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後編


中西:昨日、平野孝選手(東京ヴェルディ1969) とご飯食べたんですけど。
福田:よく食べるね、いろんな人と。
会場:笑い
中西:今週はすごいですよ。木曜日に中村俊輔(イタリア・レッジーナ)君と一緒にご飯食べて。あ、望月選手(重良、ジェフ市原)と食べた。で、平野選手が言ってたんですけど、「ジュビロは最初、馴染めねえ」って。悪い意味じゃなくて要求されるものが高いから。彼は、最初ジュビロに馴染むまですごい苦しんだじゃないですか。平野孝のスタイルがあって、あそこに入っていかなきゃいけないんだけど、でもジュビロのサッカーは“あ・うん”の呼吸みたいなね。左サイドに張りついてるのが左のウイングバックじゃない。3-5-2 の5 じゃない。
藤田:悩んでたんだね、あいつ。
中西:彼は、けっこう悩むタイプだから。
藤田:あんまりそういう感じはしなかったよね。見せなかった。
中西:それは大岩剛(鹿島アントラーズ)選手も言ってました。ジュビロに入った当初「難しい」って。練習でもボールを出すときに右足で出すか左足で出すかって聞きに行くと、「何だよ」って言われるんでしょ。
藤田:結構イヤだなって思うのが、ボール回してる間にさ、みんながこうやろうっていうときに一箇所だけずれると、みんな「アッ」って言うときがある。
会場:笑い
藤田:自分がなっちゃうと「やべっ」って。例えばみんながバッーてプレスに行ってるときに、ちょっと遅れちゃうときがあるの。自分のところでやられちゃうと、何も言わないんだけど「アッ」とか「エッ」みたいなさ空気がさ。俺だけわかってなかったんだって思われるのが恥ずかしい瞬間はあるよね。それはすごくイヤだよね。別に全員気にしないんだけど、当事者は気になっちゃうんだよね。自分でも気になるから。
中西:でも他の選手は何も言われない。
藤田:でも、思いっきりわかってんだよなって。
中西:みんな本当にサッカー知ってますからね。
藤田:ここしかほつれはないよっていうのが、みんなわかるんですね。
中西:みんな、言わないんですか?
藤田:あとで言うけどそのときはね。
中西:藤田さんはずっとジュビロにしかいないから。
藤田:海外行ったよ。
中西:海外は行ったけど、日本の他のJ リーグの練習、あまり見たことないでしょ。自分たちがやってる練習のハードルって高いと思いますか。
藤田:いや全然思わない。比較できないからそう思うのかもしれないけど。
中西:僕、練習を見たときに思いましたよ。「うわ、違うわ!」って。
藤田:全くそんなことは思わない。普通かな。要求は確かにするけど。要求しなかったらどんな練習になるのっていう。
福田:質問が悪いよ。な、練習だもん。
藤田:それぐらいにやっていった方が自分たちのためだし。レベルアップになる。
中西:そりゃジュビロは強いですよ。
藤田:基準は僕じゃないよ。ドゥンガ(ジュビロ磐田テクニカルアドバイザー)がいたら言うし、ハットも言ってくれるし、中山さんも言う。言う人が多いから。自分のミスもあるけど、人のミスにも厳しいみたいなさ。そしたら自分に責任が出てくるでしょ。
中西:人に言ったら自分もミスできない、みたいな。
藤田:そうそう。自分もミスするけど人のミスも指摘すると、次、自分のミスはもっと周りも指摘するんだろうなって思うと、次は失敗できないとか。もっともっとやらなきゃいけないことがあるって。プレッシャーの掛け合い。それで潰されたら終わり。へこんだら負け。
福田:それは若い選手はきついよね。でもそれぐらいじゃなきゃいけないってことだよね。
藤田:でも、イヤな雰囲気じゃないんだから。
中西:練習が終わったらきれいさっぱりスパッと。
藤田:全然忘れる。でも言われた人はやっぱ忘れないよな。言った人は忘れるけどね。
中西:へこんでるよ。成岡(翔)選手は大丈夫ですか。
藤田:タフだよ、みんな。
中西:最近の若い選手、前田選手あたりは?
藤田:タフ、タフ。それぞれうまくいかないって言ってることはあるけど、基本的にタフだから。まあ、負けたら潰れる。
中西:藤田さんがそう思ってるだけじゃないですか。
藤田:タフ、タフ。タフだよみんな。
中西:僕らが入った時代の選手と、今の選手は違いますか。
藤田:僕らが入ったっていうと?
