ありのままの自分でいられた野音のステージ
- ――野音でのフリーライブから一ヵ月以上(取材時)経ちますが、振り返ってみて今はどのような思いですか? 当日の会場は開演前から客席にお客さんが溢れかえっていて、ライブの盛り上がりもハルカトミユキ史上最高と言えるものでしたよね。
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ハルカ: ステージに出ていく瞬間まで、どのくらい人が集まってくれているかがわからなかったから、本当に開演するまでは怖かったんですけど、自分の想像を超えて多くの人たちが集まってくれていて。正直に言うと、『安心した』というのが最初の感情でしたね。安心したと同時に、それまで張り詰めていた緊張から解放されて、今の自分たちのありのままの姿を見せることができたと思います。ライブ直前まで、必死にライブハウスや路上ライブで告知をしてきたので、性善説じゃないですけど、どこかで『みんな来てくれるんじゃないか』って信じていたところはあったんです。でも、実際に満員のお客さんを目の当たりにして、本当に嬉しかった。
ミユキ:もう感謝しかないですね。こんな私達の為に時間を割いてくれたこと。必死な私達を見て、何か伝わったのかも、とちょっと何かを信じたくなりました。お客さんに自分たちの一生懸命が伝わったってことが何よりも一番嬉しくて。きっと、これからも一生懸命さをちゃんと伝えていけば道が開けていくかもしれないって。
ハルカ: 野音の前に私たちがチケットを手渡しすることができたのは、すごく限られた数の人でしかなかったけれど、その限定された場所の限定された熱意のようなものが、その場その場では小さいんだけど、どこかでその場にいなかった人にも伝わっていったのかなって思うんです。結局、私たちの表現や歌で出来ることって、基本的に“一対一”のものでしかなくて。でも、その“一対一”のキズナはもしかしたらとても強いものなのかもしれない、それがいつの日か積み重なって何千とか、何万とか、そういうものになっていくんじゃないかって。そういう日を夢見てこれからもやっていけるんじゃないかって思いました。 - ――ハルカトミユキの音楽って、もちろん陰では努力をしてきたと思いますけど、人前に立った時にはわりと涼しい顔をしてきた表現だったと思うんですね。でも、そこでこれだけ意識が変わってきたということは、今後の表現に与える影響もすごく大きいかもしれませんね。
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ハルカ: 大きいですね。最初は、あまり他人に必死さを見られるのに照れや恥ずかしさもあったんですよ。自分自身、他人のそういうものを見るのも好きではないし。でも、そこを突き破ってみてわかったことがたくさんありました。
ミユキ:野音では、これまでで一番“素”の状態でステージに立てたと思います。お客さんもとても盛り上がってくれた。それどころか、お客さんにライブを作ってもらって、あの日のライブが成立したのかな、って思う。だからこそ『もっとお客さんを圧倒するようなライブをやりたかった』って悔しさもあって。あれだけ大きなステージで、たくさんのお客さんを前にして演奏をする経験ができたからこそ、自分たちにとって新たな課題も見えてきて。