チケットのことならチケットぴあチケットぴあ

こんにちは、ゲストさん。会員登録はこちら



10月10日(日)、青山ベルコモンズで行われた、初のオールキャスト女性によるトークバトルの模様を完全レポート。

カウネット Presents ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2004 VOL.38
「女性アスリートのライフスタイル」

前編

<ホスト>
佐々木明子
大学時代はラクロスのプレイヤーとして、日本代表にも選出される。学習院大学卒業後、テレビ東京に入社。入社後は「スポーツTODAY」「ダイヤモンドサッカー「丸山茂樹のゴルフの風」などのスポーツ番組を担当する。スポーツからビジネス、報道まで、多岐にわたるジャンルの番組でキャスターを務める。現在は「ニュースアイ」(毎週月曜~金曜 午後5時~5時25分)のメインキャスターを務める。

<ゲスト>
大竹奈美
8歳でサッカーを始め、双子の妹・由美とともに美人姉妹として注目される。読売ベレーザ(現・日テレベレーザ)に入団し、全日本選手権4 連覇、日本女子リーグ3連覇など、数々のタイトル獲得。L リーグでは、100 得点第一号。また、日本代表国際A マッチ通算45試合出場、32得点。'95 年ワールドカップ、'96 年アトランタオリンピック、'99 年ワールドカップなどに出場。'98 年より、プロ契約選手となる。'01 年7 月に現役引退。現在は、群馬FCホリコシ女子チームのプロコーチとして後進の指導にあたる。TVでの解説や、サッカークリニックなどで活躍中。

ゼッターランド ヨーコ
12歳から本格的にバレーボールを始め、全日本中学選手権優勝、優秀選手に輝く。早稲田大学では、関東大学リーグ6 部最下位だったチームを2 部優勝に導く。大学卒業後渡米し、'92 年バルセロナオリンピックにアメリカ代表として出場し、銅メダルを獲得。'97 年からは、ダイエーオレンジアタッカーズ(現・久光製薬)とプロ契約。2 年間でV リーグ優勝、そして全日本選手権2 連覇に貢献。'99 年6 月に現役を引退し。現在はスポーツキャスターとして活躍し、早稲田大学の女子バレーボールチームのコーチを務める。

パトリック:皆さんこんにちは。本日は「カウネット Presents ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2004 VOL.38 女性アスリートのライフスタイル」へお越しくださいまして、誠にありがとうございます。私は、ナビゲートをしてまいります、スポーツDJのパトリック・ユウです。皆さんどうぞよろしくお願いいたします。
会場:拍手
パトリック:さて、もう1 カ月半以上経ちますが、メダルラッシュに湧いたアテネオリンピック。今回、日本は37個のメダルをゲットしたんですが、そのうち17個が女性アスリートによるメダルです。本当に今回は女性アスリートが輝かしい成績を残したオリンピックだったというわけです。そこでですね、本日は女性アスリートのライフスタイルということで進めていきたいと思いますが、トークバトル始まって以来初めて、司会・進行が女性、ゲストの方々も女性。オール女性でお送りしてまいります。僕も個人的に大変楽しみにしているんですが、これから2 時間ノンストップでお送りしていきますので、お楽しみください。それでは本日の出演者の皆様をご紹介していきます。大きな拍手でお迎えください。まずは司会・進行のテレビ東京アナウンサー、佐々木明子さんです。
会場:拍手
パトリック:こんにちは。
佐々木:こんにちは。どうぞよろしくお願いいたします。
パトリック:よろしくお願いします。佐々木明子さんは現在、テレビ東京の夕方5 時からのニュース番組をご担当されてるということなんですが。
佐々木:はい。
パトリック:僕も佐々木さんのことをずっとテレビを見ていましたが、スポーツ関係ですと、「ダイヤモンドサッカー」とか「スポーツTODAY 」とか「丸山茂樹のゴルフの風」。
佐々木:そうですね。アナウンサーになってもう12年経つんですけれども、そのうちの8 年はずっとスポーツ。J リーグ元年のときからスポーツを担当していましたので。今日いらっしゃるおふたりも、世界の舞台で活躍した方なので、楽しみに来ました。
パトリック:佐々木さんも、伝えるだけではなく、ラクロス日本代表としても活躍されましたよね。
佐々木:ラクロスはご存じでしたか。
パトリック:はい、知ってますよ。
佐々木:皆さんも、知っていていただいてるかどうか。
パトリック:特に女性のなかで人気の高いスポーツになってるんじゃないですか。
