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豪華ゲストたちとともにあらゆるスポーツについて、熱く語り合ってきた「ぴあトークバトル」。今回は3月20日に行われた「どうなる! サッカー日本代表」をテーマにした模様をそのままお届けします。

ぴあトークバトル
スポーツ快楽主義2001 Vol.15 Supported by
KIRIN
「どうなる! サッカー日本代表」
前編

<ホスト>
中西哲生(スポーツジャーナリスト・左から3人目)
'69年、愛知県生まれ。'92年に名古屋グランパス入り。'97年から川崎フロンターレでキャプテンを務め、2000年にJ1昇格を果たした。その後引退し、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

<ゲスト>
宮澤ミシェル(スポーツコメンテーター・右)
'63年、千葉県生まれ。'86年にフジタ工業(現湘南ベルマーレ)に入社。'92年にジェフ市原に移籍。'93年には日本国籍を取得、アジア大会日本代表候補に。'96年現役引退後、スポーツコメンテイターとして活躍している。

高木琢也(サッカー解説者・左)
'67年、長崎県生まれ。国見高、大阪商業大を経て、'90年にフジタ工業(現湘南ベルマーレ)入社。'91年にサンフレッチェ広島に入団。'92年には日本代表デビュー。'01年1月に引退し、サッカー解説者に。

勝村政信(俳優・左からふたり目)
'63年、埼玉県生まれ。劇団第三舞台を経て、蜷川幸雄、野田英樹らの舞台で実力を開花。最近は「HERO」、「スタアの恋」などの人気テレビドラマでも活躍中。

白石美帆(スポーツキャスター・右からふたり目)
'78年、茨城県生まれ。短大ではスポーツに携わる栄養学を専攻し、食物栄養士の資格を取得。'98年10月より、TBS系列の「スーパーサッカー」でキャスターを務める。


中西:皆さん、こんばんは。トークバトル第15回、今夜はサッカー解説でお馴染みの宮澤ミシェルさん、同じく元日本代表の高木琢也さん、俳優の勝村政信さん、白石美帆さんをお招きして、お送りします。
会場:拍手
中西:さて、ワールドカップまであと3か月切ったわけですが、これからの日本代表に期待することは何か、皆さんに語っていただきたいと思います。では、勝村さんから。
勝村:何を期待したらいいんでしょうね。
会場:爆笑
勝村:前回このトークショーに参加させていただいてから、僕にもずいぶんサッカーの取材が来るようになったんですよ。で、真剣に考えざるを得なくなって。昨日もチャンピオンズリーグを観て、スペインダービーも観て、今時差ボケみたいなんです。今日は何を話したらいいのかな、自分で何を聞いてみたいのかな、と考えてみたんですけど、選手ひとりひとりにワールドカップについてどう考えているのか、ワールドカップで何がしたいのか、ということを一番聞きたいと思ったんですね。
中西:すごくジャーナリスティックな意見ですね。でも、今ここには選手は誰もいないですからね。
勝村:じゃあ、ダメだね。
中西:代表としてワールドカップ出場の寸前まで行った高木さんにも、ワールドカップの位置づけなどを聞いてみたいんですけど。
高木:'94年アメリカ大会予選のオフト(ハンス、元日本代表監督、現浦和レッズ監督)時代はもちろん、その前っていうのは日本はワールドカップに出たことがなかったわけですけど。オフトの時にドーハの悲劇まで行って、初めてワールドカップが夢じゃなくて現実のものであるということを感じましたね。自分もそう思ったし、日本のサッカー協会もファンも「日本はワールドカップに行けるんだ」と思える時代になったんじゃないかと。そのきっかけになったのがドーハの悲劇だったと思います。ワールドカップというのは常にチャレンジするものだし、いつかチャレンジが報われる時が来るものだし。それが98年のフランス大会だったんでしょうね。
中西:ミシェルさんはどうですか。
宮澤:ドーハから何年、という話になる時、決め手はロスタイムのコーナーキックだよね。ショートコーナーされて、ヘディングシュートされて。フワーッと浮いたボールがサイドネットに入ったところから始まった、っていう気がするな。そういう流れがあって'98年フランス大会で予選を勝ち抜いて。今回は予選がないし、ホスト国として戦う。開催国としての真剣勝負ができるから、世界がすごく近くなったような気がする。いいじゃないですか。


