圧倒だなんて、そんな余裕はなかった
- ――まずはプロデビュー戦を振り返ってみて、どのような印象だったのでしょうか。観ている側からすると、東洋太平洋チャンピオンを相手に圧倒的とも言える2ラウンドTKO勝利でした。
- 「いやいや。圧倒だなんて、そんな余裕はなかったですよ。試合中も必死に『早く倒れてくれ』って思っていましたから。相手にパンチがけっこう入っていたので、事故が起きても良くないですし」
- ――入場するときもそうですが、試合中でも笑みがこぼれていました。あの笑顔は余裕が生み出したのでしょうか? それとも意識して笑った?
- 「あの笑顔ってどこから生まれてきているんだろう、と自己分析してみると、やっぱり自己顕示欲からきていると思うんですよね。あの舞台に立って、笑わないほうが本当は冷静だと思うんです。あそこで笑うということは、それだけ『自分に余裕がある』と見せたいというアピールでしかないので。それは、心のどこかが力んでいたってことだと思います」
- ――やはり緊張していた?
- 「緊張もそうですが、1ラウンド50秒くらいのときにもらったパンチがあったんです。体が固まっていたときに打たれた右のカウンター。そのパンチでダメージがあったので、『このまま、この力んだ状態でいくとまずいな』と思っていました。だから、相手に対してのある種の駆け引きでもありますよね、あの笑いは。また6ラウンドをフルで動かなければいけない、ここは力を抜かなきゃいけないなと、自分をリラックスさせるためでもあったと思います」