オペラや音楽だけが与える大きな感動。皆さんを本当の旅へお連れしたい
- ――日本の観客は、ヴィットリオ・グリゴーロを『ザ・イタリアン・テナー』『アリヴェデルチ』というCD、そしてMETライブビューイングの《ラ・ボエーム》を通して知っています。日本の観客はあなたの歌をライブで聴く事を楽しみにしていますが、ご自身では東京でおこなわれる初めてのコンサートにどのような抱負をお持ちですか?
- そうですね、まずお客さんが楽しんで下さること。僕たちが本当にその場に一緒にいることを感じたいです。そして、オペラや音楽だけが与えることが出来る大きな感動を分かち合うイマジネーションの世界、もっと精神的な世界も共有出来ることを願っています。
僕は皆さんを愛し、そして皆さんに愛されていることを、隠された笑顔、予期せぬ拍手、思わず出てしまった叫び声などから感じ取りたいのです。舞台と客席の間にバリアが無い、人間的な交流が出来ることを願っています。あとは大きな喜びを一緒に味わっていただきたいと思っています。
日本の皆さんは子供の頃から僕の心の中にいました。皆さんの偉大なる文化。内面をより立派にしてくれる、感覚をコントロールするカリスマ性、自分を取り巻く自然の一部となること。それは音楽が成し遂げることに似ています。波の響きを壁で止める事は出来ません。その音は壁を通り抜け魂の底にまで届くのです。 最後に、文化の違いを評価して、それを歓迎してくれる街であることを期待しています。たくさん言い過ぎたかな(笑)。 - ――コンサートのプログラムは、第一部は古典的なアリア、第二部はトスティやデ・クルティスなどの歌曲です。ふたつのプログラムの違いを技術面や旋律的な観点から教えてください。
- リサイタルの前半は19世紀の音楽です。イタリアのロマン派、ベッリーニやロッシーニの歌曲や、ドニゼッティやヴェルディのオペラ・アリア。ベルカントのもっとも重要な4人の作曲家です。リサイタルの後半はすべて20世紀の音楽。こちらも歌曲ですが、その分野で特に有名なトスティは、カルーゾー、ジーリなどから現代に至るまでの全ての偉大なテノールにとても愛されている作曲家です。その後には、レオンカヴァッロ、ガスタルドン、デ・クルティス、ダンニバーレなどのとてもポピュラーな曲、そして最後はナポリのカンツォーネへの敬意を捧げて終える予定です。このプログラムは僕の声の音色、技巧的なパッセージ、様々なニュアンスなどを通しての本当の旅に皆さんをお連れするためのものなのです。
人生の経験によって深まった色彩は、舞台の上に反映されるものです。演技の経験の積み重ねは困難なテクニックが要求される曲でも発揮され、それがひとつの音、休符、高音である、というだけでなく、言葉の意味に集中してそれを表現する重要さと芸術的な厚みを与えてくれます。
僕が感情的、技術的、そして表現的に高まっていくことにより、観客の皆さんがこの旅をシンプルに楽しんでくださり、コンサートのクライマックスはベルカントの伝統的な明快さに戻れるようにしたいと思っています。今からその時が待ちきれません。