青島:谷川さん、改めてあの試合の質というか、一体どんな試合だったのかっていうのを振り返ってみていかがですか。 谷川:横綱に声を掛けたときから試合が終わるまでが、すごい映画を見てるようなドラマだったので、感無量でしたね。どんな試合になるかわからなかったんですよ。本当に僕は紙一重だと思ってたので。先にパンチが当たった方が倒れるという。まあ、神様がね、どういう結末を描いてるんだろうなと。要するに,横綱が勝って子どもたちがリングに上がって感動的になるのか、それとももっと厳しい現実となるのか。あるいは凡戦になる可能性もあったと思うんですよ。お互いがヘロヘロになって、「なーんだ」っていう感じになっちゃうのかなっていう。でも僕はすごくいい、格闘技のリアルさが見えて、なおかつ横綱が本当に勇気を持って、厳しい思いをして、最後にはおもしろかったっていう物語を見せてもらったなっていう感じがしましたね。さすがやっぱり横綱ですね。これだけの濃いドラマを見せてくれるファイターっていうのはなかなかいないですね。普通の選手にはできない重さとか、何かアピールするものとか、いろいろなものが見えてくるんですよね。だからやっぱり、視聴率もよかったと思うんですよね。伝わるものがあったと思うんです。今回ばかりはね、ボブ・サップはけっこう悪役でしたね。 青島:でもその日、大晦日だったじゃないですか。眠れましたか。新年はどんなふうに迎えられたんですか。 曙:とりあえずですね、記者会見とか終わってから頭のスキャンをしまして。医者からあんまり寝ないようにしろって言われたんです。夜中3時ぐらいまで、子どもがはしゃいだりしていて。こっちは眠たくて体が痛くて。もう10トントラックに轢かれたような感じなのに、寝かせてくれないんですよ。全然もう、そのころはわからなくて。ハワイの友だちが何人か来ましたから、その人たちがみんな部屋に集まって、僕だけ水を飲みながら試合の話をしたりしてたんですけど。 青島:もう一つ、K-1ファイターになるときに言われたのが、子どもさんが相撲をやられているときは小さかったので、ぜひ戦う姿を見せたいんだっていうこともおっしゃっていましたよね。本当に目の前で戦うお父さんを見せたわけですけど、その辺はいかがでしたか。子どもさんの前で戦ってっていうのは。 曙:本当によかったですよ。これだけ好き勝手やってる男の人は、俺ぐらいしかいないんじゃないですか。 谷川:いいっすよね。まだ青春っていうか、戦っているっていう感じで。 青島:私もその気持ちはわかりますね。私も昔野球選手だったんですけどね、子どもはまだ小さかったですからね、彼らが大きくなったときには野球を辞めてましたんでね、そういう意味では。 曙:現役のときは、若いうちに結婚する人がいると、早いなって思ってましたけど。引退したら、もうちょっと早く結婚してたらって思うんですよね、子どもが小ちゃいから。 青島:うちももうお姉ちゃんは中学生ぐらいですけどね、小学校の低学年ぐらいのときに、こんな話で申し訳ないんですけど父親参観に行ったら、「あ、ビール飲んでるおじちゃんだ」とか言われましたね。 谷川:ああ。 青島:その頃、CMでスーパードライを毎日飲んでましたからね。 会場:笑い 曙:私もありました。うちの娘が幼稚園に行き始めたんですけど、お父さんは何をしてるかっていう質問で、娘は「うちのパパは、朝1時間ぐらいどっか仕事行って帰ってきて、家で一日中テレビ見てます」って。要するに、その1時間っていうのは、部屋に行って稽古を指導して、帰ってきて何もすることがなくて家でテレビを見ている。 青島:なるほど、なるほど。 曙:それを聞いたときに、これはダメだなと思いました。 青島:さあ、いろいろお話を伺ってきましたけども、本当に皆さん、静かに聞いていらっしゃいますけども、大丈夫ですかこんな感じで。ちょっとブレイクっていうわけじゃないですけど、試合の話を伺いましたので・・・私、詳しくは知らないんですけど、曙さん、落語家に何とかっていうニュースがありません? 曙:僕もびっくりしましたよ。 青島:こぶ平(林家)さんか何かに弟子入りするだとか。 谷川:え、そういう記事が出てたんですか。 曙:何でも出ますよ、今は。 青島:あれはどういうわけなんですか。 曙:あるわけないじゃないですか。