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11月7日、青山ベルコモンズに立見も出るほどの満員の観衆を集めて行われたトークバトルの模様を完全レポート。

ぴあトークバトルスポーツ快楽主義VOL.39
「どうなる!?サッカー日本代表」

前編

<ホスト>
中西哲生
'69年、愛知県生まれ。同志社大から'92年に名古屋グランパス入り。'97年に川崎フロンターレへ移籍してからはキャプテンをつとめ、'00年にはチームをJ1昇格へ導いた。Jリーグ通算95試合7得点。現在はスポーツジャーナリストとして「ズームイン!!SUPER」(日本テレビ系)、「ニュース23」(TBS系)などに出演中。

<ゲスト>
井原正巳 (サッカー元日本代表主将)
'67年、滋賀県生まれ。筑波大時代の'89年から日本代表DFとして活躍。'90年に日産FC(現横浜・Fマリノス)入り、DFの要として横浜マリノスを牽引した。'00年、ジュビロ磐田へ移籍。'01年からは浦和レッズでプレイし、昨年現役を引退。Jリーグ通算297試合5得点。日本代表通算123試合5得点。現在はサッカー解説者として活躍している。

村上てつや (ゴスペラーズ・中央)
'71年、大阪府生まれ。ゴスペラーズのメンバーとして、'94年シングル「Promise」でメジャーデビュー。'00年発売のシングル「永遠に」、アルバム「Soul Serenade」はオリコン市場稀に見るロングセールスを記録。その後も日本ミュージックシーンの最前線で活躍し、今年結成10年目を迎えた。最新作「ミモザ」でも、10年間の活動の中で培った圧倒的な存在感と実力で聴かせる極上のヴォーカル・ワークを見せる。

安岡優 (ゴスペラーズ)
'74年、福岡県生まれ。ゴスペラーズのメンバーとして、'94年シングル「Promise」でメジャーデビュー。'00年発売のシングル「永遠に」が超ロングヒットを記録した。今年でデビュー10年目を迎え、3月にはニューアルバム「Dressed Up to the Nines」をリリース。続いて30万人のリクエストから選出されたアルバム「G10」をリリースした。さらに、年末の「NHK紅白歌合戦」の出演も決定した。

中西:皆さんこんにちは。ぴあトークバトルスポーツ快楽主義VOL.39「どうなる!?サッカー日本代表」、いよいよスタートです。女の人ばっかりだぁ。男性が見当たらないです。99%ぐらい女性ですよ。いやぁ、幸せですね。それではゲストの方々をご紹介していきます。サッカー解説やスポーツ番組など、テレビ、ラジオでご活躍中の元サッカー日本代表キャプテン、井原正巳さんです。
会場:拍手
井原:すごいなぁ。異様な雰囲気だね、ホント。
中西:女性、ばっかりですよ。
井原:どうしますかね。
中西:でも皆さん、ゴスペラーズさんのいろんな話でサッカーが好きになってくれてるはずですし、おふたりが本当にサッカーを愛してくれてますから。
井原:ふたりともサッカー大好きですしね。よろしくお願いします。
中西:それではサッカー通として音楽業界では一目置かれております。ゴスペラーズの村上てつやさん、そして安岡優さんです。
会場:拍手
中西:出てくるときに、自分たちが歌っている曲がかかるというのがいいですね。
井原:格好いいですね。
中西:しかも新曲。10月27日発売「ミモザ」。いい歌。17日も「G10」。
安岡:はい。11月17日にベスト盤が。
中西:やっぱりワールドカップアジア最終予選がある日に出してるのは狙いですか。
村上:いやいやいや。まあ、それで今日なんですけどね。
中西:今日はサッカーの話を。
安岡:もちろん。
村上:オンリー。
中西:それでは11の質問をゲストの方々にお答えいただきます。まずは質問1「ヤマザキナビスコカップの結果は、予想通りだった」。村上さんだけ「yes」。質問2「一次予選の序盤で“ドイツには行けないかもしれない”と思った」。
中西:井原さんだけ「no」。質問3「アウェイでのオマーン戦は、観ていてしびれた!」。全員「yes」。質問4「一次予選MVPは、中村俊輔だ」。村上さんだけ「yes」。質問5「シンガポール戦では、ベテラン選手の代表復帰が見たい」。井原さんだけ「yes」。あとでこの話、聞きたいですね。質問6「日本代表に呼んでほしい選手がいる」。これは皆さん「yes」ですね。質問7「最終予選に向けて、少し不安がある」。村上さん「no」、ほかは「yes」ですね。質問8「ジーコの采配に疑問を感じることがある」。微妙です。井原さんだけ「no」。質問9「最終予選は、別の監督で戦ってほしい」。それはないでしょう。質問10「日本代表選手の技術は、アジアでも飛び抜けている」。安岡さんだけ「yes」。質問11「日本代表は、最終予選をトップで通過する」。全員「yes」! では最初から順番に見ていきたいと思います。ヤマザキナビスコカップ(2004年11月3日、国立競技場、FC東京0-0(PK4-2)浦和レッズ)はおもしろかったですよね。

質問井原氏村上氏安岡氏
1:ヤマザキナビスコカップの結果は、予想通りだった。noyesno
2:一次予選の序盤で「ドイツには行けないかもしれない」と思った。noyesyes
3:アウェイでのオマーン戦は、観ていてしびれた!yesyesyes
4:一次予選MVPは、中村俊輔だ。noyesno
5:シンガポール戦では、ベテラン選手の代表復帰が見たかった。yesnono
6:日本代表に呼んでほしい選手がいる。yesyesyes
7:最終予選に向けて、少し不安がある。yesnoyes
8:ジーコの采配に疑問を感じることがある。noyesyes
9:最終予選は、別の監督で戦ってほしい。nonono
10:日本代表選手の技術は、アジアでも飛び抜けている。nonoyes
11:日本代表は、最終予選をトップ通過する。yesyesyes

