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後編


進藤:2004年、今年の注目選手ということでお話を伺っていきたいんですけど。このコリアも注目選手のひとりですか。
柳:もちろん、そうですよ。
進藤:あとはどういう方が注目なのかということで、皆さんにそれぞれ挙げていただきます。ではですね、順番に。ダバディさんの2004年、注目の男子選手は。
ダバディ:ふたりいます。
進藤:ほう、ふたり。
ダバディ:本命を言いますけれども、マラト・サフィンのカムバックはすごい期待していて。おもしろい選手ですね。本当に、先ほど申し上げた細かいディテールなんですけれでも、彼のサーブがツアーで一番好きです。こんな余裕で、遊びみたい、マンガみたい、アニメみたいにサーブしている彼の姿にすごく憧れてますし、頭もいいし、ユーモアもあって、ロシア人ですけど、スペインで育てられて。だからロシア人でありつつ、すごくラテン的な性格があって。挑発的なところ、ちょっとマッケンローっぽいところもあって。「ロディックは大したもんじゃない。私はいつも彼と試合をすると、勝ちますからね」っていうような、さすがまだ試合をやってないところで、そういう切り口で言うのは、「これいいな。これ必要だな」と思って。でも本命は、フィリポーシス(マーク、オーストラリア)です。
進藤:出ました。
ダバディ:でも、ふたりとも期待してて。ルックスもあって、パワーもあって、繊細的なところがあって。ユーモアもあって、エンターティナーの質があって、でも勝たない。
進藤:柳さん、ダメ?
岩佐:いやあ、さっき実は打ち合わせのときにですね、注目選手っていうので進藤さんがダバディさんに振ったら、フィリポーシスとおしゃったんですよ。私そこで止めたんですね。ステージでいきなり出した方がおもしろいだろうと。いきなりサフィンの名前を出されると思わなかったんですよ、僕は。というのは、僕の注目選手、サフィンなんです、やはり。現在は66位まで落ちてますけど、これはケガのためだけであって、実力はこんなものではありません。ダバディさんがおっしゃったように非常にユーモアがあって、すばらしい選手だと思います。皆さんのなかにも、特に女性でサフィンが嫌いだとおっしゃる方がいらっしゃるだろうと思うんですね。コート上でのマナーを見てると、彼を好きになれないというのは、非常によくわかるんですが、僕は試合後の公式記者会見などを覗きにいくと、実にユーモアたっぷりに記者の質問に答えているんですね。そういうところを見ていて、僕は憎めないですね。いい歳してますから、いちいちそういう若い人のつけ上がったり思い上がったりしていうのを疎ましく思わないんだろうと思いますけど。
進藤:若さゆえの、コート上でのマナーになるんですか。
岩佐:うーん。なぜああいう風になってしまうのか。自分に腹を立てるっていうのが第一でしょうけど。ラケットを投げつけたりなんかするのも。
進藤:抑えられないわけですね。
岩佐:そういうところがだんだん大人になって。今年の試合後の談話を見てると、少し集中しなければいけないということを思ってきているという話も出てますし。今年、1月に入ってから始まりました、ホップマン・カップという非公式の大会、ITFの公式大会ではありますけども、男女のシングルスとミックスダブルス、3試合ずつやる大会なんですけど、アメリカが昨日優勝しました。これにサフィンは出てます。そして柳さんね、サントーロ(ファブリス、フランス)に勝ってるんですよ。
ダバディ:初めてね。
岩佐:もう、全仏で子どもみたいに扱われたサフィンを僕ら覚えてるんでどうなるかと思ったら、圧勝してるんですね。今年のサフィンは非常に楽しみです。もうひとり加えるんであれば、フィリポーシスではなく、ヒューイット(レイトン、オーストラリア)。ヒューイットは今年、アグレッシブなテニスに切り換えるというようなことを言ってますし、ちょっとホップマン・カップでつまずいたりしたのが気になるところではありますけど、彼がまた、その気になってやったらおもしろいんじゃないかと期待してます。
進藤:ヒューイットはどういう性格の人なんですか。
岩佐:強気を絵に描いたような男ですよね。体はあまり大きくないし、とにかくガッツとスピードで勝ち上がってきたと、僕ら専門家ではないんですけど見ていて思いました。ガッツの面が去年は影をひそめてしまって、年齢が上がったらあまり欲を出さずに。要するにデビス・カップのファイナルに備えるんだみたいなことを言って。結局出なかったと思うんですね、全米の後は。それで見事に優勝を飾ってますけども。そういう選手です。
進藤:はい。それでは遠藤さんの注目選手をお願いしましょうか。
遠藤:絶対ここにないんですよ。ごめんなさい、オーストラリアのトット・リードっていう選手が、去年、ジュニアのチャンピオンかな。わからないですけど。
進藤:へえ。
遠藤:いいんですよ。
進藤:どんな風にいいんですか。
ダバディ:美男子?
