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11月19日(水)に大分スタジアム・ビッグアイで開催されるキリンチャレンジカップ日本対カメルーン戦を前に、青山ベルコモンズで行なわれたぴあトークバトルの模様をフルバージョンでお届けします。

ぴあトークバトルVol.31
「どうなる!? サッカー日本代表」
~キリンチャレンジカップ2003 カメルーン代表戦を前に ~
Supported By キリンビール大学サッカー部

前編

<ホスト>
中西哲生(なかにしてつお、スポーツジャーナリスト)
'69年、愛知県生まれ。同志社大から'92年に名古屋グランパス入り。'97年に川崎フロンターレへ移籍してからはキャプテンをつとめ、'00年にJ1昇格を果たした。Jリーグ通算95試合7得点。現在はスポーツジャーナリストとして「ズームイン!!SUPER」(日本テレビ系)、「ニュース23」(TBS系)などに出演中。

<ゲスト>
井原正巳(いはらまさみ、サッカー元日本代表主将)
'67年、滋賀県生まれ。筑波大時代の'89年から日本代表DFとして活躍。'90年に日産FC(現横浜・Fマリノス)入り、DFの要として横浜マリノスを牽引した。'00年、ジュビロ磐田へ移籍。'01年からは浦和レッズでプレイし、昨年現役を引退。Jリーグ通算297試合5得点。日本代表通算123試合5得点。現在はサッカー解説者として活躍している。

進藤晶子(しんどうまさこ、フリーキャスター)
'71年、大阪府生まれ。'94年にアナウンサーとしてTBSに入社。「NEWS 23」、「ニュースの森」などでキャスターとして活躍。01年3月TBSを退社し、ニューヨークで約1年間の充電を経て、02年5月TBSW杯サッカー放送メーンキャスターとして復帰。現在はフリーキャスターとして活躍中。

早野宏史(はやのひろし、サッカー解説者)
'55年、神奈川県生まれ。生田高、中央大時代から年代別の日本代表として活躍し、'78年日産FC(現横浜・Fマリノス)へ。'85年現役引退。'95年、横浜マリノス監督に就任すると、翌年マリノスを念願のJリーグ初優勝に導く。'99年から'01年まではガンバ大阪の監督もつとめ、現在は解説者として活躍中。

平野孝(ひらのたかし、東京ヴェルディ1969)
'74年、静岡県生まれ。'93年名門・静岡市商高から名古屋グランパス入団。'97年に初の日本代表入り。'98年のフランスW杯にも出場を果たした。京都パープルサンガなどを経て今季から東京ヴェルディ1969へ。Jリーグ通算271試合47得点。日本代表通算15試合4得点。(03年11月2日現在)

中西:「ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2003 VOL.31 『どうなる!? サッカー日本代表』」。今日は日本代表の1 年、これからのジーコジャパンについて熱く2 時間語っていきたいと思いますが、3 連休のど真ん中に来ていただいてありがとうございます。今日は僕も楽しみにして来ました。現役選手もいるし、現役引退されたばかりで元日本代表の方もいますし、元Jリーグ監督だった方もいますし、キャスターとしていろいろな立場から観ている方も来てますから。いろんな視点から日本代表や、日本のサッカーについてテレビでは言えないことを皆さんに聞いて、楽しくやっていきたいと思います。それではゲストの方々をご紹介します。昨年のワールドカップでのメインキャスターぶりも記憶に新しいところだと思います。元TBS アナウンサーで、現在はフリーキャスターとして活躍中の進藤晶子さんです。いやあ初登場ですけど、どうですか。お客さんを目の前にして。
進藤:こんなに近い距離でというのはなかなかない機会なので。
中西:逆に皆さんもなかなか見られないでしょう。ちゃんと見といてくださいね。
進藤:いやいや、どうぞ。こんなんですみません。
中西:サッカーはお好きじゃないですか。
進藤:そうですね。サポーターの1 人としては熱狂的に大好きですね。1996年アトランタオリンピックと、1998年フランスワールドカップとか、2002年ワールドカップとか、お仕事でも関わらせていただく機会が多かったので。何てラッキーな奴なんでしょう。
中西:ラッキーですよ。でも、それも実力あってのことですから。今日はサポーターの立場というか、違った視点で、いろんなご意見をいただけるとうれしいです。
進藤:お勉強させていただきたいと思います。
中西:よろしくお願いします。続いては、サッカー中継でもう皆さんお馴染みの解説者、早野宏史さんです。私事ですけど、お待ちしてました。早野さんにピッタリのイベントです。
早野:いやいや、今日は飾りですからね。
中西:何を言っているんですか。
早野:井原君と平野君が目当ての人ばっかりですから。ちょこんと座ってます。
中西:早野さんの解説を聞いていて、わかりやすいですし。ただ、テレビでは絶対に言ってないこともあるんだろうなと思っている人がたくさんいると思うので。
早野:たくさん言ってないですよ。
中西:言ってないですよね。その辺をぜひ。オフレコの部分もお話聞かせてください。
早野:わかりました。出せるもんなら出してみます。
中西:いやいや、本当に出してほしいですよ。今日はいつもの早野さんとは違った一面を見せていただければうれしいんで。
早野:わかりました。
中西:続いては、日本代表を語る上で欠かせない方。アジアの壁として活躍しました、元サッカー日本代表主将、現在はJFA アンバサダーとしても活躍中の井原正巳さんです。
井原:こんばんは。
中西:井原さんは2 回目の登場で。前回、初めてご登場のときも弾けていただいたんで、今日もぜひ。
井原:前回はミッシェル(宮澤、サッカー解説者)さんがしゃべりまくって。
中西:井原さんがしゃべりたいのに上からドンドンドンドンしゃべって。
井原:そうなんですよね。
中西:どこまでしゃべるの?というくらいしゃべってましたけど。
井原:今日は積極的に。よくしゃべる方が隣にね、両方いますし。しゃべるタイミングがあるかどうか微妙ですけど。よろしくお願いします。
中西:最後はですね、僕が待ち望んでいた。お友だちというか、まあチームメイト。楽しみにしてました。現在、J リーグ・セカンドステージ、首位に立っております。東京ヴェルディ1969の平野孝選手です。
平野:はい。こんちは。
中西:今日は現役ならではの視点で。
平野:諸先輩方がたくさんいるので、意見を聞いて、勉強したいと思ってます。
中西:今日はね、すごくおもしろい話をしてくれると思いますんで。楽しみにしてます。
平野:よろしくお願いします。
中西:会場の皆さんもお飲み物を片手に立っていただいて、一緒に乾杯したいと思います。ゲストの皆さんも、お立ちになっていただいて。本日は協賛いただきましたキリンビールの方から、ビールからソフトドリンク、たっぷり用意してあります。明日は休みですからね。3 連休ですからね。だからガンガン飲んで、今日は飲みながら楽しんでもらおうかなと。ここにいらっしゃる方々のますますのご健勝と、そして日本サッカー界の発展を祈願しまして、乾杯したいと思います。乾杯!

