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ジュビロ・トークバトルVol.8
「LEFTY」DVD発売記念
【 開催日/会場 】 5月17日(日) 東京国際フォーラム ホールC
Supported by スカパー!
協賛:スカパーJSAT株式会社
協力:株式会社ヤマハフットボールクラブ
2008年に現役を退いた名波浩氏。DVD発売を記念して、ジュビロ磐田でのプレーを振り返ったジュビロ・トークバトル。
2年ぶりのトークバトルにも関わらず、会場は満席! 同級生の元Jリーガー・水内猛氏を聞き手に迎え、
笑いあり、涙ありの2時間たっぷり語っていただきました。

<ホスト>
水内猛(スポーツキャスター)
1972年神奈川県生まれ。旭高から'91年に三菱自動車工業(現・浦和レッドダイヤモンズ)入り。Jリーグ元年には、浦和で出場試合数18試合、7得点と好成績をおさめる。'96年ブランメル仙台(現・ベガルタ仙台)に移籍し、'98年に引退。現在はスポーツキャスターとしてテレビ・ラジオで活躍中。

<ゲスト>
名波浩(ジュビロ磐田アドバイザー)
1972年、静岡県生まれ。市立清水商業高等学校を卒業後、順天堂大学に進学、1995年ジュビロ磐田に入団。同年からレギュラーを獲得し、日本代表にも召集。1999年にはセリエA・ヴェネチアへ移籍。日本代表では、初のワールドカップ出場も経験。2008年、14年間の現役生活を終え、引退。


前編
司会:「ジュビロ・トークバトル vol.8 supported by スカパー!」。このイベントはJリーグ・オフィシャル・ブロードキャスティング・パートナー、スカパー!の特別協賛でお送りします。みなさん、たいへん長らくお待たせいたしました。これより「ジュビロ・トークバトル vol.8 supported by スカパー!」、スタートさせていただきたいと思います。それでは、本日の司会進行役のこの方からご紹介させていただきたいと思います。みなさん、大きな拍手でお迎えください。水内猛さんです。
会場:拍手
水内:こんにちは。よろしくお願いします。
司会:本当にたくさんの名波(浩)さんファン、そしてジュビロ磐田サポーターのみなさんに集まっていただきましたね。
水内:女性ばかりですね。
司会:そうですね。
水内:アイツ~!
司会:美しいセニョリータの方がたくさんいらっしゃいますね。
水内:そうですね。こっちからはほとんど顔は見えませんけどね。
司会:確かに(笑)。今日は名波さんを大フィーチャーしたトークバトルなんですけど、名波さんとはお久しぶりですか?
水内:会うのは・・・2月の末ぶりですかね。今回と同じく、ぴあのトークバトル「~どうなる!? 2009Jリーグ~」(2009年2月23日、日本サッカーミュージアム)で。前回はJリーグ開幕前のトークバトルを名波、FC東京の大竹(洋平)選手と湘南ベルマーレの野澤(洋輔)選手の3人と僕が司会進行をやったとき以来です。Jリーグ開幕前ですから、2ヶ月ぶりくらいですか。
司会:そうですか。そのときも、いろいろと興味深い話をされたとは思うんですが、今日はもう、名波さんひとり大フィーチャーの日なので。
水内:何の話をするか何も考えてないですからね。
司会:普段、聞けない話をたっぷり聞きたいなと、みなさん思っているでしょう。
水内:だって、台本があるんですけども、ここはジュビロ磐田の話30分目安、こっちはDVDの『LEFTY』を観ながら60分目安。それしか書いてないんですよ。だから、どんな話になるか全くわからないので、なんとなくノリでいこうかなと思ってます。
司会:水内さんの視点から深く入っていただいて、いろいろと引き出してもらいたいと思います。
水内:がんばります!
司会:よろしくお願いします。それではみなさん、たいへん長らくお待たせいたしました。本日のスペシャルゲストをお呼びしたいと思います。みなさん、写真の準備はOKですか? 大きな拍手・・・あ、でもカメラをお持ちでしたら拍手しにくいかもしれませんけど(笑)。
水内:そうですね。そういえば僕のとき、フラッシュなかったですね。
司会:いやいやいや。たくさんありましたよ。上の方からもピカっと光ってましたよ。大丈夫です!
水内:ありがとうございます。今撮ってもいいんです、全然いいんですよ。
司会:「早く呼んで!」って感じですよね。
水内:すみません。
司会:引っ張るのもなんだか快感ですね。
水内:本当ですね。でもこれ、引っ張りすぎですね。
司会:そうですね。それでは皆さん、大きな声援でお迎えください。本日のスペシャルゲスト、いきますよ~! 名波浩さんです!
会場:拍手
司会:すみません、ご登場までちょっと引っ張ってしまいました。
名波:こんにちは。
会場:こんにちは。
名波:アレ、聞こえないな。
水内:元気ないね。
司会:今日はたっぷりと、名波さんを大フィーチャーする2時間ですけれど、意気込みを聞かせてください。
名波:みなさんと楽しくトークできればね。聞く方は受身ですけど、水内とのやりとりを楽しんで欲しいなと思いますし、ジュビロの現状であったり、未来に向けてのコメントを聞いて欲しいなと思います。
司会:はい。では、ここからは水内さんに進行をお願いして。お2人でトークバトルを進めていただきたいと思います。それでは2時間たっぷりお楽しみください。水内さん、よろしくお願いします。
水内:はい、ありがとうございました。じゃあ、座りますか。先ほども言ったんですけれども、台本が特にないということで、いろいろと話をしていきたいと思うんですけれど。どうしましょうか、なんとなく僕ら2人のなれ初めからいこうか。
名波:そうだね。聞いたことがある人もいるかもしれないけどね。
水内:前回、日本サッカーミュージアムでのトークバトルに来たという人はいますか? 結構いますね。じゃ、やめますか。とは言っても、聞いていない人もいると思うので、僕らの関係を簡単に説明したいと思いますけど。知り合ったのは・・・
名波:高校のとき。
水内:高校のときだよね、高校選抜。全国高校サッカー選手権が1月にありますよね。そのあとの選抜チームにふたりとも選ばれたんですよ。ただね、僕が一番最初に名波を知ったのは、中学校のときですね。有名だったんですよ、雑誌の中の人間でね。
名波:それ、初耳だね。
水内:そうそう。いつだっけな? って思ったときに、名波のDVDを観たの。で、そうだオレ、中学校のときに観てるなって。で、知ってたんだけど、名前が読めなかったの。
名波:へぇ。
水内:普通に“ナナミ”なんだけど、うちのお姉ちゃんはナミっていうの。だからなんとなく、“名波”・・・“ナミ”・・・と混乱をね。
名波:え、水内ナミっていうの?
水内:うん。7月3日生まれなの。
名波:へー! そうなの。7月3日生まれ?
水内:そう、7月3日生まれだからナミっていうの。
名波:オレの結婚記念日だよ。“名波の日”って呼んでるからさ。
会場:笑い
水内:なるほど、そこに食いついたんだ。そうなんですよ、うちの姉ちゃんナミって言うの。そんなのもあって、最初“ナハ”って読むのかななんて、思ったりしていて。そうしたら高校で、選抜に入って。たまたま僕も選抜に行くことができて、それで雑誌の中の人だと思ってたのが、いるわけですよ合宿に。
名波:そうだね。千葉県のね。
水内:優秀選手は30人選ばれるんですよ。高校サッカー選手権に出場した中から。それで合宿を何日かするんですけど、そのときに初めて会って。「あ、ナマ名波だ」って。まず、声がハスキーだなっていう印象ね。左利きなのは会う前から知ってた。あとはもっとこう、おとなしい人なのかなと思ってたらそうでもなかった。
名波:それはよく言われるね。
水内:おとなしい印象があるんですよ。みなさんはもう知ってると思いますけど、結構番長というか、表に出て行く方だよね。
名波:そうだね。
水内:実際に会って印象が覆されたというか。その選抜の中に、鹿児島実業高校の2年生で遠藤卓哉という選手がいたんです。その遠藤は、遠藤保仁(ガンバ大阪)のお兄ちゃん、遠藤家の長男です。当時はチビノリダーが流行ってですね、これがチビノリダーに似てるんですよ。
名波:会場にチビノリダー世代の人・・・たぶん多いよね。
水内:そうですね。
会場:笑い
名波:今、笑った人は絶対チビノリダー世代だよね。
水内:ま、みんな同じような年代だよね。
名波:同じか上?
