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後編


司会:後半のパート2はお三方でヤマザキナビスコカップファイナルについて、いろいろお話していただきたいと思います。
福田:大黒選手は面白いですね。ズバッと物事を言うんで、非常に歯切れがいいですよ。イエス・ノーがハッキリしてるんで。
中西:ハッキリしてますよね。けっこうみんなあんまりしゃべらないっていうイメージを持ってると思うんですけど。
福田:しゃべりますよ。
井原:ストライカーっていうか、点を取る人はけっこう好き嫌いハッキリしてて、言うことは言うんじゃないかと思いますけどね。
福田:いや、俺とはちょっと正反対かもしれない、そのへんは。
中西:ハッキリしてるじゃないですか、好き嫌い。「俺あいつのことイヤだ」とか。
福田:そんなことは言わないですよ。でも、プレイ自体はハッキリしてる方がいいんじゃないですかね。やっぱり決断が早いっていうことだと思いますから。打つのか打たないのかっていう話ですからね、フォワードっていうのは。
中西:確かに。僕たちは打たせないようにジリジリしなけりゃいけないんで。
福田:そうそう、迷わせるためにやってるわけでしょ? こっちは迷わないようにってやってるわけですからね。
井原:常に謙虚じゃないですか。大黒くんって。非常に控えめな感じで。お互い決勝の前で、終わった後ならもっと言えると思うんですけど、これから戦う上でね。
中西:二人ともスーパー謙虚ですよ。
福田:でも、ここに来て話できるってなかなかいないんじゃないですかね、選手で。
中西:けっこういろいろ話してくれたじゃないですか。
福田:そんな謙虚じゃなくてさ。
中西:福田さんみたいにゴーマンじゃなくて。
福田:違う、違う。これだけお客さんがいるし、いつもスタンドの上から見られてるのに、高いところにいて下から見られてるんで、ちょっと状況が違うでしょ。
中西:すごく見てますね。
福田:巻なんか相当汗かいてたからね。それが気になっちゃってしょうがない。
中西:福田さんは巻選手や大黒選手としゃべってるときと、僕と井原さんとしゃべってるときと態度が違うんですか?
井原:人を見てるね。
福田:ゲストじゃなくてメインだからさ。僕は刺身で言えばツマみたいなもんだから。
中西:大根?
福田:そうそう、大根だから。やっぱり控えめにしないと。俺が一番謙虚だっただろ?
中西:「謙虚だろ?」って普通、謙虚だったら言わないですよ。
福田:やっぱり井原がしゃべった方がいいんじゃないですか? 俺とか哲生の話はもう1時間聞いてるんだから。井原を皆さん待ってたんだから、あいさつから始めた方がいいんじゃないの。自己紹介でも。
中西:元日本代表キャプテン井原正巳さんです。
井原:S級のライセンスの講習会等がありまして遅れてまして、申し訳ありませんでした。よろしくお願いします。
中西:ということは、井原さんはもうすぐ監督になるっていうことですよ。
井原:監督になるライセンスが取れるかもしれないということですね、落ちなければ。
福田:謙虚だね。落ちないために勉強してるんでしょ、だって。
中西:井原さんとか、ライセンス取ったらすぐオファーが来そうじゃないですか。
福田:来ますよ。
井原:今200人くらいS級取ってる人がいるんで、Jリーグのチームが30チームあって、外国人が10人はいるじゃないですか。
福田:数字のことを語らせたらすごいよ。
井原:日本人では20人しかなれないですよ。
福田:20人もなれるんでしょ?
井原:モノは言い方だね。20人はなれる。
福田:その中には入れるでしょう。
井原:いや、やっぱり今はそんなに簡単にオファーは来ないみたいですよ。
福田:でも、やってもらいたい1人だよね。
中西:日本代表の監督もやってもらいたいですもん。
福田:そうだよね。
中西:絶対いつかやるじゃないですか。
井原:いや、わかんないですね。まずはJリーグの監督をしっかりとやって実績を積むことが一番だって思いますね。
福田:そうやってS級で習ってるの?
井原:はい。
中西:井原さんは行ってますけど、福田さんは?
