クラシックの常識にとらわれない「世界まるごとクラシック」。2016年の見どころは?
- ――このコンサートの最大の特徴は何でしょうか?
- 私は常々、クラシックはお客様が主人公で、音楽家は奉仕していると考えています。ですからこのコンサートでは、咳をしても、笑っても、話しても、お子さんが泣いても構いません。そして長い曲はやらないので、皆が飽きる前に終わります
- ――これまでの公演の手応えはいかがですか?
- 手応えは非常にあります。初心者の方はどこで拍手していいのかわからない。でもすぐにやって良いのですよと言うと、ちゃんと拍手される。こういうのが原点だと思います。ちなみに私は開場すると平服で客席にいて、聴衆の年齢層などから演奏のテンポや話す内容を決めていますよ
- ――プログラム作りで特に心がけていることは?
- まずは聖年、つまり生没年が区切りの作曲家の作品を必ず入れています。2016年は、モーツァルトが生誕260年、ファリャが生誕140年で没後70年、パッヘルベルが没後310年、さらに邦楽の宮城道雄が没後60年ですから、彼らの曲を入れます。中でも2つポイントがあって、宮城道雄の『春の海』は琴と尺八の曲なので、私がオーケストラ用に編曲し、モーツァルトの作品は交響曲や序曲をメドレー仕立てにします。これは初めての試みです
- ――それは興味深いですね。メドレーの具体的な内容は?
- 『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』を軸にして、交響曲では『ジュピター』とト短調(第40番)、序曲では『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』などを挟みます。しかも意外な付け合わせなど面白い作り方をしますし、当時なかった楽器も入れます
- ―他にも見どころが多い公演ですね。
- 今回はスペイン物も初めて取り上げます。ファリャの『火祭りの踊り』とフランスの曲ですがスペインを舞台にした『カルメン』。これはお客様が鼻で歌えるような曲ですから、ぜひやりたいなと。また最近『スター・ウォーズ』が戻ってきたので、派手な『メイン・タイトル』を第2部の冒頭に演奏し、アメリカ関連で『サウンド・オブ・ミュージック』やルロイ・アンダーソンの曲も取り上げます。あと、ショパンの曲をほとんどやっていないので、ワルツの中で最も大きな『華麗なる大円舞曲』を、私が以前行った編曲で演奏します。ベテランの方も普通の音楽会でこれほど様々な曲を聴くことはないと思いますよ
- ―進行なども工夫されていますよね?
- はい。曲間には必ず私が話をし、作曲家の面白いエピソードなどを紹介します。そしてお客さんに『ドレミの歌』を歌ってもらうことや、『カルメン』の『ハバネラ』に合わせてステップを踏んでもらうことも考えています。また舞台脇のスクリーンに演奏者のアップや私が得意とするイラストを映し、照明も工夫します。なお今回から私の絵の入ったマグカップなどのグッズも販売します
- ――演奏の「シアター オーケストラ トーキョー」については?
- 私と非常に仲の良いオーケストラです。熊川哲也さんのKバレエ カンパニーの伴奏のためにできた楽団なので、元々踊りの曲は得意なのですが、回を重ねる内にそれ以外の曲も上手くなりました。特徴は奏者同士とても仲がいいこと。古参の方が若手を上手く指導してもいます
- ――前回から東京以外に大阪と名古屋公演が始まり、今回は札幌と広島も加わります。
- 色々な場所でできるのは嬉しいですね。お客さんにも地域差があって、大阪の人はバイタリティがあり、名古屋の人は慎重。広島は、広島交響楽団と古い付き合いがあるので故郷に帰るような気持ちでいますし、札幌も札幌交響楽団で長く仕事をしていますので、これまた楽しみです
- ―クラシックの常識にとらわれない公演、大いに期待しています。本日はどうもありがとうございました。
- 取材・文:柴田克彦