何で落語家に。うちの家の前で記者が待ってて、全然言ってることがわからないですよ。「実はこんな噂があるんですよ」って言われて。 谷川:記者さんが。 青島:あんまり日本語が上手だから、もう噺家でも十分いけるかなと。 曙:蹴りをもらってから、だいぶ忘れてきましたよ(笑) 谷川:しゃべるのはうまいですよ。 青島:K-1では周りの方がやはり外国人の方というか、英語を使われたりっていうことがあったりですか。 曙:ボブ・サップさんから右ストレートをもらったじゃないですか。それで日本語が半分飛びましたよ。 青島:そうですか。ちょっと柔らかい話続きに、ピアスもされちゃって。このチェーンのネックレスもすごいですよ、曙っていう感じの。今日も革のジャケットだし。 谷川:髪の毛も染めましたよね。 青島:髪の毛も染めて。 曙:おかしいですか。 青島:いやいやいや、おかしくないですよ。谷川さんもちょっといい感じに髪を染められて。 谷川:これね、横綱が試合に行く前にちょうど髪の毛を染めに行かれたんですよ。で、僕そのときに打ち合わせに行ったんですよ。「曲はどうしますか」とかいろいろ細かいことを。隣で横綱が染めてて、僕もね、同じ色に染められちゃって。話しながら。 青島:同じ美容院? 谷川:そうです、そうです。 曙:そうですね。相撲時代ってこういうことできなかったですから。いっさい禁止されてるし。ピアスの場合はですね、高校のときから開いてましたから。ただ、相撲協会にいた頃は付けられなかったですね。僕はいいと思うんですよね。着物にピアス、なかなかしゃれてるでしょ。今は大変ですよ、精一杯おしゃれしとかないと。 青島:伺えば、靴もイタリア製の。 谷川:この間ハワイに行って、何か文字を入れてきたって。今日は見せてくれないけど、今度見せてくれるって、両腕に。 青島:タトゥーを。 谷川:でも、ハワイの人っていうか、サモアの人ってやるんですよね。 曙:ポリネシア系ですね。成人するときに入れるんですよ。周りはですね、兄弟も含めてみんな入れてました。いずれは入れたいなって思ってたんですけど、やっと成人になりました。 青島:でも、いいですね、似合いますよ。 曙:本当に、精一杯おしゃれしてますよ。 青島:さて、12月31日「Dynamate!!」のお話も伺いましたけど、これからについてちょっとまたいろいろと伺っていこうかと思いますけど。トレーニングは始められたんですか。 曙:トレーニングはですね、31日が終わって、1月4日からですね、再開しました。今はまだスパーリングとかはやってないんですけど、基礎体力、体作りに週6日ですね。 青島:もう本当にいろんな形で曙さんの話がスポーツ紙なり、ニュースでも載ってますけど。一つずっと言われているのは、減量を少しされるんじゃないか、あるいはした方がいいんではないかっていう話が出ているんですけど。この辺りはいかがですか。 曙:そうですね。言うのは簡単ですけど、なかなか落ちないんです。今、一生懸命1日2000キロカロリーに押さえるようにして、それ以上カロリーを燃やすような。 青島:やり方としては、言うのは簡単ですよね。摂取するエネルギーよりも多く消費すれば、体のなかのものを燃やすってことですけど。 谷川:2ヶ月ぐらい練習したじゃないですか、この間。やっぱりあんな激しい練習をしたら、体重が減るかなって思ったんですけど、減らなかったですよね。 曙:減らなかったです。 谷川:全部筋肉に変わってっちゃって。逆に重たくなった感じですよね。 曙:そうです。 青島:筋肉密度が上がって。 谷川:そうです。一気に落ちちゃうのかなと思ったんですけどね。けっこう、ボクシング系の動きって有酸素系の動きなんで、相撲みたいに筋肉が付く運動じゃないんで。それが逆に筋肉に全部変っちゃって、意外と落ちなかったんで。 青島:「曙、殺人マシーン肉体改造」とかね、170kg、180kgラインになったら、とんでもないさらに破壊力が増すっていう記事をいくつか読みましたけど。いかがですか、その辺。 谷川:僕は専門家じゃないんで、どこまでがベストかっていうのはわからないんですけど、たぶんみんなが言われているように、180 、190kgぐらいになった横綱っていうのは見てみたい。ただね、あのパワーは半端じゃないんで。