――HAPPY BIRTHDAYをこのサイトではじめて知る方もいらっしゃるかと思いますので、様々な媒体でお話されていると思うのですが、今一度結成のきっかけについて簡単にお聞かせいただけますか?
あっこ「はい、18の時に美容師の専門学校でお互い出会って、すぐに凄く仲良くなって、わたしもきささんもいろいろあって学校を中退し、またお互いいろいろあって、紆余曲折の末再会し、「バンドやろっか」ってなって、今に至るって感じです・・・簡単に言おうと思って、凄く端折っちゃった(笑)。」
――(笑)。あっこさんが学校を辞めた理由はなんだったんですか?
あっこ「当時は小説家になろうと思って、っていうか、なるんだって思い込んでて、それでやめたんですけど、今になって考えると何か決まったことがあるんじゃなく、漠然とした「何がやりたいのかわからないんだけど、すごくやりたい!」っていう思春期特有の葛藤が理由ですね」
――何かを表現したかった、みたいな感じでしょうか?
あっこ「そうですね、その頃は「一度きりの人生、何をするべきか!」みたいな、マグマのような感情を抱えつつ、七転八倒している時期ですね。で、私のその感情に左右されたひとつの被害者がその専門学校(笑)」
――被害者が専門学校なんですね(笑)。そもそも、音楽をやろうと思ったきっかけは何かあったのでしょうか?
あっこ「小さい頃からピアノを習っていて、学生の時はライブハウスに入り浸っているような奴だったので、元々音楽は身近な存在ではあったんですけど、「音楽をやろう!」ってなったのは、たまたま友達に「ドラム叩いてくれない?」って言われて、「えー、マジ?」みたいなノリで、ドラム叩く事になったんですけど(笑)」
――ノリ(笑)
あっこ「はい、ノリで(笑)。そこで普通にやってもつまんないなーって思って、その時抱えてた鬱屈した気持ちをドラムにぶつけてみたんですよ。そしたらドラムは音を鳴らしてくれるから、そこで「私のこの葛藤を受け止めてくれるのはお前しかいない!」って思って、そこから私はずっとドラムの囚われの身ですね(笑)」
――でも、誘われた時に初めてドラムに触った訳ですよね?
あっこ「小さい頃にお盆とかを叩いたりはしてましたけど(笑)。でも専門的なのは初めてですね」
――凄いですね・・・それで、きささんと組むことになったのは、どういう経緯からなんですか?
あっこ「お互い専門を中退した後に別のバンドを組んでいて、その時から友達だったというのもあるんですけど、お互いのバンドを「良いなあ」って思っていて、そしたらそれぞれのバンドが、自分以外のメンバーの就活だったり、モチベーションが違うだったりで、同時期にやめたところで、気になる存在だったふたりが「じゃあ付き合う~?」みたいな感じで(笑)」
――彼氏彼女みたいな、本当運命的なタイミングなんですね(笑)
あっこ「(笑)。本当そうです」
――きささんの第一印象はどういう印象でしたか?
あっこ「お、超可愛い」
――あははは、本当彼氏彼女の話聴いてるみたいです(笑)。
あっこ「(笑)。本当そうなんです!可愛いなー、友達になりたい!って思いました。でも、今こうやってバンドを組んでるのは不思議だなーと思う事もありますね」
――ですよね、彼氏彼女のようなファーストインプレッションから、今はパートナーですもんね。先ほど、ライブハウスに行かれていたというお話しを聴いたのですが、その時にハマっていたアーティストをお聴きしたいんですが。
あっこ「めちゃくちゃハマったのはナンバーガールですね。思春期って全部が極端じゃないですか?発想も行動もすべて。そのすべてをナンバーガールに注ぎ込んだと言っても過言ではないくらい。だって「こればっかり聴いてるから私はダメなんだ!」って思って、ナンバーガールのCDを多摩川に向かって投げ捨てた事もあります(笑)」
――あははははは!
あっこ「今思うと「おいおい!」っていう行動なんですけど(笑)。あとは成人になってからも「向井さんと結婚したい!結婚したい!どうしたら結婚できるんだ!そうだ、向井さんはお酒好きだからまずお酒を飲める体質に改善しなきゃ!」って、私お酒苦手だったんですけど、毎日ビール一缶飲んだりとか・・・」
――あはははは!