福田正博
福田:僕は行ってないです。一緒に行きたくなかったんですよ、S級は。
井原:「一緒に行こう」って言ったじゃん。
福田:俺は「来年行こうよ」って誘ったんだけど、「今年行くから」なんて言われちゃって。断られちゃった。
中西:今日話を聞いてて、楽しみじゃないですか、ナビスコカップの決勝は。
井原:そうですね。どっちが勝っても初タイトルですし。
中西:いいチームになりましたもんね、本当に。ここ数年でグッと上がってきたチームですけど、完成の域に近づいている感はあるんですけど。
井原:見ていてやっぱり非常に攻撃的だし、ボールも人もすごく動いてるし。楽しいよね、見ていて。そういう感じはするよね。
中西:試合を見ていて面白いですよ。どうですか、どっちが勝ちそうですか。
井原:いや~、やってみないとわかんないと思うけど、それは当たり前なんだけど。
中西:今それ突っ込もうと思いました。
井原:今言おうと思ったら、ガンバの青いユニフォームを着ている方が目に入って。
福田:目に入ったんだ。
井原:お互いに攻撃力はあるし、あの二人のどっちが点を取れるかじゃないかな。
福田:リーグ戦でも両方とも好調でしょ。ちょっとガンバが連敗してるけど。
中西:ガンバは好調とは言いがたいと思いますよ。
福田:いやでも、リーグ戦でも優勝の可能性がある両チームじゃない。だから力のある2チームがナビスコの決勝に出てきたということでは、いい試合が期待できるんじゃないのかなと思って。現時点の波っていうのは、ガンバにけが人が出たりとか、連敗したりっていう流れはあるとは思いますけど、勢いからするとちょっとね。
中西:ただね、一発勝負だから僕はわかんないと思います、本当に。リーグの流れじゃないと思います。1週間空くじゃないですか。それがけっこう違うと思いますけど。
福田:でも、流れはあるよ。勢いっていうのはあるからね。そういう意味でガンバにとっては、リーグ戦も含めて今度の決勝は非常に重要になってくるでしょうね。
中西:いや、本当にそうです。流れを変えられるかどうかっていうのは。
福田:タイトルを取る取らないでリーグ戦にも影響が出てくるし、連敗ということをすべて忘れられる試合にもなるだろうしさ。
中西:打ち消せる可能性もありますよね。
福田:改めてここで勢いを増すようなことになるのか、非常に重要な試合。当然、ナビスコカップの決勝っていうことだけじゃなくてね。その後のことを考えてもね。ものすごく注目度の高い、両チームにとって重要な試合だっていうことは言えるんじゃないかな。
中西:福田さんはナビスコカップの決勝(2002年11月4日、国立競技場、浦和レッズ0-1 鹿島アントラーズ)に出てますけど。
福田:1回ですね、負けて。
中西:そうだ、井原さんも出てるんだ。
福田:一緒に出てるんだから。
井原:そうそうそう。
福田:井原の背中に当たって入っちゃったんですよ。
井原:そこまで言わなくても。
福田:0-1で負けたんです。
井原:そうですね。
福田:井原の背中に当たって入っちゃった。
井原:もう1回聞いたからいいよ。
中西:2回言わなくていいですよ。
福田:それがね、気にしてるんですよ。しょうがないのにさ。すごい気にしてるの。
中西:年齢はどちらが上なんですか?
福田:ひとつ、僕の方が一応上なんですけど。
中西:どう見てもしゃべり方が上だった。
福田:サッカー的には彼の方がはるかに上ですけど、年齢的には僕の方がひとつ上なんです。でも、背中に当てて入っちゃった。気にするんですよ。まだ気にしてるんですよ。
井原:気にしますけどね。でも、あれがあったからレッズも苦い経験をして次の年のナビスコカップに優勝した(2003年11月3日、国立競技場、浦和レッズ 4-0 鹿島アントラーズ)。2004年まで3年連続で決勝に出ましたしね。
中西:優勝しましたしね。
井原:タイトル取るのってけっこう大変なんですよね。
中西:井原さんはナビスコはマリノス時代もジュビロ時代もないですか?
井原:ないですね。
中西:ナビスコって、そうやって考えてみると決勝に出てくる人って少ないですね。1年に1回ですし。ナビスコの決勝の経験は1回だけ?
井原正巳
井原:そうですね。代表に選ばれてると、予選に出られない状況もあるじゃないですか。
中西:確かにそうですね。福田さんも1回だけですか?
福田:決勝ですか? はい。
中西:ナビスコって1992年から・・・
福田:出てますけど、それは井原と一緒で、代表だから予選に出られないっていうことはありましたけど・・・ちょっと、僕も代表に入ってたんで。
中西:だいぶ入ってたでしょ。45試合9得点。
福田:それはよくわからないけど、1992年から出てます。特別な勝ち点方式の時でしょ。ゴールを何点取ったら勝ち点がいくつとか。それで俺たち上に行けなかった。
井原:そういうレギュレーションの時もあったんですよ。
中西:Jリーグ開幕の前年、そこからもうナビスコさんにやっていただいているんですけど、92年からあるんですよね、前哨戦として。
井原:リーグ戦がなかったからね。
中西:9月からナビスコカップだけだったんですけど。井原さん、マリノスは?
