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チケットぴあインタビュー

ソニー ビル・ウィリアムズ(パナソニック ワイルドナイツ)

ソニー ビル・ウィリアムズ(パナソニック ワイルドナイツ)

芸術的なオフロードに獰猛なまでの縦への突進力。SBWことソニー ビル・ウィリアムズは、世界一のインサイドセンター(CTB)と言われている。13人制ラグビーで育ち、W杯でオールブラックスの優勝に貢献し、ボクシングヘビー級王者の顔を持つスーパースターがトップリーグのパナソニック ワイルドナイツ入りして2ヵ月。SBWにパナソニックでの手応えと課題、そして12月のリーグ再開後のビジョンを訊いた。
――まず、トップリーグ前半戦を終えて、パナソニックは5勝3敗の5位です。この結果を受けて率直な感想はありますか。

「パナソニックはチームとして少しずつ向上しています。後半戦、プレーオフへ向けて、シーズンはまだ先がある。この中断期間を生かして、さらにチームとして向上していきたいと思っている。ただラグビーは非常に難しい。毎試合、自分たちのラグビーができずに、フラストレーションがたまることがあります。それでもこの4週間でしっかり準備し、リーグ再開後には、コンスタントに自分たちの力を出せるようにしていきたい」

――ご自身のパフォーマンスの満足度についてはどうですか。
「これまでのプレーに関して、満足しています。コーチ陣も私のパフォーマンスに満足してくれていると思うし、私自身トップリーグの環境にアジャストしてプレーできていると思う。もちろん、東芝やサントリーに負けて、結果にはガッカリしている。ただ、シーズンはまだ先がある、今後大事なことはチームとして向上していくことだ」

――神戸製鋼以外の上位勢と対戦しましたが、印象に残ったチームはありますか。

「相手チームがどうこうではなく、パナソニックはアタックが非常にいいチームなので、どのチームが相手でもスコアできる。ただ前半戦では、試合の中でバランスがよくなかった点があったのも事実。たとえば、エリアを取るためにキックすべき局面や、ボールを持ったまま継続すべき局面で、たまに間違った選択をしてしまうことがあった。チームの課題は、正しい時に正しいプレーを正しく行うこと。そうすれば、勝てます。あと、最終的にはディフェンスがいいチームが勝利すると思っているので、ディフェンスも向上させていかないといけない」

――日本に来る前と今、トップリーグに対する印象は変わりましたか。

「はい。トップリーグはスキルレベルが非常に高いことに驚きました。ニュージーランドにいた時は、そんなに詳しく日本のラグビーを知ることはなかった。トップリーグでは私が予想していたよりもかなりレベルの高いラグビーを展開しています。うちのスクラムハーフがスーパーラグビーに挑戦できるようになりましたが、そういった選手がこれからたくさん出てくると思う」

――スーパーラグビー ハイランダーズ入りが発表となったチームメイト・田中史朗選手へ、スーパーラグビー クルセーダーズやチーフスで活躍したソニー選手からアドバイスをお願いします。

「彼がパナソニックに帰って来て私を助けてくれることがあれば、その時私も彼を助けるつもりだ(笑)」

――今季のトップリーグのトレンドとして、ソニー選手の代名詞と言えるオフロードパス(相手のタックルを受けながら出すパス)が多く見られるようになったのですが、どう思いますか。

「確かにいろんな選手がオフロードパスを出しています。でも、それは彼らにとって使えるスキルだから、オフロードパスを使っているに過ぎない。オフロードパスと言えば、SBWとイメージされるラグビーファンも多いだろうが、私としてはみんなが持っているスキルだと思っている」

――謙虚にならず、本物のオフロードパスの極意を教えてください。

「まずゲインライン(スクラム、ラインアウト、ラック、モールの中心を通るゴール ラインに平行な仮想の線)を切ること、ラインブレイク(敵の防御ラインを突破すること)が先決です。ラインブレイクし、その後にスペースを生かすためにオフロードパスを出す。どれだけ相手をひきつけて、周りを生かすかを意識している。オフロードが機能するには、チームメイトのサポートがなくてはならない。幸いパナソニックには私がオフロードを出そうとしている気配を感じてくれる選手がたくさんいます。多くのサポートを受けていることをうれしく思う」

――ソニー選手は中央突破もキックもパスもできる中、オフロードパスは選択肢のひとつなのか、それともこだわりがあるのか、どちらですか。

「確かに、以前所属していたラグビーリーグ(13人制)では、オフロードパスは重要なので特に意識してオフロードパスを出していました。だから、ラグビーユニオン(15人制)へ来てからも、ラグビーリーグ時代から体に染み込んだスキルなのは変わらない。オフロードパスはこだわって出しているわけではなく、本能的なものです」

――頭で考えてパスを出しているというより、反射に近い状態でパスが出るんですか。

「はい」

――理想とするインサイドセンター像を教えてください。

「まずスペースを見つけることができること。そして、そのスペースに他の選手を走らせることができること。それから、自分からも突破できること。さらにディフェンスラインを組織的に動かすことができ、FWもコントロールできるのが理想の12番です」

――その理想にソニー選手はどれぐらい近づいている。

「私の描く理想の12番に到達することは一生ないと思います。なぜなら、80分間にわたり完全に試合を支配できるCTBが理想だからです。ただ、その理想とするCTBに少しでも近づくために、日々努力しています」

