インタビュー

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今年8月のプロデビュー戦でロンドン五輪金メダリストの看板通りの実力を発揮し、ミドル級東洋太平洋王者に勝利した村田諒太。ミドル級の雄はプロデビュー戦で何を感じたのか。12月6日(金)に迫ったプロ2戦目、そしてその先に何を見据えるのか、村田に訊いた。

圧倒だなんて、そんな余裕はなかった

――まずはプロデビュー戦を振り返ってみて、どのような印象だったのでしょうか。観ている側からすると、東洋太平洋チャンピオンを相手に圧倒的とも言える2ラウンドTKO勝利でした。
「いやいや。圧倒だなんて、そんな余裕はなかったですよ。試合中も必死に『早く倒れてくれ』って思っていましたから。相手にパンチがけっこう入っていたので、事故が起きても良くないですし」
――入場するときもそうですが、試合中でも笑みがこぼれていました。あの笑顔は余裕が生み出したのでしょうか? それとも意識して笑った?
「あの笑顔ってどこから生まれてきているんだろう、と自己分析してみると、やっぱり自己顕示欲からきていると思うんですよね。あの舞台に立って、笑わないほうが本当は冷静だと思うんです。あそこで笑うということは、それだけ『自分に余裕がある』と見せたいというアピールでしかないので。それは、心のどこかが力んでいたってことだと思います」
――やはり緊張していた?
「緊張もそうですが、1ラウンド50秒くらいのときにもらったパンチがあったんです。体が固まっていたときに打たれた右のカウンター。そのパンチでダメージがあったので、『このまま、この力んだ状態でいくとまずいな』と思っていました。だから、相手に対してのある種の駆け引きでもありますよね、あの笑いは。また6ラウンドをフルで動かなければいけない、ここは力を抜かなきゃいけないなと、自分をリラックスさせるためでもあったと思います」

アメリカのトレーニングで感じた重量級のボクシング文化

――さて村田選手は次の試合に向けて、今回もアメリカで練習をするわけですが、前の試合前に渡米されたときに感じたことは、どんなことだったでしょう。
「一番、顕著だったのは日本のボクシングとは違う“重量級の文化”だということです。軽量級がメインとなる日本では、ボクシングの基本的な考え方が『何発も打ってダメージを重ねて倒す』というものなんです。けれど、重量級を主軸としてボクシングが進化してきたアメリカでは、セットアップして『相手にいかに良いパンチを一発当てて試合を終わらせるか』を狙っている。その国のメインとなる階級が軽量級なのか重量級なのかによって、ボクシングの常識的な考え方も異なるものだな、と実感しましたね」
――アメリカに行ったらどんな練習をされるんですか。
「恐らく、すぐにスパーリングに入ることになると思います。なにが良いって向こうでは、スパーリングに対するストレスがなくなります。たぶん日本にいたままであれば、ミドル級の選手が少ないので、次の試合までスパーリング・パートナーは、ずっと同じ人になってしまうんですよ。アメリカでは、僕と同じ階級の競技人口が多いので、そういうことにはなりません。いろいろなタイプの選手と手合わせをすることができる。これは世界を狙う上で、非常に大きな意味をもってくると思います」
――よく言われるように実際、外国人と日本人では同じ体重でもパワーが違いますか?
「そうですね。パワーもあるし、(日本人のボクシングとは)リズムも違います。正直なところ、日本のランカーよりも強いスパーリング・パートナーもいると思います。そういう選手とスパーリングができるというのは、本当に恵まれた環境だと思います」

ここで負けるようでは、世界を獲ることはできない

――村田選手の中で、次の試合のテーマがあれば聞かせてください。
「テーマですか、うーん……。デイブ・ピーターソン選手のことを、現時点ではあまり研究をしていないのですが、強い相手であることは間違いないんですよね。14戦13勝という戦績を持つ選手ですから。まずは、しっかりこの相手に勝てるだけの練習を試合までにしていきたいですね。ここで負けるようでは、世界を獲ることはできないと思っているので。そして現時点での自分の実力を試したい、把握したいという気持ちもあります」
――記者会見では「磨くべきところはたくさんある」という言葉がありましたが、具体的には、どういったところでしょうか?
「前の試合(デビュー戦)で硬くなったところとかバランスが悪かったところ、そういう反省点は修正していきたいと思っています。そしてやはりスタミナ面ですよね。プロならではのラウンド数を戦い抜く体力と戦い方を身に付けていかないといけません。例えば、余計な力みを減らすことで、無駄な消耗をなくす、というのもそのひとつ。なかなかできなくてトレーナーに怒られていますけど(笑)」

