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チケットぴあインタビュー

ダニール・トリフォノフ

ダニール・トリフォノフ
2010年のショパン国際ピアノ・コンクール第3位、2011年にルービンシュタイン国際ピアノ・コンクールとチャイコフスキー国際コンクールで優勝の快挙を遂げたダニール・トリフォノフ。
今年の2月にカーネギーホールでのリサイタルを成功させた若き才能が、来日リサイタルに向けて、電話インタビューに答えてくれました。

――今年2月のカーネギーホールでのリサイタル、大成功と伺っています。特別な経験になったと思いますが、いかがでしたか?


ありがとうございます。もちろん、豊かな歴史を誇るカーネギーホールでのリサイタルは、私の音楽活動の中でもとても大きなイベントでした。それは、音楽家ならだれでもそう感じると思います。なにしろ、ありとあらゆる偉大なアーティストたちが、この舞台に立ってきたのですから。聴衆の皆さんもハイレベルな演奏を聞いてきた、とても“耳の肥えた”方々です。聴衆の醸し出す雰囲気というのも、とても特別なものがありました。力を与えてくれる、というか。聴衆のおかげで、さらに余力が引き出された、というか。

とても幸せな時間でした。カーネギーホールのピアノの質は、素晴らしかったです。感動しました。私の演奏会はライブ録音され、いずれドイツ・グラモフォンからリリースされることになっています。(年内にリリースの予定らしいです) そんな素晴らしいピアノでの演奏は、マイクがそれぞれの音のディティールを拾ってくれます。私にとって最初となるCDが、そのような素晴らしいホール、素晴らしいピアノで実現したことを、とてもうれしく思います!

当日はババヤン先生もクリーブランドから聞きに来てくれました。それも精神的な支えになりました。先生もとても喜んでくださいました。


――今回のツアーではその時と同じプログラムです。プログラムについて、聞きどころは?


このプログラムでは、ドラマティックな作品を集めました。リストのソナタは、彼の音楽の頂上に輝く作品の一つと言えましょう。無限に広がる視野、限りない解釈。ピアノ作品の中でも、もっとも深みを極めた作品の一つです。

ショパンの前奏曲集は、イメージの異なる24の作品それぞれが、互いに結び付き、次から次へと流れていきます。感情、気持ちの起伏が全く対照的な作品群の集大成。特に最後、23曲目と24曲目にショッキングまでのクライマックスがやってきます。演奏会では、24曲の中から抜粋で数曲演奏されることも多々ありますが、今回は24曲全部をチクルスとして弾きます。それは24曲一つ一つのイメージを伝えながら、一つの大きな作品としてもまとめあげることが必要です。24曲を通しての発展、盛り上げ方、同時にその要素となる一つ一つの前奏曲の紡ぎ方が大切になります。

スクリャービンの「幻想ソナタ」は、作曲家の青年期のもっともドラマティックな秀作の一つです。今回のプログラムの中で、このソナタは、いわば“前奏曲”の役目を果たします。このソナタの嬰ト短調の第2楽章は、ショパンの前奏曲集の12番と調性が一致します。ほかにも大きな共通性があり、面白いのではないでしょうか? 第1楽章も、第2楽章も「海」のイメージが貫かれています。静かな「凪」から荒れ狂う海の様子まで、あるいは小さな「小川」から「大海」まで。非常にコントラストの大きな作品です。そのようなイメージを感じていただければ、と思います。


――韓国公演のプログラムに入っているストラヴィンスキーの「火の鳥」組曲は、ぜひ聞いてみたいですね。この作品について、思い入れは?


まず言いたいことは、「火の鳥」というオーケストラの大曲を見事にアレンジしたイタリアのピアニスト(彼はピアノ教師でもあります)に心から敬意を払います。オリジナルで魅了されるオーケストラの各楽器の魅力的な音色を見事に、ピアノに映し出しました。今回の組曲はカーネギーホールでアンコールで演奏した「凶悪な踊り」と、「子守唄」「フィナーレ」をほとんどアタッカで演奏します。


――日本で演奏いただけないのは残念です。


アンコールで弾くかもしれませんよ!


――トリフォノフさんご自身も作曲・編曲されますから、興味があるのでしょうね?