佐々木:なりましたね。私が始めた頃は、それこそラクロスの創生期と言った、最初の頃だったんですけれども。その頃の日本代表なので、プレーヤー自体の数が少なかったからなれたっていう感じなんですけれども。
パトリック:いいえ、それはないと思いますよ。
佐々木:もう過去の話です。でも、スポーツマインドは今でも持っていて、楽しみにスポーツニュースも見てます。
パトリック:そういう視点からも、今日のゲストのおふたりにいろいろ話を聞いていってください。
佐々木:はい。
パトリック:よろしくお願いします。
佐々木:よろしくお願いします。
会場:拍手
パトリック:それでは、ゲストのおふたりをご紹介いたします。皆さん、大きな拍手でお願いしますよ。おふたり、ご一緒に登場します。本日のゲストは、大竹奈美さん、そしてヨーコ ゼッターランドさんです。
会場:拍手
佐々木:ようこそ、おいでいただきました。
ゼッターランド:こんにちは。
佐々木:今日、お話できるのを楽しみにしていたんですけれども。
ゼッターランド:よろしくお願いします。
佐々木:まずはゼッターランドさん、もうスタイル抜群で、背も高くて。いろいろお話をうかがいたいと思います。今日はどんな思いでこちらに来ていただきましたか。
ゼッターランド:そうですね。今日は女性がすごく多いので、ものすごく楽しみにして来ました。夏にオリンピックに行ってきましたので、そういうスポーツの話を交えながら、皆さんからもたくさん質問いただけると聞いてますので、それも楽しみにしたいと思います。
佐々木:そして大竹さん。オリンピックでも、女子サッカーが頑張ってましたしね。いろんな思いがあると思いますが。
大竹:今回、女子サッカーがオリンピックに出られたことによって、認知度を上げられたと思うんですね。だから、こういった場に呼んでいただいたのもすごくうれしいですし、今日は同世代の方が多いのかなって思ってるんですけれども。質問があったり、自分の経験談とかも今日は話せたらいいかなと思ってまいす。
佐々木:どうぞよろしくお願いします。
大竹:よろしくお願いします。
パトリック:このメンバーでお送りしていきます。皆さん、最後まで楽しんでください。
よろしくお願いします。
会場:拍手
パトリック:それでは、プログラムの方を進めてまいりたいと思います。まずは最初に、10の質問を用意させていただきましたので、お手元にあります「yes 」「no」の札でお答えいただきたいと思います。10問、3 ブロックに分かれてやっていきます。思った気持ちをそのまま出してくださいね。それでは、アテネオリンピックにまつわるクエスチョンからいきましょう。第1 問「オリンピックを見ていると、現役に復帰したくなった」。
佐々木:あら、おふたりとも「no」。これは突っ込みどころ。
パトリック:そうですね。いろいろちょっと聞き出せそうなところですね。続いては第2問「アテネオリンピックで活躍する女性の姿を見て感動した」。
佐々木:おふたりとも「yes 」。
パトリック:そして第3 問「日本オリンピック代表の主役は、女性だった」。
佐々木:おふたりとも「yes 」ですね。
パトリック:先ほども言いましたけれども、37個のうち、17個が女性によるメダルでした。
佐々木:すごいことですよね。
パトリック:すばらしい。続いて、現役時代にまつわるクエスチョンです。第4 問「男性として生まれたかったと思ったことがある」。
佐々木:あ、ヨーコさんが「yes 」。そして、大竹さんも迷いながらの「yes 」。
パトリック:続いては、第5 問「化粧やおしゃれは厳禁だった」。
佐々木:おふたりとも「no」。そうでもないんですね。
パトリック:第6 問「OLや主婦になった友人を見て、羨ましく思うことがあった」。
佐々木:あ、すぐに挙がりましたね。ヨーコさん「no」、大竹さん「yes 」。わかれましたね。これも突っ込みどころですか。
パトリック:続いて第7 問「トレーニングで太くなった筋肉を見て、寂しくなったことがある」。
佐々木:これも意見がわかれました。寂しくなったことがないのがヨーコさん、あるのが大竹さん。
パトリック:最後のブロックはですね、現在についてです。第8 問「現役時代のノウハウがあるので、ダイエットには困らない」。
佐々木:おふたりとも「yes 」。本当ですか。本当に困りませんか。後ほど聞きましょう。
パトリック:今日いらっしゃってる女性の方にも興味深いお話が聞けるかもしれません。
佐々木:ヒントがあるかもしれませんね。
パトリック:続いて第9 問「アスリートとして培ったことが、日常生活にも生きている」。
佐々木:すぐにおふたりとも「yes 」でしたね。
パトリック:そして最後の質問ですが、第10問「人生の一時期に、アスリートとしての生活を選んでよかった」。