中西:藤田さんがJ リーグに入ったときと、今の若い選手っていうのは。
藤田:基本的にレベルが違う。いい選手いるよ。今入ってくる選手の方がすぐJ リーグに出れるレベルの選手が多い。10年、11年経ってるでしょ。今思えば最初入ったときすごいメンバーだったと思うもん。
中西:例えば。
藤田:え、言えないよ。「J リーグで出てたの」みたいな。
中西:僕に向かって言わないで下さいよ。
藤田:いやいや。だから時代が違うってこと。
中西:僕も自分で考えててよくやってたなって思います。たぶんあのときじゃなかったらプロになれなかった。
藤田:そんなことないよ。そんなことは言えない。
会場:笑い
中西:全然フォローになってない。中学生の頃から一緒にやってんですよ。東海選抜で俊哉が中3 で僕高2 だった。僕、2 つ上なんですけど、そのときに藤田さんは既に異様にうまかったですもんね。「何だ、コイツ」っていうぐらい。
藤田:でもその大会で優秀選手に入ったのは哲生さんだから。
福田:俊哉はどうだったの?
藤田:いや全く。
中西:でも藤田さんは中3 で出てバンバン点取ってたんですよ。当時すごいちっちゃかったんだよね。
藤田:うん。
中西:トラップはうまくて、点を取りまくってて。僕は高2 だから体も大きくて。
藤田:弟も優秀選手。
福田:あ、弟いるの。
藤田:僕と同い歳。中西兄弟恐るべしって思った。
福田:有名だったの?
藤田:有名、有名。
中西:有名じゃない。藤田さんの方が全然有名。それでうちの弟が選ばれて、何で藤田さんじゃないんだろうって。
藤田:俺の中じゃ残ってるわけ、何で選ばれねえんだよって。ジュニアユースも外されて。
福田:根に持ってるだろ。
藤田:一応バルセロナオリンピックの予選も外されて。結構俺、外されてんだよ。バルセロナは最終予選になって横山(謙三、元日本代表監督)さんが監督になって。そしたら入ってなかった。
中西:澤登(正朗、清水エスパルス)さんとか。
藤田:澤登さんとかがいて。
中西:で、そのときに藤田さんがギリギリで落ちた。だからあんまり代表はね。
藤田:あんまり行ってない。福田さんは何試合ぐらい行ったの?
福田:45試合。
藤田:45試合って言ったら、けっこう出てるよ。
福田:自分のこと言われると、ちょっと照れ臭いな。
藤田:得点王も取ってるしね。
福田:いいよ、俺の話は。
中西:J リーグ通算91得点で。
藤田:今、一緒だ。
福田:V ゴールも一緒なんだよな。8 回か9 回。
藤田:抜かれることはないね。
中西:いいっすね、その記録。
福田:いいだろ。
中西:はい。でも僕も記録持ってますからね。ベンチからの退場。
会場:笑い
中西:史上初。世界初。その後はありますよ。
福田:うそ~。
中西:ヴェルディの平本(一樹)選手。
藤田:次の試合はやっぱり。
中西:出場停止。
福田:試合も出てないのに、次の試合出られないなんてな。それはどうかと思うよね。
藤田:相手のチームのミーティングで「次の試合、中西は出られないから」とか言われてたんだろうね。
中西:たぶん言われてるはず。当時、途中から出てくる人だったから、僕。僕と森山(泰行、元名古屋グランパス)が。勝ってれば僕が出るし負けてれば森山が出るし。僕、もう一個記録持ってますよ。途中出場3 試合連続ゴール。
藤田:ちょっといいじゃん。
中西:一瞬すごそうに思えるでしょ。でも普通、途中から試合出て点取ったら、次の試合はスタメンなんですよ。
藤田:でも3 試合連続途中出場ゴールはすごいよ。
中西:でも僕が点を取るとは思わずに使ったら、たまたま点取っちゃった。全部ピクシー(ドラガン・ストイコビッチ、セルビア・モンテネグロサッカー協会会長)が蹴ったボール、触れば入るみたいな。それで3 試合連続点取って、次4 試合だなって思ったらスタメンだった。
福田:やっぱ取れなかった。
中西:取れなかった。で、何でスタメンなのかって思ったら、浅野(哲也、サッカー解説者)さんが怪我してた。すみませんこんな話しちゃって。話戻ります。代表の話ですけど、ずっと選ばれてなかったっていう質問があるんですけど。代表に選ばれてどうですか。久しぶりに選ばれたとき。トルシエ(フィリップ、カタール代表監督)のときにちょっと選ばれたじゃない。
藤田:自分の中では久しぶりに選ばれたっていう感じはないんだけど。ちょくちょく行ってたんだけど、試合に出られなかったって感じだから。
中西:忘れもしない2001年のコンフェデレーションズカップ。一度も試合に出てない。電話で話したでしょ。「俺だけ出られなかったけど、でも大丈夫だよ」って。
