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2006年6月11日、会場である「KIRIN SUPPORTER'S STATION」に訪れた大勢のJAPANサポーターが見守る中、「FIFAワールドカップ」に臨むサッカー日本代表の行方を、3人の論客が語り尽くした。トークバトルの模様を、フルバージョンで大公開!

ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2006 Vol.52
in SAMURAI BLUE PARK内 KIRIN SUPPORTERS' STATION
「どうなる!? サッカー日本代表」

Supported by:
KIRIN

横浜・赤レンガ倉庫内イベント広場B
KIRIN SUPPORTERS' STATION

<ホスト>
水内猛(スポーツキャスター)
'72年神奈川県生まれ。旭高から'91年に三菱自動車工業(現・浦和レッドダイヤモンズ)入り。Jリーグ元年には、浦和で出場試合数18試合、7得点と好成績をおさめる。'96年ブランメル仙台(現・ベガルタ)仙台に移籍。'97年の引退後はスポーツキャスターとしてテレビ・ラジオで活躍中。


<ゲスト>
早野宏史(サッカー解説者)
'55年、神奈川県生まれ。生田高、中央大時代から年代別の日本代表として活躍し、'78年日産FC(現横浜・Fマリノス)へ。'85年現役引退。'95年、横浜マリノス監督に就任すると、翌年マリノスを念願のJリーグ初優勝に導く。'99年から'01年まではガンバ大阪の監督もつとめ、現在は解説者として活躍中。

武田修宏(サッカー解説者)
'67年静岡県生まれ。'86年清水東高から読売クラブ(現・東京ヴェルディ1969)入り。'01年の引退までにジュビロ磐田、京都パープルサンガ、さらにパラグアイの名門スポルティボ・ルケーニョなど延べ7チームでプレーした。Jリーグ通算237試合出場94得点(歴代4位)、日本代表通算18試合出場1得点。現在は各メディアで活躍し、JFAアンバサダーも務める。

司会:「ぴあトークバトル・スポーツ快楽主義 VOL52 Supported by KIRIN」。このステージは、キリンビール株式会社の協賛でお送りします。それではまず、みなさんお待ちかねですね、本日のホストをご紹介いたしましょう。スポーツキャスターとしてご活躍中です。今日も午前テレビで見たという方もいらっしゃるんではないでしょうか、水内猛さんです。
水内:よろしくお願いします。
会場:拍手
司会:会場の方で今朝の「サンデージャポン」見た方!
水内:アハハ、視聴率悪いですねぇ。あまり見てない。
司会:そんなことないです。私は見れなかったんですけど、赤いネクタイをされていたという話で。関西テレビ、フジテレビでお忙しいですね、水内さん。どうぞよろしくお願いします。先週もここでホスト役でしたが、どうでしたか?
水内:先週は天気が良かったんで、たくさんの人に来ていただいたんですけど。今日は雨にもかかわらず、たくさんの方に来ていただいて。
司会:ありがとうございます。
水内:ぜひ、盛り上げたいなと思いますけど。
司会:私たちのこの距離がすごい不自然な感じがするんですけど。
水内:いや、これぐらいがいいじゃないですか?
司会:今日、初対面なのに、嫌わないで下さい、お願いします。そういえば私、今日のゲストの方々に関係する試合を観に行ったんですよ。柏レイソルと東京ヴェルディ1969の試合を。
水内:それは関係してますよ。
司会:ですよね。それではゲストをお呼びしましょう。早野宏史さん、それから武田修宏さんです。
会場:拍手
司会:改めてご紹介します。ここ神奈川県出身、横浜F ・マリノス、ガンバ大阪、柏レイソルで監督を歴任されました。サッカー解説でおなじみの早野宏史さんです。
早野:よろしくお願いします。
試合:そして、このぴあトークバトルではレギュラー出演者といっても過言ではない、武田修宏さんです。
武田:よろしくお願いします。
司会:さっそくですが、トークバトル恒例の「11の質問」にいきたいと思います。これから、私が出します「11の質問」にお手元の「YES/NO」の札でお答え下さい。そして、その回答についてじっくりとお話をうかがっていこうと思います。準備はよろしいでしょうか? では参ります、トークバトル恒例「11の質問」! 

質問武田早野水内
Q1 ワールドカップ開幕から5試合。全試合、観た!NONONO
Q2 開幕から5試合、予想外の試合結果があった。YESNONO
Q3 日本戦以外で、これだけはどうしても観たい!という気になる対戦がある!YES YESYES
Q4 全てを公開するジーコの方針は、心配だ!YESNOYES
Q5 その他にも、日本代表に心配な点がある。NONOYES
Q6 テレビ・ラジオで報道されない日本代表の裏事情を知っている。NONONO
Q7 オーストラリアには弱点がある。YESYESYES
Q8 対オーストラリア戦。日本代表が気をつけるべき点がある。YESYESYES
Q9 対オーストラリア戦。試したい先発メンバーの組み合わせがある。NONONO
Q10 日本代表は1次リーグF組を1位で通過する!NONONO
Q11 日本代表は1次リーグF組を2位で通過する!YESYESYES

司会:みなさん、ありがとうございました。興味深い質問もありましたけれど、それではここからメイントークへ移っていただきます。今の質問一つ一つについて、鋭く突っ込んでいただきましょう。水内さん、よろしくお願いします。
水内:いろいろほじくり返して行きたいと思います。さあ、「11の質問」、自分がどの札を挙げたか、ちゃんと覚えてますか? まず最初の質問、「ワールドカップ開始から5試合。全試合、観た!」というのは全員「NO」でしたけど。まだ開幕2日目ですが、早野さんはどの試合をご覧になりました?
早野:昨日のスェーデン戦(2006年6月10日、ドイツ・ドルトムント、スウェーデン0-0 トリニダード・ドバゴ)だけはまだ見てないんで、帰ってから見ようかなぁと思ってますけど。あとは全部見ました。
武田:僕はアルゼンチンの試合(2006年6月10日、ドイツ・ハンブルグ、アルゼンチン2-1 コートジボワール)だけ観てないですね。あとは観たんですけど、それを観てしまうと、仕事が仕事にならないと思って観てないです。寝ないと身体がついていけないです。
水内:僕はポーランド-エクアドル戦(2006年6月9日、ドイツ・ゲルゼンキルヘン、ポーランド0-2 エクアドル)だけ観てないですね。まだ2日ですけど、会場の方で全試合を観たという方いますか? 観たんですか? うっそ、すっげー. 寝た方がいいって。どうですか、早野さん、ここまでの5試合。
早野:予想外というゲームはなかったと思いますけども. やっぱり本番が始まると、テストマッチとは全く違った部分が出てくるなという感じを受けました。
水内:まず開幕戦のドイツ戦(2006年6月9日、ドイツ・ミュンヘン、ドイツ4-2 コスタリカ)はいかがでしたか?