――完ぺき主義者ですか。

「ラガーマンとして、常に成長することが大事。すごくいい試合があったとしても、80分間の中には修正しなければならない部分は必ずあります。そういう細部を突き詰めていくことが、チームの、そして自分の成長につながると思う。そういう意味では完ぺき主義者なのかもしれない」

――では、ストロングポイントは。

「自分の強みはランと、スペースを見つける力だと思います。ランとスペースを見つけることは、12番として必要なこと。どこにボールを動かすか、ポジションがら常に考えています」

――ソニー選手はラグビーリーグにラグビーユニオン、そしてボクシングと、スポーツ界の常識では考えられない超人的な活躍を見せていますが、その自覚はありますか。

「先のことを見てしまうといろんなことがあり、とても困難に見えてしまう。私は今に集中している。今できること、今やらせてもらっていること、今すべきことに集中して、日々を過ごしています。3つのスポーツを並べると、ひとつを選んでしまいがちだが、私はその時できることにチャレンジしたいと思っている。私にとって、13人制も15人制もボクシングもチャレンジです。今を過ごしながら、前に進んでいくことを楽しんでいます。だから自分のことをスーパーマンなんて思ったことはないですね」

――ラグビーユニオン、ラグビーリーグ、両方にチャレンジする難しさは。

「リーグでもユニオンでも、タックルしボールを奪い、オフロードを出し、スペースを作って周りを生かすなど、やることは同じ。5年前にリーグからユニオンに来た時は、確かに難しいチャレンジだったけど、私はもともとリーグで育ってきているので、トップリーグのシーズン終了後にリーグに戻るのはそんなに難しいことではないでしょう。リーグ、ユニオンを問わず、ディフェンスやオフェンスでいいパフォーマンスを出すことが楽しいのです」

――トップリーグ終了後、ラグビーリーグに戻ったら、オールブラックスとして出場するソニー選手の勇姿が見られないのでは、と世界中のラグビーファンが心配していますが。

「今のところ何とも言えません。YESともNOとも言えない。それは誰にもわからない。ただひとつ言えるのは、自分ができるいいパフォーマンスを常に出して、オールブラックスの扉が常に開いている状態にすることが大事だということです。ただ、今はパナソニックのラグビーに集中しています」

――ボクシングのニュージーランドヘビー級王者の顔を持つソニー選手は、11月24日に元IBF世界ヘビー級王者のフランソワ・ボタと闘う予定ですが、トップリーグ8節、近鉄ライナーズ戦で負った右肩のケガは大丈夫でしょうか。

「まだ痛みがあります。オーストラリアへ帰った後、詳しい検査を受けないと、まだ試合ができるかどうかわからない。ボタは経験のあるボクサーなので、万全の状態でなければ闘えません。ただ、今回もしケガで試合が延期になったとしても、またどこかのタイミングでボタと闘いたいと思っています」

――ボクシングはラグビーにとってもプラスになりますか。

「最初はトレーニングの一環でボクシングを始めました。シーズン前にボクシングをやるようになってフィットネスが高いレベルにあり、身体もよく動いた。ボクシングは私の体力を向上させる重要なファクター。ただ、ボクシングの試合前の緊張感はラグビーとは全く違います。ラグビーには仲間がいるが、ボクシングは自分だけ。ただ、試合が終わった後の解放感はまた味わいたいと思わせるものがある」

――トップリーグ後半戦でパナソニックがプレーオフ進出の4強入りするために、チームと個人、必要になってくるものは何ですか。

「チームとして、もっともっと一生懸命に走り回る情熱、意識を高めていかなければならない。あとはディフェンスをもっとしっかり安定させなければならない。個人としては一試合一試合を戦いながら、修正すべきところを修正して次の試合に臨んでいきたい。それにパナソニックにはいいスキルを持った選手が多いので、さらに学んで成長したい」

――後半戦はソニー選手へのさらに厳しいマークが予想されます。

「いろんなチームのいろんなディフェンスがある中で、パナソニックもそのディフェンスに対してどういうアタックがいいか、チームで変えていかなければならない。距離をタイトに詰めて来る相手があれば後ろにスペースができる。そういうことを考えながら、いろんなチームのディフェンスに対応していければと思います」

――プレーオフでターゲットにするチームはあるのか、あくまでパナソニックのチーム力向上を考えるのか、どちらですか。

「敵はどこでもいい。私たちはどんな敵が来ても勝てるだけの力はあると信じています。ただ、いくつか修正していかないといけないポイントがある。正しく修正していけば優勝までいけると信じています」

取材・構成:碧山緒里摩(ぴあ)
撮影:スエイシナオヨシ


<プロフィール>
ソニー ビル・ウィリアムズ
1985年、ニュージーランド生まれ。193cm、108kg。パナソニックワイルドナイツ所属、CTB。2002年、13人制のブルドッグスとプロ契約。2004年にプロデビューし、13人制のNZ代表キウイズ初テスト。2008年、フランスのトゥーロンへ移籍し、15人制のラグビーリーグへ転向。2010年、15人制のNZ代表オールブラックスで初キャップ、2011年W杯に出場し優勝に貢献。同年、クルセーダーズ(NZ)へ移籍し、2012年、チーフス(NZ)でスーパーラグビー優勝の原動力となる。2009年、ボクシングでプロデビュー。5勝(3KO)、NZヘビー級王者である。