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2003年のジーコジャパンはどうだったんだ!? 暮れも押し迫った12月28日、横浜赤レンガ倉庫に元日本代表、現役Jリーガーらを集めて開催されたトークバトルの模様をフルバージョンでお届けします。

ぴあトークバトルVol.32
「どうなる!? サッカー日本代表」

前編

<ホスト>
中西哲生(なかにしてつお、スポーツジャーナリスト)
'69年、愛知県生まれ。同志社大から'92年に名古屋グランパス入り。'97年に川崎フロンターレへ移籍してからはキャプテンをつとめ、'00年にJ1昇格を果たした。Jリーグ通算95試合7得点。現在はスポーツジャーナリストとして「ズームイン!!SUPER」(日本テレビ系)、「ニュース23」(TBS系)などに出演中。

<ゲスト>
井原正巳(いはらまさみ、サッカー元日本代表主将)
'67年、滋賀県生まれ。筑波大時代の'89年から日本代表DFとして活躍。'90年に日産FC(現横浜・Fマリノス)入り、DFの要として横浜マリノスを牽引した。'00年、ジュビロ磐田へ移籍。'01年からは浦和レッズでプレイし、昨年現役を引退。Jリーグ通算297試合5得点。日本代表通算123試合5得点。現在はサッカー解説者として活躍している。

岩本輝雄(いわもとてるお、名古屋グランパスエイト)
'72年、神奈川県生まれ。横浜商大高を経てフジタ工業入団。チームがベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)となり、'94年Jリーグ昇格を果たす。同年日本代表にも選出され、その後川崎フロンターレ、ベガルタ仙台などJ1とJ2合わせて5チームを渡り歩く。’03年オフに名古屋グランパスエイトへの移籍が決定した。J1通算160試合27得点、日本代表通算9試合2得点。

川上つよし(かわかみつよし、東京スカパラダイスオーケストラ)
'67年、東京都生まれ。スカパラ・リズムセクションを支える屋台骨にして、メンバー中一番のスカ・コレクター兼ソウルフリーク。その守備範囲の広さからDJとしても活躍。最近では若手ロックステディバンド、Rocking Timeをはじめとし、プロデューサーとしての活動も多い。自他共に認める釣り好き・サッカー好きであり、以前に刊行したCDつきエッセイ集「川上つよしのつれづれ日記~無類の面倒くさがり屋がゆく~」に、その思い入れの強さが伺い知れる。また、スカパラとしての活動の他に、謎のスペシャル・スカバンドSUPER Xのベーシストとしても暗躍中。

北澤豪(きたざわつよし、元サッカー日本代表)
'68年、東京都生まれ。修徳高校から本田技研を経て'91年読売クラブ(現・東京ヴェルディ1969)へ移籍。Jリーグ初年度の'93年と'94年のチャンピオンシップ優勝メンバー。日本代表としてもフランスワールドカップ出場に貢献した。'02年に引退。Jリーグ通算265試合41得点。日本代表通算59試合3得点。

中西:ぴあトークバトル スポーツ快楽主義 VOL.32「どうなる!? サッカー日本代表」~2003年を振り返って~ Supported by キリンビール大学 サッカー部。このイベントはサッカー日本代表オフィシャルスポンサー、キリンビールの協賛でお送りします。さあ今年を振り返って、2時間熱いトークバトル。みなさん、一緒に盛り上がっていきましょう。よろしくお願いします。
会場:拍手
中西:それではさっそく、本日の出演者をご紹介していきます。温かい拍手でお迎えください。まずはこの方です。ベガルタ仙台から名古屋グランパスエイトへの移籍が決まりました。左サイドのスペシャリスト、岩本輝雄選手です。
会場:拍手
中西:いやあ、人気ありますね。
岩本:いやいやいや。
中西:僕、同じチームだったんですよ、昔。知らない人もいると思いますけど。
岩本:いや、知ってると思いますよ。フロンターレ(川崎)でしたっけ。そういう時期もありましたね。あのとき弱かったですよね。
中西:昇格したじゃないですか! 半年彼がキャプテン、残り半年僕がキャプテンやったんです。
岩本:そういう時もありました。
中西:今年はね、いろいろありましたけど。
岩本:そうですね。まあ、楽しかったですよ。落ちちゃったのは残念ですけど。
中西:まあ、それはね。切り換えて。
岩本:来年、頑張ります。
中西:今日はその話も含めて、いろいろお話お願いします。よろしくお願いします。続いてはこの方です。ぴあトークバトルには2度目の登場となります。音楽業界でもサッカーフリーク度は、1、2を争います。東京スカパラダイスオーケストラから、川上つよしさんです。
会場:拍手
川上:どうしてこのメンツのなかに僕がいるんだって感じですよね。
中西:サッカー好きとして有名ですし、サッカーフリークですし、本当にお詳しいので。今日、川上さんが来た瞬間に服装を見て思わず「今日は何かあったんですか」と聞いてしまいましたが。
川上:ちょっとね、ビシッと。
中西:かっこいいですよね。僕もネクタイとかしてくればよかったなって。年末だから、今日はビシッと。
川上:そうですね。ファン代表として、気楽に言わせてもらいます。
中西:よろしくお願いします。続きまして、現在解説者として、また東京ヴェルディ1969のクラブアドバイザー、JFAアンバサダーとしても活躍中の北澤豪さんです。
会場:拍手
中西:相変わらずおしゃれで。質のいいこのジャケット。光沢がちょっと。
北澤:触らないでよ。
中西:触っちゃいました。今日もまた、楽しいトークを。
北澤:そうですね。今日は皆さんと一緒に楽しい話をしたいと思います。
中西:よろしくお願いします。今日は素足ではないんですか。
北澤:素足はラモス(瑠偉、元日本代表)さんだけですよ。この間、韓国に行ったんですよ。すごく韓国って寒いじゃないですか、今。ちゃんと靴下履いてましたよ。
中西:よろしくお願いします。そして最後はこの方です。年明けすぐ、1月4日に国立競技場での引退試合を控えておられます。マリノス(横浜F)、ジュビロ(磐田)、レッズ(浦和)OB、そして元日本代表キャプテン、井原正巳さんです。どうぞ!
