インタビュー

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横綱までの道のりは決して平坦ではない。鶴竜は来日から13年、ついに角界の最高位にたどり着いた。来日直後は体重65kgしかなかった少年は、いかにして横綱となり得たのか?今年に入って才能が開花したのはなぜか?新横綱として迎える『五月場所』を前にしても、自然体の鶴竜がそこにいた。

綱取りはまったく意識しなかった

──『三月場所』の優勝で、第71代横綱に昇進しました。現在の心境を聞かせてください。
本場所の優勝はひとつの目標であり、目標を達成したのはすごく嬉しいことでした。それと同時に、「横綱としての責任を果たさなければいけない」という気持ちがあります。「これからが大変だ」と思っています。
──『一月場所』、『三月場所』と素晴らしい成績を残しました。横綱のなかで、どのような変化があったのでしょうか?
何かが変わったというよりも、ずっと心がけてきたこと、コツコツとやってきたことがようやく身になって、本場所の取組に出せるようになってきたのかなと思います。それは身体だけではなく、気持ちの面でも。色々なことの積み重ねが、結果に結びついてきたと思います。
──本場所中は綱取りや優勝などについて聞かれても、「目の前の一番に集中する」と繰り返していました。
色々と言われていましたが、その日の取組に集中することだけを考えていました。自然体で自分の相撲を取った15日間でしたね。
──綱取りも意識しなかった?
ええ、まったくなかったです。自然体で自分の相撲に集中できたのは、成長したところかもしれません。これはひとつ、すごくいい経験というか……。
──大きな山を越えたような?
そうですね。自然体の相撲を続けていくことが、また大事でしょう。
──昨年秋から体重増をはかってきました。ここふた場所の好調の影には、大きくなった身体を使いこなせるようになったこともあげられるのではありませんか?
最初のうちは体重が増えたことに重さを感じ、150kgを超えた身体に自分が慣れていないところがありました。でも、体重が増えてもいつもどおりの相撲を取れるようになってきたことが、結果に結びついているかもしれません。
──「相撲の巧さに加えて力強さが増してきた」という評価があります。
食べて太るのではなく、筋肉で体重を増やしたいと思っていました。それを実現することができ、取り組みも変わってきているところはあると思います。ですが、もっともっとレベルアップしていきたいですね。
──体重をさらに増やす?
体重は154・155kgぐらいのままで、脂肪を減らして筋肉に変えたい。バランスよく身体を使っていきたいと思います。『三月場所』のような取組を、これから常に続けていかなければいけないでしょう。

理想の横綱像はない、ただ横綱は強くなければいけない

──横綱になったことによる、心境の変化はありますか?
横綱になっても自分はいつもどおりに、ありのままでいたい。自分自身では、何も変わっていないと思います。
──変わったのは横綱ご本人ではなく、周囲の視線でしょうね。
横綱として変わっていかなければいけないところは、もちろん変わらなければいけない。逆に、変わらなくていいところもあるでしょう。そのバランスを大切にしたいですね。
──理想の横綱像は?
それはありません。相撲の取り方は人それぞれで、自分は今の姿で横綱になったわけですから。こうなりたい、ああなりたいというよりも、気持ちとしては今のままでいいというのが自分の考えです。「横綱はこうでなければいけない」ということはないと思います。あるとしたら、強くなければいけないことだけです。
──強くなければいけないというのが、実はもっとも難しいですね。プレッシャーを感じる場面もあるでしょうし。
本場所を迎えたらどういう気持ちになるのかは、まだ分かりません(苦笑)。変に力まず、力が入り過ぎないようにしたい。横綱だから勝たなきゃいけないという意識が強すぎると、ダメなのかなと思います。
──力まない境地は、鍛練によって身につけてきたものですか? それとも、精神的な強さは生まれながらに身についていたものでしょうか?
 どうですかね……鍛えてと言うか、色々な経験をしてきました。悔しい思いもたくさんしています。これまで経験してきたことを、うまく生かすことができているのかもしれません。気持ちをコントロールするのは、本当に難しいですよ。