早野:僕らは古いから、1974年に西ドイツで開催された「FIFAワールドカップ」を知ってますけど。ドイツ代表がホームで、ホストカントリーでやると、違ったものが出てくるんじゃないかなと感じたゲームでしたね。立ち上がりからものすごい圧力をかけて、早めに点を取って、取られてもまた取り返してという。ただ、最後はちょっとバテたかなと思いますけど、ちょっと目の色が違うゲームを観たという試合でしたね。
水内:本気の戦いがはじまったな、という。
早野:やっぱりテストマッチとは、心の入り方が違うんじゃないかと思いますね。
水内:武田さんは5試合のうち1試合は観てませんけども、ここまでの印象は?
武田:先週までドイツにいて、日本代表とドイツの試合(2006年5月30日、ドイツ・レーバークーゼン、ドイツ2-2 日本)とマルタ戦(2006年6月4日、ドイツ・デュッセルドルフ、日本1-0 マルタ)を生で向こうで観て、それで日本に帰ってからドイツの試合の開幕戦を観ると、やっぱり日本戦の時のドイツはちょっと調整試合だったのかなというような感じがしましたねぇ。あとは今までの試合で、ポーランドというチームは下馬評だとあそこのブロックでもうちょっと行くのかなと思いましたけど、エクアドルに負けましたから、その試合だけはちょっと予想外だったかなと。スポーツニュースで32カ国のランキングというのをつけさせられて、そこだけ自分の中では番狂わせがあったかなと。
水内:予想ではポーランドの方が上だったわけですね。
武田:そうなんです。
水内:早野さんは、予想外の結果は特にない。
早野:まだ5試合なんで、結果的にも今朝のアルゼンチンにしても、手堅いゲームをやってますし、メンバーもだいぶ変わってるんで。コートジボワールは予想以上に素晴らしいと思ったんですけど、試合の駆け引きの部分でアルゼンチンにやられたな、という気がしますね。
水内:たくさんの対戦がこれからもありますけど、「日本戦以外で、これだけはどうしても観たい!という気になる対戦がある!」。これは、早野さんは。
早野:全部観たいですけど、ポルトガルがらみのゲームを観てみたいなと。「FIFAワールドカップ」ではダークホースというのが出てきますが、1998年の「FIFAワールドカップ」ではクロアチアが出てきたり、2002年の「FIFAワールドカップ」でトルコが出てきたり。今回は2004年にユーロで観たポルトガルが結構行くんじゃないかなという気がしているので、ポルトガルのゲームを気にして観ていきたいと思います。
水内:今晩ありますからねぇ、アンゴラ戦(2006年6月11日、ドイツ・ケルン、ポルトガル1-0 アンゴラ)。 
早野:アンゴラ戦を見る前に、地図でアンゴラの位置を探してからですね。
水内:場所を確認してからですね。武田さんはイラン-メキシコ戦(2006年6月11日、ドイツ・ニュルンベルグ、メキシコ3-1 イラン)が注目とおっしゃってたんですけど。
武田:僕はメキシコに注目しています。去年「トヨタカップ」でメキシコに行きまして、メキシコは「コンフェデレーションズカップ」でも非常に活躍してまして、日本ではあまり北中米の国は強いというイメージないですけど、ひょっとしたらメキシコは行くんじゃないかなと思うので、メキシコに注目してます。
水内:他にもありますか。注目の対戦とか。
武田:昨日、パラグアイの試合(2006年6月10日、ドイツ・フランクフルト、イングランド1-0 パラグアイ)がありましたけど、僕はパラグアイのリーグも経験しているので、パラグアイというチームがどれぐらい行くのかなと注目してましたけど。自分の行ったことがある国にやっぱり注目しますね。
水内:ゆかりのある国ですね。僕は単純ですけど、オランダとアルゼンチンの試合(2006年6月21日、ドイツ・フランクフルト)を見てみたいですね、予選ラウンドの。3戦目なんでね。お互いにどう行くかというのは……
早野:2戦の結果次第ですけどね。もうすぐあるじゃないですか、セルビア・モンテネグロ-オランダ戦(2006年6月11日、ドイツ・ライプチヒ、セルビア・モンテネグロ0-1 オランダ)。これは見逃しちゃだめですね。
水内:今日の夜10時からありますから。べつにテレビ局の回し者でもなんでもないですけど。そして、「全てを公開するジーコの方針は、心配だ!」。武田さんは心配?
武田:心配です。
水内:早野さんは、心配じゃない?
早野:心配じゃない。隠していても仕方がないでしょう、ここまで来たら。公開してることは、ずっとやっていることだし。隠しても分かってしまう部分がある。スカウティングは結構されているので、隠しても仕方ないと思います。
水内:僕はちょっと心配だなぁと思ったんですけど、コーナーキックとかその辺は、隠してもいいなぁと思っちゃうんですけど。早野さんが監督の頃はどっちでした?
早野:基本的に非公開というのは選手の集中力を高める部分と、セットプレイというのは見せたくないんですけど、流れるんですよ。誰かがしゃべってるんじゃないか。こういう選手(武田)がペラペラしゃべってるとバレちゃう。でも、それはビデオを見れば大体分かるんで。選手たちが集中するようにするために非公開にすることが多いですね。
水内:武田さんは、どんなことが心配ですか?
