――いま現在の高中さんの活動状況はどのようなものなんですか?
「うーん、とくになにも(笑)。葉山のジャズ・フェスティバルがありますけど(7月に葉山マリーナ特設ステージで行われた『真夏の夜のJAZZ in HAYAMA 2012』に高中は出演した)」
――とくになにも?
「最近はなにしてるだろ……自転車乗ってるくらい(笑)」
――普段、ギターは弾かないんですか?
「たまあに。ウクレレは弾くよ。家の中……3ヵ所くらいに置いてあって、ベッドにもある。手の届く位置にあって、朝起きるとポロンポロンと10分か15分くらい弾いて、それから朝メシ食ったりするんですけど」
――曲作りはどうですか?
「作曲は普段しない。試験勉強みたいに追い詰められないとやらない。いついつにアルバムを発売するとなると、いついつまでには曲がないとまずい、じゃあやんなきゃ、みたいな(笑)」
――となると、いま現在の高中さんの音楽に対するモチベーションとはどのようなものなんですか?
「それに答えるには何ヵ月もかかる(笑)。自分の人生とはなんであるかを答えるようなものだから。自分の職業はこれだから(と、ギターを弾くジェスチャー)、ちゃんとやらなきゃっていうモチベーションはいつもありますよ」
――はい。
「まあ、なにもしなくてもいいんだけど、なにもしないとヒマすぎる(笑)。仕事して、休んで、緊張して、緩和して……仕事が終わって一杯呑むから楽しいんであって、なにもしてなかったら美味しくないでしょ?」
――アーティストとは、苦しい部分もあっての職業であると?
「曲を形にするには自分を追い込まないといけない。無理をしないといけない。曲を作るって結構苦しいんですよ。自分には何百曲もあるのに、どうやって曲は作っていいものなのか、いまだにわからない」
――もっといい曲を作っていきたいという課題があるということですか?
「グラミー賞ほしいとかね(笑)。ただ、いい曲作ってグラミー賞獲っても、それが幸せなのかな、最高の人生なのかな、と」
――では、高中さんはどういうときがいちばん楽しいと思えるんですか? やっぱり、ギターを弾いているときですか?
「がんばって練習して、うまく弾けたときは楽しい。サボっててうまく弾けない、ミスがいっぱいってときは楽しくない。月並みな言い方になっちゃうけど、がんばったぶんだけ成果が出るから楽しいんですよ。練習して、苦労しないと、楽しくない」
――高中さんはやっぱりアーティスト体質ということになりますね。では、秋のツアーに関してはどうですか? どんなことを考えていて、どんなふうに楽しもうと思っているんですか?
「それはこれから考えるんですけど……(笑)」
――こんなふうにしてみたいというイメージもない状態ですか?
「大掛かりなステージセットを用意するわけじゃないし、ぼくはただギターを弾くだけ。コンサートはいつも録音してあって、必ず聴くんですよ。自分で聴いてもっといい音にしたいとか、そういう努力はするけど」
――なんとなくなセットリストのイメージもまだないんですか?
「10年前くらいはだいたいおんなじ曲をやってたんだよね。ウケる曲と、ステージで映える曲ってのがあるから、それを中心に。で、いまはインターネットでお客さんの声を知ることができるでしょ? “おんなじ曲ばっかり”とかあったから(笑)、自分なりに変えるように徐々になってきて……」
――具体的には、どのように変わってきたんですか?
「去年はリクエスト中心でやったんですよ。(40周年の)アニバーサリーということもあって。そしたらとてもよかったという声が多かったので、じゃあ自分で考えるより、たとえばスタッフに任せたほうがいいんじゃないかなと。スタッフもある意味、ファン目線で考えてくれますから。曲順に関していっちゃうと、自分のパターンは限界が見えてきてるからね」
――お客さんのためにメニューを構成するのがいまのやり方ということですか?
「自分には自分がやりやすい曲ってのがあるわけ(笑)。でも、観る人には聴きたい曲ってのがあって、ぼくはそれに従うのがいいんじゃないかと」
――セットリストに関してはそのやり方を続けていくつもりですか?
「ファンからのリクエストは募らないにしても、スタッフの意見は聞く。ただね、昔の曲で、自分が恥ずかしいと思っている曲をリクエストされることもあるんだよね。実際やってみると結構よかったりするんだけど(笑)」
――恥ずかしい?
「若気の至りというか……たとえば、ELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ)が流行ってたとき、それとちょっと似たようなアレンジにしちゃってたりしててね(笑)」
――もうちょっとしっかり考えたアレンジをすればよかったと思っちゃうわけですね?
「そうそう。だけどそういうのって、自分が恥ずかしいと思ってるだけで、まわりはなんとも思ってないことが多いんだよね。録音した自分の声を聴いてイヤだと思っているのは自分だけ、みたいな」
――自分が楽しむことも重要だけれど、いまはそれ以上にお客さんを楽しませたい気持ちが強いということですね?
「はい、そうですね」