会場:拍手
中西:かっこいいっすね。背も大きいし。モデルみたいですよね。
井原:ありがとうございます。
中西:引退してから1年で3回も出ていただいて。いつもおもしろい話をたくさんしていただいて。現役時代の秘話もありますし、解説者としての話もいろいろしていただけるので楽しみです。あと、1月4日に引退試合も待ってますので。
井原:練習やってます、頑張って。
中西:何かもう、完全に現役の体になってきてますよね。
井原:でもね、1年ブランクがあるんで、普通にまっすぐ走ったりするのはある程度戻ってきたんですけど、スピードとかね、横への対応とかね。
中西:キュッキュッとした動きが。
井原:そう。厳しいんですよね。
中西:そうは言ってもちゃんと仕上げてきてますよ。1月4日、国立ですよね。
井原:はい。
中西:皆さんぜひ足を運んでください。すばらしメンバーが揃っていますから。
井原:頑張りますんで、よろしくお願いします。
会場:拍手
中西:まずはですね、「ぴあトークバトル スポーツ快楽主義 VOL.32『どうなる!? サッカー日本代表』」、2003年を振り返っていくんですが、その前に乾杯ですね。今日はスポンサーがキリンさんということで、みなさんにはキリンのお飲み物、フリードリンクでお配りしております。それでは、僭越ながら私が。日本サッカー界のますますの発展を願って乾杯したいと思います。乾杯!
会場:乾杯。

質問 川上氏 井原氏 岩本氏 北澤氏
1. 2003年の成績は6勝5分5敗だが、もっと勝ってほしかった yes/no yes yes yes
2. 東アジア選手権は、優勝しなければならなかった yes yes yes yes
3. 日本代表よりも、韓国代表の方が強い no no no no
4. 日本代表のレギュラーは欧州組を中心に構成すべきである yes yes/no yes yes/no
5. 藤田俊哉選手は、日本代表に欠かせない存在になった yes yes yes yes
6. 久保竜彦選手を、レギュラーで使い続けてほしい yes/no yes/no yes yes/no
7. アンダー22、20代表の選手の中に、A代表に招集してもらいたい選手がいる yes yes yes/no yes
8. 日本代表にとって、2003年は収穫の多い一年だった yes yes yes/no yes/no
9. 2月に始まるワールドカップ一次予選は、楽々突破できる no yes/no yes yes
10. 選手たちには、どんどん海外移籍を目指してほしい yes yes/no yes/no yes/no
11. ジーコ監督に、ドイツワールドカップまで指揮をとってほしい yes yes yes yes

中西:いつも最初に言うんですけど、一回席に座ってしまうと立ちづらくなってしまってですね、ビールをもう一杯飲みたいなってときに行きづらい雰囲気になってるんですけど、気にせずどんどん、どんどん、誰がしゃべっていようとカウンターまで取りに行っていただいてかまいません。それでは11の質問からスタートしていきたいと思います。皆さんには「yes」、「no」の札の方を用意してあります。まずは最初の質問「2003年の成績は6勝5分5敗だが、もっと勝ってほしかった」。川上さんだけ、「yes」、「no」ダブルで挙げてました。
川上:いやこれはね、弱いところとばっかりやればもっと勝てたし。けっこう強いところとやってたじゃないですか。
中西:まあ、ここ最近はすごいいいマッチメイクがされてましたからね。
川上:特にアウェイのルーマニア(’03年10月11日、ディナモ・スタジアム、1-1)とかね、チュニジア(’03年10月8日、エル・メンザ競技場、1-0日本の勝利)とか。これはまあ、成績はいいじゃないですか。
中西:成績はこれでいいと。要するに、強いチームとやって経験を積むのも大事だし。
川上:そうですよ。楽勝の試合ばっかりだったらあまり実にならないですからね。
中西:岩本選手は「yes」。
岩本:「yes」。
中西:現役の選手ですから、なかなか言いづらい部分はあると思うんですけど。
岩本:あまり日本代表の試合は見てないので。ルーマニアの試合は見てましたけど。あの、外国でやったやつですよね。
中西:外国でやりましたよ。
岩本:その辺は見ましたけど、あとは見てないっすね。
中西:代表の試合、見ないですか。
岩本:代表は見ないで、ヨーロッパの試合を見ます。
中西:海外は?
岩本:海外は見ますけど、代表は時間的にね。夜中とかじゃないですか、けっこう。
中西:はい。
岩本:ルーマニアの試合とかも、朝方じゃないですか。
井原:外国の試合の方が夜中だぞ。
会場:笑い
岩本:また、やるじゃないですか。それで、あとは東アジアのときとかも、7時とかじゃないですか。食事行ったりとか。
北澤:ご飯中だからね。
岩本:日本対韓国の試合はすごく興味があったんですけどね。同じチームの、金殷中とか出てたんで。そういうのは興味があったんですけど、見てないです。
中西:でも、後輩じゃないですか。日本代表のね、みんな。
岩本:いえいえ。だけど、応援してるんで勝ってほしいですけど。
中西:その前に一つ聞きたいのが、代表に復帰したいですよね。
岩本:チャンスがあれば。
中西:今年、いいパフォーマンスずっとしてたじゃないですか。呼んでほしかったっていう気持ちは。
岩本:落ちちゃったんで。
中西:それはそうですけど。ね、北澤さん。いいパフォーマンスでしたよね。
北澤:すごかったよね。フリーキックとかね、左足っていう部分ではね。
中西:この間のフリーキック、すごかったね、あれ。
北澤:人にはできないね、あれ。
岩本:ありがとうございます。
中西:あれ、何戦だっけ。
岩本:ジェフ(市原、’03年10月18日、仙台スタジアム、1-2ベガルタ仙台敗れる)戦。
中西:ジェフ戦だっけ。30mぐらい。
川上:あ、すごかった。
北澤:そうかと思えば、ループもあるでしょ。
中西:ループはどこだっけ。
岩本:東京(FC、’03年9月20日、仙台スタジアム、2-2)戦ですね。
中西:この間のジェフ戦で、30mのフリーキック。普通曲がるんです、フリーキックって。でも、この間岩本選手が蹴ったフリーキックは真っ直ぐ。井原さん、あれ難しいですよね。
岩本:でも井原さんの、あれ何だっけ。アジア大会(’94年10月11日、2-3日本敗れる)あったじゃないですか、昔。
川上:韓国戦の。
岩本:あれみたいですね。あれの方が全然すごいです。
井原:一緒のチームだったからね。
中西:あのとき3人とも代表だったじゃないですか。
岩本:あれ、僕がパスしたんですよ、知ってます?