藤田:出れなかったね。
福田:辛かったでしょ。
藤田:そういうとこ好きだよね。
会場:笑い
福田:トルシエ、そのときは・・・
藤田:結構トルシエは「おまえがスタメンだ」って言ってても、「あれ、名前ないじゃん」ってことがあったり、「次の試合、おまえで行く」って言ってたけどなかったり。
福田:コンフェデのときもそう言われてたの。
藤田:コンフェデのときも俺の中で3 試合ぐらい出たつもりでいるからね。
福田:あ、それでサバサバしてたんだ。自分の気持ちの中で3 試合出たと思ってるから。
藤田:だって言うんだもん。
福田:言わなきゃいいじゃんなあ。
藤田:そう。だから「何でかなあ」みたいな。「気持ちが切れちゃうと思われたのかなあ」って。
中西:嘘つきじゃないですか。
藤田:練習でミスっちゃったのかなとか、イメージと違っちゃったのかなって。
福田:すごい前向きだよね、捉え方がね。
藤田:後ろ向きでどうするの。
福田:「嘘つきやがって」って思うよな。結構選手としてきついね。
藤田:だって前の日の練習で、セットプレーとか守備とかに入ってんだよ、スタメン組で。コーナーキックのニアでどうこうしろとかさ。
福田:その守備が悪かったのかな。
藤田:だから、そういう話になるでしょ。
福田:そうだよなあ。
藤田:コーナーキックを蹴ったりしてたときもあるんだから。
福田:試合の当日、発表されるんでしょ。
藤田:そう。
福田:じゃあ、夜寝るまでは、もう出る気で。
藤田:いや、ミーティングの前まで。
中西:直前まで!
藤田:いつ俺の名前がくるんだろうなって。
中西:名前言うんだよね、確か。
藤田:「11人いるじゃん、え?」って。「俺は?」。
福田:そのとき質問しなきゃ、手挙げて。「すみませーん!」。そのぐらいやんなきゃダメだよ。質問すればトルシエもたぶん「あ、そうか」なんて。
会場:笑い
中西:「あー忘れてた、忘れてた」って。
藤田:やっぱそういうところで言わなきゃダメなんだよね。
中西:言わない方がいいでしょ。言わないよ普通。でも説明ないんですか。
藤田:説明はないよ。する必要ないでしょ、基本的には。監督がひとりひとりに説明したら時間ないじゃん。だって、何人の選手に「次は出られないから」、「次は出るから」って言わなきゃいけないの。
中西:出るって言った人ぐらいには。
藤田:トルシエは「本気にするなよ」って感じじゃないの。
中西:捉え方、めちゃくちゃ前向きですね。
福田:プロフェッショナルなんでしょう。
中西:僕は・・・
福田:アマ。J リーグの初年度じゃないとプロになってないんだからアマだよ。自分で言ってたじゃない。
会場:笑い
中西:確かに。人が足んなかったから入ったようなもんです。絶対にそう。
福田:テンション下げるな。
中西:はい、わかりました。で、ジーコ(日本代表監督)になって、再び呼ばれたじゃないですか。今度は試合に出たわけですけど、そのときは前もって「出るぞ」って言われてたんですか。
藤田:言われない、そのときは。
中西:一番最初、どこでしたっけ。
藤田:チュニジア(‘03年10月8日チュニス、日本1-0チュニジア)。
中西:どうでしたか。
藤田:緊張しましたよ。何年ぶりかなって思い出しながらやってたら終わっちゃった。
会場:笑い
藤田:時間、短いからさ。ほんの10分ぐらいじゃないかな。
福田:10分間ずーっと考えてたの。「あれ~いつだったかな~」って。
藤田:そしたら、ピピーッて。
福田:何だよそれ。
藤田:あんまりボールに触れなかったし。
中西:ルーマニア(‘03年10月11日ブカレスト、日本1-1ルーマニア)は出られなかった。その次出たのはいつですか。
藤田:その次はカメルーン戦(‘03年11月19日大分スポーツ公園総合競技場ビックアイ、日本0-0カメルーン)じゃないかな、ホームの。
福田:よかったよね、その試合。よかったでしょ先発で。
藤田:そのとき怪我してたの。肋骨が。
福田:本当? でもよかったよ。
藤田:怪我してクラブでやってなかったんだけど、久しぶりにサッカーして意外によかった。
福田:よかったよ。
中西:グラウンド悪いけど、藤田さんはトラップうまいからボールがちゃんと収まってたんですよ。ピタピタ止まってた。「うまいな~、海外はもっとピッチが悪かったのかな~」って。
藤田:悪いところもあるけど、みんなが言ってるほど悪くないよ。
福田:途中で代わっちゃったんだ。もうちょっとやりたかったって言ってたから、やらせりゃいいのにって。そのぐらい調子よかった。何で代えちゃうのかなって。肋骨の怪我のせい?