武田:先週までヒディンク監督(フース、オーストラリア代表監督、オランダ・PSV アイントホーフェン監督)の練習を見たり、日本代表の練習を見てると、やっぱりヒディンク監督は、日本に対する全てのことを練習してると思うんですよ。スポーツ新聞に出ていたんですけど、昨日の練習で多分、日本に対してどういう風に戦おうかというのは戦略としてこうしたらこうする、こうしたらこうする、というのをやってたんで。試合の前の日ぐ
らいは、やっぱり情報っていうのは漏れるより漏れない方がいいと思うし、見せるより見せない方がいいと思うから。そういう意味では今回、日本が対戦するヒディンクさんがすごい分析家で、オーストラリアは日本がどういうシステムできても慌てないと思うんですよ。逆に日本は、オーストラリアが例えば3トップ、4トップで来ると、ビビって落ち着いてプレイできないんじゃないかというのが一番、心配ですね。
水内:オーストラリアの選手たちの方が、日本のことを分かりきってると。
武田:そう。日本が例えば途中から玉田(圭司、名古屋グランパスエイト)選手を入れても、オーストラリアはちゃんとその時はどうするか準備していて。逆に、オーストラリアが2トップから3トップや4トップで来た時に、日本はちょっと戸惑っちゃうかなというのが心配ですね。
水内:そういうところは監督の立場からするとどうなんですか? あっ、こんなことしてきたって思うものですか?
早野:いや、それはないでしょう。全部観てると思いますけど。ヒディンク監督の場合、2002年の「FIFAワールドカップ」の試合でも、3トップぎみの1トップで始まって、4トップにして、さらに2トップに変えてとか、ものすごく攻撃的に来るんです。オーストラリアも同じようにサイドから攻めてくるので、2トップにしたり、4トップにしたりする時も、準備は必ずしていると思うんです。ただ、確かに攻撃面ではオーストラリアは非常に勢いがあると思うんですけど、ディフェンスラインはかなり穴があるんじゃないかなという気がしますね。
水内:「その他にも、日本代表に心配な点がある」という質問では、代表に関しての心配はないとお二人はおっしゃってましたよね。早野さんは?
早野:もうすぐ試合なのに、心配なことがあったら戦えないですよ。選手たちももう分かっていて、オーストラリア戦に集中していくということなんで。
水内:僕はケガが心配だな、ということはありますね。この3試合を戦っていく上で。
早野:ただ、報道で出ているケガっていうのはかなり心配性が強くて、例えば中村俊輔(スコットランド・セルティック)の“違和感”というのが、今でもよくわかんないんですけど。
水内:よく野球選手が言いますよね、違和感って。
早野:ちょっと違った感覚というのが、よく分からない。よくドクターや選手に、「違和感があります」って言われるんですけど。何がどうしてどうなのかが、よく分からないし。彼らがオーストラリア戦に絶対勝つつもりで出て行く時に、そこに照準を合わせているわけで、今ケガしないために練習を抑えた、ということを僕は感じているんで、心配ないんじゃないかと思いますけど。
水内:各選手がそこに向けて調整をしている段階だからということですね。「テレビ・ラジオで報道されない日本代表の裏事情を知っている」。これは武田さんは「NO」って答えてましたけど、何か知ってるんじゃないですか?
武田:あんまり新聞を読んでないんで。
水内:でも、ドイツに行ったんですからね。
武田:どこがどう、皆さんが知っているのか。ドイツ-日本戦からずっと1週間向こうに行っていて、日本でどういう記事が書いてあって、日本でどういう事が言われているのか、ドイツに行って取材してると全く分からないですよ。日本はどれだけ盛り上がってて、どれだけ新聞に書いてあって、どれだけマスコミが注目しているのかということは、ドイツにいると温度差があって分からないんで。どの程度が分かっているのか。
水内:その程度でも言ってくださいよ。
武田:僕が知ってるのは、選手はだいたい試合以外では、DVDを40枚ぐらい持ってて、外出が禁止なんでそこで見ているとか。大黒(将志、フランス・グルノーブル)選手は「ストライカー伝説」というストライカーのDVDを見ているとか。
水内:ほーぉ。
武田:あとは、基本的には選手は出かけないですね。
水内:ドイツに入って長期間、およそ1カ月近く向こうにいるわけじゃないですか。外出というのは基本的には禁止なんですか?
早野:1998年の「FIFAワールドカップ」の時にも、代表チームはフランスのエクス・レバンというところにずっと詰めていましたけど、ほとんど出かけないし、今言ったようにDVDを見たり。これで1戦目が終わって2戦目になったりすれば、いろんなことがあって。2002年の「FIFAワールドカップ」で、ベルギー戦(2002年6月4日、埼玉スタジアム2002、日本2-2 ベルギー)の後にツネ(宮本恒靖、ガンバ大阪)に電話した時には、風呂場でミーティングをしたって話もしてましたから。今はリラックスしてる時間が多いんじゃないですか。ピッチで練習している時にいろいろコミュニケーションとる。で、第1戦のオーストラリア戦で、みんなが気持ちをひとつにして戦うという、そのスイッチの切り替えを上手くやってる方がいいと思いますけど。
水内:そういう意味では、選手たちもいろいろな経験を持っているから。
早野:そうですね。ずーっといたら精神が疲れちゃいますよ。
武田:この間も1日休みがあって、選手は出かけたいと思うんですけど、向こうには記者の人たちがたくさんいるわけですよ。選手は出かけられないから、この間の休み、中田(英寿、イングランド・ボルトン)選手は、飛行機に乗ってドイツから違う国に行って帰ってきたと思うんです、僕は。
水内:小野伸二(浦和レッズ)もロッテルダムに行ったって言ってましたね。
武田:でしょ? ドイツでは、休みにわざわざ違う国へ行って、のんびりして帰ってくるという。
水内:日本はどちらかというとそうですけども、外国のチームは国によって全然違うじゃないですか。恋人と会ってもいい。変な話、いろいろやってもいいっていうね……
早野:はっきり言ってよ!
