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チケットぴあインタビュー

昆虫キッズ

昆虫キッズ

――昨年9月にリリースされたアルバム『こおったゆめをとかすように』を、今振り返るとどうですか?


佐久間裕太(Drums/Cho)「うるさいかな」



高橋翔(Vo/Gt)「うん、情報過多な感じ?」



佐久間「情報量が多い」



――反省点ですか?


佐久間「もちろん反省ですよ」



高橋「(笑)いきなり反省だとさ、(インタビュー的に)どうなの?」



佐久間「ネガティブすぎる?(笑)」



――あははは!いや、それはこっちで上手くまとめるんで大丈夫です!


佐久間「ほら、プロだっちゅうの!(笑)」



高橋「(インタビュアーのbloodthirsty butchers Tシャツを見て、小声で) JACK NICOLSONって書いてあるよ」



佐久間「大丈夫、プロだから(笑)」



――(笑)でも、情報量が多いというのは、そういうコンセプトで作った作品なんじゃないかと思うんですけど。


高橋「うん、そうですね」



佐久間「味付けは濃くしたね」



――『text』(2ndアルバム)に比べると?


高橋「『text』はうす塩味だね。」



佐久間「味に例えるとね」



高橋「で、今回のアルバムは・・・カレー味(笑)」



佐久間「もう困ってんじゃねえか!(笑)」



(一同笑)



佐久間「でもまあ確かに、前作が「ご飯に塩」だけだとすると、今回は「カレー」かな」



高橋「なるほどな(笑)」



佐久間「いや、なるほどじゃねえよ、メチャメチャ下手じゃん例え!(笑)」



高橋「(笑)反動かな、前作がシンプルだったから」



――製作過程はどうでしたか?


佐久間「俺は苦しかったな、っていう印象が強い」



――そうなんですか!?


佐久間「完全に曲が出なくて。『text』で持ち曲が全部無くなったんですよ。これまでバンドやってて、持ち曲が全部無くなったことなかったから」



高橋「えー、なくなったっけ?」



佐久間「うん、『text』出した年の秋にシングル出したいって言って、4曲ぐらい作ったんだけど、全部ボツって」



高橋「あー!あった!その時期あったな!クリスマスソングとか作った!でもどうにもなんなかったね」



――単純にボツになる基準ってバンド全体なんですか?それとも高橋さんなんですか?


高橋「最終的に決めるのは俺なんだけど、でも分かるんだよね。メンバーノッてないなって」



――なるほど。高橋さんのようでいて、自然とバンドで決めている感じなんですね。


佐久間「その頃は多分単純に『text』出して、次は良いアルバム作らなきゃみたいな、変なプレッシャーがあったね。注目度が急に上がったような気もしていたから」



――これまでのインタビューなど読ませていただくと、曲がすぐできるバンドという印象があるのですが。


佐久間「その頃はピークにできなかったね。(高橋さんに)「スランプだ」って言ってたもんね」



高橋「言ってたっけ・・・?『裸足の兵隊』(1stシングル)ができたのがいつ?」



佐久間「2011年の2月」



高橋「そっか、震災の前だもんね」



佐久間「この曲だけ唯一自然にできた曲で、あとは全部悩みながらって感じだったなあ。『CHANCE』とか全然完成しなかったもんな」



高橋「『CHANCE』はいつからあったっけ?」



佐久間「あれはさっき言ってたシングル用の4曲のうちのひとつ。ほかはクリスマスっぽい曲、『まちのひかり』(1stアルバム収録曲)っぽい曲、もうひとつは・・・もう忘れちゃったけど(笑)でもそこからあった曲かな」



高橋「(冷牟田さんに)当時シングル作りたいって言ってたの知ってた?」



冷牟田敬(Gt/Key/Vo)「全然知らなかった」



(一同笑)



佐久間「でもまあ基本的にずっと煮詰まってたね」



――のもとさんはそういう煮詰まっている空気を感じたりしていたんですか?


