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豪華ゲストたちとともにあらゆるスポーツについて、熱く語り合ってきた「ぴあトークバトル」。今回は2月3日に行われた「どうなる!? 日本ラグビー ~2002年を振り返る~」をテーマにしたバトルの模様をそのままお届けします。

ぴあトークバトル
スポーツ快楽主義2003 Vol.23
「どうなる!? 日本ラグビー」 

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前編


<ホスト>
中西哲生(スポーツジャーナリスト、左)
'69年、愛知県生まれ。'92年に名古屋グランパス入り。'97年から川崎フロンターレでキャプテンを務め、2000年にJ1昇格を果たした。その後引退し、現在はスポーツジャーナリストとして「ズームイン!!SUPER」(日本テレビ系)、「ニュース23」(TBS系)などに出演中。

<ゲスト>
向井昭吾(日本代表監督、左から2人目)
'61年10月生まれ。新田高、東海大を経て東芝入社。日本代表FBとして87年の第1回ワールドカップに出場。現役引退後の'94年から東芝府中の監督を務め、'96、'97、'98年度にはチームを日本選手権3連覇へ導く。その手腕が評価され、2000年12月に日本代表監督就任。

箕内拓郎(日本代表主将、NEC、右から2人目)
'75年、福岡県生まれ。八幡高校から関東学院大へ進み、4年時にはキャプテンとしてチームを大学日本一に導く。NEC入社1年目からレギュラーとして活躍し、2002年、日本代表初選出ながらキャプテンに任命された。オックスフォード大留学など海外経験も豊富。

堀越正巳(立正大学ラグビー部監督、右)
'68年、埼玉県生まれ。熊谷工業高、早稲田大で数々のタイトルを獲得した後、神戸製鋼に入社。1年目からスクラムハーフとしてレギュラーを獲得、神戸製鋼のV4からV7に貢献。'98年、神戸製鋼を退社、立正大ラグビー部監督に就任。日本代表キャップ数は26。


中西:皆さんこんばんは。このトークバトルはいろいろやってるんですけど、僕はこれまでサッカーの担当ばかりだったので、ラグビーは初めてなんです。すごく楽しみです。会社帰りの方もいらっしゃいますし、お休みの方もいらっしゃるんでしょうけど、なんかすごく厳粛な雰囲気で。もうちょっと盛り上がってくれていいんですよ。今日の僕はサッカーで言うとサポーターですね、その立場からラグビーについて聞きたいことがいっぱいありすますので、よろしくお願いします。それではまず、トークバトルには2 回目の登場です。早稲田大学から神戸製鋼、そして日本代表で大活躍。現在は立正大学ラグビー部監督、堀越正巳さんです。
会場:拍手
中西:どうも。僕、今日初めてお会いしたんですけど、学生の頃からよくテレビで見てたんで不思議な感じだったんですけど。
堀越:ありがとうございます。
中西:今日は2 回目ということで。
堀越:はい。2 回目でたいへん失礼なんですけど、こんな恰好で来てしまいました。
中西:全然大丈夫ですよ。恰好は関係ないですよ。
堀越:一応言い訳だけ。1 回目はスポーツカフェというところでちょっとビールを飲みながらやるのでという話を聞いて行ったんです。で、2 回目は知らずにそのまま。
中西:カジュアルな、ビールを飲む雰囲気で。
堀越:次のお2人に見られて、すごい申し訳ないです。
中西:そうじゃないですよね。今日はよろしくお願いします。
会場:拍手
中西:続いて、今年も日本代表キャプテンです。NECラグビー部主将、箕内拓郎選手です。
会場:拍手
中西:初めまして。本当かっこいいっすね。おっきいし。僕はNECの試合は当然見てますし、テレビで見ていて。すごい突進力もあるし突破力もあるし、体が大きかったらああんなに動けないだろうって。今日初めて会ったらこんなに大きいじゃないですか。それであのフットワークがあるっていうのは何か秘密があるんですか。
箕内:いや、ボールを持って走るのが好きなんで。
中西:昔から? それが一番の理由なんですね。今日は日本代表の主将で、隣にこれからお迎えする日本代表の監督がいらっしゃいますけど、あまり気になさらず、思う存分話をしてください。お願いします。
箕内:よろしくお願いします。
中西:そして、最後です。トークバトルは2 回目の登場です。ラグビー日本代表、向井昭吾監督です。
会場:拍手