藤田:いや、そういうのはなかったけど。あれは監督が時間、考えてたんじゃないかな。
福田:もう十分だと。みんな出すって感じかな。
藤田:その後の試合出られなかったよ。
福田:そういうこと言わない。
藤田:その次は、東アジア選手権(‘03年12月10日横浜国際競技場、日本0-0韓国)。ヨーロッパ組は俺しか帰ってこなかった。
中西:そうそう。
藤田:結構日程きついけど、ここで帰らないとチャンスないかなって。で、帰ったら次の試合はリズムがいいからって、俺はベンチから。何のために帰ってきたんだよ、こんなに日程きついのにって。
中西:僕も思いました。藤田さんスタメンじゃないのって。
藤田:ちょっと帰って来ちゃって俺、恥ずかしいなって。
中西:で、後半から出て、大活躍。
藤田:後半から。退場したのかな。
中西:大久保(嘉人、セレッソ大阪)選手が退場して。
藤田:あ、大久保。
中西:で、本山(雅志、鹿島アントラーズ)選手とセットで出て。ひとり少ないのに大活躍。
福田:そうだよ。退場してなかったら出てなかったよ。
会場:笑い
藤田:マジでそう思う。
福田:だからある意味、大久保に感謝しないと。
藤田:嘉人に感謝だね。
福田:あのシュミレーションには感謝だよ、本当。だから一緒に飯食いに行った方がいいよ。中西に電話して予約取ってもらって。
中西:僕が場所取るんですか。ところでワールドカップ予選が始まって、やっぱり違う感じがする?
藤田:予選・・・いや、予選に出るのは初めてだから。予選っていうのはどういう雰囲気でやるものなのかっていうのはこれからわかってくるんだろうなって感じで。まだ本当の厳しさじゃない。
中西:でも、厳しい試合が続いてるじゃないですか。
藤田:自分たちで厳しくしちゃってるのかもしれないし。この間の7-0(‘04年6月9日埼玉スタジアム2002、日本-インド)で勝てる相手だから、あれぐらいの試合を本当は1次予選ならできると思う。ただまあそんなことを言っても、必ず勝てるっていう保証はないから。今のところの結果では全部勝ってるからね。内容的にはもっと詰めなきゃいけない部分はあるけど、一応3 勝したから。
中西:でも、オマーン戦のときは焦りませんでしたか。
藤田:焦るっていうか、予選って難しいのかなって思って。チームも思いっきりうまくいってないし、どうかなって思ったときに、最後に久保(竜彦、横浜F.マリノス) が決めて。ベンチにいてもかなり嬉しかったよ。
中西:チームの中はどういう感じだったんですか。
藤田:悪くないっすよ全然。雰囲気もいいし。
中西:それはいつも言ってますよね。
藤田:コミュニケーションが足りないとかいろいろ言われてるけど、決して足りなくもないし。最初に入ったチュニジアのときは、まだいろんなばらつきはあったけど。
中西:今はすごくいい雰囲気なんですか。
藤田:予選はこれからが難しくなるから。そういうことを経験した福田さんはいろいろわかるんじゃないかなって。
福田:俊哉も言ってたけど、そんな簡単に勝てるゲームはないだろうから厳しいんじゃないの。きっとトルシエからジーコに代わって、何ていうかな、ジーコが監督だからみんなを楽しませてくれるようなゲームを期待しちゃってると思うんだよね。すっごくいいものを期待してるんだけど、俊哉が言ったように、内容がついてきてないってことには、なかなか満足できない部分があるような気がするけど。確かに内容でかなり苦戦してるけど、予選はそう簡単にはいかないだろうから。
中西:苦しめと。先輩からの助言で。
福田:うん。すんなりいったらつまらんと。成長がなくなるから。苦しんで勝ち取ったときに、そこから大きなものが得られると思うから。最後は成功しなきゃダメだよ。苦しんで終わっちゃったら、浦和レッズだよ。やっぱりジュビロにならないと。勝者にならんといかんよ。
中西:「シンガポール戦では『早く俺を出せ』と思っていた」に「no」なんですけど。
藤田:別にそんなこと思ってないよ。しかも途中から入るのに慣れてないから、だったら最初から出たいなって感じ。
福田:かっこいいな、おい。
藤田:だって途中から入って、あんまりうまくやる自信なかったから。
中西:ないの?