会場:笑い
水内:そのへんはどうなんでしょうね。家族と会うのはいいとか、ダメとか。
早野:今までのケースだと、監督の考え方次第だと思いますよ。でも基本的にはコンパクトにして、チームメイトというひとつの形態を作るのがノーマルだと思います。
水内:それは国ごとの文化ですからね。
早野:昔の「FIFAワールドカップ」では、1986年メキシコ大会の時に、ブラジル宿舎の前でずっと敵チームのサポーターが騒いでたという事もあるらしいですし。部屋にいても眠れない状況を作ったり。「FIFAワールドカップ」というのはいろいろな出来事が起こりますからね。
水内:駆け引きもありますからね。さぁ、そして第1戦、オーストラリア戦(ドイツ・カイザースラウテルン、オーストラリア3-1 日本)はいよいよ明日、6月12日の日本時間午後10時キックオフなんですけれども。「オーストラリアに弱点がある」。これはどういうところですか。まずは武田さん。
武田:弱点というか、僕が見ていて、ディフェンスラインのボール回しが下手だなというのと、大きくて強いんですけどスピードがないという印象があるんで。やっぱり日本のスピードを。僕は先週、練習を見に行って、オーストラリアは日本とやる時に多分、一人
大きい選手を残して、みんな引いてくると思うんですよ。
水内:オーストラリアが。
武田:オーストラリアが引いて、残り20分になった時にフォワードを1枚から3枚にして、バックから長いボールを放り込んで、キューウェル(ハリー、イングランド・リヴァプール)選手も途中から入れるというような練習をしていたので。日本と対戦するときはそういう形でやってくるかと思うんで。逆に言えば、前半に日本が落ち着いてパスを回して、スピードのない選手とディフェンスのボール回しの悪い選手に対して点が取れればいいかなと。まぁ、勝つと思いますけどね。
水内:どちらかというと、オーストラリアは引いてくるんじゃないかと。
武田:引いて、ボール回しが悪いので、そのへんを日本はスピードとスルーパスで突くというのが僕の考えですね。
水内:早野さんは。
早野:武田さんが今言ったように、大きい選手をバックラインに揃えているんですけど足元が柔らかくないんじゃないかな。日本の2トップをチョイスした時に、スピードと運動量というところを選んでいて、すり抜ける所が非常に相手にとっては嫌じゃないかなぁと。そのためには中盤の球出しで、ヒデ(中田英寿)がどれだけ攻撃にからんでくれるかというところが、相手の弱点をどんどん浮き上がらせるんじゃないかという気がしますし。立ち上がりから完全に引くのか、今まで5試合を見てると、5分でも10分でも前からプレッシャーをかけて。多分、「日本は最初にロングボールを蹴ってくるんじゃないか」という読みがオーストラリア側にあると思うんです。それに対して跳ね返して、プレッシャーをかけてということをやる傾向が強いんじゃないかと。日本もその時にただ蹴るのではなくて、上手くスピードを出せるようなスペースでポイントで作っていけば、相手の1対1の対応がずれてくるので、チャンスが生まれると思いますね。
水内:普通に当たったら、あれだけの大きさがありますし、なかなか1対1で勝つのは難しい。やっぱりスピードと緩急の変化がカギになってきますかね。
早野:高原(直泰、ドイツ・ハンブルガーSV)、柳沢(敦、鹿島アントラーズ)のいいところは、非常にマークがしにくいタイプの選手ということだと思います、オーストラリアにとっては。そこを生かすも殺すも、中盤の球出しにかかってくる。プレッシャーを受けても、今の日本のいいサッカーのワンタッチプレイというものが出れば、必ずキラーパスが何本か出ると思います。
水内:中田英寿の名前が出てきましたが、日本の選手でカギになる選手というのは?
早野:やはり点を取るとなったら2トップだと思いますけど、ボランチとしてヒデがやってるポジションが、ボランチというよりは攻撃的に出て行くのが今の世界のサッカーの流れですから。そこで何ができるかというところが、得点に繋がっていくカギだと思います。
水内:それは中田英寿が十分できると。
早野:逆に言えば彼が出て行った後、福西(崇史、ジュビロ磐田)になると思いますけど。彼の両サイドのところをどうやってケアするのかというところが、しっかりできていればいいんですけど。さっき武田さんも言ってましたけど、ヒディンク監督は絶対に4トップとか考えていると思うんですよ。サイドに来た時に、一人のボランチではちょっと見づらい部分がある。両サイドが下がると余計に攻撃できない。このへん辺のバランスから、先手を取られなければいいと思いますけどね。
水内:武田さんはオーストラリア戦、どの選手がカギになりますか。
武田:早野さんが言ったように、ゴール前で人数を固めてきた時に、中田選手がキーマンになるなと。ある程度中盤のボランチでフリーになると思うんですけど。でも、ヒディンク監督は逆に中盤の選手に仕事をさせないようにするのかなとも考えて、もう一歩踏み込んで。すごい戦略家じゃないですか。僕も普通に見たら、みんなゴール前に固まってきて、中田選手がボランチでパスを出してフリーになると思うんですけど。多分そのもう一つ上で、キーマンは中田選手で、相手の長所を消すのがヒディンク監督で。そういう意味で、そう考えてきたらイヤだなっていう。明日は3ボランチで来ると思うんです、多分。
水内:ほお。
武田:昨日のオーストラリアの非公開の練習をメールで見たら、1トップでトップ下に一人ブレッシァー(マルク、イタリア・パルマ)を置いて、3人のボランチで、3バックで右サイドと左サイドが引いて5バックみたいな形で練習して、後半キューウェルとアロイージ(ジョン、スペイン・アラヴェス)を入れてやっていく。
水内:攻撃のサッカーを。
武田:攻撃のサッカーで。そういう練習をしたというので。まぁ中田選手ですけど、そこを3人の中盤で一人はつぶしてくることも考えられます。
水内:中田選手は十分マークされると。
早野:でも、日本がやってるサッカーというのは、パステンポが非常に早くなっているところで、やっぱり中村俊輔がヒデの前で、もっと高いところで動き出してキープすれば、ヒデも必ず浮いてくると思います。速攻という速攻、全部つぶされることはないと思います。2トップはずっとぺタッと張っているわけではないから、かなりポジションチェンジをしていく。浮く所が絶対あるんです。で、フリーキックが取れれば、俊輔の精度の高い球があるだろうし、高さはちょっと無理でも直接フリーキックがある。近いところでフリーキックをたくさん取ってほしいと思います。
水内:そういう意味では、ファウルを誘えるような柳沢選手、高原選手のドリブルというのは十分に生きてきますよね。
早野:そこで逃げないで、デカくても突っ込んでいけば、絶対にファウルをくれると思うんですよ。怖くて逃げるとファウルをくれないんで、そこは思い切って行ってほしいなと思いますね。
水内:そうですね。中村俊輔のフリーキックというのは、これはもう「FIFAワールドカップ」で1点ぐらいは見れそうですよね。
早野:今までの実績もあるし、可能性は高いですよ。
水内:日本の武器ですからね。今言ったようにオーストラリアも身長が高いし、クロアチアも身長高いですし、大きい選手が日本にも何人かいますけども、コーナーキックが攻めるチャンスですよね。その時の対策は。
早野:昨日、イングランドのデカい選手、クラウチ(ピーター、イングランド・リヴァプール)がいたじゃないですか。肘でのファウルをほとんどレフェリーが取ってくれてるんで、相手チームのパラグアイのディフェンダーが、顔を殴られてでも体をくっつけているシーンがあったじゃないですか。あれが参考になると思いますよ。とにかく顔の下に頭が入っているようだけど、体がくっついているという、そういうシーンが非常に多くて、上手く押さえられていたし。あとはちょっと遅れても、体勢が相手も崩れてるんで、落とされるところをみんながカバーしていくというやり方をすれば。あれがいい例だと思います。パラグアイもやられてませんからね。
水内:日本が気を付けなきゃいけないのは、しっかり競るということと、こぼれ球を拾うということになってきますね。
早野:ドイツ戦で日本が1点取られた時というのは、ツネが倒されてるんです。やはり身体をぶつけ合うところで負けないようにしないと。付いていくと跳ね飛ばされるから、自分からくっつきに行くような感じにしないと。デカいですから。
水内:デカいですよね。
早野:胸板も全然違うんで。ツネは髪型を気にしないで、バシッとぶつからなきゃいけないと思います。ハネてる場合じゃない、ぶつかっていかなきゃいけないと思います。
水内:あの髪形、なんでぺったんこにならないんでしょうね。
早野:時間かけてます!