井原:予選で負けたかな、確か。とにかくナビスコカップでいい成績残したことは、僕がいるときはなかったですね。2001年に一度、横浜F ・マリノスが優勝してるんですけど、それは僕が移籍してからなんで。
中西:ということは、ナビスコ杯のタイトルを取ったことのある人は誰もいないですね。僕は名古屋グランパスエイトのときに準決勝まで行って、清水エスパルスに負けたんだ。
福田:でも、多くの人に見てもらいたい試合だと思うんですよね。本当にいい試合になるから。できる限り多くの人に見てもらいたいなと思いますよね。
中西:試合のポイントはどこだと思いますか、井原さん。
井原:前がどれだけ機能するか。ガンバはここのところちょっと調子悪いじゃないですか。アラウージョもこの間の試合はシュートを打ってないし、大黒は途中からだし。そのへん今までの破壊力が少し落ちてきたかなというところはあるんで。攻撃陣がどれだけ活躍できるかだと思いますが、それはジェフも同じだと思う。ジェフのサッカーとガンバのサッカーは全然違うんだけど、ジェフの運動量とか、全員の役割は非常にハッキリしてる。若干、後半は体力的に切れてくるところはあるんだけども。この間もS級でジェフの練習を見に行ったりしたんだけど、すごくいい練習してて。
中西:オシム監督にいろいろ習ったんですよね、S級の講習で。何か言ってました?
井原:「いっぱいありすぎてしゃべれないけど」みたいな感じでしたね。だけど監督にとって大切なのは、選手をしっかり教育すること。そして、「試合で勝ったときは選手がやったからだ、監督は別に教育しただけだ。負けたときは監督のせいだ」ということはおっしゃってましたね。指導者の中には、負けたとき選手のせいにする指導者が多いとは言ってましたね。
中西:僕も絶対そう思います。
井原:それと、選手のモチベーションを上げるためのやり方は1000通りくらいあるから教えられないって。1000のうちひとつくらい教えてよという気持ちはあったんですけど。
中西:さっき巻選手に聞けばよかった。
井原:でもね、練習のやり方はすごく工夫されてて。ビブスも5色か6色くらいを何人かに分けて。みんないろんな色を着けてるからわかんなくなるんじゃないかと思うくらいなんだけど、それでゲームをしてたりするんですよね。ディフェンスラインと中盤とフォワードと全部色を分けて。で、相手チームも分けるから6 色ぐらいになってる。その中で中盤とディフェンスをつなげていったりとか。その日はそういう練習だったんですけど、見
ていて「こんな練習もあるんだ」とびっくりした。
中西:頭を使いますよね。漠然とサッカーやってればいいという感じじゃないですもん。
井原:判断力ってサッカーで大切だと思うんだけど。そういうのも練習の中で養わせているというのは、すごく感じましたね。指導者の勉強してるんで、そういう視点から入ってみました。
福田:いや、すごいなと思って。でも、ちゃんと勉強してるよね。
中西:だってS級取るんですもんね。
福田:取れるんじゃないかな、それくらいわかれば。
中西:だいたい講習を受けてる人は、ほとんど受かると思いますよ。
福田:でも、何も教えてくれなかったってことでしょ、要は。そういうことだよね。
井原:いや、少しは教えてくれた。
中西:要するに、短い時間じゃ教えられないってことですよね。教えるならちゃんと教えたいってことじゃないですか。
福田:そんなに簡単じゃないってことなんでしょ。ちょっと行って、ちょっと教わって、というレベルじゃないんだよ。
井原:まあね。経験というのは大切だと思うんだけど、指導するのにね。オシム監督は結果を出しているからそういう風に見られる。
中西:説得力ありますよね、結果出してるから。
井原:うん。選手が文句を言わないでひたむきにグラウンドでやるんだよね。外国人選手もオシム監督に何も言わないし、言われたことをしっかりやるし。すごいなと思いましたね、監督の威厳もあると思うんだけど。デカイし、オシム監督は。
中西:195cmくらいあるんですからね。
福田:デカイ方がいいんですかね、やっぱり。
井原:まぁ指導の仕方だと思いますけど。ガンバの練習はちょっと見たことないんです。
西野さんがどんな感じなのか。
中西:けっこうバラバラで練習するって言ってましたね。ガンバはどうですか?
