インタビュー

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佐々木蔵之介らがかつて所属した劇団「惑星ピスタチオ」を率いた劇作家・演出家の西田シャトナーが、若き日に書いた戯曲「ロボ・ロボ」。2014年、18 年ぶりに上演されたその作品は、矢崎広、陣内将 ら若手男優7人全員がロボットに扮し、75分間をロボットマイムで演じきるという異色作だった。それから2年、新たなキャストとともに「ロボ・ロボ」が帰ってくる! 今回、分析ロボット“アナライザー”に扮するのは、注目の個性派・玉城裕規だ。

「すごい。ナンだ、この作品!」

――昨年上演された『ロボ・ロボ』を客席でご覧になっていたのだとか。
観たんですよ。まさか出るとは思わずに!
――作品や役を十分知っているだけに、「これはタイヘンなものが来たぞ……」という気持ちに?
前回の『ロボ・ロボ』は、前情報なしで観に行ったんです。そしたらみんなロボットをやっていて、「え、まさか人間(の役)は一切出ずに、全員こんなロボットな感じでやるのか?」と。でもそれが自然に観られて、あの世界観に速攻入っていけちゃって。だから「すごい。ナンだ、この作品!」って感覚の方が大きかったですね。じゃあ演じる役者はどうだったんだろうなっていうのは後追いで考えて、「……いや、絶対タイヘンだわ!」と思いました(笑)。
――最初から最後までロボットを演じきるというのは、俳優としてなかなかない経験ですよね。
人間が一人でも出るなら、まただいぶ違うと思うんですけどね。それに台本を読むと、より人間に近いロボットでも成立するんですけど、よりロボットに近かった。そこ挑戦するってすごいなと思いました。やる方はたぶん、相当なストレスがあると思います。感情をブワッと出せるわけではなく、感情を乗せた動きができるわけでもない。でも本当ならこの感情でこの動きをしたいけどできない、という中でやるセリフの吐き方であったり動き方というのが、やっぱりこの作品の魅力なのかなと思いますね。抑えるから出る、というか。僕もどちらかというと発散型なので感情が流れ出る方がやりやすかったりするんですけど、今回はどう繊細に丁寧に提示しようかというところです。

全てが挑戦

――本来“発散型”というお話がありましたが、各ロボットにいろんなキャラ付けがされている中でも玉城さん演じる「アナライザーT-1」は分析ロボットだけあって冷静沈着なところがある、リーダータイプのロボットですよね。この役と聞いて、最初にどう思いましたか?
一言、「ヤッベェな!」と思いました(笑)。前回は陳内(将)くんがやった役なんですけど、彼のアナライザーがめちゃくちゃ素敵で、今でも脳裏に焼きついているんです。いい役者だなぁと思って、あれから陳内くんのファンにもなりましたし(笑)。こういう個性の役は、あまりやったことがないんですよ。もちろんロボットの役自体が初めてですし。だからもう、全てが挑戦ですね。
――逆に、どのロボットが玉城さんの素やこれまで演じてきたタイプに近いと思いますか?
合いそうっていうことだと、レコーダー(小澤亮太)かコック(佐藤流司)なのかなと思いますね。アナライザーとレコーダーはコンビのような立場なんですけど、役者のタイプ的には亮太の方がアナライザーなんですよ。前回のキャストとの組み合わせでいうと、亮太と陳内くん、僕と矢崎広くん(=前回のレコーダー役)の方がどちらかというと近い。特に『里見八犬伝』では矢崎くんが初演でやった役を再演で僕がやったりもしたし、配役が発表される前はそんな風に想像していたお客さんも多かったと思うんですが、そこをまぁバツンと裏切りましたよね(笑)。意図は僕もわかっていないですけど、ここを逆にしたっていうのがまた面白いところです。
――その小澤さんとは『曇天に笑う』でも共演しています。
そのときもすごくサポートしてくれて頼りがいがあったんですけど、実は気にしぃだったりかわいいところもあって、周りにすごく気を遣える役者さん。そしてやっぱり芝居に対して熱いので、一緒にひとつのものを目指そうって素直に思えますね。ほかのメンバーも、みんなほんっとに個性的! そんな7人が(西田)シャトナーさんのもとで何かしらまとまったとき、どういう色かたちになるのかなっていうのはすごく楽しみですよね。