質問中西早野井原平野進藤
1:ジーコジャパンのサッカーは面白いyesyesyes/noyesyes
2:ジーコジャパンはこの1 年で強くなった yesyesyesyesyes
3:ジーコ采配にひと言、言いたいyesnoyesnono
4:アジアの強豪とのワールドカップ予選は油断できないyesyesyesyesyes
5:ジーコ監督に、ドイツワールドカップまで指揮をとって欲しいyesyesyes/noyesyes
6:日本代表の中心は何といっても中田英寿だyesyesyesyesyes
7:ツートップは高原と大久保のコンビで決まりだnonononoyes
8:バックラインの統率は宮本に任せておけば心配ないyesnoyes/noyesyes/no
9:今の日本代表に入れたい選手がいる yesyesyesyesyes
10:キリンチャレンジカップのカメルーン戦、日本は勝てるyesyesyesyesyes
11:日本代表にはまだまだ伸びる余地があるyesyesyesyesyes

中西:まず11の質問に「yes 」「no」で答えていただき、その後ゆっくりお話を聞いていきます。さっそく第1問「ジーコジャパンのサッカーは面白い」。井原さんが「yes」「no」というあいまいな答えで、あとは全員「yes」。井原さんから一言。
井原:面白いときもあれば、面白くないサッカーをしているときもあるのが当たり前かなと思って。理想はあるけど、それができるとは限らないし、勝ちにこだわらなきゃいけないときは、面白くなくても勝ちに徹する。でもそういうサッカーはそんなに面白くないときもある。だから面白さだけではないという部分で、「no」も入れました。
中西:なるほど。早野さんは。
早野:僕にとってはサッカー自体が面白いから、誰が指揮をとろうと。前任者と比べちゃうときもあるんで。
中西:その「前任者」という代名詞を。
早野:けっこう取材に行ってね、いじめられたからね。福島のJヴィレッジに行って、朝7時頃から練習を始めたことがあったでしょ。
中西:ありました、ありました。
早野:あれ7時半と言われいて、いわきで前泊して、7時半開始だからって7時15分くらいに行ったらもう練習が始まってて。それで、見せてくれないでしょ。寒いし。あ、そんな話じゃないか。
会場:笑い
早野:井原が言ったように、面白いときとか面白くないときとかいろいろあると思うんだけど、今また違ったサッカーを日本がやり始めてる。
中西:例えばどういうところですか。
早野:個人のイメージをまず作る。やっぱり監督というのはゲームが始まったら、選手をリモコンで動かせない。
中西:早野さんが監督のときも。
早野:だいたい、そう。試合が始まったら選手に任せる。もう井原なんかに任せたら楽勝だったけどね。ま、隣にいるんで。
会場:笑い
早野:やっぱり試合が始まったら、今までやってきたことしかピッチでは出せない。ジーコはそういう形でやろうとしてるんだろうなって。だから、これからもっともっと期待して観ていたい、面白いサッカーになりつつあるんじゃないかと思って「yes」。
中西:進藤さんは観ていて、面白いですか。
進藤:はい。ピッチに立ったら、もう選手にお任せっていう感じが。
中西:今、早野さんがおっしゃったように。
進藤:そうですね。何が起きるかわからない可能性を感じて、ワクワクします。
中西:スタンドにいるとけっこうワクワクすること、僕もあるんですよ。ジーコジャパンの初戦、2002年10月のジャマイカ戦(1-1)もそうだったんですけど、やっぱり観ていて楽しませるというのは一つ、重要なことかなって。当然、勝ってほしいという気持ちもあるんですけど。観たいと思う選手の組み合わせとか。
進藤:そうですよね。夢、希望、可能性を感じるような。すごく楽しみですよね。
中西:代表チームってそういうものですよね。オールスターというか、普段は観られない選手の組み合わせを観たい。
進藤:観ている方も、血が煮えたぎるような興奮というのは、やっぱり代表戦ならではじゃないかなと思うんですけど。いかがでしょうか。
中西:平野さんは日本代表でプレイしていたこともありますけどどうですか。面白いとか面白くないとか、選手自身はそんなこと考えてないでしょ、きっと。
平野:考えてないですね、あんまり。
中西:勝つことがやっぱり。
平野:もちろん、第一条件というか。
中西:今代表を外れてますけど、外から観ていて今の代表チームは面白いと感じますか。
平野:とは、思います。
中西:具体的にどういうところが。
平野:やっぱり中盤がすごくて、あり得ないようなパスが出てくると、観ている方も興奮するというか。それが最近は多々見られるんで。何となく観ていて楽しいなと。
中西:平野さんは中田(英寿、パルマ)選手とフランスワールドカップの代表チームで一緒だったじゃないですか。一緒にやった選手の印象って残っているんですか。
平野:多少は残ってますけど、フランスのときと比べてだいぶ変わってきてると思うんです、プレイスタイルとか。また別のヒデが観られるかなと。