井原:ガンバはここ2試合は連敗しましたけど、攻撃力はダントツじゃないですか。Jリーグの得点力を見ても。
中西:ぶっちぎりですよ、78点。
井原:失点は多いんですよ。
中西:失点は下から4番目。
井原:だけど点を取られても取るっていうかね。
中西:そういうスタイルで行くと西野監督が言っているのがすごいですよ。ストロングポイント、自分たちのいいところを出すっていうことでやるしかないっていう。そんなやり方で優勝するチームってあんまりないじゃないですか、今までで。失点が下から4番目か3番目なんですよ。それで優勝したらすごいなと思って。
井原:うん、すごいと思いますね。
中西:新しいパターン。攻撃が守備を上回るなんていうのないじゃないですか。
井原:アラウージョがよくあれだけ点取ってますよね。去年全然ダメだったんですけど。
中西:でも、いいプレイしてましたよ。
井原:ダメじゃないけど、数字的にはチームとして機能してなかった。
中西哲生
中西:僕は何でエスパルスが出したんだろうって思いましたよ、あの選手を。点は取ってなかったですけど。逆に言うとボールが出てこなかったりとか、出しても味方が決められなかったりとか。今年は全く違うし。
福田:まぁ1年あればさ、良くない試合もあるよ。全部よかったら大変なことだもん。
中西:それ、さっき大黒選手にも言ってましたね。昨日、大黒選手がシュートをちょっと決められなかったんですよ、ビッグチャンスに。大黒選手が「僕がもっとうまくなって、ちゃんと決められればいいんですけど」って言ったら、福田さんいきなり「いいんだよ。全部決められたら天才だよ。気にしなくていいよ」って。
福田:「シーズン通して100点くらい取れるよ」って言ったの。「外すときもあるし、決めるときもあるから」って。
中西:細かいなぁ。福田さんから見て二人はどういう選手なんですか。
福田:いい選手だね。大黒にしても、「ゴールを取るのは自分の仕事だ」って言ってること自体がすごく重要なことだよね。その意識がすごく重要で、点を取るいうことがチームを救うことだし、一番の仕事だからさ。そこから逃げようとしてないでしょ。
中西:そうですね。外したら自分の責任だってハッキリ言いますよね。
福田:それをハッキリ言うのは自分を追い込んでしまうこともあるかも知れないけど、仕事がハッキリしているのでいいんじゃないの。意識があるというのはすごく重要。巻は「低いボールでもヘディングで行く」なんて控室でも話してたけどさ、自分の能力をわかっているのはすごくいいことだと思うね。さっきストロングポイントなんて話してたけど、自分のいいところを出そうということが一番最初に来ているのは、すごくいいことだと思
うんだよね。それによって自信を深めることができるし、そうするとできるようになっていったりするんだよね、人間って。自信を失ってしまうと、できていたことができなくなっちゃうから。「自信を持てるもの、何かひとつ自分の得意なものを持っとけ」っていうのは、結局そういうことでしょ。自信を失っちゃうと困るから、いつもどんな状況でも自信を持っておけるということでしょ。巻なんかは、そういうところがあって、不得手なこともできるようになってきている部分があるんじゃないかな。だから幅が広がってくるでしょ。いいところをどんどん伸ばすことが結局は幅を広げることにつながっていくんじゃないかな・・・ちょっといいこと言った?
中西:ガンバはどうですか。
福田:ボールを大切にして後ろからビルドアップしながら、ディフェンシブなところに遠藤がいるのも大きいと思うんだけど。非常にうまくボールを散らしながら、前線の攻撃的な選手にいい形でボールがつながっていく形なんで、すごくボールを大切に扱っていると思うね。本当にいいサッカーしてると思う。
井原:どこのポジションも、前の選手がみんな仕掛けられるんだよね。ボールを持ったときに勝負できる選手がガンバはすごく多い。必ずいい状態で持ったら何人か抜きに行ける力があるから、それに対して周りもうまく反応してて、抜かないときにパスが出たりすると、いい状態でもらえたりっていうのがあると思うし。パスが出なくてもずっともらおうとする動きは続けてて。大黒なんかも「パスが来ないとき多いね」って言っても、「いや