ボブ・サップは体重、重いんですよ。170 、180kgある選手ですから。他のK-1ファイターは、100kgぐらいですから、僕はぶっ飛ばされると思いますね、ぶつかった瞬間に。ボブ・サップが160kgぐらいのときホーストにぶつかった。そうしたら、ホーストは伸びちゃって。体力だけで勝っちゃったことがあるんですけど。だからその体重をK-1のルールにどう生かしていくかっていうのは、これだけ大きな選手は今までいなかったのでわからないですね。何がいいのかっていうのは。 青島:なるほど。曙さん、ご自身の感覚的なものはいかがなんですか。もう少し絞りたいとか。 曙:もちろん絞りたいんですけど、先ほど言ったように、言うのは簡単ですけど、なるべ く絞れるだけ絞りたい。実際、体重計とかではなく見た目で、毎回毎回試合に出るたびに変ってきたなって言われるぐらいに。細かいことはあんまり気にせず。 谷川:量れる体重計ってあんまりないんですよね、わかんないんですよね。 曙:相撲協会に行けばいっぱいあるんですけどね、ちょっと行きづらいんです。 青島:200kgを超える体重って量れないですよね。 谷川:量れない。 青島:ちょっと変な質問ですけど、それ以上ない秤って壊れちゃうんですか。 曙:0まで戻っちゃうんですよ。 青島:1周して? あ、そっか。そっから先がないんですね。 谷川:ないんですね。 青島:目指すスタイルっていうのは。まだ1戦されただけですけどいかがですか。 曙:そうですね、12月31日に皆さんもご覧になったと思うんですけど、あれが曙のスタイルだと思いますよ、負けるところ以外は。打ち合ってですね、怖がらず前に出ることですね。それをやりながら技術力をつければいい方向に行くんじゃないかなと思うんですけど。それしかないんですよ。 青島:そこでまあ、気になるのがね、次は一体いつぐらいに誰と。 曙:次はね、さっき裏で話したんですけど、曙対谷川さん。 谷川:死んじゃいます。僕、一応ですね、試合の話はしたんです。春ぐらいにうまく。横綱の目標は、相撲時代の若・貴がライバルだったように、ボブ・サップともう一回やって倒したいという夢がありますんで、それまでに。いきなりやるよりは何回か経験した方がいいんで。K-1ファイター、どの選手もみんな強いですからね。その中からいく人かの選手とやりながら。ボブ・サップ戦も含めて、今度は絶対に勝ってもらいたいんで。本当に横綱と相談しながら、できるだけ早く、皆さんの前で発表できればなというふうにいろいろ考えてますんで。 青島:そうですか。その辺もトークバトルで聞けるんじゃないかと楽しみにしてらっしゃる方も多いんじゃないかと思いますけど。いつぐらいみたいっていうのは、おおよそで。 谷川:早く、返事をしてほしんですけどね。まあ本当に、近々、沖縄が終わった後ぐらいで。沖縄で今度、2月15日に「K-1 Japan」がありまして、そこで外国人チームの応援団長で。 青島:世界連合を率いてって形で。日本人は武蔵さんですけど。 谷川:それが終わった後に、発表したいなって思っていますけど。 青島:もし世界連合軍のガムリン(ステファン)さんですか、武蔵さんに負けたら曙さんが・・・ 谷川:武蔵選手もおもしろいと思うし、K-1のトップファイターってけっこうどの選手と戦っても、横綱とは夢の対決になるんですよ。アーネスト・ホースト対曙、ジェロム・レバンナ対曙とか。みんなどのカードも夢のカードになると思うんで、そのなかでボブ・サップに向けて、大きな選手と戦ってほしいし、逆に技の選手とも戦ってほしいし、速い選手とも戦ってほしいし、同じ体重のぶつかり合う試合も見たいし。 曙:もう、時間がないじゃないですか。 谷川:だから、いろんな経験を積んで、もう一回横綱に出てもらいたいなって気がします。 青島:曙さんはサップさんともう一度っていうのは言うまでもないでしょうけど、その他で戦ってみたい人っていうのはいかがですか。 曙:誰でしょう。とにかく今言ったような経験もしたいですけど、言う立場でもないですから。今年は全てサップさんへのリベンジのために置いてますけどね。それを成功してから、次の目標を立てたいなと思っていますけど。その裏には、マイク・タイソンとか。 青島:ねえ。 曙:やりたいっすね。 