藤田:途中から入ると疲れない?
中西:僕、途中からばっかり出てたから。
藤田:途中から入るっていうのは難しいですよ。
福田:リズムに乗れないのよ。これは性格もあるんだよ。俊哉は90分間試合をやってどういう仕事をするかっていう選手だと思うから。難しいと思う。特に中盤だったりするから。ディフェンダーとかフォワードとか仕事がはっきりしてるから、まだやりやすいけど。どちらかと言うと、チームのリズムでやっていくタイプでしょ。それで自分の力を発揮するから、途中から流れに乗っていくのは難しいんじゃないかな。でもその割には途中から入って、大きな仕事やってくれたよね。
中西:そう。でもこの間、話をしてたんですけど、最初のチャンスに。
藤田:あれ外したときに「まずいな」って思った。「やっちゃったかな」って。
中西:思った。
藤田:もうないのかな。こんなチャンス逸しちゃうなんて。でももう一回ぐらいあんじゃねえかなって。代表は力むなあって思って。「大舞台なんだな、これは」みたいな。
中西:で、その後また来たじゃないですか、ボール。
藤田:うん。あれぐらいに余裕のない方が、逆によかったのかな。間に合うか間に合わないかわからないぐらいで走っていって、ドンッと蹴る。
中西:その前のは結構余裕があって。
藤田:余裕があり過ぎて。途中から入って体が緊張してたんだと思う。3-1 ぐらいで勝ってる試合だったらスコーンと入ったと思うけど。緊張してんだなって。
中西:で、その次、決まったときはどうなの?
藤田:まだまだいけると思った。まだまだ俺の運はあるぜって思った。そういうもんだよ、すごい繊細なんだからさ。
中西:僕は見ていて決めたのが藤田さんだったから「よっし!」っていう。やっぱり出てほしいし、代表で。最初に外したときやっぱ藤田さんはツキがないのかも・・・って。
藤田:結構そう思う人っているもんね、ああいうときね。
中西:そう。で、次来たときよく浮かさなかったね、あのボール。
藤田:いやあ、もうギリギリ。あのタイミングでしか蹴れなかった。
中西:そのあと面白かったのが、ガッツポーツしようかどうか迷ったって言ってた。
藤田:いや、だって余裕で勝てると思ってる相手に対して、どれぐらい喜んでいいのかわからなかったから。
中西:僕はすごく喜びましたよ。
藤田:あれがフランスワールドカップ最終予選(’97年11月16日ジョホールバール、日本3-2イラン)の岡野(雅行、浦和レッズ)みたいなゴールだったらさぁ。
会場:笑い
藤田:だったらもうちょっと喜びたいけど。2 試合目だしなって。そういうのも一瞬で考えちゃうんだよね。
中西:頭がいいからですよ。
福田:そんなの考えないもん。ジュビロのサッカーは感覚でやってるのに、何でそういうところ考えるのさ。
藤田:俺は裏腹なんだよ。
福田:かっこいいね、裏腹だって。もっと喜びなさい。
藤田:いやだから、もっと喜びたかったってことなの。個人的にはかなりうれしいんだけど、周り的に見たら、「ただの1 点 じゃねえか」って。
福田:そんなことないよ。そんな冷めてないよ。
中西:ジーコ監督、めちゃめちゃ喜んでたよ。
藤田:ブラジル人の監督って、ゴールしたとき喜ばないと怒るんですよ。みんなで喜べって。何でみんなで喜ばないんだって。
中西:喜ぶ練習とかさせられたんですよ。嘘だと思ってるでしょ。フロンターレ(川崎フロンターレ)のときの監督がミニゲームで点取ったら、絶対全員で喜べって。喜ばないと1 点にしねーぞって言われて。何で点取ったのに喜ばないんだって。一回僕、一番後ろにいてゴールキーパーと話をしてたんです、ずっと。そしたら次の日干された。
福田:それ、大切なことよ。だって今、俺の話するけど、子供たちにサッカー教えてるでしょ。そういうルールにしてるもん。ゲームやって喜ばないとノーゴールだから。
藤田:だから喜ぶ要素はあるの、俺にも。でもそのバランスを考えちゃうの。どのくらいがいいのかなって。
福田:ちょうどよかったよ。