、そんなことないです。来たときに決めればいいんです」みたいな発言をするし。フェルナンジーニョはアラウージョばっかり見てる時が多いんですよね。で、大黒はいいところに動いててもパスが出ないことが多いんだけど。でも何本かに1回は出てくるから、そのときに決めればいいというか。そういう意識はあるみたいだし、周りもそういう動き方をしながら反応してるから。みんなが仕掛けられるという部分では攻撃力、破壊力はあるという感じですね。みんな上背的にはあまりないんだけど、そういう仕掛ける、あとドリブルとかスピードはみんなあるんで。ディフェンスにとってはそこが一番嫌らしい、止めづらいところなのかなって思いますね。
中西:確かに僕も見ていて、大黒選手はよくあんなに何度も動き直せるなと思いますね。ボール出てこないですよ。フェルナンジーニョはドリブルするか、まずアラウージョを見ちゃってるんで。すごくいいタイミングで昨日も動き出してたんですけど、出ないんですよ、ボールが。でも昨日は、後半の頭から二川選手とセットで入ったんですけど。試合前も西野監督と話してて、「今日、大黒選手スタメンで使わないんですね」って言ったら、「いや、途中から絶対使います」って。二川選手ももともと真ん中の選手なんですけど、サイドで使わざるを得ないじゃないですか。アラウージョとフェルナンジーニョがいるんで。実際、後半頭から昨日はあえてボランチのところに入れて真ん中にして、そこで使うことによって大黒選手の動き出しの早さを引き出したい意図があったと思いますし。実際、後半の頭に二川選手が入ってからずっとよかったんですよ。後半20分過ぎくらいまではずっとよくて、そこで決められなかったんですよね、チャンスがあったんですけどシュートをはずした場面があったし。そこを見てると、二川選手を真ん中で使うというオプションは、この後リーグ戦でも生きるだろうし、今回のナビスコカップの決勝でもやる可能性はあると思うんですよ。それをすることによって、フェルナンジーニョもアラウージョもあまり下がってこなくなるじゃないですか。あの2人が下がって来るとバランスが崩れて、結局攻撃が遅くなったりするんで、二川選手があそこにいた方がよくなると思う。昨日は負けたけど、一つ活路を見出した感じがちょっとあったんですけどね。彼もすごくバランスよくやれてたし。二川選手ボール出すのうまいじゃないですか。さっきも大黒選手が「ボール出してくれるんで」って言ってましたけど。
井原:二川からは大黒によく出るよね。
中西:出るんですよ、すごいいいタイミングで。あの二人をセットで使うと、チャンスができそうだなぁっていう感じがあるし。そういう選手が入ってくると、逆にまたフェルナンジーニョのドリブルが生きるじゃないですか。あとは僕は左サイドの家長(昭博、ガンバ大阪)選手。いいじゃないですか、仕掛けるし。
井原:ふてぶてしいドリブルするからね。ボールをさらしながら。さらすというか、取れそうなボールをわざとディフェンスには見せて。届きそうなところにボールを置いておいて、「来い!」と待ってるような。あわてて取りに行くとそれをかわしていくような。
中西:足を出したくなるんですよね。さわれそうなんでボールに。で、足を出した瞬間にパーンと逆にさわられて、かわされちゃうんですよね。あれは天性ですからね。家長選手はもっと伸びて欲しい選手ですよね。左に行くってわかってても左に抜ける選手です。
井原:ジェフのサッカーは本当に人が動くよね。そのジェフと、ボールを持って仕掛ける割合が多いガンバとの対決だから、すごく楽しみなんだけど。ジェフはボールを1人が持っている時間がすごく少ないんだけど、それに対して周りがどんどん出てくるから、そのへんがすごく流動的に。あれはチームとしての約束事なのかも知れないけど。
中西:いや勝手にできるらしいです。日々の練習で、誰かボールを持ったら、持ってない選手で、一番危険な地域に入っていける選手がそこに入っていく。
井原:そういう飛び出していく練習とか、すごくやってるね。そのへんが試合につながっているんだろうなと思うし、羽生(直剛)が飛び出していったり、阿部が飛び出していったり、佐藤が飛び出していったりというのがすごく流動的。
中西:「1人行ったから行こう」じゃなくて、行った瞬間にもう次の選手が入ってきたりとか。連動してるんですよね。
井原:そのへんがオートマチックに、みんなが動くのがすごいなと思いますし。あと、後半は運動量が落ちるんだけど、それでもすごいなと思う。あそこまで動けるのは。
中西:僕はジェフを見ていて、やっぱりディフェンス命ですね。あの3人が前に行く力がすごいですね。
井原:それもね、すごく練習をしてた。「前にスペースがあったらリスクを持ってどんどん行けよ」ってディフェンスに言うんですよ。斎藤(大輔)とかいつもセーフティにセーフティにプレイしてるから、「若いんだからもっとリスク持ってチャレンジしろ」っていつも言ってるし。結城(耕造)にしてもそうなんだけど。
