――前回の「D.M.ツアー」ファイナルが、5/3の武道館でしたが、わずか2ヵ月で「DAICHI MIURA "exTime Tour 2012"」がスタートします。間髪容れずツアーをする意図は?
「武道館の熱が冷めないうちに、自分の次のステップを見せられたらいいな……と思ったんです。新曲をリリースして、それを披露するライブじゃなくて、ライブの中から作品が生まれてくるサイクルも今の自分に合っているし」
――ツアー・タイトル、「exTime Tour」の意味を教えてください。
「これ、いつも困る質問で、いつも秘密って答えてます(笑)。ツアー・タイトルって演出の一部だと思うんですよ。だから、先にあまりネタバラシはしないようにしてるんです。ツアーを見たら、タイトルの意味がわかるはず。でも、すごく刺激的な時間になればいいなと思っています」
――三浦さんにとって、初のホールツアーになりますが、ライブハウスと「見せ方」は変わるのでしょう。
「今回のツアーでは、座って聴いてもらう時間を作る予定です。これは、ライブハウスではできなかったことですよね。せっかく席があるので、座ってじっくり音楽を聴いてもらえれば、これまでと違う感覚が生まれるはず。それに、ライブハウスとはお客さんの視野も変わるので、そういうことも考えつつ、試行錯誤しながらリハーサルをしているところです」
――メロウな曲が増えるってこと?
「そうではなくて。前回のライブのテーマが“ライブらしいライブ”だったので、今回はもっと“ショー”ということを意識しています」
――前回の「D.M.ツアー」もライブハウスと武道館では、セットリストは同じでしたが「見せ方」が違っていましたよね。
「そこは意識して、武道館ではど頭と最後に“ひとりの時間”を作りました。お客さんに僕の意思が伝わったかどうかわからないけれど、最後に客席を見たら、笑顔で泣いてくれてる方がたくさんいて……。今まで自分が歌ってきたことが昇華できたというか、“歌ってきて良かった”って想いに繋がったんです。だからこそ、もっと音楽でお返ししていかないと、という気持ちになりました」
――武道館では「24歳までに武道館のステージに立つのが目標だった」と言っていました。「exTime Tour」の最中、8/24に25歳の誕生日を迎えますが、これからの1年、26歳までにやっておきたいことは?
「単純にたくさんライブをしたいですね。もう、次の次のライブくらいまで、自分の中でなんとなくの構想があるんですよ。それを膨らませながら、もっと面白いことがまだまだできると思っています。ライブをやる中で、自分の力を蓄えていければ……。今はとにかく、やるしかない!」
――では、30歳の自分はどうなっていると思いますか。
「変わらずやっていられたらいいな。これまで後ろを振り返ったことがないけれど、デビュー30年くらいでやっと考えるかも(笑)。続けてきて良かったと思えればいいですね」
――ご自身のツアー「exTime Tour」もスタートしますが、この夏はフェスやイベントなど、とにかくライブが多いですよね。同時進行するのは、正直なところキツくないですか?
「7~9月は多くの場所でライブをやろうというのが、現時点のテーマ。キツいですけど、それを乗り越えたとき、精神的なものを含めて、自分の中の基礎体力といか、いろいろな部分が成長するきっかけになるんじゃないかなと思っています。」
――ワンマンは2時間、イベントは30分という時間でのライブになりますが、自分の中で切り替えのようなものはあるのでしょうか。
「特にありませんね。でも、フェスには自分を目当てに来てくれるファンと、他の方のファンでたまたま僕のライブを見る人もいる。そこに対する気持ちの持ち用は、ちょっと違います」
――自分のファンじゃない人が、自分のライブに引き込まれていくのを見ることも、アーティストにとってのフェスの醍醐味なのでは?
「だんだん手が上がってくるのが見えると、嬉しいです。手を上げてくれた人が、もっと自信を持って手を上げられるアーティストにならないと。ひとりでも多く、少しでもいろいろな人の心に近付けたら……と思いながらやっているので、その想いがリンクした時間は嬉しいですね」
――三浦大知にとって、ライブとは?