佐々木:おふたりとも、同時に、速攻で「yes 」。さすがスポーツ選手。
パトリック:ここで「no」が出てきたらどうしようかなって。
佐々木:ここで終わってしまいますもんね。

質問ゼッターランド氏大竹氏
■アテネオリンピック  
1:オリンピックを見ていると、現役に復帰したくなった。yes/noyes/no
2:アテネオリンピックで活躍する女性の姿を見て感動した。yesyes
3:日本オリンピック代表の主役は、女性だった。yesyes
■現役時代  
4:男性として生まれたかったと思ったことがある。yesyes
5:化粧やおしゃれは厳禁だったnono
6:OLや主婦になった友人を見て、羨ましく思うことがあった。noyes
7:トレーニングで太くなった筋肉を見て、寂しくなったことがある。noyes
■現在  
8:現役時代のノウハウがあるので、ダイエットには困らない。yesyes
9:アスリートとして培ったことが、日常生活にも生きている。yesyes
10: 人生の一時期に、アスリートとしての生活を選んでよかった。yesyes

パトリック:それではここからは佐々木さんに進行をお任せいたします。どうぞ皆さん、
ごゆっくりお楽しみください。
会場:拍手
佐々木:ありがとうございます。そして、おふたりにこれからゆっくりといろいろお話をうかがっていきたいと思うんですけれども。まずはオリンピックについて。何と言っても、日本中がこれほど注目したオリンピックはなかったんではないかっていうくらいメダルラッシュでしたよね。このオリンピックに関して、ヨーコさんはどんな印象を持ちましたか。
ゼッターランド:近代オリンピックがスタートして、もう100 年以上経ったわけですよね。それで、オリンピック発祥の地のアテネに戻ったわけです。これまでいろいろ科学的なトレーニングを積み重ねてきた上に、みんなの気持ちがスポーツの原点に戻った上で、プレーしたんじゃないかなと思います。その結果がここまで出てきたのかなと思います。うるうるしてました、現地で。
佐々木:そうですよね。大竹さんもずっと、オリンピックをご覧になっていたと思うんですけれども。先ほどの質問にありました第3 問「日本オリンピック代表の主役は、女性だった」。これはやっぱりそうですよね。
大竹:グランドホッケーと女子サッカーがたぶん、一番マイナーだったと思うんですね。レスリングももちろん、日本では最強と言われていましたけれども、皆さんにはもしかしたら馴染みが薄かったと思うんです。今回正式種目ということで、やはり一躍脚光を浴びて。さらに結果を残していますので、根付いていくんじゃないかっていう感じを受けたんですけれども。本当に今までマイナーだったスポーツが、オリンピックに出られたということによって、皆さんが絶対に知ってくれるというか。競技スポーツ自体の名前を、例えば女子サッカーですと、一時期低迷していた時期がありまして、「えっあるの。女でサッカーやるの」ってよく言われたんですね。
佐々木:そうですよね。
大竹:でも今回皆さんもお馴染みの、「なでしこジャパン」っていう風に名前がつけられましたけれども、そういった選手たちの活躍によって、女子サッカーっていうのは全然珍しくなく、むしろ子どもたちの目指すものに変わったっていうのが、今回のオリンピックではないでしょうか。結果が出たら一番よかったと思うんですけど、出ることにすごく価値があるんだなと感じましたね。
佐々木:実はラクロスも、あまりにマイナーなので、オリンピック種目にしようっていう活動をしているところなんですけれども。やっぱりオリンピックでプレーするということのアピール度ってすごいと思うんですよね。なかでも、女子バレーは逆に注目を集めてきただけに、今回はプレッシャーというか、「東洋の魔女、再び」というようなものもあったんじゃないですか。
ゼッターランド:女子バレーの場合は、東京オリンピックで正式種目になったときに、スタートからもう金メダル、世界の頂点に立ってしまった。その状態を継続していくっていうのは、これはすごく難しいことだと思うんですね。追う立場より追われる立場、頂点を維持しなければいけない。それがずっときて、少し弱くなってオリンピックに出られなかった。そうするとオリンピックを経験した選手が、実際今回はですね、ふたりしかいなかったんですね。
佐々木:若いチームでしたね。
ゼッターランド:確かに、予選やワールドカップ、世界選手権だったりというと、バレーボールだけですよね、大会そのものが。それが今度オリンピックに行くと、他の競技がたくさん集まっています。それだけのアスリートが一堂に会して、みんなが世界の頂点を目指すという、そのエネルギーが醸し出す雰囲気っていうのは、観客をも巻き込んで、信じられないくらいのエネルギーが出てくるんですね。それをプラスにできるか、プレッシャーに感じてしまうか。これがね、経験っていうものがね、大きいなということをつくづく感じましたよね。
