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@ぴあ/HOTスポーツ人気連載コラム「金子達仁のサッカーコラム~グリーンカード~」で健筆をふるうスポーツライター・金子達仁をホストに、スポーツについて熱く語る「ぴあトークバトル」。5月20日に行われたイベントを、そのままお届けします。
 vol.11 前編
 SUPPORTED BY KIRIN

「どうなる! コンフェデレーションズカップ」(前編)

出演者プロフィール
ホスト: 金子達仁(スポーツライター)
'66年、神奈川県生まれ。法政大卒業後、「サッカーダイジェスト」記者を経て、'95年にフリーライターに。著書「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」などがベストセラーに。松本幸四郎氏、小室哲哉氏らを取材した「21」(ぴあ刊)が絶賛発売中。
ゲスト: セルジオ越後(サッカー解説者)
'45年、ブラジル生まれ。日系2世。現役時代、ブラジルの名門・コリンチャンス、藤和サッカー部(現湘南ベルマーレ)のゲームメイカーとして活躍。現在は青少年へのサッカー指導、辛口のサッカー解説で人気を博している。

金子:今日は帽子をかぶったままで失礼します。なぜかぶっているかと言いますと、起きるのが遅く、髪の毛を乾かすヒマもなかったから。ではなぜ、夕方4時から始まるこのイベントに間に合わないほど、朝起きられなかったのか。昨日(5月19日)、totoの一等(2万2290円)が当たりまして。
会場:拍手
越後:いくら賭けたの? 
金子:スポニチで予想した7200円に、J1の方を若干アレンジしたのを2パターン。合計2万1000円……。曽ケ端君(準、鹿島アントラーズ)がPKを止めた時とか、長谷川選手(祥之、鹿島アントラーズ)がヘディングで決勝ゴールを決めた時とか、山下君(芳輝、アビスパ福岡)の決勝ゴールが決まった時とか、僕はもうマジで引退しようと思いました。さて、ついにこの日が来てしまいました。こちらは、僕の師匠にして恩人なんですが、トーク“バトル”になるわけないんですよ、やりあえるわけがないんですから。セルジオ越後さんです。
越後:よろしくお願いします。私は今日は爽快で。賭けてないんです、toto。当たって文句を言う人は初めて見ました。外れた人の気持ちがわかる? 今日は、テーマを変えて「トトカルチョ」で話そうか? totoに引き分けがなかったら面白くない、という話をしようか。日本も強くならないし、totoもつまらないし。
金子:言わせてもらっていいですか? 僕、磐田-札幌は1と2を買ってるんですよ。新潟-京都、トリプルを買ってるんです。山形-大宮、トリプルを買ってるんです。各試合すべて延長戦決着でしたけど、そのまま引き分けで終わってくれれば“億”なんですよ。
会場:ため息
越後:皆さんもこうならないように頑張ってくださいね。
金子:いやもう、totoつぶれる。
越後:このトーク来週やればよかったね、totoがないから。totoはつぶれないよ、どうなっても。もらう分はもらってるから。
金子:だって夢ないもん、これ。この状況じゃ、絶対に1億円にいかないですよ。これだったら競馬のオークスに費やしてた方が、よっぽどましだと思いますよ。
越後:しかし、これでサッカーが好きになった人、いっぱいいるからね。
金子:それはありますね。
越後:負けた後、悔しいから、次に5万円、10万円と賭けてくる。だから仕事して稼がなきゃ。それが面白いんじゃない?
金子:リミットなんて意味ないんですよ。
越後:でもリミットがなかったら、傷がもっと深かったんじゃない。
金子:素晴らしい日曜日の午後、キリンさんのビールで乾杯しましょう! 越後さん、コンフェデレーションズカップ、日本代表のノルマは?