中西:僕はもっと喜んでほしかった。でも藤田さんが拳を下にしたときは、本気で喜んでるとき。
藤田:わかりやすいなあ。
福田:下ね、下。
中西:6 月26日の2 点目とかね。
藤田:あれはうれしかったね、久しぶりに。
中西:下向きにやったときはそうなんです。僕の統計から言うと。
福田:それは計算してるわけでしょ、下向きにやろうって。
藤田:素で出る表現が一番うれしいって。
福田:決まってないでしょ、ゴール後のガッツポーズは。
藤田:いつ決めるかわかんないしさ。ロド(ロドリゴ・グラウ、ジュビロ磐田)みたいに準備はできないですよ。今日は何だろうって思うんだけど、わかんないんだよあいつ。
中西:6 月26日は覆面してましたけど。
藤田:あんま見てないけど。
中西:ダイビングヘッドした後、覆面して。
藤田:あれ、電話みたいなのは。
中西:あれは2点目。
藤田:あんまり興味がない・・・ことはない。
中西:仲悪いの?
藤田:いやいや。全然いいよ。だけど支度してるところは見たことない。
中西:支度してるところ、僕は見たい。どこに入れてるんだろう、鯉のぼりとか。
藤田:ね。だけど洗濯係から上がってきてるところまでは見えるわけ。ユニフォームが並べてあるところに、洗濯ものが来てるわけよ。「今日はこれでいくんだな、こいつは」っていうのはあるんだけど、仕込みがわかんない。
福田:物はわかってるわけだな。
藤田:ユニフォームがロッカーに入ってるでしょ、アイテムはわかるわけ。
藤田:今日はこれなんだって。
福田:どんな顔して仕込んでんだろ。
藤田:トイレでやってんだよ。
中西:そうなんだ。話は戻りますけど、今度代表はアジアカップがありますが。
藤田:まずは発表があるから、選ばれるかどうか。まあ、いけるだろうって思ってるんだけど、一応外れる選手もいるわけだから。
中西:ドキドキする?
藤田:するね、やっぱり。
中西:土田(晃之、タレント)さんはいつも選ばれるかどうかドキドキしてるらしいですけど。「俺、選ばれるんじゃねえの」って。
藤田:えっ誰?誰?
中西:U-turnの土田君がね、お笑いの。
藤田:ああ、ああ。
中西:選ばれたらどうしようって思ってるらしいです。土田さんとは違うと思うけど選手もそういう気持ちですか。選ばれるっていうのは。
藤田:確実じゃないものにコメントはできないっていうのはあるでしょ。今度はこうやってプレーしたいって言っといて、メンバー入ってなかったらねぇ。
中西:僕は、名波選手がね。
藤田:名波は行かないでしょ。名波は辞退。
中西:本当ですか。
藤田:膝が悪いから。行きたいんだけど休まないと。
中西:僕は某番組で2 、3 回言ったんです。怒ってるかな。日本代表の中で、名波、藤田コンビ見たいですけどね。
会場:拍手
藤田:ふたりとも入ったとしても、試合に出なきゃしょうがないからさ。
福田:そんな弱気なことを。
藤田:強気もあるけど、弱気もある。
福田:みんなそうじゃない。
藤田:裏腹。
福田:同居してんだよ。
中西:ここから質問タイムにいかせていただきたいと思います。質問のある方は挙手して下さい。
客:ジュビロではいいサッカーをして勝つのが一番いいと思うんですけど、いいサッカーをして負けた試合と、あまりよくないサッカーをして勝てた試合と、どっちが気分がいいというか、チームの雰囲気はいいですか。
藤田:それは勝ったときですよ、間違いなく。内容が悪くて勝ったときと、内容がよくて負けたときは、次の試合までの気分がね。いくら悪くても勝つと上がってる気がするんだけど。負けはよくないですね。結果があって内容がある。これが一番理想です。
中西:よろしいでしょうか。では次の方。
客:ジュビロの今のフォーメーションのことなんですけれども、特に後半の立ち上がりなど、選手は自分のポジションにつきますよね。そのときここ数試合、俊哉選手の位置がハーフラインに近い、フォワードに近いところにいるなっていう印象を受けたんですが。何か意図があってのことなんですか?