井原:おもしろかったですね。いやあ、もう。
中西:釘付け。
井原:いい試合でした。雰囲気もすごかったですね。浦和レッズのファンの方が7割ぐらいいて、FC東京が3割ぐらいだったんですけど。久々にああいう雰囲気、しびれる雰囲気。3年間、満員なんですけど、また違った青と赤の色合いでね。
中西:安岡さん、サッカーが心底好きな僕たちにとっては、「0-0でもおもしろいんだよ」って言いたくなったんですけど。
安岡:僕らちょうど、テレビ局にいたんですよ、メンバー全員。ほとんど試合が観れたんです、空き時間で。ずーっと「うっ! ああ~」って立ち上がったり。
井原:「うっ! ああ~」っていう今の言い方で、どっちの応援してたかっていうのがわかりますよね。
安岡:シュート数の多いチームですね、はい。
中西:ちょっとつらい日だったですか。
安岡:最終的にはガックリしたところもありますけど、でも0-0なんだけど、ずっと目が離せない、まばたき一つできないという試合で。
村上:去年は一緒に応援しに行って。
安岡:決勝の日が空いてたんで、ふたりで行ってたんですよ。
村上:去年、僕はレッズを応援してたんですよ。
中西:去年はね。
村上:すぐ変わるんだ、俺は。
中西:そんなにコロコロ変るんですか。
村上:変ります。今年は初タイトルがかかっている方を応援したいのが率直な気持ちで。
中西:リーダー、特にここというチームはないんですか。
村上:Jリーグも選手でコロコロ、コロコロ変っちゃうから、俺。
安岡:好きな選手がどこのチームに行くかでね。
村上:そうそう。
中西:サッカーファンですからね、基本的に。
村上:今年はFC東京に勝ってほしかったなっていうのが本当のところですけどね。
中西:で、勝ちましたよ。
井原:でも、あの勝ち方しかないかなというところでしたよね。
村上:井原さん、正直あの退場(前半29分、FC東京・ジャーン選手)はどうですか、ディフェンダーの気持ちとして。どっちを応援するかは別として。
井原:あのシーンを見て、はっきり言って退場じゃないなと思いましたけどね。
村上:そうですよね。厳しいですよね。
中西:1枚目、あれはイエローですよね。
井原:本人もわかってもらってたと思うんですけど、2枚目はジャーンは足を出してないんですよ。
村上:かなり厳しい判定だったじゃないですか。正直僕も試合が始まるまでは別にどっちが勝っても、いい試合だったらいいという気持ちがちょっとあったんです。ところが俺、日本人だなと思ったのが、ああいう退場とかを見ちゃうと、判官贔屓という言葉が頭の中にチラチラしちゃって。あそこで三浦(文丈、FC東京)選手が交代になったじゃないですか。三浦選手は井原さんの大学の後輩になるんですよね。
井原:後輩ですね。
村上:僕の1 コか2コ上ぐらいの選手ですけど、すっごい長いキャリアをものすごいその、何て言うかな、最初は派手なウイング。ウイングという言葉がまだある時代ですよ。そういう選手が今、中盤で汗かき役みたいなのをやって。絶対にもう文丈さんにはタイトルを取るときにグラウンドにいてほしいと思っていた選手なのに、ディフェンダーの柱が退場になったことで戦術的な交代で代えなきゃいけなかったっていう。それで「ああ、今日は絶対、FC東京に勝ってほしいな」みたいな気持ちになったんですよね。
中西:しかもその前のサンフレッチェ広島戦をナビスコカップ決勝のために欠場してたんですよ、三浦選手は。あえてその試合のために温存して。体力的にもいいコンディションでいったにも関わらず、前半29分で交代。早かったですよね。
井原:監督が「すまない」って言ってたように見えましたけど。
安岡:でもあれしかないっていう感じでしたよね。
井原:でもあの退場とそういう交代があって、FC東京の選手たちはやっぱり。
安岡:奮起しましたよね。
井原:10人になるのは苦しいけど、やらなきゃいけないっていうのは感じましたよね。
安岡:あの瞬間からレッズがイケイケになるのかと思ったら、あの瞬間から一回、東京の方が押し始めた時間がありましたもんね。あそこがやっぱり、人間のパワーというか。
中西:サッカーのおもしろいところですよね。ひとり少なくなっても、実はそれが優位に働くわけではない。
村上:「じゃあ、最初からやれよ」みたいなことですよね、見てると。
中西:それがなかなかできない。
井原:浦和的には、11人同士で戦った方がよかった。
安岡:絶対にそうですよね。
中西:前に出て行こうというFC東京の気持ちがあると、逆に隙が生まれるんですよね。
安岡:あれぐらいガチガチにされるとね、前の人数が全然勝てない感じでしたもんね。
中西:僕もよく10人で試合をやってたことがあるんですけど、そうなると逆にこう。僕も井原さんもディフェンスですから、例えば僕と井原さんが守っていても、ふたりの間に来るボールは、「井原さんが行ってくれるだろう」と思うときがあるんですよ。
安岡:11人いればね。
中西:でも10人になると「どっちもいかなきゃいけない」と思うんですよ。
安岡:集中力がすごい高いんだ。
中西:そう。どっちもそこのカバーに入ろうとするわけ。そうすると洩れるところがなくなるんですよ。隙が。そうするとサッカーのディフェンスは集中力が増しますね。
井原:それからあとは、人数の多い11人の方のフォワードが、やっぱり「相手は10人だから俺らは勝たなきゃいけない」っていう。
安岡:シュートが枠に飛ばなくなりましたもんね。
井原:そうなんですよ。シュートも「これは決めなきゃいけない」という気持ちがすごく強くなって、硬くなっちゃったり。
村上:プレーしてる選手自身が、むしろ相手チームに退場選手が出たことでイヤだなと思うことすらあるんですか。この間のケースで言えば、レッズの選手が「わっ、退場になっちゃったよ」みたいな。「むしろイヤだな」って思うこともあり得るってことですか。
井原:そういうときもありますね。