あっこ「色々しましたね(笑)」
――でも、ライブで元ナンバーガールの田渕ひさ子さん(toddle、LAMAなどで活動中)と一緒にやられてますよね?
あっこ「そうなんですよ!ライブを一緒にやらせていただく事になって、スタジオで初めてお会いした時は「やばいやばいやばい」ってなって、半泣きになってしまって、スタジオを飛び出してしまって」
――(笑)
あっこ「その時、外は小雨が降っていたんですけど、「わあー!」って言いながらスタジオの周りを走って、その後ろをスタッフが「あっこさん!田渕さん待ってるから!」って言いながら追いかけるっていう(笑)」
――あはははは!でもナンバーガールというのは少し頷けるというか、あっこさんのドラムってアヒトさん(アヒト・イナザワ、ナンバーガールでドラムを担当。現在はVOLA & THE ORIENTAL MACHINEで活動中)の要素があるような気がするので。
あっこ「え!そんなそんな・・・(恐縮しながら)」
――技術的なものが備わった上で、そこからどれだけドラムにパッションをぶつけられるか、みたいな所が似ているような気がします。
あっこ「ありがたいですが、恐れ多いです・・・」
――(笑)。HAPPY BIRTHDAYを組んだ直後は、最初にきささんとふたりでコピーなどはしなかったんですか?
あっこ「いや、コピーとかはしなかったですね。HAPPY BIRTHDAYを組んだ時も最初からオリジナルで、きいちゃんはきいちゃんで前のバンドで作曲を担当していたので、きいちゃんにお任せしようと思って。私も前のバンドでは一応作曲を担当していたんですけど、ノイズというかシャウト系だったので(笑)。そこはお任せしました」
――そうなんですね(笑)。あっこさんがマイベストアルバムを3枚選ぶとしたら何を選びますか?
あっこ「マイベスト・・・聴きこんだ~!っていうのはまずナンバーガールの『SCHOOL GIRL BYE BYE』ですね」
――インディーズの1枚目のアルバムですね。
あっこ「そうです!これを多摩川に投げました(笑)。あとはキングクリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』。これは生まれて初めてお父さんに買ってもらったCDで」
――え!また何でそれを選んだんですか?
あっこ「クリムゾンはお父さんが元々好きだったんですよね、世代だったみたいで。なのでクリムゾン以外にも教えてもらったんですけど、でもその中でもクリムゾンが一番好きで。あと1枚はスクリーミング・ヘッドレス・トーソズの『1995』ですね。このアーティストはファンクなんですけど、ドラムを始めるまでファンクを聴くって事がなくて、ドラムを始めてから結構影響を受けた作品です」
――今、ファンクのお話が出たんですが、HAPPY BIRTHDAYって楽曲がちょっと黒っぽいですよね。
あっこ「え!そうですか!?」
――なんかブレイクの入り方とか、リズムがそういう所を意識して楽曲を作っているんだろうなーと思います。
あっこ「わはははは!ありがとうございます(笑)」
――先ほど少しお話に出たんですが、小説家になろうと思って専門学校を辞められたということで、CDと同じように、あっこさんがおススメする小説も3冊お聴きしたいんですが。
あっこ「まずは、坂口安吾の『堕落論』ですね。これは、私が救われたと言ったら変なんですけど・・・」
――うん、なんか分かります。肯定してくれるというか、ダメでも良いんだって言ってくれてる作品というか。
あっこ「そうそうそう、そうです。思春期の「どうしよう、どうしよう」っていう焦燥感を肯定してくれた作品ですね」
――確かに、これを読んでる思春期のHAPPY BIRTHDAYファンの方は、読んだらガツンってくるかもしれないですね。
あっこ「そうですね!で、そこで肯定してもらった後、こうすればいいんだって思ったのが色川武大の『うらおもて人生録』ですね。これはヤバイ!もう何十回も読んでますね、線引きまくってボロボロになるくらい」
――阿佐田哲也という名義でも本を出されてますよね。
あっこ「そうなんです、もう魂の恋人ってくらい!読んだ事あります?」
――ないんですよ。
あっこ「え!?ウソウソ!あなたも絶対読んだほうが良い!」
――(笑)。読みます
あっこ「これは全員が読んだほうがいいと思う、って言いながら、実は教えたくないくらい(笑)。他のみんなに「こうやって生きていけば良いんだ」っていうのがバレる!私だけのものにしときたいの!」
――あははは(笑)。
あっこ「(笑)。で、最後がフランソワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』で。もともと私が10代の頃は、女性が作るものの方がカッコいいし、圧倒的にグッと来るって思ってたんです。小説家のペンネームも男性にしてたぐらいで。で、それも良くないなって思ってたときにサガンの小説に出会って。サガンは女性の残酷な所や面倒くさい所を描いてくれていて、凄くスッキリしたんです。それ以来女性って良いなって自然に思えて」
――同姓が同姓の深いところについて書くのって難しいし、あまりそういう作品も多くはないですよね。
あっこ「そうなんです。そういうのでも、やりすぎちゃって品が無いものもあるんですけど、サガンの作品は品があって、表現の仕方としても気持ちよかったんです」
――なるほど、あっこさんのパーソナルな部分が分かった気がします。続いてライブについてお聴きしたいんですが、あっこさんがライブを行う上で心がけている事はありますか?
