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チケットぴあインタビュー

矢野喬子(浦和レッズレディース)

矢野喬子(浦和レッズレディース)

昨年のワールドカップ優勝メンバーであり、銀メダルを獲得したロンドンオリンピックでもなでしこジャパンに名を連ねた矢野喬子。北京五輪後の金メダル獲得計画からロンドンでの激闘、そして五輪後のなでしこリーグまで浦和レッズレディースのキャプテンに訊く。
――銀メダル獲得おめでとうございます、でいいんですよね。

「はい。決勝までは100%金メダルのみを狙っていましたし、悔しさもありますが、みんなが全力を出してやった結果なので、銀メダルを誇りに思います。今でも気持ちの中で6対4で金メダルを取りたかったなとは思いますけど……」

――ロンドン五輪から帰国して2週間強が経ちました。忙しい毎日を送っていますね。

「お陰様で。忙しいと言っても、みなさんが喜んでくれていますし、充実しています。帰国してから3日ほど休んで、すぐ練習に合流しました。ロンドンと違って日本は暑いので、早く暑さに慣れるため、早めの合流は助かりました」

――表彰や表敬訪問など、行事も多い中、一番印象に残っているのは何ですか。

「(東京・銀座での)パレードがホントにすごかったです。あれほどの人を一度に見ることはないでしょうし、アイドルになった気分でした(笑)。あの日は暑かったし、沿道はぎゅうぎゅう詰めだったので、バスから見ていて心配になりました」

――ロンドン五輪ではグループリーグ第3戦・南アフリカ戦に出場しましたが、非常に難しい試合でしたね。

「難しかったですね。身体能力が高く、テストマッチなどでなかなか対戦できない相手でしたから。それになでしこはメンバーを7人入れ替えたのもあって、緊張もすごかったです。国歌斉唱の時なんて、うれしさと緊張で泣きそうになるくらいでした」

――主将でセンターバックを担う浦和レッズレディースと左サイドバックのサブに回る代表では、役割やポジションが違います。どのように気持ちを整理していったのですか。

「レッズではチームを引っ張っていかないといけない立場ですけど、なでしこは各チームの中心選手の集まりなので、なでしこではやらなくていいところが出てきます。逆に自分が何をしなければいけないかを考えたら、チームを盛り上げていかないといけない。19歳から代表にかかわらせてもらっているので、いろんな先輩を見てきたし、試合に出ている選手の気持ち、出てない選手の気持ち、いろんな経験をしてきました。もちろん悔しさはありますけど、スタメンで出ない中で自分ができるベストを尽くそうとしていたので、気持ちは吹っ切れていました」

――ネタを仕込んだり。

「そうですね(笑)。試合前に望月(聡)コーチのサングラスをかけたり、帽子をかぶったり、一般受けはしないけど、なでしこの中ではツボなので、リラックスさせることはできたのかなとは思います。ネタをやろうとしたきっかけは南アフリカ戦が始まる前、私たちがカタかったのを見て、サブに回ったメンバーが笑わせてくれたんです。そのお返しの気持ちも込めて3回ほどネタを披露させてもらいました(笑)」

――なでしこのチーム力はずば抜けています。中にいる選手たちもそれを感じますか。

「なでしこは昔から仲がいい。19歳で入った時は『私はこの場にいていいのか?』と思いましたが、慣れていくうちに女子特有の仲のよさがありましたね。男子と違って合宿が長いのも関係していると思うんです。大会になると1ヵ月以上共同生活をするのは当たり前でしたし、長い合宿の積み重ねで打ち解けていく。背中を見てという澤(穂希)選手のような選手もいれば、宮間(あや)選手のように言葉とプレーで引っ張っていく選手もいる。ホントに個性が強いけど、なぜかひとつにまとまる。そこには目標があったからだと思う。何があろうと目指すところは一緒。横道に逸れようが、ゴールは一緒です」

――ドイツW杯とロンドン五輪、チームにどんな違いがありましたか。

「ディフェンスはホントに強くなったなと感じました。レッズで一緒にプレーしていた熊谷(紗希)もドイツへ移籍し、フィジカルが強くなりましたし。個々で世界と戦える選手が増えてきた。ロンドン五輪では個々が上がることによって、さらにチーム力が上がるのが実感できました」

――メンバーが23名のW杯と異なり、18名で中2日の6試合の五輪はハードですよね。

「そうですね、厳しかったです。でも、佐々木(則夫)監督は常に五輪を想定して、試合の次の日に紅白戦を行ったりしてハードスケジュールを体感させてくれた。ハードな状況での強さは、なでしこには備わっていたと思います」

――佐々木監督は選手主体のチームにシフトチェンジしました。信頼を感じましたか。

「選手に考えさせるというのは今までの監督にはなかった。なでしこのサッカーを徹底的に頭に叩き込んでから、選手に考えさせる。基礎となるなでしこのサッカーに何をプラスするか選手たちで考えることによって、どんどんディティールまで話し合うようになった。監督に言われただけでは限界がある。選手に任せることによって、選手の責任感も生まれました。ゲームでひとつミスが出ると、試合後に徹底的に話し合いました。監督からのミーティングがなくても、選手全員揃ってビデオを見て、『ここはこうだ』とコミュニケーションを取りました。北京五輪が終わって1、2年の時は、ビデオを見て、いくつかのグループで分かれて大きな紙に書いて発表するなどしていました」

