラインに入らないといけないし、逆サイドをカバーしないといけない。そのときにストッパー的な仕事もできないといけないから、難しいのかなって。 中西:4バックってそれが難しいですよね、サイドの絞りが。 宮澤:もちろん、中のカバーはあるし。 井原:体力はメチャクチャあるから。 中西:アップダウンはかなりできますよね。 宮澤:左サイドでいいクロス上げるでしょ、3バックのときの中田浩二みたいに構えて逆サイドに蹴れるし、いいんじゃないかなって思ったんだけど・・・企画倒れか! 会場:笑い 宮澤:企画倒れ! そんなことない? 中西:そんなことないですよ。 宮澤:だって、みんな話に乗ってきてくれねぇじゃん。ひとりっきりだよ! 中西:僕と井原さんは現実的なんですよ(笑)。次の「日本代表には“黄金の中盤”が欠かせない」と「“黄金の中盤”よりもいい組み合わせがある?」の2つをまとめて。これはどうですか。“黄金の中盤”と言われているのは、中村俊輔(イタリア・レッジーナ)選手と中田英寿(イタリア・パルマ)選手、稲本潤一(イングランド・フルハム)選手、小野伸二(オランダ・フェイエノールト)選手ですけど。欠かせないかって言われたら、欠かせないに決まってますよね。 井原:欠かせないとは思うけど、全員先発かどうかってことじゃないのかな。 中西:絶対ではないですよね。 井原:絶対じゃないでしょ。 宮澤:いろいろ組み合わせはあるよな。 中西:ミシェルさんはこんな組み合わせはどう? っていうのはありますか。 宮澤:うーん。やっぱり2ボランチで前に2人とか、ボックス型がいいのかひし形がいいのかってところで、組み合わせはちょっと変わってくるんじゃねえかな。去年のワールドカップでは俊輔と中田を一緒に使えなかった。ジーコは使えるって言ったけど、僕の中でも正直使うのは難しいかなって思ってた。だから調子のいい方を使えばいいんじゃないかって感じてた。もちろん俊輔は代表に入ってて欲しかったけど、一緒に使わなくてもいいんじゃないのかなって思うのね・・・あ、これもダメ? 会場:笑い 中西:ダメじゃないですよ。わからないですもん、まだ。あまりやってないし。 井原:いろんな組み合わせをこれからテストすると思うし、中田だったら1トップ気味にしてトップ下に置けばいいかも。2トップの一角にすれば、他の選手を中盤に持ってくることもできるし。そのへんはわからないですよね。じゃあ、俊輔はどこがいいのかというと、クラブチームではボランチ的なところをやっているじゃないですか。あそこもできると思うんです。でもディフェンスに気を取られ過ぎると、あいつの長所が消えちゃうし、伸二の方がディフェンスもオフェンスもやれる能力は高いと思う。 宮澤:伸二のポジションはどこと見る? ゲームを作って欲しいのか、フェイエノールトのようにボランチでいいのか。それともやっぱりトップ下なのか。 井原:位置的にはボランチが一番生きると思います、僕は。 宮澤:なるほどね。守備もいい? 井原:守備もできるし。組み合わせによりますよね、もうひとりのボランチが誰か。 宮澤:じゃあ、伸二は攻撃的なボランチだ。そこでゲームを組み立てちゃうみたいな。 井原:はい。 宮澤:能力はすごいもんね。やっぱり一緒にやっててすごい? あ、一緒にやってなかったか? 井原:やってましたよ。 中西:見ていて思いますけど、他の選手と比べてあの4人はちょっと違うというのは事実ですよね。ものすごい自信がある。ボールを回していても余裕があるじゃないですか。ギリギリまでためてて、来たらいなすかポンと前にボールを出して。あれだけ厳しいところで毎日やってるから相当違いますよね。それがチームとして生きるかどうか。 宮澤:そうだよな。一緒に使うとなると考えるよな。ディフェンスもバランスを考えなきゃいけないし。 中西:そう考えると、中田選手は最終的にはボランチがいいかもしれないですね。 宮澤:じゃあ中田はどうして必ずチームに入るの? 何がすごいんだろうね。 中西:僕は、ボールを止めて蹴る技術だと思います。 宮澤:こういうの意外でしょ。キラーパスだよ、とか思うでしょ。でもスルーパスは俊輔の方がすばらしい。何をやらかすのかわからないのは俊輔だけど、中田はメチャクチャゲームに強いよな。 中西:自分自身がプレイをしていながら、中盤の選手としては珍しくフィールドを俯瞰できる選手。上から見て、チーム戦術としてここはこうしようとか、プレスで行くときもここはやめようとか、試合の流れを読む力がすごい。 宮澤:試合に強いよなぁ。 中西:だから後ろにいた方が、ゲームコントロールができていいのかなって気がします。リーダーとしてもすごい。 井原:そうですよね。リーダーシップがあるし、ああしろ、こういうパスを出せとか、自分の考えをチームのみんなに言える。そういう選手はなかなかいない。攻撃を操れるというかみんなに指示を出して、こういう形を作ろうって言える選手ってそうはいないんですよね、代表でも。 中西:いないですよね。 井原:そこまで自信を持って言い切れる選手は。 