越後:ノルマというより可能性として当然、横浜(国際総合競技場=準決勝、決勝戦会場)まで来なくちゃいけない。うまく話が出きているらしいのね、韓国と日本がこう入れ違いにならないように。シャレにならないよね、日本代表が韓国でやって、韓国代表が横浜で試合をしたら。だから、A組・B組のもうひとつの強い国同士が日本と韓国を移動するように。そこまでお膳立てしたら、やっぱり横浜まで来ないと。ただ気になるのは、新聞を見たら中田(英寿、ASローマ)は3試合だけ来るって出てたから、1次リーグで終わるのかね? 我々が希望しても、内部では対策を3試合に絞ってるみたいですけど。ほかの国のメンバーを見ても、今のブラジル代表はね……。今度のブラジル対ヴェルディ戦(5月26日)は、totoがあったら「引き分け」に賭けていいよ。これはいい勝負よ。
会場:爆笑
越後:裏話ですけど、レオン(ブラジル代表監督)が次のチームを見に来るという。松木(安太郎、東京ヴェルディ1969監督)にはあんまりいい話じゃないな。負けた方が監督を辞めるとか、色々な説があるんです。ま、面白くしようよ、26日の試合は。
金子:そうですね。
越後:だからブラジルのチームもあまり良くないし、日本もケガ人が出てきたからね。左利きばっかりがケガするね、最近。
金子:確かに、そう言われてみれば。
越後:まぁ、今度は右から攻めるでしょうね。
金子:攻めます?
越後:今度はホームで、そのうえ今までのフランス戦(3月24日)、スペイン戦(4月25日)がすごく圧力になって、やむをえずトルシエ監督も攻撃的なサッカーをやらなければいけないし、勝たなくてはいけないところ。僕らがノルマを与えるというより、自然にそうなっていくんじゃないかという感じがします。ここで予選(1次リーグ)突破できなかったら、梅雨入りがちょっと早まるというか、かなり風当たりが強まるというか。いろいろなファクターがあると思う。日本側だけじゃなくて、ライバルの韓国。最近、監督が替わって(オランダ人のヒディンク監督が就任)、もし日本より成績が良かったら、またそれを言われるし。今までのフランス戦、スペイン戦と違って、これは大会ですから。いい方に転がってきているから、もっと欲を出して、もっと上を狙っていけばいいんじゃないかな。韓国は、1位・2位・3位の場合の賞金まで発表しましたね。
金子:してましたね。
越後:日本はまだ賞金まではいってないようですけど。
金子:結果を問わないということなんですかね。
越後:どうですかね。おそらく日本サッカー協会の幹部もtotoが外れたんじゃないですか、今回。
金子:いや、僕は当てたから。
越後:当てたかもしれないけど、賭け方が激しかったから。まあ、ワールドカップまで、もう大会というものはないのね。
金子:そうなんですよね。
越後:アントラーズがこけら落としであれだけ頑張ってくれたから(5月19日、新装になったカシマスタジアムの初戦で延長Vゴール勝ち)ね。やっぱりこけら落としの新潟と鹿島(ともにコンフェデ杯1次リーグの会場)で日本代表もそういう気持ちでやってくれるといいと思います。厳しく言えば、日本代表が横浜まで来てくれれば、来年まで夢を持たせてくれる。もし横浜まで来なかったら、中田が行く先のチーム(イングランドのアーセナル?)の監督(ベンゲル?)を中田が誘ってくれればいいのになと思う。
金子:僕、ベンゲルが日本にいた時にスペインに行ってたので、観てないんですよ、名古屋グランパスを。ベンゲル監督どうですか? 越後さんからご覧になって。
越後:単独チームの監督としては大変実績のある人ですね。ただ代表の監督をやったことはないからね、彼。でもどこのチームに行っても、チームとしてかなり成績を上げている、勝たせているということが、監督として一番の実績だと思います。それと、どこのチームに行っても「残ってください」「出ていかないで」とみんなから止められる。悪い監督だったら、そうはいかないでしょう。ただ本人は、何回か会ったけれども、「ナショナルチームの監督は面白くない」と言う。「毎日選手と会って、選手と過ごすのが監督の醍醐味であって、たまに集まってやるのは監督として全然面白くない」と彼は言ってた。だから自分で作っていくことが好きみたい。自分で選手を入れたり、強化していくノウハウも持っている。僕がアーセナルに行って一番びっくりしたのは、「ボス」「ボス」「ボス」って有名な選手がみんなベンゲルに挨拶していく。かなり信頼されている監督ですから、並みじゃないよね。日本に来ないっていうのはわかる気がするね。