遠藤:そうそう。ルックスもいいですし。でも、何かオーストラリア人にしては、あ、オーストラリア人にしてはって言っちゃった。ヤバイ。ごめんなさい。ヒューイットのストロークって、めちゃくちゃ特徴ありますよね。オーソドックス。今回、注目選手の写真もアップしたいので誰か挙げてくださいって言われましたけど、絶対、写真はないと思うんですけど。私は、トット・リードに注目。もう一つは、ロジャー・フェデレ(スイス)。いつもフェドラーって言っちゃってるんですけど。サンプラスに比較されるの、たぶん彼はすごくイヤだと思います。でも、去年のウインブルドンのときに、彼とロディックの試合を見たときに、これは技術的にすごい差があるなって。圧倒的に違うなって思って。
進藤:そうですか。
遠藤:苦手なナルバンディアンに全米では負けて、そして「ありがとう、ナルバンディアン」って。ロディックが勝っちゃったんだなって思いましたけど。フェデレもいいんですけど、トット・リード。何年かかるかな。2、3年ぐらいかかるかもしれませんが、ちょっと覚えておいていただければ。
進藤:注目のニューフェイスですね。
遠藤:はい、そうですね。
進藤:他に注目のニューフェイスってどなたか挙げられると。
岩佐:女子でもいいですか。
進藤:はい、どうぞ。
岩佐:柳さん、男子の方で言い残したことがあったら。
柳:特別な選手っていうよりも、例えばヒューイットの話が出ましたけど、ヒューイットのデビューしたときっていうのは、何をしでかすかわからないっていうような八方破れなパワフルなテニスをしましたが、強くなったらまとまっちゃって。僕は絶対、この人、強くならないって言いました。それがUAオープンで優勝した頃には、パワーをつけて、いわゆる力のテニスに戻ってきたんですね。ですからその繰り返しだと思うんです。そういった意味で、岩佐さんがおっしゃる、今年はちょっと注目っていうのは納得できますけど。僕の場合にはね、ゴンザレス(フェルナンド、チリ)とかみたいにめちゃくちゃなパワーで見てておもしろい選手と、ナルバンディアン、コリアみたいに非常にテニスを分散していく、おもしろさのテニス。その両極端に分かれていくような気がしています。注目選手といえば、僕は男子は、ナルバンディアン。
進藤:注目ですね。じゃあ、岩佐さんのその・・・
岩佐:えースタッフに予め言っておきますけど、探してもありません。今、59番の選手なんですけど、私見たことないんです。見たことないのに注目というのも変なんですけど、オーストラリアに行ったら、ぜひ見たいという選手なんですね。クロアチアの18歳のカロリーナ・スプレムという選手で。この名前、ぜひ覚えておいてください。もちろん、まだ若いんですけども、去年は開幕のフューチャーズというWPAの、いわゆるシニアのツアーではなくて、その一段下のツアーで4連勝。開幕いきなり4連勝。そのうち3回は下から上がって、3つ勝ってしまったという。そういうところに絶対何かがあると思うんですよね。まだ、経験が足りませんから、オーストラリアでいきなり活躍するかはわかりませんけれども、今年のうちにトップ20ぐらいに入ってきちゃうんじゃないかなと。僕の目の付け方っていうのは、いつもそういうことなんですよ。記録をずっと追いかけていって、まずは名前の読み方のわからない選手、ずいぶん出てくるんですよ。クエルテン(グスタボ、ブラジル)なんて、最初印刷物で見たときに、何て読むんだってところから始まりましたけども。そういう具合に、スプレムっていうのは一体何者だっていうところから調べてたら、そういう選手だったわけですけれども。
進藤:じゃあそのまま女子の今年注目の選手を、皆さんそれぞれ引き続き挙げていただきたいと思います。ダバディさん。
ダバディ:最初けっこうつまらなく、オーソドックにエナンの話をしようと思っていまして。彼女のような、去年のカプリアティ対エナンの試合のような、まあ男女を問わず、一年間でベスト試合だったんですね。こんな圧倒的な魅力で僕たちを魅了する女子の試合は。ただしエナンを止めて、たまたま昨日のフランスの新聞でモレスモー(アメリー、フランス)のインタビューを読みました。モレスモーが「私はナンバー1になります」って。本当に強い切り口でこの新しい2004年のシーズンに臨んでます。そして、私が願っているネットプレーヤー、女子も少ないっていうことで、「今年は私がネットプレーヤーになります」って言いました。レキップというフランスの新聞の一面に載って。「期待しててください、スペクタクルを」と。その言葉に甘えて、本当にやるかどうかはわかりませんけど、岩佐さんは「no 」って言いますけど、私は期待してます。
岩佐:皮肉なダバディさんが、そんなにすんなりとモレスモーの言ったことを信じたということが、僕には信じられません。去年の全仏でも、大会前モレスモーはずいぶんと取り上げられていました。彼女自身も、今までの私と今回の私は違うって言ってました。
ダバディ:言ってましたね。
岩佐:準々決勝でしたか、セレナとやって。
ダバディ:あっさり。
岩佐:地元のマスコミは大騒ぎをして盛り上げたんですけど、実に残念な結果でした。僕はダバディさんにむしろ逆に聞きたいんだけども、彼女のメンタリティというか、ここ一番でのもろさを克服しなければ、どんなに力があっても、あそこから上にいけないんじゃないかなと思うんですけどね。
ダバディ:まさに。メンタルはそんなに強くないからこそ、ヒンギス(マルチナ、スイス)のような、サンプラスのような幾何学的に完璧なテニスはできるわけないと思う。だから、もうそういう理想を捨てて、どんどんネットに行って、エラナウェイのような選手になってほしいんですよ。ナンバー1になれるかどうか、最初の彼女の発言に対して非常に疑問を持ってます。だけど、ネットプレーに、例えばトジアを思い出してほしいんです。トジアは一番嫌いだった選手、つまらなくて、いちいち他の選手の悪口を言って。常にフランス、フランスって、いつも自分の国家をたぶん上げて、フランスのためにって言って。本当にキャラクターとしては、嫌いだったんですね。で、何かあって、恋愛だと思うんですけども、何かがあって変って、突然ネットプレーヤーになってて、優しくなって。
遠藤:いい人だった。
ダバディ:いい人になってて。そういうこともあるから。ナンバー1はどうでもいいけど、エンターテイメントは期待したいですね。
柳:いやいや、あなたの意見はよくわかるけどね。当時は、モレスモーとはテニスの形もリズムも全て違うんですよね。ですから僕は、少なくともそれだけネットプレーに出れば、酷な言い方かもしれないですけど、ザルの穴が開いたみたいな。ずいぶん失点も重ねるんではないかと。だから、かなり苦労しながら勝たなければならないテニスをせざるを得ないだろうと。でも、おもしろいですよね。彼女がやってくれたら。ネットでの激しい予測と動きが、今までの彼女に他のネットプレーヤーと比べてあったかというと、まあ今のところあんまり感じない、そうでしょ。
遠藤:そうですね。でも私、すごく好きなんですよ。じゃ、私はダバディさん側につこ。
進藤:きれいに分かれたところで、続いて岩佐さんの注目選手を。