水内:そのチビノリダーに似てるっていうのもね、後輩でしょ。ひとつ違うだけで名波は結構、上から目線だからね。
名波:うん。
水内:それで名波が「オイ、遠藤、おまえ似てるからチビノリダーな」みたいなことを言って。それからずっと、合宿の間はチビノリダーと呼ばれるようになって。それから大学に行って、彼はJリーグに入ってくることなく終わってしまったけど。その後、弟たちが出てきてね。Jリーガーとして、もちろん日本代表としても活躍してますけどね。
名波:鹿児島の桜島出身なんだけど、あの辺りで遠藤三兄弟と言ったら、サッカー界では相当有名だったらしい。みんな鹿児島実業出身でね。
水内:同期には前園(真聖、元仁川ユナイテッドFC)がいてね。
名波:そう。
水内:前園は大会の優秀選手になって、名波も僕もユース選手に入ったんですけど。最初、30人いたのが20人に絞られるんですよ。つまり10人が落ちるんですけど、その10人の中に僕は入ったと。
名波:それ、悲しい過去の話につながっちゃうからさ、その話はあまりしたくなかったんだよね。
水内:結構、オレの中では複雑な思いがあったんだよ。
名波:そうでしょ? 出会えたけど・・・
水内:そう、出会えて仲間もできたんだけど・・・しかも、調子良かったんですよ。
名波:合宿自体はね。
水内:そう。点も取ったりしたけど、なんにも練習してない山田隆裕(元ベガルタ仙台)が選ばれたんですよ。
名波:そうだった!
水内:しかも、山田の高校(清水市立商業高校)は2回戦くらいで負けてるんですよ! 
名波:3回戦かな。
水内:3回戦だったか。僕らはベスト8までいってるんですよ! それでも僕らの高校(神奈川県立旭高校)からは1人しか選ばれなくて、しかも落とされるというね。あれには政治的な、大人の事情を感じましたよ。名波とはそれがなれ初めなんですけど、定期的に会うようになったのは、Jリーグが始まってからだよね。
名波:そうだね。それまでは僕が大学でプレーしていて。
水内:そう、あれは95年? 95年にジュビロ磐田に入団して。僕はJリーグが始まった年からいたんですけど、試合をしたのはたぶん1試合くらいしかないね。
名波:そんなにないよね。
水内:試合で戦ったっていうのはあんまりないよね。で、再会したときに試合が終わった後か前に、名波に会って「久しぶり」って言われたの。その頃はJリーグで僕の方がちょっと活躍してたのにすごく嬉しくて。「あ、オレのこと覚えててくれてるな」みたいな。僕は遠征に残れなくて、あの合宿以来だったから。なんだか嬉しかったよね。そんなわけで、僕の憧れの選手でもあったわけです。で、その後も、代表で同級生の柳本(啓成、元セレッソ大阪)とか岡野(雅行、香港リーグ1部TSWペガサス)とかと・・・
名波:岡野とは本当に仲がよくて、東京に来たときに一緒に飲みに行くことも多くて。水内も一緒に来たり。
水内:そうそう。
名波:逆に、オレたちが水内が飲んでるところに行ったこともあったし。
水内:岡野がレッズ(浦和)に入って、代表にも選ばれて。名波とも同級生だったし、みんな仲良くなってね。
名波:ピッチで対戦するよりも飲みの方が。
水内:夜のピッチの方が多かったね。で、あれ覚えてる? 岡野が年末にパーティをやったでしょ。
名波:うん、うん。
水内:僕が司会をやって、名波がゲスト的な感じで来てくれて。その席に、桜井(和寿、ミスターチルドレン)さんが来たんだよね。知り合いの方がミスチルの桜井さんを呼んでくれて。そう、名波は「大好きなんだよ」って。僕も好きだったんだけど、名波は好きの度を超えてたんだよ。で、その場にカラオケがあったんで、「歌おう、歌おう!」って一緒に歌ったんだよ、『抱きしめたい』を。
会場:笑い
水内:桜井さんの前だしひとりで歌うのはちょっと・・・ってことで、「一緒に歌おうぜ!」って言われたから、「わかったよ」って一緒に歌ったんだけど、僕はサビしかわからなくて。逆に言えば、オレが初めて『抱きしめたい』を歌ったというね。まっ、そこから桜井さんとも親交が広がって。今では桜井さんと一緒にサッカーをしたりしてますよ。この前もライブに行ってね。名波も別で来てたみたいですけど、広かったので会えはしませんでしたけど。
名波:そうだね。
水内:まぁ、僕らのつながりっていうのは、高校時代からというね。いやぁ、中学のときに雑誌で見ていた人と、今こういう関係になるとは思いませんでしたけど。
名波:本当だよね。
水内:前回もトークバトルをやらせてもらって、好評につきましてというわけではないんですが。この企画も決まっていたんですけど、名波が「ぜひ水内でやりたい」と言ってくれまして。嬉しいじゃないですか。もう、業界用語ですけど“バーター”です。
名波:ハハ。
水内:名波にもれなくついて来る。ですから、これで終わりじゃないですよ。今回、名波がDVDを出しました。もしかしたら秘蔵映像でまた第2弾、第3弾があるかもしれません。そのときのトークバトルも、みなさんぜひ来てくださいね。そうすると僕がついて来て、また同じ話をするかもしれません。これ大事なことです。ある意味、名波が引退することで、僕のセカンドキャリアがこう確立されていくというかね。
会場:笑い
名波:なるほどね、横のつながりね。
水内:そう、横のつながり。森島(寛晃、元セレッソ大阪)も引退しましたし。岡野も、いつ引退してもおかしくないけど。まっ、香港でがんばっていますけどね。
名波:アイツ、香港でも1人で飲みに行くっていうんだよ。
水内:日本代表の選手って、香港ではすごく有名みたい。名波なんて行ったらすごいんじゃない? Jリーグもテレビで放送されているし、日本人の方も多いし。受け入れられているんじゃないかな。サッカー好きだしね。
名波:へぇ。
水内:岡野が、「映画を作っているような人たちがチームのオーナーでさ」って言うから、「へー、そうなんだ。じゃあ、ジャッキー・チェンに会えるの?」って聞いたの。そしたら、「たぶん、いずれ会えるんじゃない」って。
名波:適当だな。
水内:ホント。「言えば会えそうだよね」みたいな話をね。まぁ、こんなに同年代で、まだやってる人もいるし。大岩剛(鹿島アントラーズ)もまだ現役でプレーしているしさ、結構いろいろいるんでね。ぜひ、トークバトルを72年会でやりたいなって。
名波:いいね。
水内:こういう場で言っておくと、案外実現するんですよ。ねぇ、聞きたいでしょ?
会場:拍手
水内:ほら、また仕事が増えた。
会場:笑い
名波:芸人さんも72年生まれが多いからね。
水内:そうそう、芸人さんも多い。タレントさんも。近いところで言ったら誰? ワッキー(ペナルティ)? 一番近いところ言っちゃった。今、72年芸人みたいな、あるじゃないですか。あそこに僕らが入っていくっていう。それもおかしいですけどね。
名波:いやいや、ありだと思うよ。
水内:ねぇ。
名波:雛壇に並んでね。
会場:笑い
水内:『アメトーク』(テレビ朝日)に。宮迫(博之、雨上がり決死隊)さんに会ったら言ってみようかな。あれ、自分たちの企画ですからね。普段どれだけオレらがしゃべれるかっていう話ですよね。そこにまぁ、土田(晃之)君とか、ワッキーとか。
会場:笑い
水内:あとはジダン(ジネディーヌ、元フランス代表)とフィーゴ(ルイス、セリエAインテル・ミラノ、セリエA)を呼んでさ。
名波:最高だね。
水内:同級生だから、フィーゴもジダンも。ま、ちょっと話が大きくなりましたけど、「ぴあ」さんにぜひ。
名波:企画?