金子:ベンゲルが現実的には日本に来そうにないじゃないですか。サッカー協会の人はベンゲルしか考えてないみたいだけど。
越後:一回、崩れたらしいけどね。どこかの大手新聞が一面に出さなかったら、可能性があったらしいけど。
金子:確かにね。
越後:そこはやっぱり人間、メンツがあるよね。発表もしてないのに新聞に載せたら、載った後に発表するわけには。ちょうどトルシエ監督もピリピリしてた時ですよね、あの頃。どこかの、最近あまり調子が良くないチームの監督も、それに巻き込まれて怒ってたんですけどね。黄色いユニフォームの。
金子:あー、Kチームですか。
越後:昨日負けた。
金子:YチームのA監督もかなり巻き込まれてましたよね。
越後:ベンゲルも素晴らしい監督だけれど、いい監督はほかにもいっぱいいるのに。みんな、監督というのはギリギリの就任では間に合わないとか、時間が必要だとか言いますけど。まるで学校みたい。1年生が3年生になったら強くなるという発想。隣の韓国が強くなったら、シャレにならないよね。
金子:確かに。
越後:この間、監督が替わったばかりだから。それもベンゲル監督じゃないしね。そのあたりがまだ日本は……Jリーグはよく監督が替わるけどね。何なんでしょうね、代表の監督が替わってはいけないというのは。
金子:本当ですよ。
越後:だって僕らは、監督がユースからオリンピック世代からトップチームまで育てて、というのをずっと待っていたけど、0-5でフランスに負けたら、急にベテランばっかりスペインに連れて行った。どうなったんでしょうね、五輪の若手チームは。戸田(和幸、清水エスパルス)がお腹をこわさなかったら、先発では2人だけだったかな、若手チームからは。中田浩二(鹿島アントラーズ)と高原(直泰、ジュビロ磐田)だけ。お腹をこわした戸田は、精神的にちょっと弱いかな、もしかしたら。前にもあったらしい。ジュビロとの決着の試合で、ちょっと熱が出たとか。いるんだよね、そういう大勝負の前に落ち込む人。
金子:会社に行く前に頭が痛くなる人。
越後:大勝負の後に落ち込む人もいるけどね。
会場:爆笑
越後:それで、戸田の代わりに稲本(潤一、ガンバ大阪)が出場した。けど、どう見てもシドニーオリンピックのチームから程遠いメンバーだった。そのあたりの積み重ねが……。
金子:ないです。
越後:どうなったんでしょうね。あんなに選手が入れ替わって。日本の選手もワールドカップに出たいから、みんなおとなしいしね。それと、久保(竜彦、サンフレッチェ広島)ってどうしてるんでしょうね? あんなに代表に選ばれても試合に出さないのに。まさか飛行機のマイレージがたまってるからヨーロッパに優先して連れて行くなんてことはないでしょうね。行って、練習して、試合をやらないで帰ってくるのは「観光」ですよ。
金子:確かに。
越後:7人まで交替しようと約束しておきながら、その枠を使わないで帰ってくるというのは、ちょっと問題ですね。それを含めて楽しみじゃないですか、国内でのコンフェデレーションズカップ。もっとプレッシャーをかけようか? 前回の優勝はメキシコ。どうしてかというとホームで開催したから。いいね、こういうの。だから日本は当然、韓国と決勝戦。いいよね。今、狙わなかったら、本番のワールドカップにはみんな、ちゃんとしたメンバーで来ますからね。おそらくワールドカップにブラジルも来たら、その時にはもうヴェルディと試合やらないよね。
会場:爆笑
越後:もうちょっと強いところ……セレッソぐらいとやるでしょうね(5月19日現在、ヴェルディが最下位16位、セレッソが15位)。
金子:確かにちょっと強いですよね、セレッソ。
越後:今、得失点差でちょっと上なんで。西澤(明訓、エスパニョール)も帰ってくるし。あれ、発表しちゃいけないのか。
金子:また、この人は。
越後:帰ってくるんでしょう? あ、ちょうど今サッカー協会でコンフェデ杯の代表メンバーを発表してるところです。この会場からすぐ近く、同じ渋谷に日本サッカー協会もありますからね。
金子:代表メンバーがわかったら、こちらにも来ますんで。
越後:トルシエが?