高木:僕らの時代は出ることだけで一生懸命だったけど、今の代表選手はワールドカップは自分を披露する場だと思っていますからね。ステップアップのための戦いの場としてね。
中西:ワールドカップは「出ればいい」という時代から、「出てどうするか」という時代になったということですよね。
高木:そうでしょうね。もう日本の選手は世界に目を向けているし、世界も日本に目を向けている部分もいっぱい出てきた。そういう意味では国を代表して戦うことで、決勝トーナメントに行くとか、もうひとつは「個」として自分をどうアピールできるか、という時代になっていると思います。
中西:美帆ちゃんはどうですか?
白石:私は小さい頃、『キャプテン翼』を見て、「ワールドカップって、出るには資格がいるんだ」と思っていたんですよ。
会場:爆笑
白石:日本は資格がないから出られないんだと思っていたんです。当時はプロサッカーリーグもなかったし。それがJリーグができて、日本代表が世界に出ていくっていう急激な流れをすごく感じますね。韓国と日本は、長い歴史の中であまりいい関係でなかった時代を経て、「2002年ワールドカップを成功させましょう」っていうところまで来ているわけじゃないですか。ワールドカップは2002年で終わるわけじゃないし、2006年、2010年とこれからも続いていくわけじゃないですか。すごく大きな意味を持った年になると思います。
中西:ワールドカップによって日本も変わるし韓国も変わる、ということですね。その日本代表がワールドカップに向けて明日(3月21日)ウクライナ戦に臨むわけですけど、今の代表チームについて、みなさんいろんなご意見を持っていることと思います。選手がピックアップされて、ある程度ですが、「この選手たちで行くんだろう」というのも見えてきましたが、その可能性として、今いるメンバーでどう戦って欲しいかというのを聞きたいと思うんですが。ミシェルさんどうですか。
宮澤:今は選手が海外から帰って来て、自国の試合に出る時代になったじゃない。これも数年前と比べたらすごい違いだよね。僕は、とにかくアグレッシブに戦って欲しい。バンバン攻めるという形で行ってくれないと、ちょっと盛り上がらないかなと。消極的に守る戦い方じゃなくて、2001年11月の対イタリア戦のように、前から襲いかかるような戦いを仕掛けたい。ベルギーはそんなに弱い相手じゃないよ。あの時日本で戦ったイタリアよりは、間違いなくワールドカップ本番のベルギーの方が強いんだから、それは覚悟して行かないと。プレッシャーから何から、全部選手が背負うわけじゃない。地元なんだから、そこを何とかプラス思考で考えて戦いたいね。マイナスの考え方で戦ったら、引き分けもなくなると思うよ。
中西:基本的には気持ちを強く持って前向きに戦って欲しいということですよね。高木さんはどうですか。
高木:僕も、宮澤さんの意見とほぼ同じです。まず目標として予選リーグを突破して欲しい。これは願望ですね。日本に住んでいるいちサッカーファンとして、また日本国民として期待しています。
中西:そうですよね。
高木:「ここがあぶない!」という最初のテーマに戻ると、左サイドに三都主(アレサンドロ、清水エスパルス)が帰化して、中村(俊輔、横浜F・マリノス)も小野(伸二、フェイエノールト)もいるということで、どうしようと監督が悩んでいる部分もあると思います。確かにすごい贅沢な悩みだけど。逆に恐いのは、悩みすぎてシステム的なバランスが崩れることですね。
宮澤:でも、ず~っと決まってないよな。そのまんまメンバー決めずに、サバイバルでずっと行くっていうのはどうですか? それは、みんなはOKなの?
高木:もうそろそろ、ある程度は決めた方がいいですよね。選手にしてみれば、それだけチャンスが与えられているということで、モチベーションを高く保てていいとは思うんですけど。
宮澤:選手にとったら苦痛にならない?
中西:それは当然あるでしょうね。
宮澤:俺はボロボロになるんじゃないかと思って恐くてさ。
白石:選手の神経が?
宮澤:そう。今年は1 月21日から代表合宿が始まって、あそこではケガしなかったけど、その後どれだけの選手がケガしたと思う? みんな合宿に向けて、シーズンが終わっても休まずに調整してくるじゃない。
中西:してましたね。
宮澤:だって、合宿で厳しい練習をするってわかってるんだから。で、各クラブに帰ってケガ人続出だぞ、今。日本人は競争がずっと続いてサバイバル、サバイバルっていう環境で育ってないからね。
勝村:僕もその通りだと思いますね。この中でサッカーに関係ないのは僕だけなんで、外から見ている側の意見として言うんだけど。僕ね、1戦目で日本がベルギーに負けたら、トルシエは更迭すべきだと思ってるの。
白石:おぉ、大胆!
会場:拍手
勝村:でしょう。彼はすごく頑張っていると思うんだけど、予選を勝ち抜いたわけではなくて、本大会出場の切符を持ったまま来てるわけですよね。フラット3が世界的に見て本当にすごい戦術なのかっていうのも、僕はよくわからないし。もし本当にすごいならフランス人はみんなフラット3をやっているわけでしょう。彼は予選を戦うという意味では何もやっていないわけだし、ワールドカップに優勝した経験もないし。これだけ時間をかけて選手を試して、最初の結果が出るのがワールドカップW杯の1戦目じゃないですか。
中西:そうですね。真剣勝負という場で結果を出すのは、そこが初めてですね。
勝村:これだけ時間をかけて、お金も使って。彼自身もものすごいお金をもらっているわけじゃないですか。僕なんか、昔ヴェルディの監督をやっていたネルシーニョがやっても良かったと思ってるんだけど。トルシエはそのネルシーニョに提示された額よりもよっぽどお金をもらっているわけでしょ。サッカー協会は、ネルシーニョには「これ以上は出せない」って言ったくせに、トルシエにはそれより多いお金を出して雇っている。だから、僕はベルギーに負けたら1回で更迭したほうがいいと思うの。今からほかの監督を用意しておくべきじゃないかと思う。もちろん勝てれば問題ないわけで、用意するに越したことはないと。