中西:でも基本的にはやっぱりラッキー。
安岡:だからこそ、試合時間が残り少なくなればなるほど、「何で勝てないんだろう」みたいな感じなってくるんですよね。
中西:徐々に焦りが出てくるわけです。
安岡:でも、土肥(洋一、FC東京)選手の神懸り的というか、一番いいときのカーン(オリバー、ドイツ・バイエルン・ミュンヘン、ドイツ代表)みたいでしたよね。2連続で止めたときがあったじゃないですか。シュートを跳ね返して、それを達也(田中、浦和レッズ)が詰めてきたときにまた跳ね返すみたいな。すごかった。
中西:僕的には、交代で入った藤山(竜仁、FC東京)選手という選手がいるんですけど。僕といっしょに二部リーグでやってたんで、すごく思い入れがあって。途中から出てきて、ものすごくいいプレーしてましたよね。PK戦になったらFC東京が有利ですよね、気持ち的に。
井原:そうでしょうね。
中西:あれを狙ってるから。
安岡:くじ引きみたいなゲームみたいになっちゃいますもんね、あそこまでいくと。
中西:しかも、キーパーが勢いに乗ってるじゃないですか。
安岡:乗ってるし。
村上:乗ってましたね。
中西:で、落胆。
安岡:いやまあ、あの。僕は一回、楽屋から出ました、僕、ひとり。みんなが「すごいね」って。僕も「すごいね」とは思うんですよ。単純にサッカーファンだから、この「すごいね」という空気の中にはちょっと僕はいられないって思って、ひとりトイレに行って、ちょっとこう鏡を見て、「うん、うん。よくやった、よくやった」。
村上:ちょうど厳しい展開で、歌の収録の本番で、延長後半10分ぐらいまで観れてたんだよな。「もうPKになるよね、これ」っていう展開のところで「はい、本番いきます」。
安岡:「くーずーれー」って歌ってるわけですよ。「ミーモーザー」。
中西:音程、外れてるんじゃないですか。
安岡:歌い終わって帰ってきたら。
村上:楽屋に帰ってきたら、「歓喜の初優勝!」みたいな。
安岡:パッと見たら、画面が青いんですよ、とにかく。
村上:旗はウワーッて振られてるし。実はね、そのPK戦も最後を決めた瞬間とかは、スポーツニュースなんですよね。
安岡:試合そのものはほとんど100分以上、観てるんですけどね。
村上:一番、最近のなかではかなりレベルの高い、空しい「本番でーす」。
安岡:「そうだよな。歌いに来たんだもんな、今日」って。
村上:「ちょっとPK戦」とは言えないですもんね。
中西:でも落胆してほしくないのは、ナビスコカップは、Jリーグの三大タイトル、天皇杯、ナビスコ、Jリーグのなかでは一番軽んじられてはないんですけど、そんなに重くない感じがあったんですよ、実際。でもこの3年間、レッズが優勝したり、今年はまた準優勝ですけど、この3年間、レッズが決勝に進出してきていい雰囲気を作ったことで、毎年11月3日っていうのが特別な日だという風に少しずつ思えるようになってきましたね。
井原:そうですよね。
中西:レッズのこの功績は大きいですよ。
井原:長谷部(誠)というレッズの選手がニューヒーロー賞をもらって、ナビスコの社長がそのプレゼンターをしてたんですけど、あの観客の雰囲気を見て、半分泣いてたと言ってましたよ。ここまで盛り上げて、長く続けて、サポートしてきてよかったなと。
村上:そうですよね。最初の方はちょっと寂しいときがありましたもんね。
中西:それぐらいやっぱりレッズのサポーターがこう、盛り上げた部分っていうのはありますよね。サッカーというのは選手だけじゃなくて、サポーターも大事ですよね。
安岡:客席というかスタンドの空気っていうのが、フィールドに落ちてきますからね。
中西:「落ちてくる」。いい言葉だなあ。さすが作詞をしてる人だ。
井原:勉強になりますね、今日は。
中西:次は質問2「一次予選の序盤で“ドイツには行けないかもしれない”と思った」。
村上:ちょっとね、俺も思った。どこが序盤かというと、アレですよ。ワールドカップアジア予選の初戦(2004年2月18日、埼玉スタジアム2002、日本1-0オマーン)の久保(竜彦、横浜F・マリノス)選手が点を取るまでの間ですよ。
安岡:そうそう。本当にそう。
村上:あれは俺は今でもやっぱり、あのクリアが当たって。
中西:俊輔(中村、イタリア・レッジーナ)選手の左足の膝に当たって。
村上:相手のクリアしたボールが跳ね返って、ちょうどいいスルーパスというか何ていうか、裏に出たっていう。ああいうことがやっぱり起こる。あの雰囲気を観ていて、これは相当まずいなって思ったんですけど。ああいうボールが最後のロスタイムに来て、それを冷静に決める。ちょっとだけダフッた気がしたんですけど。
中西:若干、ダフり気味で。
村上:久保選手ってそういうの、少ないじゃないですか。ものすごいじゃないですか、キックそのものが。その久保選手とはいえ、ちょっとだけダフッたような、でもコースはすごいいいコースだったよなって、あのプレーを観て大丈夫と思いました。
安岡:やっぱり勝たなきゃいけないって思ってるじゃないですか。サポーターとしても。で、アジアの一次予選だから。どう勝つかぐらいに思ってるわけですよ。
中西:井原さんに聞きたいんですけど、ワールドカップ予選は違うんですか。
井原:やっぱりプレッシャーがかかりますし、2月のときは日本選手たちはオフ明けで、初めて公式戦のスタートで、コンディション的にも試合勘とかがなかったんですよね。
中西:試合に慣れてない。
井原:そう。そういう意味で、チームがまだいい形でコンビネーションが取れていなくて、動きも悪かったんですよね。ヨーロッパ組が帰ってきたんですけど、うまくかみ合わないですごく苦戦しましたし。内容的にも全然よくなかったですよね。
村上:でも、オマーンなんて暑い国じゃないですか。2月の東京で動けるわけねーだろみたいに思ってるわけですよ、完全にこっちは。「うー寒いね!」とかって。
中西:そんなこと、言うか!