のもとなつよ(Bass/Vo)「はい、まあ、一緒にいるので(笑)」



――そりゃそうですよね、すみません(笑)


佐久間「けど、その煮詰まっている中でもするっとできたのが『裸足の兵隊』と『ASTRA』で。・・・無理やり作ったアルバムだな、ひねり出したって感じ(笑)」



高橋「でもその分、腕力あるよ、腕力」



佐久間「え?」



(一同笑)



高橋「ちくしょう、良いこと全然言えねえな(笑)」



佐久間「まさにこういう状態でしたよ(笑)良い事言おう、良い事言おうとして・・・って感じ」



――あはははは!


佐久間「だから『非常灯に照らされて』とか最初遅いバージョンで作ったりして、全然しっくり来なくて、しっくりこなさ過ぎて、最後逆にラテンに振ってみよう、とかなって(笑)」



――迷走していたのが分かります(笑)冷牟田さんは今作を振り返ってみてどうですか?


冷牟田「これまでに比べると、メッセージ性が強いなって思いますね」



高橋「震災挟んだからね。そのムードというか、精神状態が反映されたと思う」



佐久間「そういえば『BIRDS』(アルバムの最後を飾る曲)とかも時間かかったよね」



高橋「あ!そうだね。あれも2年くらいかかった」



――そうなんですね。あの楽曲の歌詞とかから震災後に作られた曲なのかと思ってました。


高橋「ちょうどスランプ期に原型はあって、イントロとAメロだけかな」



のもと「『text』出した年の年末にライブやったんですけど、そのイントロとAメロだけやって(笑)」



佐久間「できてるところまで(笑)」



――むちゃくちゃ尖ってるじゃないですか!(笑)


佐久間「(笑)それからずっとほったらかしてたんだね」



――このアルバム、個人的には、震災を経たアルバムの中では、メッセージと楽曲が一番高いバランスにある作品と思っているんですが、例えば、もっと意味を無くそうということも出来るわけじゃないですか。


高橋「うん。でもガチガチに向き合うっていうのも違うかなって。」



――分かります。直球で伝えようとはしてないですよね。


高橋「良い距離感で向き合おうというのは思ってたかな」



佐久間「でも、バンドメンバーはそこまで考えてないよね」



高橋「そうそう。そうだね、実は俺も今インタビューされて言ってるだけだから(笑)」



佐久間「意味をつけるのはこの人(高橋さん)なんで、僕たちはアレンジを考えることしかできないから。だってアレンジに地震のこととか意味をつけることはできないわけだし。このスネアでメッセージを!とか言っても・・・ねえ?」



のもと「(笑)ふふふ、うん」



佐久間「震災があったからここは一拍ズラそう、とかないわけだから」



――けど、意味づけをしたくなる側の視点から言うと、バンドとしてメッセージを共有してないと、アレンジとかも微妙に違ってくる、違和感があるんじゃないかなって思うんですが。


高橋「うーん、それは別だね」



冷牟田「うん、そういうのはメンバーそれぞれ別だと思いますね。フロントマンがメッセージ性が強くて、みんながそれについていくって言うバランスとは、このバンドは違うと思いますね」



――なるほど。のもとさんはどうですか?


のもと「うん、前のアルバムも好きなんだけど、でも今回のも私は凄く好きで。歌詞とかメッセージは前の作品になかったものだと思うし」



――なるほど。今年の3月にリリースされた『みなしごep』はもともとリリースされる予定だったんですか?


冷牟田「これはアルバムのアウトテイクだね」



高橋「うん、ここに入っているのは、もともとアルバムに入る予定だったものが、曲順とか構成とか考えた時に置き所難しいし、カラーが違う曲ですね。でもだからこそ単体で出したら面白いんじゃないかと思って出しました」



――同じタイミングで1stアルバム『My Final Fantasy』を再発されたのは、何か理由はあるんですか?