会場:拍手
越後:ここで発表してもらえばいいのに。ケガ人は別として、どういうメンバーを選ぶのか楽しみじゃない?
金子:今回は、誰が練習に参加しないで、直接代表に入るのかも楽しみ。
越後:フランス戦からあれだけメンバーが替わって、また戻すかね? 守りのチームがスペイン戦で、攻撃のチームがアジアカップだったでしょう? フランス戦は守りも攻撃もなかったチームだから。
金子:よくわからなかった。
越後:だから、どういうメンバーを選んで、どうするかが非常に見ものですね。
金子:アジアカップ決勝のサウジアラビア戦が、どうして攻撃チームなのか、よくわからないですけどね。
越後:現地で観ていたら、あの試合の後半に比べると、フランス代表の方がお手柔らかだったよ。サウジの方が一方的に押してたもん。だから川口(能活、横浜F・マリノス)もスペイン戦よりサウジアラビア戦の方が良かったよ。
金子:サウジ戦はノーミスでしたからね。
越後:サウジ戦とスペイン戦を観たら、日本はフラット3じゃないね。フラット1だね。
金子:守備が機能したんじゃなくて、ゴールキーパーが機能してましたからね。
越後:効いてる、効いてる。キーパーが活躍するディフェンシブなチームというのも面白いよね。試合が終わったら、川口ひとりだけニコニコしてグラウンドから出てくる。あとの10人が疲れ切った顔で出てくるから、それだけで試合内容がすぐわかるね。いかにキーパーに助けられたか。でも今度はどういうチームを出すかという問題がある。謎がいっぱいあって、いいですね。フタを開けるまでわからないから。予想しにくいよ、どういうチームで臨むのか。メンバーだけじゃなくて、どういう戦術で来るのか。それも楽しみのひとつですけどね。
金子:ブラジルは本当にヤバいですよね、勝たないと。
越後:いや、勝たない方がいいんじゃないですか。
金子:レオンをクビにした方がいい?
越後:多分、ブラジル国民、みんなそう思ってるんだから。勝ったら続くんだから。やっぱりここでケジメをつけて。フェリペ監督(元ジュビロ磐田監督)は最初は「ブラジル代表監督はやらない」と言ってたのが、最近は「オファーがあったら、やってもいい」と言い出したから。だから、ヴェルディとの試合も何か意味がある。よくあるじゃない、南米の大統領も監督も、日本に来てそのまま残ってしまうというケースが。帰れなくなるでしょ。あ、あれはペルーか、ブラジルじゃなかったか。でもそれを真似して、日本に残る可能性もないことはないですからね。勝たなかったら、かなり危ないみたい。ブラジルの友達からの情報で、「勝たなかったら危ない?」と聞いたら、「いや、1試合でも負けたら、もう終わりだ」って。
金子:ブラジルからすると、相手が日本、カメルーン、カナダでしょう?
越後:でも一番心配なのは、27日からブラジルは監督がいなくなるんじゃない? ヴェルディ戦に負けてさ。
金子:いやぁ、今のヴェルディに負けるのは難しくないですか。
越後:でもヴェルディに負けたら、カシマスタジアムの切符、余るよなぁ。
金子:余るでしょうねぇ。
越後:こっちに来ているブラジル人も観に行かないでしょうねぇ。でももしかしたら、そこで圧勝して自信を持つ、という可能性もあるからね。
金子:なんでレオンってあんなに人気がないんです?
