インタビュー

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ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場などに出演し、「パヴァロッティの再来。」と世界中で今、最も大絶賛される天才テノール歌手、ヴィットリオ・グリゴーロ。2015年4月に日本で実現する待望のリサイタルに向けて、日本の聴衆への思い、満を持して披露するプログラムの数々、そしてマエストロたちとの思い出などを語る。

オペラや音楽だけが与える大きな感動。皆さんを本当の旅へお連れしたい

――日本の観客は、ヴィットリオ・グリゴーロを『ザ・イタリアン・テナー』『アリヴェデルチ』というCD、そしてMETライブビューイングの《ラ・ボエーム》を通して知っています。日本の観客はあなたの歌をライブで聴く事を楽しみにしていますが、ご自身では東京でおこなわれる初めてのコンサートにどのような抱負をお持ちですか?
そうですね、まずお客さんが楽しんで下さること。僕たちが本当にその場に一緒にいることを感じたいです。そして、オペラや音楽だけが与えることが出来る大きな感動を分かち合うイマジネーションの世界、もっと精神的な世界も共有出来ることを願っています。

僕は皆さんを愛し、そして皆さんに愛されていることを、隠された笑顔、予期せぬ拍手、思わず出てしまった叫び声などから感じ取りたいのです。舞台と客席の間にバリアが無い、人間的な交流が出来ることを願っています。あとは大きな喜びを一緒に味わっていただきたいと思っています。

日本の皆さんは子供の頃から僕の心の中にいました。皆さんの偉大なる文化。内面をより立派にしてくれる、感覚をコントロールするカリスマ性、自分を取り巻く自然の一部となること。それは音楽が成し遂げることに似ています。波の響きを壁で止める事は出来ません。その音は壁を通り抜け魂の底にまで届くのです。 最後に、文化の違いを評価して、それを歓迎してくれる街であることを期待しています。たくさん言い過ぎたかな(笑)。
――コンサートのプログラムは、第一部は古典的なアリア、第二部はトスティやデ・クルティスなどの歌曲です。ふたつのプログラムの違いを技術面や旋律的な観点から教えてください。
リサイタルの前半は19世紀の音楽です。イタリアのロマン派、ベッリーニやロッシーニの歌曲や、ドニゼッティやヴェルディのオペラ・アリア。ベルカントのもっとも重要な4人の作曲家です。リサイタルの後半はすべて20世紀の音楽。こちらも歌曲ですが、その分野で特に有名なトスティは、カルーゾー、ジーリなどから現代に至るまでの全ての偉大なテノールにとても愛されている作曲家です。その後には、レオンカヴァッロ、ガスタルドン、デ・クルティス、ダンニバーレなどのとてもポピュラーな曲、そして最後はナポリのカンツォーネへの敬意を捧げて終える予定です。このプログラムは僕の声の音色、技巧的なパッセージ、様々なニュアンスなどを通しての本当の旅に皆さんをお連れするためのものなのです。

人生の経験によって深まった色彩は、舞台の上に反映されるものです。演技の経験の積み重ねは困難なテクニックが要求される曲でも発揮され、それがひとつの音、休符、高音である、というだけでなく、言葉の意味に集中してそれを表現する重要さと芸術的な厚みを与えてくれます。

僕が感情的、技術的、そして表現的に高まっていくことにより、観客の皆さんがこの旅をシンプルに楽しんでくださり、コンサートのクライマックスはベルカントの伝統的な明快さに戻れるようにしたいと思っています。今からその時が待ちきれません。

チューリッヒ歌劇場デビューでセンセーショナルを呼んだアリア

――日本でヴェルディ《海賊》のアリア「そうだ、お前達の言う通りだ…全てが微笑んでいるようだった」を聴けるのはとても珍しいことです。このアリアには何か個人的なエピソードをお持ちなのでしょうか? それとも音楽の美しさがこの曲を選んだ理由ですか?
僕はよく自分自身を見つめて曲との繋がりを探すようにしています。この曲に関して言えば、何人かの音楽評論家はヴェルディが未熟であった時代のものと言っていますが、正しい価値を与えられないでいることが多いのです。《海賊》のこのアリアとそれに続くカバレッタは素晴らしい曲だと思いますし、僕は世界中でこの歌を歌う価値があると思っているのです。オペラのアリアは、世界でもっとも優れたワインのようなものです。「どのアリアが一番なのか?」と聞かれても僕は答えに困ってしまうでしょう。でも僕にとって一番好きな曲であるのは確かです。この曲を愛しているので、日本の皆さんと分かち合うのが嬉しいです。