青島:タイソンさんもハワイから出てましたけど、不気味でしたね。谷川さんがいらっしゃるのでぜひ伺ってみましょう。タイソンさんの参戦っていうのは。 谷川:僕も夢ですから。ただ、日本には入れないみたいですけど。アメリカ本土とかハワイとかそういうところでね、実現するように。今月、関係者がアメリカに行ってタイソンと交渉する予定なんです。とにかく早めに決めたいなって。 青島:なるほど。実現に向けて動いているのは間違いないということで。 谷川:そうですね。本人もやる気はすごくあるんで。後はタイソン自体の周りの環境やら、もちろん他にもオファーは多いですからね。そういうのを整理して、決めたいなって思ってます。 青島:見てみたいですね。 谷川:信じられないですよね、横綱がボクシンググローブを付けて戦うっていうのは。 曙:おかしいですか。 谷川:いやいや、そんなことはないです。でも何か本当にあれですよね、相撲時代とは違う人気が出てきているんじゃないですか。 曙:今の方が人気があるんじゃないですか。 谷川:どうですか。 青島:前から人気がありますから。 曙:いやあ、そうでもないんですよ。力士のときはですね、いつも外国人はたぶん同じように見えるんでしょうね。武蔵丸さんだ、KONISHIKIさんだって。違うよ! 高見山さんとか呼ばれたことあります。 青島:アハハハ。 曙:まげないのに。 青島:せっかくですから、会場の方に聞いてみましょう。「昔から人気は変らないんじゃないか」と思う方、拍手をお願いできますか・・・けっこういらっしゃいます。 谷川:でも僕ね、今の人気はすごいと思いますよ。 青島:「昔から人気はあったんだけど、今K-1を始められて、もっと人気が出たぞ」と思う方・・・どっちが多いかわかりませんね。聞き方が悪かったかな、私の。でも、いいですよね。またこういうと誤解される言い方かもしれませんけど、チャーミングですよね。 曙:いやいや。 谷川:今、一番時の人だと思いますよ。テレビにもすごく出てますし。 曙:芸能人じゃないんで。 谷川:でも、本当に取材の依頼もすごく多いですし。 青島:今もね、外国のプレスのインタビューを楽屋で受けていらっしゃいましたし。ご自身、気持ちの上ではスカッとしましたか。 曙:スカッとしましたね。 青島:何がですか。 曙:全てですね。 青島:ハワイに戻られたばかりですけど、ハワイの方でもジムを建てられる構想があるらしいですけど。 曙:そうですね。今からK-1サイドとお話をして。私は相撲を通じてチャンスをもらいましたから、ぜひ若者にチャンスの場を作りたいんです。何人集まるかとか、お金とか、そういうようなところではなくて、本当に練習したくてですね、夢を追いかけたいような人に、ひとりでも多くチャンスの場を与えたい。それこそ初めて、真の横綱の意味が出てくると思います。 谷川:強い人、たくさんいますよ、本当に。ハワイには骨格から闘争本能から、格闘技向けの人が多いですよ。K-1でも例えばレイ・セフォーさんとかマーク・ハントさんとか。打たれ強いし、体は頑丈だし、センスあるし。 青島:谷川さんとしても、ぜひ曙さんにはハワイでジムをやってもらって。 谷川:そうですね。相撲部屋を継ぐっていう話もあったぐらいですから、後進を育てることには非常に興味があると思うんですよね。K-1界にも選手を送り込んで、相撲界にも送り込んで。ハワイの選手だったら、総合格闘技があるんですけど、そういうところの選手を送り込んだりとか。最近いないですもんね、ハワイ出身の相撲取りって。 曙:もう、武蔵丸さんが最後ですね。 青島:そうですね。 谷川:寂しいですよね。 青島:モンゴルの方はいらっしゃいますけどね。 曙:乗っ取られた。 青島:乗っ取られた! 曙:モンゴルに乗っ取られた。 青島:まあでも、私、ちょっと個人的な話なんですけど、大学でスポーツの話をさせていただいている授業があるんですよ。そこで年明け早々にね、学生の皆さんに聞いたんです。曙さんがね、k-1ファイターになられたと。このことについて、皆さんどう思いますかっていうんで、ざっくばらんにいろいろ話し合ったんですけど、本当にきれいに半分ずつでした。 谷川:何か一般紙でも、朝日新聞とか読売新聞でもその是か非かみたいなのやってましたね。 青島:本当にきれいに半分だったんですよ。