勝った相撲は頭に残らない。負けた相撲はいつまでも覚えている

──今年初土俵から13年目となりますが、来日後のキャリアを振り返ると、決して順風満帆ではありません。
そうです。ひとつずつ目標をクリアして、今こうして横綱になることができています。
──来日当時から横綱は目標でしたか?
いえいえ、まずは関取になりたいという気持ちだけで、毎日の稽古に臨んでいました。そこからは、十両に上がる。幕内に上がる。幕内の上位で相撲を取る。三役を目指す。大関を目指す。本当にひとつずつ、目標をクリアしてきました。
──足元をしっかりと見据えてきたんですね。
はい。さきほども話しましたが、自然体で相撲を取ることを、継続していかなければなりません。身体もしっかり作っていかなければいけない。横綱より上の地位はありませんから、あとはもう優勝回数を増やしていくか、現役を引退するかのどちらかだけですから(苦笑)。
──今のひと言は重いですね。横綱は勝ち続けることが宿命であり、それができなければ土俵をおりるしかない。
自分にできることを精いっぱいやって、もしダメなら仕方がない。それぐらいの気持ちでやりたいと思います。もちろん、すぐに辞めたいわけではありませんよ(笑)。自分がやるべきことを、これからもコツコツと積み重ねていきます。
──積み重ねの土台は、日々の稽古ですね。
土俵上では考えるよりも先に、身体が動かなければいけません。動きが止まった取組や長い相撲では考える瞬間もありますが、基本的には自然と身体が動くように。そのためには、何よりも稽古が大切です。
──勝った経験と負けた経験のどちらが、強く印象に残っていますか?
勝った相撲は頭に残りません。負けた相撲はいつまでも覚えています。自分ができることを、精いっぱいやってきました。それでも、悔しい思いは何度もしています。優勝決定戦で、2回も負けていますし。(14代井筒・元関脇・逆鉾)親方からも「負けたときの相撲をよく見ろ」と言われています。
──親方から受けた言葉で、印象的なものをさらにあげるとしたら?
親方だけでなく、その時々で色々な方にたくさんの話をしていただいています。「言葉の力はすごい」と感じます。誰かの言葉をひとつあげるのは難しいですが、親方には「土俵の上では鬼になれ。土俵をおりたら笑顔でいろ」と言われています。土俵上の自分が鬼になっているかどうかは分かりませんが(苦笑)、それぐらいの気持ち、気合、闘志で相撲に取り組みなさいという意味だと、自分は理解しています。
──新横綱として迎える『五月場所』は、これまで以上に注目を浴びると思います。
そういうことはあまり気にせずに、あくまでも自然体で臨みます。自分の相撲に集中することだけを考えます。
──『三月場所』で勝利をあげた白鵬関との対戦も、たくさんの話題が集まるでしょう。
相手は大横綱です。少しでも近づけるように、努力をしていかなければ。
──最後に、『五月場所』への意気込みを聞かせてください。
横綱として土俵に上がったら、今は感じていない気持ちになるでしょう。大関とは違う責任感がありますし、一番、二番は負けてもいいというわけにはいきません。これまでとは別の意味で緊張もするでしょうし、新たな困難が待っているでしょう。それをまた積み重ねとして、強くなっていきたいですね。「もっと頑張らなければいけない」という気持ちです。

INFORMATION

■大相撲五月場所

  • 日程:5月11日(日)~25日(日)
  • 会場:両国国技館 (東京都)
  • 4/12(土)AM10:00~より一般発売
  • <大相撲五月場所 マス席>
  • <大相撲五月場所 イス席>
  • <大相撲五月場所 お土産券>
  • ☆企画券情報☆ 【貴乃花チケット】 特典:記念撮影&サイン色紙つき 【ともチケ】 特典:ちゃんこ付き そのほか、 ・ギフトチケット ・赤ちゃん抱っこ権付きチケット などあり。 詳しくは日本相撲協会HPまで。

PROFILE

■鶴竜力三郎(かくりゅうりきさぶろう)
1985年、モンゴル生まれ。
186cm、154kg。2001年9月に来日し井筒部屋に入門、同年『十一月場所』で初土俵を踏む。2005年『十一月場所』で十両昇進を果たすも、ひと場所で幕下へ陥落。2006年『三月場所』で再び十両に昇進し、同年『十一月場所』で新入幕を果たす。2008年『一月場所』で11勝4敗で技能賞を獲得。以後、殊勲賞2回、技能賞7回獲得する。2012年『三月場所』では13勝2敗で白鵬との優勝決定戦に臨むも初優勝を逃したが、直近3場所で32勝をあげ大関昇進を果たす。大関昇進後は2013年までふたケタ勝利は3場所にとどまる。2014年『一月場所』では14勝1敗として、再び白鵬との優勝決定戦で敗れる。『三月場所』で悲願の初優勝を達成し、第71代横綱昇進を果たす。

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