村上:太腿でトラップしたくない、みたいな。
井原:オマーンの選手も中東の選手も、寒い方が走れますよ。
村上:あ、あ、やっぱり。
井原:自分の国に帰って暑いときは、あいつらも練習をやらないから。
安岡:やっぱりヘバるんですか、暑いと。あんまり国のことは関係ないですね。
中西:どこの国の人も、寒い方が走れるんだと。それは大きな間違いですね。
安岡:生き物としてはそうなんですもんね。
中西:普通そうだよね。暑いと走れないもんね。
安岡:雪が降ってぬかるんだりしたら別だけど、寒いだけなら一緒だということですね。
井原:そうですね。あとは雨や湿気には弱いかもしれないけど。
中西:それはあるかもしれないですね。カラッとしてるから。
井原:でも寒いのはたぶん全然平気。
村上:そっかそっか。じゃあやっぱりあっちの方がコンディションよかったんだ。
安岡:よかったんだな。シーズンの途中の方がずっと体を作ってますもんね。
中西:あとは向こうのチームは完全に代表チームというより、チームとして行動してたじゃないですか。日本代表だと、海外に行ってる選手もいてJリーグにいる選手もいて、寄せ集めてきてチームを短期間で作らないといけないのに、彼らは常に一緒にいてJリーグの一つのチームみたいに行動してましたもんね。
井原:それで日本相手にどうやって戦おうかということだけに向けて調整してきたんで。そういう部分では向こうの方が準備はよかったと思いますよ。
村上:でもね井原さん。日本代表って、世界でも最も恵まれてる代表チームの一つじゃないですか。
井原:いや、そうだと思う。
村上:きっと井原さんが初めて代表に入った大学生の頃、10……
井原:20歳。
村上:今からもう15年ぐらい前ですよね。その頃と今では、もう本当にビル1 個ぐらい違うんじゃないかというぐらい違うんじゃないですか。
井原:そのくらい違いますよ。
村上:違いますよね。日本代表ほど国民の支持も得て、いろんな強化費というか予算が取れて、やりたい相手と試合が組めているチームは、世界中でそんなにはないんじゃないかなと思ったりするんです、今の代表はね。だからいつまでたっても、ヨーロッパ組だとか国内組だとか、そういう言葉自体も早く消えろよみたいに思ってるんですけどね。これだけいい環境でやってるチームはないんじゃないかなって。僕ら、子どもの頃に観ていた日本代表と全然違うよって。環境が。
中西:でも僕は、すごくいい環境でやってるかもしれないですけど、それだけ注目されるチームになってるからこそ、一次予選も苦戦したと思うんですよ。みんなから追われる立場になってるから、もう。
安岡:基本的に向こうは0-0でいいって気持ちでやりますもんね、日本でやる場合には。
中西:そう。「あわよくば」じゃないですか、常に。そうなると、僕は、シンガポール戦(2004年3月31日、シンガポール、日本2-1シンガポール)で、1-1になったときはまずいなって。僕はあそこまで本当にまずいと思っていた。
安岡:最後ね、藤田(俊哉、ジュビロ磐田)選手が来て、よかったですけどね。
中西:藤田選手が決めてくれて「ありがとう!」って感じですよ。
安岡:「やっぱりベテランは違うな」って。「ハートが違う」みたいに思いましたよね。
村上:ツキがあったっていう初戦だったのに、2戦目でも似たような展開っていうか。
中西:そう。追いつかれたとき、マジかよって思いました。
井原:シュートなんかほとんど打たれてないんですけど、一本ね。それが入っちゃって、同点に追いつかれたんですよね。
中西:まずいなと思ったら、藤田選手がね。また、井原さんの後輩じゃないですか。
井原:はい。助かりましたね、あの試合は。
安岡:最初の2戦が、勝ったんだけど、試合が終わった後に微妙に喜べないっていう。
中西:それで質問3「アウェイでのオマーン戦は、観ていてしびれた!」。いや、しびれましたね。久しぶりに緊張しました。観ている方も。負けたら終わりですからね。
安岡:そうですね。直接ですからね、もう。
中西:負けたらほぼ終わりという展開で、例えばアウェイだからレフェリーが、いきなりちょっと押しただけでPKとか取っちゃったりするかもしれないし。
安岡:全然ありますもんね。
中西:いきなりレッドをポーンと出したりしたら終わりじゃないですか。かなりビビッてました、観ながら。でも、立ち上がりかなり緊張しましたよね。
井原:相手はけっこう来てましたからね。でも日本選手たちの方が落ち着いていたなって感じはしますよね。
安岡:直前のアジアカップで優勝(2004年8月7日、北京、日本3-1中国)したことで、あの試合はものすごくうまく流していけましたよね。
井原:そうですね。それから自信を持ってやってるなという感じが。
中西:僕も井原さんもディフェンスだから、攻められていても、結構、大丈夫だよというときがあるんですよね。シュートを打たれていても、コースを切ってるからとか。
安岡:打たせてるみたいなところがあるんですよね。
中西:そう。そういう感じがしましたよね。僕は最初のフリーキック一発、田中誠(ジュビロ磐田)選手がちょっと。
井原:ファール気味になったけどね。
中西:あれが一番僕、ビビりました。
村上:ビビりましたね。あそこはひっくり返りそうになりましたね。
中西:その後に、また田中誠選手がゴール内でファールをしたじゃないですか。あれはまあ1点取ってたから、追いつかれても同点だという気持ちがあったけど、先に取られたらまずいじゃないですか。だから「うわーっ」と思って。
井原:勝たなきゃいけないっていうか、勝って当たり前の試合を勝つのが一番難しいじゃないですか。どうやっても勝てるだろうと思われてるから、そこで結果を出さなきゃいけないというのはすごいプレッシャーがかかるし、難しいし。勝っても選手たちも大して喜んでないような感じだったとは思うんですけどね。
安岡:先がアウェイだったらもっと大変でしたよね、たぶんね。
村上:意外にオマーンの選手、後半、諦めてましたよね。
中西:点を取られてから。あの1点目でしょ。
村上:やっぱり。あのクロスはすごかったですね。中村俊輔選手。
中西:小野(伸二、オランダ・フェイエノールト)選手もフリーキックをボーンと。あれもうまかったし。手でパッと出して、目が合って、指で指して合図して、そこに小野選手がすぐにポーンッて蹴ったんですよね。俊輔君に流れて。目で見て。相手が油断してる間に。
井原:クロスがもうピンポイントで。
中西:俊輔君と電話で話をしたんですけど、「見えてたの」って聞いたら、「前から見てた」って。小野選手からボールをもらう瞬間にチラッと内側を見て、その瞬間にもう見えてる。そのあと、一回も見てないんですよ。
安岡:じゃあ、あのへんはああいう風になっているだろうと。
井原:前に高原(直泰、ドイツ・ハンブルガーSV)がいて、その後ろに鈴木(隆行、鹿島アントラーズ)がいるみたいな。
中西:飛び込んでくるのを待ってるだろうって。フェイントかけてる間、一回も中を見ずに。中を見るとバレちゃいますから、一回も見ずにフェイントをかけて、時間だけ稼いで、蹴る瞬間にチラッと見て、来てないと思ったから、ちょっと高めのボールを上げた。
村上:はあー!
