インタビュー

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ファーストミニアルバム『世界』をリリースしたハルカトミユキ。曲によっては80Sのニューロマンティック/シンセポップのテイストが強く導入された音像の変化はもちろんのこと、今まで以上に素直に内面を吐露していくハルカの歌も、これまでにない開放感を放つものになっている。一時は「歌を歌い続けるかすら迷っていた」という彼女達が、迷いと葛藤を乗り越えて辿り着いた今回の『世界』は、間違いなくハルカトミユキにとって大きな転換点となる作品だ。6月19日には恵比寿LIQUIDROOMで、6月25日にはumeda AKASOで「ワンマンライブ 2015‘世界’」も開催されるハルカトミユキ。作品とライブへの想いを訊いた。

苦難の末にライブを通して手に入れた新しいハルカトミユキ、ミニアルバム『世界』

――今回のミニアルバム『世界』は、80Sテイストの強い音像になったことも含め、ハルカトミユキにとって大きな転換点となるミニアルバムだと思いました。ご自分ではどうですか?
ハルカ: 『シアノタイプ』の頃から自分の中で葛藤が在って、その結果精神的に落ちてしまった。去年の5月に3rd EPを出した頃はそれがピークに来ていて。どういうものを作ろうか?ということだけじゃなく、本当にこのまま歌っていくべきかということまでも、凄く迷っていたんです。でも、そういう中で3rd EPを作り上げて出したことでひとつ区切りがついて、また試行錯誤の中ではあったけど曲を書きを続けていって……ただ、それがなかなかリリースしようという気持ちまでは至らなかった。それでも、ライヴやワンマンツアーがあったことで、なんとか気持ちを保てていた部分があったんですよね。それで、去年の年末くらいから改めて今作に向けて一気に作っていったんですけど。(2015年1月から)12ヶ月連続リリースを決めたこともあって、今まで時間をかけて悩みながら作っていたのが悩む隙もないくらいのテンポ感で進んでいけたので、それは凄くよかった(笑)。ただ、内容としては「悩みながら走ってる」みたいな感じの作品になっると思ってます。

ミユキ:3rd EPの時にハルカが落ちてたのは、隣で見ている私が一番感じていて。ライヴの時もいきなり泣き出したり、凄く叫んだりしていて……それで1回、「本当に音楽が続けられるのか」っていう話し合いをしたんです。そこで「やるんだ」って意志を固めることができてハルカはだんだん復活していったんですけど、ハルカがそういう状態だったことも含めて、その間に私自身は自分が好きな音楽を改めて見つめ直す時間を持たせてもらって。それこそ中学の時にどんな音楽が好きだったのかまで遡って考えたんですよ。当時はORANGE RANGEが大好きだったんですけど、やっぱり私は元々ポップスが好きだし、かつ、バンドだけどバンドっぽく聴こえない音楽が好きだし、ライヴでも熱量が伝わってくる音楽が好きなんだなっていうことに気づいて。で、(その見つめ直していた期間に)Foster The Peopleが凄くキテた時期で私も大好きだったので、そのルーツを辿っていったら80Sのニューロマンティックに辿り着いて。それで、自分の中で基準とするべきものが見つかったんです。そこからは私は私で毎日毎日曲を作り始めて……で、11月のワンマンの時に“Flower”という80Sを入れたポップスができてひとつ形が見えたので、新しいアルバムも80Sの要素を入れたい、そしてライヴで一緒に共有できる作品にしたいなと思って、この作品を作っていきました。
――ハルカさんが悩み迷っていたのは何故だったんですか。
ハルカ: 今考えればもっとラクに考えてよかったんじゃないかと思うんですけど、自分が歌いたい/こういうふうに在りたいというのが強かった分、求められるものの違いに悩んでしまって。周りを固めるのに必死で、大事な核の部分がわからなくなっちゃった……今は核さえしっかりしていれば自分の曲になるんだなと思えるようになった。
――当時はインディーズからメジャーへと籍を移した時期だったし、よりポップなものを求められた時期だったと思うんです。ただ、結果として、今回の作品は音楽的に非常に開けた曲達が収録されていて。そこは自分の中でどういうふうに変わっていったんですか?
ハルカ: やっぱりライヴをやる中で気づいていった部分が多かったんですよね。頭で考えて悩んでいる時間が多かったんだけど、ライヴで体を使ったり声を使ったりすると凄く解放されて、自然な感情が出てくる瞬間がたくさんあって。元々自分は凄く衝動的なものや躍動的なもの、あるいはロマンチストな部分やキラキラしたものが好きな部分が本当はあったんだな、それを自分で、わざわざ閉じて見せる必要はないですよね……悩んだ期間を経てライヴをやったことで、そういう元々の自分に素直になれたんですよね。そうしたら例え歌詞の内容暗かったとしても、どこか開けた状態で書けるようになったんです。
――ライヴで泣いたり叫んだりしてしまった時期は、やっぱり相当苦しかったんですか。
ハルカ: ……苦しかったですね。それは自分でも無意識の内に歌っている中で、声と一緒に涙が溢れてきたり、体の衝動がそのまま感情として出てきたっていう体験で……苦しくもあったんですけど、こんなにも素直に出るんだって自分でも驚いて(笑)。苦しさが素直に出る、、そういう体験をしたことによって、歌を歌うことに対して素直でありたいっていう気持ちが生まれたんですよね。それまでは歌うかどうかも迷ってたんですけど、自分自身が歌うことを必要としているんだってわかったので。それは大きかったと思います。