宮澤:みんなが認めてるもんな。 中西:それはやっぱり大きいと思います。世界も認めてますし。 宮澤:戸田(和幸、イングランド・トットナム)なんか、去年のワールドカップのベルギー戦。解説者も関係者も絶対にベルギーには先制点を取られちゃいけねえ、取り返しがつかなくなるって言ってたのに、先制点取られたでしょ。それでみんながうつむいちゃったら、中田が「バカヤロー! 顔上げろ!」って言ったらしい。それで戸田はこの人について行こうと思ったらしいよ。それがリーダーでしょ。中田の強さって頼りになるよな。 中西:肉体的にも精神的にも強いですよ。 井原:強いね。 中西:ワールドカップのとき、思いっきり足首を捻挫してるのに試合やってたんですよ。 宮澤:ベルギー戦で捻挫してて。山本(昌邦、U-22 代表監督)コーチがトレーナールームに見に行ったとき、中田がうつ伏せでマッサージを受けてたらしいのね。それで足首を見てウワッと思った。「次、大丈夫か」みたいなことを言ったら、「はぁ? 当ったりめえじゃん」って感じで。翌日の練習に足首をグルグル巻きにして出てきたときは、みんなで練習止めたって。それぐらい強いらしいよ。 井原:滅多に痛がらないですからね。 宮澤:俺なんかかすっただけで「イ~テェ~! 医者呼べ!」って。俺はそうなのよ。 井原:痛みに弱い。 宮澤:ドクターが言ってた、左利きの選手は痛がりが多いって。 井原:俊輔は? 宮澤:俊輔もそうだろうなぁ。 中西:勝手に決めつけてる。 井原:俊輔、そんなに痛がりませんよ。名波(浩、ジュビロ磐田)もそうじゃなかったし。ミシェルさんだけじゃない? 宮澤:はあ・・・ 中西:ほんと、中田選手の強さはすごいですよね。練習に取り組む姿勢といったらもう。すごいっすよ。練習とかガンガンですよ! 宮澤:中田ね。 井原:意識が違うし、フィジカルトレーニングもメチャクチャ一生懸命やりますよ。 中西:ちょっと話が戻りますけど、これからどういう組み合わせができるのか、代表チームは楽しみですよね。 井原:ジーコ監督がワールドカップの予選を突破するために考えながら、いい組み合わせを探していくだろうと思います。ヨーロッパの選手は毎回帰って来られないわけだし、毎試合組み合わせが変わるのはしょうがないかなって思いますね。 宮澤:ジーコは無理をさせてないしね。クラブチームで必要なら今回はいいって言うし。誰が10番をつけるのかも楽しみじゃない? 井原:あまり意識ないでしょ。別に10番じゃなくてもいいんじゃないのってところがあるんじゃないですか。 中西:また否定されてますよ。 会場:笑い 宮澤:ジーコが誰につけさせるかっていうのはないかな? 井原:ああ。 宮澤:今回はいきなり松井が10番だったろ? 10番だぜ。俺なんてつけたことなんてないんだから。でも俊輔が代表に復帰して10番を渡されて、中田は7を付けて。どの試合かは忘れたけど、俊輔は誰が見ても時差ボケがキツくて悪かったのに、試合に出させた。それで試合後の記者会見できちんと、監督からフォローがあったじゃない。あの人は10番を背負ってきた人だから、10番だと認めた選手はそう簡単にはポイしない。まあ、一回ポイされたら、お前はもう10番じゃないっていうレッテルを貼るんだろうけど。ジーコが誰に10番をつけさせるのか、それも楽しみだと思うけどな。 井原:だから将来的にっていうことで、松井にも10番を付けさせたってことですかね。 宮澤:ほら、井原からフォローあったぜ。俺、すっごくいい気分になっちゃった。 中西:松井はメチャクチャうまいですよね。練習や遊びではやっても、プロのサッカー選手が試合中にはやらないだろっていうことを平気でやりますから。あれはすごい。 井原:やり過ぎぐらいやりますからね。ここでフェイントしなくても普通に出しとけばいいのにっていうところでね。 宮澤:見せてるっていう意識があるでしょ、あの人。 中西:こういう選手は日本で初めて出てきましたよね。 井原:ドリブルの質とか、日本人にあまりなかったタイプですよね。人との間合いとか体の入れ方や方向なんかを楽しみながらやってる。 宮澤:ゲームの中でちょっと楽しんでる、みたいな。 中西:ディフェンスにとっては一番イヤじゃないですか。 井原:わざとディフェンスに来させておいて、そこに体を入れるみたいな。 宮澤:木村和司(元日本代表、サッカー解説者)さんが松井のことを語るときは、もう自分の秘蔵っ子みたいな感じ。一時、森島(寛晃、セレッソ大阪)もそうだったんだけど。「そうじゃないんだアイツの良さは。違うんだよ、最後まで我慢して足首だけてキュッと。わかんねぇだろうな」って。俺が何を言ってもダメ。 中西:平面じゃなくて三次元でボールを扱える感じがするじゃないですか。 宮澤:三次元? 中西:空中にあるボールとかも、楽しんで触ってるでしょ。ボレーとかもすごい。 井原:空間でのイマジネーションがすごい。 宮澤:何回かやってたよ。Jリーグで坪井もやられてた。ギュンと頭を越されて。 中西:ディフェンスはそんなことあり得ない、そんなことはやらないだろって思って守ってるのに、あえてそれをやりますから。 