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@ぴあ/HOTスポーツの人気連載コラム「金子達仁のサッカーコラム~グリーンカード~」で健筆をふるうスポーツライター・金子達仁をホストに、スポーツについて熱く語る「ぴあトークバトル」。12月17日に行われたイベントの模様を、そのままお届けします。
 vol.5 後編
 SUPPORTED BY キリンビバレッジ

「どうなる! サッカー日韓戦」(後編)
前編はこちら

出演者プロフィール
ホスト:金子達仁(スポーツライター・右)
'66年、神奈川県生まれ。法政大卒業後、「サッカーダイジェスト」記者を経て、'95年にフリーライターとなり、スペインに移住。「28年目のハーフタイム」「決戦前夜」などベストセラーを生み出した。今、日本で最も売れ、最も刺激的なスポーツ・ノンフィクション作家。
ゲスト:青島健太(スポーツライター・左)
'58年、新潟県生まれ。慶応大、東芝で強打の大型三塁手として活躍し、'85年にヤクルトスワローズに入団。'89年に退団後、スポーツライターに転身。現在は、スポーツライター、キャスターとして、テレビ、ラジオ、雑誌等で活躍している。

青島:昨日たまたま、水沼貴史(サッカー解説者)さんと会って話を聞いてたの。「お前の時、日韓戦どうだった?」って言ったら、彼は勝ってるんですよね、チャムシルで。'84年かな。
金子:こけら落とし。
青島:そうそう、こけら落としの試合。
金子:貴史さんの一発で。
青島:うん、「オレの一発なんだ」って、こんな風に胸張りながら話してくれたけど。
金子:ハハハハ。
青島:だけど、彼も言ってた。昔の日韓戦を考えたら、今はヌルイなぁって。
金子:あのね、政治とか一般生活で日本と韓国との関係が近くなってきてるっていうのは、本当に素晴らしいことだと思うんですよ。ガッツポーズをした日本人の記者に対して、憎悪の視線を向けてきた韓国人、ちょっとお前ら大人げないぞって思うんですが。じゃあ、オランダとドイツ。政治の上では非常に良好な関係にありますよ。
青島:うん。
金子:でも、サッカーの試合になったら、危険な雰囲気メラメラですよね。
青島:そうですね。
金子:イングランドとスコットランドしかり。だから、まわりの雰囲気に選手たちは染まっちゃいけないと思うんですよ。両方の選手たちからね、「ここにだけは負けねぇぞ」っていうのがあんまり感じられない。それは、日韓戦を希薄なものにしているひとつの要因だと思うんですよ。それこそ、オランダは『アンネ・フランクの日記』じゃないですけども、歴史的な苦い思いが対ドイツにはある。スコットランドもイングランドに対してはある。そういう人たちにとっては、ものすごく不幸なことですけど、それがきっかけでサッカーの試合が盛り上がってきた。これは、サッカーの試合にとっては財産なんですよね。そのライバル意識というものだけは常に持ち続けてもらいたいし、ライバル意識が強ければ、どっちかが強くなったら、もう片方も必ず追いついてくるんですよ。
青島:そりゃ、そうですよ。だって、日本は野球はちょっとリードしてたけど、サッカーは昔から“打倒韓国”がひとつのテーマであったわけじゃないですか。
金子:チンカスみたいなやられ方でしたからね。
青島:ただ、それは本当にいい意味で、競技そのもので熱くなろうぜって向かってること自体いいことだと思うんですよ。僕らがやった頃の日韓戦、野球ですけどね、今とは違いますよね。でも、水沼さんの話なんかも聞いて、何か拍子抜けした覚えがして。もしかしたら、あのへんがひとつのきっかけなんじゃないかなと思うのは、その11月1日ね。
金子:はい。
青島:日本は、負けたらワールドカップに行けないっていう試合だったじゃないですか。
金子:はい。
青島:で、名波(浩・ジュビロ磐田)と呂比須(ワグナー・現FC東京)でしたっけ。
金子:はい。