佐々木:そうですよね。今回のオリンピックは何と言うか、アピールもうまかったというか。例えばバレーで言いましたら、たくさんニックネームが付いていました。プリンセス・メグ。他にもカタカタでいろいろありましたよね。
ゼッターランド:そうですね。パワフルとかね。
佐々木:そうそう。なでしこジャパンっていうのも、私たちに非常に訴えかけるような、そういうところも戦略として当たったのかなっていう気がしますけれどもね。
ゼッターランド:女子サッカーは、なでしこなんてとてもきれいな花の名前を付けてもらって。パワフルとかプリンセスとかより、花の名前っていいなって単純に思ってたんですけど。
大竹:私もネーミングを聞いたときに、すごくいいって本当に思いまして。響きもまず、いいじゃないですか。日本人って、古くから男性が大和撫子っていう言葉をよく使いますよね。その撫子っていう部分を取って、なでしこジャパンと付けた。女性として強く、美しくっていう部分が、イコール女子サッカーみたいになったことで、イメージっていうんですか、外から見て女子サッカーの格が上がったというか。「うわーすごくいい」っていう感じを、選手たちも受けていましたし、実際私たちもすごくそれは感じていましたので。本当にあれによってブランドになったっていう気がしますね。
佐々木:よくテレビ番組でも、サイドマークって言って、サイドに付けるんですよね、「なでしこジャパン、今日勝った」とかって。そういうタイトルを付けるときに、テレビ局がまず飛びつくのがそういう言葉、ネーミングなんですよね。たぶん一般の方にも浸透していくしっていう形なんですが。でも、実際にはネーミングほど、艶やかだったり、華やかなものではないというか。現実のプレーヤーとしては、相当大変ですよね。
ゼッターランド:そうですね。確かに、報道される部分っていうのは試合の場面で、ユニフォームをかっこよく着て。そのなかでプレーをして汗を流しているんですけれども。それもまた美しいって思ってくださる方って、すごく多いと思うんですが。普段、練習をしてること、トレーニングをしてることっていうのは、皆さんやっぱり厳しい練習を乗り越えてとか、そこには涙があって、悔し涙があってって思われるんですが。じゃあ、実際私たちがそれをどう捉えてるかっていうと、世界の頂点を目指したときに、それは辿らなければならない過程なので。あえてそれを大変だとか、確かに休みがないときは「休みがほしいかな」とかは思ったりはしますけど、それを「イヤだな」とか「もうやめたい」とか思ったことは、私はなかったんですね。それを辿らないと頂点には着けないっていう気持ちがあったので。あんまりそれを苦労だって、周りの方が思ってくださるほど大変だって思ったことはなかったですかね。
大竹:やはりスポーツって、結局自分がやればやるだけ返ってくるんですよね。もちろん、チームや監督がいて、例えばチームスポーツですと、監督が選手を選んでいくんですけれども。でも、やればやるだけのことは絶対自分に返ってくるんですね。皆さんがもし仕事で頑張れば頑張っただけ返ってくるかっていったら、それが一番いいとは思うんですけど、でもたぶん。私が引退してすごく感じるのは、アスリートほど、自分の体をいじめればいじめるほど自分にそれが返ってくるっていうのが、一番強いんじゃないかって私は感じるんですよね。だからこそ頑張れるし、結局自分が好きだから。自分のためにもっともっとこうしたいっていう向上心が、上を目指すという気持ちがすごい強いと思いますので。だから、全然苦じゃないんですよね。
ゼッターランド:そうですよね。結果がね、目に見えて返ってくる。ま、短期間で返ってくるときもあるし、長期間かけて返ってくるときもありますけど。やっぱり正直に答えてくれますよね。
大竹:そうですね。
佐々木:先ほどの第1 問「オリンピックを見ていると、現役に復帰したくなった」のところで、おふたりとも迷って、「yes 」と「no」の札を両方挙げられたっていうのはどうなんでしょうか。現役のときの、グッと練習に集中したっていうのは、今また再びっていうのはどうですか。迷われた原因は。