宮澤:それを遊びでやってるサッカーじゃなくて、Jリーグの舞台やオリンピック予選でやるのがまたすごいんだよ。 中西:ちょっと調子に乗りたいときは僕だってやりますよ。 井原:遊びだったらね。 中西:遊びだったらできますよね。取られてもいいっていうのがあるから。でも勝負がかかった試合ではやらないですよ。でも代表の中で、韓国とか相手にああいうことをやって欲しいですよね。今までとは違った日本のサッカーを。 宮澤:俺が言いたいのはそういうことなのよ。去年の埼玉スタジアムでのアルゼンチン戦で、小笠原が足の裏でキュキュッて切り換えたのよ。あのとき俺はうなったね。アルゼンチンに対して、足の裏でやる選手なんて今までいなかった。松井も小笠原もそういう捉え方がいいじゃない。 中西:見ていて頼もしいし楽しいよね。ミスするのが恐いっていうのがまず第一にあるので、あり得なかった感じですもん。 宮澤:今の三都主だな。好きにやれって言ってやりたいな。髪型はいいんだみたいな。 会場:笑い 中西:さて、次に行きましょう。アルゼンチン戦とサビオラのことは後にして、「日本代表監督になりたい?」。これは聞きたいですね。僕と宮澤さんは当然ないっすよね。 宮澤:代表監督っつうのはすごいストレスだろうし、今のところは。 井原:ミシェルさんは将来的には指導者になるんですか。 宮澤:コーチはやりたいと思ってる。選手が伸びるところを見たい。コーチとして呼んでくれるんならちょっとやってみたいと思う。 中西:責任を取らなくていいからですから(笑)。 宮澤:そういうことじゃなくて(笑)。いろいろあるのよ、会社の中と一緒でよ。この世界はすごい厳しいから。 中西:中間管理職みたいな。 宮澤:連敗しただけで、もう終わりだとかさ。そういう生き方をするにはちょっとパワーがない。引退したばっかりの頃は全くイヤだったんだけど、今はちょっとやりたいなって。ピッチサイドのコメンテーターとかやらされるじゃん。あそこに立つと、ウワーッこの中に行きてぇ、ベンチの中で一緒に戦いてぇなって。トニーニョ・セレーゾ(鹿島アントラーズ監督)とか岡田(武史、横浜F ・マリノス)監督の脇にいるとさ、ベンチの中はすごいからさ。みんなで一つの目標に向かって戦ってて。そういうのを見るとやりたいと思うよな。 中西:代表監督っていうのはどうなんですか。 宮澤:代表監督まではイメージが作れないな。大変さばっかり頭に浮かんじゃって。 井原:それはありますね。俺も「yes」にしたけど、まだそこまではわからない。将来的にはなれればいいというか、目標を持ってやった方がいいだろうと思って。 中西:井原さんがやらないで誰がやるんですか。 井原:いっぱいいるじゃん。 中西:いないですよ。代表監督ってみんなが納得しないといけないと思うんです。国民も。だから僕の場合はあり得ない(笑)。中西哲生ってなったら、絶対に「エーッ」って言われますもん。それはないだろって。 宮澤:でもそれは作っていけることでしょ。 井原:それまでにいろいろなところで経験を積めば。 中西:もしそういうのがあればですけど。やっぱり井原さんは持ってるイメージがね。さっきミシェルさんが言ったスマートなイメージが。 宮澤:スマートだな。井原がピッチサイドに立って「そうじゃねぇんだよ!」って。柱谷が監督になって立ったときに、オッと思った。我々のときの年代でそういうキャリアを持ってる奴が初めて帰ってきたなと思って。なかなかいないんだよな。審判のS級っていうのは取るのに100年くらいかかるんだろ。 井原:3、4年くらいです。 中西:皆さん、もう少ししたら帰ってきますよ。反町(康治、アルビレックス新潟監督)さんも柱谷幸一(モンテディオ山形監督)さんもそうじゃないですか。そういう人に指揮を取ってほしいですね。選手としてプロを体験した選手、ワールドカップを体験した選手が監督になったらいいですよね。それに経験者だったら、ワールドカップ予選はここが大事なんだよっていうのがわかるじゃないですか。言葉じゃなくて気持ちで伝えられるものとか、雰囲気で伝えられるものだったりとか。それを知っている人にやって欲しい。 宮澤:S級を受けさせてもらうっていうのはなかなか大変なんだけど、今年の受験者を見てたらラモス(瑠偉、サッカー解説者)とか都並(敏史、サッカー解説者)さんとか戸塚(哲也、東京ヴェルディ1969コーチ)さんが入ってた。 中西:井原さんには何がなんでも代表監督をやって欲しいですね。 井原:まずはJリーグの監督をやらないと話にならないので、そういう経験を積んでから。そこでもしダメだったら、代表監督はないと思いますし。そういう厳しい世界だから、まずは経験を積んで結果を出さないとつながっていかない。 宮澤:結果というのは難しいな。さっきも言ったけど、選手を伸ばしたいっていうのは、今は伸び悩んでたり困ってたりする選手でもっとできる選手っていっぱいいるじゃん。そういうのと一緒にやりたい。でも、そっちの世界に入ったら自分の生活がなくなると思うんだ。