水内:さすが監督! 試合前、時間かかってますか。
早野:かかってますよ。前に柳沢にインタビューに行った時に、彼がなかなか出てこないんですよ。そしたら秋田(豊、名古屋グランパスエイト、元鹿島アントラーズ)選手が、「コイツ、僕らからすると、なんか頭が乱れてるのかなって思う髪型に、30分かかる」って。
水内:へーぇ、柳沢選手が。
早野:武田選手の髪はペタッとしてますけど。
武田:僕は5 分ぐらいで出て行きますよ。
水内:武田さんがすごいのは、僕らがテレビ局に行くと、髪型とかプロにやってもらうわけですよ。僕なんか朝やってもらってそのままなんですけど。この人は必ず自分でジェルでペターっとやってるんですよ。絶対自分なんです。いじらせないんですよ。
武田:髪の毛って、みんな自分でやるんじゃないの?
水内:僕はやってもらいますけど、いろんな髪型できますから。武田さんは絶対いじらせないんですよ。で、髪型がずーっと一緒。
武田:ずっとじゃないですよ。面倒くさいんだもん、髪までいちいちねぇ。
水内:面倒くさいわりにはペターってやってるじゃない、ペターって。
早野:でも、あんまりオーストラリア戦には関係ないと思うんだけど。
会場:笑い
水内:宮本選手はそれを気にしながら。
早野:試合中はね、宮本は髪をバンドで押さえながら、常に声を出して。できるだけ1 対1にならないでほしいと思いながら、僕は観てますよ。
水内:宮本選手と相手が。
早野:そう。4バックでいっているときはいいんですけど、引き出された時は、ちょっと危ない場面が多いんだよね。
水内:そこは日本が気を付けなければいけない部分ですね。
早野:ツネはものすごく読みはいいんですよ。だけどスペースを持たれてくると、厳しい部分があるんで。そのへんは中澤佑二(横浜F・マリノス)や、坪井(慶介、浦和レッズ)がカバーして。
水内:そうですね。3バックのサイドのスペースっていうのは怖いですけどね。
早野:だから福西が戻ってくれると、彼はフィジカルが強いですから、ヘルプになると思いますけど。1ボランチなので、前へ行きぎみで、遅れぎみになってきた時というのは、厳しいですね。
水内:まぁ90分間を通して、できるだけそういった状況を作らせないというのが全てですかね。
早野:そうでしょうね。サッカーは同じリズムで90分というのはできないんで。今までの5試合を見ていても、立ち上がりにプレッシャーをガンガンかけているチームは、後半突然ガタッと落ちるんですね。武田さんが話してたけど、温度差が激しい。コンディションの持って行き方が非常に難しいし、イングランド-パラグアイ戦はものすごくいい天気で、完全にイングランドはバテましたよ。だから日本戦がどういう天気で、日本が今攻める時なのか、守る時なのかということが、共通理解が持てれば、自分たちのリズムが出てくるでしょうね。
水内:なるほど。そして「対オーストラリア戦、試したい先発メンバーの組み合わせがある」という質問。武田さんは。
武田:試すというか、ジーコ監督はもうある程度先発メンバーは決まってますし、今さら試すということより、今の考えのままで先発して、後半から出てない選手を使うというのもイメージしてますから。今は試すというよりも、自分の思ったことを信じてやるだけですから。そういう意味ではないです。
水内:武田さんだったら、この人は使いたいなぁというのは?
武田:僕は実際に、フォワードで柳沢選手と一緒にプレイしましたから、やっぱり柳沢選手が一番やりやすいですよ。柳沢選手はサイドでボールをもらうのが非常に上手いんで、いい起点になってくれて。柳沢選手が動いてボールを落としてくれた瞬間にボールをもらいに行けばいいんで。そういう意味ではフォワードの中では、柳沢選手というのはコンビを組むんだったらやりやすいですね。
水内:非常に相方のフォワードを生かしてくれる選手ではありますよね。
武田:そうですね。
水内:そういう部分をジーコ監督は望んでいるところもあるんでしょうね。早野さんはメンバーに関しては。
早野:いや、ここまで来て試してたら終わりでしょ。
水内:そうですね。
早野:例えば、大黒をいつ入れるのか、玉田をいつ入れるのかということも考えてると思いますし。4バックにして人数増やすということも当然やってると思いますから。相手に対して、どういうふうに自分たちが自信を持ってやれるかが、今、一番大切だと思いますね。そういえば、オーストラリアのケネディ(ジョシュ、ドイツ・ディナモ・ドレスデン)という選手。
水内:身長192cm のフォワード。
早野:デカい選手。これ、どうしましょうか?
水内:どうしましょうかね。「オーストラリアのサプライズ」と言われた、ドイツの2部リーグでプレイしている選手ですけども。192㎝の選手。やっぱりオーストラリアが負けていたら、出てきますよね。
武田:アロイージもいるし、3人いますもんねぇ。
水内:その3トップで来たら、どうします? ケネディ、アロイージ、ヴィドゥーカ(マーク、イングランド・ミドルスブラ)と。
早野:中澤、坪井、宮本?