中西:水本(裕貴)選手とかね。
井原:ストヤノフもいいんだよね。ストヤノフ効いてるよ。でも、「ストヤノフにはどんどん行けって言ってるけど、行くとそれだけ失点もする」ってオシム監督が言ってましたよ。でも、チャンスをすごく作ってるよ。
中西:ドリブルでスーッと運んで行く、スペースがあるとき。あれがうまい。
福田:切り替えが一番早い、攻撃にかかったときに。キーパーからボールもらって、そのまま直接ドリブルで行ったりするし、一人だけ動き出しが早いもん。あれはすごい。
中西:しかも守備の選手って普通ドリブルしないとみんな思ってるから、「おおっ」て。
井原:真ん中をスルスルッと上がって。
福田:前が空いてると行くんだよな。
井原:だから、ああいうプレイを結城とか斎藤にもしろって言ってる。
中西:斎藤選手はムリですよ。僕は彼のこと中学生の時から知ってるんですけど、器用な選手じゃないですから。
井原:だけど、やれって言ってた。
中西:彼はガツガツ、ゴリゴリ行くタイプなんで。
井原:最近は結城がだいぶ行くようになってきたと言ってたね。見ててもそうなんだけど。だけど、春先にジェフが筑波大学と練習試合をやったときには、「結城これでよく試合に出てるな・・・」と思った。イージーなミスをしたりしてたんですよ。
中西:キビシイですね。
井原:いや、ほめるんだよこれから。それが今では全然違うっていうこと。そのときは大学生に「そこを狙いに行け」って言うくらいの試合していて。そういう狙いどころが、その頃はまだあったんだけど、今はもう結城すごくいいし、「ここまで伸びるものなのか」と思いましたね。ほめてるんですよ。
中西:僕、斎藤選手でもビックリしたんですよ。「あんなことできなかったのに」って。あんまり自分からドリブルして運ぶタイプじゃなかったんです。「でも、できるようになってるよな」って。すごいと思いましたけど。
井原正巳
井原:あと、やらない選手は絶対に使わないし。練習でしっかりやらない選手をゲームでは使わないと言ってましたね。昔、オシム監督が自国(旧ユーゴスラビア)で監督をやってたとき、スター選手か何かを使わなくてベンチに置いてたらしいんですよ。で、負けてると、ベンチに置いてる選手のコールがスタンドからかかるじゃないですか、「こいつ出せ!」って。そうしたら「お前のこと呼んでるぞ、客席に行ってこい」って。その選手を本当に観客席に行かせたんだと言ってましたよ。これホントの話。試合に出るんじゃなくて、観客席に行かせたって言ってましたね。
福田:選手は行ったの、それ?
井原:行かされたって行ってましたよ。そのぐらい自信持ってやってるっていう。
中西:それ、スゴイですね。行きます?
福田:俺だったら帰っちゃうな。
井原:でも、やってる選手たちはすごくモチベーション下がりますよね、出てない選手のコールがかかると。
中西:確かにそうでしょうね。
井原:気持ちもわからないでもないけど。たぶん、不甲斐ない試合をしてたりするから「こいつ出せ!」っていうことだと思うんだけど。
福田:最後の手段だろうな、それ。相当キツイでしょ、やってる選手たちは。ちょっと悪い試合ぐらいで言うんじゃ、選手がかわいそうだよね。
中西:あとJリーグの方も5試合になりましたけど、どうですか。
井原:ジェフまで。
中西:僕もジェフまで。
井原:ジェフが勝ち点49だよね。
福田:俺もジェフまで。
井原:最終節までもつれると思うんだけどね、僕は。1シーズン制でここまで最後もつれるのはなかなかない。もう少し早く決まってもおかしくないかなと思うんだけど。
中西:これから上の方のチームはターゲットのようになって厳しいですよね。ガンバもそうだし、みんな上の方のチームを倒そうってモチベーション高いじゃないですか。特に上位を走っちゃうと。そう考えると鹿島アントラーズが落とされてきたのもそうだし、ガンバも抜け出したけど、また落とされてきたのもそうだし。1シーズン制の方がこうなると思いますよ。面白いですしね、実際。
福田:海外とは違うんじゃないの、やっぱり。日本は力の差っていうか、選手層にそんなに差はないから。海外みたいにトップで行ったチームがバーッと行って、そんなに勝ち点を取りこぼさないから決まっちゃうなという感じにはなってないよね、Jリーグは。その分、他のチームにもチャンスが回ってくるような選手層になってるよね。
中西:そのくらい力は拮抗してますよね。
福田:そんなに飛び抜けたチームがないっていうことじゃない?
中西:どこですか?