中西:早野さん、面白さと、勝つことが同居してるのが、代表チームなんですかね。
早野:ワールドカップを皆さんご覧になったと思いますけど、ナショナルチームでそんなに面白いサッカーって、たぶんできないと思います。やっぱり国民の期待を受けて日の丸を付けてピッチに立ったら、すごく重たいものを背負ってやらなきゃいけない。楽しませてやろうというよりは、どの国もプライドを賭けて戦ってくるという方が多い。そういうサッカーも勝負という視点で見ていくと面白いんじゃないかなと思うんですよね。
中西:面白さというのは、観ているサッカーの楽しさというよりも、どうやって勝つんだろう、どういう戦術で戦うんだろうという、そういう部分ですかね。
早野:2002年ワールドカップでも、例えば日本が負けたトルコ戦(6月18日宮城スタジアム、0-1)。予選グループでトルコ代表の顔は一体いくつあるのかなと思ったら、3つ4つある。日本と戦うときはまるで違うチームの戦い方をしてた。それが選手のキャパシティなのかなと思って観てました。日本も今、いろいろ変わってきてるけど、もっと多様性を持ったチームになってほしいというのが期待です。
中西:井原さん、今の代表がトルシエ(フィリップ、カタール代表監督)監督のときと変わってきたのは、自由奔放さというか、想像力を生かしてサッカーをしている部分。そういうなかで、いろんな選手の組み合わせのパターンが出てきましたよね。
井原:そうですね。欧州組が招集されても全員が帰ってこられなかったり、ケガ人がいたり、そういう状況でいろいろな組み合わせを試すというのはあると思うし、それに代わる選手がまたうまく活躍できてますから。そういうなかで、「ああ、これも面白い組み合わせだな」とか「こういう選手もこのなかに入っても十分できるんだな」とか、すごく発見は多いですよね。あとはやはり中盤。ジーコ監督になってから代名詞のように言われている黄金のカルテット、4人を中盤に置くという部分で、その4人の能力は非常に高いし、4人を観ているだけでも面白さはありますよね。ただ、それがさっきも言ったように、本当に面白いサッカーなのかどうかは非常に難しい問題だと思います。
中西:そして、第2 問「ジーコジャパンはこの1 年で強くなった」。これは全員「yes 」。平野さんはこの1 年を観ていて、ジーコジャパンは強くなったと感じますか、実際。
平野:と思います。
中西:具体的にここが変わってきたとか。例えばちょうど1 年前、2002年10月のジャマイカ戦で1-1 だったじゃないですか。あのゲームから1 年以上経つんですけど。
平野:強くなったと思いますよ。一ファンとして観たときに楽しいだろうと。何がと言われると困っちゃいますけど。
中西:でも井原さん、同じ選手がプレイすることを多く望んでいるじゃないですか、ジーコ監督は。そういう意味で、コンビネーションの部分は間違いなく進化してますよね。
井原:かなり進歩したんじゃないかと思います。ジーコは自分が信頼した選手や、いいなと思ったときは、その選手はとりあえず使い続ける。やっぱり同じ選手で長くゲームに出ると、お互いのコミュニケーションがどんどん取れてくるのは当たり前で。そういう部分ではすごくチーム状態がよくなっていると思う。逆に新たな選手が入ったとしても、そこで活躍して、短い期間でもそういうことが表れてきているし、最初の頃に比べたら全然よくなっていると思います。バックラインは全部変わりましたけど。
中西:たまに総入替えされてますけど。それでも。
井原:それでもすごくチームらしくなっていると思うし、レベルは上がってるんじゃないかなとは感じますけどね。
中西:僕は観ていて、いつでも代表に呼ばれる可能性があると、J リーグでプレイしている選手が思い始めたと思うんですよ。観ていても、もし代表に行ったらフォーバックだからこういうふうにやるんだなってイメージが湧くじゃないですか。「選ばれないだろうな」と思っている人よりは全然、いきなりパッと代表に行っても違うんじゃないですか。
井原:後はジーコは選手をよく見てると思うし、試合に使ってもらうチャンスがあって、もしそこで信頼を得られれば、けっこう長く代表にいられるという部分がありますね。
中西:一回チャンスをつかめばね。
井原:コロコロ選手を代えないから。そういう部分での期待感をみんな選手は持ってる。
中西:進藤さんも見ていて、新しい選手がポンポン入ってくるじゃないですか。
進藤:しかもみんな個性的じゃないですか。それが、やっぱり面白いというか。健全な状態ってこういうことをいうのかなって。
中西:けっこうみんなに平等にチャンスがある感覚が。
進藤:いい意味で、すごくハングリーな感じ。さっきおっしゃったみたいに、いつかきっと、絶対、僕はあそこにいるはずの選手なんだというのが見えてくると余計に楽しい。
中西:J リーグでね。
進藤:もちろんそれは、プレイで見ていても個性がたまらないし。