中西:恐ろしいですよね。わずか2秒ぐらいの間。
安岡:そんな頭の回転があるんですね、あそこに。
井原:でもあれ、決めた鈴木もね。
中西:それもすごいですよ。あれ、決められないですよ、普通。
井原:相手のディフェンスがいましたからね。
中西:勇気がないと飛び込めないし。すごいと思った、あのプレーは。あの瞬間、小野選手と中村選手と鈴木選手はヨーロッパモード、入ってましたね、完全に。
井原:みんな。鈴木もヨーロッパでやってましたしね。
中西:そう。やっぱり日本だと、フリーキックってあんまりすぐにやらないんですよ。いいボールを蹴って、背の高い選手に合わせようという狙いがあるんで、みんなフリーキックは早くやらないんですよ。でもヨーロッパの選手って隙を突くのが一番点を取るチャンスだと思ってるから、ボールを置いてすぐに蹴るんですよ。
安岡:技術だけじゃないですよね、もうね。
中西:それでわずかな隙を突いて。あそこから得点ですからね。ヨーロッパでやってることが生きたんじゃないですか、あの瞬間。
村上:やっぱそうですかね。あのわずかな時間で、「1億!」って感じでしたもんね。
中西:もうね。ぶっちゃけ、僕も井原さんも仕事なくなるところでしたからね。
井原:あそこで終わってたら、来年、何しようかって。
中西:そうですよね。サッカー解説者的には死活問題ですからね。来年、何10億って利益が減るとかって話が出てましたもんね。井原さんは以前もオマーンに行ってますよね。フランス・ワールドカップの際に。
井原:オマーンは何回か行ってますね。3~4回行ってますね。
中西:どうなんですか。オマーンはやっぱり暑いんですか。
井原:あの季節はそんなに。ちょっとずつ涼しくなってくるときで。実際、試合の日は暑かったらしいですけど、その前までは涼しいって言ってましたね。夜は結構、涼しくなりますよ。だけど時差もあるし、湿気もあるし。すごくイヤな気侯ではあると思います。
中西:中東でほとんど勝ってなかったんですよね。1 回しか勝ってないんじゃないかな、おそらく。同点はあるんですよ。勝ったのは確か1 回しかないと思う、あそこで。
安岡:それぐらい環境が違うんですね。
中西:僕、サウジに行ったことありますけど、やっぱり何か異様な雰囲気でしたね。あとはホテルから出れなかったりとか。やることないし。
村上:ホテルを出られない理由っていうのは。
井原:出ても何もすることがないの。
村上:サッカーゲームとかやってるんですか。あ、できないか。
中西:やってますよ。
村上:今はプレステとかやってるんですかね。
井原:今はウノが流行ってるって言ってました。
安岡:世界中どこに行っても大丈夫ですからね、軽いですし。
中西:そして質問4「一次予選MVP は中村俊輔だ」。総体的にこの一次予選を全部見たら、誰が一番という選手はいますか。
村上:僕が「yes」にしたのは、じゃあ他に誰かと言われると、ワールドカップ予選だとあんまり浮かばなくて。この間のワンプレーだけで「1億!」じゃないですけど、あれはやっぱりすごかったなっていうのがあって。他にちょっと浮かばなかったんで。
安岡:僕は全体で見ると中澤(佑二、横浜F・マリノス)選手が。さっきもおっしゃったけど、負けちゃいけない試合じゃないですか、絶対に。勝つのが当たり前の試合のディフェンスラインで、すごいストレスというかね。シュートを打つ方は誰が打ってもいいわけじゃないですか、決まれば。でもディフェンスラインって、わかりやすく「ディフェンスラインのせい」とか「キーパーのせい」って言われちゃうから。そういう意味では中澤選手。アジアカップでもすごく活躍しましたけど。攻撃力だけじゃなくって、実は最後の最後で全部コースに入ってるのが中澤選手だったりするじゃないですか。あのへんのスピード感とスケールがすごいなって。
村上:この間の試合、相手の選手が中澤選手を狙って蹴ってるんじゃないかって。
安岡:全部、中澤の体に当たるっていうのがすごいですよね。
中西:コースを切ってね、1対1も負けないし。
安岡:負けないし。結構、感動的でしたよね、あれは。
井原:僕も中澤だろうなって。俊輔もすごくよかったとは思うんですけど。アジアカップのときは俊輔がMVPで俺はいいと思うんですけど、予選を通じると、俊輔はケガもありましたし、コンディションがあんまりよくなかったと思いますね。確かにこの間のオマーン戦のあのプレーはよかったと思いますけど、逆に1戦目のオマーンのときはPKを外したりっていうのがありましたから。動き自体は全然よくなかったですよ。シンガポールのときもダメだったし。そういう部分では、通してとなると、いい働きはしてるんだけど、やっぱりディフェンスの部分になるかなってところですかね。
村上:中澤選手って、ワールドカップ予選の最初って。
中西:最初はレギュラーじゃないです。
村上:最初は出てないですよね。アジアカップはすごい契機ですよね。アジアカップはもうMVP。僕らはよく取材とかで、オリンピックのオーバーエイジ問題とか聞かれると「ディフェンスに中澤」。
安岡:とにかく中澤を呼ぼうってね。
中西:守備も固いし、セットプレーがね。ヘディングで点を決められる選手は、たぶん日本で今、一番うまいのは中澤選手でしょ。
安岡:ものすごいクールじゃないですか、その上。みんながバタバタしているときも、結構クールにやってるじゃないですか、ひとり。
