落語家・笑福亭鶴瓶がこだわる“ポイント”
- ――まずは、根本的な質問から。落語家・笑福亭鶴瓶とはどんな存在なのでしょうか?
- ……まだわからないですね。うん。まだわからない。言うても、まだ13年ですから。落語と本格的に向き合ってから、まだそれだけの時間しかたっていないんです。だから、見に来てくださいとしか言えないんですよね。もちろん、自分也にこだわっているところはあります。たとえば、演じる時に鶴瓶がやっているんじゃなくて鶴瓶が消える。しかし、鶴瓶でしかできない演じ方で……というのが理想なんです。そのためには、くさい言い方になってしまうんですけど、毎日毎日稽古するしかなくて。
- ――そこまで稽古するのは、なんのためなのでしょう?
- ポイントを見つけるためです。うまいことポイントを突けると古典落語が、いままでとはまた違うところにいける気がしていて……。そもそも、古典落語というのは先人たちが繋いできた物語があるでしょ。それをそのままやる落語家もいる。いいんです。いろんな人がいていい。でも僕は、稽古を重ねていると“ここがひっかかるなぁ”とか、“ここをこう変えたらどうだろう?”というポイントが見えてくるんです。たとえば『死神』という噺では、従来は男だった死神を女性に変えたりもして。
- ――今回の『笑福亭鶴瓶落語会』では、『三年目』という古典落語を演じる予定だそうですが、ポイントは見つかりましたか?
- 怒り方ですね。『三年目』という噺は江戸前(関東)では人情噺とされ、上方(関西)では『茶漬幽霊』というタイトルでユーモアのあるお噺として演じられるんですね。で、僕が感じたポイントは、主人公の男がいかに怒るかというところだったんです。妻に先立たれた男が後妻をもらう。前妻が恨んで出てくる。でも、その出てくるタイミングが問題で「なんで今頃やねん!」って観客も亭主の気持ちになって納得してもらえるように演じたいなぁって。ね? わからないでしょ?
- ――わからない? どういうことですか?
- 『三年目』というタイトルと今の話でなんとなくの粗筋はわかるかもしれないですけど、落語に詳しい人以外は、どこが面白いのかはわからないでしょ? だからやっぱり、とにかく見に来てくださいとしか言えないんですよ(笑)。