中西:引き分けはどうですか?
勝村:厳しいと思う。そうなると2戦目の結果によると思うけど、初戦引き分けで2戦目負けたら、もちろん更迭。
白石:大丈夫ですよ。この間ベルギーのワセージュ監督にインタビューした時、「こうなったら敵対するんじゃなくて、いっしょに勝ち上がりましょう」っていう約束をして来ましたから。
会場:爆笑
中西:約束したんですか?
白石:そう。だから日本とベルギーが決勝トーナメントに行けばいいんじゃないですか。ベルギーは日本をすごく研究していて、どう見ても手の内は知られていると思いますから、まぁベルギーとは引き分けて。ともにロシアとチュニジアを倒す、と。それでどうでしょうかね?
中西:う~ん。
白石:ベルギーと引き分けたらどうですかね?
勝村:日本は、とりあえず決勝トーナメントに出れたらOKだと思うんですよ。さっきワールドカップの成功っておっしゃったじゃないですか。開催国におけるワールドカップの成功って優勝だと思うんですよ。
中西:そうですね。
宮澤:そのためにもまず1勝だよね。
中西:そのために、今この時期にやるべきことって何ですか?
宮澤:僕はもう少しチームの土台を固めた方がいいんじゃないかと思うね。
中西:メンバーを固定すれば、その選手も自分なりの調整ができるし、無理をしなくてもいいっていうことですか?
宮澤:うん。彼はいつもメンバーを動かしているよね。中山(雅史、ジュビロ磐田)を入れたとか、秋田(豊、鹿島アントラーズ)を呼んだとか。何かいつも作っているよな。我々に何か「こうだ!」って出すんじゃなくて、「いや、まだいいんだ」みたいな。俺はそれがすごく苦しいのよ。「メンバー20人呼んだ。このなかではこうやるんだ」っていうのが2つぐらいでも見えればいいけど、わかんないんだよ俺には。一生懸命サッカー見るほうなんだよ、俺も。でも「どうすんのかな」って。
中西:まだ見えて来ないですか?
宮澤:ここで久保(竜彦、サンフレッチェ広島)がすごく活躍したら、本当に久保を使ってくれるか? っていうのが見えてこない。ひと皮むけたらすごいぞ、久保は。ヤツは今、特にはじけるものがあるんだよ。トルシエはずっとメンバーを引きずっているけど、久保が活躍したらホントに出してくれるよね、っていうのを知りたいね。
中西:そのへんが半信半疑なわけですね。
宮澤:だって選手が苦しすぎないか? 日本人相手に向こうのやり方でばっかりやっていて、追いつかない面が出てるんだよ、今。
中西:その「向こうのやり方」っていうのが、選手をひんぱんに入れ替えて、競争意識を持たせる、っていうことですね。日本人に合ったやり方っていうのは、ある程度選手を固定させて、自信を持ってプレーさせることであると。