井原:どこだろうね・・・
福田:一応、今日はガンバとジェフだからな、お前。
井原:ナビスコカップもあるしね、2冠もある。
中西:3冠まであるでしょう。ガンバもジェフも3冠はあるでしょう。
福田:まず1つだよ。
井原:まぁ、どっちかはナビスコカップ優勝するから。
福田:そりゃどっちか優勝するよ。どっちか優勝させるために試合するんだから。
中西:何で福田さん揚げ足取るんですか。何で掘り下げるんですか。でも、面白いですよね。ガンバとジェフとレッズは直接対決が2試合ずつあるんですよ。
福田:その3チームで2試合ずつ戦うってことだよね。
中西:鹿島だけないんですよ。
井原:セレッソもないんだよ。今勢い的にはセレッソはけっこうあると思う。でも、残留するかしないかっていうチームと当たるのもイヤなんだよね、この時期は。
福田:じゃ、どれがいいんだよ。
井原:一番何も関係ない、中位くらいのチームがいい。
中西:鹿島は最後の2試合が柏レイソルと清水エスパルス。入れ替え戦の可能性があるチームなんですよね。
福田:あとホームとアウェイっていうのもあるんじゃないの? 強い相手の時にホームでできるのか、アウェイでできるのか。
中西:浦和はホーム2試合なんですよね、残り5試合のうち。
福田:で、ジェフとガンバはアウェイなんだよ。
中西:もう1試合残ってるのヴェルディでしたっけ。入れ替え戦がらみのチームが残ってるんですよ。最初の3つがその試合なんですよね。
福田正博
福田:そういうことも考えると、ガンバはやっぱりこの試合が重要になってくるんじゃないの。決勝で勝って弾みをつけて。
中西:西野監督もこの決勝が大事だって言ってた。それに勝てばリーグも行く可能性が充分ある大事な試合だって。
福田:優勝するって相当な勢いになるからね。自信にもなるし。
井原:ナビスコカップ決勝は大事だよね。僕らレッズで負けて。
福田:その後もう勝てなかったもんね。思い出したくない?
井原:あぁ。
福田:リーグ戦が5試合か6試合残ってたけど、それ全部0-1で負けたからね。1勝もできなかったから。背中に当たって入ってから。そこから1勝もできなくなった。痛いでしょう? 背中に当たっちゃったんだよ。
井原:そういう時もあるからね。一つ歯車が狂うとなかなか。
中西:ガンバもそういう可能性があるということですか?
井原:まぁ、力が違うとは思うけど。
福田:浦和と一緒にしちゃいけないよ。あの時の浦和はそんな力はなかったけど、今のガンバはちゃんと力があるから。そういうことではないけれども。井原が言いたいのは、そのぐらいきっかけになりやすいと。逆に言えば勢いがつくということでしょ。そのぐらい重要な試合になるんじゃないのかな。両チームにとって初タイトルになるわけでしょ?
井原:ガンバは松下電器のときに天皇杯で優勝してるから(1990年度第70回天皇杯)。日産とやったでしょ、PKで。僕出てたから。
福田:それが言いたいの?
井原:いや、だから負けたって。PK、PK。
中西:何でそう井原さんの悪口言うんですか。
福田:気にするんだもん、だって。
中西:気にさせてるじゃないですか。
井原:全然いいんですよ。いつもこんな感じなんで。
福田:言ってあげた方がラクになるんだって。そんなのに触れちゃいけないって、余計に気を遣うのは彼にとって傷つけることになるから。もうちょっと俺が気を遣えっていうのもあるかも知れないけど。
中西:でもとりあえずナビスコカップを見に行けということですね。
福田:見てもらいたいですね、本当に。両チームとも攻撃的なサッカーしてるんで、ぜひ見て多くの人に見てもらいたいですね。
中西:質問コーナーにいきましょうか。
福田:井原さん限定で。よろしいですか?
井原:そんなことなくていいです。聞いて下さい。
客3:今のガンバの欠点はどこにあると思いますか。
井原:首位を走っているチームにそんなに欠点はないと思うんですね。ただ、今流れがよくないのは点が取りきれないところと、決められるときに決められれば波に乗れると思いますし。あと気になるのは、さっきも仕掛けるプレイが多いと言ったんですけど、そこで取られることがけっこう多くて。最近アラウージョとかも自分で行って取られることがけっこう増えてきているから、そういうときに逆に相手にいい形で攻められるパターンがあるかなとは思いますね。
中西哲生
中西:僕もそう思います。ただ、いろんなプレッシャーがかかってて、いろんなチームから研究されてて、特徴を消されているとは思うんですよね。1つあるとすればフェルナンジーニョのパス出しがもうちょっと早くなると、もっとよくなると思います。春先のよかった時は、フェルナンジーニョがボールを放すのがもっと早かった。で、周りの選手がけっこうフリーランニングしやすかったんですよね。ボールが出てくる可能性が高いから。