で、やっぱりお相撲に留まってほしかったいう方々は、やっぱり横綱の経験と積み重ねてきたものをこれからのお相撲さんにぜひ何か還元してほしい。一方で、K-1に行って、その方が楽しみだっていう意見の人たちは、戦ったりだとか、何かできるんであれば、チャレンジすることはすごくいいことなんじゃないかっていうふうに意見がわかれたんですよね。最初に、曙さんのお話に出ましたけど、今リングに上がられて、K-1の成績で言うと1戦1敗というところで、キャリアを始められたばかりですけど。改めて伺いますけど、この道に踏み出されて、本当に今スッキリというところですか。 曙:スッキリですね。 青島:なぜ、それほど曙さんは戦うっていうことにこだわるのか。その辺はいかがですか。 曙:戦うだけではないんですよね。やはり皆さん勘違いされてるのが、相撲協会がもちろんあって、今の曙があるんですけど。僕の中ではですね、どっちもリスクを背負うと思うんですよね。というのは、協会に残るなら、横綱まで上がった人だから部屋付き親方っていうのは許されないんで、いずれは自分の部屋を開かなきゃならない。皆さんが言うのはお金のことなんですけど、ただでは部屋は開けない。もちろんそうですよね。それが一つのリスクですよね。部屋を開いたときに、弟子が集まるかどうか。それもまたリスク。弟子が集まったときに、高見盛みたいなのが出るのかっていう問題がある。それもまたリスク。で、かたやK-1っていうのものは、今まで協会でやってきたもの、積み重ねてきたものを置いといて、新しいものに挑戦するっていうのが、リスク。今まで積み重ねたものがなくなる。それをなるべくなくならないように、少ないようにして。あとはですね、ケガをしたら自分の責任ですよね。自分のなかで考えたときに、人の責任を背負うよりは、自分で責任を取って自分で行動した方が。次の世代になんとか伝えられるんじゃないかなと思って転向しました。もちろんその上に、戦うことが好きっていうのもプラスαとして付いてたんですね。だからもう、ただ今までやってた相撲協会にいて、次の力士にああやれこうやれっていう教え方をしてもよくないと思うし。どっちに行ってもリスクを背負うんです。なるべくリスクが少なくて、自分で責任が取れる方をやりたいなって思っていて、K-1に転向したんです。 谷川:曙さんのことを応援している人たちっていうのは、全てをなくして、新しいことに挑戦する姿に、チャレンジする姿に共鳴してる。本当にね、ずっと一生同じ会社で働く人って少ないと思うんで。そういう部分も、勇気とかチャレンジ精神とか見てると思うから。そこで拍手を送っていると思います。 青島:谷川さんにまとめていただきましたけど、もともと曙さんって、実はハワイからチャレンジャーとして海を越えてきたんですよね。最初に挑戦したものがお相撲で、横綱まで張られたけれども、基本的な最初にあった態度っていうのは、本当に体だけで日本にチャレンジに来たということを思い出すと、このK-1へのチャレンジっていうのもその延長線上にあることなのかなっていことで、私のなかではスッと落ちつくものがあったんですけどね。 曙:その通りです。しゃべりうまいですね。 会場:笑い 曙:そう言いたかったんです。 青島:ありがとうございます。ということで、あんまり余計なことは言わない方がいいな。そんな話、今日曙さんが語り尽くせない話がぎっしり詰まっていますので、あんまり言うとくどいですけど、ぜひお読みいただきたいと思います。さあ、時間も残りわずかになってしまいましたが、せっかくこれだけの方がいらっしゃっているので、会場の皆さんからも2つ、3つ、4つ、時間が許す限り、ぜひ曙さんにこういったことを聞きたいということで、質問を受けさせていただこうと思います。 谷川:何でも。 青島:それでは質問のある方。さっそく手を挙げていただきました。 客:曙選手、次またいずれリングに上がると思うんですけど、今度戦うときは、パンチなりキックなり、K-1には立ち技でさまざまな技があると思うんですけど、どれを武器として磨いていきたいと思われますか。 曙:とりあえず今一番必要なものはスタミナなんですけど、その後はディフェンスですね。この間の試合を見た通り、パンチ力を磨いていきたいですね。左、右、ストレートですね。