佐久間「まあ在庫が無くなったからだね(笑)」



のもと「(笑)あはははは」



高橋「中古で高騰するのを見てるのも癪だし、廃盤にしたいわけじゃないし」



佐久間「特にそこまで特別な思いはないよね」



高橋「うん(笑)」



佐久間「でもやっと売り切れたかーって感じだね。2009年にリリースして、売り切るのに3年かかったからね」



高橋「売り切れたから出したって感じですね」



――じゃあ特にこれを再発したからといって新しい発見とかは・・・


高橋・佐久間「(同時に)ないね」



(一同笑)



――でも例えば『まちのひかり』とか、最近ライブでやってるアレンジ、最後「ひかり」って連呼するバージョンとか凄くいいなあって思います。


佐久間「曲はライブやるごとに変わっていくからね。こっちが飽きちゃうから」



――O-nestでのライブはほとんど新曲だったので、バンドはすでに次のモードに向かって言ってるということでしょうか。


佐久間「それも一緒ですね。同じ事ばかりやってるとやりがいがないって感じで」



高橋「いつも何か変化をもたらそうとは思ってますね。というか意識しなくてもそうなっていくものだと思うし」



佐久間「前回のアルバムの時は、作品が出るまでライブで曲をやらなかったんですよ。で、結果あんまり良くねえなって(笑)」



――(一同笑)


高橋「それはそうだったな(笑)」



――まずその考えに至ったのは何でなんですか?


佐久間「今まで曲を作ったらライブで披露して、それがまとまったらアルバムとしてリリースするってやり方よりは、変えたほうが良いかなって思ったんだよね」



高橋「うん、お客さんからしたらライブでやってる曲が音源化されたっていう感じで、それよりかは、初めて音源で聴いた方が新鮮だと思ったんだよね。で、そっちにしたら、慣れてない事だったから、バンドの体質に合わねえなって(笑)だから今は、良いバランスだね。新旧織り交ぜつつで」



――ちょうど新曲のお話になったので、『変だ、変だ、変だ/FULL COLOR』のお話をお聴きしたいんですが


高橋「これも実は録ったのは結構前なんだよね」



のもと「去年の年末だね」



佐久間「『こおった~』のレコーディングが5月に終わって、7月ぐらいにできた曲かな」



高橋「え?『こおった~』の時もうなかった?」



佐久間「ないよ、パット買ってないもん」



高橋「あ、そうか」



――(一同笑)パットっていうのは、前にライブで『アウトレイジビヨンド』のたけしさんのセリフを出したやつですか?


佐久間「そうそう、サンプラーみたいなやつ。それを買って、初期衝動で作った曲かな」



高橋「新しいの買ったから音出したいみたいな、原始的な感じで(笑)」



佐久間「それを踏まえた2曲ですね」



――『FULL COLOR』はどういった感じで作られたんですか?


佐久間「最初はエイフェックス・ツインの『Selected Ambient Works 85-92』の1曲目(『Xtal』)みたいなの作ろうって言ってて」



高橋「そうそう」



佐久間「ああいうずっとハイハットが続く感じの曲っていうのが始まりだったんですけど、でも結局今出てるのがデモ録りで、15分くらいでバーッと作ったやつなんですよね」



――えっ!15分!(笑)


佐久間「そう、だから音飾とかも全然凝らないで、全部コピペで作っちゃったから、全然エイフェックス・ツインっぽくない(笑)」



――(笑)最近は曲作りも快調だとお聴きしてますが。


高橋「うん、できてるできてる」



佐久間「だからアルバムできたらいいよねって話はしてる(笑)」



高橋「晴れたらいいねみたいな(笑)」



――ドリカム(笑)