あっこ「私にとって、ライブはパフォーマンスというのがあるので、まずやりきる事ですね。お客さんの顔色を伺ったりしない、自分が「これで良いのかな」って1ミリでも思っていても、それをステージに持ち込まないって言うのは決めてますね」
――確かに、それが透けて見えるとお客さんが醒めてしまいますね。特にHAPPY BIRTHDAYのライブはそこが重要なポイントだと思います。
あっこ「はい、そうですね。後は練習を積んで、本番は何も考えない」
――(笑)。あっこさんがこれまで行ったライブで一番心に残っているライブについてお教えください。
あっこ「先ほど言ったひさ子さんと、凛として時雨の345さんと一緒にやらせてもらったライブも、リスナー時代のじぶんからすると「うおーっ」って感じなんですけど(笑)。転機になったという意味で言うと、昨年の11月なんですけど。その頃「もっと突き抜けたい」「もっとどうにかしたい」って思っていて」
――他と別な事をしたいという感じでしょうか?
あっこ「というよりは、元々2人組なので同期を使っていて、その時点で他のバンドとは違うわけですよ。そこを面白おかしく利用して見せられないものかと思っていて、その手段を模索していた時期で。そこでライブに寸劇を取り入れたんですね、最初は悪ノリで(笑)。そしたら「曲が良く伝わります!」ってお客さんから言われるようになって「あ、本当?」みたいな」
――(笑)
あっこ「そこで、パフォーマンスに振り切ると曲に集中しやすいんだって気づけたのが昨年の11月ですね」
――他のアーティストのライブで印象に残っているライブがあればお聞かせください。
あっこ「ライブハウスに行きだした時代に、よくライブに出ていた関西ゼロ世代と呼ばれていた方々は印象が残っていますね。演奏意外でもパフォーマンスとかに魂を感じたので。それは今のメジャーで活躍されている方でも「開放」している方ってグッと来ますね」
――そこがHAPPY BIRTHDAYにもつながっている所かもしれませんね。ちなみに、まだHAPPY BIRTHDAYを知らない方々に向けて、例えば自身がリスナーだったとして、友達にHAPPY BIRTHDAYを薦める時にどう言って薦めますか?
あっこ「たのしいやつらだよ、って言って薦めますね。曲はさっきのサガンと同じなんですけど、女の嫌な部分を描いていると思うし、聴くと痛快だと思うんですよ。ライブも面白いし、いいんじゃない?って(笑)」
――そういう意味で言うと、同姓だけでなく、男性にも楽しめると思います。
あっこ「うん、楽しんでもらえると良いですね」
――「女の子ってこういう所あるよなー」って感じで。
あっこ「そうそう!よく映画とか見てると、バカな主人公を見て「こいつバカだな~」って笑いながら、実は自分も似たような行動していて、心の奥で胸がズキッとしてる。そんな体験ってあると思うんですけど、ライブを見に来た人に同じ体験してほしいですね(笑)。胸に突き刺してやる!って感じで(笑)」
――(笑)。今後HAPPY BIRTHDAYとしてやりたい事はありますか?
あっこ「今までやりたい事ってほとんど叶ってきていて、だから言わないでおこうと思うんですけど(笑)」
――なるほど(笑)
あっこ「でも叶ったので言うと、私ずっとミュージカルが好きだったんですね」
――それはどういった所が?