中西:J リーグを観ていても、早野さん、この選手も代表に入れていきたいな、この選手もいけるんじゃないかというふうに、新しい選手が入るたびに思いますよね。
早野:そうですね。2002年ワールドカップの開催が決まった段階で、J リーグの歴史もずいぶん経っていたじゃないですか。稲本(潤一、イギリス・フルハム)だとか小野(伸二、オランダ・フェイエノールト)だとかがプロを目指してきたという延長線上で、若い選手が入ってきてるし、やっぱり世界を知ってきている。でやっぱり2002年を観て、「ああ、やれる」という自信を持ってる人たちがたくさんいると思う。ただ、2002年6 月18日にトルコに負けて、19日にNHK で特番をやったときに、岡田(武史、横浜F.マリノス監督) と俺とジーコ(日本代表監督)で特番をやったんだけど、番組でも言ってたけど、ジーコがすごく怒っていた。「ブラジルのことわざで“いいときには動かないんだ”」と。
中西:メンバーを代えないんだと。勝った後は特に。
早野:俺もそれを聞いてうなずいたんだけど、ハッと考えたら、俺、ブラジルのことわざ知らなかったの。みんな「うん」ってうなずいてたんだけど、この会場でもブラジルのことわざを一つでも言える人ってたぶんいないと思うんだけど。
中西:言えません、言えません。
早野:そういったところもあるんで、今、ジーコが頭で考えてるのは、代表を招集する時間がないことを考えると、予選をやりながらチームをどんどん作っていく気持ちでいるんじゃないかなと推測してますけども。
中西:平野さん、代表チームに選手が行くでしょ。特に今年の1年間、けっこうゲームをやったじゃないですか。コンフェデレーションズカップ(2003年6月)も含めて。で、ポツポツ招集されるよりは、一気にガッとまとまって招集されて、1 カ月や2 ~3 週間拘束されてる方が、コミュニケーションやチーム力ってグッと上がるんですか、やっぱり。
平野:練習のなかで密な関係ができるので、長くいればいるほど、その選手が何をやりたいかというのがわかってくるんじゃないですかね。
中西:それと例えば部屋が一緒になったりとか、練習以外の時間を共有することも重要なんじゃないですか。
平野:大事だと思います。
中西:それによって何かコミュニケーションが上がったりする部分は。
平野:その選手がどういう奴なのかわからないよりも、プライベートでもグラウンドの上でも、何となくその選手のことがわかったら、逆に少しでもその選手のプレイをわかろうとすると思うんですよね。お互いにそうなっていくと、よりコミュニケーションが高まるというか。プレイにもいい影響を与えるんじゃないかと思いますけど。
中西:井原さんもやっぱりそういうことはありましたか。
井原:もちろん、一緒に合宿をしたりして選手同士のコミュニケーションは深まるし、こいつは何を考えているんだろうというのは、一回話してみないとわからないところもあるし、そういう部分では深まるというのもある。あとはグラウンドで一緒に練習することによって、その選手の癖やプレイスタイルがわかると、「ああ、こいつがこういうプレイするんだったら、俺はこういうカバーをしてあげた方がいいな」とか。
中西:ディフェンスは特に。
井原:特にディフェンスは感じるんですよね。オーバーラップする、いいタイミングで上がるのが特徴の選手だったら、なるべく使ってやって。いろんなプレイの特徴をどうチームに生かしていくか、長く合宿してたりするとどんどんわかってくるから。
中西:あと、代表に招集されて練習だけだと、あまり細かい戦術の話はしないですよね。
井原:あまりしないかな。
中西:毎日一緒に練習してて、夜も一緒に食事をしてると、このポジションのときはこうしようとか、そういうサッカーの話になったりするんですけど、短い時間で代表に参加するだけでは、そうはなかなかならないじゃないですか。
井原:ほとんどしないんじゃないのかな。その試合に向けて、短期間でパッと一緒に集まってやるようなときには細かな戦術の話はなかなか出ない。対戦チームのビデオを少し観て、こういうところを注意してやろうかというぐらいだと思う。深く、自分たちのチームについて考える時間はないし。ジーコもあんまりミーティングみたいなことはやらないようなことを言っていたから。
中西:サッカー選手って一緒にいる時間は長いけど、戦術面で細かくこうしようという話はけっこうしないよね。ギリギリにならないと。
早野:テレビゲームやってるからね。前泊のホテルを見ていると、部屋のドアが開いてて、ひとりでやってる奴は「こいつ暗いなー」って思うけど。けっこうブラジル人とかみんなサッカーゲームをやって、メシに集まってきたときに「勝った!」なんて言ってて。明日が試合なんだからエネルギーを取っておけって。
井原:メシのときでもみんなで集まって食べますけど、サッカーの話はあまりしない。
平野:しないっすね。
中西:何を話すんですか。
平野:ホテルのなかでですか?