宮澤:いずれはサバイバルさせていい時代になるんだろうけど、今はまだ早いんじゃないかと思うんだよ。
中西:そもそもサバイバルの枠が大きすぎませんか?
宮澤:大きいよ。最初から合宿先のホテルに入りきらない人数を呼んでるんだぞ。
会場:爆笑
宮澤:40何人いたでしょ。
中西:いましたね。
宮澤:あれだけでサッカー協会のお金いくら使ってるんだよ。そうは思いませんか? フランスは同じことやったけど、フランスから出ていった選手は海外のチームで全員がレギュラーとして活躍しているんだから。その選手たちが帰って来てみんなでやれば、それはチームになりますよ。でも、我々はまだ段階が違うもの。
中西:まだそこまでは行ってない、と。
宮澤:俺もケガで泣いたから、とにかく選手のケガが恐い。ケガでワールドカップの舞台に出られないなんて。Jリーグでケガしたならまだしも、合宿に行ってケガするなんて考えられないよ。
中西:高木さんなんかは代表に選ばれる、選ばれないという気持ちはすごくよくわかると思うんですけど。いつも選ばれるという保証があれば、自分のペースで調整できるというのはあるんですか。
高木:確かにいつも選ばれるなら、調整も楽ですね。ボーダーラインにいる選手っていうのは、常にトレーニングをしなくちゃいけないっていう義務感とか、無理をしなくちゃいけないっていう部分があるし、練習でも無理をする。そういう部分っていうのを選手は絶対持っていると思いますよ。
中西:じゃ、いつもギリギリのボーダーラインにいる選手っていうのは、無理をし続けていると。
高木:うん。やっぱり余裕がないもん。
中西:その意味では、今ほとんど全員余裕ないですよね。7、8人の選手はレギュラーになっているかも知れないけど。
宮澤:7、8人いるかな?
中西:いないかも知れない。
宮澤:ディフェンスラインの3人と、あと戸田(和幸、清水エスパルス)と稲本(潤一、アーセナル)くらい? キーパーは?
中西:キーパーは誰?
宮澤:川口(能活、ポーツマス)? わかんない、僕は。
中西:あとは小野と中田(英パルマ)は決まりですよね。
観客:中田?
中西:みなさん、そういう意見どんどん言って下さい。彼らが決まっている、決まっていないは別として、確実に試合に出そうな人数は5、6人ですかね。
宮澤:うん。
中西:あとはみんな瀬戸際っていう感じですか?
宮澤:そうだろうなぁ。だって大きな問題を抱えてるんだぜ、左サイドっていう。さっき高木さんがいってたけど、左サイドを誰にしようかって悩んでるんだから。ブラジルでもどこでも、ワールドカップに行く最後の最後に突然メンバーが1人くらい代わるっていうことはあったけど、ほとんどはそれまでに決まってるよ。
中西:いくら何でも2人くらいには絞られてますよね。
宮澤:2人以内にはな。
中西:いまは6、7人いますからね。三都主、小野、名波(浩、ジュビロ磐田)、中村、服部(年宏、ジュビロ磐田)、本山(雅志、鹿島アントラーズ)・・・。