井原:だから覚えてんだろ。あははは。
中西:そうだったんだ。
岩本:そうなんです。
川上:あれ、すごかったっすよね。
中西:すごかったです。
川上:未だに覚えてる。サイドネットだった。
中西:アウトにかかり気味で。
北澤:1-0で負けてたときなんだよね。そのシュートで同点に追いついたんですね。
中西:で、最後に負けちゃったんですよね。でも、すごいシュートでしたね。
北澤:すごいシュートでしたね。
中西:でも、岩本選手のあのフリーキックはすごかったな。あと、東京戦はループだったんですけど、左足のインサイド。アウトでかわして、もう一回インで持って、アウトでかわして、ループ。
岩本:見てますね。
中西:解説者だから、ちゃんと見てないと。あのシュート、すごかったですよね。
北澤:予想がつかないんだよね、だから。バコンっていうシュートもあるし、ポーンっていうループもあるし。普段も予想がつかないんだけど。
中西:うまい。私生活も予想つかない。
北澤:そこがたぶん、うまく出てるんだろうけど。
会場:笑い
中西:いきなり電話がかかってきて、何かなって思ったら、「元気? じゃあね」って切っちゃう。自分でかけてきておいて、「ごめん!」って。
岩本:次、いきましょう。
中西:代表戦見てなかったということですが、もうちょっと勝ってほしかったですか。
岩本:でも、対戦相手が強かったですよね。
中西:ああ、今年は。
岩本:ええ。いい試合してましたけど、本音を言えば。
中西:最初から本音を言ってくださいよ。井原さん、どうでしたか、今年。
井原:やっぱり川上さんがおっしゃられたように相手がね、アルゼンチンとか強い相手。
中西:強かったですよね。
井原:負けてもしょうがないかなっていう相手ではあったと思うんですよね。そのなかで、ただホームでの試合はもうちょっと勝てたんじゃないかなって。ホームゲームでの勝ち星が少なかったのが残念かなと。ただ全体を通しては、内容的にも強豪相手にいい試合をしたと思うんですけど、そのホームでの結果という部分で、ちょっとだけまだ満足いかない部分があるかなと。
中西:北澤さんは。
北澤:親善試合が多かったんだけど、相手が本気なのね、やっぱり。親善試合で、シーズンオフでシーズン中の力が発揮できないコンディションの悪いときでも。2002年のワールドカップで、日本代表はやっぱり活躍したわけじゃないですか。それで、相手がしっかり戦ってくるわけでしょ。だから、やはり成績を出すのは難しいんだけども、ただベスト16にいったなかで、立場的には勝っていかなければいけない存在。勝つっていう前提でやっぱりいってほしいなっていう思いなんですよね。
中西:セネガル戦(’03年9月10日、新潟スタジアム、0-1日本敗れる)もね、僕見てたんですけど、セネガルだって、1週間ぐらい前から来てコンディション作って。
井原:セネガルとかカメルーン(’03年11月19日、大分スタジアム、0-0)とかマジでしたから。ナイジェリア(’03年8月20日、国立競技場、3-0日本の勝ち)ぐらいかな、メンバーがちょっと揃わなかったのは。
中西:ちょっとじゃないですね。ベンチに3人しかいなかったですからね。
井原:やっぱりね、ジーコが監督してるチームだし、ジーコに対して失礼のないようにっていうのもあると思うんだよね。
中西:なるほど。
井原:だから相手チームもしっかりとそういうメンバーを組んできたり、また、相手の国のVIPの人も、ジーコに対してはやはり、すばらしい選手としての経歴があるから、恥じのないような対応をしようっていう部分があるのかなって感じます。
中西:この間ウルグアイ(’03年3月28日、国立競技場、2-2)とやったときに、マンチェスターUのフォルラン(ディエゴ)選手っているじゃないですか。フォルラン選手が、ジーコ監督のところに行って、これはジーコ監督から聞いたんですけど、「私のチームにはあなたが入ってます」って言ったらしいですよ。サッカーゲームをやってるらしくて、自分のチームにジーコを。
会場:笑い
井原:それを言いに行ったんだ。
中西:「尊敬してる」って言いに来たらしですよ。僕もやってるゲームなんですけど。
北澤:ジーコもCMしてるしね。
中西:そうそう。まあ、全世界でやってるじゃないですか。それでわざわざ「尊敬しています。握手してください」って来たらしいですよ。やっぱり他のチームの選手にも、憧れている選手がいっぱいいるんですよね。そうなるとやっぱり尊敬の念がね、下手なことはできない。すごいヘディングシュートを決められちゃいましたけど、フォルランに。
川上:でも、こうピコピコやってる。
中西:そうそう。選手はジーコ、みたいな。そうやって思うと、やっぱり北澤さん、選手も、ジーコ監督が相手にいるっていうのはけっこう大きい。
北澤:大きいですし、ちゃんとやらなければいけない。ボールパフォーマンスのときね、すごくうれしそうにするじゃないですか。「やったー!」って。当たり前のようにゴールを入れた後にしてるわけじゃなくて、ガッツポーズ見せたりとか。あれって意気込みを感じるじゃないですか。そこまでやる気できてるってことだよね。そのなかで勝っていってもらいたいなっていうのはありますけど。大丈夫?聞いてる?
岩本:大丈夫です。
中西:今、遠くに行ってましたよね?