佐久間「これまで7~8曲たまって、レコーディングの日にち決めて、そこに向けて足りないから、掻き込むように曲を作ったりってサイクルで作ってたので」



高橋「その掻き込むようにできた曲の感じってあるんだよね」



佐久間「あるね、でもそれでアルバムが出来上がってきたから。けど今回はまだそうやってできるかは分からないですね。どうなるかな」



――ライブも年末に向けてやられていくんですよね。


佐久間「ライブね、ライブ、どう?(のもとさんに)」



のもと「えっ!?ライブ?」



高橋「あのー、単純にライブやるとライブに頭が持っていかれちゃうから、曲作りに集中できないんだよね。俺はね」



佐久間「でもそうだよね、ライブの事考えちゃうから」



高橋「うん、単純に時間の制約が大きいかな。ライブがあるとライブのスケジュールに合わせてバンドが動いちゃうので」



佐久間「でも新曲をライブでやりたいなっていうのはありますね。やっぱりライブでやると、曲の方向性が固まるなって印象があるので」



――そうなんですね。


佐久間「やっぱり中途半端な状態でライブに持っていけないから、みんなアレンジを決めようとするね」



高橋「それは本当にそうだね。スタジオで何度もやるよりも、ライブで一回やる方が楽曲の説得力が増す」



のもと「うん、スタジオの段階だと、フレーズがきちんと決まってなくて、やる度に変わったりするんだけど、ライブでやるならちゃんと決めようと思いますね」



――なるほど。冷牟田さんはどうですか?


冷牟田「僕の場合は、自分のフレーズで言うとライブで後から良くなるってことはなくて、一発目で出なかったらちょっとマズイなって感じなんですよね」



高橋「確かにムタはそうかもね」



佐久間「うんうん」



冷牟田「高橋君の曲の感じと、僕の感じが合わさって、自然にできたら自分にとって良いフレーズで。それは僕にとって時間をかける作業ではないって感じですね」



のもと「けど私もそうかもしれない。最初に聴いてパッと出てこなかったら中々難しい」



高橋「うん、それで言うと、このふたりがパッと出てこなかったらボツになる可能性が高い」



冷牟田「僕たちがその分、ドラムとかは時間かけてやっていくんだと思うんですが、僕たちはフレーズなので、目立つフレーズがすぐに思い浮かばないとダメかなあと思いますね」



――なるほど、作業的にもそういう住み分けができているから、厳選されていくのかもしれないですね。


佐久間「でも、結局バンドなんて家でこういうドラムフレーズどうかなって個人でやったとしても、バンドでは当てはまんないんですよね。4人いないと物事が進まないというか。演奏の中でドラムフレーズ合わせていくしかないんですよね」



高橋「うん、各々が個人的にどうやろうが、4人のピースが合わないと上手くいかないですね」



佐久間「とりあえず、家で考えてきたものはよくない!(笑)」



(一同笑)



のもと「でもそうだね」



佐久間「スタジオに集まらないと何もできないっていうのはありますね」



――(笑)


佐久間「だから今作ってる楽曲は「アルバム出そう」として作ってる楽曲じゃないから、もっと自然発生的にできてる曲なので」



高橋「確実に曲は良くなってるし」



――では、マイペースということは変わらないですね。


高橋「っていうかそうでしかできないバンドだね」



佐久間「レーベル入ってる訳でもないし、これまで誰にも指図されずにやってきたので」



冷牟田「僕は最初から変わらないのと、どんどん変わっていくのと、バンドには2種類あると思っていて。それで言うとこのバンドは変わっていくバンドなので、これからも変わっていくと思いますね。この先もよく言う原点回帰とかしないと思うし」



佐久間「うん、だって原点が分かんないもんね(笑)」



高橋「ないからね(笑)」



のもと「(笑)これからも、やりたい気持ちがある限りやっていきたいですね」




取材・文:佐久間 隆(ぴあ)


■ 昆虫キッズ プロフィール
昆虫キッズ 高橋翔(Vo/Gt)佐久間裕太(Drums/Cho)冷牟田敬(Gt/Key/Vo)のもとなつよ(Bass/Vo)による4人組。
2007年 東京都にて結成。昨年3rdアルバム『こおったゆめをとかすように』を発表、リスナーのみならず評論家からも高い支持を得る。
今年は1stアルバム『My Final Fantasy』の再発やシングル『みなしごep』配信限定シングル『変だ、変だ、変だ/FULL COLOR』などをリリース。各種ライブなどマイペースな活動を続けている。


■ 昆虫キッズ 『変だ、変だ、変だ/FULL COLOR』 2013.8.12~iTunesほかで配信開始(各曲200円)
変だ、変だ、変だ/FULL COLOR ※昆虫キッズwebよりトートバッグ+曲データ(2曲+リミックス1曲)
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1. 変だ、変だ、変だ
2. FULL COLOR