ミユキ: 11月と12月のライヴが、私達にとっては大きなターニングポイントだったと思います。12月に初めてライヴで“世界”をやった時に、初めてちゃんと「曲」で一体感を得られたなと感じて……その体験もあってポップスであることをいい意味で躊躇なく意識するようになったし、あと自分達の軸が見つかった分、今までは「バンドみたいな音楽をやりたい、バンドには負けないぞ」という想いが強かったんですけどーーそれは最初に決めていたことだし、今も大事な部分ではあるんですけどーーもっと自由に音楽の幅を広げてもいいんだって素直に思えるようになったんです。それで今回の“嘘ツキ”や“tonight”のような曲が生まれて。ふたりでそれを共有できるようになったのは大きいですね。
――だから今回の作品、音像感はかなり変わりましたよね。90Sオルタナから80Sシンセポップ/ドラマティックなオルタナティヴ・ロックに明らかな変化を遂げていて。
ハルカ: 本当にそうですね。作り方自体も、DJ出身のヒロシさん(i-dep/ナカムラヒロシ)と一緒にリビングで作ったりもして、これまでとはまったく変わりましたしね。

ミユキ: 今まではハルカが作ってきたものに対してどうぶつかっていくのか?っていうことを一番に考えてたんですけど(笑)。
――ある種のカウンター精神ですよね(笑)。
ミユキ: そうですね(笑)。でも今は、この歌詞に対してどういう音を乗せたら盛り上がるのか、ドキッとするのかを素直に考えられるようになって。あと、自分の音とは何なのか?ということをちゃんと考えられるようになった。まだはっきりとはわからないんですけど、本当に自分らしい音を追究しようという意識が出てきたんです。80Sというのはひとつ見つけたから、ここからもっと私らしい音楽を作ることを頑張ろうという気持ちになりましたね。