ガーッとのめり込んじゃって。だからもう少し、何年かしたら。 中西:井原さんはすごくイメージが湧くんですよ。ベンチに立ってる姿。 宮澤:座ってちゃいけないのか。 井原:アハハハ。 中西:厳しい顔で代表のスーツをバシッと着て。 宮澤:ジャージじゃダメなのか。 中西:井原さんはジャージじゃないですよ。 井原:スポンサーのマークいっぱい付けてね。 中西:井原さんは絶対にスーツがかっこいいと思う。リッピ(マルチェロ、イタリア・ユベントス監督)みたいに。 宮澤:葉巻吸っちゃうか。あれは良くないな。あれで何考えてるのかな、作戦を考えてるのか? 「うめぇぜ」とか? 中西:でもリッピの戦術はすごいですよね。井原さんもぜひ、本当にお願いします。 井原:頑張ってライセンスを取らないとダメだからね。 中西:今どれくらいなんですか。 井原:今年はC級に行きますよ。 中西:じゃあ、後3、4年。 井原:そのくらいかかるね。 中西:そこからJ2の監督とかになるんですか。 井原:そういう話があればだけどね。40歳ぐらいには監督になっていたいね。 中西:それまで体型が変わらないでいて欲しい。僕、引退してから体型変わっちゃいそうなんで。なるべくスッとしていて欲しい。でも時間が経つと変わるじゃないですか。 宮澤:いろんなところが変わってくるんだよ。体型ぐらいならまだキープできるかも。 中西:それではキリンカップの注目点に行きましょう。今回はアルゼンチンとパラグアイ。「キリンカップのアルゼンチン戦。日本は勝てる?」。全員「yes」。 宮澤:相手次第かな。この間の埼玉スタジアムでやったときは惜しかったね。前半はすばらしかったよな。アルゼンチンのカウンターの速さも見せてくれたし。後半の立ち上がりでポンポンとやられたのはちょっとな。あれはどうよ、ディフェンスとして。後半の立ち上がりで素早くフリーキックを始められて。 井原:なんであんなに早くフリーキックを始めさせたんだって、あれは言われたからね。もうちょっとわざと遅らせればね。 中西:国際試合の厳しさですよね。 宮澤:後半になって、いきなりベロン(ファン・セバスチャン、マンチェスターU)がもっとボールをよこせって感じでガンガン動いて。 中西:左右どっちにも出て行って。 宮澤:点取って欲しいよな。 井原:今回、日本は勝てるチャンスがあると思うんです。6月8日じゃないですか。結構暑くなってきたし、ヨーロッパのシーズンが終わったばかりで、あっちでプレイしている選手が多いアルゼンチンはあまりコンディション的には良くないと思いますし。 中西:疲れてますからね。 井原:モチベーションも。今回アルゼンチン代表に新しく入った選手が何人かいるので、そういう選手はあるかもしれないけど・・・ 中西:しかも、ほとんどの選手がヨーロッパから移動してくるわけですし。こっちは昨日(5月31日)も韓国と試合をやっていて。少しずつ上積みがありますよね。ホームですし。 宮澤:アルゼンチンの選手っていうのは何が違うのかと思ったら、マークを寄せるときに奴らは取りに来る。いなすときもあるんだけど、チャンスがあればグワッと踏み込んで取りに来られちゃう。だから、ボールを持っている選手は上に飛ばざるを得ない。タックルされたりするからね。あのへんのストイックさ、圧力っていうのはスゴイ。 中西:やっぱり子どもの頃からの積み重ねじゃないですか。 井原:1対1に強いんです。ディフェンスだったら、ガッと取りに来て取っちゃったりとか。フォワードだったら、取りに行っても絶対取られないとか。どのポジションの選手もそれだけの力を持っているから。 中西:それがベースですよね。 宮澤:国立競技場で日本がアルゼンチンとやったのは何年前? 井原:約10年前。'92年じゃないですか。 中西:そのときもキリンカップでしたよね。 井原:0対1で日本が負けました。 宮澤:バティストゥータ(ガブリエル、イタリア・インテル・ミラノ)か。ユニフォームを引っ張られても、グワッと行って。アイツだけはなあ・・・ 中西:抑えるのが難しい。サビオラ(ハビエル、スペイン・FCバルセロナ)も見たいですね。 宮澤:サビオラは止めようがないときがある。「待て、待て」って行っても・・・ 中西:それを自分でハンドオフするから。 宮澤:ドリブルしながら「持つのやめろよ、コラ!」みたいな。 中西:あんなに小さくても、上半身のパワーがすごくあるじゃないですか。 宮澤:すごいよなあ。 中西:パスを受けて、ボールを置くところが絶妙。マークが一番届かないところにピタッと置くもん。 井原:見たいね。 宮澤:ワールドユースから、あそこまで上りつめちゃうんだよ。バルセロナだぜ。 中西:ワールドユースのときもスゴかった。 宮澤:今、いくつ? 井原:21歳か22歳ぐらいじゃないですか。 中西:あと、アイマール(パブロ、スペイン・バレンシア)がキレキレですよ。バレンシアに来てから特にスゴい。それまではボールを持ちながら動いててせわしない感じがしたんですけど、今はグッと落ち着いていて、ボールをピタッと止めるんです。