越後:う~ん。
金子:最初から人気がないじゃないですか。
越後:要するに、態度でしょう。そういう監督なのよ。短期的な対策にはすごくいい。チームを結構勝たせる。
金子:カップ戦とか。
越後:ただ長期を務めるのは無理。
金子:人間関係のトラブルがすぐ出てきますよね、あの人。
越後:レオンは長い期間監督をやったことがない。ただ、彼はいろいろなチームに行っている。多分、1年以上監督をやったのは、日本でだけでしょう。だから経験をたくさん積んでるよ。
金子:ええ。
越後:選手とすごく仲良くやる監督とか、貫祿があってまわりのみんなが認める監督とかいろいろだけど、レオンの場合は、張り切って自分が世界の舞台で認められたい、チャンスをモノにしたいという監督に入るんじゃないですかね。レオンも日本以外からは多分オファーがないでしょう、今まで。トルシエ監督も、レオン監督も、このチャンスを逃さないという気持ちがあるんじゃないかな。だから似てるよ、このふたり。マスコミとケンカするし。レオンは選手ともケンカする。日本では選手とはケンカにならないから。「帰れ!」と言っても、帰らないし、日本人は。
金子:帰ろうとした選手には、監督の方から謝りに行っちゃう。
越後:何人に謝ったんですかね。けど、監督は謝ってない。通訳が謝ってる。
会場:爆笑
越後:面白いね。「帰れ!」って言う時には通訳が入らない。だから言葉が通じないから森岡(隆三、清水エスパルス)は残ったんだよ。もし通訳が入ってたら、森岡は帰っちゃってたね、代表合宿。でも最近、弱気な発言が多くて。「一気に日本は強くなったけど、まだまだ」なんて言い出して、ちょっと心配ですね。この間、0-1で負けたスペイン戦は、僕はあまりいい負け方じゃないと思う。スペイン代表も、モロッコで対戦した時(2000年6月ハッサン国王杯)のフランス代表とだいたい似たリズムでやってた。
金子:後半ね。
越後:そうそう。だから、せめてモロッコでのフランス戦ぐらいの試合をやったら満足できる。スペイン戦ではあんなに引いて、引いて。モロッコの時は攻められても、攻め返した。ああいう気楽さでやればいいんですけど。点を取れないニッポン、点を取れるニッポン、古いテーマですからね。でも日本人ってみんな、悪いけど、忘れるのが早い。僕らも新聞と契約して仕事をしてるけど、今は不景気だから、この間のスペイン戦の記事はフランスワールドカップの記事をそのまま持ってきて、「惜敗」って見出しをどの新聞も使ってた。「惜しくも世界の強豪に負けた!」。懐かしいね、ああいう記事。
金子:スポニチだけでしたね、「退屈」って一面に出してたの。
越後:0-1で負けるのはワールドカップのクロアチア戦、アルゼンチン戦と同じ。それで、高原のインタビューと、あの当時の城(彰二、横浜F・マリノス)のインタビューがすごく似ている。「ひとりではキツい! 攻撃する体力がなくなる」。
金子:あれでは無理でしょう。
越後:戻ったんだよね、あの当時のサッカーに。トルシエ監督はフランスワールドカップの時は違うチームの監督だったから、本人はあのスペイン戦は「新しくシステムを作った」と思っている。
金子:クロアチア戦の時は中田からゴン(中山雅史、ジュビロ磐田)への決定的なパスとかありましたからね。スペイン戦は何もなかった。
越後:アルゼンチン戦の時もあったよね。だから日本のチームは守りはできる。点が取れないから、外国から誰か監督を連れてこないか、という話になった。下の方からチームを作って、ユースで世界2位になって、オリンピックに出て、さあ今年というところになって、段々ともとに戻り始めたのがちょっと心配。まさか今度のコンフェデレーションズカップが終わったら「ドイツへ!」(=2006年ワールドカップ)というスローガンに変わらないだろうな。シャレにならないよね。
金子:そうなりますかね。