岩佐:注目選手はさっき申し上げたんですけども、上の方の例えばシャラポワとかね、ハンチコワ(ダニエラ、スロバキア)っていうのは言っても、今年注目っていうことでもないんで、僕はさっきのスプレムに尽きますね。そのドキッチ(エレナ、セルビア・モンテングロ)がね、オーストラリアに来るような話だったんです。話だったんですが、もうオーストラリアには行かないだろうとお父さんが言ってるんで。出てくるか心配なんですけど。そういう情報で言うと、カプリアティが背中を痛めて出られるかどうかわからないっていうことがあります。それからクライシュテルスは先ほどお話したように、ポップマン・カップで実はラブ・マッチという、ヒューイットがオーストラリアの選手として出ていまして、クライシュテルスがベルギーの選手として出てる。ミックスダブルスで対戦することになっていて、切符があっという間に売れてしまったというんですが。クライシュテルスが、ミックスダブルスに行く前の、女子のシングルスで足首を痛めて、ラブ・マッチがパーッになっちゃったんですよ。そのパーになったのは別に構わないんですけど、全豪的に、あるいはWOWOW的に言うと、クライシュテルスが全豪でプレーできるかどうかっていうのは疑問視されてますね。ちょっとそれが、僕は心配です。
進藤:では続いて、柳さんの注目をお願いします。
柳:注目選手ですか。男子? 女子? 注目っていう言葉が適切かどうかわかりませんけど、僕、今年の全豪ではビーナスを。あんなに強い人ですけど、もう一回見てみたいなと思ってるんですね。なぜかって言うと、やはりビーナスが出てきて、さらにセレナが出てきたとき、私もその頃女子の中継をやってたので、岩佐さんとよく話をしたんですが、セレナが最初に出てきたときの試合を見て、僕たち背筋が寒くなるっていうくらい、ちょっと驚いたことがあったんですね。
進藤:ほう。
柳:そのあと、やはりビーナスの方が強くて、セレナがドンドン実力をつけるにしたがって姉妹対決があって、やはりセレナの方が勝つ場合の方が多くなってきた。やはり姉という立場で、プレーヤーとしてもそうでしょう、家族のなかにいて、どういう心境であったか。耐えられないもの、絶対あると思うんですよ。4回に1回ぐらい勝ちたいと思うの、当たり前ですよね。当然の妹の力は認めてるんですけれども、ですから去年は彼女らしくないフォアーハンドのミスがときどき出るんですけど、らしくないテニスでときどき負けたんですね。で、特にセレナが怪我してるっていう状況のなかでね、ビーナスはもう一つ上のテニスをして、完全に立ち向かう姿を見たいなという、そんな見方で。
進藤:ウイリアムズ姉妹っていうのは、遠藤さん、やっぱり相当仲がいいんですか。
遠藤:めちゃくちゃいいんですね。しかもツアーに出始めた頃は、他の選手を寄せ付けない、ふたりだけが、セレナはビーナスがいればいいや、ビーナスはセレナがいればいいやっていうので、他の選手とのコミュニケーションはロッカールームでは全くなかったんです。でも最近、ずいぶん変ってきたってみんな言ってますけどね。
進藤:何かが変化しつつあるわけですね。
遠藤:そうですね。やっぱりチャンピオンですから、そういう人格的っていうか、すごく変っていくんだろうなって思いますけどね。
進藤:チャンピオンに問われる人格というと?
遠藤:私のなかでのチャンピオンは、ヒンギスはナンバー1でしたけど、やっぱりグラフなんですよ。
進藤:ふむふむ。
遠藤:ごめんなさい。ヒンギスのファンの方。でも、何かチャンピオンは、こう近寄っちゃいけない何かもあり、でも何か人間性もときには見え。何て言ったらいいんだろう。
進藤:バランスの取れた。
遠藤:そうですね。あと、テニスに対して、この人、きっとこれだけ打ち込んでっていうか。潜在能力はもちろんだし、正直なところグラフっていうのはプライベートで、お父様がいろいろあったり、そういうのをパキンとすごく切り分けて。すごくテニスにだけ。私、岩佐さんがおっしゃったお話ですごく印象に残っていることがあって。アンダースコートを見せなかったって。
岩佐:見せなかったと言うか、見せないように。
遠藤:振舞った。
進藤:グラフ自身がですか。
遠藤:はい。そういう女性っていうのを超えて、プレーヤーじゃなくて、アスリート。そのなかで、トップなのがグラフって思ってしまってるんですけど。
進藤:その遠藤さんの2004年注目の女子選手をお願いします。
遠藤:今、そのすごく怪我が心配なんですけど、クライシュテルスです。持って生まれた身体能力とか、フォアーハンドを打ったときに、後ろ足が頭につきそうなくらい、跳ね上がっちゃってるんですよ。サーブを打った後は、もう右足がつきそうなくらい、跳ね上がっちゃってる。左足、着地足なんですけど。
ダバディ:柔らかい。
遠藤:そうー! この私の太腿を見てくださいよ、皆さん。
進藤:しっかりしてますね。
遠藤:すごくないですか。この体でエナンに負けるっていうのは、先ほどメンタルの話が出ましたけど、メンタルに尽きるんじゃないかなってすごく思ってます。何て言うんだろう。私、持ってる体の能力、運動能力とかいろんな言葉が使われていますけど、スポーツ科学の世界でも、ウイリアムズ姉妹以上だと思います。ウエイトトレーニングってみんなするんですけど、筋力、いくらつけてもつかない選手もいるんですよ。ハンチコワがどれだけ筋力をつけていけるか、それが彼女の分かれ目になると思いますけど、それはそれはすごいんじゃないですか、たぶん。スクワットとか。持って上げたらすごいと思うし、それがテニスにもいいと思うし、彼女のなかで何かが変らないと、本当に。ダベンポートもとっても変りましたよね。あれだけメンタルの弱い、すごくいい人ですけど、気のいいダベンポートで終わらないで、ビッグタイトルを取っていったので。私はクライシュテルス選手に注目してます。
進藤:さあ、話をドンドン進めていきたいと思います。1年間のツアーのなかで目立つのが、4大タイトルと言われている4つの大きな大会だと思いますが、この4つの大きな大会、もちろんプレーヤーの皆さんにとっても特別な存在のものだと思います。4つの大会の特徴をダバディさんに、軽く触れていただきたいんですが。
ダバディ:特徴というのは、プロの方のような解説をする自信がないのですけれども、極めてファン的な言い方で。まあ全豪は、ヨーロッパ、北半球が真冬なので他のスポーツイベントが盛り上がっていないですよね。パリ・ダカールというレースはありますけども、サッカー・シーズンは始まっていないですし、他のバレーボールやバスケットボールとかアメリカンスポーツも、そんなに邪魔してないし。NFLのプレイオフもちょうど終わる時期だから、もう全スポーツファンが全豪は本当に一番注目してると思うんですね。ヨーロッパのスポーツ新聞でも、一面を飾るのは、ローランギャロスとか全英とか全米より、全豪が多いんですよ。
進藤:そうなんですか。
ダバディ:選手もエンターティナーだから一面飾りたいし、いろんなスポーツ番組の注目を浴びたいので。これって、私もさらにスターになれるいいステージなんですね。
進藤:全世界が注目している。
ダバディ:そうですね。全仏に関しては、カンヌ映画祭があってその1週間後に全仏が開催されまして。
進藤:そうなんですか。そういう順番なんだ。
ダバディ:そうなんですよ。カンヌ映画祭の有名人が必ず。
進藤:見に来るの?