止まるのを覚えたから、また次に出るのが生きるんです。 宮澤:速いしね。 中西:僕が言うのも偉そうですけど、とんでもなくうまくなった。動きながらパスするのは前からうまいんですけど、止まるのを覚えたから。ドリブルがとにかくスゴイ。みんなが走ってきてパッと止まって、止まった瞬間に前に出てシュート。速いですよ。 井原:アルゼンチンにはドリブラーが多いですよね。オルテガとか。 宮澤:育て方なのかな。 中西:だって、日本だと怒られちゃいますよね。なんでそんなに持つんだよって。 宮澤:アルゼンチンの選手がヨーロッパのクラブに行くと、慣れるまで必ず時間がかかるよね。デニウソン(スペイン・ベティス、ブラジル代表)もそう、オルテガはちょっと無理だったけど。最初はスピードの中でやらなきゃいけないと思うから、はたくしかないことになって。 中西:順応できないですよね。でも、その中で生きてくると止まらないですよね。 宮澤:ボールのコントロールは大事だな。アイマールはかっこいいし。 中西:リケルメは、右しか行かないってわかってても取れないし。そういうアルゼンチンとやる日本代表にも、十分チャンスはありますよね。 井原:チャンスがあると思うし、楽しみですよね。 宮澤:新聞に発表になっていたメンバーが来るならスゴイぞ。スペインリーグが全部来るみたいな。 中西:本当に見たいですよね。11日のパラグアイ戦はどうですか。 宮澤:パラグアイはもめてたな。チラベルト(ホセ・ルイス、元フランス・ストラスブール)が出演料だなんだかんだ言って、来ないとか。大統領よりも、監督よりも偉いのはチラベルトだから。 中西:パラグアイでは、知名度もそうですよね。 宮澤:それを排除しようみたいな感じになって。 中西:それはそれでおもしろいですけど。 井原:チラベルトは出演料が高いらしいですよ。 宮澤:井原さんがそういう具体的なことを言っちゃいけない。夢を与えてるんだから。 中西:僕と宮澤さんはは現実的ですもんね。 宮澤:今日はいくら? ビール飲んじゃったら引かれるの? 会場:笑い 中西:この2試合というか、この1ヵ月は大事ですよね。 井原:その後フランスでコンフェデレーションズカップがあるから、この2試合は大事ですよね。 宮澤:パラグアイには絶対勝たなきゃダメよ、なぁ。 中西:僕は個人的にアジアのチームとやってほしい。相手がディフェンシブに、思いっきり引かれたときのために。 宮澤:練習のためにな。なるほど。 中西:それをやっておかないとアジア予選は絶対に厳しくなる。 井原:確かに。強豪と呼ばれている国とやると、日本のためにわざわざ引いて守るなんてことは絶対にしないから、日本としてはスペースが結構あって、やりやすかったりするんですよね。 中西:タイとやって欲しいですね。後は西アジアのチーム。 井原:中東ね。 中西:中東遠征して、2、3試合ポポポンとやってきてもらえると。 宮澤:最近は中東の代表試合を見てないから、レベルが上がってるかどうかわからないから恐い。 井原:わからないけど、中東のリーグにヨーロッパの選手が行ってるじゃないですか。 中西:イラン恐いし、クウェート恐いし。サウジアラビアは元々強いし。 井原:エフェンベルク(ステファン、元ドイツ代表)がカタールのリーグに出てましたよ。 中西:それ考えるとそう簡単にはワールドカップに出れないよって感じですよね。 宮澤:トルシエがカタール代表の監督に就任するって新聞に書いてあったな。 中西:相変わらずアフリカとか西アジアのチームには人気がありますね、トルシエ。新興勢力を強くするのは得意かもしれませんね。 宮澤:そうなのかな。 中西:なぜ否定的なんですか(笑)。 宮澤:いやいや。ハッキリ答えられないときもあるんだよ。でも新聞には載ってたよ。 中西:時間が迫って来たので、質問コーナーに行きたいと思います。 客:中盤の選手として、自分は藤田(俊哉、ジュビロ磐田)選手を代表に入れてもらったらおもしろいと思うんですが。前回のコンフェデレーションズカップでも、代表に選ばれながらたったひとり藤田選手だけ出場しなかったじゃないですか。代表に藤田選手の持っている攻撃のアクセントを加えたら、中田選手や小野選手とはまた違った良さが加わると思うんですが、どうでしょうか。 宮澤:これはねぇ・・・ 井原:入ってもおかしくない。 中西:実績から言ってもリーグ戦の活躍から言っても、代表に入れて欲しいですよね。僕は選抜チームとかで中学校のときから一緒にやってるんですけど、コンフェデの後に俺だけ出られなかったっていう話を聞いて。本人もかなり辛かったみたいですよ。 宮澤:何をとってもうまいよな。相手がここで困っているからそこを突こうとか。 中西:ゲームを良く考えてる。 宮澤:打つ素振りを見せといて、土壇場で打たないっていうこともできる。 中西:それから点を取るのがうまい。 宮澤:うまいな。 井原:ここっていうときに飛び出して、いいところに出てくるんですよね。 中西:絶対にいますからねぇ。 