宮澤:タイプの違う選手が3人いたら、チーム全体の作り方が変わってくるもんな。
中西:全員タイプが違いますしね。
宮澤:「代表って厳しいんだ」っていうのはわかるけど、そのレベルの競争に耐えられる教育を受けていないと思うんだよな。いきなり「全部勝負だ」なんて言われてさ。だって1 月21日にサボって走るヤツがいないんだから。「冗談じゃないよ、走れるわけないよ」なんて言う選手はいないしな。
白石:でも、人数が多いっていうことは、予選3カ国それぞれ別のタイプの人を当てるっていうことを考えているんじゃないですかね。
宮澤:う~ん、それもどうかな。
高木:そこまで日本ができるかっていうと、ちょっとクエスチョンかも知れない。そこまで相手に合わせて戦えるかっていうのはね。
白石:ワールドカップまでに日本代表は8試合ありますけど、その中では試しきれない状況ですか?
中西:まぁ、明日から8試合ありますけど、アタマの2試合くらいである程度メンバーを絞り込んだほうがよくないですか? あとはその中でコンビネーションを熟成させていかないと間に合わないと思うんですけど。
高木:そのへんは監督のやり方で全然違いますからね。たとえばエリクソンだったらある程度固定して、そこから臨んでいくっていうやり方をしてるし。
中西:さっき言ったミシェルさんの意見だと、ある程度固定したほうが日本人にはいいんじゃないかっていうことですよね。勝村さんはどう思います?
勝村:僕も固定はしたほうがいいと思うんですけど、そろそろ「どうやって1点を取るか」っていうことも考えないと。たとえば高木さんをレギュラーにすると考えたら、戦い方がシンプルになるじゃないですか。高木さんの頭を使って、こぼれたボールに誰かが詰める、そこで必ず1点取れるっていう。日本って、3点も4点も取れるチームじゃないですから、「必ず1点取れる形」っていう練習を積み重ねないと。それを高木さんが毎回出るか出ないかわからないんじゃ、どこに合わせていいかわからない。それで続けていくのは僕は無理だと思うんですよ。
中西:今はビルドアップの部分で非常に難しくなっていますよね。今勝村さんが言ったことはすごく理にかなっていて、得点しないと勝てないわけですよ、サッカーは。1点も取れないチームじゃきっと予選リーグは突破できないです。3試合のうち1試合でも点を取って勝たないと。3引き分けじゃダメで、最低勝ち点4はないと。どういう形で点を取るかは大命題ですね。
宮澤:だって2トップも決まってないだろ? 98年は少なくてもわかってたよな。もちろん予選っていうのがあったけども。
中西:城(彰二、ヴィッセル神戸)を中心に作るって言ってましたよね。
宮澤:呂比須(ワグナー、アビスパ福岡)は間違いなく選ぶだろう、とかな。そういうのがわかってたけど、今はなぁ。
勝村:今日ここへ来る時に、なにかしゃべらなくちゃいけないなぁと思って、クライフの『美しく勝利する』っていう本をちょっと読んだの。そうしたら、「戦術っていうのは洞察力と信頼とスタミナだ」って書いてあって。そう考えると、「ギリギリまで誰がくるかわからない」っていうやり方だと、信頼関係はできないじゃないですか。そのひとつが欠けるわけだから、クライフがすべてではないけれど、その3つとしてはもう成り立たないわけで。信頼関係ができないっていうのは、ものすごく問題だと思う。
中西:その通りですし、あうんの呼吸っていうのがないと、点は取れないんですからね。ベルギーもロシアもそうですけど、守ることはうまいチームですからね。そのチームに対して日本のようなチームがどうやって点を取るかっていうと、もうあうんの呼吸しかないでしょう。あとは個々の選手が持っている飛び道具、たとえば中村のフリーキックであったりとか、小野のスルーパスであったりとか、中田のミドルシュートであったりとか。そういう選手の特性をどう組み合わせるかっていうのがひとつの答えなのかな、っていう気がするんですけどね。それでケガ人が出た場合は代わると。

宮澤:そうだよな。そういう方向性が出てくれないと、どういう見方をしたらいいのかもわからないし、それでずっと流れていったら見ている方もシンドイものな。
中西:例えば、攻撃のパターンもしくは日本の持っている特性で、世界に誇れて、しかも「これだったら点は取れそうだ」っていう技ってないですか?
宮澤:あれがあるな。コーナーキックで中田(浩二、鹿島アントラーズ)が背中向けて、靴のひも結んでいるフリをするトリックプレー。
会場:爆笑
宮澤:あれ1回くらいは通用するよ。あれ見た時、俺は「すごいな」と思ったよ。「あそこまでショービジネス的にやらせるか」って。実際にシュートまで打ててるからね。でも、2回目は通用しないぞ。
中西:一発必中ですね。
宮澤:あれは驚いた。トルシエが来た甲斐があったな。
会場:爆笑
中西:高木さんは? 今フォワードが6、7人いるなかで「コイツのこれは行けるんじゃないか」っていうのは?
高木:やっぱり久保なんだよね、今は。だって高さは一番だし、身体能力も絶対一番だし、アイツがいけないのは頭を使わないところだけ。
白石:どういうことですか、それ。
高木:もう少し考えてサッカーをやってほしいなと。
中西:それリアクションできないですよ。
高木:僕は久保と一緒にやってたから厳しく言えるんであって、あいつは身体能力とか一瞬のスピード、それと思い切りのいいプレー、高さは絶対一番。フォワードの中で一番能力をもっている選手です。
宮澤:だから活躍したら使ってくれるのかよ、トルシエは。何回も言っているけど。
勝村:ハハァ、久保はバカですか。
会場:爆笑
高木:バカではないんですよ。
勝村:イヤ~、今ちょっと目からウロコが落ちましたね。
高木:バカではないんですけど、やっぱり駆け引きとかを考えながらやらないと、なかなかいいボールも来ないだろうし。日本のJリーグのレベルだと、あいつは本能だけでやれちゃうんです。でも、ワールドカップではやっぱり考えながらやっていかないと、大舞台ではなかなか力を発揮できないでしょう。
中西:賢いディフェンス陣を相手にしなきゃいけないわけですからね。そういう意味では、考えながらでも身体能力を出せるとか。じゃその久保に合わせて、どういうクロスボールを蹴ろうかとかが必要になるわけですね。
高木:問題は久保の場合、考えながらだと身体能力が出ないっていう場合がありますからね。ちょっと恐いです。
中西:そこらへんは難しいですからね。
宮澤:久保って代表で何分使われてる?
中西:1回スタメンで出ましたけどね。
宮澤:その程度だろう? わかんないよ、どういう形でどうすればいいのか。今から久保を前で使うという可能性はあると思いますか?
中西:会場の皆さんはあると思いますか?
会場:「ない」との声が多数上がる。
宮澤:ないよな。だから前から言ってるんだよ。40mも後ろからバーンとシュート打つバカいないぞ、ホントに。
中西:でも、それが入っちゃうからね。
宮澤:入っちゃうし、そういう発想をする人なんですよ。代表に行くとなんかビビッてまわりの人としゃべれないとかあるらしいけど。