藤田:後半始まるときにいるポジションがですか、それともプレーをしてるときですか。
客:後半が始まるときにつくポジションです。
藤田:それは、基本的にゲームが始まったときに、僕の方にボールは来ないことががわかってるときとか。まあ、どこにポジションを取るっていう決まりはないので、もし外にポジションを取った方が効果的であれば、直した方がいいと思いますし。まあスタート地点なので個人的には気にしてないんですけど。
中西:6 月26日もサイドが代わってたじゃないですか。前半部分と後半部分と。
藤田:たまには代わるけど。
中西:あれは意図的に代わってるんですか?
藤田:26日は流れの中でしか代わりませんでしたけど。後半は山西がボールを持ったときに外にポジションをとらないで、わざと中に入って、山西がフリーになるようにしろっていう指示があったから、少しそれが多かったですね。
中西:それでは、次?
客:ユトレヒト(オランダ)にいたとき、一番楽しかったというか、思い出に残ってることを教えてください。
中西:いい質問ですね。
藤田:試合で一番楽しかったのは、一試合目かな。ピークは僕、あそこにあったような気がしてならないんです。そっから落ちたっていうか。向こうに行って4 日か5 日ぐらいで開幕戦に出たんですけど、そのときがすごい気持ち的にもフレッシュで、開幕戦で新人みたいな。すげードキドキしながら。4 、5 日だとチームメイトの名前も覚えきれなかったから。すごい感覚でサッカーした割には自分の中でうまくできたから。あのときが一番楽しかったかな。サッカーだけ言ったら。
中西:プライベートは?
藤田:あ、プライベート。楽しかったね、いろいろ。旅行で行くのと生活するのはこんなにも違うものなのかって思った。車を運転して練習場に行くのもまず道を覚えないといけないし。で、例えば渋滞したらどの道を通ったらいいのかっていうのがあるし。今だったら、グラウンドに行って普通にサッカーやれるでしょ。向こうに行ったら、それまでに準備しなきゃいけないことがたくさんあり過ぎて。結構疲れちゃったよね。海外で普通にサッカーするのがどれだけ難しいのかっていうのは思った。でも、生活は楽しい。
福田:ユトレヒトって田舎なの? 日本でいうとどの辺りになるの?
藤田:ユトレヒトって田舎じゃないですよ。オランダ4 番目の都市だから。でも、僕が住んでたのはアムステルダムなんだよ。
福田:あ、そうなんだ。いいとこなのかな。
藤田:すごいいいとこ。
福田:1 回は行ったことあるけど、住んだことはないからさ。さっきの話じゃないけど、観光っていうか旅行でしか行ってないから。
藤田:オランダってちょっといただけで好きな国になってるから。だからEURO2004の準々決勝、スウェーデン対オランダでPKになったときはね・・・
中西:イブラヒモビッチ(ズラタン、アヤックス、スウェーデン代表)は、オランダで対戦してた相手だからね。どうですか?
藤田:すごいよ、彼は。びっくり。スケールがでかい。
福田:背もでかいもんね。
藤田:背もでかいし技術もあるし、やっぱ大きい。
福田:ダイナミックってことね、全てが。
藤田:アヤックス戦のときにすごくいい選手だなって思った。
福田:でもその頃って相手はまだ20歳ぐらいでしょ。
藤田:そう。アヤックスとやったときに、相手のメンバーの年齢が20歳とか、21、2 歳なのよ。でも大人のサッカーしちゃってんの。俺たちユトレヒトは・・・がむしゃらな。みんな技術はないけど一生懸命やるっていうスタイルが好まれるチームなの。
福田:なるほどね。
藤田:ホームでやるときは、戦術はサポーターが決めるから。ボールを取りに行かなかったら「こいつ何やってんだよ」って。だからフルコート・プレスなの。
福田:なるほどね、バスケットだ。
藤田:戦術も何も関係なく、ボール取りにいかないといけないから。ラインも何もない。
福田:とりあえず取りに行けと。そこで戦えということなのか。
藤田:そこでファイトしないと。「お前はもう帰ってくれ」みたいな事を言い出すの。
中西:EUROの話が出ましたけど、オランダチームを応援してるということなんですけど、あの選手はすごかっていうのは。
藤田:EUROには出てないんだけど、ファン・ボメル(マルク、PSVアインホーフェン)。
中西:ファン・ボメルは選ばれてないんですよね。
藤田:怪我して選ばれてないんだけど。あとロッベン(アルヤン、チェルシー、オランダ代表)。
中西:ロッベンすごいよね。ばりばり活躍してますよ。
藤田:すごい。ちょっと名前的にみんな知らないんじゃないかな。
中西:19番の人です、左利きの。若手なんですよね。
藤田:あとは、ファンニステルローイ(ルート、マンチェスターU 、オランダ代表)とかさ。
中西:ロッベンはチェルシーに移籍したじゃないですか。
藤田:オランダ国内に代表いないもん、あんまり。だからあんまり知らない。
中西:EUROは見てます?