ダバディ:テニス好きな俳優さん、監督さんがたくさんいて、パリ行くんですよ。だからそのスタンドを見れば、いきなりトム・クルーズとか、フランスで言えばジャン・ポール・ベルモンドとか、美人モデルのナオミ・キャンベルが、審判の後ろに座ったりとか。
進藤:足がきれいな…。
岩佐:’92年、’93年の全仏はよく見かけましたね。僕は当時、スーパーモデルって言うと、ナオミ・キャンベルしか知らなくて、その度に「ナオミ・キャンベル、ナオミ・キャンベル」って言ってたら、終わった後日本に帰ったら投書がありまして「ナオミ・キャンベルしか知らんのか」って。これ、女性の方から言われました。
進藤:おもしろい投書ですね。
ダバディ:本当に豪華な観客がスタンドに座っていて、選手たちもトップスターたちですけど、他の分野の、他の世界のトップスターに見られる緊張感とか。遠藤さんがおっしゃっていたレッドクレーの伝統的な象徴っていうか。それはすごく。ファンから見ても、選手はかっこつけてるところが伝わってきます。
進藤:見る目が厳しいっていうのは、さっきもおっしゃっていましたが。
柳:それとね、あそこは選手と観客が身近なんです、一番。
進藤:客席とコートが。
柳:そんなにキャパシティが大きくないっていうこと。USオープンみたいに、ものすごいでかい器でやってるわけじゃないですから。目の前でもう、汗が飛んでくる感じで。
進藤:かぶりつきですね。
ダバディ:確かに柳さんがおっしゃってるように、ローランギャロス戦に行ったときに、ずっとテレビで見てて、距離感がそれなりにあって、それもかっこいいんですけど、センターコートに入ったときに、そんなに近くて。
遠藤:近い、近い。
ダバディ:ヤニック・ノアが触れるくらい。
柳:そうなんです。
遠藤:ロッカーからコートに行くのが大変なんです。人ごみをかき分けてかき分けて。
進藤:わー、そうですか。
遠藤:背中バンバン叩かれて。
進藤:お相撲さんみたいですね。そして、その次に全英オープンがありますが。全米オープンに飛んでしまいましょう。
ダバディ:最初からとても主観的な話なんですけど、全米は私、一番好きな大会です。
進藤:というのは?
ダバディ:その理由には、ナイターがあるからです。唯一ナイターがあって、それこそエンターテイメントとして、照明が完全にフラッシュとして、スポットが当てられて。夜にやるっていうのが。どうしも朝、起きられない選手はいっぱいいるんですよ。我々だけじゃなくて、ヤニック・ノアとかもクラブが好きだから、決勝の前にナイトクラブに朝までいたりとかですね。そうすると11時の試合は無理なので、夜から調子に乗る選手がいて。たぶん、カプリアティとエナンの試合も、ナイターだったからこそ、何かの輝き、何かのオーラがあったと思うんですよね。
遠藤:なぜか、ナイター・セッションってすごいいい試合になります。
岩佐:やっぱり照明があって、周りはもう闇ですしね、集中するんじゃないですかね。全豪もナイター・セッションはいい試合が多いです。
遠藤:涼しいですしね。
進藤:客席にも、勤め帰りの人が慌てて駆け込ん来られたりしてますよね。
ダバディ:あと柳さんがおっしゃったように、全仏が狭くてっていうか、とっても家庭的な雰囲気でしたら、全米は逆に賑やかって言うか。
柳:全く雰囲気が違いますね。やっぱりニューヨーク、みんなが行きたい、集まるところなんですね。選手のレベルも一番高いし、いろんなことが起こりうる場所ですね。
ダバディ:これこそテニスのアメリカンドリームですよね。
柳:そういうことです。
進藤:4大大会、さらっと見てもらいましたが。
岩佐:一つ付け加えますとね、4つの大会がグランドスラムとしてあるわけですけども、全米が8月30日から9月12日まで。実はこの全英と全米の間にオリンピックがあるんです。アテネ・オリンピックのテニスというのは、8月15日から22日まで行われるんです。で、全米が8月30日から。これはけっこう選手にとっては厳しいだろうと思います。
進藤:日程が詰まっているところで。
遠藤:オリンピックに出ない選手も、何人かもうあがってますよね。
進藤:さていよいよですが、全豪オープンが1月19日に開幕します。さあ、この全豪オープンとは、テニスのお正月と例える方もいらっしゃいますが、遠藤さん、選手にとってはどういう大会でしょうか。
遠藤:アガシの昨年の優勝にも象徴されるんですけど、すごく調整能力が問われる大会ですね。自分でやっててすごい大変だったのが、いい結果を出せた大会の調整方法を逆算してやっても、同じ答えが出るとは限らないんですよ。今回すごい体調が悪くて大丈夫かなって思っていて、いい成績があがっちゃったり。そこで、アガシが優勝することの意義っていうのを考えていただきたいというか。やっぱりそこが彼の戦い方っていうか。ベテランって言われるのはそこだと思います。優勝スピーチで、クリスマスイブに一緒にランニングしてくれてありがとうって、すごい大きな体のトレーナーの人がいるんですけど、その人にお礼言ってましたけども、それがすごく問われる。本当のアスリートとして、どれだけテニスに打ち込んできたか、お休み返上して。厳しい大会ではありますよね。
進藤:空白の1ヶ月が透けて見える大会なんですかね。ではこの2004年、一番最初のグランドスラム、皆さんに優勝予想をしていただきたいと思います。男子女子、同時に予想していただきましょう。まずはダバディさん、ズバリ、お願いします。
