「小さい頃から歌が本当に苦手で」ゼロからのスタート
- ――このページで安本さんのことを知る方もいらっしゃると思うので、色々なところでお話されていると思うのですが、アーティストとして活動をスタートさせた経緯を、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
- 安本「元々ダンサーとして活動をしていたんですが、その活動の中で様々なアーティストさんのバックダンサーを務めるうちに、少ない人数で何千人というお客さんを相手にしている凄さ、そしてその数時間のライブが多くの人の元気の源になっているという事を目の当たりにして、「アーティストというのは何て素晴らしい活動なんだろう!」って感動したんですね」
- ――その日のライブを楽しみに日々を頑張れたりしますもんね。
- 安本「そうなんです。それを実感してから、バックダンサーとしてだけではなく、アーティストとしてステージに立ちたくなって。それが元々のきっかけですね」
- ――なるほど。ちなみに、アーティストを目指したきっかけが「歌が苦手だったから」とお聞きしたんですが、普通逆のような気がするんですが・・・
- 安本「(照笑)そうなんです。小さい頃から歌が本当に苦手で、学校の音楽の授業も何とか歌わないで逃れられないかって思ってたくらいで(笑)」
- ――(笑)
- 安本「友達とカラオケに行ったときも、最初はタンバリンとか叩いてお茶を濁していたんですが、ずっと叩く訳にも行かず(笑)。歌う順番が回ってくるのが怖くて行かなくなったりするくらい苦手だったんです。ただ元々やっていたダンスというのは、小さい頃に「自分でやりたい!」って言ったくらいやりたい事だったんですね。だからどんなに大変でも辛いとか苦痛って感じたことが無くて」
- ――ご自身で選んだ好きなことですもんね。
- 安本「はい、そうしてダンサーの仕事をさせていただくうちに、果たして自分はこれまで壁を乗り越えた事があっただろうか、って感じたんですね。例えば、困難を乗り越えた事が無い人に「頑張って!」ってステージの上から言われても説得力が無いんじゃないかって思って」
- ――確かにそうですね。
- 安本「その頃、ちょうど同級生みんなが就職活動をしていた時だったんです。すると友達から「良いよね、美緒ちゃんは好きなことを仕事にできて」って言われたんですね。そこで、「そっか、実はやりたい事が別にあるけど、そのために勉強を頑張ったりとか、何かを成し遂げたりとか、そういう事を乗り越えてみんなその場にいるんだ」って気づいて。アーティストとしてステージに立ちたいって考えた時に、わたしは苦手な「歌う事」という事を乗り越えてやっとステージに立つ資格があるんじゃないかと思ったんです」
- ――自分で壁を乗り越えてみようと思ったわけですね。
- 安本「はい、女優さんでもモデルさんでもなく、歌う事という事に向き合ってみようと」
- ――なるほど。ちなみに、ダンサーになろうと思った時に憧れだった方はいますか?
- 安本「中学生の時にダンサーを目指そうと思ったんですが、安室奈美恵さんや沖縄アクターズスクールの皆さんが楽しそうに踊っているのを見たのがきっかけですね。「わたしもああいう風に踊ってみたい!」って思いました。」
- ――では、アーティストになろうと思った時に、「こんなアーティストになってみたい!」というような、目標となる方はいらっしゃったのでしょうか?」
- 安本「それが、アーティストを志すまで、いわゆる邦楽のアーティストの方々を凄く深く見つめるという事をしたことが無かったんですね。ダンスを始めてからはもっぱら海外のアーティストを中心に聴いていたので・・・」
- ――そうなんですか! では本当にゼロからのスタートだったんですね。
- 安本「はい(笑)。何も分からず飛び込んで、そこから自分が心から伝えたい事に向き合って行ったので。そうした中で目標となったのは岡本真夜さんや岡村孝子さんのような、言葉を届けられるアーティストですね」
- ――なるほど、ちなみにそういった中でまずアーティストとしての第一歩というのはどこから踏み出したんですか? 例えば、好きなアーティストさんがいれば、その方のカバーからスタートするとか、楽器をやっていたならそこから始めるとか、色々手段があると思うんですが、安本さんのこれまでのお話をお聞きしていて、ゼロからのスタートだとどこから始められるのかなと思いまして。
- 安本「ああ・・・そうですね、色々思い出させてくれるインタビューでありがたいです(笑)。最初はダンスのステージをやっている時に演出家の方から「歌を歌ってみない?」と言われて、でもその頃は先ほどお話したように歌に苦手意識があったので、嫌々マイクを握っていたのですが、これだとダンサーとしての仕事の幅も広がらないと思って、ゴスペルの学校に1年間通ったんです。まず、人前で声を出すと言う事が苦手だったのでそこを克服しようと思って」
- ――そうだったんですね。
- 安本「その後3か月、ボイストレーニングをしたのですが、その時に先生から「貴方の声質に合っていると思う」って言われて習った楽曲でもある、今井美樹さんのPRIDEをずっと繰り返し歌っていましたね」