中西:先ほど控室でお話をしたんですけど、日本代表の監督の方がトークバトルに来ていただけることはありえないことです、サッカー界ではまず。トルシエ監督が来ることもありえませんし、ジーコ監督が来ることもありえませんので。本当にもうスポーツ界としては画期的なことなんで、今日はいろいろとお話を伺いたいと思います。ざっくばらんにお話をしてもらって、大丈夫ですか。
向井:いや、ざっくばらんに隠して。
中西:隠して!? よろしくお願いします。
会場:拍手
中西:ということで今日はラグビーなんですよね。「2002年を振り返る!」というテーマが設けられていますが、まずはテーマ通りいきたいと思うんですが。堀越さん、今年は自分の母校である早稲田大学が久しぶりに、日本一になったときだけ歌える『荒ぶる』を歌えたということですけど、今年の大学ラグビー界を振り返ると、それを抜きにしては語れないと思うんですよ。早稲田は自分の中でどうでしたか。
堀越:去年から清宮(克幸)監督に代わって、その清宮監督がやりたいと思っていたことが学生に伝わって、それが2 年目にやっと実った。関東学院という強敵がいたからこそ、いいラグビーができたんじゃないかと思います。学生たちが、清宮監督の言うことを随分理解して、それを体で表現できたんじゃないかなと思います。

中西:今言った、清宮監督が表現したかったことというのは、具体的に言って、何かわかりやすいものはありますか。
堀越:基本的にはサントリーさんがやっているようなラグビーに近いものだと思うんですけど、それを早稲田風、清宮風にアレンジした。例えば当たるとか、コンタクト、よく今ラグビー用語で「接点」って言われてるんですけど、その接点のところで、負けない、強くいく、というところが去年からずっとやってきて、2 年目でできてきたんじゃないかと。本当に痛いラグビーができてきたんじゃないかなと思います。
中西:そのサントリーのラグビーですけど、後ほど社会人ラグビーの話もするんですが、具体的にはサントリーのラグビー、早稲田のラグビーってどういうラグビーなんですか。
堀越:その上をいくと、オーストラリアのラグビーになってくるかと思うんですけど。
中西:それは一般的に言われていることですよね。
堀越:ボールを回し続けて、ポイントから少人数でボールを出して、相手のところにボールを運んでいく。いくつかのパターンをしっかり作りながら、そしてそこでゲインを切っていく。ゲインを大きく切っていったら、自分たちのイマジネーションをつかみながらトライに結びつけていくところが、僕が思っている早稲田さんとか、サントリーさんのラグビーじゃないのかなと思っています。
中西:これは向井さん、そういうことでよろしいんですかね。パターン・ラグビーと言われてますけど。
向井:そうですね。崩しのポイントが1 つ2 つ3 つぐらい考えていて、そのあとは、今堀越君が言ったように、トライゲッターにボールを渡す。サントリーなら栗原(徹)君であったり小野澤(宏時)君に渡して、フィニッシュまで決めていくラグビーだと思いますね。
中西:いくつかパターンを作っておくってことなんですか。
向井:そうですね。
中西:選択肢を決めておいて、その瞬間瞬間一番いいパターンを選択していくということでよろしいんですか。
向井:決めておくと速く動けますから。
中西:みんなの反応も良くなるし、展開も速くなるということですか。それが早稲田が今年強かった理由というか、まあそれプラス早稲田流が入ってくると思いますけど。
向井:やはり関東学院に近づいて、追い越したかどうかはわかりませんけど。
中西:基本的には関東学院とは体重差もあったし、力強さも関東学院の方が上だと言われてましたけど、そういった中でも早稲田が勝てた理由っていうのはなんなんですかね。
向井:一つは、これは私もすごくやった方がいいと思うんですけど、早稲田の選手はサントリーに出稽古に行ってるんですね。
中西:あぁ、月に一回。
向井:そうですね。それはどういうことかというと、私も箕内君でも海外に行って試合をして帰ってくると、日本人のプレーヤーが小さく見えるという錯覚というかそういう部分で、自分が強くなったとか大きくなったという感じを受けるんですね。それは社会人とコンタクトしていて、学生とやったらコンタクトが弱いと感じる。その弱いと感じる部分はどういうところにつながってくるかというと、今までは学生同士でやっているときは、無理にパスして通らなかった部分が、無理にパスしても、自信を持ってやると通るんですよ。そういう自信を植えつけたっていうのが、勝ちに向けたんじゃないかと思います。
中西:箕内さんは後輩が負けて残念だったと思うんですけど、早稲田の強さはどんなところだと感じますか。