中西:中澤選手がやっぱりMVPで。でも中村俊輔選手もね。やっぱり小野選手も大事なところでは効いてますよね。
安岡:試合数は少なかったけど、効いてますよね。
中西:やっぱりここ最近の充実度っていうのは、ヨーロッパにいる選手のなかでは、ナンバー1かもしれないですよね。
安岡:無駄がないですよね、やってることにね。
村上:ちょっとひとりで違う境地でやってる気はしますね。禅みたいですもんね。
安岡:今、自分とボールとこの空間とみたいな、そんな感じですもんね、あの人。
井原:本当、世界が違うって感じでした。僕もレッズでいっしょにプレーしましたし、代表でもフランスのときは。
中西:そうですよ。あのときはまだ19歳で。
井原:ちょうどひと回り違うんですよ。
村上:小野選手はジャマイカ戦のプレーで一緒にプレーしてるんですよね。
中西:あのときすでに、股抜きとかしてましたもんね。
安岡:いきなり出てきて、股抜きでシュートですからね。
中西:やっぱりあのときの経験も大きいんでしょうね。
井原:そうでしょうね。あれがやっぱり2002年に生きたと思うし。
中西:さあ次は注目の質問5「シンガポール戦では、ベテラン選手の代表復帰が見たかった」。もう僕ね、井原さんが呼ばれるんじゃないかってドキドキしてた。
井原:僕もね、練習してたんだけどね。嘘ですよ。
安岡:それこそアンバサダーの方々が全員が出てほしいみたいな。
中西:最近WOWOWで井原さんと北澤(豪、元東京ヴェルディ1969、現JFAアンバサダー)さんと一緒に番組をやってるんで、井原さんと北澤さん、選ばれるんじゃないかなって。
井原:それはないと思ったけど。
中西:記者会見の日、3時ぐらい、僕ずっとインターネット見てましたもんね。
井原:引退した選手はないと思ったんだけど、カズさんは絶対にあると思ったんだよね。
中西:ドキドキしてました、本当に。誰が選ばれるんだろうって思って。
安岡:ね。どの基準で選ばれるのかなってね。
村上:元々、ジーコは何て言ったんですか。どういう話の発端だったんですか、あれは。
井原:シンガポール戦が結局、消化試合になったということで、あんまり意味のない試合になるわけじゃないですか。ブラジルとかだと、そういう試合で、今まで代表で活躍してきた選手の功労という意味も込めて、新たにもう一度招集して試合をやったりすることは結構あるらしくて。
村上:Aマッチの予選でですか。
井原:はい。
中西:結構早く出場が決まるじゃないですか、ブラジルは強いから。
村上:予選でそれは全然、記憶がないですわ。そういうのがあるんですね。
中西:そのことをしかも「フィエスタ」っていう言葉を使っちゃったから。
安岡:お祭りじゃないですけど。
中西:悪い意味に取られた部分もあるんじゃないですか。で、AFCアジアサッカー連盟から通達が来て「ベストメンバーでやれよ」と。そしたらまた、ジーコ監督はジーコ監督で「いや、ベストメンバーだ」って。逆に現役でやっているのに、失礼だと。
井原:僕はどっちでもいいなって思ったんです。ベテランでやってる選手を呼んで試合をやる機会としては、今しかないと思ったんですよ。シンガポールって相手も、どんなメンバーが来るかわからないですよ。
中西:逆にね、相手も未来を見据えたメンバーかもしれないですし。
安岡:オリンピック代表みたいなメンバーがくるかもしれない。
井原:かもしれないし、結局向こうは何もないわけですから。モチベーションも低いし。もちろん実力も全然、差はあるんですよ。そういときに日本が若手や、試合に出てなかったメンバーをその試合で試したとしてもあまりテストマッチにならないと思ったんですよね。それだったら今まで活躍した選手を呼んで、そういう意味も込めて試合をやってもいいかなと。だからジーコの言うことも別にいいかなと思ったし。今までそういう発想が日本サッカー界にはなかったから。そういう話が出ただけでも。ファンの人たちも感謝の気持ちを持たなきゃいけないんじゃないか、そういう部分を教えてくれた感じもしたし。
中西:感謝してますよ、僕は。井原さんに。
井原:あ、ありがとうございます。
村上:井原さんキャプテンで、韓国代表OBと試合やってくださいよー。
安岡:洪明甫(元韓国代表)とね。
中西:その前にエキシビジョンとかで出してもらおう、僕たち。
村上:えっ。
中西:韓国芸能人チームとか。ヨン(ぺ・ヨンジュン)様と。
安岡:とにかくコートを小さくしてもらって。フットサルぐらいに小さくしてもらって。
中西:でも観たいですよ。今、引退した直後の選手とか。福田(正博、元浦和レッズ、現JFAアンバサダー)さんとか北澤さんとか、ね。
安岡:引退試合っておもしろいじゃないですか、そういう意味で。僕も今年の1月に井原さんの引退試合に行ったんですけど、やっぱりおもしろいんですよ。木村和司(元日本代表)さんとかが、審判に喰ってかかる。審判よりも歳上だから、「違うだろ、今のは」とか言いに行っちゃうんですよ。
中西:企画してくださいよ。井原さんが企画したらできるんじゃないですか。
井原:やりたいです。でも今、企画段階で、来年韓国でOB戦はあるかもしれないって。
中西:日本でもやってくださいよ。
井原:やりたいですね。
村上:日本と韓国の代表OB戦、絶対にやってほしい。博多と釜山でやってください。
