チケットぴあインタビュー

――『ムシブギョー』の主題歌『伝心∞アンチェインド』は、アニメの内容にぴったりの疾走感あふれるサウンドに仕上がっていましたね。samfreeさんらしさが出ていると感じました。

samfree「ありがとうございます。今回はアニメの主題歌なので、作品のイメージにマッチした曲を意識しました。蛇足さんは普段ニコニコ動画に投稿されている曲などを聞くと、あまりキーの高い歌い方をしていなかったのですが、今回はあえて高めのキーに挑戦してもらっています」

――たしかに蛇足さんのイメージにはあまりなかった歌い方かもしれませんね。

蛇足「samfreeさんにはキーが高かったら変えてもいいよと言われたんです。でもやっぱり主題歌なので、曲のテンションや勢いを生かしていくには高い方がいいよなと思ってがんばりました（笑）。ただ、普段よりは歌い直すことが多かったかな。いつもだったら語尾を流して歌うことが多いんですが、今回はAメロがパキパキと語尾を切っていく感じの歌い方で、そこに苦労しました」

samfree「蛇足さんの新たな一面が出たんじゃないかと思います。最初は、もしかしたら失敗する可能性もあるかなと思っていたんですけどね」

蛇足「結果オーライでしたね」

――改めてお二人のルーツを伺いたいと思います。最初にニコニコ動画に投稿されたきっかけは？

samfree「作曲自体は中学生くらいからやっていて、ネット上に発表する方法を試行錯誤していたんです。そんな折、2007年に初音ミクが出てきて、livetuneさんの『Packaged』に衝撃を受けたんです。そこからボカロをやりたいと思って、11月に最初の曲をアップしました。それがニコ動デビューでしたね」

蛇足「僕もボカロ以前からニコ動の『歌ってみた』カテゴリを見ていました。ゴム君の『思い出は億千万』とかね。それを見て、自分もやりたいなと思っていたんです。そうこうしているうちに初音ミクが出てきて、『歌ってみた』でもボカロ曲が増えて歌いやすい状況になりました。ちょうどその頃、プライベートで時間ができたので、じゃあ投稿しようかなと。もともと歌は鼻歌程度に歌っていて、カラオケなんかもほとんど行かない生活だったんですけどね」

――お二人は今回ニコ動も含めて初めてのコラボですよね。

samfree「そうですね。もともと僕が『ムシブギョー』関連の楽曲制作をやっていて、そこから主題歌もお願いしたいと依頼されたので、じゃあボーカルは蛇足さんにお願いしようと」

蛇足「今までに一緒に何かしたことはないですね。面識もほとんどなくて、イベントですれ違ったくらい。samfreeさんは僕の中では"ユーロビートの人"というイメージでした。もしくは、"新しいボカロが出たときに時を同じくして現れる男"かな」

samfree「（笑）。蛇足さんは人間的には思った通りの方でしたね。状況を冷静に見ているという」

蛇足「samfreeさんはあまり喋らないイメージだったんですけど、けっこう喋るタイプですよね」

samfree「基本的にはコミュ障ですよ（笑）」

――初めてとは思えないいいコンビですね（笑）。個人や他のユニットで活動することと、今回のようなコラボを比べるとやはり意識は変わりますか？

samfree「基本的には裏方ですからね。今回は自分が表に出る立場ですが、考え方自体はそんなに変わらないですね。ただ、PVについては僕は初めての経験だったので、探り探りでした。蛇足さんが動かないので、その分僕がアグレッシブに動こうということでがんばりました（笑）」

蛇足「やっぱり新鮮ですね。『√5(ルートファイブ)（※注釈）』だと一緒にやっているのはみんなボーカルですし。PVでもsamfreeさんは演奏をしているので、今までとは違った感じで、これはこれでいいなと思いました」

――メジャー・デビューして心境や環境などは変わりましたか？

samfree「いろんな人の意見が入るようになったというのは、これまでと違うところですね。たとえば今回だとまず3曲くらい作って、その中から多数決で選んだんです。みんな同じ意見だったのでそんなに苦労はしなかったのですが、それでも一人で作っているときとはやはり感覚は違いますね」