箕内:先ほど言われたように、サントリーのラグビーですかね。それを学生のレベルでやられちゃうとほかの大学には太刀打ちできないと思いながら試合を見てたんですけど。
中西:ラグビーの形がワンランク上だったという感じですかね。
箕内:そうですね。去年も見てたんですけど、今年は特に学生が意志疎通されてて、みんながラグビーを理解している感じをすごく受けたんですけど。
中西:それから、今年は環境も変わりましたよね、早稲田は。それは大きいんじゃないですか。
堀越:そうですね。僕も3 度行ったんですけど、新しい寮がメチャクチャきれいなんで、僕たちの頃とは全く違う。で、グラウンドが芝生になって。ただこれは、あっという間になくなってきたみたいで、僕が初めて行ったときもチョロチョロとしか生えていない状態だったんですが。
中西:ラグビーで毎日使うと厳しいものはありますね。
堀越:そうですね。ちょっと無理がありますね。関東学院さんみたいに3 面ちゃんと芝生のグラウンドがあって、回しながら、養生しながらやらないと難しいなと思いますね。
中西:清宮さん自体は、それ以外に何かプラスαはしてたんですかね。
堀越:僕も清宮さんの一つ下でやってましたから、なんか訳のわからない魅力があるんですよ。
中西:訳のわからない魅力? なんですか。
堀越:言葉では言いようがない。
中西:カリスマ性みたいなものですか。
堀越:いい言葉で言うとカリスマ性だと思うんですけど。
中西:いい言葉ってことは、どういうことなんですか。清宮さん自体の人間的な魅力というところ?
堀越:もちろんそういうところは。それがカリスマなのか僕にはよくわからないんですけど。実は立正大学の監督になってからいろいろと悩むところがあって、清宮さんが監督になる前から、何度かお話をしに行ったりとか、甘えやすいというところがあって。なんか兄貴みたいな感じで。
中西:そういうときは、どのように清宮さんはお答えされたんですか。
堀越:ボソボソって。それでもう、安心して。そういうことをしなくちゃいけないんだなって。割と簡潔にものを言ってくれるんで。「それはな、えー・・・」って感じ。
中西:それって答えになってないじゃないですか。
堀越:それはそれで、「あ、そうなのかな」って。僕が質問して、答えがいいとか悪いとかってことなんで、だからどうだこうだっていうのはあれなんですけど。
中西:大学ラグビーの主流はこれから早稲田がやっているようなラグビーになるんですか。
堀越:一概にはなるかどうかは。それぞれの監督の考え方次第だと思いますので。ラックが優位になってやってますけども、あるチームはモールを優先してやってもいいと思うんですよね。それは監督が考えることだと思いますんで。もちろんこれからは大学生だけでなく、高校生も早稲田のラグビーを目指すところも出てくるかもしれませんけど、なかなか高校生ではできないようなレベルではあると思うですが。
中西:向井さんは、大学のラグビーは一概にそうなるとは言えないということでいいですか。
向井:そうですね。まあそれぞれの監督から、どういうラグビーをするかってことを言っていただければ一番いいんですけど。どうなんですかね。やはり日本のラグビーというのは明治と早稲田という形で縦と横みたいなところがあったんですけれども。どこの国に行っても私が思うのは、同じ教え方をするんですよね。これからワールドカップ、次の2007年で決勝トーナメント進出を狙っていくのであれば、その一本というかベースを作っていきたい。日本人の特徴は何かといえば、手先の器用さです。パスの練習はオーストラリアの方が多くやってますが、小さなエリアの中のパスだったら日本人の方がうまいですよ。そういうところを特徴として持っていく。さらに、日本のプレーヤーは足が速いです。大畑(大介、フランス・モンフェラン)選手も足が速い。小野澤選手も速い。栗原選手、今回選んだ四宮(洋平、ヤマハ発動機)選手も足が速いと思うんですけど、400 メートルとか100 メートルを走りきれる選手は、私はいないと思う。どういうことかというと、ゴール前でボールをもらって、ノーマークで走りましたら、必ず向こうの外国人にコーナーでつかまってしまうとかですね。心臓というか、動かす“トルク”も小さい。身体的に小さいので、走りきれない。ハーフラインまで行って、そこからの細かな動きとスピードは絶対日本人が上ですよ。
中西:そうですね。
向井:そういうようなところを特徴としてラグビーをしますよというのを全国、堀越監督のところも、早稲田にしても、どこにしても同じようなことをします。その代わり、それにエッセンスを加えるのがジャパンです、というものがないと。非常にジャパンの戦いはやりにくいんじゃないかと。それがあることよってコーチ陣も指針を持っていきやすいと思います。