日常にはない感情のぶつかりあい、それこそがボクシングの最大の魅力

――以前のインタビューでは趣味も「ボクシングです」と答えていましたが、いまでもその考えは変わりませんか?
「僕はできれば一生、ボクシングに関わっていきたいと思っているくらいですから。それだけ奥深い競技だし、だからだと思いますが他のことにあまり興味が湧かないんですね。本を読んでいる時間は好きですし、子どもと遊んでいる時間も大事にしています。あと地元(奈良県)に帰るときが、ガス抜きにはなっている気がしますね。でもやっぱりボクシングが好きで、他の選手の試合を観るのも好きなんです。その人の生まれや育ちも含めて、その物語がおもしろいんですよ。ボクサーって、波乱万丈な人生を送っている人が多いんです。ただ試合を観るだけでも良いんですが、そういったボクサーのバックグラウンドを知ると、さらに深みが増してくるんです」
――これから上を目指していくのに必要なことは?
「たとえば僕が優秀な脳みそを持って、月に1億円を稼ぐ人間でなにひとつ不自由がなかったら、もしかしたらボクシングをする必要はないのかもしれないですよね。結局、僕にはボクシングしかないからボクシングをする。金メダルを獲って、注目される選手になったということで生活も楽になりましたけど、でもボクシングに頼らざるを得ないという意味では、まだまだハングリーなボクサーだと自分では思っています。ボクサーはボクシングをやめたら、なにも残らないんですよ。ボクサーって本当に持っているものが少ないんです。そしてなにより、まだボクサーとしての自分に満足をしていません。この気持ちは大きいですね」
――それでは最後に次の試合を楽しみにしている人たちに向けてひと言メッセージをお願いします。
「ボクシング独特の魅力を見ていただきたいですね。それはなにか? もちろんテクニックもそのひとつですが、なによりもまず感情ですね。ふたりの選手が『この相手を倒したい』という気持ちを試合までに高めていって、それをぶつける。日本人は、感情を隠して本音を言わないことが美徳とされている部分がありますが、感情がないわけではないですよね。ボクシングは普段の生活ではしてはいけない“殴り合う”ということを見せてくれるスポーツです。もちろんきちんとした競技ルールの上でですが、そこには自分の人生をかけて、その試合のために何ヶ月も練習を重ねて培ってきた、ものすごく強い感情があります。日常にはない感情のぶつかり合い、それこそがボクシングの最大の魅力だと思います。その姿を見せた上で、応援してくれる皆さんが期待するノックアウトを見せられれば良いな、と思います。楽しみにしていてください」

INFORMATION

■ダイヤモンドグローブSP~村田諒太プロ第二戦~

  • [日程・会場] 12月6日(金)18:00 両国国技館
  • ▽WBC世界フライ級タイトルマッチ/八重樫東vsエドガル・ソーサ
  • ▽村田諒太vsデイブ・ピーターソン
  • ▽OPBF東洋太平洋ライトフライ級王座決定戦/井上尚弥vsヘルソン・マンシオ
  • ▽OPBF東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ/椎野大輝vs岩佐亮佑
  • ▽福原辰弥vs井上拓真
  • ★プリセール:  11/2(土)10:00~11/8(金)23:59 ★一般発売:11/9(土)10:00

PROFILE

村田諒太(むらた りょうた)
1986年、奈良県生まれ。2011年『世界ボクシング選手権』ミドル級銀メダルを経て、2012年『ロンドンオリンピック』ミドル級で金メダルを獲得。三迫ボクシングジム所属。アマチュア戦績138戦119勝(89KO・RSC)19敗。プロ戦績1戦1勝(1KO)。2013年4月に公開プロテストに合格しプロに転向。同年8月25日に行われたプロデビュー戦では、ノンタイトルマッチながら東洋太平洋王者・柴田昭雄と戦い、2ラウンドTKO勝利。

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