「ライブ=“今”だと思います。これは私見ですけど、昔と比べて音楽と人との距離が、近くなってるんじゃないかな? いろんな気持ちを重ねて音楽を聴くということは、昔と変わらないけれど、今は、そこにパーソナルな部分や、人間的な部分が加えられて、手紙っぽくなってると思うんです。世の中が便利になったからこそできてしまった距離を、音楽を通して近くに感じる。これが、今の音楽の理想的な聴き方なのでは。だから、より近くで音楽を直接感じられるライブは、時代とマッチしてるんだと思います」
――7/1には、世界遺産の平泉で、福原美穂さんとツーマンライブを行います。福原美穂さんとは、彼女のアルバムでコラボをしていますが、これまでもKREVAさん、BoAさん、Leccaさんなど多くのアーティストとコラボしています。コラボをして改めて感じたことは何でしょう。
「自分のいろんな引き出しが増える、ということでしょうか。自分の誰にも負けない部分、自分にしかない部分を再確認するような」
――誰にも負けない部分とは?
「僕は影響を受けやすいタイプなんですけれど、コラボしながら、自分が表現したらどうなるか、自分のオリジナルに変換したらどう見えるか、どう聴こえるかを考えるのがすごく好きなんです。他の人と一緒にやることで、自分が他の形に変形して、そこでのベストをみつける感覚。その姿勢が自分らしいと思うし、それが僕の強みだとも思っています。いろいろなことが表裏一体なんです。何をやってもどんなことをしても、三浦大知という存在になりたい。相手からどんな影響を受けても、三浦大知でありたいと思って臨んでいます」
――福原美穂さんとのコラボでは、どんなことを再確認しましたか。
「美穂ちゃんは本当に真っ直ぐなんですよ。音楽に対して、ものすごく正直。だから、ナゼ自分が歌を始めたか、どうして歌いたかったのかという、一番最初の気持ちやパワーを思い出させてもらいました。大人になっていろいろ経験すると、フィルターが増えて、楽しいとか嬉しいとか、一番最初のピュアな感情を忘れちゃう。それを思い出させてくれる彼女の歌はスゴイと思うんです。僕も単純な気持ちを思い出せて幸せでした」
――今、作詞、作曲、振り付けまで自身で手掛けていますが、自分を自由に表現できる今、アーティストとしてすごく充実しているように見えますが。
「ずっと変わらず同じスタンスでやってきたので、今が特別充実しているという自覚はないですね。変わらない。でも、輪が広がっているのは感じます。自分が尊敬するアーティストの方たちに「イイね」って言ってもらえる今は、音楽人生の中で確かに充実しているかもしれませんね」
――今、三浦さんがアーティストとして大事にしていることは何でしょう。
「今年ずっと掲げているのが“理屈じゃない”ってこと。子供のころ、洋楽を聴いて、英語も、何というジャンルかもわからないけど、聴くと楽しいし、踊りたくなった。その曲を聴くと涙が出る、元気が出るっていうのも理屈じゃないですよね。それが音楽のすごく大事な魅力。そういう感情に直接刺さるような音楽やエンタテインメントを作りたいという想いがあります」
――アーティストとしての心の支えとは?
「ライブで見てきた景色が自分の心の支えになっています。バンド、ダンサー、スタッフ、そして来てくれたお客さんの楽しそうな顔を見ると、辛さも忘れちゃう(笑)。あの景色はライブにしかないし、ステージの上からじゃないと見られない。それがずっと支えになっていますね。現場が好き。人と直接会って、何かするっていいですよね」
――ひとりは好きじゃない?
「なにごとも表裏一体。皆で良いモノが作れたら、ひとりで悩んでた時間も無駄じゃなかったと思う。“ポジティブな曲が多いですね”って言っていただいたことがありますが、それは、落ち込んで、ネガティブになるから書けるんです。どっちも必要なことなんです」
――最新曲は、武道館の前日にリリースしたシングル「Two Hearts」ですが、この曲はどんなシチュエーションから生まれたのでしょう。
「前回のDMツアーで掲げていた音楽的なテーマが“王道をオリジナルにしていこう”ってことでした。ベタなことを三浦大知クルーで作ったら、王道をオリジナルにできたら、すごく強いんじゃないかって。気付いたら、今まで王道のバラードってやってこなかったので、直球を投げてみたんです。「Two Hearts」に関しては、曲がすごくファンタジックだし、すごくキレイだったので、真っ白なだけじゃいけないと思いました。黒い点が1個あると、まわりの白が引き立つように、イヤな部分も全部ひっくるめて表現できればいいなと思いました」
――デビュー15周年、そして25歳になる三浦さん。最後に「三浦大知は○○だ!」と、あえて言ってください。
「えっ、難しい! 何だろう? おこがましいかもしれませんが、“三浦大知は音楽だ!”。というか、“音楽しかない”。音楽しかやってこなかったので、音楽を取られたら何もないですね(笑)」