ハルカ: ……元々私達は、私が曲を書いてミユキがシンセを乗せるっていうのが基本にあったんですけど、でも「ハルカトミユキってこの音だよね」っていうものが自分達でも言えなくなってたんです。だけど今回、ミユキが80Sに辿り着いて作品に反映されたことで、その部分がはっきり見えてきて。それによって私も曲が作りやすくなったし、自分自身の声とか歌い方、表現というものに対して今までよりも真摯に向かい合えるようになったんです。前は自分のクリエイティヴを前提として歌っていたのが、自分の中にはなかったサウンドの中で歌うことで自分の歌を客観的に見つめることができるようになった。最初はやっぱりびっくりしたんですけど(笑)、もっと自分の歌で楽しませていいんだって思えるようになりました。
――歌の佇まい自体が、内省的なものから開放的なものへと変わりましたよね。
ハルカ: ああ、そうですね。歌い方は変わったと思います。
――ただ、歌の内容自体は今まで以上に自分の内面を見つめるものになっているし、それが素直に歌詞として表れたものになっていて。挫折と葛藤を経験した上での決意や、そういうものを経験したからこそ、自分にとっての歌/音楽がどう自分の夢や理想にリンクしているのかが素直に歌われていますよね。
ハルカ: はい(笑)。やっぱり100%振り切れてるわけではなくて、今も悩んだり考えたりするんだけど、それでも前に向かって走っている、というところが出ているのかなと思います。どの曲も凄く複雑な気持ちを歌っているんだけど、でもそこで止まらずにちゃんと進んでいるという部分は出したいと思っていて……それは長い間止まっていたからこそ書けたものなんじゃないかと思います。
――あと、どの歌詞も自分と向かい合っていますよね。ハルカさんの歌詞は時に世の中や人々へ鋭く言及していくことも多かったけど、今回の歌詞はまず自分自身に向かっているなと思うんです。
ハルカ: そうですね。傍観者ではいられない精神状態だったから、、今まで恥ずかしくって言えなかったことも向き合うしかないよねっていう気持ちが大きくて。今は怖かったら怖いと言ってしまう。それが言えるようになったことで、凄く素直になったし、自分でもわかってなかった自分自身に改めて気づけたんですよね。
――歌詞でひとつ挙げると、“君はまだ知らない”という曲の歌詞が素晴らしいと思ったんです。この中に<「ねぇ、僕は誰よりもきっと/痛いほど人愛せるのに」/泣けないのなら壊して/無理に笑わないで/ひとりぼっちを怖がらないで>という歌詞があるんですけど、このリリックはどうして出てきたんですか?
ハルカ: この歌もいろんな場面のいろんな気持ちが重層的に重なっていて、一言では言えないんですが、その部分は、それを言えなかった自分を今の自分が見て歌にしている、という感覚があって。……学生の頃、みんながいる中で、ポツンとひとりぼっちで何かをしている人って凄く強いな、って見えていたんです。私にはそれができなかったし、大勢でもない、孤独でもない、どこにも行けない自分の弱さを凄く感じていて……それを思い出して。でも、人から見たら弱さだと思われることが、実は強さだったりすると思うようになった。だから、そこで無理に笑ったり、人に合わせたりしなくていいんだ!という想いで書きました。
――逆に言うと、今は自分自身が心からそう思えているからこそ、書けたのかもしれない?
ハルカ: そうだと思います。だから昔の自分を振り返ると「生きづらそうだな」と思います(笑)。
――(笑)。話を聞いていると、ふたりそれぞれにとって、この『世界』という作品はちゃんと自分達の起点となる作品になったんですね。
ハルカミユキ: 本当にそうですね。よかったなぁと思います。

体から湧き上がる衝動と感情をそのままライブで表したい

――『世界』が生まれる過程でもライヴが重要だったというお話をしていただきましたが、6月にはワンマンライブ 2015‘世界’」が行われます。ライヴに対して、今はどんなことを思っていますか。
ハルカ: 今、自分の中で「フィジカル」というキーワードが強くなっていて。今まで頭で考えて歌っていたこともあったけど、その全部を体を使った感覚でできたら、自然とお客さんに伝わるんじゃないかなと思っていて。
――ただ、ハルカさんの言うフィジカルというのは、形式ばったダンスをしたいわけでもなくて、自分の中にある感情や感覚が自然と肉体化して外に出ていくということだと思うんですけど。
ハルカ: はい、そのとおりです!
――そうなると、歓びも素直に表れていく一方で、このアルバムで切実に歌われている「悩みながらも前に進んでいく」ということも、より強く伝えていくことができるでしょうね。
ハルカ: そうしたいですね。楽しさも暗さも、体から湧き出てきたものをそのまま伝えたい。それが結果的にどういう形のものになるかはまだわからないけど、そういうライヴにしたいと思っています。

ミユキ: 自分達に素直になれた分、これからのライヴでは一体感を大切にしていきたいと思っていて。自分が楽しむことも大切なんですけど、それをお客さんとちゃんと共有して、かつ、曲だけじゃなくてライヴという環境全部が合わさって、また違う何かが生まれてくるようなライヴにできたらいいなと思っています。

取材・文:有泉智子 (『MUSICA(ムジカ)』編集長)
MUSICA公式サイト

MOVIE

INFORMATION

  • [発売中]◆2015/4/25(土) LIQUIDROOM (東京都) [共演] People In The Box

PROFILE



1st mini ALBUM [世界]
2015.04.22 リリース

★初回生産限定盤(CD+DVD)
品番:AICL-2859,2860
価格:2500円+税

★通常盤(CD)
品番:AICL-2861
価格:2000円+税

詳しくは公式サイトへ
こちら

1st mini ALBUM [世界]

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