ゼッターランド:私は実際、引退して現場でオリンピックを見たっていうのは、今回が初めてだったんです。シドニーのときは日本でテレビのスタジオを経由してたんですけれども。実際に行ったときに、自分がそこで当たり前のようにいたその場所に、すごく近くまで行ってるんだけれども、それがとても遠く感じる。ものすごく客観的に、あまりにも自分の気持ちが客観的になってしまって、「何が遠いのかな」ってすごく感情がミックスしてしまって。点が入ったりすると喜ぶんだけど、その反面、すごく涙がこみ上げてきちゃうっていう、そういうような気持ちになったんですよね。そういう場所があったという、自分の人生のなかで、それを持つことができたっていうのは何て幸せなことだったんだろうっていうことを改めて感じたっていうのがあったんですけど。その気持ちをね、その場所にもう一回戻りたいっていうのはあるんですけど、そこにい続けるためには、もうやらなきゃいけないことがたくさんあるから。それがちょっと、今は肉体的に無理かなっていうのがあったので、「yes 」と「no」だったんですけど。
佐々木:迷われましたか。大竹さんは引退なさって3 年、丸3 年経ちましたよね。
大竹:私も迷ったのは、現役を引退をしたときに、本当に気持ちが切れてやめてしまったんですね。皆さんももしかしたら経験があるかもしれないですけれども、何か一つのことをずっとやり続けていて、あるとき突然プツッと集中力が切れてしまって、朝起きたときに、全部それから解放されたいって思った経験がもしかしたらあるかもしれないんですけど。私もそれにすごく似ていて。ずっと10何年間、小学校2 年生でサッカーを始めたんですけど、ずっとサッカーのために全てを犠牲にして、サッカー漬けの毎日を送ってたんですね。なのに突然本当に気持ちが切れて。私、前の日まで練習してたんですけれども、朝起きたら、サッカーの、例えば足が痛いのを気にするのがイヤだとか、今まで何ともなかったことが、全部イヤになってしまったんですね。それで、もうやめようって決めたんですけれども。やめようっていうか、もう続けられないって思ったんですね。だから現役にっていうことにすら、気持ちがいかないんですね。ただ、やり続けるっていう部分で、気持ちが切れたら絶対終わりだって思うんですよ、何でも。私の場合はそれが切れてしまったから、どんなにみんなが活躍してる姿を見ても、自分がそこに飛び込もうって思えないんですよね。ただ、女子サッカーだけのことで言わせてもらえば、自分が現役のときに、多くの観客のなかでプレーがしたかったっていう気持ちは、本当にそれは思うんですけれども。だから、わからないですね。
佐々木:逆に言えば、そこまで突き詰めてやったということだと思うんですけれど。今まで自分がいたフィールドを引退して、次のフィールドに行こうとするときって、やはり不安とかね、この先どうなるんだろうっていうような思いって、今の女性は駆られると思うんですけど、そういうのはありませんでしたか。
ゼッターランド:ありましたね。自分がバレーならバレーを18年間、プロの生活を含めて18年間続けたんですけれども、例えば試合の状況とかっていうのは、先は見えないんだけども、絶対こうなるに違いないっていう読みがやっぱりできるわけですよね。そうすると、先は見えないんだけど、何となく安心感は。自分がちゃんとコントロールすべきことをコントロールしてる、できるっていう自信がそこにあるんですよね。先が見えないことに対して不安にならない、試合の結果とか。だけど全く違うフィールドに変わったときに、自分がそれまで心地いいコートの上にいたわけですよね。それがコートから離れて、これから自分っていうのは一体どうなっていくんだろうかって、やっぱりねすごく不安になって。でも私、血液型がB 型なんですけど。
佐々木:マイペースで。
ゼッターランド:あんまりこう、思い悩んでも何も始まらないので、まず今日できることは何があるかな。例えばスポーツが自分は好きだと。そのなかでバレーを選んでやったわけですけど、スポーツが好きだ。じゃあ今日は、何か違うスポーツを見に行ってみよう。そこで何を見つけられるかな。何かを見つけてみたいな。今日できる、今この瞬間にできることって何かないかなって探し始めて。そのなかで、自分が本当にこれからやっていきたいこと、携わり続けたいことを、少し時間をかけて、焦らないでって言ったらあれなんですけど、それはもう見つけ出していったっていうことはありますね。もちろん不安はね、ありましたけど。
佐々木:そうですよね。
大竹:ヨーコさんが今おっしゃったことに共感なんですけれども、私も現役のときは、自分が大体こうなるだろうっていうのは、本当に読めるんですよね。それは本当に、毎日の練習の積み重ねだったり、自分の体って自分が一番よくわかるじゃないですか。能力とか力とか。だから今はこうだけど、絶対にこうなるっていうのは見えるんですね。長い競技生活のなかで、壁には何回もぶつかるんですけれども、それでも、こうなるっていうのが、自分のなかで怖いくらいに明らかになっているので、不安っていうものが本当にないんですね。一点に突き進むという感覚に似てるんですけど。私も引退をしたときには、次に何をやろうっていうことも、あんまり考えてはいなかったんですけれども。私の性格は結構、先を計算していかないとダメなタイプなんですね。こうやってこうやって、こうやらないとっていう、自分なかでの整理整頓ができてないと前に進めないタイプなんですね。と思いきや、すごい楽天的な部分もあるんですけど。
