インタビュー

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シリアスなストレートプレイからミュージカルまで。気鋭の新作にも参加すればシェイクスピアも演じる。20代にして様々な舞台で活躍を見せる中村倫也。現在放映中の『アオイホノオ』(テレビ東京)で赤井タカミ役を演じ、今後公開予定の映画『海月姫』『マエストロ』にも出演。ますます注目を集めつつある彼が、8月に上演される『ヒストリーボーイズ』で満を持して舞台初主演を果たす。この舞台にかける思いとこれからについて聞いた。

キャストとはジブリクイズで盛り上がる仲

――いまは舞台『ヒストリーボーイズ』の稽古真っ最中ですね?
はい。いい感じです。
――これまでたくさんの舞台に立ってきた中村さんですが、やはり主演だと何か違う部分はありますか?
演出部の方が持ち道具を持ってきてくれます(笑)。だから「そんなの自分でやりますよ」って言ってますけど。
――それがいちばんの違い(笑)。
あ! あと昨日、一本締めの音頭をとりました。人生初。
――何か一本締めをするようなことがあったんですか?
飲み会というか、キャストとスタッフのみんなで一緒にご飯を食べに行ったんです。それで最後に。
――「主演の中村さんに」って?
そうです。
――『ヒストリーボーイズ』は同世代の役者さんが多くいて、楽しそうですね。
ずっとはしゃいでました。ジブリクイズをして。
――ジブリクイズ?
松坂(桃李)くん、渋谷(謙人)くん、林田(航平)くんが特にジブリ作品がすごく好きで、映画のシーンを再現してくれるんですよ。で、どの作品のどこのシーンかをみんなで当てるっていう(笑)。
――楽しそうですね。
最初のうち、僕、松坂(桃李)、小柳心の3人で『スラムダンク』のコマを再現していたら、いつの間にかジブリになってた。それでしばらくやっていたら浅野(和之)さんが急にダースベイダーとして乱入してきたりして(笑)。C3POの動きもキレてたなー。安原義人さんと鷲尾真知子さんが『天空の城ラピュタ』に声優として参加していたことが判明してからはもう大変でした。少しでも声を聞こうと二人を取り囲んで(笑)。結局、いちばんジブリに詳しいが演出の小川(絵梨子)さんだった。

いろんなことを試せる空間

――そうなんですね! 小川さんといえば数々の演劇賞を受賞したまさに新進気鋭の演出家ですよね。稽古を重ねていくなかで小川さんの演出をどんなふうに感じていますか?
今作は演じる側にとっては難易度の高い作品だなと思うんです。たとえば詩の引用があったり、『ヒストリーボーイズ』というだけあって、ものごとを歴史でたとえている部分もある。
――元々はイギリスの作品ですもんね。
はい。そういうこともあって、脚本を読んでいるだけじゃわかんないなって感じるところがあるんですよね。そんなときに小川さんが「たぶんこれはこういうことなんじゃないかな?」って助言してくれる。常に先に行ってくれているという安心感があります。それから、何でも試してみようと言ってくれることがすごく大きい。「これ、違うかもしれないけどちょっとエクササイズだと思ってやってみよう」って。だからキャストのみんなもいろんなことを試しやすい空間だなって思います。
――以前、中村さんが今作を「めんどくさくない作品」と表現していたのが印象的です。演じる側にとっては難しいかもしれないけれど、観る側はそのハードルを感じずにいられるような作品なんでしょうか?
ああ、そうだと思います。演劇って本当は、ビール片手に観てくれるくらいでいいと思うんですよ。出てくる一つひとつの要素を全部理解しようとしなくても、そこにいる人間たちの空気感は感じてもらえると思う。僕が演じる若い教師、キラキラしている高校生役のみんな、責任者である校長……いろんなベクトルがひとつのものごとに向かっている話なので、意外とすっと共感してもらえるんじゃないかな。

