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豪華ゲストたちとともにあらゆるスポーツについて、熱く語り合ってきた「ぴあトークバトル」。今回は7月7日に行われた「~2002W杯を終えてPART2・感動編~」をテーマにした模様をそのままお届けします。

ぴあ30th Anniversary
ぴあトークバトル
スポーツ快楽主義2002 スペシャル2DAYS Vol.20 Supported by
KIRIN
~2002W杯を終えてPART2・感動編~
後編

<ホスト>
青島健太(スポーツライター・左)
'58年、新潟県生まれ。慶応大から東芝へ進み強打の大型三塁手として注目を集めた。'85年にヤクルトスワローズに入団。'89年退団後、スポーツライターに転身。現在は、スポーツライター、キャスターとして、テレビ、ラジオ、雑誌等で活躍している。

<ゲスト>
中西哲生(スポーツジャーナリスト・右から2番目)
'69年、愛知県生まれ。'92年に名古屋グランパス入り。'97年から川崎フロンターレでキャプテンを務め、2000年にJ1昇格を果たした。その後引退し、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。

宮澤ミシェル(スポーツコメンテーター・右)
'63年、千葉県生まれ。'86年にフジタ工業(現湘南ベルマーレ)に入社。'92年にジェフ市原に移籍。'93年には日本国籍を取得、アジア大会日本代表候補に。'96年現役引退後、スポーツコメンテイターとして活躍している。

川原みなみ(スポーツキャスター・左から2番目)
静岡県生まれ。2000年、2001年のJリーグアウォーズで司会を務めるなど、サッカーファンにはおなじみ。現在、「ベストタイム」(TBS系)等にレギュラー出演中。韓国に魅せられ独学で言語を学び、2月には「川原みなみのもっと韓国! もっとサッカー!」(ブックハウスジャパン刊)を出版している。


前編を見る
青島:ブラジルの話を、少ししましたけど、「勝者には何もやるな」と言ったのはヘミングウェイですからね。勝ったらいろんな物は届くし、何やっても楽しいし。ま、いいでしょ、ブラジルの話はね。ドイツはかわいそうなぐらいにちょっとね。
中西:でも、ドイツが帰った時の映像見て思ったんですけど、すごく歓迎されてて。
青島:負けたのはカーンのせいだって、試合直後はメディアがなんだかんだ言ってたけど、帰ったら大歓迎でしたよね。
中西:ワールドカップの優勝経験国で、優勝してないのに帰ってあんなに盛大に迎えられたの初めてじゃないですか、たぶん。
宮澤:そうだな、初めてだな。今回、中心選手がケガで3 人来られなくて。で、ひとり来て帰ったでしょ。それにバラックの出場停止とかあって、よく決勝まで来たよ。歴史で勝ったな、あれは。
中西:経験ですね。
青島:「MVP はカーンだ」という質問の「YES 」はボクだけだったんですけど、カーンはどうでした?
宮澤:よかったよね。ドイツがあそこまでいったのはまさしくカーンなんですよ。毎試合、2~3本は自分の体に当てて、ボンボン防いでたから。アイルランドにやられたシーンがあったじゃない、1対0で勝ってたのに1対1になった時。最後のシュートも当ててるんだよな。わずかな差だったけど、コースに出るタイミングはぴったりだった。
青島:でも、決勝では靭帯断裂してるとは思わなかったね、ゲームの最中に。
宮澤:すごいシーンだよね。でも、カーンはああいうことやるよね、たまに。チャンピオンズリーグでやってたけど。あるんですよ、ボロは。ところが、すべてこのワールドカップは当たってね、すばらしかったよ。
中西:動かないんですよ、彼は最後まで。見てるから止められるんですよね。普通はキーパーって最後の瞬間、倒れちゃうんですけど。彼は最後まで、しかも前体重で我慢できるから、フォワードの方が我慢できなくてシュートを打っちゃう。
宮澤:で、最後は顔だもんな。
中西:顔で止めますよね、気合いで。
青島:ミシェルが思うMVP は誰?
宮澤:MVP 、誰がいいかなぁ。最後まで来て、ロナウドもあっただろうし。カーンと同じぐらいすごかったのは、ブラジルのキーパーのマルコス(パルメイラス)だな。ブラジルは久しぶりにいいキーパーだったね、珍しく。だけど、MVP っていろいろあるな。リバウド(バルセロナ)だってすごいし。
青島:まあ、誰がMVP っていうより、この人がよかったっていう意味でテツは?
中西:ボクはクレベルソン(アトレチコ・パラナエンセ)。彼が入ってブラジルは変わりましたね。バランス悪かったんですよ。ボランチをひとり、守備的な選手に代えたわけです。ジュニーニョ・パウリスタ(フラメンゴ)ってちょっと上がり目の選手だったんですけど、それを彼に代えてバランスがグッとよくなった。前線の3人がマークされてても彼、結構ディフェンスもできるんだけど、攻めでもなにげにいいボール入れるんですよね。
宮澤:決勝は自分が打ちまくって、外しちゃってたけどな。
青島:でも、決勝でもいつもいいところで絡んでたよね。
中西:ディフェンスもいいんですけど、攻めでもちゃんといいパス出せるんで。
宮澤:ボランチの1枚、エメルソン(ASローマ)がケガで帰っちゃって、そこから修正がきくっていう層の厚さがすごいよな。
青島:みなみちゃんは?