もともと器用な方じゃないんで、とにかくディフェンスがちゃんとできるようになってから、パンチが打てるようにしたいなと思っています。 青島:いかがでしょう、よろしいですか。ありがとうございます。では次、目の前に座っていらっしゃる方。 客:わざわざ京都から見に来ました。 曙:おいでやす。 客:今K-1マットで、K-1ルールでやってはりますけど、総合ルールっていうのは興味あるかっていうのは。例えば谷川さんは勧めはるかとか。 谷川:僕は横綱がやりたいんであれば。横綱次第です。 曙:皆さんご存知のように、体が大きくてですね、たぶん体を絞らないと、なかなか総合格闘技とか難しいと思うんですよね。自分の勝手な意見なんですけど、やはりスーパーヘビー級っていうのは立ってですね、リングの真ん中で殴り合うのをファンの人は望んでいると思うんですよね。総合格闘技というものは、もう少しK-1で経験を積んでから、体を作ってからそういうような話が出てくれれば、谷川さんと相談します。 客:いずれはやるかもしれないと。 曙:たぶん、無理だと思うんですけどね。 客:いや、僕はいけはるかなと思うんですよ。 曙:見ててきつそうですよ。 客:京都から応援してますんで、頑張ってください。 曙:ありがとうございます。 青島:今日は京都からわざわざ。 客:のぞみで来ました。 青島:そうですか。ありがとうございます。さあ、次の方。 客:同じ外国人横綱として、朝青龍関の素行について、一言。 曙:まだ若いし、やはり横綱を辞めてからわかることって多いんですよね。今彼に何が必要かっていうのは、経験ですね。さっき話したように、横綱になると注意する人はいなくなるんです、自分の師匠でさえも。 青島:なるほど。 曙:うちの師匠は横綱になってもきつく注意してたんですけど、高砂親方っていうのは元々大関だし、言いにくいところもあるんですよね。本人が経験して、今書かれて、言われて、周りからですね。いずれ目が覚めますよね。こういうものは言っていいのかどうかわからないですけど、どんなに強い人、貴乃花親方にしても、北の湖理事長にしても、千代の富士(九重親方)さんにしても、どっかでつまづくところがあるんです。で、それがなんと言ってもケガですよね。ケガをするときに、一番わかるんですよ。どれだけ早く、お客さんが去って行くのか。自分でどれだけ責任を持ってやらなきゃいけないかとか。だから、そういうような経験も必要なんですよね。 青島:時間的にはまだ大丈夫ですか。続いての方、いかがでしょうか。 客:相撲の世界の場合ですと、例えば大関に昇進したり横綱に昇進したときに、決意の言葉を述べると思うんですが、今K-1ファイターとしての決意の言葉、心に秘めたる言葉があればぜひ、教えてほしいです。 谷川:横綱のときは何て言ったんですか。 曙:「慎んでお受けいたします」。 青島:谷川さん、いい質問ですね。 谷川:いい質問ですね。聞いてみたいですね。 曙:「横綱の地位を汚さぬよう」。 青島:ああ! 曙:「K‐1に精進いたします」。 会場:拍手 曙:今、自分の心の中で、好きな漢字っていうのがあるんですけど、忍耐の「忍」ですね。 青島:忍耐の「忍」。 曙:「忍ぶ」っていう字です。何をやっても自分自身を耐え忍ぶっていうか。必ず結果が出ますので、途中で諦めないで、どんなことがあっても耐え忍んで、最後までやり通すっていう。K-1もそうなんですけど、そういう決意でいます。 青島:ありがとうございました。私もこういう質問を曙さんにしたかったですね。ちょっと女性もいきたいですね。 客:先ほど減量の話などをされていたんですけど、現在どのぐらいの量を1日召し上がっているのかっていうことと、好きな食べものと嫌いな食べ物があれば教えてください。 青島:先ほど2000キロカロリーぐらいというお話がありましたけど、中身で言うとどんな感じの食事なんでしょう。 曙:えーと今日はですね、朝、目玉焼き3つとトースト1枚。昼間はですね、トレーニングが終わってから、プロテインシェイク2杯ですね。ちなみに358キロカロリー。夜はさっきの弁当ですね。 谷川:そんなに食べてないですね。 曙:それで終わりです。 青島:お弁当はなんですか。お肉かお魚かロールキャベツか、何にされましたか。 曙:僕のは全部入ってました。 