宮澤:監督に責任をなすりつけるわけじゃないけど、例えば5年前ぐらいに藤田を代表で使い始めた人がいて、彼でチームを作っていきたいって状況があったら、たぶんずーっと代表で来てるよ、そう思わない? 藤田は線が細い、体が弱いから違う人を使ってみるかって思った頃にちょうど中田ヒデなんかが現れた。藤田も現代表のどの選手にも遜色ないくらい、いつでも出せる選手だと思うけどね。 中西:何がすごいって、トラップがすごい。ほとんどミスしない。 宮澤:ミスしないね。 中西:トラップミスがないんです。本人もトラップは自信があるって言ってますしね。 井原:自分が止めたい方向にパッと止めてボールを出せる。相手がこっちから来たらこっちに止めるとかね。 宮澤:自然にね。あれって無意識の世界でしょ。 中西:しかもやたら姿勢が良くて。 宮澤:オランダのクラブに行くって言われて、オフの間にいろんなチームを回って練習をやらせてもらってるけど、いいって言われてるんだよね。 中西:常に向こうに行きたいっていう気持ちを持ってますもんね。 宮澤:しばらく使う時間があるならね。代表って時間がないから。来てすぐに試合みたいな感じでだと、彼は厳しいのかもしれない。 中西:昔だったらトップ下でしたけど、今ならどこのポジションでもできるじゃないですか。融通が利くし。ゴール前に神出鬼没に現れたりね。中山さんの後ろからパッと出てきて押し込むだけのゴールとか、いやらしいゴールが多いんですけどね。彼は小学校の頃から点を取るのがメチャクチャうまかったですよ。ものすごく小さかったんですけど。なんでコイツはこんなに点を取れるんだろうっていうくらい。 宮澤:あいつは本当にサッカー小僧みたいな感じだよな、今も。 中西:そう。あの能力、ゴールセンスっていうのは誰にも教えられない能力じゃないですか。子どもの頃に持っていたものを今もそのまま持ってますね。井原さん、ジュビロで一緒にやっていたときもそうじゃなかったですか。 井原:うまかったね。ストライカーとはまた違ったゴール感覚を持ってました。第2ストライカー的な要素。 宮澤:ドカンじゃないもんな。いなしながら・・・悪いヤツだな! 中西:サッカーは騙し合いだって言ったじゃないですか。代表に入って欲しいですけど、キャリアを積み上げるために一度海外でプレイをして欲しい。あそこまで日本のサッカーに貢献している選手ですから。 宮澤:でも、藤田まで海外に行くとジュビロは本当に困るぞ。 中西:苦しいでしょうね。 宮澤:ジュビロが首位に行くと解説者の俺としては困るんだよ。高原(直泰、ハンブルガーSV)が抜けた穴がデカイぞって言ってたんだけど、グラウ(ロドリーゴ、ジュビロ磐田)がそこそこできてさ。結構いい感じなんだけど、どう? 中西:ジュビロに関して言うと、みんな、あ・うんの呼吸でやってるから。グラウは最初、それに合わせられなくて、動けなくて戸惑っていたわけじゃないですか。でも、中山さんとコンビを組み始めて、徐々にあ・うんの呼吸を覚えて。あのチームって前の選手の動き出しがやたら速いでしょ。中山さんなんて日本で一番動き出しが速いぐらいじゃないですか。あそこでグラウが入ってすぐに機能しないのはわかりますよ。グラウが動き出し遅いし反応も遅いし、距離も離れちゃう。最近やっとなじんできましたね。最初はすごく困ってましたよ。 宮澤:困ってたな。アジアのクラブ選手権で負けて叩かれたから、それで気合を入れ直してシーズンに入って行けたのかな。 中西:いや、コンディションさえ上がれば戻ってくると思ってましたけどね。 宮澤:ああ、コンディションはリーグ戦に向けて作ってたらしいからね。 中西:悪かったですよね。あの大会は思った以上に注目されちゃったし。ジュビロの代表選手だってほとんど休んでなかったでしょ。福西(崇史)選手もそうだし、服部選手もそうだし。 宮澤:代表のときって体がキツイでしょ。 井原:休めないからしょうがない。 中西:しょうがないけど、キツイっすよね。 井原:それが代表選手の宿命だから。コンディションが良くないからってプレイが良くないと、何やってんだって言われるでしょ。 中西:放っといてくれ! って感じですよね。 井原:休ませてくれって言えないから、しょうがないです。 中西:僕なんて代表に行かなくても疲れてましたからね(笑)。ミシェルさんは代表に行ってたじゃないですか。 宮澤:行ってないよ。何もやってない。 中西:候補で行ってたじゃないですか。 宮澤:一番の年寄り候補。テツが「来てよ、来てよ。なんで来ないんだよ。せっかく入ったのに」って言うからなんでだよって聞いたら一番年上になるのがイヤなんだって。「それだけかよ。それは先輩に対して失礼だろ」って。まあ、次に行こうよ。 中西:それでは次の質問です。 客:ミッドフィルダーやフォワードの日本人選手はヨーロッパにどんどん出て行ってるんですけど、これから日本を強くするには守備的な選手、ディフェンダーが海外に出て行くべきだと思います。世界にアピールするためにディフェンダーをどうやって育てて行くか、どのようにお考えでしょうか? 中西:今日は皆さん、ディフェンスですから。 