藤田:今日も見た。
中西:すごいよね。鳥肌立ちますね。
藤田:オランダとスウェーデンの試合が延長になったとき、「なげぇ」って思って。「うわーまたかー」って。
中西:俺も毎朝そう思ってる。
藤田:で、初めて知ったシルバーゴール方式。
福田:選手は知らないもんだよ。
藤田:今はゴールデンじゃないの?
中西:ゴールデンじゃなくなったんですよ、シルバーゴールになったんですよ。はい、それではそろそろお時間です。ありがとうございました。じゃあ藤田さん、ひとことお願いします。
藤田:今日は500 人以上の方々に来ていただいて、本当にびっくりしてます。なかなか試合以外でこういった触れ合う時間ってあまりないですし、いつもインタビューとか雑誌で言葉を発している以外話をすることがないので、僕はこういうことを考えてるっていうのを少しでもわかってもらえればいいかなと、そんな感じで思ってました。いかがでしたか。
会場:拍手
藤田:内容のある話ができたかどうかはちょっと微妙な線なんですけど。やっぱりひとつわかったことは、この2 時間ではなかなか伝わらない。話をするのは難しいっていうことですかね。いつもテレビで話をしている中西さんがすごいなって思ったり、福田さんがすごいなって思ったりします。サッカーのことを語ると時間って足りませんよね。
中西:そうですね。
藤田:本当はもっと、いろいろ話したいことがあって。サッカーについてこう思ってるとか、どれくらいサッカーが好きだとか、こうしていきたいっていうのがあったはずなんですけど、なかなかそういう展開にならなくて。上辺だけの話になっちゃったかなーって思うんですけど。
中西:また是非来て下さいね。
藤田:はい。今日からホームページの方も新しくなります。写真がもっとかっこよくなるらしいんで。これを機にきちんと、いろいろ自分も書いていくので、見ていただけたらなと思っています。とにかくJ リーグの方は残念な結果になりましたけど、2nd ステージでもう一度やり直して、チャンピオンシップでマリノスと対戦できれば最高だなと思います。ケガをしないように、J リーグもワールドカップ予選も全部戦って、サッカーを休まず、やり続ける選手であり続けたいなと思います。今日は本当にありがとうございました。
会場:拍手
中西:福田さんも、どうもありがとうございました。
会場:拍手
中西:話がおもしろいですね。普段も話してて楽しいです。さっきも話したんですけど、サッカーについてどう思っているのか、プライベートも見てほしかったので、いろいろお聞きしましたけども。やっぱりね、サッカーの事を考えてるっていうか、サッカーを大事にしてるっていうのが伝わってきましたね。サッカー好きですよね。僕とはいつもサッカーの話してます。チームメイトとはあまりしないようですが。今はEUROが毎日のように続いていますが、J リーグが盛り上がらないとね、日本のサッカーに明日はありません。ここにいる方々にいつもお願いしているんですけど、皆さんが日本のサッカーの未来を担っていると思います。周り人たちにサッカーの素晴らしさを伝えていって、そして藤田選手の素晴らしさも伝えてほしいと思います。みなさんがサッカーを好きであればあるほど、日本の中でサッカーが文化になっていく礎になると思うんで。これからもサッカーを応援していただいて、また「ぴあトークバトル」にも来ていただいて、藤田さんのホームページも見ていただいて。選手の素顔、プレーも楽しんでいただいて、サッカーを楽しんで毎日生きてほしいと思います。今日は本当にありがとうございました。ジュビロの2nd ステージでの健闘をお祈りしています。
会場:拍手

取材・文:CREW
撮影:フレンダー田中