岩本:いい話だなと。
中西:でも井原さん、そうですよね。強いチームが本気できたというのは間違いない。
井原:相手の顔つきとかね、プレーを見て、ボディコンタクトとかを見ても、マジできてるなっていう感じがしたし、勝ちにきてるなと。普通親善試合だと、ちょっと遊び半分で、旅行がてらって感じで、特に日本でやるゲームなんか。
中西:以前はそうでしたよね。
井原:そういう雰囲気を感じるんだけど。でも、見ててもそれはかったので。
北澤:以前はね、トットナム(ホットスパー、イングランド)とかとやったじゃないですか。90年代だったんですけど、秋葉原に買物に行くんですよ、試合の前日に、電化製品を。僕らはマジじゃないですか。むかつくじゃないですか。かなりモチベーション上がりましたよ。でも今はそんなチームはないですからね、ほとんど。
井原:試合の前の日にプールでちょっと日光浴してたりとか。そういうチームが昔はけっこうありましたけど。
中西:今はそんなことは当然。
北澤:ないですよ。
中西:それぐらい日本代表を意識しているっていう。
北澤:もちろんですね、はい。
中西:さあそして、二つ目の質問なんですけど「東アジア選手権は、優勝しなければならなかった」。まあ、これはさっき井原さんが言った部分なんですけど。
井原:やっぱり第一回目のホスト国として、勝たなきゃいけなかったと。まあ、勝てたと思うんですよね。ただ最後の韓国戦(’03年12月10日、横浜国際総合競技場、0-0)がね、10人になったけど、勝ちたいっていう気持ちが出てたと思うから。
中西:何としても点を取ってやろうっていうね。
井原:そう。その辺は伝わってくるものがありました。ただ結果として残らなかったのは非常に残念だし、その前の香港戦(’03年12月7日、埼玉スタジアム、1-0日本の勝ち)でもっとゴールしておけば、優勝できたと思うので。その辺がちょっと残念ですね。
中西:岩本選手はどうですか。
岩本:そうですよ。最後、10人になっちゃったんですよね。
井原:誰が退場した?
岩本:大久保(嘉人、セレッソ大阪)でしょ。けっこうチャンスがあったんですけど。
北澤:人の足蹴っちゃったからね。
岩本:そうですよね。それで宮本(恒靖、ガンバ大阪)選手がヘディングして、すげぇ惜しいのがあったでしょ。
中西:やっぱり岩本選手も韓国には特別な思いがあるじゃないですか。勝ちたいっていう気持ちが。
岩本:いやもう、10年ぐらい前なんでわからないですね。
中西:でも井原さんがゴール決めたのも韓国戦だったじゃないですか。向こうの選手はもう、本気でくるじゃないですか。
岩本:当然ですよね。
中西:本気っていうか、普通の気持ちじゃないじゃないですか。そういう緊迫感は他の試合と違いますよね、韓国戦は。
北澤:当たりとか激しかったんじゃない?
岩本:かなり。大変でした、本当に。
中西:最初からそう言ってください。
岩本:まだ若かったですよ、僕は。まだ21か22歳ぐらいだったんで、プレッシャーが。
中西:21歳で代表だったんですよね。
北澤:あんときさ、10番じゃない。
岩本:イヤでしたねー。
川上:ラモスの後だったんだよね。
中西:さっきも話したけど、今31歳ですよ。見えないもんね。変わらないよね、全然。
岩本:ちょっと変わってきましたよ、やっぱり。
中西:何が変わったの。
岩本:いろいろとね。ここ3年ぐらいで変わりました。
中西:川上さん、東アジアに話を戻しますけど、香港戦。
川上:後半ね。
中西:21本シュート打って。
川上:あれはちょっと改善の余地がありますよね。
中西:ちょっと不完全燃焼っていうか、何とかしてほしかったっていう気持ちが。
川上:ワールドカップ予選でも、引いてくる相手にも点を取れないと。得失点差とかがありますからね。オマーンと、ちょっと飛んじゃいますけど、もし2試合やって引き分けだったりしたら、得失点差になるわけでしょ。それ、やばいですよね。弱い相手からしっかり点を取れないと。
中西:大事ですよね。北澤さん、香港戦あの状況で、選手たちもしくはスタッフは全員わかってたんですかね、もう1点取らなければいけないことが。
北澤:香港戦ね。
中西:何か、どうしても点を取らなきゃいけない選手交代じゃなかったような気がするんですけど。
北澤:うーん。
中西:まあ、例えばフォワードの選手を入れて。
北澤:悪くなかったんだよね、進め方としては。けど、香港もよかった、あの試合は。守備がきっちりされててね。ただ結果論なんだけど、チャンスに決められないってとこなんだよね。ポストに何回も当たったし。大久保の入ってもおかしくないシーンがあったし。その辺が決められるとのってくる。2点目、追加点が取れてくるとリズムに乗れる。その辺がまだうまく進められないのは、ちょっとメンバーが違うなかでの、難しいところだったんじゃないですか。
中西:メンバーが毎回変わって。
北澤:毎回変わったし、あのときは少し欧州組がいなくて。そういうなかで、崩さなきゃいけない状況で、じゃあどうコンビネーションを崩していくかってところがうまく出なかった。ただやっぱり、そういった形は第一次予選でもあり得ることだから。これから積まなければいけない。進め方としては、立ち上がりからやっぱりガンガンいかないと。
中西:ガンガン。
北澤:相手にプレッシャーをかけるっていうか。
中西:「おりゃあ!」って感じ。
川上:ワールドユースで日本がブラジルに負けた試合(’03年12月12日、ドバイ、1-5)、最初のところ、すごかったですよね。
中西:ブラジルはいきなりトップギア入ってましたよね。
川上:あれですね、要は。
北澤:だからもっと言えば、相手がどこだからじゃなくて、ウォーミングアップからきちんとやって、ピッと笛が鳴った瞬間から。
中西:プレスをガーッと。
北澤:ガーッとかけられる状況を作っていかないと、白星が確実なところには何点取ったかっていう勝負になってくるから。
中西:それがちょっと見られなかった。
井原:僕はね、香港戦1-0で終わったときに、次の韓国戦は勝たなきゃいけないことになったじゃないですか。逆にそのときは、この方がよかったなって思ったんです。
中西:僕もそう思いました。
井原:ホームで、韓国に勝ちにいくサッカーを見たいなと思って。そういうジーコの采配も見たかったし。得失点差で負けてるわけだから、絶対に引き分けじゃダメだっていうサッカーをしてくるだろうなって思ったんで、すごい期待してたんです。だから大久保の退場はちょっともったいなかったっていうのはあるんですけど。結局、最後優勝できなかったから、香港戦に戻って、あそこでもっと点を取ってればっていう結果論的な部分はあるんだけど。ただ、もし11人で韓国とやって、あれだけの攻撃的なサッカーができたとか。10人になったら、ジーコが今まであれだけ選手交代をしなかったのに、急にし出したというのは、自分にとっては初めて見れたから新鮮でしたよね。
川上:初めてでしたよね。
北澤:絶対、あり得るよ。10人になってしまうシーンって。だって俺らのときもそうだったじゃん。PK取られたりとかさ。何でもないところでPKでやられたりとか。日本でやってんだからさ、レフリー、直前で替えちゃえばいいんだよ。
会場:笑い
北澤:何かイヤじゃない。いつも韓国戦の時とかさ、ホームなのに不利になっちゃうじゃん。でも、今までの経験から言うと、それぐらいむかついたわけ、僕は。何かさ、あれだって退場? ねぇ。
井原:そうだよね。2枚目、あそこで出す必要があるのかどうかっていうのがあったし。
中西:2枚目だったら、ちょっと踏みとどまりますよね。
井原:そう。18分ぐらいでしょ。
北澤:ああもう! 試合1時間前にレフリー替えなきゃ。
中西:新しい理論がここで確立されましたけど。1時間前にホームのときは替える。それまでに替わってないと何か不利なことが起きる可能性があるってことですか。
北澤:だって、今まで多いもん。ホームでやっても。レフリーによる微妙な判定。
中西:今まで何かありました?