水内:企画。
名波:絶対、赤字だよ。
水内:Jリーグの開幕前とか、シーズンオフにまたやってもらえれば。少なくともこの人たちは来てくれるわけですからね!
会場:拍手
水内:ホラ。
名波:拍手した人は絶対来なきゃダメだよ。
水内:そうだよ。だって、今日は名波のDVDを持っている方がほとんどだと思いますけど。まだ持ってない人もいるかもしれませんが、ここに来たってことは間違いなく・・・
名波:帰りには持ってるってことだね。
水内:因みに今、持っているという人? カバンの中に入ってるって意味じゃなくて、家にある人!
名波:ああ、結構いるね。
水内:手を挙げていない方で、帰りに買っていくという人?
名波:アレ?
水内:両方上げていない人もいますね。因みに今日、水内猛を観に来たっていう人は? あ、すごく嬉しいじゃないですか、そこのキャンディーズ3人!
会場:笑い
名波:キャンディーズ世代ね!
水内:ありがとうございます、本当に。いるんですよ! 
名波:ねぇ。
水内:これから、観たことのある人がほとんどなんですが、DVDを流して終わりです。
会場:笑い
水内:そんなわけないね。ここからですね、せっかくですからジュビロの話をね。名波はジュビロのアドバイザー?
名波:ジュビロ磐田アドバイザー、正確に言えば。
水内:アドバイザーの仕事はどういう内容なの?
名波:なんでも屋というか・・・最近でいうと小学生、中学生、高校生の練習に一緒に参加して、ボールを蹴るのと。あとはジュビロの営業が「やってくれ」ということをやる。
会場:笑い
名波:例えば、試合のチケットを磐田市の小学生にあげると。全校生徒が254人だったら、チケット254枚を持って全校集会に行って、「どうぞ」って渡す。
水内:いきなり?
名波:いや、もちろん告知してるよ。
水内:子どもたちには言ってないんですか?
名波:言ってないのかな、分からないけど。
水内:喜ぶでしょ。
名波:子どもたちが、リフティングとか見せてくれたりね。
水内:あ、子どもたちが。
名波:そう。あとはまぁ、ジュビロ磐田をうたいながらのイベント。
水内:磐田(ジュビロ)のことに関して言えば、なんでも屋なんだね。
名波:トップチームの練習には絡まないけど、監督とかコーチとは話をするし、もちろん選手の話も聞くし。ディフェンスの那須(大亮)は、僕の携帯の番号知らなかったんだけど、いきなり電話をかけてきてね。最初は電話取らなかったの、怖いから。
水内:那須からの電話ね。え、なんで怖いの?
名波:知らない番号だから。ストーカーみたいのだったらどうしようって。そんな経験ないけど。そのあと、またすぐかかってきたから、これは緊急だなっと思って取ったの。そしたら那須でね。「今日、6点取られたんです」って。
水内:開幕戦(2009年3月7日ヤマハスタジアム、モンテディオ山形6-2ジュビロ磐田)だ。いきなり悩み?
名波:そう。「観てましたか?」って聞くから、「今日解説だったから見たよ」って答えたら、「率直に言ってください」って。
水内:なんて言ったの?
名波:直球勝負。
水内:なにやってんだ、ってことね。
名波:そう。カバーリングが遅いとか、コンビネーションとか。センターバック2人とボランチ2人、そのボックスの形が悪すぎるよ、みたいな話をして。3試合目(2009年3月21日エコパ、ジュビロ磐田1-1浦和レッドダイヤモンズ)は引き分けでしたけど、エコパでやったあの試合あたりから急激によくなって。
水内:よくなったね。
名波:短期間でよく修正したなと思って。柳下(正明)監督に聞いたら、「オレは言葉でしかフォローしてない。練習で細かくああしろ、こうしろとは言ってない」と。「あとはアイツらが自分たちで判断して、ラインを今までより5mくらい上げたし、両サイドバック、駒野(友一)と山本(脩斗)のインサイドのカバーリングも非常に速くなったって。それを選手たちが、自分たちで修正したと。
水内:それはでも、名波の言葉も大きかったのかもね。次の試合(2009年3月14日万博記念競技場、ガンバ大阪4-1ジュビロ磐田)は失点4に減ったし。
会場:笑い
名波:そうだね。
水内:次のレッズ戦は1-1、あれは内容がよかったし。
名波:内容もよかったね。
水内:だんだん失点減ってるから。開幕戦のすぐあとくらいに、オレの携帯がなったわけ。鈴木秀人だったの。「秀人だ、何かな」と思って出たら、向こうでワンワン、ジージー言って切れたのね。なんだろうなと思ってたらすぐまたかかってきて。「緊急か?」と言ったら、「ごめん、猛くん、子どもがかけた」って。
会場:笑い
水内:「なんかワーワー言ってるなと思ったら、そうだったのか。そういえば秀人、凄い試合やってたね」って言ったら、「でしょ~?」って。「オレはベンチに入ってなかったから、上から見てたんだけどさぁ。最初の印象ではモンテディオ山形がヤバいなってゴンさん(中山雅史)と言ってたんだけど、うちがヤバかった!」って言ってたよ。
会場:笑い
水内:「がんばってねー」なんて言って電話切りましたけど。そんな話をしていて、次の試合は失点が4に減ったんでよかったなと思ったんですけどね。
名波:内容はもう、守備の充実にともなってよくなってきて。あとはやっぱり、みなさんご存知の韓国人ストライカー・・・
水内:イ・グノ。あれはエスパルス戦(2009年4月19日エコパ、ジュビロ磐田3-0清水エスパルス)からだっけ? 
名波:そう。
水内:僕、テレビで観てて驚いた。「なんだこの動きは!」って。いい買い物をしたんじゃないですか?
名波:安めのコストでね。それ、大事だからね、今のこの時代。
水内:そりゃそうだよね。何億もかかるよりは。
名波:だいたいオレ、みんなの年俸まで知ってるもん。『サッカーマガジン』で年俸の一覧が出てたの知ってます? 見た方います? あんなのケタが間違ってるよ。
水内:あれね、信じちゃいけませんよ。新聞も。
名波:あんなもらってないから。
水内:因みに読売ジャイアンツの選手たちは、書いてある以上にもらってますからね。巨人だけは低く言うらしいですよ。話を戻すと、イ・グノはヨーロッパで移籍先を探してたんでしょ? 
名波:ああ。
水内:韓国に戻れないっていうのもあったんだよね。
名波:PSG(パリ・サンジェルマン・フランスリーグ1部)と、もうひとつどこかのチームからオファーがあったけど。もうひとつのチームはスポンサーが降りちゃったらしくてダメになって。で、PSGはこのご時世だからちょっと待ってくれということになって。
水内:今度の7月の移籍市場でヨーロッパに行く可能性もある?
名波:みんなも行って欲しくはないよね。
水内:そうだよね。そりゃあ、だって2試合で10失点だよ。
名波:ヤバイよね。
水内:ヤバイよねぇ。それは誰もがヤバイと思うけど、でもあのストライカーが来たことでね。もちろん、名波の、アドバイスでよくなったのもありますけど。
名波:いや、オレの一言じゃなくて、那須の・・・自分たちでよくしようというね。
水内:気持ちだな。
名波:そのテンパった状態で、オレにかけちゃったんだよね。
会場:笑い
水内:知りもしない携帯にね。
名波:だって普通、監督やコーチでしょ。
水内:アイツ、ホントにテンパってたんだね。だって今年、移籍して来たばっかりでしょ?
名波:そう今年。面識はほとんどない。
水内:ヴェルディ(東京)でしたっけ?
名波:ヴェルディから。
水内:那須は、マリノス(横浜)のときに「移籍しようか悩んでるんです」ってときがあって。話があるんですけどって。ま、結局残留したんだけど。なんか、いい子だよね。
名波:ホントだよね。電話かかってきて、小一時間電話で話したの。
水内:長げーなっ!