中西:メシを食ったりするじゃないですか。
平野:メシですか。僕らのときは、とっとと食べて、とっとと帰るって感じですね。会話がないっすよね、やっぱり。
進藤:で、何をしてらっしゃったんですか、とっとと帰って。
平野:えー・・・
中西:何、困ってるんですか。
平野:いや、早野さんが言ったように、みんなゲームとかしてますよ。あとはドラマを見たり。5 人ぐらいで集まって。
進藤:集まって見るんですか。
中西:海外ですからね、そういうの見たいですよね。
平野:そうそう。決まってるんですよね、担当が。ビデオ係だとか。
中西:例えばフランスワールドカップのときは誰だったんですか。
平野:名波(浩、ジュビロ磐田)さん。ドラマのビデオを全巻持ってきて、上映するから何時にと。
進藤:そういうお知らせもしてくださるんですか。いいコンビネーションですね。
中西:他に何係がいるんですか。
平野:あとはプレイステーション係。
中西:誰だったんですか。
平野:それは岡野(雅行、ヴィッセル神戸)さん。
進藤:平野さんは何係だったんですか。
平野:僕は世話係なんで、ジュース持って来いだとか。
中西:清商(清水商業高校)の上下関係と一緒ですか。
平野:そうですね。だいたいそういう感じで。
井原:24時間一緒にいるときに、ずっとサッカーの話をしてるのも堅苦しいと思うんだよね。息が詰まるから、リラックスするときはリラックスして、戦術の話し合いはグラウンドのなかでして、ピッチから離れたらもうサッカーのことはなるべく考えない、というときが多かったかな。ミーティングではもちろん集中してサッカーのことを考えるけど。
早野:キャンプというのは同じ時間と空間を一緒に過ごすことで、選手同士が感じ合っていく。今言ったようにピッチでガッと集中して、頭に残ってくる。代表クラスの選手だったらそういうイメージは頭に残っているから、最終的にそれをピッチのなかでどうフィードバックさせていくかというイメージでやってると思うんです。だから空間と時間だけを共有していることが非常に大切なことだと思いますね。
進藤:初めて日本代表で顔を合わせて、相手のことが何となくわかるかなというのは、一緒に練習してどれぐらいの時間が経つと感触がつかめるものですか。
早野:井原とか平野君に聞いたらいいと思うけど、新人が来たときっていうのは、やっぱり最初は遠慮してると思うんだ。でも、図太い奴は最初からガンガン行ってて。そのキャラクターによって違うと思うんだ、慣れるまでの時間は。
中西:中田選手もそうじゃないですか。いきなり代表チームにパッと加わって、パッと力の出せる選手もいれば、ちょっと遠慮する選手もいると思うんですよね。井原さんから見て、平野さんが入ってきたときはどうだったんですか。
井原:いや、最初は遠慮する方だと僕は思いますよ。
中西:遠慮してたんですか。
平野:でも、知ってる人がたくさんいたので。
井原:同じ年代とかね。
平野:そういう意味では、入りやすかったですけど、やっぱり知らない人もいるんで、多少の距離はありました、正直。
中西:いきなり代表に来ても、すぐにフィットしたっていう人は誰かいますか。
井原:グラウンドのなかですぐフィットする奴と、ホテルに帰ってからとか私生活ですぐフィットする奴の二手に別れることがあるんで。私生活ではすごく社交的で、誰にでもかわいがられていても、いざグラウンドに来るとちょっとおとなしい奴とかいたし。
進藤:ちなみにどなたですか。ワイドショーみたいでごめんなさい。
井原:グラウンドに来ておとなしいっていうのは、なかなか最初から試合に出られなかったりする面があると思うんだけど、私生活でいきなり。やっぱり平野の年代で仲のいい奴や楽しめる奴がいっぱいいると、急に来ても全然馴染んでるよね。
中西:馴染んでましたか。
井原:同じ年代、さっきから名前が出てる連中とかも多かったけど、そういう連中はすぐに馴染んでたと。グラウンドだと若干、そこまでは出せない部分があると思う。
中西:平野さんはグラウンドでは馴染んでないけど、宿舎で馴染んでた口ですか?
井原:ホテルでは馴染んでた。
平野:俺でした? やっぱり。言われてたの。
会場:笑い
中西:俺も暗にそうだなって思ってたんですけど。はっきり言っても大丈夫ですよ。
井原:でも、もっと強烈なのがいたからね。岡野とか。
平野:いましたね。やんちゃな人がたくさんいましたね。
井原:森島(寛晃、セレッソ大阪)とかはね、グラウンドのなかでもスッと入って活躍できるタイプって感じがしたけど。
中西:すぐチームにフィットした感じですか。
井原:あんまり遠慮とかしないし、自分が何をアピールしたらいいのかとか、黙々とやるタイプだし。いきなりチームに入っても違和感のない感じはしました。
中西:次に第3 問「ジーコ采配にひと言、言いたい」。僕と井原さんが「yes 」、早野さんと平野と進藤さんが「no」。進藤さん、どうですか。全然言うことないですか。
進藤:そんな、私ごときが何も申せません。ただただ、応援するのみです。
中西:サポーターとして見ていてどうですか。もっとこうした方がいいかなとか。
進藤:あまりないですよ。いろんな段階があると思うんですけど、前回の監督のときは…
中西:また「前回の監督」のときはって。トルシエ監督って言えばいいじゃないですか。
進藤:好きな方なんですけど、すてきだなって思うんですけど、何かほら、同等に主役って感じがしたじゃないですか。選手も主役、監督も主役みたいな。
中西:ああ、言っちゃいましたね。
進藤:あっ! ダメなの? 忘れてください、じゃあ今の。
中西:いやいや。それは大丈夫ですよ。監督が主役のチームだったので。
進藤:目立つ方だったので。地雷踏んだ、私? 大丈夫?