井原:いいですね。
中西:終わったあと、飲みに行ける。
村上:「帰るわ」とか言って、帰っちゃったりして。
安岡:船か何かで。
中西:崔龍洙(京都パープルサンガ、元韓国代表)と井原さんって見たいですけど。
井原:彼は現役だよ、まだ。
中西:いやいや。できるじゃないですか、井原さん。
井原:いやいや、できない。サッカー選手は1年間やらなかったら無理ですよ。
中西:無理ですか。僕はなおさら無理です。僕、もう4年もやってないですから。
井原:OB同士だったら何とかなるけど。
村上:サッカー選手って、引退して復帰する人ってあんまりいないですよね。
井原:あんまりいないですよね。
村上:ほら、ボクシングとかって、ブランク5年とかで世界チャンピオンになったりとかあるじゃないですか。「普段は何をやってるんだ、ボクシングって」みたいなさ、あったりするんですけど、そんな選手はいないじゃないですか、サッカーでは。
安岡:チームが決まらなくて1年間、どこにも属してない人はいますけど。
村上:たまにリバウド(ブラジル・クルゼイロ退団の7 カ月後、ギリシア・オリンピアコスに入団、元ブラジル代表)みたいな人はいますけどね。
井原:若ければそいういブランクがあっても大丈夫かもしれないですけど。
村上:やっぱり30歳を超えたら無理ですか。
井原:きついと思いますよ。
安岡:高宗秀(韓国・水原三星)は一回、引退してたらしいよ。
村上:そういう選手もいるんだね、一応。
中西:いますよ。ちょっと離れちゃう人とか。井原さんは戻らないんですか。
井原:戻れないです。戻らないんじゃなくて戻れないですよ。
中西:でも現役時代と全く体型が変らない。完璧に維持してるじゃないですか。
井原:いや、痩せていくんですよね。筋肉が落ちてくるんで。
安岡:小さくなっちゃうんですね。
井原:筋トレとかあまりしなくなるじゃないですか。
中西:井原さんは現役時代、すごい体してましたもんね。
井原:そんなことないですよ。
安岡:一回、CMで上半身裸になって。あれ、すごかったですよね。鉄人、みたいな。
井原:あれ、何も付けてないっすよ。もう、素のまま。
村上:びっくりした。何にも付けてないっていうの、全然違う意味に取ってた。
安岡:僕もちょっとあれって。
村上:昔、Jリーグができたときのポスターが釜本さんのヌードだったじゃないですか。あれ僕、家で真似しましてね。
安岡:おしりの筋肉がへこむのがすごいんだよな。おしりのえくぼがね。
中西:コンサートを見て、ゴスペラーズが立ってるときは格好いいね。歌ってるときもかっこいいけど、あの5人が立ってるときの立ち姿、格好いいね。何か立ち方に秘訣はあるんですか。僕、ちょっと聞きたかったんですよ。『ニュース23』(TBS系)で筑紫さんの横に立ってるときも、格好よく立ちたいもん。
村上:でもほら、スポーツ選手ほど立ち方が格好いい人っていないですよ。
中西:若干、左足が前、みたいな。
村上:あの手のやつ。イヤですよね、国歌斉唱のとき、重心ちょっと後ろに取ってる奴。
安岡:明らかにおかしいよね。
村上:でも俺は、スポーツ選手の重心が真ん中でスッと立ってる姿が。
安岡:でもその立ち方だったら、坪井(慶介、浦和レッズ)選手の方が絶対にきれいですよ。あの人、ものすごい真っ直ぐ立ちますよね。
中西:あと聞きたかったんですけど、いつもね、すごくいい間隔で立ってるんですよ。
村上:あれはトルシエ仕込みですよ。フラット5ですよ。
安岡:何度も何度も反復練習して、10年間かけてあのラインに届いたんですから。
村上:僕らいっつも攻め込まれるから、両サイド下がってくる。
安岡:全然3枚じゃ足りないんですよ、うちら。
中西:業界用語で言うと、下はバミッたりしてあるんですか。
村上:もちろん、もちろん。ものすごい、子細にバミッてます。
中西:下にバツとか貼っておくんですよね。
安岡:だから皆さんが来ても立てます、実はね。
中西:でも、ほとんど目線を落とさずに、こうやってスーッと歌いながらクルクルクルクル回転してさ。後ろ回ったり、グルグルグルグル回ったりするんですよ。回るでしょ。
安岡:「回るでしょ」って、なにも悪いことしてるみたいに言わなくても。
村上:でもそれを言ったら、サッカーなんてトルシエのスリーバックでなくても、あのディフェンスラインの間隔って。本当にもう、みんなでロープを持ってるのかみたいな。
中西:それは、あ・うんですよ。
村上:今、言った僕ら5人の間隔って、つまり身体感覚じゃないですか。ああいうのってスポーツ選手のを見てると、もう全然違うなって。テレビの向こうでやってる選手を見ていると、こういう人たちはサッカーじゃなくてもプロなんだろうなって、運動の。
中西:いや、あんまりサッカー以外はプロじゃないですよ。
井原:何もできないですよ、みんな。
中西:たぶんコンサートで、5人の立ち位置を確認しないと、きっと立てないと思いますよ。間違いなく。
村上:何でもできるんだろうなっていう感じが。
中西:プライベートで飲んだりするでしょ、サッカー選手と。結構みんな普通でしょ。
安岡:普通ですね、確かに。飲んでるときに何かスポーツやってたらイヤですけどね。リフティングしながら乾杯なんてされたらすごいイヤですけどね。
村上:等間隔取ってたら、すごいイヤですね。
安岡:削られたりしたらイヤですよね。