川原:私は韓国代表チームです。中でもチームを引っ張ってきた洪明甫(浦項)選手。
宮澤:洪明甫、結婚してくれっていう話が殺到してるんだよな。
川原:そうなんです。韓国でもやっぱり日本のようにサッカーをあまり知らない人で、ワールドカップに入ってからファンになったという方が結構いたんですね。ですから、洪明甫選手はもう結婚してお子さんもふたりいらっしゃるんですけど、試合を見てからお見合い話が殺到して、写真が送られてきたりしてるんですよ。
中西:いいっすね、ボクのところには全然お見合い話来ないですよ。
宮澤:これだけファンが来てるじゃないかよ。
会場:爆笑
青島:だけどね、韓国ほんとすごかったですよ。だって、うちの下の子、1年生の男の子なんですけど、「いいよねー、朴智星(京都パープルサンガ)」とか韓国の選手の名前、スラスラ言ってましたよ。のめり込むような試合ばっかりだったから。
川原:普通、プロ選手で代表選手だっていうと、あそこまで肉体的にボロボロになるまで戦えなくないですか。加減してしまうっていうんではないんですけど。あんなにすべてのファイトを出し切れちゃうってすごいなって思うんですけど。
宮澤:120 %だったよね。
中西:毎試合そうでしたよね。
宮澤:監督も、あちらの監督はガンガンいってた。イタリア戦、見た?
中西:ボランチ代えてフォワード入れて、洪明甫代えてフォワード入れて。
川原:攻撃の選手ばかり投入しても、その中でうまくポジションチェンジして全体のバランスを崩さずにやれるって、あそこがすごいなと思いました。
中西:超ナンセンスな交代ですよね。
川原:イタリアもそれで混乱してましたよね。
中西:イタリアも攻めればいいのに、攻めること忘れてましたよね。
宮澤:イタリアは後半の何分かで守りに入った。で、セルジオさんが笑ってた。「もう、守りに入りましたよ」って。あのゲームは日本がトルコに負けたすぐ後のゲームだから。腹立ったよ。悔しかったなぁ。
川原:日本代表のトルコ戦なんですけど、韓国代表ほどっていう言い方も変なんですけど、選手からファイトを感じられなかったんですよね。それは私だけなんでしょうかね。
青島:ボクも宮城スタジアムに行ってましたけど、なんかやっぱりそれまでと違った雰囲気は感じましたね。なんか、まったりしてるというか。
宮澤:それは地域性だとか、雨が降ってたとか、陸上トラックのあるスタジアムだから伝わりづらいという面もあった。行った人に聞くと応援がふたつに分かれたっていうこととかね。あの会場に行った人、いる? やっぱり応援の仕方も今までと違っちゃった? 
客:最悪でした。天気もスタジアムも観客も選手も監督も。
宮澤:いや、ほんとそういう状態だったらしいですよ。それは宮城が悪いとかじゃなく、その時にそういうところになっちゃったんだよ、我々は。悔しいなぁ。で、先発メンバーがドンと出てきた。
川原:先発メンバーも要因のひとつだった可能性はありますか?
宮澤:前半、探してたよね、選手はどうやってプレイするか。今までと違うし。柳沢(敦、鹿島アントラーズ)は確かに首が痛くて、試合に出るのは難しかったけど。ところがツー・トップがワン・トップになって、どうですか?
中西:ボクは何もないですね。昨日も言ったんですけど、毎日練習見てないんでスタメンに関しては何も言うことはないです。さっきの柳沢の首の調子とか、もしかしたら鈴木隆行(ゲンク)の体調が悪かったのかもわからないし。あのメンバーでやったのはよかったと思いますし。で、もしも三都主(アレサンドロ、清水エスパルス)のフリーキックが入ってれば、勝ってたと思いますよ。
宮澤:でも、入ってねえんだよ。
中西:まあね、それも結果論だから。ただ、途中交代に関しては疑問を持ちましたね。
宮澤:じゃあ俺が調べたこと、言うね。まずトルコが3バックでくるのか4バックでくるのかわからなかった。で、4バックで来たよ。日本のプランとしては三都主をトップちょっと下に置いて、小野(伸二、フェイエノールト)の前をいきたかった。小野の前をついて、左サイドを突きたかった。ところがそこに4バックのひとりがいた、それで、向こうのキーポイントは右サイドだから、そこでドン詰まった。もうひとつ、向こうは3ボランチ的にきたんだよ。日本のベンチの意見が分かれた。早くやめろ、これでは無理だ、向こうのスペースは空かないと。三都主はベンチと確認して、右サイドに流れだした。ヒデ(中田英寿、パルマ)の顔、見てみ。どういうふうに作ればいいのかって顔してたよ。
中西:でも、彼は感じて変えてましたよね、自分なりに。
宮澤:でも、その時点で変えられないのよ。だから、悔しいの。45分返せよってなっちゃうよ。日本代表のあの涙は先につながるけど、悔しかったんじゃないかと思うよ。
中西:わかります、悔しいですよ。選手は一番悔しいんじゃないないですか。当然、疲れもあったと思うし、プレッシャーもすごくあったと思う。言葉で説明できないような要因が選手には絶対あるんですよ。
