ライブレポート #05
手塚眞(ヴィジュアリスト)
LOVEの自主企画イベント「LOVE・YA・DAY」の第5回が、10月25日にJ-POP CAFE SHIBUYAで開催された。今回は、ゲストに漫画家・手塚治虫の長男で手塚プロダクション取締役のビジュアリスト・手塚眞さんを迎えて、“未来を創造するDAY”をサブタイトルにトークが繰り広げられた。
まずは、LOVEが“ビジュアリスト”という仕事について質問すると、「“ビジュアリスト”って仕事をしているのは、世界でボクだけなんですね。小さい頃から映画や映像を作る人間になりたいと思っていろいろ想像するうちに、職業も創れるんじゃないかと思いまして」とビジュアリストになったいきさつを説明。続けて、「一言で言うと“夢想家”、難しく言うと“ビジョンをビジュアライズする仕事”です。ボクが頭の中で想像しているモノを作り出していくんですが、今では“夢想家”よりも“妄想家”になっていますね(笑)」と話すと会場から笑いが起こった。
“想像できるものは創造できる”と小さい頃から考えていたLOVEは、「私は音楽で未来を創造しているんですが、私たちが想像する未来は作れますか?」と尋ねると、「まずは個人として捉えると、“夢は叶えられる”と思っていたほうがいいですね。目標があるならそれに向かって努力したほうがいい。それがムリだと思ってしまうと一人一人がネガティブになって、社会全体を包むエネルギーがネガティブなものになってしまいます。難しいことをするんじゃなくて、まず自分がポジティブになれるかで未来は作れるんだと思います」と答えた。
さらに、「何かに迷ったときには、ボクはビジュアリストだから“美しいと感じたものが正しい”と決めて選択することにしています。これは、自分の中でポジティブな考え方だと思ってます。その逆の選ばないほうですが、例えば物を壊すとうるさい音がしますよね。うるさい音は美しくもないしポジティブなものじゃないと思うんですね。物を破壊して生産するのは、ボクは正しい道ではないと思います」と語った。
また、父親である手塚治虫についての話になると、「父がなんであんな漫画を描くようになったか。それは、中学生のとき、虫が好きだった父が山に昆虫観察をしにいって日記をつけるんですね。それを毎年続けるうちに、去年より虫の種類や数が少なくなったと気がつくんです。“どうしてなんだろう?”と。実は宅地開拓で林が少なくなって、虫の住む場所が狭まってきていたんです。そこでかわいそうだと父は感じるんですよ。これは矛盾してると憤るんです。その思いを持ったまま大人になって、中学生のときに感じた純粋な思いを素直に漫画に込めていたんです」と明かした。
その話のつながりから、「最近はボクも虫を観察して、話しかけるようにしてます。何か月か続けていると、そのうち話を聞くようになるんですね。白い紙を差し出して、“ここにお乗んなさい”って言うとちゃんと乗るんですね」と話し、LOVEと観客を驚かせた。
トークのラストには、LOVEから恒例の質問「手塚眞さんにとって愛とは何ですか?」。「ここにいるということですね。観客のみなさんは、こちらに顔を向けて僕らのつまらない話を聞いてくださる。これ以上の愛はないですね。誰一人として僕らの話をつぶそうという方はいない。これほどの愛がどこにあるでしょうか」と手塚は締めくくった。終始、しっかりとした口調の中にも優しさが溢れる話し方にLOVEと観客は引き込まれた。
トーク後のライブでは、手塚が「自分のことを歌ってくれていると思った」というLOVEの曲『Blue Finch』でコラボ。曲のイメージにあわせて手塚が製作した映像がステージに映し出され、その中でLOVEは心を込めて熱唱した。その後、「“歌声喫茶”って知ってる? 今日はみんなで一緒に歌いましょう!」とLOVEが話すと、アコースティック・ギター弾き語りでデビュー曲『過ちのサニー』や、12月9日(水)にリリースするニュー・シングル『君は僕のセンユウ』など全8曲を熱唱。観客はLOVEに導かれるまま、笑顔で歌をうたい、手拍子でリズムをとり、まさに会場がひとつになる盛り上がりとなった。
撮影:山我祐生
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