中西:ベースから作っておいて、そこからどうするかってことですよね。早稲田の戦い方とサントリーの戦い方の話をしましたけど、もっとサントリーの戦い方の話も聞きたいんですけど。サントリーがチャンピオンになって、まだ日本選手権は残っていますけど、箕内さん、サントリーと戦ってやっぱり勝てないなって思う部分はどこなんですかね。
箕内:そうですね。実力的にちょっとというのはあったんですけど、できればセットプレーでもっとうちの獲得率を増やして、サントリーの攻撃時間を減らしたかったんですけど、常にディフェンスに回ってしまって。他のチームはわからないんですけど、うちのチームはおかしなところがあって、攻められるのが快感じゃないですけど、みんなディフェンスが好きみたいで。みんなすごく気合入っちゃって。僕が止められないくらい熱くなっちゃって。逆にアタックでボールを持つと何をしていいかわからない。そういう感じになっちゃうんですよね。僕もそうなんですけど、うちのチームはサントリーの攻撃は好きですね。相性はいいと思っています。
中西:準決勝で敗れましたけど、サントリーに関しては苦手意識はなかったですか。
箕内:そうですね。うちがやっているディフェンス・システムはサントリーの攻撃にマッチしてるし。すごくやりやすいと思います。
中西:そういうチームを相手にして守るのが得意というのもあるんですね。
向井:そうですね。サントリーさんはやっぱりスピードがあるし、NECさんや東芝さんが負けたのは、やっぱり最後のコンタクトフィットネス、当たって起きる、当たって起きるところが優れていたんじゃないかと。それがどこのチームよりも上。そこじゃないのかなって。
中西:鍛えられてるってことですか。
向井:積み重ねでやはり。皆さんはフィットネスというと走ることだけだと思うんですけど、後半20分過ぎから、俄然サントリーの得点能力が上がるというのは、相手が落ちて、自分たちだけは同じペースという形なんだと思うんですよね。
中西:見てるとサントリーは必ず、後半になると逆転するっていうイメージがありますもんね。
向井:その部分で、後半20分過ぎで、自分たちのプレーが正確にできるようになるからっていうのを自分たちの指針として持ってるから。
中西:サントリー自身が一番自信を持っているところはどこなんですか。フィットネスの連続攻撃という部分においても負けない持久戦の強さがあるんですか。
向井:サントリーのラグビーというのは、50点取られたら60点取るというラグビーですから、最後のところでは相手がコンタクトフィットネスが落ちてくるからそこで決める形。80分間のゲームプランということになってくると思います。
中西:堀越さんはどう見てますか。
堀越:僕もそう思います。早稲田もそれと一緒で、常に清宮さんも、ギアチェンジじゃないですけど、後半の20分からということで。
中西:確かに早稲田も後半ね、ぐっと点差を広げることが多かったですよね。
堀越:はい。その辺はぜひ立正大学も見習いたいと思います。
中西:練習の質を向上させるしかないですか、向井さん。 
向井:まあ、そうですね。短く集中してゲームに即したような練習と、あとゲームを多くすることじゃないかと私は思っています。
中西:試合を多くする。試合の中でトレーニングを上げていく。
向井:そうですね。試合のイメージを作って練習に落とし込むんですけど。試合ほどいい練習はないんですよね。
中西:そりゃあそうでしょう、サッカーもそうですからね。
向井:なかなか練習で試合のシチュエーションを作れって言われても非常に難しくてですね。やはりゲームでタックルしたらすぐ起きて、次に新しいターゲットを見つけて走るっていうのは、練習では作り出せますけど、本当に自分がタックルしないと次走られてしまうという状況というのは、なかなか作りづらいですね。
中西:意図的に作るのは不可能ですよね。
向井:そういうふうなことで、試合を多く組むっていうのは一番大事なんじゃないかなと。
中西:サントリーはたくさん試合を組んだんですか。
向井:かなり組んでますよね。あとはモチベーションが昨年、一昨年と、海外のチームとゲームができるということでかなり上がりましたね。チャンピオンになったので、次は何がターゲットにしようかと。ウェールズ代表とやって勝ったりとか、サラセンズ(イングランド)とゲームができて、よりモチベーションが高くなった。僕たちは日本での優勝ではなくて、世界にチャレンジしていこうと。なおかつオーストラリアで合宿すれば、自分たちが大負けするようなチームとゲームをやったりという形で、モチベーションを高く持っていける。自分たちは日本のチャンプではなくて、よりもっと上を目指しているという。