名波:終わって、「いい子だね」って、嫁さんと。
会場:笑い
水内:なるほどね。でも、那須的にはたぶん、ジュビロで誰かって思ったときに、秀人(鈴木)に聞くとカドが立つところがあるかもしれないけど。
名波:まぁね。
水内:名波だったらというのがあったんだろうな。
名波:那須の場合、危機感がね。ヴェルディが降格したのは自分の責任だと。だから、責任感を持って、同じことを絶対に繰り返さないぞという危機感がそういう行動につながったんだろうね。責任感のある、いい男だと思いますけどね。
水内:それが、今のジュビロにつながってるわけですよね。絶好調とは言えないかもしれないけど、最初の悪いところが払拭できて、チームが戦える状況になってるからね。
名波:そうですね。
水内:昨日は負けてしまいましたけど(2009年5月16日等々力陸上競技場、川崎フロンターレ2-0ジュビロ磐田)。イ・グノのシュートも惜しかったけどね。
名波:ヤバかったね。イ・グノのいいところ、言っていいの?
水内:いいよ、言って。イ・グノ、どんどん売って。
名波:練習を観に行ったら、結構そうでもないの。普通なんだけど、みなさんもご存知だと思うんですけど、やっぱり本番の凄さはね。エコパでのエスパルス(清水)とのダービーは、前半はほとんどイ・グノにボールが入らなかった。それは前田(遼一)との兼ね合いで、センターバックのラインを下げよう、下げようとお互いが同じような動きをしていた。後半はちょっと引いたりして、前後のギャップを作るようにして、相手の岩下(敬輔)選手と青山(直晃)選手のセンターバックに揺さぶりをかけるようにしているうちにね。1点目は前田の頑張りがあっての得点だと思うけど。
水内:そうだね。
名波:2点目は前田がずらして。センターバックの、青山選手が強くて足が速いというのは、日本でやってる選手はもちろんわかっているけど、イ・グノにはそういう情報がなかったから。ただ、前半をやっていくうちに、スピードがあるのは分かったらしい。体の強さは、イ・グノも自信があるから、当たったときに半歩前にグッと左肩を入れて、シュートを振り抜く。フォワードのシュートのタイミングで言うと、大宮戦(2009年5月9日ヤマハスタジアム、ジュビロ磐田3-1大宮アルディージャ)の1点目。クリアボールをそのまま持ち込んだやつね。
水内:はい。
名波:あれはもう、完全にキーパーと1対1なのにペナルティエリアの外で打つ。で、キーパーは動けない。シュート力はたぶん、60%か70%くらいでしょ。
水内:日本人にはいないよね。韓国人ストライカーって違うよね。同じアジア人で、一番近い国のストライカーにあれだけすごさを感じさせられるとね。日本でももちろん、大久保(嘉人、ヴォルフスグルク・ブンデスリーガ)みたいな選手もいるけど、なにかが違う。点を取るための術を持っているじゃないけど、そういうなにかはあるよね。
名波:柔と剛を、両方を持ち合わせてる。まだアジアに、こんな選手がいたのかという。
水内:ああ、なるほど。
名波:こういう情報社会だから、全部筒抜けだと思ったら。
水内:スカウトも盛んだしね。
名波:そうそう。中東の選手の情報もいろいろ入って来るしね。で、北朝鮮と韓国の、イ・グノが出てる代表試合を観たのね。でも、たいして目立ってなかった。ただ、ボールがないとき、オフのときの動きの質が高かったんだろうなって。時間があればもう一回見直したいなとは思うんだけど。
水内:やっぱり、彼のような点を取る強さがある、国を代表するストライカーがいるとね。
名波:そういうストライカーが日本代表にいたらね。まぁ、たれらばの話になっちゃうけど。
水内:まぁね。日本代表の話になっちゃいますけど、98年のワールドカップ予選でもJリーグの試合でも、カズさん(三浦知良、横浜FC)は打てば入るというね。あのときのカズさんを超えた人っていないでしょ、未だに。実数はゴンちゃんの方が多いけどね。ゴンちゃん、打っても入らないから。
会場:笑い
水内:でも、名波君のDVDを観たら、ゴンちゃんいっぱい点を取ってるね。
名波:あれを観ればすごいなって思うよ。DVDを送ったらお礼の電話がかかってきて、「オレよく映ってるねー」って。
会場:笑い
水内:本当にあのときのカズさんは、26歳くらいだったのかな。
名波:そうだね。
水内:あのときは打てば入るって、あれはすごいかったな。今、Jリーグで高原(直泰、浦和レッズ)選手も点取ってるけど、あのころのカズさんのようなストライカーっていないね。イマイチ超えてきてないなって。
名波:そうだね。
水内:決定率すごかったからね。ストライカーということで言えば、ジュビロには前田選手がね。前田君、いいじゃないですか!
名波:前田はいいよ。
水内:代表入ったら、どうなんだろう。
名波:前田はもう、2005年くらいから、もうオレたち年寄り組の服部(年宏、東京ヴェルディ)とかマコ(田中誠、アビスパ福岡)とか、みんなで「あいつはエースなんだ」って。「エース、エース」ってことあるごとに言ってたし、そういう意識を植え付けるようにしてた。それは自分自身もわかっていて、完封で負けたゲームのときにはもう、自分のせいという責任感が生まれているし。非常にいい成長の仕方をしてるんじゃないかなと思いますよ。
水内:タイミング的にケガがあったりで代表には、ちょっと出し切れてない部分もあったかもしれないけど、持ってるものは懐の深さと・・・
名波:そうだね、もっと世間に前田のよさっていうのを知って欲しいよね。A代表に入ってコンスタントに活躍することが一番手っ取り早いんだけど。やっぱり認知して欲しいなと思う。
水内:彼も28歳くらいになるのかな。
名波:そうだね。
水内:一番脂が乗り切るときだし、あのヘディングの高さというのは、今の日本代表にはないものだからね。それでカッコイイでしょ。お金持ちだし。
会場:笑い
名波:ルックスいいし。
水内:スタイルもいいし。オレみたいな体型はどうするんだって感じ。引退した後が大変ですよ、どうするんだ、この太い足は! みたいな。
名波:ジーパンも、サイズないしな。
水内:ホントだよ。いっぱい切るんだから。それでGジャン作れるんじゃないかってくらいだよ! ジーパンって最近、あんまり言わないか。でも、みんな言うよね、年齢的に。
会場:笑い
水内:前田もそうだけど、あとは若い選手が結構出てきてるじゃないですか。
名波:山本康裕とか。
水内:彼は結構、スタメンで起用されることが多くなってる?
名波:そう、今シーズンはほとんどスタメンで出てるけど、質がすごく上がってるね。開幕2試合、失点10のときは、やっぱり大事なところでボールを失ったり、労を惜しまずボールを取りに行って、奪ったボールをミスするっていうのが、結構カウンターの・・・
水内:自作自演だ。
名波:悪いときね。でも、最近はそれが減ってきた。
水内:やっぱりそれは慣れとか、チームの状況がよくなっているのもあるのかな。
名波:そうだね。バックのラインを上げたことによって、康裕もそのプレスバックする距離も短くなるし、動きやすくなって。それで康裕自身が視野を広く、遠くを見られるようになったと思う。もともと質が高い選手だから。そのあとはA代表でね。実際問題としてはちょっと難しいかもしれないけど、ただ一回候補として呼んでもらって、雰囲気を味わえば彼にとってプラスになるだろうし。
水内:まだ若いしね。チームは名波が引退して、一番年上は? 能活(川口)? 秀人(鈴木)?
名波:ゴン。
水内:あ、上過ぎた、上過ぎた~!
名波:御年42歳かな。
水内:そーだよねぇ。厄年? 
会場:笑い
水内:そっか、中山さんか。中山さんからすると22、3歳年下とやってるんだ。ふた回りくらい・・・もう息子だよね。それ、すごいよね。そこまで現役を続けるってね。
名波:平成生まれと一緒にね。
水内:ほかにも、上田(康太)選手もそうだし、彼らが中心でしっかりとね。もう、それこそ名波とか藤田俊哉(ロアッソ熊本)さんがいた頃のような、あれくらいのパフォーマンスをしてくれるようになったら。そうしたらジュビロがもう一回、上に来るんじゃないですかね。
名波:うん、そうだね。
水内:そう考えると、入れ替えの時期なのかなとか。どう?