宮澤:グループリーグで集中が1 回切れるかなぁ。決勝トーナメント進出が決まって。
中西:切れるってことはないと思いますけど。中田英寿選手にこの間、インタビューした時、「ちょっと雰囲気変わったっていうのは自分でも感じた」って言ってました。
青島:ボクも嫌な予感がちょっとしたのは、大会が始まる前にトルシエ監督が「目標はベスト16、決勝トーナメント進出」と言ったこと。選手もメディアもそれが目標って言ってたじゃないですか。それが叶ったらもういいじゃないっていうのが。だからチュニジアに勝った時に、よくやったって大喜びしましたよね。だけど、そこから先まで求める欲がまだ我々にないし、ビジョンもないし。代表だけじゃなくてボクらも含めてだけど、どこかホッとしちゃったっていうのがあったんじゃないかな。だから、気持ちが違ってましたよね、それまでの戦いとは。韓国の方がワールドカップに何度も出ている歴史もあるから、彼らの目標設定は「日本よりも何が何でも上にいく」ってのを大前提としてたよね。
川原:ヒディンク監督はトルシエ監督とはまったく逆の発言をしていて、ベスト16が決まった時に「お腹が空いてきた」っていう発言をしたんですね。「これでは満足できない。また、食欲がわいてきた、次はベスト8だ」っていう発言をしていましたから。
宮澤:スペイン戦の前もそうでしたよね。「俺はスペインのこと全部知ってるから、心配するな、やるだけだ」みたいな。
中西:選手をうまくコントロールするテクニックは、彼が前回オランダ代表をベスト4に導いた経験だと思うし、そこまでいってないトルシエ監督にそれを求めるのは無理だと思うんですよ。彼にはその経験が残念ながらなかったんですから。
川原:ワールドカップで経験のある監督っていうのが、日本が今よりも上にいくためには必要って感じましたよね、今回。だけど、今度監督になるかもしれないジーコさんは選手としての経験はあっても監督としての経験がないじゃないですか。
中西:ボクは当然、それは問題点だとは思うんですけど、テクニカルディレクターとしてフランスワールドカップで準優勝までいってるんですよ。そこまでの過程を見てるわけですよ、チームの真ん中にいてね。選手としても、こういう雰囲気だったら上までいけるんだっていうのを知ってるから、そういう要素はある程度持ち合わせていると思うんです。あと、日本代表に愛着があって、日本を強くしたいっていう淀みない気持ちが彼にはあると思いますよ。そういうものがあるから、悪くない選択肢だと思いますけど。
宮澤:まずね、攻撃的な監督になった。それは言えると思いますよ、ジーコでね。だから攻撃するために守りの大事さもわかってると思いますし、そこを鍛えるでしょう、アントラーズと同じようにね。それに、ベスト16という結果を出してホッとした時に、ホッとすることを許さない人だから。そのためにも、あのカリスマは厳しいと思うよ。
中西:負けたらクビにしてもらってかまわないって言ってますよね。
宮澤:オリンピックは俺やらないよ、オリンピック代表見てる暇はないっていう言い方だったらしいから。
中西:昔からやりたかったって言ってましたもんね。気合い入ってますよ。
宮澤:ただ、これはいろんな世論が出てくると思うよ。監督経験がないとか、叩き始めたら膨らんじゃうと思うけど、そこはやっぱりジーコさんでやってもらいましょうよ。ほとんど、決まりなんでしょ。
中西:ほぼ決まりなんですよね。
青島:でもやっぱり、それは誰がいい悪いということより、ひと言で言えばそういうのを歴史というんでしょうね。
中西:ほんと、そう思いますよ、経験と。韓国は6回出場して日本は2回目なんでね、4回違うということは16年分違うわけですから。
青島:1勝するのに48年かかってるんだから、韓国は。
中西:ただそれで一気に加速したとしても、それは間違いじゃないと思いますし。日本は逆に追いかける立場になって、よかったと思いますよ。悔しいっていう気持ちもわかりますけど、ボクはその方がよかったと思いますよ。
宮澤:あのトルコに負けたっていうのがあるんだよな。しつこいな、俺は。
中西:トルコ、強かったですけど、日本戦は最悪の出来でしたからね。
宮澤:最悪の出来で、10番のバシュトゥルク(イルディライ、レバークーゼン)もいなくて、あの動きを見てたら間違いなくいけると思った。
中西:ボクもあの試合見て、ベスト4にいけると思った。
青島:勝っておかなきゃいけない、勝てる可能性が非常に高い試合でしたね。
宮澤:次のセネガル戦のトルコはいいよ、あれはすごかった。嘘だろ、みたいな。
中西:ベスト16が決まった時に、ベスト4までの相手に優勝経験国がいなかったんですよ。それを見た瞬間に、これはベスト4までいけるんじゃないかと皆思ったと思うから、だから悔しいと思う。しかもその夜、韓国が勝ったからまた悔しいと思う。
宮澤:悔しいよ。
中西:ミシェルさんは監督の資格ないの?