佐々木:O 型ですよね。
大竹:O 型ですよ。で、引退をしたときに、女子サッカーってすごいマイナーじゃないですか。メディアの仕事をするような人もいなかったですし。ただ私の場合に限りますと、現役のときに、終わった後にこういう仕事をしてみないかっていう誘いがありまして。自分も全然わからなかったんですけど、「あ、はい」みたいな。そんな軽い気持ちで事務所というものに所属をしていたんですね。で、引退をして、「じゃあどうしよう。自分がやらなくてはいけないのは」。私、サッカーが大好きで、「自分がここまで来られたのはサッカーのおかげだから、何かサッカーに恩返ししないといけないな」って、きれい事ではなくて、本当にそう思えたんですね。で、「女子サッカーに何が足りないんだろう。メディアの影響力だ」っていうのはすごくずっと感じていて。誘われたものと自分がやりたいと思うものがうまくマッチして、今、こういう仕事をしてるんですけど。でも私は、本当に不安の毎日なんですね。サッカーのときは、自分が頑張っただけ自分に返ってきたけれども、こういう仕事をしていると、何がいいのかわからないんですね。自分でああよかったって思っても、例えば今日来てくださっているお客さんに「つまらない話」って思われちゃったらって。何がいいってわからないじゃないですか。だからやっぱりそういった部分で。これになりたいって思っていても、それに近づくまでにそういう舞台が用意されてないと、自分ではどうすることもできないっていうことが、今の仕事だとあるので。だから不安は本当につきものですけれども、それでも頑張ろうって思えるのは、サッカーからいろんなことを学んだから、自分が女子サッカーっていう看板を背負っているだけで、みんなの前にいるだけで、女子サッカーの存在が忘れられないっていう思いと、あとは女子サッカーがどんどん大きくなっていけばいいなっていう、そういった気持ちが強くありますので。不安との毎日ですけれども、本当にゆっくりゆっくり前に進んでいくって感じの日々を送ってます。でも、待ってください。これじゃあ、マイナス思考みたいに思われちゃうんですけど。
佐々木:そんなことはないですよね。
大竹:落ち込むことはあるんですけど、私、すぐ忘れちゃうタイプなんですね。
佐々木:でも、そういう話を聞くとホッとしますよね、同じなんだって。
大竹:本当ですか。
佐々木:世界のトップに立った人も、やっぱり自分たちと同じように明日どうなるかなとか、例えば仕事辞めたらどうなるかなとか、こうしたらどうかなって悩みながら今、こうしているっていうのを聞くだけでもすごく身近に感じるし。あと私も、ラクロスをメディアにのせたくてアナウンサーを受けたんですね。「テレビ東京でラクロスの中継を自分が実況したい」。それ以前に放送された某局のラクロスの実況が、めちゃくちゃだったんです。プレーヤーから言わせたら「嘘ばっかり」っていうようなことを、ちょっとバラエティ色豊かに言っていたことがあって。真実は違うっていうのを訴えていたら、ヒョイッとうまく引っ張ってくれたっていうのがあるので。やっぱり愛情を持って何かをするというのは大事ですよね。
ゼッターランド:そうですよね。
佐々木:現役時代、友だちが結婚したりとか、友だちが仕事をバリバリやるようになってくると。さっきはどうでしたっけ。第6 問「OLや主婦になった友人を見て、羨ましく思うことがあった」。あ、ヨーコさんはないけども、大竹さんはあったんですね。大竹さんは即「yes 」でしたよね。その違いは。
大竹:何でヨーコさんはないんですか。
ゼッターランド:そうですね。たぶん一番大きな理由っていうのは、バレーボールって、自分のアイデンティティですよね、自分が自分らしくいられる。その空間のなかで、一番自分を最大限に表現できる、何の縛りもなくですよね。スポーツってバレーなんかだと自分がボールを持った瞬間っていうのは、他の誰もそれを触ることができないんですよね。誰もチームメイトがボンッとぶつかってこない限りは。
佐々木:「私がやるわ」って。