北澤:アジアカップのときとかでも、黄善洪(元韓国代表)に何かしたとかで、ピッとかなって、PKになっちゃって。
井原:俺がPK取られたのはそうですね。
北澤:何もしてないですよね、あれね。
中西:そうでしたっけ。
北澤:やってるんだ。
会場:笑い
井原:体を入れただけだよ。
北澤:正当だよね。
井原:正当、正当。フランス・ワールドカップ予選でも、UAE(’97年10月26日、国立競技場、1-1)と予選をやったときに、国立競技場で、何かちょっと暴動みたいなのが起きたことがあるんだけど、1-1の引き分けで終わったんですよ。そのときの審判は、ロスタイムを全然取らなくて。
中西:あ、ありましたね。
北澤:ピッて笛ふいて、逃げて帰ったよね。
井原:そう。買収されてたっていう話がね、出てたから。UAEを勝たせたらいくらあげるとかって、そういう話を持ち掛けられたってその審判が言ってたからね。
中西:ええ!
川上:怖いですね。
北澤:正当じゃなきゃいけないかもしれないけど、それだけかかっているものが大きいってことなんだよね。そういうことなのかわからないけど。
川上:この間のトヨタカップ(’03年12月14日、横浜国際総合競技場、ACミラン-ボカ・ジュニアーズ、1-1、PK1-3でボカ・ジュニアーズの勝ち)で、ボカの監督がまずまっさきに、審判の国籍はどこだって。それを一番気にしてたって。で、ロシアならいいって言ったらしい。よくわからないけど。
中西:ロシアが一番公正なんですかね。
川上:わからないですけど。ビアンチ(カルロス、ボカ・ジュニアーズ監督)監督でしたっけ、あの人。
中西:でもやっぱり、レフリーって大事ですもんね、試合してても。
井原:あるでしょ、そういうの。
岩本:はい。大変ですよ、やっぱ。いろいろと。
川上:現役の選手に聞きたいですけど、けっこうボロクソ言ったりするじゃないですか。
井原:言うタイプじゃないの?
岩本:レフリーにですか。僕は言わないっすよ。言っても変わらないので。
北澤:大人じゃん。
岩本:昔っから言わないっすよ。笛が鳴ったらサッと引き上げますよ。
北澤:そうかあ?
井原:俺、何か言ってんの、見たことあるぜ。
中西:僕も見たことありますよ。
井原:ブツブツ、ブツブツさ。
川上:内容まではわからないですけど、明らかに。
岩本:言ってる人はいますよね、けっこう。
北澤:言ってる人?
岩本:僕、けっこうカードをもらっちゃう方なんで。
中西:もらってんじゃないですか。
北澤:そういう経験があるんだろ。
岩本:だから言わないようにして。試合前必ずレフリーと握手するようにしてますよ。
会場:笑い
井原:それは普通みんなしてるだろ。
中西:それはありますよね、絶対。僕も、ファウルしたらすぐにレフリーに謝ってましたから。目を見てすぐ謝ってると、レッドカード出すのちょっと止めたりしますからね。
井原:都並(敏史、元日本代表、サッカー解説者)さんとかね、すぐ両手合わせて謝る。
でも、好印象は好印象だよね。
会場:笑い
川上:それが大久保には足りなかったんですね、この間ね。
中西:謝ることを教えなきゃ。でもレフリーも人間ですから。いい印象を持った人間には。例えば岩本選手が言ったように、試合前に握手して。
岩本:大事です。
中西:よく言うよね、「よろしく」とかって。
岩本:フリーキックのときは必ず相手の壁が前に出てくるんで、ちゃんと下げてねって頼みますよ。2歩ぐらい出てきますからね、必ず。
中西:2歩ぐらい。それ大きいもんね、けっこう。
岩本:でかいです、でかいです。
中西:そうやって言ったりしてるもんね、試合前。
岩本:必ず言います。
中西:代表の試合もそうですけど、サッカー以外の部分で決まってくるところも大きいですからね。純粋に、ただサッカーだけやってればいいってわけじゃないですから。それから、北澤さんや井原さんが解説している試合で、「何、言われてるかな」とか気にしている選手、いますよね、きっと。だって、岩本選手と電話してて、今日解説だって言うと、「いいこと言ってね」って僕に言うもん。
岩本:はい。
井原:俺の方見んなよ、俺が言ってないみたいじゃない。誉めてるよ、誉めてるよ。
中西:来年から、井原さんの解説は岩本選手に優しくなると思いますよ。やっぱり仲がいいと気になるじゃないですか。
井原:そうですね。
中西:解説してて、何かありますか、ハプニングとか。選手を見てて、言いたくても言えないこととか。
井原:テレビで「ああ、いいファウルでしたね」って言っちゃったんですよ。
会場:笑い
井原:そしたら…
中西:問題になってましたよね。
井原:ファウルしてはいけないから、「仕方なくファウルになってしまいました」とか。
川上:何か新聞で論争になりましたよね。
井原:ありましたね。「今の状況的に、ここでファウルをせざるを得なかったですね」とかいう言い方だといいんだけど、いいファウルみたいなものはないとか言われて。
川上:青少年の教育によくないみたいな話で。
井原:おしかり受けました、上の方から。
中西:でも、それはそうですね。ディフェンスとしてはやっぱり。
井原:ディフェンスとしては、流れのなかでここはちょっとオブストラクション気味でも、ちょっとプレーを止めるようなファウルをしてしまうときがあるんですけど。
川上:うまかったですからね、この人ね。
中西:ちょっと、それは語弊があります。
井原:そういうときにどうしても、ディフェンスの立場になって話をしてしまうことがあって、これはダメなんだっていうのは。
川上:僕らはそういう解説の方がうれしいですけどね。
中西:でも、ダメなんです。僕も一回あって、「自殺点」って言って怒られました。
川上:あ、そうか。昔は普通に「自殺点」でしたよね。
中西:「オウンゴール」って言わないといけないんです。北澤さんは何かないですか。
