今回の舞台版で主演をつとめるのは、1999年の『セツアンの善人』以来、13年ぶりの舞台出演となる高橋克典。瑞々しくエネルギッシュな『十三人の刺客』にすべく、密命を受けて同志を集める刺客のリーダー・島田新左衛門(しまだしんざえもん)役に抜擢された。高橋が持つ面倒見のよいダンディな兄貴分的な一面は、まさに上役や同志の信頼を集める新左衛門にぴったり。また、一本筋の通った男らしさの中にも色気や繊細さを感じさせる俳優だけに、義と情の狭間で葛藤する、これまでにない新左衛門像も期待される。「やるからには自分なりのものも探して、このキャストだからこそ出せる魅力ある作品にしたい」と意気込みを語る高橋。舞台版ならではの凛々しく瑞々しい新左衛門が誕生するに違いない。
そして共演は、今回が初舞台となる坂口憲二。新左衛門と旧知の仲でありながら、敵味方に分かれて刃を交えることになる明石藩主の側用人・鬼頭半兵ヱ(きとうはんべえ)を演じる。「前から時代劇はやってみたかったんです。殺陣も基礎からきちんと勉強したいと思っています」と坂口。長身で運動神経も抜群なだけに、まさしく刺客たちの前に立ちふさがる強靭な壁となるだろう。一方で、ピュアで真っ直ぐな持ち味も魅力的な坂口。不器用なまでに己の“侍の一分”を貫こうとする半兵ヱにも期待したい。いずれにせよ、30代のフレッシュな俳優が演じる半兵ヱは、間違いなくこの作品に新たな風を吹き込むことだろう。
ヴィジュアルも身体能力も抜群の2人が舞台上で火花を散らす姿を想像しただけでも、おのずと期待は高まる。時代劇に興味がなかった人をも惹き付ける『十三人の刺客』が、ここに誕生する!
明石藩主をつとめる傍若無人な将軍の弟を暗殺するために集まった十三人の刺客と、その密謀を阻止しようとする明石藩士たち。幕閣への昇進を控えた暴虐な藩主をめぐる、武士たちの死力を尽くした戦いを描く傑作時代劇が、初めて舞台化される。 原作は、1963年に公開された池上金男(池宮彰一郎)脚本、工藤栄一監督、片岡千恵蔵主演の映画の脚本。命を賭して任を果たそうとする男たちの戦いは、迫力満点の殺陣シーンとあいまって“集団抗争時代劇の決定版”と評判を呼び、2010年には三池崇史監督、役所広司主演によってリメイクされている。
混迷する政治、不安定な現実、不透明な先行き。そんな中で人と人との絆が見直されている今だからこそ、あえて生身の俳優たちの渾身のエネルギーで放つ“侍エンターテイメント”。世のため人のため、そして己の義のために命懸けで戦う男たちの生き様は、観る者の胸を熱く打つに違いない。
そんな豪華キャストの共演が実現した本作品の演出を手がけるのは、自身も時代劇ファンであり、演出のみならず脚本でも数多くの演劇賞を受賞しているマキノノゾミ。脚本は、そのマキノと、2010年のコクーン歌舞伎『佐倉義民伝』の脚本も手がけた鈴木哲也が2人で担当。池宮彰一郎によるオリジナル原作をもとに、新左衛門の“妻”という新たな設定を加え、注目だ。さらに、新左衛門と半兵ヱが剣の腕を競い合った青春時代や恋、命運をともにする十三人の刺客たちの“絆”を描き出すことで、骨太な人間ドラマとしての側面も構築。まさに舞台版ならではの『十三人の刺客』になっている。
また、映画でも大きな見どころになっていた壮絶な殺陣シーンも話題必至。2004年の舞台『浪人街』で、30余名による20分超の大立ち回りをステージングした渥美博が、殺陣を担当する。生身の俳優たちが目の前で繰り広げる大迫力の死闘は、間違いなく新たな伝説を生み出すことになるだろう。
1993年に「抱きしめたい」で歌手デビューし、同年ドラマ「ポケベルが鳴らなくて」(NTV)で俳優デビューを果たす。99年に主演したドラマ「サラリーマン金太郎」(TBS・99~04)で主人公を熱演しシリーズ化や映画化され人気を博す。さらに03年に主演したドラマ「特命係長只野仁」(EX・03~12)もシリーズ化、映画化されるなど大ヒットとなった。高い演技力で軽妙な役から重厚な役まで幅広い役を演じ、ドラマ・映画と数多くの作品に出演している。近年の主な出演作に、映画「私の叔父さん」(12.4.7公開予定)、「誘拐ラプソディー」(10)、「新・仁義なき戦い」(03)、「竜二Forever」(03)、ドラマ「家で死ぬということ」(NHK・12.2.25OA)、「チーム・バチスタ3『アリアドネの弾丸』」(CX・11)、「悪党~重犯罪捜査班」(EX・11)、「同窓会~ラブ・アゲイン症候群」(EX・10)、「官僚たちの夏」(TBS・09)、「オトコの子育て」(EX・07)などがある。舞台は99年の「セツアンの善人」以来二度目の出演となる。
1999年に雑誌モデルとしてデビューし、同年ドラマ「ベストフレンド」(EX)で俳優としてもデビューする。以降、数多くの映画、ドラマに出演。06年に主演しシリーズ化もされた「医龍-TeamMedicalDragon-」(CX)では、重厚な演技で高い評価を得た。近年の主な出演作に、映画「機関車先生」(04)、ドラマ「刑事・鳴沢了」シリーズ(CX・11)、「君たちに明日はない」(NHK・10)、「最後から二番目の恋」(CX・12)、ドキュメンタリー番組「夢の扉+」(TBS・11~・ナレーション)などがある。趣味のサーフィンを通じて魅力を伝えるテレビ番組のほか、現在は「坂口憲二私旅行アジア万感」でアジアの国々を巡り、その土地の生活を体感するドキュメンタリー番組にも出演している。「坂口憲二私旅行アジア万感」(BSフジ)、「海から見た、ニッポン坂口憲二の日本列島サーフィン紀行」はDVD発売されている。舞台は本作が初出演となる。
【コメント】片手間にできるものではないからと、舞台からちょっと逃げていたところがあったんですが、役者を始めて13年目の今、何か新しいことにチャレンジしたいと思って出演を決めました。正直、今は期待よりも不安のほうが大きいですが、時代劇にも殺陣にも前から興味がありましたし、デビュー当時からお世話になっている克典さんも心強い存在。いろんなことを吸収して、スピ ード感溢れる男臭いこの作品の中で、僕なりの強さや色気というものが出せるようになれたらと思っています。デビューした頃の気持ちを思い出して、周りの皆さんと一緒にいい舞台にしたいと思います。
【コメント】和モノはほとんどやったことがないですし、舞台は一朝一夕にできるものではないという思いがあって、最初はお断りしたんですが、同じ事務所で頑張ってきた坂口くんの初舞台ということで、お引き受けしました。やるからには、後輩の坂口君には負けられません。皆でつくっていく過程を楽しみながら、自分なりのものも探して、僕らだからこそ出せる魅力のある舞台にしたいですね。きっと、このキャストならではのアクティブでスピード感ある現代時代劇になるんじゃないでしょうか。その中で、新左衛門と半兵衛という2人の男の因縁や生き方が浮き彫りになればと思います。