ゼッターランド:その一瞬もそうなんですけど、時間と空間を奪い取ることは誰もできないんですね。そうするとそのなかで、いろんなことを想像、クリエイトしていくっていうのは、自分に最大限許されるところだから、それが私の拠り所だったんですね。今ね、こうやって日本語をペラペラしゃべってはいるんですけれども、6 歳で日本に来た当初っていうのは、全然日本語ができなくて。ある程度聞くことはできても、しゃべることができなかった。そのなかで、普通の公立の、日本の小学校に放り込まれたんですね、うちの親に。そのとき、他の人によって、外的要因によって、私自身っていうものを結構、決めつけられてしまうっていうことがあって。ひとりの人は「ヨーコはこうだ」、もうひとりの人は「いや、ヨーコはこうだ」。「じゃあ、私の意思はどこにあるの。私は何を基準に自分というものをアピールしたらいいんだろう。何を作っていったらいいんだろう」ってわかんなくなっちゃったんですね。それが小学校時代だったんですけど、そういうなかでバレーボールに出合ったときに、「ああ、私はこれだ」って。そのなかで、「ヨーコっていうものは、他の誰にも制限されることなく、作ることができる。これは絶対に離せない」って思ったから。そういう場所を早く見つけられたっていうことでは、すごく私は幸せだったんですね。今も幸せだし、たぶんバレーがある以上、これから先もずっと拠り所としてあると思うんです。やっぱりこう、主婦になった方、あるいは職場で仕事をされてる方とか、みんなそれぞれに大変なことっていっぱいあると思うんですよ。人の芝生は青く見えるから。他の人が「いいよね、ヨーコさんは」って言っても、ここはここでやっぱり大変なことがある。やっぱり自分が持ってるものを大事にする、人が持ってるものは羨まない。そういうことは、うちの祖母からも言われたことなんですけどね。
佐々木:教えとしてあるんですね。ちょこっともないですか。本音のちょこっとの部分。
ゼッターランド:ちょこっとですか、うーん。
佐々木:お友だちが、例えば結婚したときとか。よくね、結婚式に行くと、「結婚したくなったんじゃない」なんて言われるじゃないですか。
ゼッターランド:佐々木さん、するどいポイント突いてきますね。
佐々木:「聞きたーい」って思ったんですけど。大竹さんも今、口元にマイクがいきましたけど。しゃべりたいという。
大竹:私は由美という妹がいて双子なんですけど、由美の旦那さんがサッカーの日本代表の三浦淳宏(東京ヴェルディ1969) 選手なんですけど、あのふたりを見ていると、本当に絆が深いんですね。私と由美って本当に一心同体で。双子って、すごく本当にみんなとは違う感覚なんですね。というのも、うちの親の育て方っていうのが、何でも昔からふたりで一緒じゃないといけなかったんです。で、常にふたりで一緒っていうことは、例えばヨーコさんと私が双子だとするじゃないですか。隣で「あれ、何か今日は表情が暗いな。どうしたんだろう」って、まず表情でわかるんですね。長くいれば誰でもわかるかもしれないですけど、それが早い段階で感じてしまうんですね。「こういうことを考えてる」っていうもわかってしまうんです、私たちは。そうすると、例えば悲しんでいるときに、自分はどうすることもできないじゃないですか。だから自分は楽しいことがあっても、ひとりが悲しい思いをしていると全然楽しくなくなってしまうというように、ひとりなんですけど、同時に二つの人生を歩んでるんですね。私と由美ってそういう関係なんですよ。
佐々木:不思議。
大竹:そういった、いっつも一緒にいた由美が、初めて「由美ちゃんってこんなだったの」っていうぐらい、旦那さんの淳宏選手のために、すごく献身的に。もう、全然変わったんですね。自由奔放で、すごい無邪気だったのに。あれだけ一緒にいたのに、「こんな由美ちゃん初めて見た」っていうその発見が。でも由美は由美なんですね。「うわーいいな。こういう風になれるんだ」って。その淳宏選手と由美の絆はすごく深くて。私と由美はいっつも一緒で、悲しいときもうれしいときも、一緒に分かち合ってきたんですけど、それが自分ひとりだけ取り残されちゃったような気分になるんですよ。
佐々木:そうですね。
大竹:でも、あのふたりは常に「お前、来いよ」っていつも3 人でいることが多いんですね。たぶん皆さんは、「えーあり得ない」って思う方、絶対いらっしゃると思うんですけど、新婚生活のなかに私も普通に入って、さらに私の部屋があるんですよ。
佐々木:えー。
大竹:双子の人はたぶん理解してくれると思うんですけど、常に奈美、由美、淳宏選手のトライアングルがあって。でも、好きにはならないですよ、私は。
佐々木:それは不思議ですね。好きになりそうなのに。同じ感覚を持っていて、あれだけ魅力的な人ですし。
大竹:そう。でも全然ならないんですよ。私の心の拠り所は、もちろんふたりが私のことを理解してくれてるんですけれども、でもやっぱり、自分が相手にとって一番で、相手のことも自分が一番に受け止めてあげられる関係が、よりよいわけで。そういうふたりを見ていると、それがイコール結婚なんだっていう風に、現実的なものになったんですよね。だから、今までは「結婚なんて別に」って思ってたんですけど、あのふたりを見てると、「結婚って本当にいいんだ。結婚は地獄行きじゃない」って。