宮澤:ないよ、俺にあるわけないだろ。一緒に戦っていくっていうのは好きだけど。
中西:監督の資格、取ってくださいよ。
宮澤:そしたら、ここに来らんないだろ。
会場:爆笑
中西:資格持ってて、ここに来ればいいじゃないですか。
宮澤:いや、ああいうところに行く時は、人を変えていかなきゃダメだ。特別な世界だよ。ヒディンクだって、散々マスコミに叩かれてたらしいもんな。4回ぐらい辞めさせろって。あげくには韓国人は体力がないとまで言った。そこだけは自信持ってたのに。体力がなさすぎるって、洪明甫とか黄善洪(柏レイソル)とか外されたからね。それで、最後は'98年のオランダ代表と同じくらいの水準まで持っていった。アメリカのゴールドカップの時に体力がないと言って、午前中トレーニングさせて午後試合で、2対0、3対0で負けるんですよ。ところが、記者会見では「今日はよかった、選手は伸びてる」って。
川原:でも、その後の親善試合とか練習試合でどんどん勝ちを重ねて、自信を持ってワールドカップに臨んだんですよね。
宮澤:すごい試合数だったよな。
中西:普通、代表チームって選手をかき集めてコンビネーションを高めていくじゃないですか。でも韓国に関しては、この1年間は代表チームとしてどうするかってことで、ずっとリーグもやってない。だから、韓国は代表チームのために時間を全部あげたんですよ、彼らの強化のためだけに時間を割いて。それを考えると日本はJリーグもやってたし、どっちがいいかわかんないですけど、結果的に韓国は代表チームとして体力面も含めて成長したっていうことですよね。
宮澤:だから、お腹すいた状態になったんだな。
青島:そういう言い方もすごい韓国らしい、ヒディンクさんらしいなって気もしますね。日本、韓国に共通することを考えると、韓国はヒディンク監督、そして日本はトルシエ監督、それぞれその国の方じゃない監督で好成績を上げた。それぞれ戦術に何をやったかとか方法論の違いはあったんでしょうけど、我々にも関係する話で考えると、今までのやり方とか自分の持ってるルールとか価値観だけでやってるとそこを抜け出せないから、もっと大きくなるためにはどんどん違うものを取り入れてみる。そういうことに取り組んだ、いわばひとつの成果が出たということじゃないかなと思うんですけどね。
宮澤:必要なことですよね。
青島:でもおもしろかったのはユースから出てる宮本(恒靖、ガンバ大阪)君や戸田(和幸、清水エスパルス)君が「もう一回トルシエとやりたいですか」って聞かれて、間髪入れずに「もういいです」って言ってましたね。あれが何を意味しているのか。
会場:爆笑
青島:さあ、今日は日曜日の午後にこんなにたくさん集まっていただきました。まだまだミシェルもテツも話し足りないという感じですが、残りの時間は質問に答える形でさらに会を進めていきたいと思います。どなたか、質問のある方はいらっしゃいますか。
客:宮澤ミシェルさんに聞きたいんですが、今回のワールドカップはブラッター(ジョゼフ、FIFA会長)が「最高じゃなかった」と言ったんですが、個人的には'82年から見ていて一番おもしろかったと思うんです。スター選手が早く大会から消えてしまいましたが、非常に接戦が多くてチームの差が縮まったという感じがしたんですが、どう思われますか? もうひとつは皆さんに質問なんですが、ベストゲームはどの試合でしたか?
宮澤:ワールドカップは夢のような時間を過ごさせてもらったし、初めて自国開催というのを味わいました。確かに強豪国が早々と姿を消したわけだけど、でもそういうのがあっていいじゃない、それも歴史だし。韓国戦のイタリアはすごくナーバスになって、肘打ちをバンバン入れてる。そういうイタリアの弱さも見させてもらったし。そういった面では強い国も感情を間違うとこうなるんだなっていう別の観点から見るとすごく楽しかった。ただ、強豪国は勝ち上がってくれるだろうって期待があったから、ちょっとがっかりした面もあった。やっぱり2週間早く始まったワールドカップで、コンディションが整わなかった面もあるんだよな。国外の選手は非常に厳しいリーグ戦があって、さらにチャンピオンズリーグに出た選手もいるし、ジダン(ジネディーヌ、フランス代表)のようにケガした選手もいる。FIFA会長もそういった面でうまくいかなかったって言ってるのか、それともレフェリーの問題なのか。ボクも外国人記者に聞いたけれども、日本側の運営はいい、でも韓国はっていう話も出てたし、一概には言えない。だから、ボクにとってのワールドカップはよかったかなっていうか、こういうのもいいじゃないかって思ってるよね。ベストゲームは、非常に見に行ったゲームが少なかったんで、スペイン対アイルランド。アイルランド魂が最後までグアーッと押してきたなっていうね。ただスペインもいい時はうまかったなぁと。あのゲームは語ると長くなるから、今度一緒に飲んで話そう。以上。
会場:爆笑
青島:気をつけたほうがいいよ、ミシェルは。テツのベストゲームは?
中西:ボクはセネガルのゲームが好きだったんで。
青島:さっきの質問にあったけど、セネガルの躍進は意外じゃなかったって言ったね。
中西:大会前に日本代表と試合しましたよね。その前から、こんな組織されたアフリカのチームって恐ろしいなって思いましたよ。
宮澤:個人技もあったよ。
中西:うん。ディフェンスも完全にオーガナイズされてたし、特に開幕戦のフランス戦に関してはパーフェクトでしたね。あの4人のディフェンスの前にトリプルボランチ並べて、相手のシステムを完全に押さえ込みましたよ。前もアンリ・カマラ(セダン)とディウフ(エルアッジ、ランス)とファディガ(カリル、オセール)と、これはすごいですね。自由なんだけど、ちゃんときれいに自分たちのポジション守りながらやってたし。シセ(アリゥ、モンペリエ)っていう選手がボランチの真ん中にいたんですけど、彼のディフェンスラインの前でのカバーリング能力、読み、指示……見ててほんと、あのチームはすごいと思いましたよ。
宮澤:それで、ディウフひとりでカウンターだもんな。行く行く。ああいうの、どういうふうにして育てるんだろうな。
中西:たぶん、誰も何も手つけてないんじゃないですか。
宮澤:そうか、見つけてきたんだな。
青島:ま、今日のミシェルのような状態だろうな。
会場:爆笑
中西:あと、セネガルと言えば、開幕戦のゴール後の喜んだシーンが忘れられない。ユニフォーム脱いで真ん中に置いて、回ってましたよね。何か呼ぶのかな、何かここに舞い降りてくるのかなって。あれ、ほんとボク、好きですよ。
青島:みなみちゃんは?