名波:いや、いいと思うよ。オレたちのときは、ほかを圧倒するようなメンバーをかき集めたわけじゃなくて。属にカッコイイ、全国大会に何度も出場しているサッカーエリートみたいな選手もいたかもしれないけど。
水内:確かにいたね。
名波:でも、福西(崇史、サッカー解説者)とかヒデ(鈴木秀人)とか、奥(大介、多摩大学目黒高校サッカー部監督)とか、このあたりは完全に無名だから。
水内:そうだね、無名だね。
名波:福西は、最初フォワードで取ってきたんだから。
水内:そうだよね。
名波:自分もフォワードとしてやって行くっていう心構えで入ってきてるのに、それが何ヶ月後かにボランチやれとか言われて。で、結局そのポジションで引退まで行ったわけでしょ。しかも、日本代表もボランチのポジションで選ばれて。それはやっぱり、取ってきたスカウトの目もそうだし、育てていこうとしたクラブと監督がいたから。さっきの話じゃないけど、巨人のようにお金で獲得したわけじゃない。そこがいいと思うね。そして、今もそれ相応のメンバーがいる。若い選手に。本当はその24、5歳の成岡(翔)、大井(健太郎)、岡田(隆)あたりのこの年代。あ、あと加賀(健一)ね。ここのブロックが、2、3年後にトップパフォーマンスになるように育てていかないといけない。そうすると年齢的にちょうどいいぐらいになる。
水内:そうだね。高校卒業して入った選手たちもちろん、名波のように大卒してから入ってきた選手も、2年目、3年目、4年目くらいにこう本当に・・・
名波:主力にならないといけない。だから今言った5人くらいが、階段を上ってなきゃいけないのに、誰ひとりとして安定して試合に出てないから、そこがちょっとね。
水内:逆にその下の世代が出始めているよね。
名波:そう。それはそれでプラスなんだけど、本当はさっき言った年齢層の選手の足にしがみついていく。やっぱりそれが若手だと思うからね。オレらのときは、その若手が西(紀寛)とか高原、前田だったんだ。前から言ってることだけど、そうやって成長していったんだよね。
水内:なるほどね。
名波:前田なんて、途中からフォワードに入って、3人抜いてすごくキレイなシュートをしたことがあるんだけど。でも、そこに至るまでのプレーでオレたちが何度ぶん殴ったことか・・・言葉でね。
会場:笑い
水内:ジュビロはそういうの、厳しいからね。
名波:彼に聞けばわかるけど、1、2年目っていうのは本当に、ガンガンぶん殴られてるからね。
水内:言葉でね。「言葉で」って言っておかないと。
名波:若い人はそういう環境だったし、ゴンちゃんは年上だけど、何回も殴られてる。
水内:そうなのね。「ゴン!」って。
名波:そう。すごくいい環境だなって思う。
水内:さっきも言ってたけど、ジュビロの強さの秘密というか、裏側にはその個性は大事にするけど、サッカーの統一性とか、考えていることとか。いい関係を築いてるよね、みんな。
名波:そうね。どうやったらうまくなるのか、どうやったら強くなるか。そればかり求めていて、それに付随して自分もうまくなっていこうというね。チームのなかで、例えばドゥンガ(ブラジル代表監督)みたいな守備、彼のようなコントロールやカットはできないけれど、でもボールを奪いに行くスピードをあげるために、最短距離で行くようにするとか。ヒデみたいなスピード、1対1のディフェンスはできないけど、でも自分の足の届く範囲の守備だったらできるかなとか、みんながそういうことを考えている。
水内:お互いがお互いを認めながら。
名波:それはもうね。リスペクトしてるからこそ、いろいろな人の悪口も言える。
会場:笑い
名波:これ特権なんです。
水内:静岡の人に多い。
名波:ああ、静岡出身者は多かったね。
水内:多かったし、清水なんかそうだけど・・・サッカー選手は全国にたくさんいるけれども、長生きしている、現役生活が長いのは明らかにもう静岡の人間。なんでだろう。わかんないんだよねぇ。
名波:市立船橋(船橋市立船橋高等学校)とか国見(長崎県立国見高等学校)、鹿実(鹿児島実業高等学校)、帝京(帝京高等学校)とまぁ、高校サッカーの名門チームは何校かあるけど、やっぱり静岡の出身の人ってね。
水内:清水商業(静岡県立清水商業高等学校)にしても、藤枝東(静岡県立藤枝東高等学校)にしても。
名波:長生きするし、そのクラブで中心の人が多い。
水内:それはたぶん、小さい頃からの環境。ハッキリ何というのはわからないんだけど、凄く感じるね。初めて会ったときに名波が、山田隆裕のことを「パスはうまいんだけどね~」くらいに言ってたんだ。こんなところがすごい、あんなところがすごいって。そういう話を、高校のときから言ってるわけ。僕らなんかまだ、サッカーやるのはおもしろいけどっていうガキんちょなのにさ。サッカーに関して高校のときからさ、「アイツのプレーは」って議論するの。それがもう、凄いなって思ってた。
名波:今のジュビロの話だけど、選手の中にはキャプテンと呼ばれている人間はもちろんいるし、チームをまとめていく人間もいる。ゴンちゃんがチームをまとめて、キャプテンを茶野(隆行)がやっていて。そのほかに能活もそうだし、中心になってはいるんだけど・・・全体をコントロールできる人間がいないかな。それはもう、試合の90分もそうだし、練習、私生活までね。客観的に人とのプレーを比較したり、そういう能力を持つ人がね。ジュビロじゃなくて他のクラブももちろんそうだけど。こういう仕事をしていると、いろいろな人と会う機会があるけど、そうした部分で長けている人はあんまりいないと感じるね。
水内:そういう人がいるチームって、やっぱり強いんだよね。鹿島(アントラーズ)は、小笠原(満男)選手が帰って来て変わったし。もちろん、選手として力があるという部分もあるけれど。ほかには、レッズの闘莉王(田中マルクス)選手もそうだけれども。
名波:そうだね。
水内:試合に出てないけど、すべてまとめる。それは正直、福田正博(浦和レッドダイヤモンズコーチ)にはないんで。
会場:笑い
水内:プレーだけじゃなく、チームに影響をもたらしてくれる選手っていうのがね。それがジュビロでは誰なのかと。成岡選手たちの世代の中から欲しいね。プレー中も、チーム全体にしてもね。
名波:そうだね。
水内:移籍してきた選手、駒野(友一)選手とか村井(慎二)選手とか。このあたりの選手たちはどう? ジュビロに入ってきて選手たちは馴染めるもの?
名波:村井は凄くおとなしいから。
水内:やっぱりあのまんま?
名波:あのまんまだね。
水内:あのまんまっていっても、顔のイメージなんだけどね。プレーは別だけど。
名波:あのまんまだね。どこでストレス発散してるんだろうなって思うよ。
水内:そういうの聞かなかったの? 一緒にプレーしてるよね。
名波:うん。一緒にやってるけど、やっぱり入ってすぐはどうしてもね。ま、2年ぐらい経ったら。
水内:もう4年ぐらいだよね。
名波:村井はずっとおとなしいね。
水内:そこはいじらないの?
名波:茶野は結構いじられる。
水内:茶野選手の方がいじられるんだ。
名波:茶野もおとなしくしてるの。だけど、茶野は年下からいじられる。
水内:チャー坊、チャー坊って。村井選手は誰もいじらないの?
名波:村井はね・・・放置だね。
会場:笑い
水内:村井選手は誰と仲が良いの? 飯を食べにいったりとか。
名波:前田。家が近いから。
水内:近所付き合い?
名波:そうそう、近所付き合いだね。
水内:そうなんだ。村井選手はトレーニングとか黙々とやりそうなタイプだけど、そのまま?