佐々木:地獄行き。心当たりがある方いらっしゃったら失礼しました。
大竹:っていうことはすごい感じる。
佐々木:これまでは地獄行きっていうのが印象としてあった。
大竹:はい。うちの両親ってすごく仲がいいんですね。でも、周りの同年代の友だちは、結婚すると、みんなすっごい文句ばっかり言っていたり、すごいんですよ。「何でそんなになっちゃうんだろう」っていうぐらい。そういうイメージがすごく強かったんですね。あんまり幸せっていうのを聞いたことがなかったんですよ、私の周りでは。だから怖いなっていう風にちょっと思っていたのが、全然変わりましたね。
ゼッターランド:由美ちゃんと淳宏さんの一番いい形がすぐ身近にあるから。
佐々木:身近過ぎるくらいですもんね。
大竹:だから時々、悲惨って思ったりもするんです。双子って絶対に周りが比べるんですよね。別に私たちは、自分たちは自分たちで、私と由美はライバルじゃなくて、本当にふたりで一緒にっていう。切磋琢磨まではいかないんですけれども、とにかくマイナス面を補う感じのふたりなんですね。でも、周りが。ごめんなさい、淳宏選手の自慢話みたいになっちゃうんですけど、男性からもすごく慕われていて、もちろん女性からも、慕われてる存在なんですね。そういう人だから、周りが私の旦那さんになる人を勝手にいろいろ詮索し出すんですよ。「こういう人がいんじゃないか」とか、「でもな、淳に比べたらこうだろう」とか。
佐々木:あらあら。
大竹:何かそういう風に勝手に周りが言い出すから、「えっ、そ、そうなの」って。私が取り残された気分になるのは確かなんですよね。
佐々木:いえいえ。
ゼッターランド:考えさせられるところが、いろいろ。
佐々木:ヨーコさんは。
ゼッターランド:さっきね、佐々木さんが「ちょこっと何かありませんか」っておっしゃいましたけど、大竹さんがここまで言ってくれたんで。
佐々木:そうですね。
ゼッターランド:私の周りで、私はもう35歳になったんですけど、そうすると結構ね、周りの方が「結婚は」とか。友人も何人か出産の時期が重なってるっていうのもあるんですけど。そのときに、「子どもっていいな」って。これまでは自分のことでいっぱいいっぱいで。選手時代もそうでしたし、選手を終えても自分がやりたいこと、興味があること、それに対してずっと進んできて。それはそれですごくありがたいことだし、すごく幸せなことで。もちろん、感謝感謝なんですけども。そういうのを聞いた時に、やはりね、年齢的なことを考えると、「子どもっていたらいいな。きっといたら楽しいんじゃないかな」ってことも考えるんですけど。私の母はですね、ちょうど私と三回り違いまして、36歳のときに私を生んだんですね。当時としては、非常に遅いときの子どもなんですけど。常に母が言うのはね、「体力的なものが結構大変」。私もだいぶ暴れん坊だったので。「それは大変だけれども、精神的なゆとりを考えると、遅くてもいいんじゃないの」って話を。すごく身近なひとりの人生の先輩として、母親という立場から聞いたことを考えるとね、「大丈夫かな」って思うんですけど。やっぱり今のこういう時代にね、子どもが世の中に生まれてきて、とても大変な世の中だと思うんですよね。
佐々木:そうなんですよね。
ゼッターランド:やっぱりニュースを見ていると、「ああ」って心が痛むものがあったりとか。ただ逆に、そういう時代にたくましく育てられるっていうこともできるのかなって。そこでとっても迷うんですよ。やっぱり子どもって生まれてきた以上、「あ、やっぱりダメです。返します」ってことにはできないですからね。
佐々木:責任がね。
ゼッターランド:その責任を考えると、「うーん」と思って悩むことはありますね。
佐々木:ありますね。
ゼッターランド:自分ひとり。例え何かあっても、代わってあげることってできないですからね。それを考えると、あれもこれもって幸せを考えると、果してそれが私にできるかしらって、行ったり来たり。それが本音。
佐々木:そうですよね。女性の場合ってタイムリミットがあるので。で、おそらく基礎体力が一般の方とはおふたりとも全然違うので、「生んだ後が大変よ」っていうところでは全然問題ないと思うんですけれども。
ゼッターランド:体力だけは。
佐々木:体力はありますもんね。ただやはり、さっきヨーコさんが言ったように、何となく不安を感じる世の中になってはいるんですよね。
ゼッターランド:そうですよね。
佐々木:そのなかでね、スポーツが果たす役割って非常に大きいんではないかと思うのですが。

後編へつづく

取材・構成:CREW
撮影:新関雅士