ダバディ:男子、フィリポーシス、私の候補です。この12月に行われたデビス・カップで、何かメンタルの弱い人、遊びが好きな人として見られた面で、逆に極めて真面目な人になってきて、ファイブセッターまでガッツを出して、デビス・カップを優勝に導いた彼。今年は彼のキャリアのなかで転換期だと思いたいです。で、女子は、エナン。彼女のテニスはすごいですからね。もう、見たいんですよ。そういう攻撃的なテニスの、スペクタクルの最後までいって、セレナとの試合も期待してたんですけど。セレナがちょっと。
進藤:欠場する。
ダバディ:はい。
進藤:ケガで。
ダバディ:はい、それです。
進藤:それでは続いて、岩佐さんです。
岩佐:えーと私、大会ごとによくこういう優勝予想ってやらされるんですけど、だいたい無理なんですよ、この時点で優勝を予想するのはね。本当はドローが出て、ベスト16ぐらいまでいってからであればそれなりに。
進藤:そうですね。
岩佐:ロジカルに優勝予想ができるんでしょうけど。つまり、何を言いたいのかと言うと、聞かれるたびに優勝候補としてあげるのは、勝たせたいと思う選手なんです。
進藤:なるほど。思い入れのある選手。
岩佐:アガシは、まあおそらく今年か来年までかなって思うんですよね。年齢的なものも含めて。そうなると彼の場合、オーストラリアか全米かっていうところが一応、優勝の大きなチャンスがあるだろうと思うし。もう一つぐらい取ってもいいんじゃないかと。彼のコンディショニングのうまさ、ギル・レイエスというものすごいトレーナーがいますから、きっちり仕上げてくるだろうと思いますし、彼にもう一度優勝させてやりたいなと思います。決勝、もっといい試合になって勝たせたいなと思います。それから、クライシュテルスもやっぱり勝たせたい、去年のエナンとの全米での試合を思い出すとなおさら、彼女にも一つ取らせたいなと。一つ取ったら、ものすごい選手になるだろうというのがありますね。本当はカプリアティとのふたりを挙げたいんですけど、先ほどちょっと申し上げたように、背中を痛めていて、事前の試合をキャンセルしたりしてますから心配なんですけど。カプリアティにも。僕はだいたいストーリーを持った選手が好きなんですね。ここに来るまでにいろんな。山あり谷ありのテニス人生、また、実人生を送ってきた人が好きなので、カプリアティにも、まだあと一つや二つタイトルを取らせたいなと。そういう意味で、このふたり。カプリアティを含めて三人ですけど。
進藤:アガシとクライシュテルスということでした。続いて、柳さんです。
柳:えーと男子はですね、ご存知の通り、オーストラリアオープンというのは、コートが弾むんですよね、すごく弾みます。
進藤:ほう。
柳:私、よく練習するんですけど、普通に打ったらもううまくボールが打てないんです。そういうのをよく見てらっしゃるとあれですけど、サーブが速ければすごく有利になります。トップスピンでやるのもいいですけど、それじゃここでは滑りません。テニスの速い人、うまい人が強くなるんですけどね。それを考えるとやっぱり僕はロディックがあのビッグサーブを生かして、本当の力をつけてほしいという念願、希望がありますからね。男子はやっぱりロディックかなと。
進藤:なるほど。
柳:女子は、皆さんと一緒で、クライシュテルスを勝たせたいという気持ちがありまして、勝ってほしいという願いもありますけど、もう一つ我慢して、ビーナスに頑張ってほしいという期待を持ってます。
進藤:続いて、遠藤さんです。
遠藤:私はですね、すごく両極なんですけど、ロディックには勝ってほしくないけど、勝っちゃうんだろうなって思ってて。嫌いなわけじゃなくって、あまりにも出来過ぎている優勝だったんですよ、全米。本当にハリウッドの映画みたいな。
進藤:ああ。
遠藤:それじゃあ、あまりにもつまんないなって思っちゃうんですけど、でも強いでしょってすごい思ってて。
進藤:むかうところ敵なし、のように。
遠藤:だってもう、身に付けちゃいましたもん、勝つコツを。で、クライシュテルスは勝ってほしい。彼女が勝たないとアスリートが否定されちゃう、そう思うんですよ。だから身体能力に長けてる人も勝たなきゃいけない。メンタル面を抜いても。だから、そう思いますし、モレスモーもおもしろいと思います。
進藤:杉山さんはどうでしょうか。
遠藤:すごくいけると思います。正直な話、優勝候補にあげてもおかしくないと思います。やっぱり実力だけじゃ勝てない。運もいるし勢いもいるので、変はプレッシャーはかけずに見ていきたいなっていうのはあります。でも、すごいチャンスあると思いますよ。
進藤:前年、あまりこの大会で力を発揮できなかったからこそ、今年懸けてますっておっしゃっていました。
遠藤:本当に楽しみですね、それも。
柳:テニスがね、去年辺りから、春に見たときにこれは変ってきたと言いましたけど。フォアーハンドの打点がむちゃくちゃ速くなりましたよね。昔は全部落として打ってました。今は全部、無理してでも打ってます。それができるようになりました。僕は、非常にバランスの取れたいいテニスをできるようになったので、期待を持てるという話をしてたんですけど。たぶん、いいところにいくんじゃないでしょうか。
進藤:今年いろいろ楽しみですね
ダバディ:必然的にふたり挙げなきゃいけないっていうことなんですけど、ヘンマン(ティム、イギリス)もサフィンの波に乗ってますし、何かワクワクします、この全豪は。
岩佐:全豪ということで、1月10日、前哨戦は負けてしまいましたけどがかつてのサンプラスのコーチ、アナコーン(ポール)と組むことになってグランドスラムを中心に面倒をみてもらうことになってますし。そういう意味で、しばらくコーチがいなかったんですね、ヘンマン。彼もやっぱり最後に一花咲かせたいだろうし。彼はウインブルドンもすごく注目だろうと僕は思ってるんですけど。