中西:日本で勝つのは当たり前。
向井:そうですね。そういう持っていき方がやはり強さに。
中西:今シーズンの戦いを見ていて、社会人の方はサントリーが勝ちまして、これから日本選手権がありますけど、来年のトップリーグに向けての戦いが非常に熾烈だったと思うんですけど。その中で箕内さんはトヨタ自動車と同じ組に入ってね、トヨタがトップリーグに出場できないってことになったんですけど。一つこれで時代が変わるなっていう感覚はありますか、来シーズンに向けて。
箕内:そうですね。非常に申し訳ないことをしたなと。
中西:そんなことはないでしょ。
箕内:まあ、うちが東日本リーグで7 位に入って。
中西:そうですね。グループ分けのときに東日本7 位っていうのが・・・
箕内:場を荒らしちゃったかなと。ワールドとトヨタ自動車には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
中西:でも、東日本の7 位ってなんだったんですかね。
箕内:僕もよくわからないですけど、チーム自体ちょっと元気がなかった。
中西:箕内さんもケガがあって。
箕内:そうですね。僕もケガをしていたんですけど、ケガ人がちょっと多くて。ちょっと練習の質も落ちたりして、パフォーマンス的に低かったですね。
中西:箕内さんは前年に日本代表に選ばれて、代表に行くことも多かったじゃないですか。それでチームを離れたっていう影響は多少あったんですか。
箕内:それを言い訳にするのはちょっと。チームを離れたのはちょっとした原因の一つかなと。でも、原因はもっと他のところにあるのかなってみんな思ってるんですけど。
中西:日本代表に行って、成長した部分というのはあったんですか。
箕内:それもあると思います。
中西:それをチームに還元できるようになってきたのは東日本の後だったということなんですか。
箕内:チームに還元できたかどうかはわからないですけど、個人的に東日本が終わってから調子が良くなってきた、ケガが治ってきた。その辺で僕としてはチームに貢献できたかなって。
中西:日本代表に行ってやってたことと役割が違ったという部分はあったんですか。
箕内:そうですね。どちらかというと、日本代表はラックが中心で、NECは時代に反してモール中心にしてやっているんで。
中西:でもそれが悪いわけじゃないと思いますけど。
箕内:まあ、そういう戦い方もあると思うんで。ちょっと戸惑った部分がありました。
中西:ポジションが多少違うというのも、自分としては影響があった。
箕内:いい経験になるんですけど、個人的には。
中西:それでまあ、予選リーグで各組3 位までに入れなかったトヨタ自動車がトップリーグに入れない。向井さん、トップリーグに向けて、今年の戦いは熾烈だったと思うんですけど。
向井:そうですね。来シーズンからトップリーグがありまして、昨年の暮れからずっと私もゲームはかなり見たんですけど、それが非常に100 パーセントというか、厳しいゲームが多かったですね。
中西:今まで100 パーセントじゃなかったとは言いがたいんですけど、本当にギリギリの試合って多かったですよ
向井:非常に。NECさんは私も合宿を見に行ったんですけど、合宿のときはすごく強かったんですよ、8 月。開幕の2 週間前ぐらいは強くて。これはもう東日本リーグで優勝するんじゃないかと私は思ってたんですけど。そのあと本当にケガ人が主力選手に出て、そこからって感じでしたけど。どういうことかというと、各チームともやはりベストなゲームをしないと勝てないようなゲームが多かった。
中西:ぎりぎりだったんですよね。
向井:だと思いますね。逆に他のチームもケガ人が続出して、ゲームをやるともっと下位に行ったかもしれませんし。そういう本当にぎりぎりのゲームが多かったということですよね。
中西:堀越さん見ていて、今回12チームが決まりましたけど、トヨタ自動車は残念ながら漏れましたけど。順当な顔ぶれなんですかね。
堀越:順当ではないと思うんです、トヨタ自動車が外れたんで。
中西:トヨタ自動車以外は。
堀越:ただ、見ている方としては、非常に楽しかったなと。
中西:堀越さん的に見ると。やってる方からすると相当しんどかったと思いますよ。