水内:あとディフェンダー、誰がいましたっけ? 茂庭(照幸、FC東京)。
早野:あ、茂庭だったら顔で勝てるかもしれないねぇ。
水内:本当のパワープレイで向こうが来た時というのは。
早野:やっぱりマンツーマンで3人をつけるというのは、リスキーだから。でも、考えてると思います。
水内:本当に大きい選手がたくさんいますけどね。小野選手もすごくコンディション良さそうですけど、早野さんが監督だったら使いたいなという選手はいます?
早野:小野伸二はすごく上手いですよ。テクニックは抜群です。ただ、やっぱり今の流れで行って彼を試した時期もありましたけど、本番モードに入っていく中で、彼はリザーブのポジションになってるなと思いますね。浦和レッズを観ていても、前めで使ってマークを受けた時というのは、あんまり得意じゃないなと。
水内:後ろに人がいると。
早野:後ろからのパスというのは、ものすごくソフトタッチの、いいところに蹴りますけど。攻撃的にいくなら1ボランチで、彼に攻撃をさせるという形じゃないですかね。
水内:どんなメンバーが試されるのか。3試合ありますけれど、「日本代表は、1次リーグF組を1位で通過する!」という質問で、みんな「NO」と言いましたけど、まぁ1位じゃなくていいですよね。
早野:忘れてません? ブラジルがいること。
水内:そうなんですよ。F組のことを話していきたいんですけども、日本はグループリーグでどういう展開になったらいいと思います?
早野:ここは日本が一番盛り上がってるところでしょ。グループリーグを通過してもらいたいという気持ちは、ここにいる人たちみんなが思ってると思うんですよ。選手はそれ以上に思ってますし、「FIFAワールドカップ」に3大会連続で出た日本は、1998年のフランスとは違うチームで、今回は結果を残さないといけない。常連国になっていかないといけない。さっき言ったように自分たちの力を思い切って出していく。これが日本のスタイルなんだというのを見てみたい。ドイツ戦は2-2 で引き分けになりましたけど、いい形がかなり出ていたので。1位通過というのは……ブラジルをあまり軽々しく見たくないし。ブラジルには聞こえてないから言ってもいいんですけど、無理でしょう、それは。
水内:ブラジルを押しのけて、1位通過するのは。
早野:まぁ、普通に考えたら2位で行くことを狙うべきだと思いますけどね。
水内:武田さんは?
武田:そうですね、やっぱり普通2位ですよね。ブラジルの練習を見に行ったんですけど、あれだけの攻撃陣がいても、パレイラ監督(カルロス・アルベルト)がブラジル代表がスイスに入って一番最初に練習させたのが守備の練習ですから。徹底した守備の練習をやってましたから。そうした意味でブラジルは攻撃がすごいっていっても、今の監督が守備の練習をしている。ロナウジーニョ(スペイン・バルセロナ)選手もしっかり守備しているわけですよ。そういうのを見て、やっぱりブラジルは強いのかなと思いましたし、海外から日本を見ると、まだまだ日本というサッカーに対して、海外のメディアとかは「『FIFAワールドカップ』に出てるんだな」くらいで、認めてないんですよね。日本というものを海外では「サッカーが強い国だね」とはまだ認めてないんで、僕としては「FIFAワールドカップ」で決勝トーナメント出ることによって、これから海外に行く選手とか、世界にみなさんが行った時に、「日本ってサッカーが強い国だね」と言われるようになってほしいんですけど。そのためにサッカーが盛り上がるのはいいんですけど、今だけで終わってほしくないんで。1位とかじゃなくて、しっかりと2位で通過してもらって、行ってほしいなと僕は思いますね。
水内:1位じゃ駄目なんですか?
武田:1位でもいいんですけど、そんなに歴史というのは変わらないと思うんですよね。やはり一歩、一歩。ドーハがあって、1998年フランス大会で3連敗。2002年があって、それで今回という風に、そんなに急に歴史は急には変わらないのかなと思いますよね。
水内:日本がとにかく予選を突破するために、オーストラリア戦、クロアチア戦(2006年6月18日、ドイツ・ニュルンベルグ)、ブラジル戦(2006年6月22日、ドイツ・ドルトムント)とありますけども、どういう展開が望ましいですか?
武田:昨日もテレビで言いましたけど、第1戦で勝ったチームの87%が1次リーグ突破できるというデータもありますし。やっぱり第1戦は絶対に勝って、第2戦はクロアチアが多分ブラジルに負けてくると思いますよね、そうすると勝ち点0で日本は勝ち点3。そうするとクロアチアは、今度は勝ちにいかないといけないんですよ。クロアチアはどちらかというと守りの堅いチームなんで、リスクを負ってどんどん攻めて来るので、そのへん日本は第1戦勝ったらしっかりと落ち着いて向こうのミスを突いて、いい試合をしていくってことで。日本が第1戦に勝てば、第2戦クロアチアは第1戦でブラジルに負けてきますから、そのへんの気持ちのスタートの違いというものがありますから。そう考えると第1戦で勝って、第2戦でもひょっとしたら勝つという感じでいけばいいのかなと思いますけど。
水内:ブラジル戦は楽しむと。早野さんはどういう展開が望ましいですか。
早野:展開を考えるよりはオーストラリア戦に集中した方がいいと思いますね。オーストラリア戦で勝ち点3がベストだとしたら、勝ち点1がベター。ベターを最低取るように戦っていかないと。武田さんのデータでいくと、1回戦で勝ち点を取らないとダメなんでしょう? 
武田:第1戦を勝ったチームが87%で、第1戦に負けちゃうと7 ~8 %なんですよ。そういうデータがワールドカップにはあるんです。
早野:この武田データは当たってますから。
水内:みんな知ってますよね、そのデータ。
早野:そうなんです。知ってるんです。
会場:笑い
早野:クロアチア戦についてはケガ人が出るかもしれないし、変な考えをすれば、退場者も出るかもしれない。そんなことがあっても第1戦を勝ち点1以上、できれば3点を取って、次のクロアチア戦を迎える。もう準備はできてますから、そのシナリオを少しアレンジするくらいの形でいかないと、オーストラリアというのはそんなに簡単な相手ではないと思うんですね。
水内:オーストラリアも日本と同じ考えですよね。まず日本戦で勝ち点を取るという考え方はね。
早野:そうだと思います。逆に言えば、2002年にヒディンクが韓国代表を乗せてきたことを考えると、1戦目で勝ってくると乗ってますから。今、オーストラリアのサッカーというのは日の目を見始めて、みんなやる気満々ですから、ここで火に油を注ぐようなことになってくると、クロアチアも日本もかなりやばい状態になると思いますよ。
水内:武田さん、日本が2位通過したとしましょう。向こうのE組の1位通過、イタリア、チェコ、ガーナ、アメリカ。どことやりたいですか?