川原:私は先ほどから韓国のことばっかり言って申しわけないんですけど、やっぱり韓国代表チームの試合がすごく印象に残ってますね。特にポルトガルと戦った試合は、もうここで負けてしまったら先がないっていう気迫溢れるプレイ。その通りに結果も出して。
宮澤:その試合の裏でポーランド対アメリカをやってて、1対0で韓国リードしてたじゃない、そのまま終っちゃうとそっちの結果でアメリカが出てくるんだよ。俺、韓国で焼き肉食べながらテレビ見てたの、店で。店のおばちゃんが説明するんだよ、お客さんに。そしたら、今度は皆でいきなり韓国じゃなくてポルトガルを応援し始めたの。それくらい、アメリカに対してはオリンピックの時からしこりがあったんだな。だから、ゴールした時、あのスケートのパフォーマンスだよ。あれはすごいことだよな。
川原:あれは日本人的に見ると、あんなことはしない方がよかったっていう気持ちで見てしまうんですけど、韓国の国民はあれをしてほしいってすごく願ってたんです。
宮澤:そういうことなんだな。
中西:あれでも、安貞桓(ペルージャ)がスケートしたのはすごいなと思ったんですけど、その横で李天秀(釜山現代)がわざと両手を挙げて、ブロックされてるっていうパフォーマンスをしてて、あれアメリカの選手の真似なんですよ。
宮澤:いや~、それより俺は、それを見ていた中西さんがすばらしいと思う。
会場:爆笑
青島:まさか練習してるわけないからね。
川原:でも、あれは打ち合わせされてたみたいですよ。
青島:私もせっかくだから言わせていただくと、日本が決勝トーナメントを決めた試合、チュニジア戦を目の前で見て、関西の試合でね、森島(寛晃、セレッソ大阪)が出てきていきなり決めて、あの興奮はなかったですね。これがワールドカップの歓喜かという感じで。某テレビ局のプロデューサーと一緒だったんですけど、帰りの新幹線で座席のネットに入り切らないほど、チューハイとビールの缶でいっぱいにしましたもん、ふたりで。でも、同じようなおじさん、いっぱいいましたよ。だから、ゲームというよりはあんなに喜んだ瞬間はなかなかない。だって新幹線のホームでハイタッチしてるおじさんとかいるんですから。もう理解に苦しみましたよ、その光景にはね。ああいうのはいいなぁと思いましたね。さあ、もうひとつ質問をうかがいたいと思います。
客:トルシエ・ジャパンというか、日本代表について聞きたいんですけど。4年間やっててずっと疑問なんですが、ディフェンスの松田選手(直樹、横浜Fマリノス)、宮本選手、中田浩二選手(鹿島アントラーズ)の3 人とも、まあ、F・マリノスはちょっと違いますけど、クラブチームでは4バックをやってる選手なのに、代表に来ると3 人のラインディフェンスをやらされている。そのあたりのことを、ディフェンスの経験のある宮澤さんと中西さんに是非、おうかがいしたいと思いまして。
宮澤:いや~、わかんねぇな。
中西:んなわけないじゃん。
会場:爆笑
宮澤:特性だろうね。ラインを器用に動かさなきゃいけないというのと、中田は左サイドで左利きだっていうことで、高さには強い面もあるし。松田はディフェンスの中で一番世界に近いし、強さもあるのかなって感じもしますけど。
客:選手によって、4バックと3バックのやり方が違うということでギャップを感じる時って、やっぱりあるんですかね?
宮澤:うん、感じますよね。
中西:ボクは4バックできない。
宮澤:俺は4バックの方がよかったけども。代表にはあれだけ長い時間があったからね。
中西:長かったですからね。長いスパンで見てて、ひとつ下の世代からあのシステムを構築してましたから。時間がなければたぶん無理ですよ。
宮澤:無理だね。「日本代表の練習です」っていうのがワールドカップ期間中もニュースで入ってくるじゃない。4年もやってて、まだあの3バックのところ、前に行ってトルシエがボール持ちながら、「ほら、投げるぞ」って言った時、皆下がるんだから。スポーツニュース、そればっかりだよな。宮本、松田、中田、有名になったぜ。行ったり来たりやってるんだよ、テレビでずっと。あれ4年やってて、少しは見せ方考えないと。俺がちょっと同じことしゃべってたら、もう終わりだぜ。
会場:爆笑
中西:確かにね。でも、最終的には3バックじゃなかったと思いますよ、ボクは。シフトしてました、選手たちは。応用してたと思うし、それはやっぱり選手と監督が妥協点を見出して、4バックにしたり、5バックにしたり、3バックにしたり、臨機応変にやってたと思いますよ。
宮澤:今、選手が妥協点を見出していらっしゃるって、「選手が」って言いました!