シャトナーさんは新しいものを役者に見せてくれる

――西田さんとは舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The First Result(2013年)以来のタッグです。玉城さんは初代・東堂尽八役で、後に大ヒットとなったあの舞台シリーズを始まりから作り上げたメンバーでもありますね。
『ペダル』の場合は、ほぼゼロからみんなで作り上げました。まさか自転車レースのシーンを僕らがハンドルだけ持ってやるとは思わなかったので、「ヤバい作品だぞ……」と(笑)。最初は戸惑いましたけど、僕の中の芝居の概念をすごく広げていただいたので、シャトナーさんとはまたぜひご一緒したいと思っていました。『ペダル』では、ガードレールの役もやったんです。超テンション高めで! 役者同士で普段、ガードレールをやったとか自動販売機をやったなんて会話はまずしないですよね(笑)。シャトナーさんはそういう新しいものを役者に見せてくれる方なので、すごく楽しいです。
――そういう未知の世界に対して、もともと柔軟なタイプですか?
もし柔軟だったとしても、シャトナーさんにより柔軟にしてもらいました。「演劇とはなんだ?」と聞かれても答えられないし、正解自体がなかったりするじゃないですか。それが演劇の楽しさだったりするし。そういう中で、シャトナーさんにはひとつのラインというか、独特のワールドがあって、それはやっぱりすごいし、また味わいたいと思うんですよね。

これまでもこれからも“コツコツ、一歩一歩”

――経歴を拝見すると、いわゆる下積みをわりと長く経験していらっしゃるんですね。アンサンブルをしていても、そのルックスならばずいぶん目立ったのではないかと思うのですが……。
いえ、全く! 怨霊の仮面とかかぶってうなり声を上げていたり(笑)、顔が見えない役もたくさんやっていたので。そういう期間が結構長かったんですけど、経験がないときにメインキャストの方たちのお芝居を間近で見せていただいて、「どうやればこの人たちみたいにやれるんだろう、上に行けるんだろう?」と考えたことが今すごく役立っています。そこがなかったら、たぶん今はない。周りから「アンサンブルからよくここまで来たね」って言われるんですけど、僕の中では「え、これが普通じゃないの?」って感覚で。これまでもこれからも“コツコツ、一歩一歩”な感じはしますね。
――自分にしかない個性を活かしつつ、役の幅もどんどん広がりを見せています。この先の俳優としてのビジョンは?
ビジョンを持つことの大事さは分かりつつ、いかんせん感覚的なところがあったりするんですけど……。ただ最近また、何でもやりたくなってきました。最初の頃はいろんな役をやりたい、その方が勉強にもなるしってスタンスだったんです。お仕事自体がなかったですし。でもだんだんお仕事をいただくようになって、やっぱりこういう役がやりたいっていう欲求が出てきた。でも最近は一周回ってというか、また何でもやりたくなってきたんです。そして一割でもいいから、その役に自分らしさを出していきたいって。あとやっぱり、もともとは映画に感化されて役者になったので、そちらの分野もやっていきたいですね。今までもいろいろな役をやらせてもらっていて、本当にありがたいと思っています。自分でも何が得意なのかわからないけど(笑)、統一性がない方が刺激になるし、楽しいですからね。今回のロボットなんて特に、今後あるかわからない役どころ。映像だったらきっと、CGで処理されるだろうし(笑)。そういう役に巡り合えて、幸せです。

取材・文:武田吏都
撮影:イシイノブミ