それに僕の素晴らしい思い出の曲でもあります。ヴェルディ《海賊》のコッラード役で、チューリッヒ歌劇場にデビューしました。このアリアを水の上に浮かんでいる書斎机の上で歌わなくてはならなかったのですが、その舞台美術は大変示唆に富んだものでした。演出家はダミアーノ・ミキエレットというイタリア人で、このプロダクションのおかげで僕にも大成功とその後の幸運がもたらされたのです。
――グリゴーロさんが歌われる《マノン》の「消え去れ、優しい面影よ」は、パッションと苦悩のないまぜになった表現で、特に大好きです。あなたはローマに一番長くお住まいですが、どうやってフランス・オペラにアプローチなさったのですか? どのようにしてフランス・オペラに惹かれたのかと、イタリア・オペラとどのように違うと思うかも教えてください。
それはまさに運命的な魅力に惹かれたとしか言いようがないです。フランス・オペラとフランス語は子供のときから僕の耳の中にありました。僕の父親はオペラが大好きで、当時、僕にあらゆるオペラを聴かせてくれました。

フランスのレパートリーに魅了されたのは、ごく幼い頃からカレッジでフランス語を勉強していたために言葉がほぼ完璧に分かった、という要因も大きいです。僕の両親は、複数の言葉をマスターするということは、どんどん『ひとつの村』のようになってきている今の世界において、まず何より新しいコミュニケーションの扉を開くものだ、ということを理解していました。その『グローバルな村』においては、考えは人が話す前にもう翻訳されているのです。

フランス語の知識を持ち、流暢に話せるということは僕のキャリアを容易にしてくれました。イタリア語のレパートリーをしっかり固めた後で、僕は自分のフロンティアを広げることに決めたのです。ですから、全ての信じられないほど素晴らしい作曲家たちを深く愛するようになったのも自然の成り行きでした。特にその中でもマスネとグノー。このふたりの作曲家は、今では無しではいられなくなりました。

それは、まさにこの流れの上にある僕のソニーからの最新アルバム『ザ・ロマンティック・ヒーロー』もそうです。その中には僕のフランス・アリアのレパートリーをすべて収録してあり、これらの曲を世界中で歌っています。

それぞれの違いはまさに言葉にあると思うんです。フレーズを作る時にも、それぞれ違う言葉の上に組み立てられていますから。フランス語で歌うのもイタリア語で歌うのも技術的な違いはありませんが、スタイルが違ってきます。イタリア語の歌ではポルタメントやレガートが多いのですが、フランス語の歌ではよりすっきりしたスタイルが要求されます。

技巧的な面よりも純粋さを求めるというか。それに加えて音楽の書法も違います。もちろん作曲家の間で相互に影響を与えあって競争している面はあると思います。イタリアの多くの作曲家、例えばドニゼッティ、ロッシーニ、ベッリーニなどはパリの宮廷に招かれてフランス語でオペラを書いたり、もしくは彼ら自身の成功した作品をフランス・オペラに翻訳しました。有名なアリア、《ラ・ファヴォリータ》の「優しき魂」を考えれば分かります。

恩師パヴァロッティ、ゼッフィレッリとの思い出、そしてこれから。

MOVIE

INFORMATION

  • ヴィットリオ・グリゴーロ テノール・リサイタル ■日程・会場 2015/4/5(日) 14:00開演 2015/4/10(金) 19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル (東京都) ■予定曲目 ・ベッリーニ:「6つのアリエッタ」より フィッリデの悲しげな姿よ / お行き、幸せなバラよ / マリンコニーア / お願いだ、私の美しき理想の人よ ・ロッシーニ:「音楽の夜会」より 踊り ・ドニゼッティ:歌劇「アルバ公爵」より 清く美しい天使よ ヴェルディ:歌劇「海賊」より そうだお前達の言う通りだ…全てが微笑んでいるようだった ・トスティ:別れの歌 / 口づけ / 理想の女 / 可愛い口元 / 最後の歌 ・ガスタルドン:禁じられた音楽 ・レオンカヴァッロ:マッティナータ ・クルティス:世界でただひとり君を愛す ・ダンニバーレ:太陽の土地 ※曲目は変更になる場合がございます。予めご了承ください。

PROFILE


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