進藤:他に、日本の選手も頑張っています。女子では浅越さん、小畑(沙織)さん、そして森上(亜希子)さん。男子でもね、鈴木(貴男)さんの名前がこちらにもあがっていますが。日本の選手については、どのような期待を寄せていらっしゃいますか。
遠藤:あのー、本当は一時期杉山さんしか本選にいないんじゃないかって。杉山さんが今まで引っ張って引っ張って。でも、出るときは一気に出ているもんですね。すごくいい関係なんですよ。仲良くお手てつないでっていうんじゃないですけど、お互いに刺激し合って、切磋琢磨して。こういうときって、この後も出てきたんです。福田(涼子)ちゃんっていう17歳の選手がいますし、小畑、浅越、森上、この三人がいい意味で刺激し合ってますから、3回戦、4回戦日本人が複数っていうこともあり得ると思います。
進藤:男子はどうでしょうか、柳さん。
柳:男子の前に、やっぱり女子でしょうね。伊達(公子)選手が強かったとき、やっぱり周りも強くなりましたよ。今度は杉山君が強くなりました。この影響はやっぱり大きいと思いますね。男子の世界、残念なことに、男子って100番ぐらいでもトップに勝つ可能性はあるって言いましたけど、そのぐらいなんですね。鈴木貴男だって十分に戦える力はあるんです。誰ともいい試合をしてるんですが、体力的なもの、全部出さないと勝てないという、世界の選手層の厚さですね。向こうの人たちは、ちょっと自分の出せないものがどこかしらあったとしてもうまくカバーしていく、いろんな総合力があるわけですよ。それがなかなかうまく出せないということでしょうね。もしうまくいって本選にちゃんと出れて、組み合わせが一番好きな人とうまく当たっていく。これは一年で最初のオーストラリアオープンが命なんですね、選手は。本当に組み合わせがよくて、勝ち上がったら、これでえらい、一年間伸びていくっていうことがあるわけですよ。そういうことがあってほしいなと。今の状況ではちょっと、日本選手、厳しい況が続いていますね。
進藤:でも何が起こるかわからないのがテニスの世界ということで、全豪オープンテニス、いよいよ来週の1月19日、月曜日から開幕になります。WOWOWでは、全14日間
、150時間になるんですが、圧倒的なボリュームを生で放送していきます。今年はデイ・セッション、ナイト・セッションともにいずれも生放送で、一日たっぷりお届けできると思います。そして注目の決勝戦なんですが、女子が1月31日、男子が2月1日に生中継でお届けします。1月19日から、WOWOWでテニス漬けの毎日をどうぞ過ごしてください。ということで、ここまで皆さんにお話を伺ってきましたが、これからは質問コーナーと相成ります。個人的な、ここがうまくいかないんだけど、このテクニックはどうしたらいいですかみたいなことでもかまいません。いかがでしょうか。
客:よろしくお願いします。今の話のなかで、僕、ファン・カルロス・フェレロっていうスペインの選手が好きなんですけど、その話がほとんど出てこなかったんですけど。今年のフェレロはどうなんでしょうか。教えてください。
柳:フェレロのいわゆるレッドクレーですね。ヨーロッパで行われるレッドクレーのコートにおけるストロークは世界一でしょうね。間違いなく。ただし、そのレッドクレーのコートというのは、しっかり構えてしっかり打たなければいけない。ハードコードとはまた違って、流れのなかでボールを処理するのがなかなか難しいです。ということは、流れるテニス、スピードアップのテニスがショットの速さでは可能であっても、体の回転を伴った速さにはなかなかつながらない。つまり、USオープンに行っても、今ひとつ、勝てないところだろうと。とにかく自分のテニスが発揮できて、相手もそれに呼応してやったときに、いい形で発揮できる試合になれば、彼も十分に勝つ可能性はあります。ただ、今のUSオープンとかオーストラリアオープンとか見てみると、いい流れになるのは100%のうち50%はあっても、残り50%はわからないという状態が続いてますから、意外と伏兵に彼は涙を飲むことがあるんですね。決して弱いっていうわけじゃありません。クレーコートでは、私は一番強いと思ってます。
進藤:岩佐さんはどうですか。
岩佐:名前が挙がらなかったのは、たまたまだと思いますよ。っていうのは、名前を挙げるようなシチュエーションっていうのが。注目選手というのが一つあって、ここでフェレロはわざわざあげるっていう選手でもないわけですよね。もうすでにメジャーも取った選手ですから。優勝候補というところでも、チャンスがあったでしょうけど、全豪というサービスの問題もあって、名前が挙がらなかったと思います。フェレロのファンが、日本に非常に多いこと、特に女性に多いのは知ってます。
ダバディ:でも、モスキートは、蚊は、やっぱりモスキートだから名前があがってこなかったというのはあると思います。自己表現の足りないところとか。エンターティナーとしては、もう少し期待するところ。才能はもう、すばらしいですから、何でも持ってるし、そして人として、すごい楽しい若者だから。
進藤:そうなんですか。
ダバディ:どうですか、遠藤さん。ファンとの魔法を期待するというか。自己表現。
遠藤:実は、女子の選手のなかですごく人気があって。あの、あんまり英語でベラベラ話してくれないので、みんなと仲良くってわけじゃないんですけど、去年WOWOWのインタビューでもいろいろ答えてくれて。こういう一面も持ってるんだっていうのがあったので、逆にテニスの試合だけじゃなくって、そういう一面にも触れていければと思います。
進藤:女子のなかで人気があるんですか。
遠藤:人気がありますね。だって、かっこいいし。