越後:でもそれが目標だったら、トルシエとサッカー協会のひとつの失敗は、ユース年代から強化を始めたのが命取り。俺だったら少年サッカーから始めるな。ドイツの次の大会まで狙うな。それで稼いだお金で、スペインの南でオフト(元日本代表監督)の家の隣に土地を買って、たまに加茂さん(周、元日本代表監督)を招待して、ゴルフでもやって、いいじゃないですか。別にトトカルチョに賭けなくてもいいし。
金子:うるさいなぁ。
越後:コンフェデレーションズカップは、気候もワールドカップに近い。サポーターも「行け行け!」じゃなくて、ワールドカップの気分で、勝たなかったら早めに水をかけて欲しいよね。大会が終わってからじゃなくて。それもエビアン(フランス産ミネラルウォーター)はやめようね、監督に傷がつくから。そうしたワールドカップのすべてのシミュレーションができるところに、コンフェデレーションズカップの意味がある。僕は、金子もそうですけど、ジュビロの試合(2001年7月開催予定だった世界クラブ選手権、2003年に延期)もすごく楽しみにしていたのね。世界のレベルとどれぐらいできるか。それができなくなって、もうこれしかないんだから。ほかの試合はおそらく秋の涼しい時にやることになる。涼しいと、やっぱり違うサッカーをやってしまうんですね。高校サッカーで言えば、インターハイと高校選手権。気温35度ぐらいの暑さの中でやるサッカーと違って、5~6度の中でやるサッカーはいくら走っても消耗しない。今度のワールドカップは結構暑い時期にやりますから、そのシミュレーションとしてはちょうどいい。それとハードスケジュール。1試合やると次の試合まであまり休憩がない。そこではサッカーのやり方の質、戦術的な工夫、選手の層の厚さ、起用の仕方が、すべて大会の成績を左右する。監督の采配がすごく影響するコンフェデレーションズカップですから、いろいろな意味でワールドカップのシミュレーションができる。だから観る方のみんなも、もう少し興味を持って、結果とか、表現とか。表現というのは自由ですから。「ハッパをかける」のは選手にとってすごく参考になる。暴力的な表現は絶対にやってはいけないことですけど、いい時には拍手を送って、悪い時には厳しく非難する。そういう厳しさが今、日本にはちょっと欠けている。Jリーグもtotoのおかげで、ハーフタイムになると、スタンドのみんながスコアボードの方を見て、ポケットから紙を出して「勝った、負けた」。自分のチームの選手にハッパをかけるのを忘れてしまう。スコアを見ると負けてるのに、「やった! やった!」って喜んでいて、まるでほかのチームの応援をしているみたいな感じで。日本の国民がもう少し“ワールドカップモード”になるコンフェデレーションズカップになったらいいなと思いますが、まだまだ甘いよね。
金子:コンフェデレーションズカップで勝てないようだと、もう無理ですよね。
越後:無理だよ、来年はあまり期待できない。例えば中田がセリエAで戦っているという評価があると同時に、競り合った末に“引き分け”があるリーグでものすごく守って、その厳しさを破らなければいけない。中田がユヴェントス戦で1点取って、2点目に貢献して、引き分けに持ち込んで評価されたけれど、日本では90分で引き分けだとまだ試合が30分残っている。だから引き分けがあるリーグと、引き分けがないリーグの違い。日本はよくロスタイムに負ける。最後の時にやっぱりVゴールを狙っているんだね、日本は。ハーフラインにタメがない。後半の30分ぐらいからもう足が動かない。やっぱりVゴール方式というのは、せっかちなのね。川淵さん(三郎、Jリーグチェアマン)がVゴール方式を採用したのはいいことですけど、強化としては、中田が、あるいは日本人が海外に行ったら、世界中で引き分けのあるリーグをやっていて、日本だけがVゴール方式でやっているから、どうも合わない。