中西:そうですよね、早野さん。監督が主役のチームですよね。
早野:そうだよ。それは別に、悪いことじゃなくて。いろんなタイプがいますから。
中西:早野さんは。
早野:僕はもう、ずっと下がって、陰のように指揮をしますよ。
中西:本当ですか、井原さん。
井原:えっ。
早野:わかってるよな、お前。
井原:選手を前面に押し出して、さあ出て行けって。
中西:ちょっと遠慮ぎみですけどね、井原さん。
井原:それで陰でシメてました。
早野:当然。
中西:トルシエ監督はやっぱり自分の方が前に出ていくタイプだったじゃないですか。
早野:ヨーロッパの監督でアフリカのチームに行ったりしている経歴にしても、スタイルというのは監督によって違うし、人によってだいぶ違うので、たまたまトルシエさんは・・・何で進藤さん見ちゃうんだろ。
進藤:いやいや。
早野:進藤さんが言ったからだよ、これ。
進藤:トルシエさん、好きなんです。大好きなんですけど。
早野:もう遅い。
中西:でもわかります。要するに選手のことをすごく前面に押し出してやって。
進藤:そうそう。だから何も。そのまま活躍していただければ。
中西:無難な意見に終始している感じがするんですけど。
進藤:だんだん引いてきました。
中西:でも、早野さんはどうなんですか。「no」ということなんですけど。
早野:監督にはいろんなキャラがあって、自分の哲学とかやりたい事をそれぞれに持っているから、他人がいろいろ言うべきものじゃないというのが、何も言うことがないということなんだけど。逆に、ジーコがやってて、今はテストタイムなんだから、いろんなことを試してもいいんじゃないかなと思ったりもする。あ、言っちゃった。
中西:僕もそこですね。僕は「yes 」なんですけど。監督がやっている事に言いたい事は僕も何もないんですけど、交代のところだけですね。もう少し早くしてもいいんじゃないかなと。途中から出てきた選手に、あと15分余分にやらせあげればなと。
早野:まあ、ジーコの考え方がどうなのか。とにかく時間がないので集めて成熟させて。それでも足りないから、第一次予選のところでは、チームを試合のなかでも作っていこうとしてるのが見受けられるのは、選手交代の頻度が非常に少ない。
中西:少ないですね。
早野:ちゃんと生産、作り出していく前には、いろいろ試していく過程があると思う。J のチームでもキャンプをやって、いろんなことを試しながらスタートを切って、ダメだったら修正をかけていく。だから代表チームでも、招集した選手をもう少し出場させてあげてもいいし、0-0 で膠着状態だったら、何かにトライして。たとえそれで負けても、トライしてる姿勢が見えたら、観客の皆さんはきっと納得するんじゃないかなと。
中西:井原さんはどうですか。
井原:一緒です。選手を固定するのはいいと思うし、チーム全体のコンビネーションを上げるために長くやらせたいというのはあると思うので、今年の段階では仕方ないと思う。そういう部分で、もう少し早く選手交代して誰かフレッシュマンを使って、そのチームで試させていくのもいいし。選手交代がホントにないですよね。試合のなかでうまく流れを変えるような、そういう選手の使い方もしておいた方がいいのかなというのがありますね。
中西:平野さんは代表でも、よく途中から出てたじゃないですか。途中から出る選手としては、もう少し早く出たいなと思うときはあるんですか。
平野:あります、あります、それは。
中西:何分くらいあれば。例えば、代表のゲームで。
平野:その試合によって違うと思うんですけど、やっぱりせめて20分…20~30分は。
中西:それぐらい時間がないと流れに乗りにくいんですかね。
平野:そうですね。ポジションによっても違いますけどね。
中西:まあ、平野さんみたいに前めのポジションだったらやっぱり最低でも20分あれば。
ワンチャンス、ツーチャンス。
平野:でもけっこうチャンスって途中から出てくる選手に来たりするんですよね、ワンチャンスぐらい。それをモノにできるかどうかというのも変わってくるんですけど。
中西:ありましたね、フランスワールドカップで。僕はもう、「日本人初得点は平野孝が入れるのか?」って頭をよぎったことがあったんですけど。
井原:あれ惜しかったよね。
中西:ありましたよね、平野さん、ねぇ。
平野:ありました。
中西:僕、鮮明に覚えてます。
井原:あれ、誰からのクロスボールだっけ。
平野:ゴン(中山雅史、ジュビロ磐田)さん。
中西:あのヘディングシュート。
平野:ちょっとボールが悪かったですね。
井原:ゴンに言っとく。
平野:僕が悪かったんですね。
中西:ヘディング得意じゃないじゃないですか。
平野:どちらかと言うと、苦手なタイプですね。
中西:でも、入ったと思いましたよね。ちょうど誰が日本人初得点するかって話題になってるときだったので、歴史に名を刻むのかなと思ったら。どうでした、あの瞬間。
平野:いや、やっぱり「俺だな」って思いました。
中西:俺、テレビの前で叫んでましたもん。「あー、でも入らなかった。よかったー」って。ハハハ。よかったじゃない、よかったじゃない。
平野:でも、あそこで入らないのが俺なんですよ。やっぱり中山さんがね、最後きっちり持って行ったかなみたいな。
中西:でも、井原さん。チャンスが来ますよね、途中から入った選手のところに。
井原:やっぱりそういう部分を交代選手は期待されているところがあるし、それだけのものを持ってグラウンドに入ってくるから、自然とそういうシチュエーションが生まれるのかなとは思いますね。そこで生かすかどうかが、本人にかかってくるだろうし。ま、あれはキーパーのナイスセーブだった。
平野:そうっすか。ありがとうございます。
中西:でも進藤さん、途中から入ってくる選手で、ワクワクする選手ってけっこういるじゃないですか。鹿島アントラーズの本山雅志選手とかね。
進藤:期待しちゃいますよね。何か変えてくれるだろうと。
中西:そういう選手を少し早めにパッと。平野選手もそうですけど。
進藤:今だって思われるときは、どうアピールされるんですか、監督に。
平野:一番いいのはやっぱり、監督の目の前でアップすることじゃないですか。
進藤:あぁ、それは効きますか。有効?