宮澤:なんて言えばいいのかな。強くて大きい選手が出てくるのは待ってる。中盤でこれだけの選手が出てきました。じゃあ他のポジションで出てこないのはなんでだって言われると・・・これはテーマだよね。 井原:この間、ジーコ監督と話をしたときにも難しいだろうって言ってた。どこの国もディフェンスとなると、本当に世界トップクラスの奴じゃないと、外国人選手枠では取らないって。日本でも同じだけど、前線とか中盤の選手を取りたい。ゴールをしたり攻撃に絡む選手を取りたい。ディフェンスは自国の選手で済ませるのが一番だって考えるから。その中に割って入るだけの実力が本当になければ取らないだろうって言ってました。 宮澤:コミュニケーションもあるから。 中西:さっき3人揃って言いましたけど、ディフェンダーは口ですからね。それを海外でやるっていうのは・・・ 井原:大変なんじゃないのかな。それだけの体格があってスピードがあって。さらに高さもあってうまい選手。そういうディフェンスの選手が生まれてこないと、なかなか海外のリーグまでは到達しないんじゃないのかなって。海外に行って欲しいと思うし、行ったらそこそこできると思うんだよね。でも、それには海外のチームから話がないと。 宮澤:宮本(恒靖、ガンバ大阪)選手が何回も英国と交渉してた。言葉もできるしラインをコントロールするタイプのディフェンダーだから、行く可能性があるみたいな話もあったけどね。でも難しいと思うよ。 中西:攻撃の選手は足し算で評価しますけど、ディフェンダーは完全に引き算なんですよ。前の選手はいいプレイをひとつすれば、いいよってことになるんです。中村選手のフリーキックもそうだし、中田選手や高原選手のシュートもそうだし、小野選手のスルーパスもそうですけど。ディフェンスは足し算がないですもんね。いいフィードをしても、守りが大事なんだからそんなのはいらないよって話になるかもしれないし。ひとつの試合で一回もミスをせずにいいコミュニケーションでやれて、初めてマルというね。だから僕は難しいって言うんですけど。一試合通してマルにするためには、コミュニケーションがあって強さがあって、言葉もしゃべれないといけないし、これは大変でしょ本当に。 井原: 小さいうちから海外に行ってたディフェンスの奴が出てくるのがいいのかなって。 中西:それはありますね。。 井原:言葉はしゃべれるし、向こうの食生活でデカくなってくれればいいし。 宮澤:いやいや、日本もデカくなってるよ。 井原:でもデカいっていっても、ストッパーで185cm以上の選手はいないでしょ。 宮澤:そうだよな。 中西:190cmあって、俊敏性もあって、対応もキュキュッとできる選手なんてなかなかいない。 井原:海外のトップレベルになるとフォワードで190cmぐらいで、速くてうまくて。 中西:ファン・ニステルローイ(ルート、イングランド・マンチェスターU)なんて、192cm か193cm 。 宮澤:Jリーグのゲームでも、ミーティングのときにあの大きいのにはお前が付けとか言ってたけど、ドイツに行ったときなんてみんなデカいもんな。ミーティングは全く意味がない。幅だってあるし。まあ、俺は日本人離れした体格だけど。 中西:離れてないない。 宮澤:でも、体が大きいとまずはガッと構えられるみたいな、そういうところがあるよ。 中西:フォワードも大きくて歩幅があるから、ドリブルが速い。 井原:速いよね。 中西:取れないんですよ。 宮澤:テレビで見るとゆっくりしているように見えるけど、実際は悔しいくらい速い。 中西:ファン・ニステルローイもそうですけど、一歩一歩のストライドが大きいから、キックフェイントしたらもう置き去りだもんね。コンパスが大きいから。 宮澤:じゃあ、みんなでデカくなるか。 井原:それがまず必要ですよね。 中西:ハンドオフされたら、ボールなんて届きゃしないですよ。くさびのボールは大体前で受けられるじゃないですか。手は長い、足は長い。ボールが見えないもん。僕はアーセナルで練習をやらせてもらったことがあるんですけど、アンリ(ティエリ、イングランド・アーセナル)なんて届かない。デカいし。 宮澤:俺の足ぐらい? 中西:ミシェルさんも日本人離れした長い足ですけどぉ・・・アンリは本当に足長いですから。ベルカンプ(デニス、イングランド・アーセナル)だって180cmちょっとぐらいかな。届かないですよ。 宮澤:日本の小学生の育成チームでは、まず胃袋からというので練習が終わるとすぐにコレを食べてアレを食べてってやり始めてるらしい。 中西:それを向こうでもやられたら、たまらないですよ。 宮澤:向こうはそこに関しては努力をしてないと思う。 井原:勝手にデカくなっちゃうから。 中西:筋トレしなくてもやたら筋肉が隆々としちゃって。 井原:たぶん、筋トレは日本人が一番してるよね。それなのに全然筋肉が付かない。ブラジル人なんて20、30kgのバーベルを軽く持ってるだけですぐについちゃう。 宮澤:何年か前に得点王を取ったオルデネビッツ(フランク、元ジェフ市原)って選手がいたんだけどね。