岩佐:今、遠藤さんがおっしゃったインタビューもですね、フェレロは非常に人気のある選手ですから、WOWOWとしてもインタビューのリクエストを各大会で出すんですね。去年も受けてくれるはずだったんですけど、何回もドタキャンをくいましてね。カメラマンがセットをしたらダメ。セットしたらダメ。それが何日か続きましてね。もう、あいつは絶対に撮らないと。フランスに住んでいる日本のカメラマンでしたけど、最後の最後で彼は来てくれました。来てくれたら、非常にフレンドリーに話してくれて、よかったなと思うんですけど。言ってみれば、すごくシャイなんです。今でも、自分のコーチがやっているテニスアカデミーに住んでいて、しかも、今ツアー、ツアーっていうか、サテライトを回っている選手と相部屋で住んでいるそうですよ。
進藤:へえ。
岩佐:そういう意味では、何ていうか寂しがり屋だろうし、シャイだからそういうことになってしまうんだろうと思うんですけどね。英語があまり得意じゃないんで、インタビューを受けるのも、あんまり気が進まないのかもしれないね。
進藤:他にはいかがでしょうか。
客:あまりテニスの情報っていうのは、日本の新聞には出ないんですけれども、ちょっと聞いた話では、ラフター(パトリック、オーストラリア)選手が復帰したっていう。それで、全豪もダブルスで一応エントリーしてるって話を聞いたんですけど。
岩佐:正しい情報です。ただし、ダブルスだけです。彼は2002年、一昨年のデビス・カップが最後で引退したわけですけど、今年アデレードの大会ですでにジョシュ・イーグル(クイーンズランド)という選手と組んで、ダブルスに出ました。一回戦で負けました。アメリカのペアに、フルセットで負けました。ボレーをかなりミスしたらしく、こんなにボレーをミスした記憶はないと。恥ずかしいと言っていたそうです。シングルスについては、カムバックするつもりは全くないと言ってます。
客:2月に。
岩佐:ビランデル(マッツ、スウェーデン)とエキシビジョンマッチをやります。そのために、よくプロの選手はマッチプラクティスと言うんですけど、試合を通じて得るものは全然違うそうで。ダブルスでもやっておきたいという気持ちがあったんだろうと思います。ビランデルとのエキシビジョンマッチの売れ行きもすごいです。
客:岩佐さんの実況を、いつもすごく楽しみにしてるんですけど。選手のプレイベートなことですとか、例えばガールフレンドの名前ですとか、どこから調べてくるんだろうって。そのためだけでにいつもビデオ録って。
ダバディ:それはプロの秘密。
客:やっぱりインターネットとか。
岩佐:そうです。秘密があるわけじゃなくって、とにかくマメに見て回る。だから例えばガールフレンドの名前を見つけようと思って調べるわけじゃなくって、テニスに関する情報を探っているなかで、どっかにちょこっと書いてあるわけですよね。
柳:それは私から言いましょう。あんまり調べない方がいい。岩佐さんと仕事としてて、話をしてて、「あ、そうなんだ」って答えることが随分あるんです。岩佐さんから全部教えてもらうんです。その方がおもしろいって。どうやって調べてるんだろうって思わない方がいいですよ。本当によく知ってましてね、彼は。彼の話を聞くと、調べたうちのほんの一部しか、実は話していないそうです。普通のアナウンサーっていうのは、調べたら全部話したがる。ところが彼は一部を話して、あれだけおもしろいんです。それをもっともっと長く続けてほしいですから、全部しゃべってしまったらなくなるじゃないですか。
岩佐:今日の柳さん、いつもと全然違いますよ。
ダバディ:でも、初めて岩佐さんと全仏で一緒に仕事になってですね。それはやっぱりトップのジャーナリストとして、いつも出てます。ネタを集める意義感なのか、ジャーナリズムの神髄なのかわからないですけど。いちいちガールフレンドの名前とかは探してないっておっしゃっていますけど、探していると思うんですよ。
会場:笑い
進藤:そういうことにしておいて。ネタ元は秘密ということで。では、最後の質問です。
客:柳さんとダバディさんにお聞きしたいんですけれども。例えば、女子の選手だとビーナスとかウイリアムズ姉妹とか身体能力の高い選手が出てきて、今後男子の方で、例えばヨーロッパの方から、ヨーロッパはサッカーが盛んですから、サッカークラブの方でテニスの選手を養成してたりしますので、アフリカの方から引っ張ってきて、すごい選手が出てくるっていうような、21世紀の型の選手が出てくるっていうのはありますか。
ダバディ:それはすごいおもしろい質問。逆に改めて柳さん、遠藤さん、岩佐さんにお聞きしたいんですけど、もう、見事な指摘だと思うんですね。他のスポーツは、アメリカンスポーツに限らず、サッカーもそうですけれども、アフリカ出身の選手は、やっぱりすばらしいアスリートとしてドンドン出てきた。ヤニック・ノアはカメルーン出身で、フランスに行ったとか。アラジはずっとパリですけれども、モロッコ出身ですし、国籍はモロッコなんですけれども。どうですかね、スカウティングの問題ですかね。またそういうアフリカの選手。確かにトップ100には、女子も男子もいませんよね。
柳:私が若い頃世界を回っていて、アフリカの選手と一緒にツアーを回ったことがたくさんあるんですね。過去は、正直申しまして、イギリスが関係がありますね、アフリカのいろんな国に。イギリス人がテニスをやってて、それに付随して周りの人たちがやったという、そっから出てきた選手だけなんですね。国際的なトップ選手という意識を持ってないので、どちらかと言うと、試合もこう言ったら失礼ですけど、すぐ負けるといった状況。今おっしゃったように、これからはそんな時代ではないと思います。もう国家として基礎ができてきているわけですから。一つおもしろい質問で、商業主義って言ったら失礼ですけども、プロモーターが出てきて、いい選手をアメリカに連れていくっていうことがある。そういうことが起こり得る、たいへんおもしろい目のつけどころだと思いますね。