リーグも代表も通した強化の一貫性。2002年まででいいじゃないですか。カップ戦だけVゴール方式でやればいいんです。2002年が終わったらまたVゴール方式に戻れば。そうしたらtotoももっと面白くなるし。やっぱり90分で戦うコツというのがあると思うんです。日本の選手は素直に90分を戦ってしまい、あまり時間潰しをしない。激しさの中でファールが増える。レフェリーもファールの流し方を覚えなくちゃいけない。日本ではすべて厳しくファールを取って、すぐイエローカードを出す。トルシエ監督は「フィジカル面が足りない」と言うけど、あんなにいちいちファールを取ったら、フィジカルが育たないよね。「ケンカするな、ケンカするな」と言っているようなものですから。だから、そういう激しさ、引き分けのある試合の中、混戦の中を破らなきゃいけない。相手のファールも乗り越えなくてはいけない状況で、いわゆる国際経験が初めて生まれる。だからファールに対して厳しいリーグで戦っていて、たまにヨーロッパかどこかのチームとの対戦の時だけガツガツ激しくいったら、最初は戸惑うよね。中田はもともとフィジカル面が強いんじゃなくて、そういう中で戦っているから強くなったのであって。日本ではちょっと激しくやれば、レフェリーがすぐに来てイエローカードを出す。ヨーロッパではほとんどああいうファールは取らないんですね。流しちゃったりする。スペイン・リーグでは何回イエローをもらったら、出場停止になるんでしたっけ?
金子:5回。
越後:日本では3回目でもうダメ。しかもちょっと殴り合いをしたら、殴った方が4試合、殴られた方が2試合出場停止って、どうなってるの? あれ、歯を2本折ったんだって。3本折ってたら、3試合停止になってたかもしれない。片方が4試合だから、片方が2試合という、ああいう判定もどうかな。罰金を払わせて1試合ずつでいいじゃない、レッドカードで退場なんだから。文部省が何を言うだろうと気にしながらやっているから、ああいう判定もちょっと心配。とにかく、そういう激しい試合があまりないから、ぜひ向かっていって欲しい。
金子:越後さんは現役の時、コリンチャンス(ブラジル・サンパウロの名門チーム)だったじゃないですか。リオデジャネイロのスタジアムに行った時は、やっぱり戦い方が変わったものですか?
越後:変わりますよ、アウェイでは。今は近代的なグラウンドがあるんですけど、僕の時代には、右のウイングをやったら、ラインズマンが俺の走るところの邪魔になるのよ。ラインズマンがラインの中に入ってくる。なぜかというと、フェンス側を走ったら、ひっぱられたり、殴られたり、物を投げられたりするから。ラインズマンが俺のコースを潰しているのよ。それぐらい厳しい、アウェイというのは。アウェイチームは、行きは借りた専用バスで行く。試合開始の時間は決まってるから、行く時にはいいのよ。でも、「今日、帰りは何時?」って聞いたら、「結果による」って言われた。
会場:爆笑
越後:アウェイで勝って、試合が4時に終わったら、グラウンドを出るのは夜9時。サポーターが、どうしても祝福したいのね、俺たちのことを。なんかこう、手に重いお土産をいっぱい持って。もうガラスは割られるし。ロッカールームにマッサージのテーブルがあって、地震が来たらテーブルの下に逃げるみたいに、試合に勝ったらテーブルの下に逃げろ。石が飛んできてガラスが割れるし、選手はみんな、テーブルの下に隠れたり、シャワールームに隠れたり。仕方がないからずっとロッカールームでジッとしている、相手サポーターがあきらめて帰るまで。外に出たら衝突になるから。最初はすごく戸惑いがあるんですけど、それを乗り越えていかなきゃいけない。日本はいいよね、生卵を投げるから。
金子:石は飛んでこない。
越後:それもわざわざ買って。ブラジルではタダの物を拾って投げるからね。ただ、どっちが反射神経が育つと思う? 