武田:僕は、決勝トーナメントで日本はイタリアとやってほしいですね。2002年は開催国ということで出場して、ベスト16に入りましたけど、今回ヨーロッパというアウェイですよね。敵地の中で日本がどれだけ予選を突破できるか。予選を突破するのも、2002年に日本でやったときの突破と、向こうでやった時の突破は違うと思うんですよ。そういった意味で、アジアのチームがヨーロッパで決勝トーナメントに行くということは期待したいですね。
水内:本当にもしイタリアと当たったら、全部カズさん(三浦知良、横浜FC)がいたところになるんですかね。オーストラリア、クロアチア、ブラジル、でイタリアもそうなんですけど。そんなの全然関係ないんですが、イタリアとやるところを見たいですよね。
早野:この大会が始まる前、自分なりにグループの組み合わせを見てるんですが。そうすると、これだったら当たりやすいかなというところはほとんど出てこないですから。別にイタリアでもどこでも。要は「FIFAワールドカップ」というのは10試合も20試合もやるわけじゃないですから。
水内:最高で7試合ですからね。
早野:1試合の集中力というのがものすごく大切になってくると思うんですね。イタリアだろうがチェコだろうが、そのへんが出てきた時というのは、当然スカウティングのスタッフが情報を集めてますから。日本は予選リーグ3試合やってて、無事な体でいられるやつが何人いるのかなって思ってるんですよ。
水内:この前のドイツ戦でもケガ人が出ましたしね。
早野:日本は100 %の力を全て出し切って、可能性があると思うんですね。その時のケガの状況とかコンディションというのは、かなり痛手を受けてるんじゃないかと思うんですね。そこから先が大切なんで、相手がイタリアだったらいいとかいう問題じゃない。2002年に日本と韓国でやっている時というのは、他のチームが極東に来る間の時差とか、湿気とか、匂いとかいろいろところでハンディキャップがあったんですね。ヨーロッパで決勝トーナメントに行ったら、日本は今度はヨーロッパのサッカー界から評価を受けます。負けていいということではないが、そこに出るということはベスト16の意味が2002年「FIFAワールドカップ」の時よりもあると思うんですね。
水内:100 %出た時のリバウンドもあるかもしれないですけど、決勝トーナメントでやる姿をみたいですね。
早野:ドイツ戦だけでもあれだけケガするんです。オーストラリアというのはオージーボールをやってますから。あまり関係ないですけど。オーストラリアは今回プレーオフでウルグアイに勝ったチームですから。以前、アルゼンチンとプレーオフに行った時とはチームもかなり違ってます。パスもつなぎます。ただ、変わってないのは非常に激しい当たりなんですよ。打撲だけで済めばいいんですけど、いろんなところでオーストラリア戦、クロアチア戦もかなりハードなチームだと思いますから、ここを乗り切って決勝トーナメントへ行って、僕は勝ってほしいなと思います。そこに意義があります。
水内:レフェリーの基準も国によって相当違いますからね。
早野:5試合見てもね、メキシコの審判とベルギーの審判では違いはありますよね。
水内:オーストラリアの選手も退場を気をつけないといけないですよね。レフェリーによっては。
早野:外国の選手って、そこまで抑えられないと思いますよ。血が、行っちゃう血だと思うんです。だからうまく逃げて、イエローカードをもらって、退場にさせるとか、そういうことを賢くやったほうがいいと思いますよ。
水内:このあいだもオランダとオーストラリアの親善試合(2006年6月4日、オランダ・ロッテルダム、オランダ1-1 オーストラリア)でも、オランダの選手3人がケガして退場してしまいましたから。そんなことが1戦目にないようにしたいですね。でも、オーストラリアと日本だったら、南米かヨーロッパの人が審判やりそうですよねぇ。イヤですね。
武田:南米だったらいいんじゃない?
早野:そこの戦いではないような気がするんですけど。
水内:そういうレフェリーの兼ね合いもありますけどね。ズバリ、この「FIFAワールドカップ」の優勝予測。ありがちですが。じゃあ、まず武田さんから。どういうチームに期待して、どこに優勝してほしいですか?
武田:僕はフォワード出身なんで、フォワードの選手が活躍してもらえれば、日本の人たちにもいい勉強になるし。日本ってなかなかストライカーが育たないと言われてるんで、オランダのファン・ニステルローイ(ルート、オランダ代表、イングランド・マンチェスター・ユナイテッド)とか、フランスのアンリ(ティエリー、フランス代表、イングランド・アーセナル)とか、フォワードのいい活躍を日本の子供たちに見てもらって、こういうフォワードになりたいなっていうような夢を持ってもらって。最終的には僕は読売クラブ時代からずっとブラジルのチームが意識の中にあるんで、やっぱりブラジルが優勝してもらいたい。普段はすごい明るいんだけど、でも試合になると真面目になって勝っちゃうという。勝って、みんなサンバ踊ってるような明るいチームに勝ってほしいですね。ブラジルが勝つかヨーロッパが勝つかで、ヨーロッパが勝っちゃうとああいう組織で、決まりとか規律とかあるチームが勝たなきゃいけないんだって思いがちじゃないですか。南米が勝つと、あぁやっぱりブラジルが勝ったからって。全然違うわけですよ。ヨーロッパが勝つか、ブラジルが勝つかによって、日本のサッカーも世界のサッカーもどっちを目指すかというのが変わっちゃうわけですよね。そうなった時に僕は自由奔放なサッカーが好きなんで、南米に勝ってほしいなと思います。
水内:武田さんはブラジルのサッカーが好きなんですか?
