インタビュー

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「アフロ田中」以来、「男子高校生の日常」「スイートプールサイド」など立て続けに作品を発表している映画監督・松居大悟。来年1月には、シンガーソングライター大森靖子の楽曲の世界観とリンクした、橋本愛・蒼波純主演の「ワンダフルワールドエンド」が公開される。なお松居はもともと舞台出身。11月には自身の劇団“ゴジゲン”が、新作「ごきげんさマイポレンド」で3年ぶりに復活する。旬の松居ワールドを多方面から攻めるべし!

無自覚なまま取り組んで出来上がったものを観たら、すごい素直に楽しめました

――松居さんはクリープハイプの曲から誕生した映画「自分の事ばかりで情けなくなるよ」など、音楽との関わりが深い映像作品に多く参加していますね。
松居: 今回は、この作戦が面白そうだなと。まず最初に映画というプロジェクトで大きな物語を作って、そこからPVをちょっとずつ切り取るっていう。その切り取った部分がちゃんと音楽にも合っていて、合わせたら1本の映画だったって、上手くいったら超カッコいいなと思って。かつ、橋本愛が出るぞと(笑)。この人なら筋を通してくれそうだと思ったので、だったら大丈夫だと。
――大森さんのどんなところが魅力に感じますか?
橋本: 単純に、曲を聴いていて落ち着くっていうか、すごく気持ちよくて。あとライブは毎回、「今日は何やってくれるんだろう?」って気持ちになれるのが面白いです。
――脚本は大森さんとの共同作業で書かれたんですか?
松居: まず曲を聴きながら話を作ってみて。最初は大森さん自身がどういうものが好きかとかわからなかったので、見てもらって直して、を繰り返して。持ち込んではダメ出しされる漫画家みたいな気持ちでした(笑)。そうしてだんだん鋭利になっていった感じです。
――脚本を最初に読んだときの印象は?
橋本: 頭で考えるものじゃないっていうか、何回読んでもわからなかったですね(笑)。
――恋愛感情とはちょっと違う、女子が女子を想う気持ちが、現代的な感覚でユニークだなと思いました。
松居: 最初は男女の話だったんですけど、大森さん自身が道重さゆみの熱狂的ファンっていう話を聞いてるときに、女性同士の話の方が絶対この人の音楽に合うだろうなって思ったんですよね。
――松居監督は現場でどんな感じでしたか?
橋本: 衣装合わせのときに「燃え尽きましょう」って言われたんですよ(笑)。ついていくことを迷わなくていいんだってそこで思えたことはすごく良かったです。

“面白いもの”にはしたくないんです。理屈めいたものを作ることのような気がして。

――“ゴジゲン”が3年ぶりの復活となったいきさつは?
松居: ゴジゲンを休止したのは、演劇でやれることやったけどあまり上手くいかないなって思ってたとこがあって1回距離を置きたかったことと、劇団員が実家に帰ることになったのが主な理由です。映像をやろうと思って辞めたんじゃなくて、休止後に映像を濃いめにやりだしたのは偶然ですね。で、その辞めた劇団員の目次(立樹)は島根で農家やってるんですけど、友達が夜中に電話したら、「今、岩松了タイムだったんだ」って言ってたって。眠れなくて毎晩、岩松さんの戯曲を読んでるらしくて、「めちゃくちゃ演劇やりたいんじゃん! 引きずりまくってんなー」と思って(笑)。「じゃあ、劇やろうぜ!」って言ったら「やるか!」ってなったので、その翌日に速攻、劇場を押さえました。
――松居さん自身、演劇欲が増していたんですか?
松居: 僕はむしろやりたくなかったし怖かったし面白いものが出来るわけないって、探せば弱音しかなかったです(笑)。でも目次に会いたいってとこに引っ張られて、コイツがやりたいと言ってるんだからやる!って自分を奮い立たせているんですけど。
――演劇に対してネガティブな感情を持ったことに何か原因はあるんですか?
松居: 映像との比較でいうと、やっぱり映像の方が反応がすごく大きかったんですよね。こっちの方がチヤホヤされるなって(笑)。あと映像を作る過程はすごく生産的だった。芝居も編集も一番いいところでOK出して、時間をかけるほど作品が良くなっていく分、心がすごく豊かになる。舞台だと、時間が経つほど役者のメンタルと向き合う作業になるんですよ。本番早く終わんねーかなって思いながらやるのがツラいっていうか、シンドくて。
――と言いながら久々に取り組む舞台「ごきげんさマイポレンド」なわけですが(笑)。
橋本: “ポレンド”って何なんですか?(笑)
――順調に進んでいますか?
松居: すごい順調で、今んとこ台本が0文字(笑)。劇の作り方を忘れちゃったんですよね。でもなんかあの、面白い物語を作ったらダメだと思っているんです。
――チラシにも、「使い古されたテーマで展開の読める構成で既視感のある出がらし演劇が始まるよ。」という逆説的で挑発的なコピーが。「でもがんばって完成させるから!」とも書いてあるのが松居さんらしいです(笑)。
松居: 面白くするって、何か理屈めいたものを作ることのような気がして。自分の頭の中でどんなに面白くてもそれを長期間、役者にやらせることの意味のなさというか。だから今、稽古場で役者に「生きてればいいんだよ!」って言ってポカンとされてます。以前は、作り手としての自分が辛ければ辛いほど面白いものができると思ってました。でもそうやって疲弊して作ったものがあまり評判良くなかったり「生理的にダメ」とか言われたり(苦笑)。だから僕の中の方程式を壊して、自分にとって楽しく健全に作ろうと思っていて。と言いながら、作り手が楽しい芝居なんて観て面白いわけないと思っている自分がいますけど(笑)。
――以前から男芝居を書くことが多かったですよね。
松居: 舞台だと狭い稽古場や劇場で1ヶ月以上一緒に過ごすじゃないですか。女子がいたらやっぱりモテたいと思って、甘いのより苦いコーヒーを飲んだ方がカッコいいかなとか、そういうことが気になっちゃうんで(笑)。より稽古に集中しようと思ったら、男だけになるんですよね。映像だと全然関係ないんですけど。
――橋本さんは舞台に立つことへの興味は?
橋本: あります。同じことをやるのって飽きそうだから、飽きない方法を探すのが面白そうと思って。