あっこ「だって日常生活でいきなり歌いだすとかヤバくないですか?(笑)。そういう所が凄く好きで、この間のライブでやったんですよ、ミュージカル!歌うたえないのに(笑)」
――あははは!
あっこ「ミュージカルはずっとやりたかったので、叶って本当に嬉しかったですね。あとは・・・武道館とかって言えば良いですか?(笑)」
――(笑)。別にこう言えっていうのはないですよ、ほんとにあっこさんが思ってることで(笑)
あっこ「すみません、でも個人的にはHAPPY BIRTHDAYはホールが似合うバンドだと思っているので。大きいホールでやりたいですね。」
――今後の予定としては、12月には東京と大阪でHAPPY BIRTHDAY 大感謝祭2013というライブがありますが。
あっこ「このライブには自分の持ってるキャパを全部使って、とにかくお客さんに楽しんで欲しいと思います。周りの声を聴くと、やはり仕事って大変、辛いって言う声があって、好きで選んだ仕事でも、そういう葛藤ってあるんですよね」
――うん、好きな仕事だからこそもジレンマを感じる方もいるかもしれないですね。
あっこ「そう、救われるとか、与えるとか、そういう偉そうな事を言うつもりじゃないんですけど、しんどい時に、私たちの音楽を聴いて少しでも楽しんでもらえたらって気持ちでいるので、その時だけは「色々あるけど、また明日から頑張ろう」って思えるような、そんなライブできたらいいなって思いますね」
――また、12月に赤坂BLITZで行われるDECEMBER'S CHILDRENについてなんですけど、こういうライブはまたワンマンとは意気込みが違いますか?
あっこ「そうですね、自分を見に来ているお客さんばかりじゃないので、とにかくインパクトを残してやろうっていう気持ちではいますね。あとは呼んでくださった方の心意気に対する「イエーイ!」みたいな、活字にすると難しいんですけど(笑)」
――(笑)。フィーリングですね。他のバンドさんに負けられねえぞみたいな気持ちは?
あっこ「あ、バリバリありますね。でも楽屋裏でピリピリするってことはなくて、逆にそれこそ「イエーイ!」みたいな(笑)。でも、私こういう場で結構フレンドリーに他のバンドさんに話しかけすぎて、ピキッとさせちゃうんですよね(笑)。雰囲気出してるバンドさんに「イエーイ、ロックバンド、ロックバンド!」みたいなノリしちゃって(笑)。だから気をつけます」
――あはははは!
あっこ「すみません、ここら辺の文章擬音ばっかりですね(笑)」
――大丈夫です(笑)。では最後にこのページを見ている方に一言お願いいたします。
あっこ「はじめて知ってくれた人、ライブをまだ見たこと無い人には、だまされたと思って見て欲しいですね。ライブと音源は別物ってよく言いますが、HAPPY BIRTHDAYの場合は本当に別物で。私たちはショーを作っているという自負で、そのために時間と精神を費やしているので、ぜひ体感して欲しいですね」
――ありがとうございます。
あっこ「あと、私たちを追っかけてくれてるファンの方々には・・・愛してるよ!これしかないですね、本当に(笑)」
きさ(作詞 作曲 歌 ギター担当)(写真右) 1988/6/22生まれ 東京都出身 あっこ(ドラム担当)(写真左) 1988/6/30生まれ 東京都出身 2007年 4月 美容専門学校の入学式で運命の出会い。 9月 あっこ小説家になるために専門中退。 2008年 8月 きさ音楽と恋愛に狂い専門中退。 2009年 お互いに別々にバンド活動をする。 2010年 2月 新宿の270円均一居酒屋にてHAPPY BIRTHDAY結成。 4月 お互いのバンドが解散。 6月 飴玉音楽室に改名。すぐにHAPPY BIRTHDAYに戻す。 11月 インディーズより1st album「デートに行けない日曜日」をリリース。 1stアルバム(インディーズ) 「デートにいけない日曜日」 2010/11/24 RELEASE ANTX-1022/税込\2,000/Mule Records 【収録曲】 1.初恋 2.デリケイトゾーン 3.君は灰色あたしはオセロ 4.PMS 5.秘密のじかん 6.ポーラはなにもわからない 7.K 8. つまらない先輩は白いズボンを履いている |
(左から順に)
あっこ(ドラム担当)、きさ(作詞 作曲 歌 ギター担当)