北澤:いろいろあるじゃないですか、「自殺点」だって。センタリングもクロスだし…ん? 引いたな。
会場:笑い
川上:センタリングって言わないですよね。
北澤:今はクロスだからね。ラインズマンも言わないで、副審でしょ。
中西:言っちゃダメですよね。センタリングってことはない、クロスなんです、実は。
川上:へえ。
井原:トラップなのかコントロールなのかとかね。ボールを止めるときに。
中西:表現方法がね。
井原:どっちなのかっていうのはありますよね。
北澤:ラジオやったんです、昨日。難しいね。画面なしで伝えていかなきゃいけない。
中西:僕もラジオの解説はそうとうに難しいと思う。
北澤:実況の人も、ずっとしゃべってなきゃいけないわけじゃないですか。
中西:状況をね。
北澤:入る隙がないしね。
中西:いつ話したらいいんだ、って。
北澤:後半になってくると、膝が入ってくる。「今!」って。
中西:「今、しゃべって!」みたいな。
北澤:大変。タイミングがね。
川上:今まで現役をやってて、急に解説する側に回るっていうのはどういうもんですかね。みんな選手とか、仲間みたいなもんじゃないですか。あんまり言えないですよね。
井原:言えないですね。最初の頃はやっぱり気を使って。自分も選手のときはこういうこと言われたらヤダなって。
川上:選手のとき、やっぱりむかついてました?
井原:もう、メチャクチャむかついてました。
会場:笑い
井原:「状況を考えろよ」みたいな感じ。
川上:「加茂(周、元日本代表監督)さん!」とか。
井原:加茂さんはあんまり言わないからね。
中西:すごい具体的な固有名詞が。
川上:加茂さん、「青い方のチームが」とか言ってますからね。
会場:笑い
井原:「赤の10番が」とか。
北澤:いやだけどね、加茂さん。ちょっとタイミングずれてるとこありますけどね、隣で一緒にやっててもね、やっぱりすごいとこ見てるなって思うときありますよ。さすがだなって思いますよ。
川上:いや、おもしろいですよ。
北澤:一緒にやってて感激しますし。昨日、解説をやろうと思って少し休憩して自分の席に戻ったら、加茂さん座ってました。
中西:何で座ってるんですか。
北澤:あれ、そこ俺が座ってなかったっけって。
中西:岩本選手は、この人の解説が好きっていう人はいるんですか。
岩本:そうですねぇ…
中西:そういうときは、ちゃんと隣の井原さんとか北澤さんのことを言うの。
岩本:でも、あんまりないっすもんね。
北澤:ないね。
中西:ないんだ。
岩本:浅野(哲也、サッカー解説者)さんがいいっすね、僕は。
中西:ああ。グランパスのね。浅野哲也さん。
岩本:浅野さんと、J2のときは渡辺(一平、サッカー解説者)さんとか。
北澤:一平君ね。
岩本:聞きやすいとか聞きにくいとかあるじゃないですか。説明がわかりやすいとかわかいにくいとか。そういう意味で。
中西:自分のプレーとかうまく解説してくれるとうれしいじゃないですか。
岩本:中西さんとかよかったですね。
会場:笑い
井原:ちょっと遅くないか。
中西:遅っ!ここに至るまで何分かかってんの。遅かったな、今。最初に言ってほしかったよ。
岩本:でも、あまりないっすよね。J2のときも、一回か二回。
中西:一回だけじゃないかな。
岩本:新潟(アルビレックス)の試合のときに。
中西:仙台(ベガルタ)対新潟のとき。あとはあまりないもんね。僕確か、一回だけだ。井原さんもないですか、岩本選手の試合。
岩本:井原さんも、一回か二回ぐらいじゃないですかね。
井原:うん。
岩本:でも、全部負けてますよね。
会場:笑い
中西:よく覚えてるな。やたらそういうの覚えてるんですよ。
岩本:覚えてます。
中西:いつも。あの試合がどうだったとか。本当によく覚えてるよね、一つ一つのプレー。あそこでボール上げたとか。さっきも井原さんにパス出したって言ってたじゃないですか。本当によく覚えてるんですよね。
川上:井原さん、思いっきり忘れてましたよね。
井原:俺、スローインからだと思ってた。
岩本:スローインから僕に来て、僕から井原さんにパスして、シュートを蹴ったんです。
井原:そうか、そこが飛んでた。
中西:岩本選手のそういうね、記憶力はすごいんですよ。やたら覚えてるんだよね、ちゃんと。サッカーのこと。私生活はすぐに忘れちゃう、約束とか。
岩本:それはないです。
中西:でも、サッカー中継の時間とか、忘れちゃうんです。あ、今日やってたのに、テレビ見るの忘れたとか。サッカーのことはちゃんと覚えてるんですけど。
岩本:次いきましょう、次。
中西:話が脱線しました、すみません。「日本代表よりも、韓国代表の方が強い」という質問だったんですけど。北澤さん、韓国はちょっと最近、調子悪いですよね。
北澤:負けてますよね。ベトナム(’03年10月19日、0-1)に負け、オマーン(’03年10月22日、1-3)に負け。この間韓国に行ったときにね、韓国代表のOBや現役に聞いたけど、コエーリョ(ウンベルト、韓国代表監督)がよくないって。その辺からもう、チームがうまく進んでないっていうのが。
中西:よくないって言ってたんですか。
北澤:よくないって。代わるかもしれないって言ってた。
中西:ああ、選手たちも、前より意気込みがないような気がするんですけど。
川上:この間の試合もあんまり。
中西:ガツガツしてなくないですか。何か見てて、井原さんたちがやってた韓国代表と、ちょっと違う感じがするんですよね。
井原:スマートになったような感じはしますね。みんなうまくなって。だけどファイティングスピリットとかそういう気持ちの部分で日本を圧倒するようなところが昔はあったんだけど、その辺はそんなには見られなくなりましたよね。
中西:例えばヒディング(フース、韓国代表前監督)のときは、煽るのうまかったじないですか。