でも今はボール持った瞬間にまずドリブルとか、アラウージョへのパスとかが多いんで、周りの選手が走っても出てこないんじゃないかという意識が少しずつ働いてて、フリーランニングの数が減ってるんですよ、実際。裏に出る動きも減ってて。裏に出る動きがあるとそこにボールを出そうとしますよね。そこに出したボールをたまたま味方が拾えなくても、相手が苦しまぎれにクリアするんで、その落ちたボールをもう1回フェルナンジーニョとかアラウージョが拾えたりするのが多かったんです。背後に出るボールの数が少なくなっているのが2次的な攻撃につながっていない原因だと思うので。そこらへんがもう少し改善されれば、また元の状態に戻れると思いますし、もう少し大黒選手にボールが出てくれば。大黒選手はすごくいい動き出ししてるんで、出してそこに届かなくてもこぼれ球が拾える効果があるんでもうちょっと出して欲しいし。出すことによって、アウトサイドの選手も思い切って裏をつけるようになってくるし、変化が出ると思う。僕はそこがポイ
ントだと思います。
福田:チームってやっぱり波がありますから、今はたまたまそういう波に来ていると言うことですね。その波を上に上げるためには、非常に決勝が重要になってくるということだと思います。井原が言ったように、サッカーというのは決めるところで決めて、ピンチをしっかりしのげば勝てるわけで、そのリズムが悪いと。自分たちのリズムのときに点が取れないで、悪い時間帯に失点をしてしまうということだと思うので。それがちょっと歯
車がずれてるかなっていう気はしますけど。まずはコンディションをしっかり整えて、体と心を充実させて臨めば、自信を持って戦えると思いますけど。
司会:最後に皆さんからひとことずつお願いします。
中西:井原さん。
井原:今日は2部からの参加ということで、半分でしたけど非常に楽しい話をいっぱいさせていただきまして、福田さんからもいじめられて、非常に来た甲斐があったなと思いますし。ナビスコカップ自体も決勝のガンバとジェフ、すごく楽しみだし。これからJリーグも残り試合の優勝争いも混沌として、本当に日本のサッカー、Jリーグも盛り上がっているなという感じが改めてしました。これからも日本のサッカーを応援して欲しいと思い
ますし、来年はドイツ・ワールドカップもありますので、どんどんサッカーを盛り上げていって欲しいと思います。今日はどうもありがとうございました。
福田:今日はどうも2時間ありがとうございました。たいしたこともしゃべれずに申し訳ありません。巻選手と大黒選手が来て、どちらかというと控えめに話してましたけど、ピッチでは非常に熱いものを見せてくれるんで。選手は多くの声援やサポートを受けると、ものすごく力になる。これは僕はプレイヤーの時にすごく感じてるんですね。皆さんの熱い声援が彼らにとって非常にいいものになりますし、それによっていいプレイが見られると思うので、僕らも同様に、皆さんとナビスコカップも日本のサッカーも盛り上げていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。
司会:ということで中西さん、今日は初めての2部構成でお送りしてきましたけども。
中西:初めて2部構成やりましたね。贅沢な2部構成。
司会:いよいよ土曜日に決勝が迫ってきましたけども。
中西:今年は本当に相当楽しみですね。今、ジェフもガンバも僕たちが見ていても面白いし、実際見に行っても楽しめるサッカーをしていると思います。サッカーを見ている人にとっては非常に面白いサッカーができているチームですから。あと、この後のJリーグの優勝争いも左右するような大きな試合になると思いますからね。
司会:そうですよね。
中西:初タイトルということもありますし、お互いこの試合に賭ける気持ちというのはすごく大きいと思うんで、例年よりもさらに盛り上がる決勝になると思います。
司会:では最後に、今日いらっしゃった皆さんにひとことお願いします。
中西:毎回言うんですけど、いつもこういう場に来ていただいてありがとうございます。僕もそうですし、井原さんも福田さんも今は引退して、サッカーを外から見る立場なんですが、サッカーのことを非常に愛してます。それから皆さんと同様にサッカーを非常に楽しんでいます。僕たちにできることはたくさんあって、1人でも多くの方と一緒にグラウンドに足を運んでもらって、サッカーって楽しいんだよと教えてあげることもそうですし、1人でも多くの人にサッカーに対する興味を持ってもらうのも僕たちの役割だと思います。それがサッカーを観ている人たちの、サポーターとしての大きな役目かなと思っていますんで、ぜひとも1人でも多くの方をお誘い合わせの上、国立競技場に11月5日、ぜひ足を運んでもらいたいと思います。Jリーグも終盤戦を迎えますし、今シーズンは優勝争いが非常に盛り上がってます。残り5試合、足を運んでいただいて、1人でも多くの方が会場に足を運ぶようなきっかけを、ここに来た皆さんが作っていただければ幸いです。ぼく自身も、テレビ、トークショー、サッカー教室その他でもっとサッカーが広まるように活動していきたいと思いますので、ご協力よろしくお願いします。今日はどうもありがとうございました。


取材・構成:CREW
撮影:新関雅士