会場:爆笑
中西:宮本選手も言ってたじゃないですか。
青島:ベルギー戦で2失点目くらった時にね、戸田選手(和幸、清水エスパルス)が宮本選手に怒鳴ったんでしょ。「簡単にラインを上げるな」って。試合の後、戸田君と宮本君が話し合って。これは宮本君だったかな、「トルシエはラインを上げろと言うけれども、自分たちのやり方でラインをあまり上げないようにした」ってテレビでも言ってました。
中西:戦術と勝利でどっちを取るか。勝利を取るということでラインを下げたんですよ。だから、ロシア戦はラインを下げてるじゃないですか、完全に。
青島:ちょっと意外だけども、トルシエの求めたことに無理があったということ? それとも選手が自分たちのものにして、最終的にいい形まで持っていけたということ?
中西:やっぱりプレッシャーかかってないところでラインを上げるっていうのは、サッカーの世界においてはナンセンスなんですよ。ロシア戦ではプレッシャーがかかってなかったんで上げなかった。プレッシャーがかかってれば上げますよ、当然。かける順番としては、まずボールにプレッシャーがいったら、ラインを上げるんですよ。いってないのに上げるっていうのは間違ってるんですよ、サッカーの世界としてはね。
宮澤:だから、チームとしてのクセがあったよね、確かに。
中西:まず、ラインを上げようっていうのがありましたね、ボールにプレッシャーかかってなくても。そういうのがまずあったと思う。
青島:段階的にそれを理解させるために言ったでしょう。非常に機械的に。
宮澤:ラインを上げることによって、ふたつ失敗を犯して、最後のトルコ戦ではセットプレイからやられて。皆、どのチームにも弱さもあるんだから、どっかに。
中西:最終的にはセットプレイをマンツーマンじゃなくて、ゾーンでやってるっていうことがすごく難しいと思う。実際、ボクも選手時代にやってて、セットプレイをゾーンで守るのはすごく難しいんですよ。それを最後までやってたっていうのは、ああなったのもひとつの必然ではあったかなと思いますけど。
宮澤:トルコ戦もあそこに、例えばワン・トップでもツー・トップでも鈴木が入ってたら、ニアサイドのコースは消せたんじゃないかなと思うんだ。
青島:それでは、最後の質問にさせていただきます。
客:質問ふたつあるんでけど、皆さんにお聞きしたいと思います。ひとつは日本代表の監督、もうジーコさんになるってことがほとんど決まってるみたいですが、ジーコさんも含めて今の日本代表に最もふさわしい監督、どなたがいいと思ってましたでしょうか? 個人的な意見をお聞きしたいと思います。それから、もうひとつは日本のサッカーのスタイルっていうのをそろそろ作らなければいけないと思ってます。世界の強豪国はそれぞれの文化や背負ってきた歴史もあって形がありますが、日本はフラット3とかゾーンディフェンスとかいろんなものをトライしてますけど、そろそろ作っていかなきゃいけない。今後の日本のスタイル、こんなサッカーをやってみたらいいんじゃないかという、自分の持っているサッカーの理想のスタイル、それを皆さんにお聞きしたいと思います。
宮澤:いい質問ですね~。
青島:大変な質問ですよ。それこそ、何度でもやって、なかなかこれっていうのがね。
中西:これが最初からテーマだったら、それだけで2 時間話せますよね。
青島:まあ、でも監督の問題は難しいですね。今、ほぼジーコさんでっていう流れの中で、ここでまた違う人の名前を挙げる難しさもあるでしょうし。
中西:でも、監督はボクたちが決められるわけじゃないと思うんでね。
青島:期待することと受けとめていただいて、ま、あるいは今後こういう人もありなんじゃないかということで、ミシェルどう?
宮澤:最初に4年として考えないで、まず2年だったらボクは逆に日本人の監督でもよかったかなと。すごく細かいところまでわかってるし。そうした時にジーコのような人が出てきて、もちろん日本のメンタリティも知ってるし、いい選択かなと。カリスマ性を考えた場合にもね。
青島:テッちゃんは?
中西:ボクはいつも言ってる通り、アーセン・ベンゲル(アーセナル監督)とストイコビッチ(ドラガン、元名古屋グランパス)。今でなくていいですよ、今はふたりとも「ない」って言ってますし。近い将来、やってほしいなと思いますね。よく、ふたりと一緒にいますけど、ストイコビッチはベンゲルのところによく勉強にもいってますし、すごく彼を尊敬してます。ベンゲルには話もいろいろ聞いてますし。彼ほど、世界のトッププロの選手に文句を言われない監督はいないです。
宮澤:代表監督、やらないのかな?
中西:若い時しかクラブチームの監督はできないって言ってます、体力的にも。だから、もう少し後になれば、代表監督もやるって言ってます。やるんだったら、日本でっていうのは選択肢の中でも大きいって言ってるんで。
宮澤:フランス代表からも真っ先に呼ばれてるよね。
中西:でもまあ、フランス代表は前も世界一のチームだったんで、今は違いますけど。
青島:トルシエがフランス代表監督にって話も出てますよね。
中西:でも、ベンゲルは今のところないですよ。2004年までは絶対ないですね。ストイコビッチはまだ監督の経験がないですけど。でも彼はね、プレイは天才だと思いますけど、理論は超論理的ですよ。
青島:テツはベンゲルの本も出してるもんね。
中西:出しましたけど。でも、本当にいつかやってほしいですね。彼だったら、ボクは決勝まで導ける可能性があると思いますね。ただ、ベンゲルはワールドカップの経験がないっていうのはちょっと怖いところですね。それは本人もわかってると思いますけど。
青島:みなみちゃんは?