金子:そりゃ……。
越後:そういうところもあるのよ、ブラジルサッカーのコツのひとつには。石のほかに、花火みたいに火をつけたら飛ぶ物があって、それを笑いながら投げる。足も速くなるよね。キーパーは大変だよ、後ろからボンボン物を投げられるから。それに段々と慣れてくる。だからブラジルから日本に来る選手は、ものすごくやりやすいよね。アフリカもすごく大変。ブラジルの昔のアウェイの激しさがある。よく「何人死んだ」とかニュースになりますよね。そのグラウンドの中の厳しさを乗り越えないと。日本も平和というのは素晴らしいことだけど、外国と戦う時に精神面では苦しい。レフェリーもそうですよね。日本のレフェリーがアフリカや南米で笛を吹いたら、面白いでしょうね。レフェリーも本当に大変よ。試合後、お巡りさんの格好に変装してから外に出ていったレフェリーが何人もいたもんね。レフェリーの服装から着替えて、パトカーに乗って出ていって、それでもバレたらパトカーもやられるから。でも、それを乗り越えたら、10万人のお客さんの前で22人の選手をコントロールするぐらいはどうってことない。
金子:そうですね。
越後:そういう総合的な環境、メディアも含めて。今、中田のことをメディアは褒めるけど、悪くなったら「出ていけ」となりますからね。全部パフォーマンスをすることが条件であって、昔が良かったら容赦するなんてことは全然ないからね。トッティ(ASローマ)だって、ダメなら「交替しろ!」となるでしょう。日本の場合は、昔メダルを取ったからって、それでずっと飯を食えるからね。過去のことも認めるよ、僕は。ただ過去のことばかり話しても、「今は?」ってすぐ聞かれるから。選手は休めなくて大変だけれど、そういう意味で精神面が鍛えられる。精神面は求めれば鍛えられる。「勝て! 勝て !勝て!」となったら、強くてうまくならなきゃ、できやしないんだから。だから日本の柔道の世界は、ブラジルのサッカーと一緒だよね。「2位になった? 冗談じゃない」と批判される。1位になって初めて認められる。日本の柔道は2位になっても認められないから、1位になるんだよな。ほかの種目はどうかな?
金子:肉体接触があるから、一番不利なはずなんですけどね、本来は。
越後:いつまでアジアカップで満足するんでしょうね? もう終わったのに。あれも嘘をついちゃいけないね、「アウェイ」だと言うけど、俺が行ってみたら、あれは「ニュートラル」だよ。だってレバノン(2000年のアジアカップ会場)って中東じゃないもの。サウジアラビアの方が大変だったよ、酒が飲めなくて。レバノンはすごいもの、女性は見せるところは見せてるし、酒は飲めるし。一番影響を受けてたのはサウジ代表だよ、日本はああいう環境に慣れてるんだから。サウジの選手、狂ってたよ。どちらかと言うと日本人向けだね、レバノンは。だから本当のアウェイで試合をやったのはジュビロだよ。サウジアラビアの本拠地に行って、試合して。これは大変だよ、女の子はひとりも試合を観に来ないし、酒も飲めないし。あれが本当のアウェイであって、レバノンはニュートラル。だってほとんどの試合に客が入ってないもの。
金子:ガラガラでしたよね。
越後:レバノンが負けてから、客が来なくなった。どうしようもないから「タダでもいいから」って呼んでも誰も来ない。一回、ダーッと客が入ったから何かと思ったら、軍の人がスタンドを埋めてる。ただ彼らは応援はしないのね。
会場:爆笑
越後:アジアでは日本はトップレベルに来てると思う。ただ、このアジアが世界では勝てないことを、日本人も覚えておいて欲しい。日本だけでなく、北朝鮮の1966年(ワールドカップ・イングランド大会1次リーグ突破、準々決勝進出)以来、アジア各国は世界にウンと言わせる成績をあげてないんだから。それを求めているところで、おそらく日本サッカー協会もトルシエ監督も苦労してるんじゃないかと思います。



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構成・文:CREW
撮影:源賀津己