井原:欧州組は日本と一緒で、みんな帰ってきてなかったし。そういう部分もあるのかなってところと、監督のやろうとしているサッカーがはっきり言ってそんなに感じられなかったし。というのが自分が見たところの率直な感想です。
中西:ただ、今ヨーロッパに行ってる韓国代表の選手ってかなり活躍してますよね。
北澤:してますね。ああいうところでも活躍できる力を持ってるんです。かなりレベルは高いですよね。東アジアのときにも、中国戦のときには、全体が引いたサッカーをしてましたけど、日本が相手だと、また違う形で試合を進めるじゃないですか。あの辺、戦術がまとまってないのは確かでしょうね。ただ、日本に対しては絶対負けたくないっていうのは出てくると思いますよ。すごいこう、「よっしゃいくぞ!」みたいな雰囲気は感じるじゃないですか。この間、洪明甫(元韓国代表)のチャリティイベントで、井原さんとラモスさんと一緒に行って。韓国の選手たちと一緒に飯を食って、移動のバスに乗って。控え室で一緒に着替えて、円陣とかすごそうな感じがするじゃないですか、「うおー!」とか盛り上がるような気がするじゃないですか。ところが、全然。
中西:どんな感じなんですか。
北澤:軽く「いくぞ」だけ。円陣組んでるけど、軽いのよ。「あれ?」って思って。
中西:じゃあ、日本の方がグワーッとなってる。
北澤:なってる。まあチャリティマッチだけども、そういうの、あんまないんだよね。
井原:先輩後輩の上下関係はすごいよね。それは感じたね。
中西:例えばどういうところで。
井原:同じ大学とか、代表の先輩に対してすごい礼儀正しいというか。若い選手もみんなそんな感じで、一目置いて接してるし。何か日本でだったら、先輩に対しても呼び捨てとかでバーッとか呼び合ったりするけど。
岩本:中西さんのことですか。
中西:ちょい、ちょい、ちょい、ちょい。僕はしないよ。そっちでしょ。
会場:笑い
北澤:韓国はない。握手するときなんか、握手する手にもう片方の手を添えて。当然ね。ちょっと見習った方がいいかもしれない。
中西:岩本選手は先輩も呼び捨てじゃないですか!
岩本:呼び捨てじゃないですよ。さん付けですよ。「井原さん」って呼びますよね。「きーちゃん」とか。
会場:笑い
中西:僕のことは「オオカミ」って呼ぶんですよ。いつも言うんです。「オオカミー」って言って電話がかかってくる。
北澤:何なの、オオカミって。
中西:わからない。僕がオオカミに似てるからって。ずっとそうなんです。
岩本:あだ名でしたよね、フロンターレで。
中西:岩本選手だけですよ、そうやって呼んでたの。そういう風に人にあだ名を付けて呼ぶのが好きなんですよ。でも、仙台では。金殷中(大田シチズン・韓国)を原口って。
岩本:原口あきまさ(タレント)に似てるんですよ。
会場:笑い
井原:今度チェックしとく。
岩本:本当、そっくりですよ。もう辞めちゃって、韓国に戻ったんですけど、みんな原口、原口って言ってたんですけど、わかってなかったみたいで。
中西:わかるわけないじゃない、そんなの。でも韓国代表の選手、朴康造(ヴィッセル神戸)選手と仲いいじゃないですか。
岩本:京都のとき、一緒にやってましたね。彼が高校を出て、来たんですよね。
中西:すごく、仲良くしてたんでしょ。
岩本:よく乗せてもらいました、車に。練習の帰りとか。
井原:免許持ってないからね、まだ。
岩本:取りますよ。
井原:10年前もそう言ってたよ。
会場:笑い
中西:10年間変わってない。じゃあ、次いきましょう。第4問「日本代表のレギュラーは、欧州組を中心に構成すべきだ」。これは。井原さんと北澤さんが「yes」と「no」両方挙げてて、川上さんと岩本選手が「yes」だったんですけど。
川上:必ずしもってわけじゃないですけどね。やっぱりジーコを見てると、中田英寿(ボローニャ・イタリア)中心のチームを作ろうとしてるのが見えるから。
中西:北澤さんはどうですか。
北澤:ヒデが中心となっているのは確かだと思いますけど。ただ、その時調子のいい選手を使うっていうのは大事なことかなと思います。欧州に行っててもなかなか試合に出られない状況で、それなりに厳しいかもしれないですけど、まあその辺はうまく。モチベーションが下がってしまうのはイヤだなって。ただ、これは監督が決めることだからね。間違いなく、欧州中心だなっていうのは予想できますけど。
井原:やっぱりキャプテンは中田だし、中心は欧州組になるだろうと思うんですけど。コンディションの問題とかケガとかが出てくるし、そのなかで今年に関してもね、欧州組を呼べないときにいろんな選手が台頭してきたと思うんですよ。遠藤(保仁、ガンバ大阪)であったり、福西(崇史、ジュビロ磐田)はボランチに入ってもできるし、小笠原(満男、鹿島アントラーズ)であったり。そういう部分では、いろんなオプションが増えたことは確かなので、そのときに調子のいい選手を使っていくだろうなっていう予想はできるし、ジーコも、ある程度その辺は信頼しながら、調子の悪い選手を使うよりも、調子のいい選手ってことになっていくんじゃないかなって思いますけど。
中西:ただ、移動は大変ですよね、ヨーロッパ組の選手。行ったり来たりしてね。北澤さん、ヨーロッパに行ったりして帰ってきたら、移動だけで疲れるじゃないですか。
北澤:わからないところでくるでしょうね、微妙にね。
中西:コンディションが上がってこなかったりとかね。
北澤:かっこいいけどね。
会場:笑い
北澤:何かさ、終わって帰っていってさ。またギリギリで来てやるなんてさ。ある意味、選手やってたら幸せなことだよね。
井原:中東とかで予選をやるんであれば、欧州組の方が近いし、時差もほとんどないし、コンディションはいいかもしれない。
北澤:一回何か、インターコンチ(インターコンチネンタル杯)か何かで、カズ(三浦知良、ヴィッセル神戸)さんがジェノア(イタリア)にいてそのまま来たときに、あの人だけ調子よかったもんね。