生徒たちはみんなかわいい

――これまでも様々な役に挑んでこられましたが、今回の教師役はどんな感じですか?
教師といっても人格形成しきれていない若者なので、完全に大人の立場というわけではないんですが、生徒たちみんなかわいいです。食べちゃいたい。……もし僕が妖怪だったら。違いますけどね、妖怪じゃないですけどね?
――わかります(笑)。
ちゃんと言っとかないと。
――(笑)。主演だと役への取り組み方はこれまでと変わるものですか?
全然。どんな立ち位置、どんな職業でも、どれだけ偉くてもそうでなくても、結局人間ってバカなところがある。そういう意味では何も変わらないと思うんです。主役として……「ブタメン」とか差し入れてますけど、もっとなんかやった方がいいのかな? 毎日「ようしみんな、今日も頑張ろう!」とか円陣組んだり。
――いや、しなくていいと思います(笑)。
飲み会というか、キャストとスタッフのみんなで一緒にご飯を食べに行ったんです。それで最後に。
――「主演の中村さんに」って?
あ、教師役というよりもこの作品自体に自分と重なる部分は感じていますね。
――どんなところですか?
少しずつ年齢を重ねているなかで、僕なんかでも後輩から相談されることがあったりするんです。でも自分の経験からしか話せないじゃないですか。それがその相手に合うものかどうかってわからない。受け取る側の解釈によっても変わるし。
――そうですね。
受け取る側が取捨選択をして、テトリスみたいに自分に合う形に変えていくのがいいんだろうなって思うんです。この作品も、楽しく観られるものではあるけれど教育というテーマがあって、いろんな教師が登場する。生徒は色んなものを受け取る。観てくださる方も、「絶対的にこの人が正しい」と決めきれない生々しい感覚を感じてもらえるんじゃないかなって思っています。

先輩も後輩も、ピュア度が高い

――お話を伺う限り、稽古場の雰囲気もよさそうですし、どんな作品になるか楽しみです。
とにかくキャストのみんなすごくいいヤツで、全員がちゃんとパスをみんなに回せる人たちなんですよね。そういうカンパニーでつくるものは、だいたいいい作品になると思ってる。
――浅野さん、安原さん、鷲尾さんといった先輩方も共に楽しんでいる感じがしますね。
若いメンバーはガーッと元気だけど、彼らも先輩方も、同じくらいピュアに取り組んでいる感じが最高です。僕がいちばん汚れてる……。
――そんなことないです(笑)。
とにかく楽しいことが大好きなカンパニーで、キャリアに関係なくみんな率先して動く人たちが集ってる。だから、本番の頃には芝居の質や深度が増していくんじゃないかなって思います。
――中村さん自身も変な気負いもなく、リラックスして取り組んでいらっしゃるように見えます。
いや、本番はたぶん……周りの期待が高まったり、与えられる役割が大きくなればなるほど緊張しますよ。
――慣れないものなんですね。
緊張のあまり舞台袖でえづくことがけっこうあるんですよ。吐いて汚さないように気をつけます(笑)。まあ緊張したって仕方ないってわかっているし、それを乗り越えたら楽しめるタイプなんで、大丈夫だと思います。

むき出しの自分で勝負したい

――――『アオイホノオ』をはじめとして、映像作品でも活躍の場が広がっていますし、いま勢いが増しているように思いますが。
自分が10代の頃に思い描いたステップアップをさせてもらってるなとは思います。少しずつ寄せてきている波は感じています。でも、いま27歳ですけど、この先ずっと30代後半くらいまで、ケーキの上にかけるココアパウダーみたいにずっとふるいにかけられてると思うので。いままでの作品、役、出会いで培った土台のうえに、ちゃんと足つけてやっていかないとすぐに消えるなって思っています。
――客観的ですね。
二重人格なんです(笑)。常に自分を俯瞰でみてる自分がいる。でも、このへん(頭の上の方を差して)でコントローラー握っているうちはそれ以上伸びねえなってどっかで思ったんですよね。だからこの感覚を減らそうと思ってるところです。デビューしたころからなので、性格だと思うんですけど。無駄なテクニックや経験は、全部溶かしていきたい。これから先はむき出しの自分で勝負していかないと、ふるいには残れないし残れてもつまらないと思うから、どんどん新しい自分を出していけたらと思います。

PROFILE

中村倫也
東京都出身。2005年に映画 「七人の弔」(監督:ダンカン)でデビュー。その後も数多くの映画、テレビ、舞台で活躍。主な出演作品、映画  「沈まぬ太陽」(監督:若松節朗) 、「SPINNING KITE」主演(監督:加瀬聡) 、「風俗行ったら人生変わったwww」(監督:飯塚健)、テレビ CX「高校入試」、NHK-BSプレミアム「下町ボブスレー」、舞台 「RENT」(演出:マイケル・グライフ) 「八犬伝」(演出:河原雅彦) 、「ヴェニスの商人」(演出:蜷川幸雄) 。2014年は「ミュージカル フル・モンティ」(演出:福田雄一)、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」、舞台「青年Kの矜持」への出演。7月よりテレビ東京系列「アオイホノオ」が放送される。本作「ヒストリーボーイズ」にて自身初の主演をつとめる。また2015年公開の映画「マエストロ!」への出演も決まっている。

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