ダバディ:フランスのジュニアで今すごい注目、ソンガ(ジョー・フィールド)っていう選手がいるんですけど、彼は次のヤニック・ノア。スタイルは全然違うんですけど、ベースライナーなんですけど。彼も一応アフリカ出身で、ぎりぎりたぶん18歳になって、両親と一緒に移民してっていうことなんですけど。スカウティングの問題はあるでしょうけど、グローバルなスポーツであるテニスは、期待できるんでしょうか。どうですか。
岩佐:スカウティングっていう考え方はあんまり賛成じゃないですけどね。自然発生的って言うか、自然にそうなるならいいと思いますけど。ただ、たぶん僕の記憶が間違いなければ、グラーゴンもそうですよね、古くは。まあ、運動能力ってことからすれば、アフリカの人たちっていうのはものすごくあるだろうと思いますから、やればうまいでしょうけれども。例えば、強い選手を自分の国の選手にしたいからってスカウティングするっていうのは、何かテニスの、スポーツとしての在り方っていうのと相容れない気はしますね。
柳:アメリカのいわゆるブラックパワーと言われてますけども、彼らは水泳選手にはほとんどいないですよね。これは身体能力があるにも関わらず、出てきてないわけです。やっぱり環境だと思うんですね。そういう状況になったときに、今後出てくる可能性が十分ありますけれども。今岩佐さんがおっしゃったみたいに、スカウトし過ぎちゃって、要するにプロモーターっていうのが出てきちゃって、いろいろ探してしまっているわけですね。ちょっと商業主義に陥っちゃっている面も否定できないですね。
岩佐:アフリカの選手がスカウトされて出てくるっていう前に、ビーナス、セレナの姉妹から後がなかなか続かないんだけれども、まずアメリカで、アフロアメリカンって言われる人が、もっと出てくる時代がまずあるんじゃないかなって気がします。それから、それを見た世界中の人たちが、それを目指すって形が出てくるんじゃないかなと。
ダバディ:そうですね。その刺激はやっぱりアフロアメリカンの方々が、NBAバスケットボール、アメリカンフットボール、ベースボールをやる。ゴルフでタイガー・ウッズが出てきたこと、テニスでウイリアムズ姉妹が出てきた、その刺激。じゃあ、私もやっぱりやりたいと。テニスはもっと平等、友愛的なスポーツだと思うんですね。
遠藤:今おっしゃったのは、実はヤニック・ノアってそうなんですよね。アーサー・アッシュという人がアメリカに行って、スカウトして育てた選手ですから。
ダバディ:そうです。
遠藤:今女子の世界では、あるマネージメントグループが盛んにやってます。十歳ぐらいでアメリカのテニスアカデミーに連れてきて、特待生でお小遣いまであげて。クルニコワ(アンナ)とかはそうでしたけど、アフリカに限らず、これだけ商業主義が充満しているというか、いい面もあるかもしれないんですけど。あと、中国。大きな市場ですよね。他の文献を読んだときに目にしたんですけど、市場拡大という意味で、マネージメントグループだけでなくって、メーカーもそれをやっていくような話が出ていましたけれども。
進藤:はい。よろしいでしょうか。とういうことで、質問コーナーはこれにて終了とさせていただきたいと思います。長い間皆さまにも、そして今日ゲストにお越しくださいました皆さまにもお付き合いいただきましたが、ぜひとも全豪オープン、みんなでどっぷり浸かって楽しんじゃおうということで、最後に一言お願いしたいんですが。まずは岩佐さんからお願いします。
岩佐:2時間、私は大いに楽しみました。まだまだ話し足りないことはあるんですけれども、実は200名と聞いて、後ろに立っている顔見知りのスタッフが前の方に並ぶようなことにならなければいいがなと思ったんですけど、いっぱいなっていただいて、本当にうれしかったです。楽しい2時間でした。ありがとうございました。
会場:拍手
進藤:ありがとうございました。岩佐徹さんでした。そして遠藤愛さん。
遠藤:私自身もすごく自分を出してしまって恥ずかしいんですけれども、本当に楽しかったです。テニスって本当にいろんな面があるので、そこにも目を向けていただければと思います。これからもよろしくお願いします。
会場:拍手
進藤:遠藤愛さんでした。ありがとうございました。そして柳さん、お願いします。
柳:本当に自分の顔を出すのが恥ずかしくて困ったんですけど、2時間ここにさらしていたので、少し慣れました。今度から堂々と顔を出したいと思います。オーストラリアオープン、楽しんでください。よろしくお願いします。ありがとうございました。
会場:拍手
進藤:柳恵誌郎さんでした。そして、私もね、ダバディさんと14日間お伝えするんですけど。ダバディさん、お願いします。
ダバディ:今年っていうか、今回のトークバトルを通じて一番伝えたかったんですけど、このWOWOWチーム、岩佐さん、遠藤さん、柳さん、進藤さん、私もテニスを心から愛しています。それが一番、これから番組を通じて伝えたいと思います。全豪は特に特におもしろいので、オーストラリアから愛を込めて送ります。
会場:拍手
進藤:ありがとうございました。岩佐徹さん、遠藤愛さん、柳恵誌郎さん、そしてフローラン・ダバディさんでした。ありがとうございました。もう一度大きな拍手をお送りください。ありがとうございました。
会場:拍手
進藤:まだまだお伝えしたい要素があったんですけど。またこれはどこかでぜひ、次回。こぼれたところはお伝えしていきたいと思います。皆さんもまた、これに懲りずに足を運んでくださいね。皆さん、ありがとうございました。
会場:拍手

取材・文:CREW
撮影:新関雅士