堀越:すごくいやだなとは思うんですけど。僕は熊谷にいますんで、すぐ近くに三洋電機さんがあるんですね。東日本リーグが始まって、最初NECさんに勝ったので三洋電機強いぞって思っていたら、だんだん試合が進むにつれて、三洋電機が強かったのか、NECさんの力がそのとき弱かったのかわからなくなって。いろんな駆け引きがありながら、結局7 位だったけれども残ってた。三洋電機さんは一応残ったけれども出れない。時間の経過とかいろんな関係で見ていけたので、第3 者としては非常に楽しく見れました。
中西:やっぱりレベルアップにつながるんじゃないですか、ぎりぎりのところで戦っていくのは。
向井:それが本当に狙いですね。きわどいというか、競った試合を多くして、試合数を多くする。先ほどからトヨタ自動車さんが落ちたと言いますけど、間違いなく来年上がるんですよ。下の2 つは自動入れ替えで、その上の2 チームは入れ替え戦がありますんで。もしかしたら4 つ入れ替わる可能性があるわけですね。ということは、間違いなく上がるチームというのは、下のリーグを見ても、戦力を見ても、トヨタ自動車さん。先ほど言われたように、厳しいゲーム、気の抜けないゲームがトップリーグになるともっともっと増えるんじゃないかと。
中西:Jリーグも、J1 、J2 制になって、入れ替え戦はないですけど、入れ替えがあるんでね、そういう意味でものすごくぎりぎりの戦いをしているサッカー選手が増えたんで、これで一気に首位から下位のレベルがグッと上がったんですよね。特にJ2のレベルが上がった。そういことが今年の秋、来年も行われていくわけじゃないですか。これで日本全体のレベルも上がると思うんですけど。
向井:それを狙ってのトップリーグということですから。そこをより上げていきたいなと思いますから。
中西:選手としては疲れたという状態ですかね。
箕内:そうですね。でも試合がたくさんできるのはうれしいんで。あとはケガとか、チームをベストな状態に作っていくのは難しいと思うんで。
中西:そして、来週から日本選手権がありますけど。堀越さん、大学生と社会人、なんとか大学生が勝つっていう姿を見たい気がするんですけど、厳しいですかね。
堀越:厳しいと思いますね。さっきもちょっと話したら、NECさんはどうやら予想メンバーでは外国人選手 (ジョージ・コニア、グレン・マーシュ) がバリバリ出るそうなんで、関東学院はかなりキツイかなと。
中西:後輩を潰しにかかるかなと。
堀越:はい。あと、早稲田もリコーとやるんですけど、やはりいい試合をしてほしいし、トライもいくつも取ってほしいんですけど。今リコーはディフェンスが整備されてきているんで、そのディフェンスを崩して、そしてフルバックのオズボーン(グレン)を止めるのは非常に大変なんじゃないかなと。もちろん、他にもいい日本の選手もたくさんいて、非常に厳しいんじゃないかと思います。
中西:まあ、でも最後の大学生日本一は堀越さんがいた早稲田大学。
堀越:負けたのは向井監督の東芝府中(1988年第25回大会) 。
中西:その話は控え室からずっと言っていますから。
堀越:それがあるから精神的に優位に立っているんですけど。
中西:向井さん、なかなか大学生が社会人に勝てる時代じゃなくなったってことですよね。
向井:どうなんですかね。昔は学生が走って、隙ってものがあったんですけど。どこのチームも社会人は外国人コーチが入ったりとか、外国人選手が入ったりして、フィットネスについてもかなり走っている。で、私たちの時代は、負けたのはやはり、ケガをしたら酒を飲んで治せという時代もありましたし、痛ければ飲んでりゃ治るよみたいなこともありましたし。遠い昔は、水を飲むなという時代ですから。そういう面でも体のケアとか気分の持っていき方というのは社会人は非常に進んでまして。学生が進んでいないとは言いませんけど、そういう部分でそれに集中してチームを作ってきて形ができて、なおかつ隙が少しずつなくなってきている。大学生は1 年1 年メンバーが変わりますから、そういうリスクも背負いながらやっているので、非常に難しいのではないかと。だけど大学生がトライを奪うというのを、日本選手権では見てみたいなと。
中西:箕内さんは後輩と対決しますし、先ほどお話があったように、外国人選手も出られるということで。叩きのめすという感じなんですか。
箕内:逆に出さないとヤバイかなと。
中西:そんなことはないんじゃないですか。
箕内:大学生と社会人は力の差があると言うんですけど、うちの関東学院のフォワードとか見てると・・・
中西:力がありますよね。
箕内:いい勝負ができるフォワードが揃っているんじゃないですか。
中西:逆に社会人の立場からすると、気を引き締めてかからないと痛い目に遭うぞという可能性も十分考えられる。