平野:はい。かなり有効ですね。
井原:よくいるんだよね。
中西:監督の前でスライディングするとか。
平野:哲生さん、よくやってましたね。
中西:僕は、グランパス(名古屋)のときによくベンチにいたんで。よく平野さんと代わってたんですけど。ベンチの前でよくスライディングしてましたね。
井原:「お前、邪魔だから見えねぇ!」とか言われて。
中西:それはまあ冗談ですけど。でも監督と目線を合わせるとか、いろいろ。
平野:それはホントありますよ。目線を合わせたりって。
進藤:目線を合わせてどうするんですか。うなずいてみたりするんですか。
平野:こう、監督をうかがいながら。「俺、いるよ」みたいな。
中西:そこに例えば監督がいるじゃないですか。僕が一番こっちに座っているとするじゃないですか。監督が試合を観てて、観てるときに、何かのときにこっちを見たりすると、代えたいなっていう意思があるのかなと思うわけです、ベンチに座っている選手は。
進藤:顔を見てるからですね。
中西:そしたら、「俺だよ」と思って目を合わせたりしましたよ。
進藤:ああ、なるほどね。それ、かなり有効なんですね。
中西:でも、井原さんとか途中から出たことないからわからないと思いますよ。
井原:そんなことないよ、途中から出たことあるよ。
中西:でも、ほとんど9 割5 分以上はスタメンじゃないですか。
井原:途中から出るの、イヤだったね。ディフェンスは特にイヤなときが多い。あと15分ってときで、チャンスのときじゃないんだよね。こっちにプレッシャーがかかっているときで。ここで俺が入って何かやっちゃあヤバイときとか。
中西:井原さん、そう思うときがあるんですか。
井原:あるよ。誰かが足をつっちゃったりして、「最後までお前頑張れよ」みたいな。ここから出てもしょうがないよってときが、たまにあったんですよね。そういうときは。
中西:違います、違います。僕は1 分でも出たい。
井原:それはもちろん、そうなんだけど。
中西:1 分出るだけで、お金が違うんですよ。1 分で、ぶっちゃけ倍になるんですよ。
進藤:えーそうですか。そりゃ、出なきゃ。
中西:当時、そうだったんですよね。
平野:そうでしたね。
中西:今だから言えますけど、当時は、試合に出る分数によって、勝利給とかの割合が決まってたんですよ。
進藤:今、目が真剣になりました。
中西:真剣でしょ。僕ね、死活問題だったから。勝って20万円とか30万円とかもらえるんですよ、ホームだったら。名古屋はそうだったんです、強かったから。それで、例えばベンチに座っていると4 分の1 。5 万円ですよね、20万円だと。もうリアルな話。
井原:リアル、リアル。
中西:それで、1 分から30分は半分。だから1 分出れば10万円もらえたんです。
進藤:あ、なるほど。一番効率がいいわけですか。
中西:それでロスタイムとかに、時間稼ぎ、例えば「中西交代だ」って言われたらもう、必死ですよね。早く着替えなきゃとか、早く試合出なきゃ。終わっちゃったら大変。けっこうギリギリのときがあったんで。で、早くボール出ろ、ボール出ろって。ボール出ないと終わっちゃうんで。とりあえず出て、入りたかった。僕1 分とか記録ありましたもん。
早野:監督のときに年俸の低い選手、使ったことあるよ。使ってあげるの。
中西:あ、ありました、やっぱり。
早野:3-0 とかで勝ってて、パッとベンチを見て。
中西:目が合う。
早野:「年俸の安っすい奴……、お前。」。
進藤:優しい。いい監督!
早野:そのお金がその選手のすごい活力になるわけでしょ。ベンチに入れてるんだから、期待があるわけですよ。だったら、年俸の高い奴はいいから。
中西:若い選手には大きなお金ですからね。でも、最近違いますよね、給料形態が。
平野:違いますねぇ。
中西:1 分とかじゃないですよね。出る出ないは関係あるかもしれませんけど。
平野:今は試合に出場するためのお金と勝つためのお金が一緒になってるんですよね。
中西:前は出場給と勝利給が別。すごいリアルですね。出るだけでもらえるお金があったんです、昔は。今は出ても勝たなきゃもらえないんですよ。
早野:代表は途中から出るとお金もらえるの?
井原:お金は・・・
中西:変わらないんですか。
井原:いや、一緒だと思う。45分までだったら半分とか。
早野:ベンチ、イライラしてるよ。
井原:でも代表だと、試合に出るとキャップ1 が付くから。もう、出たくてしょうがないでしょ。ベンチにいるだけとか、メンバーに入っただけだと代表ってことにならない。
中西:初代表の選手とかだったらホントそうですよね。1 キャップ付くかどうか。井原さんなんか123 キャップでしたっけ。もう、キャップはいらないじゃないですか。
井原:もっとほしかったけど。でもね、けっこう代表に入ってても、キャップが付いてない奴がいるんですよね。選ばれてるけど、1 試合も出なかった。
中西:平野さんは何キャップ?