――考えることが癖になり、考えずにいられなくなった。

「ホントに細かいことも流さない。特に宮間選手が率先していました。試合中も『今、ここどうだった?』と常に会話していましたね。『ゴールしたけど、ここはどうだったの?』『守備のここはいいの?』と、反省点をそのまま放ったらかしにしません」

――技術的にも向上心もレベルが高いサッカーは楽しいですよね。

「そうですね。選手が考えるサッカーは楽しいし、やりがいもあります。その上、結果を出すことによって喜びを感じられました」

――選手をそう導いた佐々木監督というのは。

「やられましたね(笑)。佐々木監督の掌で見事に転がらせられましたね(笑)」

――ピッチ外でのロンドン五輪の思い出は。

「いろんな選手と写真を撮ったことですかね。まずはサッカー選手で(イギリス代表のライアン・)ギグスと(メキシコ代表のジョバニ・)ドス・サントス。それに陸上のタイソン・ゲイ。あと朝青龍さん。朝青龍さんはモンゴルレスリングチームの団長で来ていて、『なでしこがんばっているね』と言ってくださって、快く写真撮影もしてくれました。五輪に出場した選手の特権かなと思って、写真は撮りましたね(笑)」

――8/25に開催されたなでしこリーグカップ・INAC神戸戦で敗れ、グループリーグ敗退となりました。

「五輪の中断期間中にレッズレディースはやり方を変えてリーグカップに臨みました。前半はINAC相手にうまく機能して先制点を取れたんですが、後半になってINACにペースを握られっぱなしで……。ただ、課題はハッキリしたので意味ある敗戦だと思いますし、意味のある敗戦にしないといけない」

――9/15(土)に再開するなでしこリーグでも4位と納得のいかない結果だと思います。

「そうですね、全然納得のいかない順位です。やはりどうにかしてINACを倒すチームが出てこなければいけないので、それが私たちのチームでありたい。でも、INACだけではない。レッズが負けたのはINACだけですけど、引き分けがホントに多いので(4勝4分1敗)、そこを修正しないと先に進めない。試合内容も大事ですけど、後半戦は勝つことだけを考えて戦いたいと思います。全勝で16節・ベレーザ戦、17節・INAC戦に臨みたい。前半戦を振り返っても余裕だと言える試合はひとつもないです。全員がいつも以上のパフォーマンスをしないと結果はついてこないので、厳しくやっていきたいと思っています」

――3強と言いつつ、INACの存在は反則じゃないですか。

「なでしこジャパンのメンバー7人に助っ人外国人も揃っているので、正直、ずるいよと思いますけど(笑)、そのINACを倒してこそなので、そこは望むところだという気持ちでやらせてもらっています。INACとの試合では、100%の力でも止められないので、120%の力でやるしかない。120%の力でしか止められない選手が何人もいるので、難しいながらも楽しいですね」

――U-20女子W杯で猶本(光)選手、藤田(のぞみ)選手、柴田(華絵)選手らが活躍しているのはプラスですよね。

「レッズから7人も代表に選ばれているのは、これから先にもつながるし、チームの底上げにもなる。世界を体験するというのは大きなこと、マイナス面は一切ない。彼女たちがチームに帰ってきてくれた時に非常に楽しみですよね」

――U-20女子W杯を見ていて、改めて発見はありますか。

「猶本と藤田のボランチは運動量があって技術が高いのは知っていたけど、猶本の守備力はちょっとびっくりしました。レッズでは守備的ではないので、しっかり相手の攻撃の芽を摘み取っているのが意外でした。猶本はもともとシュートを狙う意識が高いけど、『あれ、こんなシュート持っていたっけ?』というシーンも見れたので、レッズでも積極的にやってほしい。自分たちの世代でもできるんだというふうに引っ張っていく気持ちでやってほしいですね」

――最後に残りシーズンの目標を教えてください。

「全勝。それしか考えていないです」


取材・構成:碧山緒里摩(ぴあ)
撮影:桜井大吾(ぴあ)


(プロフィール)
矢野喬子 ●やのきょうこ
1984年生まれ。神奈川県出身。浦和レッズレディース所属、DF。小学生でアローズSCでサッカーを始め、中学・横須賀シーガルズ、湘南学院高を経て、神奈川大学へ進む。高校1年時にU-18日本代表に招集され、大学1年時には初のフル代表に選ばれ、'03年W杯アメリカ大会に出場。以後、W杯・五輪に3度ずつ出場する。2007年にプロ契約選手として浦和入り。ルーキーイヤーに新人王を獲得するとともに、ベストイレブンも受賞。ベストイレブンは5年連続で選出。2009年、なでしこリーグ優勝にも貢献する。

★チケット情報
9月15日(土)より再開するプレナスなでしこリーグ2012。浦和レッズレディースは、ロンドンオリンピックで銀メダルを獲得した矢野喬子をはじめ、ヤングなでしこ(U-20日本女子代表)メンバーも7名所属するなど注目のチーム。リーグ後半戦、巻き返しを狙う浦和レッズレディースをスタジアムで応援しよう!

<プレナスなでしこリーグ2012 浦和レッズレディース ホームゲーム>
□9月16日(日) <vs ASエルフェン狭山FC>
□9月23日(日) <vs ジェフユナイテッド市原・千葉レディース>
□10月7日(日) <vs アルビレックス新潟レディース>
□10月28日(日) <vs 日テレ・ベレーザ>
□11月4日(日) <vs ×INAC神戸レオネッサ>
会場:浦和駒場スタジアム
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