はい! 私も時間許す限り作曲をしています。編曲では、シュトラウスの「こうもり」序曲をピアノヴァージョンにアレンジしました。作曲のほうは、もうすぐピアノ・ソナタが完成します。


――そうなんですか? 何番目のソナタになるのでしょうか?


これが最初のソナタです! 4つの楽章から構成されています。別に、ピアノ協奏曲もほぼ出来上がっており、あとはオーケストレーションのみです。こちらは3楽章です。


――チャイコフスキー国際コンクールでは、2人目のグランプリという快挙を果たされました。以後2年の間にどんな変化がありましたか?


ショパン・コンクール、ルビンシュタイン・コンクールでの入賞、優勝も大きかったですが、やはりチャイコフスキー国際コンクールでのグランプリをきっかけに、私の人生は大きく変わりました。

チャイコフスキー国際コンクールは、僕を知ってもらうためのことがとても多かったです。ネット中継を通して世界中で生の演奏を聞くことができました。ホールにも、多くの聴衆が集まっていましたし、本選では、ほとんど空席がないほど客席は人であふれていました。若い人たち、学生たちの姿が多かったことが印象に残っています。

コンクールの後、演奏会の数がぐっと増えたこと、そしてレパートリーが広がったことが、一番大きな変化です。それにともない時間の配分が難しくなりました。演奏会に向けての準備、あいている時間には新しいレパートリーに取り組み、さらに作曲のための時間も割かなければなりませんから。

たとえてみれば、小さな田舎町からいきなり大都会に“上京”した時の気分に似ているかもしれません。時間の流れ、リズムが全く違いますし、生活のテンポも変わりました。最初は新しい生活リズムに慣れるのに時間を要しますが、次第に体が慣れてくる… そんな経験、あるでしょう? この2年は、まさにそんな感じでした!


――コンクール後、あなたの周りの環境も大きく変わり、新たな出会いも多かったでしょう? ご自身に影響を与えた出会いはありましたか?


先ほどの質問に対する答えの続きにもなりますが、コンクールが私にもたらしてくれた一番貴重なことのひとつは、素晴らしい指揮者たちとの共演です。ワレリー・ゲルギエフ、ミハイル・プレトニョフ、ロリン・マゼール、ズビン・メータ、アラン・ギルバート、シャルル・デュトワ…。それぞれの指揮者が自分の世界や方向性を持ち、毎回の共演は私にとって大きなレッスンになっています。新しい視点を開眼し、音楽的解釈を豊かにしてくれます。そのような共演は、私にとって大切な経験になります。


――中でも忘れられない演奏会は?


たくさんあって、一つ、二つを選ぶのは難しいですが… たとえばカーネギーホールで初めて演奏した時のこと。あれはチャイコフスキー国際コンクール後まもなく、マエストロ・ゲルギエフとマリインスキー劇場管弦楽団と、チャイコフスキーの協奏曲を共演しました。とても興奮、感動しました! ほかに、日本での最初の演奏会も思いで深いです。サントリーホールでの演奏会とか…。


――その出会いの中で、目標としたい人との出会いはありましたか?


昨年5月に招かれた別府のアルゲリッチ音楽祭で、アルゲリッチさんの演奏を目の前で聞いたときには、体が震えるような感動を覚えました。室内楽を聞いたのですが、ピアノを通して流れ伝わってきたアルゲリッチの哲学に、心を奪われました。とても勉強になりました。


――それまでにアルゲリッチさんと会ったことはありましたか?


ショパン・コンクールで、審査員の方々と懇談する機会があり、その時に初めてお目にかかりました。でも話を少ししたぐらいで、もちろん彼女の演奏を聞く機会などはありませんでした。それが去年は、生の演奏を身近で聞くことでき、本当に至福の時間でした。


――また別府に行けるといいですね!


はい! 私にとっては、大きな名誉です!


――ところで、もっとも好きな作曲家は?


(しばし沈黙して)次の演奏会で弾く作曲家! 次に、プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団とチャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏します。ですから、今一番好きな作曲家は、チャイコフスキー、ということでしょうか…。


――ロシア音楽の魅力はなんでしょうか?