川原:私は特に誰という監督は浮かんでこないんですけども。日本を引っ張っていってくれて、試合中とかにあまり興奮状態になりすぎないような監督がいいと思います。
青島:ジーコさんに関しては、ああこの手があったかというかね。やっぱり選手としての経験も十分ですし、鹿島アントラーズに関わってるわけで、日本に対する理解もあるという意味では、今のタイミングでは非常にいい方が出てきたのかなと思いますね。挙げたらいろんな方が候補に出てくると思うし、そういう可能性を日本としては探っていかなきゃいけないと思うんですよ。ただ、こうじゃなきゃならないという条件が、今回のワールドカップを通じて非常に明確になったと思うんですよ。というのは日本代表は、もう選手として決勝トーナメント進出を経験してしまった。それから、日本を離れて海外でプレイしている選手がいる。そこで経験してるものは、もう今までの日本の国内で指導されている方々が見聞きして感じてきてるものと、また全然違うレベルのものに触れてきてるわけで、選手のレベルが意識もフィジカル面でも高まっているわけですから、やっぱりそういう人たちを束ねるだけの人でなければ、もう代表の監督になれないと思うんですよね。それを条件にするならば、やっぱり海外でのプレイなり監督経験なり代表監督の経験ぐらいは最低限があって、日本に対する理解も絶対条件でないにしろある程度はあって、そういう意味でも海外を経験した人、あるいは外国人監督ってことにしばらくはならざるを得ないんじゃないかなと思いますね。ただ、将来的には間違いなく、もう今度は代表監督というのは日本人のワールドカップを何度も出てるような方々が候補としてずらっと並び、しかも外国人もいるなかで、さあどの人を選ぼうかっていう楽しみも出てくるんじゃないでしょうか。そう考えると、将来に対する夢も膨らむというかね。ま、しばらくは外国人の監督が現実的に続くんじゃないかと思います。さあ、それとこれからの日本のサッカーのスタイルはどうしようかっていうお話ですが。
宮澤:ワールドカップ、ずーっと見させてもらってると、'98年の時にはほんとにサッカーっていうものは、サイドチェンジをワンステップでドーンと逆サイドに入れるそのボールの精度とか見たら、これは真似できねえなっていうのがあった。今回はまだそのリカバーができてないのね。で、何が残ってんのかって考えたら、組織を崩していくドリブルっていう要素がある。これは少し自分の中で上がってきた。で、日本っていうのは両方持てるのかなっていう感じが少ししてます、器用にね。両方持てるのかな、持たなきゃいけないのかな、パワーでもいけないし。ドイツにもなれない、ブラジルにもなれないけど、ミックスでうまくいけばっていう可能性はあるんですよね。まあ、俺も半分半分だからね。親父がフランスでお袋日本で、いい加減だから、俺は。
青島:じゃ、テツは?
中西:今言ったフラット3とかゾーンとかマンツーマンとか、それは戦術であってサッカーではないです。日本が目指すべきサッカーっていうのは戦術ではなくて、ボクは論理立てて説明できるものではないと思うんで。ゲルマン魂ったって100 年ぐらいやってきてそうなったわけですから。サッカーっていうのは作り出すものではなくて、生まれてくるものだと思うんで。自分たちでこうしようって思って、こうなっていくものではないと思うんですよね。それは段階を経て、経験を経て、ワールドカップに出場したり、出場できなかったり、そういうところで生まれてくるものだと思うんで、まだまだ時間がかかると思います。それが作れたら、たぶんワールドカップで上までいけますよ。でも、まだ作れる状態じゃないと思うんですよね。具体的にどういうサッカーかっていうのは、それに近いものについては、ミシェルさんがおっしゃった通り、ブラジルでもないしドイツにもなれないし、じゃあどうするのかっていうことですよね。そのために日本代表が目指すべきスタイルっていうのは、ミッドフィルダーにいい選手が多いわけですから、そういう才能をいかにしてバランスよく並べるかっていうところにあると思うんですけど。あとは日本人の勤勉な部分っていうのは、ヨーロッパ人の中でも忘れられてる、ある意味いい美徳だと思うんで。そういうところを最大限に活かした、人のために自己犠牲の精神を持ったサッカーというのも、その中のひとつの要素にはなると思いますが、それがすべてではないです。
宮澤:じゃあ、ジーコはわかってるな。
中西:わかってると思いますよ。そのわかる部分っていうのはプラスアルファの部分で、そこをわかってない監督が来ると、まず理解するのに時間がかかっちゃうんですよね。そういう意味ではサッカーにダイレクトで入れるっていうのは、すごくいいタイミングだったとは思いますねけど。サッカーに関しては、質問にあったように戦術じゃなくて生まれてくるものであって、これから見つけ出していく、それは選手によっても変わってきますし、監督によっても変わってきます。ただ、何十年も経った後に日本はこういうサッカーだっていうことはたぶん言えるようになってると思います。それぐらい日本のサッカーは急速に進歩してると思うんで。作らなきゃって言って、作れるものじゃないし。
宮澤:今ももうきてるもんな。中盤にタレントがいるっていうね。
中西:そのへんは瞬発性があってクイックなところやキックがすばらしいとか、勤勉性があるとか、そういうところだと思うんで。それがどういうふうにミックスされて、どう構築されるかっていうのは後ほど、後から出てくると思うんで。今、これを目指そう! っていうのはボクの中にないんですけど。ボクはそういうふうに理解してます。
青島:なるほど。さあ、みなみちゃんは?