井原:でも飲み方、サッカー選手は結構飲むでしょ。
安岡:そうですね。はっきり分かれてますよね。飲まない方は乾杯だけして。「もう僕は飲まないから乾杯だけ」ってやる人もいるし、飲まれる方は体も大きいから、どこまでも入るんだなって人もいるし。
中西:井原さんは飲むんですか。
井原:僕はたしなむ程度・・・いやでも飲みますよ、それなりに。
中西:自分はどこまでも飲みますからね。自分がボロボロになるまで。
村上:でも、それは現役のときは違うでしょ。
中西:今ですよ。質問6「日本代表に呼んでほしい選手がいる」。僕は長谷部(誠、浦和レッズ)選手を呼んでほしい。まず格好いい。超イケメンだよ。背が高いし、スラッとしてて。今風なんだよね。
井原:僕、レッズで1年一緒だったけど、ちょっとね、格好良過ぎだね。それを思ったのが、この間PKを決めた後。「お前、もっと喜べよ」みたいな感じ、なかったですか。
中西:ああ。でもポストに当たってちょっと焦ったんじゃないですか。
井原:クールに喜びを隠していた。若かったらもっと全面的に出してもOK、みたいな感じがねあったんだよ。
中西:格好よくないですか。僕、一回も話したことないんですよ。レッズの練習観ていてうまいなと。でも「格好いいな、この人は」って思ってたんですけど。
井原:プレーもうまいし。僕、1年寮に入ってたんですけど。
村上:レッズのときに、寮に入ってたんですか。
井原:自宅に帰れないときは、寮に泊まって。
村上:ああ、そういことか。びっくりした。若手と一緒に掃除してるのかと思った。「そんな、キャプテン」みたいな。
井原:門限とかあるから、結構、厳しいっすよ。門限11時とか。
村上:破ったって誰も怒らないでしょ。
井原:破れないじゃないですか、逆に。僕が破ったらやばいじゃないですか。
中西:そのとき長谷部君はどうだったんですか。
井原:真面目な奴でしたよ。
村上:そうなんですか。ちょっとクールな佇まいと、「俺はおめーらには絶対に負けねーんだ」っていう感じが、それを出せないことでものすごく出る選手じゃないですか。だからそういう意味では、全然タイプが違うんだけど、野球の城島(健司、福岡ダイエーホークス)選手みたいな印象をちょっと受けるのね。ルックス、全然違うじゃない。
安岡:ちょっと待って。今、全然まだつながってないから。説明して。
村上:あのね、この間の日米野球とか観ても、「絶対に負けるわけがない、お前らに」って思って野球やってるの、城島選手だけに見えるの、俺。
中西:自信を内に秘めながらやってるのね。
村上:そう。長谷部選手はそういう風に見えるんですよね。だから、ときにそれは傲慢な雰囲気も出るんですけど。だけど、そういうプレー。ちょっと20歳に見えない。もう23、24歳ぐらいに見えるんですよね。
安岡:最近、当たりも強いですもんね。こう、挟まれたときに抜けていきますもんね。
中西:あと超専門的な話ですけど、パスがすごく小さいモーションですごい強さがあるんですよ。これってすごく大事で。
安岡:伸二が蹴るみたいなボールを蹴りますよね。
中西:ビシッといくの。しかもそれが浮かないんですよ。
村上:確かに。インサイドとかでちょっと。
中西:ビシッと、くさびのボールとかすごくいいボールが入る。いい選手だなと思って。ドリブルもうまいし。運ぶのがうまいですよ。前にスペースがあったときに、普通はパスってボランチは考えちゃうんですね、最初。ミスしたくないから。でもドリブルでバーッとそのスペースに自分で持ってくんですよ。
安岡:そうですよね。
中西:僕、ボランチをやってたときに、いつもドリブルしなかったんですよ。何でかというと、自分がドリブルすると、相手がもし追ってきたときに、いっぺんに距離が近くなっちゃってミスしちゃうんですよ。だからボランチでドリブルするのってすごく難しい。でも、それをいとも簡単に。いつもドリブルでダーッと運んでいって、できたらパス。
井原:ジュビロ戦(2004年8月29日、埼玉スタジアム2002、浦和レッズ3-2ジュビロ磐田)で、3点目のゴールを決めたのは。
中西:セカンドステージの最初でしたっけ。後半だ。後半44分ぐらいで入れたんだ。足がつりそうなときですよ。そのとき、ひとりでダーッと持っていって。
安岡:ハーフラインぐらいから持って行きますもんね。一気にゴール前に行って、チョンと出したらエメ(エメルソン、浦和レッズ)がいるもんだから、もうどうしようもない。
中西:右も左もボールコントロールいいし。代表に呼んでほしい。
村上:僕はまさに、長谷部選手のチーム内でのライバルであり、いいパートナーである、ケガしちゃった山瀬(功治、浦和レッズ)選手。山瀬選手はすごいパンチがあるじゃないですか。やっぱりミッドフィルダーで、決定力があるでしょ。決める選手はいてほしい。藤田選手みたいにミッドフィルダーだけれども、何点取るんだ、Jリーグで、みたいな。それと同じで、実際に試合で勝負を決める選手だと思う。長谷部選手もそうなんですけどね。あのふたりがいるレッズは本当にすごい。この流れでもしレッズが行ってたら、山瀬選手がケガしなかったら、このシンガポール戦とかは、そういう選手を呼ぶんじゃないかなって思ってたんですよ。
井原:結局、ベテランも呼ばないけど若手も呼ばない。国内組でベストで行くことになりましたね。

後編へつづく

取材・構成:CREW
撮影:新関雅士