俺がリハビリ中に90kgの持ち上げようとしてて、これは上がらないとかやってたの。そこへオルデネビッツが来て「ちょっと貸してみろ」って。「なんだ、軽いな」だって。 中西:たまらないですよね。 宮澤:どうにかしようよ。まあ、ジュニアのうちから食生活を変えたりはしてるからね。 井原:カンナバロ(ファビオ、イタリア・インテル・ミラノ)みたい上背がなくても身体能力があれば。 中西:ヘディングとかうまいですからね。 井原:ああいう選手が出てくれば。坪井とかは身体能力が高いから。 中西:速いですよね。 井原:速いしカバーできるものを持ってる。 宮澤:ああいう速さは大事だよ。 中西:置いてきぼりにならない。追いついちゃいますもん、すぐに。 宮澤:僕らのときは、フォワードの選手に憧れて、運動神経がいい人はみんなフォワードだっていう感じだったけど。そうじゃなくて、ディフェンスに憧れて、ディフェンスでも100mを何秒台で走るとか、そういう選手が出てくると。 中西:井原さんを見ていて少年サッカーをやっていた人は、井原さんみたいになりたいと思っている人いると思います。Jリーグになってからディフェンスもクローズアップされるようになってきたから。今後10年ぐらいしたら出てくるんじゃないですか。ディフェンスのスペシャリスト。例えば僕も井原さんも、たぶんミシェルさんもフォワードだったじゃないですか。ガンガン、点を取りまくっていた選手じゃないですか。そうじゃなくて昔からディフェンスをやってた、リベロをやってたっていう選手が出てくるとスペシャリストが出てきますよ、きっと。 宮澤:学生のときから代表だからな。井原さんはスペシャリストだな。 中西:僕ね、今日言おうと思ったんですけど、同志社大学1年のときに筑波大学と練習試合をやって。そのときの筑波大学、メチャクチャ強かったですよ。中山さんはいたし井原さんはいたし。ドシャ降りの日にやったんですけど、もう全然ダメ。そのとき俺は左のサイドバッグをやってたのかな。オーバーラップして思いっきり井原さんとぶつかったんですよ。井原さんは何もしないで立ってるだけだったのに、2mぐらい跳ね飛ばされましたからね(笑)。 宮澤:体で覚えちゃうものってあるよね。1対1もそうだし。もう専門家みたいな、そういうディフェンダーが出てくるとね。 中西:そうすれば海外に行けるかもしれない。後は小学校、中学校で英語とか第二外国語の教育をしてもらうしかない。 井原:それも必要ですよね。 中西:ということで、あっという間の2時間ですね。最後に一言ずついただきたいと思います。それでは、今日もご機嫌な宮澤ミシェルさん。 宮澤:こういう話が少しでもサッカーを語る上で、みんなの楽しみになってくれればありがたいし、日本のサッカーのスタイルとして根付いていったらうれしいなと思っていつもここに来るんです。あることないことしゃべっちゃって、みんなを惑わせてたと思いますけど、これからもよろしくお願いします。 中西:ないこともしゃべったんですか!? では、トークバトル初登場の井原さん。 井原:ミシェルさんに押されましたけど、楽しい時間を過ごせて良かったです。キリンカップがこれから6月8日と11日にありますし、日本チームを今まで以上に応援してもらいたいと思います。僕自身、指導者を目指して頑張っていきたいので、僕のことも応援していただけたければと思います。今日は本当にありがとうございました。 会場:拍手 中西:また来てくれますか。 井原:またぜひ機会があれば呼んでください。 中西:うれしいです。まだまだ話し足りないころがいっぱいあったと思いますが、また次回ということで。今日のゲスト、井原正巳さんと宮澤ミシェルさんにもう一度拍手を。 会場:拍手 中西:ありがとうございました。今日は初めてディフェンスの視点からの話でしたが、僕が現役時代、井原さんは話すことができないくらい雲の上の存在でした。今日初めてゆっくりお話をしたんですけど、実はユーモアもある方なんだということが分かりました。普段は黙々とプレイするタイプじゃないですか、ポーカーフェイスで。お話も非常に楽しかったです。僕が言っていることを、井原さんがうんうんって聞いてくれたのがうれしかったです。そうじゃねえよって言われたら悲しいですから。いやあ、ミシェルさんは楽しいね。あることないこと言ってました(笑)。ミシェルさんもすごくいろいろ考えてやってる方ですから、すごく勉強になったし楽しかったです。ミシェルさんも言ってましたけど、スポーツは見る楽しみもありますけど、語る楽しみもありますから、皆さん今日これからお帰りになって、アイツがああいうことを言ってたよって。そうしたら余計楽しみが広がりますからね。俺はこう思うって、一人一人意見が違ったり、思いが違うのもスポーツの良さですから。みんなが愛情を持って話をしてくれればと。ありがとうございました。 会場:拍手 構成・文:CREW 撮影:源賀津己 |
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