平野:えー、14。
中西:けっこうありますね。
平野:それで僕、ひと言、言いたいんですけど。僕の欲求なんですけど、代表の山田タク(卓也、東京ヴェルディ1969) は見てみたい。
中西:あー。まだキャップが付いてない。
平野:付いてないんですよ。
中西:あれだけ最近、代表に選ばれているのに。
平野:彼もすごい調子いいし、けっこう出たらいい仕事するんじゃないかなって。
中西:僕もそう思います。
平野:何か行くたびにね、いつも「候補だね、候補だね」みたいな。「また出なかったね、お前」みたいな。
中西:ヴェルディでは。
平野:はい、もう。
中西:それはリアルな話でありますよね。
進藤:そういう状況で、モチベーションを保つのってきっと大変なんでしょうね。
中西:僕らから見ると、まだ交代枠が残ってるのにって思うんです。特にテストマッチなんで、テストしようよ。ここで結果を求められてるわけじゃないから。山田卓也選手も見たいじゃないですか、調子いいし、点も取ってるし。短い時間でも活躍できそうな選手ですよね。サイドバックもできるしボランチもできるし。廣山(望、モンペリエ) 選手も見たかったなとか。その辺が今、ジーコ監督に言いたいところですかね。では、第4 問「アジアの強豪とのワールドカップ予選は油断できない」。全員「yes 」。ちょっとワールドカップ予選の話をしたいんですけど。2004年の2 月18日でしたかね。いよいよワールドカップ予選が始まるんですけど。これは油断できないですね。
早野:うん。一試合勝つことだけじゃないんで。その積み重ねで最後、本大会に向けていくための一試合なんで。どんどんチームが乗っていけるような形が大切だし、長い戦いをするときの選手層。実際に戦える、キャリアを持った選手をどんどんチームで使っていってほしいと思うんです。そういった部分では、油断もそうだし、勝てるときにきちっと経験者を作って、最後に勝負というときにドンといってほしいなというのが期待ですね。
中西:いやあ、ホントそうですよね。ワールドカップ予選に出て、いろんな選手がたくさんいて、そのなかで一番いい選手をパッと最後の本番で。ケガ人もいますからね。
井原:欧州組とか、全試合毎回呼んでたら、年間で呼べる試合数は決まっているので、一番大事なときに呼べなくならないように。一次予選とかだったら、この選手は呼ばなくても大丈夫かなというふうに監督も考えてやっていくと思うし。そのなかで、チャンスを与えられた選手は頑張ってやっていかなきゃいけないし。ただね、アウェイになると厳しい試合が多いと思う。あの韓国だって、国内に居る選手だけで臨んだ・・・
中西:アジアカップ2004年中国大会の予選(2003年10月)。
井原:2 連敗してるんですよ。
中西:しかもベトナムですよ、相手は。もうひとつはオマーンですよ。ベトナムはFIFAランキングで100 何位かな。
井原:香港が130 いくつで、そのもっと下でしょ。あり得ない話だよね。
進藤:それ、敗因は何ですか。アウェイだからなんですか。
中西:普通じゃないですよ、雰囲気が。平野さん。ワールドカップ予選のアウェイってどうですか。チャムシル('97 年11月1 日、ソウル)で2-0 で勝ったじゃないですか。
平野:ああ、ありましたね。
中西:ワールドカップ出場の瀬戸際。名波選手と呂比須(ワグナー、元日本代表)さんが得点した、あの試合。途中から出たじゃないですか。どういう雰囲気なんですか。
平野:異様ですよね、まず。アウェイの、特に韓国でやる試合というのは。張りつめたような感じがあって。僕、途中から出たんですけど、何となくいつもと違う感じのグラウンドのように見えましたし、選手も殺気立っているというか。
中西:相手に。
平野:相手もそうなんですけど、味方も何となく。2-0 で勝てましたけどね。やっぱりすごく緊張感のあるような、ちょっと味わえないような感覚でしたけどね。
中西:チャムシルのときは絶対に負けられなかったじゃないですか。
井原:引き分けもダメだったので。そういうシチュエーションですごくプレッシャーがありましたけど、ただ韓国が出場を決めていたからまだよかったんです。あれがもし決まってないときの予選だったら、もっとすごかっただろうね。そういう部分がこれから来年、あると思うんですよ。どこのアウェイに行っても。余計に難しい試合が増えるんじゃないかと思いますよね。絶対にどの国も対日本の対策を考えてやってくるし。
中西:研究し尽くしてくる戦いですからね。中東でのアウェイは難しいと言うんですけど、僕も中東のアウェイに行ったことがあるんで。環境って、半端じゃないんですよ。
進藤:行った先ですか、行く道すがらも。
中西:まずね、行く道すがらも、平野さん、大変でしたね。サウジアラビアに行ったときは。あ、平野さん行ってないよ。
平野:はい、行ってません。
中西:中東は行ったことないですか。
平野:中東はもちろん、行ったことあります。オマーンだとか。
中西:移動が大変じゃないですか。8000kmですよ、片道。
進藤:ただ移動してるだけでもしんどいのに。降りてすぐプレイしなきゃいけない。何か、やってるんですか、なかで。
平野:いや、みんな寝てますよね。
井原:寝てるかな。寝るのが一番。
進藤:ジャージに着替えたりして。
平野:着替えますね。飛行機に乗った瞬間、みんなバーッ脱ぎだして。
中西:スウェットに着替えて。
進藤:ね、そういうケアがきっとすごく大事なんでしょうね。
中西:まず気圧が変わるのが、体にとってはきついんですよ。
進藤:飛行機のなかで。
中西:新幹線でも気圧が変わるんで。移動の大変さって、気圧が変わることだと思います。
進藤:ケガとか病気とかだけは絶対しないでほしいと思いますよね。
中西:後はね、向こうに着いて練習。早野さん。練習場所がいきなり変わることありますよね。
早野:あり得ないようなこと、平気でやられるからね。他の国って行ったら、バスをパトカーが先導して行かなければいけない。すごいなと思うけど、そうしないと危ないっていう状態が普通なんだよね。
中西:常にパトカーが前とか後ろにいて。
早野:確かに移動は国内でJ リーグやってもも、飛行機に乗るだけでも、新幹線に乗るだけでも、アウェイって時間が短くても大変だと思うんですけど、それは慣れていかなきゃいけない。アウェイだからとみんなが思い始めて、それが催眠術のようになってしまっては非常に不利。ヨーロッパに行ってる連中は、そういうことにかなり慣れてると思う。
中西:移動するのも慣れてますからっていうコメント、最近聞かれますもんね。
早野:チャンピオンズリーグで向こうに行ったら、完全にアウェイだし。そのなかで選手を見てると、平気な顔をして出てくるから。客席から水を投げられようが何しようが、「何してんの」って感じで。やっぱりそれにまず慣れないと。やる前から日本が「アウェイだから、アウェイだから」ではなく「そんなのふざけんなよ」と出ていけるようになったら、ランクアップすると思うね。
中西:それが今回のワールドカップ予選の一つのキーになるかもしれませんね。気をつけなきゃいけないけど、慣れなきゃいけないという戦いですよね。

後編へつづく


取材・文:CREW
撮影:大崎聡