名波:凄いマイペース。ストレッチなんかも、練習が終わったあとの整理体操ね、彼はクラブハウスの中でするの。ほかはみんなピッチでやるんだけどね。彼は筋トレやるのも談話室。夕方5時のニュースを見たいの。
水内:ニュースが見たいんだ。
名波:サッカーのDVDがバーンとあるのに、ニュース見てる。
水内:それはたぶん、普通の主婦の感覚だよね。
名波:そう、そういう感覚で。
水内:情報番組を見ながら体操したりとか、ヨガをやったりしている人っていう意味なんだけど。そんな感じだね。
名波:駒野も入ったときはおとなしかったな。でも、那須とは同級生で仲が良いから。家も近所だから、今はエコを考えて、「今日はオレが車出す」、「明日はオレが」とかってやってるよ。
水内:それが彼らにとってはエコなんだ。
名波:オレからすると気持ち悪い。
会場:笑い
名波:自分で帰りたいタイミングってあるじゃん。
水内:だよね。
名波:それを自動販売機の横に座って待てるの。
会場:笑い
名波:大概、那須が遅いから、駒野が待ってるらしい。
水内:駒野選手もねぇ、「那須、早くしろよ」って言えばいいのに。
名波:「早くしろ」って言えない子だから。優しい子だから。
水内:那須選手の方に主導権があるんだ。
名波:そう。
水内:そうなんだ。近所って・・・磐田ってそんなに広いの?
名波:彼らは浜松。前田は磐田だけど。
水内:なるほどね。
名波:でも磐田、広くなったよ。合併したの。
水内:あ、そうなんだ。磐田から来た人います? いないか。
名波:磐田はいないでしょ。
水内:いないですか? 磐田以外でこんなに人気があるの?
会場:笑い
水内:そうなんですか。静岡から来た人はどのくらいいるんですか? すごく少ないですね! みんな東京ですか? 首都圏の人? すごいねぇ。オレ、埼玉でもこんなに人集められないよ。そうか、じゃあみなさん、今日はゆっくり帰られるんですね。ま、話を元に戻すと、後から入った移籍の選手たちは、おとなしい人が多いんだ。
名波:そうだね。那須は結構、みんなに声をかけるタイプだから。
水内:そしたら、少しは雰囲気変わるかもね。
名波:あとはみんなおとなしいかもな。イ・グノは結構みんなの中に入って来てくれるからいいけど。
水内:言葉の問題もあるからね。
名波:ロドリゴ選手もものすごくいい人。
水内:ブラジル人はどっちかなんだよね。どうしようもないか、すごくいいか。
会場:笑い
水内:どうしようもないのはだいたいフォワードの・・・でも雰囲気的には悪くない。
名波:悪くないよ。伝統だね、ヤマハ発動機の頃からの。いろいろなグループで選手が飯を食べに行ったり、遊びに行ったりするのはずっと伝統としてあるね。某クラブなんかは、ほとんど選手間のつながりがない。練習に来て帰るだけのクラブもあるからね。
水内:緑のチームとか?
名波:いやいや、緑は結構交流あるよ。
水内:赤もいい。どこですか? ま、それはいいとして、DVDに行きますか。これがメインですから。こちらを観ながらいろいろな話をしていきたいと思います。今回はサポーターといういか、ファンの方たちから選んでもらったシーンを納めてますけど、それは名波が考えたんですか?
名波:あのー、ぶっちゃけでいい?
水内:いいですよ。ここでしか聞いてない・・・カメラが回ってるけど、ま、いっか。
名波:最初、DVDを発売する気はなかったのね。本当は自分の知り合い、友人に配る73本だけ作るつもりだったの。
水内:あぁ、名波で73本ね。
名波:オレが自分で選んで、73人。その中にオマエは入るかわからないけど。
会場:笑い
水内:名波さん! 入れてください! 誰を入れるんだよ!
名波:冗談だけど、本当に73本作って・・・
水内:ちゃんと入れてよ。74本でもいいじゃん!
名波:シリアルナンバーを入れてやろうとしたんだけど、いろいろな方が協力してくれて、世に出そうということで。
水内:こういうカタチはどうだと。
名波:そうです。いろいろな方が。もちろん、ジュビロ磐田と「ぴあ」さんの協力も大きかったし。本当にいろいろな方に協力してもらって。これもぶっちゃけですけど、JリーグのクラブのDVDがなかなか売れていないと。
水内:ほお。
名波:だからどうなの? みたいな話にもなった。
水内:正直言ってどうなの?
名波:みなさんのおかげで、本当に!
会場:拍手
水内:別に1人1枚と限られてるわけじゃないですからね。
名波:そうそう。何枚買ってもいいんだよ。
水内:そうそう。
名波:定額給付金で買えば、2枚は買えるよね。
水内:いいじゃないですか。内容ですけど、取り上げるプレーに関しては、応募じゃないけど、あれはどういう感じでやったの?
名波:インターネット投票。
水内:インターネット投票した人います? あれ、そこまではしないんだね、みんな。僕もちょっと観させてもらったんですけど、もらったのが先週だったんだよね。時間もなかったりしてね、1時間だけ観たの、最初の1時間。で、残りの1時間は今日の朝観たの。今朝観てたんだけど、子どもがうるさくて。実は何言ってるかよく聞こえなかったの。子どもをあやしながらだったから、あんまりよく観てないんだな、後半は。
会場:笑い
名波:いろいろ能書きたれてるけど、観てないんじゃん。
水内:前半は本当に観入ったの。みなさんもいろいろと感じることはあるかと思いますけど、僕個人としては、やっぱりうまいわ。
会場:笑い
名波:でしょ?
水内:自画自賛している名波の気持ちがわかる。いいプレーがたくさんあるから当たり前なんだけど、感動するね。オレだって点を取ったシーンばかり観たら、すごい選手だなって思うよ!
名波:そうだよね。
水内:すごく編集もうまくできてるし、ひとつひとつ項目があって、ただ垂れ流しなわけじゃない。構成もいいと思った。あとは名波のアップが多い気がしたけど。
名波:そこだけクレームかっ。
水内:中山さんが「オレ、多いね」って言うのもわかる。それだけ最初の頃から・・・14年?
名波:14年。
水内:14年が詰まっているわけですよ。貴重な映像でもあるし。そのあたりの話も含めて、聞きたいと思うわけです。それじゃ観ていきましょうか。いろいろな項目があるんですが、まず最初は名波が試合の中で一番のこだわり、パスワーク。
名波:パスには魂が、愛情がこもっているというね。
水内:気になりますね。※名波選手が繰り出すパス・シーンを観ながら
名波:これは前田へパスね。
水内:得点が入るシーンだね。
名波:アシストする前の。
水内:前田選手から俊哉と。
名波:これも同じような展開だね。このシーンはゴンちゃんが左足を出して、俊哉がボールを狙っていこうという。
水内:この3人の絡みで、一番こだわっているところはなにかあるの? 
名波:たまたまこの3人が絡むことが多いよね。距離も近いし、お互いの意思の疎通もできてるし。
水内:それはやっぱり、いつもの練習でもこういったプレーが多いわけでしょ?
名波:意図的に同じグループで組む練習も結構あるね。それはやっぱり、密な関係になってるからできるパスなんだよね。
水内:次のシーン。ああ、高原選手から中山さんにね、これだけのフリーの状態でボールが渡ってねぇ・・・・・・外しちゃったねぇ。
会場:笑い
名波:シュートはこれ、フリーだけど難しいよ! かばうわけじゃないけどさ。
水内:わかってますよ。ジュビロが強いとき、中山さんがシュートを打っているときって、やっぱり高原選手と中山さんがゴール前の仕事に専念できるんだよね。
名波:そうだよね。
水内:周りの選手がそれだけやってくれるというのもあるし。あとは、ゴール前でオレたちが仕事をするんだというね。それがやっぱり、強さだよね。これは中山さんがパス&ゴーをして・・・
名波:偶然ね、目の前に転がってくる。左からのに、チョコンと当たった。
水内:この、二列目から飛び出す俊哉さんの感覚も凄いよ。思ったんだけど、ヴィッセル神戸戦、結構多くない? 気のせい?