青島:失礼! 特注のやつだったかな。 曙:でも今、弁当を食べてもちょっと残るくらいなんですよ。夜はなるべくご飯系統とかパン系統とか食べないようにしてるんです。まあ、頑張ります。 谷川:好きな食べ物は。 曙:好きな食べ物ですか。好きな食べ物はですね、刺身が大好き。ものすごい簡単なんです。刺身とご飯と漬物と味噌汁があれば、一日三食、それでも食べれます。 青島:ハワイ時代からお刺身は食べられたんですか。それとも日本に来てから。 曙:ハワイは同じ島じゃないですか。周りは海だし。 青島:じゃあ刺身は。 曙:OKです。ちなみに、かつおとまぐろの赤身が大好きです。あとはですね、嫌いな食べ物はですね、きんぴらごぼうです。筍とかにんじんとか、ああいう固いもの。 青島:にんじんおいしですよ、甘くて。 曙:あれは人間の食べるもんじゃないですね。 会場:笑い 青島:まあ、嫌いな方はね、何でもそう。 曙:あのしゃきしゃき感が。鳥肌立ちますよ。 青島:きんぴらごぼう、おいしですよ。納豆とか、そういうのは大丈夫なんですか。 曙:納豆は全然大丈夫です。性格に粘りが出るんで。 青島:そうですか。ということですんで、参考にしていただきたいと思います。さあ、まだいけますか。 客:試合前の精神集中には何を考えているんですか。 曙:試合前はですね、何を考えるというより、無理やり考えないんですよね。やっぱり試合のことは考えるんですけど。試合直前になると、これだけ相撲協会から応援されて、解説に貴乃花親方も来てましたけど、そういう人たちが期待してるからしっかりしなきゃいけないというのが一つ。先ほど言ったように、それだけみんなが応援してくれているのは目で見えるんで、リングに上がったときは、自分だけじゃないっていう思いが一つ。この二つを、試合の直前に考えましたね。 青島:何かスポーツをやってるの。 客:サッカーやってます。 青島:何年生。 客:中学2年です。 青島:試合の前とか何を考えたらいいのかなとか、いろいろ考えちゃうんだ。 客:はい。 青島:曙さん、あんまり余計なことは考えないようにっていうお話だけど。 曙:僕がやってるのはサッカーと全然違うんですけど、どうしても勝負が短いじゃないですか。だから考えてやると、一歩遅くなるんですよ。 青島:なるほど。 曙:だから体が反応するくらいの練習をして、ここまでどうやってきたか。自分は相撲のときそう思ってましたし、今でもそれを引き継いでいます。 青島:いざとなったら、いろいろ考えてたら相手に遅れを取っちゃうから、少し悩んだりするのは必要な部分がありますよね。 曙:そうですね。 青島:考えちゃうのはしょうがないけど、いざとなったら何も考えずに、思うがままに動いてみるっていう。 客:わかりました。 曙:頑張ってください。 青島:頑張ってよ、サッカー。もうお一方。 客:自分も相撲をやってるんですけど、すごく単純な質問で申し訳ないんですけど、相撲のぶつかり稽古とスパーリング、どちらがきついですか。 曙:みんなそう、聞くんですね。やはりどっちもきついです。相撲をやっておられる方は、相撲界の名物、ぶつかり稽古のことはよくわかってるし、ぶつかり稽古は本当にきついんですよね。ただぶつかり稽古の場合は、まあもちろん時間は長いんですけど、一発一発押してる時間が10秒、20秒っていう感じですよね。スパーリングは、3分、打ち続けるとかディフェンスを取るとか。だからやっぱりどっちがきついっていうより、慣れですね。やっぱり今度3分に慣れると、ぶつかり稽古をやれって言われたらイヤ。ぜひ、相撲頑張ってください。 客:ありがとうございました。 青島:大学でやってらっしゃるんですか。 客:はい。日本大学です。 曙:ぜひ、東関部屋お願いします。いい先輩、高見盛がいますから。 青島:まだまだ手が挙がっていますけど、質問の方はここまでとさせていただきます。楽しい時間も、あっという間にもうそろそろエンディングを迎えるということで。最後にですね、おふたりから一言いただいて、締めていきたいなと思いますので。それではまず、谷川さんから一言いただきたいなと思います。 谷川:今日はありがとうございます。