蛇足「メジャーデビューしてから、忙しくなりましたね。ただメジャーだからどうこうというのはなくて、今までのスタンスを変えるつもりはありません。趣味の延長で楽しくできるかどうかが大事。言われてやるのではなく、やりたいからやるわけだし、嫌なことは嫌だと言うだけです。その分、周りの大人の人が困ることはあるかもしれませんが……（笑）」

――楽しむことは大切ですよね。とはいえ作品の産みの苦しみはあるのではないかと思いますが。

samfree「しんどいのは作詞かな。いろんな思いを巡らせるので、精神力を消耗します。ただ、だからこそ楽しいんですけどね」

蛇足「自分の思った通りにならないことはよくありますよ。ニコニコ動画にアップする作品の場合は単純にあきらめてしまいます。お蔵入りになった動画が100曲以上ありますよ（笑）」

――お二人にとってライバルとは？

samfree「アニソンを作っていく以上は、プロのフィールドに立っているわけで、その意味では菅野よう子さんとかのクラスとも渡り合えるクオリティに達していきたいと思っています。ボカロPさんでいえばkzさんやryoさんとかですね。負けている場合じゃないと思っています」

蛇足「歌い手はそれぞれ個性があるので、誰かをライバル視していることはないですね。僕自身があまり人に興味がないのかも（笑）。純粋にリスナー目線で聴いている人はいますけどね。最近だとナノさんとか」

――アーティストとして大切にしていることはありますか？

samfree「"特にない"ということが逆に大切にしていることかな。柔軟な姿勢でやっていくことが大事だと思います。時代は流れていくので、いろいろなものを取り入れながら成長していきたいですね」

蛇足「自分はアーティストだという意識がないんですよね。今もこれからもカラオケ好きのオジサンというスタンスです。たまたま聞いてくれる人がいるのがとても嬉しいですね。僕はストイックじゃないので、趣味じゃなくて仕事だっていう意識になったら、たぶん30秒も歌ってられないんですよ」

samfree「サビまでいけないじゃないですか！（笑）」

――最後に、『ムシブギョー』という作品についてはいかがですか。

samfree「子供向けの時間帯でありながら、若干大人向けの内容ですよね。なかなかきわどいところもあって……（笑）。楽しく見ています」

蛇足「もともと漫画がすごく好きで、原作も読んでいたんですよ。アニメの方も評判いいですし、テンポもよくて王道の少年漫画という感じ。好きなジャンルなので楽しんでいます」

「ボーカロイド」「歌ってみた」というニコ動の2大人気ジャンルで第一線を走り続けるsamfreeと蛇足。これまで接点もなく、まったく違うタイプのクリエイターとして活動していた2人が組んだことによる化学反応を、この機にぜひ楽しんでもらいたい。

(※注釈：ニコニコ動画出身の男性ミュージシャン5人で2011年12月に結成されたボーカルユニット。メンバーは、蛇足の他に「ぽこた」「みーちゃん」「けったろ」「koma'n(こまん)」。）

取材・文・写真：　山田井 ユウキ

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＜公演情報＞
「a-nation island　Asia Progress ～Blue Ocean～」（√5出演）

8月5日(月) 18:00開演　国立代々木競技場 第一体育館 (東京都)
【席種・料金】一般指定席-6900円

［出演］AAA / BEAST / D☆DATE / JONTE / 三浦大知 / √5（ルート・ファイブ） / SHOW / U－KISS / 他
［DJ］TORA / DJ 2－YAN / PARTY ANIMAL CREW

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＜INFORMATION＞
TVアニメ「ムシブギョー」第２クールオープニングテーマ
伝心∞アンチェインド

2013.9.4RELEASE！！
【CD+DVD】￥1890（税込）
【CD】￥1260（税込）
http://avex.jp/freedom/index.html