武田:南米が好きですね。アルゼンチンもそうだし、パラグアイもそうだし。僕はパラグアイのチームに入団していたんで、あっちのサッカーは好きです。
水内:じゃあブラジルに期待しながら、ストライカーに注目して。早野さんは。
早野:ここにいらっしゃる方は、ブラジルのタレント性を見れば。昔はヨーロッパの大会はヨーロッパのチームが優勝、南米でやってる大会は南米のチームが優勝というのが段々崩れてきてるのは、ブラジルの選手がほとんどヨーロッパでプレイしているんですね。その分のタレント性というのはブラジルが一番高いと思います。ただそこには、ヨーロッパの意地もきちっと持って出てくると思いますね。2004年ユーロでやったポルトガルに僕は期待してますけど。ヨーロッパのチームが必ず敵対心をむき出しにして。フランスだってジダン(ジネディーヌ、スペイン・レアル・マドリード)の最後ですしね。もう、私もジダンの話をできなくなります。
水内:「ジダンが地団駄踏んだ」っていうのは早野さんが言ったんですか?
早野:そうらしいですよ。武田さんの考え方もいいですけど、僕は日本がヨーロッパ型か南米型かというのではなくて、日本型で来ていると思うので、これをどんどん今回の大会で出し続けて、どれぐらいの力があるのか、もっと上に行くのかというところを見極めてほしいなと思います。
水内:そういった意味では、今回の大会というのは日本サッカー界においても重要な大会ですよね。
早野:サッカーというのは、ヨーロッパならユーロもありますし、南米もそういう大会が「FIFAワールドカップ」の間に必ず入ってきて、「アジアカップ」なんかもありますけど。そういう節目のところで自分たちの力を出していくことによって、節がどんどん増えて竹のように大きくなって行くものですから、やっぱりこの節目の大会で手抜きをせずに100 %出してほしい。それが次に繋がると思います。
水内:一番下が駒野(友一、サンフレッチェ広島)の24歳ですからね。みんな一番いい時を迎えているこの大会。
早野:1998年のときは小野伸二選手が19歳だったり。市川(大祐、清水エスパルス)を連れてったりとかっていうのは、今回ジーコはないんですよ。次の代表というのは、また日本のサッカー協会のシステムでどんどんできてますから。アジア大会とかユース大会とかでやってもらって、それを融合するような形に今なってますから、今の駒野とかはそれを経験しておいてもらいたいと思いますね。
司会:お時間になりました。あっという間でしたけど。裏で聞いていて、すごく勉強になりました。みなさんもいろいろな考えがあって、いろいろな意見があって、きっと思ったことがあるかと思うんですが、オーストラリア戦が明日いよいよ始まりますけれども、ぜひ応援を!
水内:キリンビールを片手にね。
司会:ぜひキリンビールを片手にみなさんも応援していっていただきたいと思います。1 時間、あっという間でしたけれど、いかがでしたか?
武田:今日、僕はここに初めて来たんですけど、こんなに人が大勢いるんだとびっくりしました。今日は本当に楽しかったです。来週から決勝戦まで3週間ドイツへ行って試合を解説したりするんですけど、向こうでも中田君とか一生懸命頑張ってますし、この「FIFAワールドカップ」で、もっと日本でもサッカーというものをみんなに知ってもらって。そして、子供たちが今いっぱい来てますけども、夢を持って、文化としてサッカーがしっかり根付くようになってほしいなと。「FIFAワールドカップ」で終わっちゃうんじゃなくて、これからもずっとサッカーが人気があってほしいなと思います。
司会:ありがとうございました。
早野:雨の中、こんなにたくさんの人がサッカーが好きで来ていただけるっていうのが、サッカーをやっている人間としてはすごく嬉しいことですし、逆にみんながサッカーの中から何かを得てもらえれば。楽しさとか、感動した場面とか、悔しさとか、そういうのが伝わっていけば、たぶんサッカーの虜になっていくと思いますし。特に小さい子たちには、すごいプレイを目を3倍くらいにして見てもらいたいと思います。
司会:この「FIFAワールドカップ」をきっかけに、サッカー人口が増えて行くといいなと思いますね。ありがとうございました。本日のゲスト、早野宏史さん、そして武田修宏さんでした。どうもありがとうございました。
水内:やっぱり日本代表の話になると、どうしても真剣な話になってしまいますけども。
司会:でも裏話も聞けて楽しかったですよ。あの、髪の毛がどうだとか。
水内:宮本選手。やっぱり気になりますよね。
司会:気になってました? 現役時代。
水内:僕は気にしてなかったですけど、宮本選手が髪の毛を直してるのが気になる。中澤とかも、ずっとこうやってるのが気になる。
司会:それにしても水内さん、髪の毛、伸びましたよね。
水内:僕は選手じゃないから。選手の時はイヤだったんですよ。髪の毛が目に入ったりするのがイヤだったんで、ヘディングする前に髪の毛かきあげるな! 切れ! 中澤選手を見てればわかりますけど、キーパーが長いボールを蹴るなと思ってるときに、髪を直してるんです。もう準備してますから。
司会:そうなんですか。ぜひ明日、こちらのほうにも注目してご覧になってください。
水内:そんなことより勝ってほしいですね。
司会:ぜひ、楽しませていただこうと思います。そして来週の日曜日6月18日も、ここ、KIRIN サポーターズステーションで、早野宏史さん、遠藤雅大さんをゲストにお迎えいたしまして、「ぴあトークバトルVOL53 クロアチア戦直前スペシャル」をお送りいたしますので、ぜひお時間がありましたらみなさんいらっしゃってください。
水内:来週もここへ来ますけど、クロアチア戦前なんで、ぜひ明日は勝って、いい気持ちで来たいですね。ぜひ、皆さんもいらしてください。早野さんがいろんなネタを紹介してくれると思いますんで。
司会:「ジダンが地団駄」、ですね? 本日のホスト、水内猛さんでした。ありがとうございました。
会場:拍手
司会:みなさん、お楽しみいただけましたでしょうか。いよいよ明日、6月12日 オーストラリア戦、そして6月18日クロアチア戦、6月22日はブラジル戦です。ドイツに行かれるという方いらっしゃいますか? さすがにドイツは遠いですから、みなさんも日本で精一杯応援しましょう。本日のぴあトークバトル、キリンビール株式会社の協賛でお送りいたしました。みなさま足元のお悪い中、たくさんお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。本日のお相手は枦山南美でした。どうもありがとうございました。

取材・構成:CREW
撮影:新関雅士