名波:そう。
水内:アウェイにしてもホームにしても。あ、神戸が・・・。
名波:そういうことは言わないで。今映ってた土屋(征夫、東京ヴェルディ)君にDVDをあげたんだけど。「僕、映ってます・・・凹むゴールばっかりです」って言ってたよ。
会場:笑い
水内:まぁ、対戦チームは、ゴールされているシーンばっかりなわけですから。キーパーもディフェンダーもね。思っていたよりレッズがあまり出てこないね。
名波:たぶん、サポーターからのクレームが怖いんだ。
会場:笑い
水内:それは全然大丈夫だと思うけど。ま、確かにゲームで、コントローラーでやるのとはわけが違うからね。みんな違う考えもあり、同じこともありという。
名波:指導者によって違うと思うんだけど、シュートよりパスだっていう教えもあって、自分はこれでやっていこうと思ってたんだよね。小学校高学年から、中学校の初期。
水内:そんな頃からパスのことを考えてたの?
名波:それぐらいから。だって、ドリブルはヘタだし、足が遅いから、もうパスしかないと思って。
水内:小学校のときって、オレもフォワードをやってたんだけど、そんなにドリブルはうまくない、でも足はすごく速いと。
名波:うん、速いよね。
水内:オレは、回転が速いからそう見えるだけなんだけどね。
会場:笑い
名波:遅いチョロQみたいな感じなんだ。
水内:そうそう。だから、そこはやっぱり工夫するんだけど、小学生だからね。シュート練習ばっかりやってました。でも、どこかで壁にぶつかったりして、高校生くらいになって、トラップとかヘディングの練習をね。
名波:でも本当にね、小学校2年までは、クラスで、学年でも5本の指に入るくらい速かったけど、4年のときには、クラスでも真ん中くらい。
水内:小学校4年で、クラスで真ん中って相当遅くない? プロの選手になるくらいで言ったら。
名波:でしょ。2年とか3年の時は、クラスのリレーの選手だったの。それが4年くらいから、名波の“名”の字も上がらなくなって。で、自分は足が遅いんだってことに気づいたんだよ。でも、マラソン大会では結構イケたんだ。それで、長距離は大丈夫だけど、スピードはダメなんだって。50m走をやると、ハッキリ分かるよ。
水内:50m、最高何秒くらい?
名波:6秒8。
水内:でも6秒なら・・・って、遅いよ、オマエ! 5秒台がいるからね。1秒間違うってことは、10mは違ってくるから。でも体力的なこととか、持久力があるっていうのはね。まぁ、それがなかったらトッププロにはなれないだろうし。あとは技術の部分でこっちでも左足1本で。
名波:チョイスがうまくはまったな。
水内:すごいよね、小学校低学年で。
名波:だいたいJリーガーってね、ゴールキーパーはそんなこともないけど、フォワードなんだよね。野球で言うとピッチャー。
水内:4番ね。
名波:そう。センターフォワードから徐々にポジションが下がって来るというのが定説なんだよね。
水内:まあ、足が速くなくてもここまでやれるっていうのが、サッカーなんだよ。
名波:奇跡だと思うよ。
水内:ドゥンガも速くないでしょ? ドゥンガとどっちが速かった?
名波:ドゥンガよりは速いよ。
会場:笑い
水内:でしょ! でもその男は、ワールドカップ優勝のブラジル代表だよ。ブラジル国内では批判もあったりするけど、今はブラジル代表監督だよ。その人より速いんだから。
名波:ドゥンガも90年のときは、もっと軽いし、速そうな感じはしたけどね。
水内:みなさん、知らないかもしれないですけど、アルゼンチン戦(1990年6月24日、ワールドカップ決勝トーナメント1回戦、ブラジル0-1アルゼンチン)でね。因みにカニージャ(クラウディオ、元アルゼンチン代表)っていうロンゲのイケメンが点を入れて、アルゼンチンが勝ったんですけど。ブラジルが9割くらい押していて、ドゥンガが左からかな。ヘディングしたらガコーンってバーに当たって。
名波:それでかなり批判されてね。もう次の大会は優勝するしかないと言ってね。本当に優勝した。有言実行で。
水内:そのドゥンガがジュビロに来たっていうのも凄いことだよね。ドゥンガが日本に来る前に、ギド(ブッフバルト、元浦和レッズ監督)がドイツの同じチームで一緒にやったことがあるんだ。それで、ドゥンガが来るって新聞に載ってたから教えてあげたの。そしたらギドが「ドゥンガが来ることはない。日本に来るときは必ずオレに連絡がくる。そんなわけないだろう」って。その後結局、日本に来たから、ちょっとギド、落ち込んでた。
名波:「友達じゃなかったの!」って。
水内:実際チームにやって来てどうだった? ケンカもしたと思うけど。
名波:相当ね。95年に入って来たときは彼も我慢していて、あまり言わなかったんだよね。でも、96年からガツガツ言うようになった。で、喧嘩というか反発もよくしたし。「そこまで言うのかよ!」と思うくらいいろいろな選手にあれこれ言ってた。けど、98年のワールドカップ前の親善試合にせよ、ワールドカップの試合にしても、ブラジル代表でも同じようにしてたからね。それを観て、やっぱりどんなレベルでも同じように言ってるんだと。よっぽどのことでもない限りは、やっぱり彼は正しいのかなとは思った。
水内:ドゥンガのペースがあるんだよね。言わないと落ち着かないというか、いちいち言いたいんだよね。
名波:98年のワールドカップの予選リーグ、言わなくて負けたんだよね。
水内:そうそう。一言も言わなかったらしい。それで、試合後にほかの選手たちが「言ってくれ」と。ドゥンガも「そうだろう」と思っただろうね。
名波:ただ、オレたちは言ってくれとは言わなかった。
会場:笑い
水内:ま、あいつのペースが正しいだろうなというのはあるけど、別に言わなきゃ言わないでいいよって。
名波:言わない方がいいよって。
水内:でもドゥンガ、ポルトガル語でしょ?
名波:いや、それがね、結構日本語しゃべれるのよ。
水内:勉強してたか・・・。
名波:頭がいいからさ、「あなたどこの学校?」とか言われてさ。
会場:笑い
名波:山西(尊裕)にね。
水内:山西とか福西とか、よく怒られてたイメージがあるんだけど。
名波:福西は一番言われてたね。ポジションが近かったし、オフト(ハンス、元ジュビロ磐田監督)にも育てろと言われてたんだろうけど。福西の良さをドゥンガなりに分析して、自分とは違うタイプの選手に育てようとしたんじゃないかな。
水内:福西は、ドゥンガに持ってないものを相当持っているわけじゃないですか。
名波:そうだね。特に得点力というのはドゥンガにはないから。それはやっぱり期待してた。ただ、福西は言っても響かないから。
会場:笑い
名波:顔色ひとつ変えない。絶対へこまない。
水内:凄いよね。
名波:凄い。アイツは凄い。それが19、20歳の頃だから。
水内:普通だったらイヤになっちゃうよね。
名波:26歳とか27歳で日本代表を経験して、それから言われたのとは違うからね。
水内:田舎の方から出てきて。田舎から田舎に出てきて、ブラジル代表のキャプテンに「あなたどこの学校?」って言われてもね。
名波:それは山西だよ。
水内:学校に興味があったのか? ドゥンガは。
名波:今野(章、元川崎フロンターレ)なんかは、タッチライン際の守備が少しおかしかったことがあってね。ハーフタイムで戻って来るときに、後ろの襟首つかまれて見えないようにボディブローだからね。
会場:笑い
水内:退場だよ! 味方もダメだからね。蹴ったりしちゃいけないんですよ。
名波:その試合は4-0で勝ったんだけどね。横浜フリューゲルスに1人退場が出て、3人交代を使ったあとに、またフリューゲルスでケガ人が出ちゃって。結局11人対9人で試合。
水内:後半はどうだったの? 今野のプレーは変わったの?