会場:笑い
井原:シーズン真っ最中で、日本代表はオフシーズンでコンディションが全然ダメで。
中西:移動は疲れるじゃないですか。仙台だと、新幹線に乗って、東京に出てからもいろいろ移動しないといけなくて。
岩本:最近は良くなったんですけど、2年前でしたっけ、向こうに行ったばかりのときは、仙台から横浜までバスとかで行ってましたからね。
中西:バスで行ってたんですか。
岩本:ですから、自分でお金出すから新幹線で行かせてくれって言ったんですけど、清水(秀彦、ベガルタ仙台前監督)さんにダメだって言われて。
会場:笑い
岩本:バスで5時間半ぐらいかけて来て。全然ダメでしたね。J2のとき、あまり負けなかったんですけど、バスで移動したときの試合はほとんど負けてました。
中西:例えば中村俊輔(レッジーナ)選手だって、ヨーロッパに帰ってね、直でレッジョ・ディ・カラブリアに帰れるわけじゃないじゃないですか。例えばローマまで行って、そこからまたバス、車で3時間ぐらいとか。それが大変なんですよね。その後がやっぱり。今日、中村選手と話したんですけど、もうすぐ帰るんですけど、日本に来て、一生懸命ケガの治療するって感じですもんね。疲れてるし、ケガしてるし。
井原:何回もやるうちに慣れてくるだろうなっていうのはありますけどね。
中西:中田選手なんか平然としてますもんね。あれがすごい。
井原:前の日に来ても、すぐに試合できる感じがしますもんね。
北澤:試合も楽しみだし、帰るときの洋服も楽しみだね。
会場:笑い
川上:すごいですよね。
北澤:気になるもんね。試合が終わった途端、気になるもんね。
中西:何、着てくんだろうみたいな。ファッションリーダー。そういうなかで、ヨーロッパ組を中心に構成するべきだっていう話が出ましたけど、そのなかにおいて、Q5.ですが、藤田(俊哉、ジュビロ磐田)選手はヨーロッパ組になりましたが、一時的に。戻ってきて、いいパフォーマンスしてますよね。まあ元々あのくらいできるのは、ずっと使い続けていればわかったことですけどね。欠かせない存在になったと、岩本選手も大きく手を挙げてました。
岩本:仲いいんで。でも本当に、サッカー上手ですし、代表に一時入ってなかったじゃないですか。不思議なくらいですよね。
中西:どういうところが。
岩本:いやもう全て。中盤から組み立てもできますし、シュートも打てますし。中盤からあれだけ点を取れる人ってあまりいないじゃないですか。Jリーグのときも、すごく得点取ってるし。
中西:あまりこの人は、サッカー選手を誉めない人なんですよ。僕もすごい怒られてましたし。
岩本:怒ってないですよ。
中西:「何やってんだよ!」って言われましたけど、前から藤田選手のことはね。
岩本:高校のときから。
中西:「いい選手だよね」って。北澤さん、どうですか。藤田選手は最近。
北澤:さすがですよね。あの状況で入ってあれだけやれるっていうのは。
中西:いきなりでしたもんね。
北澤:俊哉は、普通に与えられればいろんなことをやれる選手じゃないですか。点も取れるし、組み立てられるし。中盤でどうしても押し潰されたりすると、居場所がなくなったりするじゃないですか。それをうまく作り出せる選手。
中西:ああ。
北澤:だから存在感がすごく大きくなったりとか、何かほしいんだけど、誰かいいことしてくれないかなってときに俊哉が入って。守備の部分でも活躍できたりとか、攻撃のアクセントをつけられたりとかね。
中西:要するに、いろんな個性がある選手がいるなかで、隙間をきれいに埋めつつ、自分の個性も出せる。
北澤:それ、俺が言いたいのはすばらしいって。そんな感じじゃなかった? 試合のとき。
中西:そうですよ。ジュビロにいた時どのポジションに入っても、自分の個性を出すんだけども、他の人のないところを補って。
北澤:左のウイングバックで考えられないよ、あのプレー。それができるっていう能力の高さ。それはたぶん、一次予選とか二次予選とか厳しいなかで、うまく打開できないってときに、彼なら何かやれるんじゃないかなって。
中西:役割分担が変わっていくなかで、藤田選手がいることでチームが安定しますからね。井原さん、どうですか。ジュビロで一緒にやっていらっしゃいましたよね。
井原:リズムを作れるんだよね、攻撃の。すごく球離れが速くて、ドリブルそんなにしないんですよ。ワンタッチかツータッチでパスをどんどんさばきながら。いい攻撃のリズムを作って、自分がいいスペースを見つけたり、ここぞと思うときにゴール前に飛び出していったりなんかして、得点に絡む仕事ができる。その辺の使い分けがすごくうまいんで、もう。ゲームにすぐ馴染む力も持ってるし。この間の代表のとき、いきなり入ったとは思えないくらい、前からチームを自分が仕切ってやってるような、そういう感じさえうかがえたし。あとは、ディフェンスの部分でも、ここでみんな取りに行くんだって時に、みんなにアピールしながらプレスをかけるタイミングとか、そういうのはすごくね。ベテランの味もあって。ジュビロとかでも、ドゥンガがいたときから、前、前、前、前っていうディフェンスをしてたんで、その辺を俊哉が先頭を切りながら、うまく中盤を意識させながらやってたなっていうのは感じましたね。
中西:僕はトラップがうまいと思うんです、本当に。止めるのがね。ミスしないんですよ。ほとんどボールを取られないです。一試合のなかで、トラップミスするのは、一、二回ですよ。本人もそう言ってましたけど、「トラップは自信あるな」って。やっぱりそこは注目してほしいですね。藤田選手のトラップ。
井原:体はね、全然ひ弱なんですけど。筋トレとか、俊哉はあまり重いのはしないんだけど、体の使い方とかあとはコントロールとかいう部分で、うまく力を入れる時と抜く時の使い分けみたいのはすごくうまいですよね。

後編へつづく

取材・文:CREW
撮影:大崎聡