中西:ビビッてるわけじゃないんですよ。
宮澤:タイプ的にあるんだよな。
高木:自分をアピールするのがあんまりうまくないんですよ。例えば、代表の練習でみんないっしょにアップしてるでしょ。そういう時、久保は必ず後ろを走ってる。
中西:広島ではどうなんですか?
高木:やっぱり後ろ。
中西:一緒じゃないですか。でも、久保に関しては結構そういう話を聞きますよね。実際はどうなんですか?
高木:ちょっとシャイが強すぎるんだよね。コメント取るのも難しくて、全然しゃべってくれない。でも、アイツはカレーがすごく好きなの。
中西:キレンジャーじゃないんですから。
会場:爆笑
高木:そこから話に入っていくと不思議と話してくれるんだよ。
中西:いい話を聞きました。
高木:あとは焼酎でしょう。
宮澤:試合中に汗かく量よりも、インタビューで汗かく量のほうが多いんじゃないか? ブワーッて出てくるもんな。
高木:いろいろ言ってますけど、あいつはすごく能力が高いから僕は期待してるんですけどね。
宮澤:すごいフォローだな。まとめたな、今。でも本当にそうじゃないですか。どうする明日? メンバーに選んでくれよ。 
中西:仮に明日活躍しても、使ってくれる保証は限りなく低いですよね。
宮澤:それでも選手はやるんだぞ、ガンガン走って。それって、「世界レベルでは当たり前」って思うかも知れないけど、我々日本人はそのうち疲れるぞ。ガクッと来るぞ。今はそれが心配なんだ。
中西:今、久保はちょっと厳しいという話をしましたけど、ほかに「これが日本の武器」と感じる選手はいますか。
白石:サイド攻撃はどうですか。
宮澤:サイドは片方が行って、片方が行かないっていうのが日本の定番だからね。
中西:だいたいメンバー表がいつも左肩上がりなんですね。左に中村が入る時、トルシエが書いてるのはいつもそうです。波戸(康広、横浜F.マリノス)はちょっと低めなんです。
宮澤:3バックをすぐ4バックにできるようにっていうことなんだろうな。一度酒井(友之、名古屋グランパス)が中盤で使われてた時、「トルシエに何言われてる?」って聞いたら、「90%以上ディフェンスのことしか言われない」って。で、いざ試合に出たら、「上がれ、上がれ」って言われたってできないって。
白石:スペイン戦で、波戸さんの惜しいシュートあったじゃないですか。今回は右サイドとして市川(大祐、清水エスパルス)さんが召集されてますけど、どうするんだろうって思ったんですが。
勝村:全然わからないです。
高木:基本的に右から攻める時は、左のアウトサイドの選手が入っていかないと、なかなか点も取りづらいですよね。中は枚数が少なくなるわけだから。小野なんか、オランダリーグでやっている時はアウトサイドでも必ず中に入って来ますよね。
中西:実際に中へ入って点を取れって言われてますしね。
宮澤:最近、小野はいいなぁ。
中西:だから、どこで使うのかが大切になってきますよね。「本当に左なのか?」って。
宮澤:それすらも教えてくれないんだからな。それが聞きたくて、今晩はこうしてみんな集まって来てくれてるのにな。
中西:例えば、小野はどこがいいと思います? 僕は右だと思います。
宮澤:右できる?


後編へつづく