箕内:そうですね。あんまり惨めな姿は見せられないんで、後輩には。
中西:堀越さん、日本選手権の見どころはやっぱり、学生がどれだけやれるか。
堀越:そうですね。社会人を脅かすことができるか。おっしゃったように、社会人が負けるというのは、社会人4 チーム、大学生4 チームなんですけど、非常に今の状況だとたぶん難しいというか、そういう状況だと思うんですよ。僕たちがやってた頃は向井さん、そうでもなかったですよね。
向井:そ、そうだよ。そうでもなかったよ。
堀越:すいません。なので、どれだけ脅かすことができるかが非常に注目されるところだと。でも、どっかでやっぱり勝ってほしいなっていうのはありますけど。
中西:勝てる可能性が一番高いチームはどこですか。
堀越:ひいき目に見て、うちの早稲田。パーセンテージは低いと思うんですが。
中西:可能性はある。
堀越:勝ってほしいという願いを込めながら。
中西:向井さん、どうですか。早稲田が勝つ可能性は秘めているんですか。
向井:社会人のプレーヤーがいますから、どこと一番やりたくないかという質問をしてですね。私はやはり早稲田大学が一番やりにくいと思いますね。
中西:NECと早稲田は練習試合とかはあったんですか、去年は。
箕内:一回もないんじゃないですかね。
中西:見ていて早稲田が一番いやなんですか。
箕内:関東学院の方がちょっと力があるんでやりにくいですけど。どちらかと言うと、早稲田はサントリー型のラグビーなんで。
中西:あ、そうですね。NECとしては。
箕内:NECの能力を考えた場合、ディフェンスも止めやすいし。
中西:関東学院の方が実はやりにくい。
箕内:そうですね。
中西:あまり聞かせない方がいいですね。聞かせると自信を持ってこられちゃいますからね。もう少しで一シーズンが終わりますけど、来シーズンの話に移していきたいんですが。先ほど向井さんに少しお話を聞いて、日本代表を少し早く発表したんだと聞きました。それはやっぱり意図して。
向井:そうですね。2 月の終わりまでシーズンがありますが、あとは休み、あるいはもうオフに入ったり、試合がないチームがありますんで、ある程度早くメンバーを発表したい。その人たちには、もうスケジュールが送られてますんで、どこに集まってどういうことをするかというのはある程度わかっているので、そこに合わせてきていただかないと。そこでまた基礎体力作りをやってしまうと必ずケガが出ますね。
中西:時間がかかっちゃいますからね。
向井:その辺を調整して合わせてきてもらって、スタートから必ず70、80パーセントでいけるようにともくろんでメンバーを発表しました。
中西:らしいですよ、箕内さん。ちょっとスケジュールを見ていただきたいんですが、2003年のスケジュールです。1 月17日に日本代表スコッドの発表になっています。そして日本選手権が9 日、16日、23日に行われると。そして、3 月12日でしたよね。
向井:そうですね。一応メディカルチェックをやって、すぐにオーストラリアに行きますんで。そこでメンバーが壊れても困るんで。メンバーにしっかりした体力をつけてきてもらうということですね。
中西:3 月12日から14日に合宿をして、メディカルチェック、体力測定。20日からオーストラリア遠征と。で、4 月にまた合宿があると。
向井:そうですね。
中西:とにかく秋に向けて。10月10日ワールドカップ開幕で、チームを作り上げなきゃいけないと思うんですけど、向井さんとしてはどの辺を目標にチームを作り上げようとお考えですか。当然、10月10日に最高のコンディションに仕上がっているのが大事だと思いますが。
向井:皆さんがおっしゃるのが、7 月のイングランドと対戦である程度の形が見えると。そこである程度ピーク時を持っていってしまうとですね、その対戦以降、7 月それから8 月、ほとんどゲームがないんですよね。トップリーグはありますけど、それが間に入ってきてワールドカップということなんで。そこも踏まえて、やはりワールドカップ開幕の前のところからもう一度立ち上げてというか、上がっていってワールドカップ、というようなシーズンを迎えていきたいなと思います。
中西:7 月6 日日本代表とイングランド代表のゲームが東京でありますけど、このゲームで一概にピークに持っていって、チームとしての完成を目指しているわけではないと認識していてよろしいですか。
向井:そうですね。完成というか、何を目標とするか。一つの例とすれば、トライを必ずどこのチームからも4 本取るとか。そういったことをターゲットとして、確実にスーパーパワーズカップ (日本、ロシア、アメリカ、中国が参加) からイングランド戦までに自分たちの形ができてきた、ということを積み重ねていって、ワールドカップに持っていきたいなと。