名波:いや、人数が減ったから。そんなに大変じゃなくなった。
水内:今野にしたらねぇ。
名波:本人は絶対覚えてると思うよ。つかまれた感触とボディブローの感触は。
水内:なかなか後ろの襟元を引っ張られることってないよね。
名波:ないない。
水内:生きてきてそんな経験って、そうそうないよね。
名波:ないない。
水内:喧嘩するとか、殴られることもそうはないから。
名波:そう。
水内:このDVDを観ると、そういう選手たちが登場してくるわけです。ドゥンガがパスカットして名波に、とかね。
名波:プレーの質ももちろんね、国際大会や海外でプレーしてきた彼の経験というものが伝わったんだね。このDVDでもそうだけど、いろいろな選手とできてよかったなと。90年ワールドカップの得点王だったスキラッチ(サルヴァトーレ、元イタリア代表)がいて、88年のユーロで優勝したファネンブルグ(ジェラルド、元オランダ代表)がいてね。
水内:縦にラインがあるわけで、そこに名波や俊哉さんが絡んでくるわけでしょ。すごい経験をしたよね。
名波:絶対に優勝できるような感じが、今思えばあるんだけど。まぁ、怪我があったりしたから、3人揃って出ることはほとんどなかったけどね。
水内:お年を召した方々だから。
名波:そうそう。
水内:俊哉さんにしても、奥(大介、多摩大学目黒高校サッカー部監督)にしても、もともとセンスがあって、技術的なものがしっかりしてる。さらに世界の経験が加わって、ああいったチームができたのかな。
名波:93年にJリーグが始まって、僕が入ったのは95年なんだけど、ジュビロのコンセプトとして、技術がしっかりしている選手を取って、質の高いサッカーをしようというのがあった。僕が入ったときにスカウトを担当していた、今の柳下(正明)監督の下でコーチをしている石井(知幸)さんが、「5年後には日本人だけで優勝争いができるようなチームにしたい」と言ってたし、僕以外の選手にアプローチするときもそう言っていたらしいから。あ、本気なんだなって。
水内:それが現実になったわけだからね。
名波:なったんだよね、これが。
水内:僕は93年からやったけど、当時はヴェルディが強くてね。カズさんがいて、武田(修宏)さんもいて。あのときは本当に凄かったよね。ジュビロもね、すばらしいパスワークの強い時代があって。今、比べることはできないけど、例えば今の鹿島アントラーズであるとかとやっても、間違いなくおもしろいよね。
名波:だといいんだけどね。順位がどうこうじゃなくって、ただおもしろいサッカーを、みんなが観たいなっていうサッカーをしたいなって。
水内:観ていておもしろくて、強いっていうのは最高だよね。このDVDを観たら、子どもたちはすごいなって思うよね。日本のチームでこんなチームがあるんだって。海外だって常にこんなチーム、こんなパスワークってねないよ。
名波:バルサ(リーガ・エスパニョーラ・FCバルセロナ、)とかぐらい。
水内:お子さんとか、サッカーをやっているお孫さんとかがいらっしゃったら、ぜひこのDVDのプレーを観ていただければと思いますね。
名波:はい。
水内:では続いて、テーマは2強時代。※ 鹿島アントラーズとジュビロ磐田の試合を見ながら
水内:鹿島アントラーズとはいい関係、というかいいライバル関係を築いてきたんじゃない?
名波:鹿島との試合は、ナショナルダービー的なことをうたってくれたマスコミも多かったしね。
水内:いつだったか名波と話したときに、鹿島には勝てる気がしないって言ってたからね。それが数年後には勝つことになるわけじゃない。それだけ鹿島に勝って優勝というのは・・・
名波:そうそう。DVDの中でも言ってるけど、鹿島に勝ってリーグ優勝というのはほとんどなかったんでね。2002年に完全制覇したときくらいかな。
水内:それまでの3、4年くらい勝ってないんだっけ?
名波:09年のファースト・ステージで一度、鹿島に勝ってるんだけど、延長Vゴールだったからね。それを考えると鹿島に勝って優勝したいって気持ちはあったよね。
水内:倒れ込んでのゴールはゴンさんらしいね。この人は点を取ったあとに、当たってるのは何点くらいあるのかな。
名波:キーパーに激突っていうのもあるし、ゴールポストに激突っていうのもあるからね。
会場:笑い
水内:そうだよね、10点ぐらいはあるよね。
名波:激突するのが好きなわけじゃないんだろうけどね。
水内:それはイッちゃってるだろ!
名波:怖がらないですね。
水内:昔の写真を観ると、なんかみんなテクノカットだね。
名波:ねぇ。
水内:流行ったからね。これもジュビロのいいシュートだよ。
名波:普通ならこれ、2-0でフィニッシュのゲーム。鹿島はここからだよね。
水内:おっ、桑(桑原隆、横浜・Fマリノス監督)さん。
名波:よくスタジアムで会いますよ。
水内:1戦目は勝って。
名波:内容は2-0までとそのあとではがガラッと変わっちゃったから。オレ、足首ケガして、痛み止め打って。でも、途中で退場したんだよね。
水内:誰これ? 退場したの? 長谷川(洋之、鹿島アントラーズユースコーチ)さん?
名波:ハセがさぁ。
水内:やりあったんだね。
名波:ちょうど秋田(豊、元京都パープルサンガ)の引退試合で会ったよ。たぶん、覚えてるよ。
水内:それは覚えてるね。こんな大事な試合で退場しちゃって。
名波:後半の10分くらいだったかな。
水内:どんな思いで観てたの? 初戦は勝ってるにしても。
名波:厳しいとは思ったけどね。
水内:鹿島のキーパー誰?
名波:洋平(佐藤、ベガルタ仙台コーチ)。ここで優勝が決まってね。
水内:おお。
名波:俊哉とかは、もう何度も日本一になってるんだよ。幼少時代から。だけど、1位が初めての選手もいるわけ。だから日本一のよさをみんなで感じてね。
水内:泣いてた選手もいるね。福西はたぶん初めてだろうしね。愛媛1位にもなってないんじゃない。
会場:笑い
名波:あ、なってるよ。
水内:今は1部制になったけど、前みたいな前期、後期の2部制でチャンピオンシップというのはどうだった?。
名波:強いチームにはあまり意味はないのかな。なぜならシーズン通してガーっと勝ち続けてるから。でも、真ん中くらいのチームは、今で言ったら名古屋グランパスとか、サンフレッチェ広島あたりは上に上がってきてるから。
水内:調子がいいね。
名波:アルビレックス新潟も調子もいいし。当然ジュビロも、開幕はちょっとあれだったけど、そう考えると、前後半で区切ることによって目標設定が変わってくるから。
水内:セカンド・ステージがあれば、巻き返せると。
名波:そうそう。
水内:去年はジェフ(ユナイテッド市原・千葉)なんかもそうだよね。でも、シーズンを通してやっていく方が価値もあるし。
名波:そうだね。
水内:鹿島と戦うときは、イヤなイメージはあるの?
名波:ジョルジーニョ(ジョルジェ・デ・アモリン・カンポス、元ブラジル代表)とか、レオナルド(ナシメント・ジ・アウラーニョ、元ブラジル代表)、あとはマジーニョ(バルデマール・アウレリアーノ・デ・オリベイラ・フィリョ、元ブラジル代表)もね。すごくイヤだった。
水内:個人個人が非常にうまいからとれないしね。
名波:あれに小笠原がいたらもっとイヤだったな。98年くらいに入ってるから。
水内:ま、でもそういうプレーを観て、Jリーガーになっていく選手もいるんだよね。伸二(小野、VfLボーフム、ブンデスリーガ)なんかは、中学生ぐらいでよく覚えててね。水内さんも名前だけは覚えてるって言ってくれてね。
名波:意味わかんない。
水内:でも、それは嬉しかったね。やっててよかった。今だとわからないじゃない。チームも多いし、テレビ中継もないし。そういう意味では、覚えててもらえるのは嬉しいね。

取材・構成:宮崎俊哉(CREW)/撮影:新関雅士

→後編へ
<司会>パトリック・ユウ(スポーツDJ)
<司会>
パトリック・ユウ(スポーツDJ)
<ホスト>水内猛(スポーツキャスター)
<ホスト>
水内猛(スポーツキャスター)
<ゲスト>名波浩(ジュビロ磐田アドバイザー)
<ゲスト>
名波浩(ジュビロ磐田アドバイザー)