川原:私が語ってもという感じはあるんですけれども、今の日本の組織的なうまさのあるサッカー、スピードのあるサッカーを続けてもらって、希望として、ドカンとしたフォワード、ドカンとしたストライカーがほしい、というのは感じました、今回の大会で。
宮澤:それなんだよな。
中西:でも、それは日本の社会というもの、個人主義を許さないこの風土の中で、なかなかまだ厳しいと思いますよ。
川原:そうなんですよ、いろんな背景がありますからね。
青島:今、御三方が言ったことを総合すると、こういうことになるんでしょうね。ブラジルだって、まずあのサンバのリズムがあって、そういう風土の中で、生活の中で生まれたもの、体付きなりそういうものが作るサッカーがあるでしょう。日本は、我々が普段生活している中で、好きなものとか嫌いなものとか、そういうものの中から自然と形作られるものだと思うんですよね。でも、なんか見えたような気がしますよね、今回のワールドカップで。テツが言うように中盤の選手、特にボランチの選手の運動量の多さ、非常に献身的に走り回る、フォワードでもほんとに戻ってきて守備するっていうような献身性っていうのは我々の中にもあるし、ボクらそういうの好きですよね。
中西:好きですね。
青島:だから、皆そういうふうにがんばろうやっていうような戦いが好きで、フォワードでずーっといつまでも残ってるようなやつを、お前戻って来いって、なんかそういうのを許さないようなのところ、我々の中にありますよね。そういう中で見えてくるもの、今回の大会の中で形作られたものがあると思うんです。
中西:絶対、そうですよね。ブラジルなんかサンバやってて、ひとりでサンバ踊るわけじゃないですか。しかも、裏リズムなわけですから、盆踊りのぼーんぼーんっていうリズムじゃ、あのドリブルは生まれなかったんですよ。そこは音楽とも関連性がある。
青島:たぶん、この質問の意味はそういうものを我々早く作りたいよねっていう思うだと思うんですよね。日本のサッカーってこういうものだ、ボクらが好きなサッカーってこういうものだっていうのを作りたいよね、見たいよねっていう思いが今の質問だと思うんです。ボクらもそうだと思います。ただ、それは時間がかかることだし、こういうワールドカップに出ていろんな戦いを積み重ねていく中で、ボクらが納得いく形が出てくるんだろうと思うんでね。それは答えを急がずに、これからじっくりと、皆で見つけていくのが、たぶんワールドカップを見る楽しみでもあるんじゃないかと思います。本日のトークバトル、そろそろお別れの時間がやってきました。ここで最後に会場に来ていただいた本日のゲストからひと言お願いしたいと思います。それではまず、川原みなみさん、ひと言お願いします。
川原:今日は大切な休日の何時間かを共有できて、ありがとうございました。これからも皆さんと一緒にサッカーを楽しんで応援していきたいと思います。
中西:これからサッカーが文化になっていくためには今までサッカー知らなかった人をどんどんサッカー好きにしていくことが非常に大事なことだと思います。ネズミ講作戦と言ってですね、ひとり5 人はJリーグに連れて行って、説明してあげて下さい。おそらく皆さん、Jリーグのことをよくわかってらっしゃると思いますから。4年後のワールドカップに向けて、日本サッカーが歩むべき道というのは、にわかサッカーファンと言われてる方々が日本のサッカーに対して意見を言うことだと思うんでね。意見を言っていけば、叱咤激励された選手たちがそれに応えようとしてがんばると思いますし、それによってドイツ大会では皆さんもすごく嬉しい思いができると思うんで。なんとか、身の回りの人たちをサッカー好きにさせてあげてください、お願いします。
宮澤:最後まで笑いが絶えなかったですけど。ワールドカップが終わって寂しい気持ちもありますけども、サッカーはずっと終りませんし続いていくことだし、今、中西くんが言ったようにJリーグも応援していただきたい。今度は予選から始まります。予選を勝ち抜かないと、ワールドカップに出られない。そのためにはJリーグのレベルもぐっと上がっていかないと、2006年にはつながっていかないと思います。ご声援をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
青島:長い時間に渡りまして、本当にありがとうございました。日本と韓国での共催の大会は終わりましたけど、皆さんが今、感じてることと全く同じだろうと思います。終わったんですけど、実はすごいものが始まったという気がします。次の大会が楽しみですし、また今回サッカーを見ることでほかのスポーツを見る目も刺激されたような気がします。皆さん、楽しんでいただけましたか?
会場:拍手
青島:本当にどうもありがとうございました。また次の機会にお会いしたいと思います。それから、これは最後に言っておいた方がいいな。『ぴあ』が30年でございます。我々も大学生の頃からお世話になりましたけどもね、引き続き『ぴあ』の方もご愛読お願いしたいと思います。ということで、本当にどうもありがとうございました。

構成・文:CREW
撮影:正井玲子