2月15日に今年のk-1のシリーズが、今年は全部合わせると20ぐらいやると思うんですが、すごい忙しい毎日を送っているんですが、15日に沖縄で「k-1 Japan」の大会があり、そして2月24日に中量級の「Max」っていうのが代々木第二体育館であります。あと、「ワールドグランプリ」だとか、また、総合の大会とかいろいろやっていこうかなと思ってます。そして年末の「Dynamite!!」。そして東京ドームでの「K-1グランプリ」と、大きなイベントですね、先に言ったマイク・タイソンを含めて、夢のカードを実現したいと思いますんで、横綱のですね、去年の12月31日感動の試合を見せていただいたんですが、早ければ春にはぜひ第2戦目をやってもらって、どんどん試合をやってもらって、強くなっていただきたいなと思います。皆さんぜひ、K-1も横綱も、応援よろしくお願いいたします。 会場:拍手 青島:それでは曙さん、お願いします。 曙:僕の仕事は今K-1ファイターとして、毎日ジムに通ってます。谷川さんが言ったように、2月15日に沖縄大会がありますけど、そこで全員とりあえずケガがないような、そして見てる皆さんが感動するような試合をやると思いますので、熱い応援をよろしくお願いします。自分にとっては、まだまだ経験も少ないんで、いろんなことを大きくは言えないんですけど、谷川さんが言ったようにとにかく試合ごとに大きくなってですね、体重ではなくて、精神的にとか、K-1ファイターとして新しい曙を皆さんの前に見せられるよう頑張りますんで、熱い応援をよろしくお願いします。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。 会場:拍手 青島:それから今日は、この本の出版もありますね。どういう方に読んでいただきたいか、あるいはこの本を通じて皆さんに何を知っていただきたいか。戦うことも通じてですけれども、そこも一つ、うかがっておいてもよろしでしょうか。 曙:どういう方に読んでもらいたいかっていうのはもちろん、格闘技を応援している方ももちろん読んでもらいたいし、自分と同じように挑戦したいけどできないなっていう方々、これがちょっとでも後押しできればいいと思います。ぜひ、ひとりでも多くの方に読んでもらってですね、素直に何でK-1に転向したのかっていうものをここに全部書いてありますので、ぜひ読んでください。この間の僕の試合を見て、皆さん感動したって言うんですけど、僕も皆さんの前で戦えるっていうのはすごく感動しました。これからもこの本を通じで皆さんと感動したり、感動させたりしないなと思いますので、ぜひよろしくお願いします。 会場:拍手 青島:ありがとうございました。このトークバトルを振り返ってみて、心に残る話、たくさん伺いましたけども、一つ、このことはしっかり考えたいなって思ったのは、曙さんが戦って、あの試合負けたんですけどね、テレビでも映ってました、今日のお話のなかにもあったんですけど、負けたにも関わらず、帰ってくるときに「ワー楽しかった!」って、あるいはリングに上がって「ワー楽しい!」っておっしゃってたのがすごく残ります。結果は思うようなものではなかったのかもしれませんけど、戦いの渦中にいるとか、何かに働きかけているときっていうのは、どんなことでも楽しいんですよね。だから、何でしょう。皆さん、私もそうなんですけど、何にチャレンジするのかっていうのは人さまざまなんだろうと思うんですけども、やってるときが一番楽しいわけだから、自分も常に何かにファイトしていたい。そういう時間があるからこそ、楽しくなるとか、そんなことを。実際にリングに上がってはいないですけど、きっとどなたにとっても戦うものは必ずあるはずだから、それに向かっているときは楽しんじゃないかなと思いましたね。曙さんも最後におっしゃっていましたけども、挑戦するまでにちょっと悩んでる人たちがいっぱいいると。この本がきっと後押しになってくれると思います。皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。また、トークバトルはずっと続きますんで、引き続き、また来ていただいて。今日はありがとうございました。 会場:拍手 取材・文:CREW 撮影:田中秀宏 |
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