音楽の多様性。それから、音色を巧みに生かす手法。たとえばスクリャービンやラフマニノフなどもそうです。ロシアの作曲家は、ドイツ音楽に大きな影響を受けています。チャイコフスキーにしても、多くの作品にシューマンをはじめとするドイツ音楽の影響を感じ取ることができますよね。彼のOp. 72「18の小品」の中の、「少しシューマン風に」(第9曲)や「少しショパン風に」(第15曲)を見ても、それがわかります。スクリャービンにしても、特に彼の初期の作品にはショパンの影響が見て取れます。マズルカや前奏曲などに表れている音楽的の言葉は、ショパンのそれと似ています。


――日本と韓国、それぞれ行ってみたいところは? 食べ物は?


韓国は初めての訪問です。残念ながらあまり時間がなさそうですが、できる限り街を見て、肌で感じてみたいと思っています。

日本では… そうだ、いつか富士山に登ってみたい! 日本食は大好きですよ! 特に地方の特産物を試してみるのが好きです。去年訪れた山形でも、地元の食べ物を試しました。


――初めて食べるのは怖くない?


ぜんぜん! その点、私はいつも「オープン・マインド」なんです! もちろん、お寿司も、生の魚も平気です!


――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。


また日本に行く機会を持て、とてもうれしく思います! 日本の聴衆の前で弾くことはいつも楽しみです。みなさん、とても一生懸命聞いてくださり、私にプラスのエネルギーを送ってくれますから。演奏会の最中に“充電”できるんです。 日本でのこれまでの演奏会は、どれも思い出深いものです。日本を離れるときにはいつも、また帰ってきたい!と感じます。


提供:ジャパン・アーツ


■ダニール・トリフォノフ ピアノ・リサイタル
【日時】2013年6月14日(金) 19:00開演
【会場】東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

【曲目】
スクリャービン:ピアノ・ソナタ第2番 嬰ト短調「幻想ソナタ」Op.19
リスト:ピアノ・ソナタロ短調 S178/R21
ショパン:24の前奏曲 Op.28
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ダニール・トリフォノフ

ダニール・トリフォノフ

Photo by 青柳聡

ダニール・トリフォノフ

(c)Vadim Shults

プロフィール

■ダニール・トリフォノフ Daniil Trifonov (ピアノ / Piano)
2010年 第16回ショパン国際ピアノ・コンクール第3位、マズルカ賞 受賞。
2011年 ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクール第1位、聴衆賞、室内楽ベスト・パフォーマンス賞、ベスト・パフォーマンス賞受賞。
2011年 第14回チャイコフスキー国際コンクールグランプリ、第1位、聴衆賞受賞。
1991年ロシアのニジニ・ノヴゴロド生まれ。タチヤーナ・ゼリクマン、セルゲイ・ババヤンに師事。現在もババヤンの元、クリーヴランド音楽院で研鑽を積んでいる。2011年にはルービンシュタイン国際ピアノ・コンクール優勝と第14回チャイコフスキー国際コンクールでのグランプリ及び第1位に輝いた。2010年ショパン国際ピアノ・コンクールで第3位入賞。これまでにも、権威ある国際コンクールでの優勝・入賞歴多数。
すでに、欧米、ヨーロッパ、アジアの各国で演奏を行っており、ウィーン・フィル、マリインスキー管、ワルシャワ国立フィル、ローザンヌ・シンフォニエッタ、サン・マリノ響、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響、ウィーン放送響、モスクワ室内管などと共演。ラインガウ音楽祭、クレッシェンド音楽祭、アルペッジョーネ音楽祭、ムジカ・イン・ヴィラ音楽祭、ブライトン・フェスティバル、ウィーン芸術週間など音楽祭への出演も行っている。
2009年、ニューヨークのカーネギー・ホールにデビュー。2012年には、ロンドンのウィグモア・ホールにもデビューを果たした。これまでに、フェニーチェ劇場、ワルシャワ・フィルハーモニー・ホールなど、格式あるホールでのリサイタル行っている。また、2012年2月にはカーネギーホールでリサイタルデビューを果たし、大きな注目を集めた。
ピアニストとして活躍するかたわら、ピアノ、室内楽、オーケストラ曲などの作曲も行っている。
レコーディングは、2012年末にドイツ・グラモフォンとの契約が決まっている。