中西:骨組みをある程度作るってことでいいですかね。
向井:そうですね。
中西:そして隣にいらっしゃいます、箕内さんをキャプテンに選んだんですけど。ご本人を目の前にしてなんなんですが、選んだ具体的な理由というのは。
向井:まず、確実にゲームに出る人ということ。
中西:当然レギュラー、チームの主力として。
向井:はい。それからキャプテンとして自分のプレーがしっかりしている。あと、的確な判断ができるという形で。まあ、昨年から彼にお願いしたんですけど。徐々に理想とするキャプテンに、より究極に近づいてきているというところじゃないかと思いますけど。
中西:隣にいるんで聞きにくいんですけど、監督からこういう風に言われてどうですか。
箕内:昨シーズン言われたんですけど、代表に行くのも初めてだったんで。
中西:そうですよね。そのとき呼ばれていきなりキャプテンというのは。
箕内:最初なんの話をしに来たのかわからなくて。
中西:チームに来られたんですか。
箕内:はい。向井さんが来られて、会議室に呼ばれて。
中西:怒られるわけじゃないじゃないですか。代表に選ばれるかなという感じだったんですか。
箕内:ちょっとわからなかったです。
中西:本当に何もわからなかったんですか。
箕内:はい。行ったらキャプテンをやってもらえないかと。
中西:代表のキャプテンをやってくれと。向井さんは事前に何も言わずにいきなり。
向井:NEC さんの監督には言ってましたよ。
中西:そうですか。で、その瞬間どうでした。
箕内:正直ビックリした気持ちがすごく強かったですね。
中西:若いということもあるし、多少ビックリするところはありますよね。年齢は関係ないと思って。
向井:そうですね。後は彼自身海外に行った経験もあって、そういうようなところも見てますし、本人と話をさせていただいて、間違いないんじゃないかと私は思って、お願いしますと。
中西:海外に行った経験もあって、自分としてはキャプテンでやっていけるという自信はその瞬間あったんですか。
箕内:いえ、今だから言えるんですけどなかったです。
中西:当時はどうしようかなって気持ちが多少あったんですか。
箕内:試合中とかだったらいいんですけど、グラウンドの外で人と話すのって苦手なんですよね。
中西:ああ、でも・・・
箕内:キャプテンだと、選手の前で試合前と試合後にしゃべったりしないといけないじゃないですか。
中西:そうですね。
箕内:すごい苦手で、ちょっと考えましたけど。
中西:それを考えた。でもそれ以外で、きっと向井さんはプレーで引っ張ってほしいと考えたんじゃないですか。
向井:そうですね。何も言わなくてもプレーであとを追わせるというか、そういう部分が今もNECでプレーを見てるとやってますから、その辺はあまり心配していなくて。一番最初に来たときは足のケガがあってですね。調整しながらということだったんですけど、試合に出れば確実に自分のプレーをして結果を残してましたんで、その辺は自分自身では間違っていなかったなと。
中西:堀越さんは箕内さんが日本代表のキャプテンというニュースを聞いたときはどうでしたか。
堀越:そうですね。最初に聞いたときは、誰になるのか予想がつかなかったんで、「あ、箕内なのか」って感じはしましたね。でも、もうすでにNECでやってたんで。
中西:見ていて、箕内さんのキャプテンは板に付いてきたって感じはありますか。
堀越:僕が見たときが、キャプテンをやっていないとき、ちょうど休んでいたときだったんで、だからその辺は見れなかったんですけど、地位は人を作りますから。どんどん顔もそういう風になってきていますし、良くなっていると思います。
中西:僕が見てね、向井さんがおっしゃったように、プレー自体が強引でね、グイグイ行くところがあるじゃないですか。そういうところを見てると、周りがこういう姿を見て「こんなキャプテンだったらついて行こう」って思うんじゃないですかね。
向井:そうですね。しゃべるのがうまい人はいっぱいいますんで、それはそっちに任せて。彼はその分サポートしてくれる人もいますし、そういう面では自分でプレーして。なおかつ日本代表では7 番というアタックについてもディフェンスについても要のところを彼はやっていますんで、一番先頭に立ってアタックするし、ディフェンスについても相手の一番厳しいところをタックルしますし。そういうところを選手も見て、「彼だったら」っていうのはあると思います。

後編へ続く

構成・文:CREW
撮影:源賀津己