青島:彼らが決めて、勝つんだけど。俺は日帰りだったんですけど、一応プロデューサーには、「何かあったら帰れないかもしれないから、よろしく」と伝えて行ったの。その日、スポーツニュースの担当があったから。韓国に行って、もし日本代表が勝って、暴動があったら。あの時、試合前に5000人だか7000人だか、機動隊が出るってニュースがあったんですよ。
金子:そうですよね。
青島:スタジアムに入ったら、凄い。立ち見がもう朝の山手線状態なんですよ。機動隊がいてね。ただ日本のサポーターがいてさあ、スタジアムの一角が青に染まっていたのは嬉しかったけど。その時に垂れ幕があったと思ったんだよねえ。
金子:「一緒に・・・」
青島:そうそう、「一緒にワールドカップに行こう!」って。勝敗を決する戦いはするけど、理屈抜きに日本憎しみたいな、そういう嫌な過激な感じの匂いっていうのが、スタジアムになかった。「あっ、これなら安心して帰れるな」みたいな感じがあったのね。
金子:ヌルイ試合でしたよね。
青島:何だろうなあ、「そんなにアッサリ韓国負けちゃうの?」っていう残念な思いがあったんだけど。
金子:ターニングポイントですね、あれが。あの11月1日の試合の1ヵ月前に国立競技場で行われた日韓対決。これは危険な香りがプンプンしてましたもんね。
青島:プンプンでしたよ。だって、山口(素弘・名古屋グランパス)のループシュートが決まって、「よし、やった」と思ったけど。その後の韓国の選手は、凄かったよね。
金子:うん。命懸けてましたよね、本当に。それなのに、確かに11月1日のチャムシルでの試合から、スーッとなくなってっちゃいましたよね。
青島:何か、そのへんから変わってきた。
金子:確かに、あれは本当にターニングポイントだったかもしれない。
青島:言ってみればね、ある種のシンパシーがあったと思うんですよ。「日本頑張れよ」って。韓国はほぼワールドカップの出場権を手中にしてたわけだから。ものすごく悔しい立場なんだけど、あそこで韓国は隙を見せたような気がするの。
金子:見せちゃいけない隙を、見せちゃいましたね。
青島:あそこから、俺は逆転したような気がするな。日本がグワーッと上がって。あの試合でも、またコテンパンに日本がやられていたら。
金子:うん。
青島:もう、やっぱりしばらく韓国に勝てなかったでしょう。
金子:頭上がらないですね。
青島:「もう、勘弁してくれよ」「そんなにイジメないでくれよ」ってね。だけど、あそこから。確か、柱谷さん(哲二・サッカー解説者)か誰かが言ってたんだけど。「あれから韓国が怖くなくなった」って。かつて、日本代表だった人が。
金子:もう、全くビビッてないですし。
青島:今の日本代表の人たちはね。
金子:だいたい、日韓戦、中田英寿がローマから戻って来ない。「どうしてだよ」って声が上がらないですもん。ということは、ファンにとってもそれほど日韓戦って大事じゃなくなっているってことですよね。
青島:でもさあ、これはいい変化だよ。
金子:んー。
青島:全体の状況はね。
金子:でもね、じゃあチェコ対オーストリア戦のあの雰囲気が変わってきたかって言ったら、そんなことないじゃないですか。せっかく日韓がライバルで、お互いの選手もそうですし、ファンも「コノヤロー!」って、ものすごい気迫みたいな物があったのに、それを薄めてるのはもったいない気がするんですよねえ。
青島:ワールドカップの出場権とか、タイトルは何もかかってないけど、12月20日は日本代表に韓国をやっつけて欲しいな。それにしても、日本代表のレベルは明らかに変わってきた?
金子:うん。間違いないです。
青島:Jリーグができてから、レベルが上がってきましたよね。逆に、今韓国の置かれている状況は? 今回は代表監督なしで、朴垣緒(パク・ハンソ)が暫定的な監督代行でしょ。新監督は、ヒディングですか?
金子:はい。
青島:フランス・ワールドカップの時のオランダの元代表監督が来るわけで。ちょっと力が落ちてるって言うけど、韓国はどういうチーム状態なのかなぁ。韓国のサッカーって、どうなってきてる?
金子:相当厳しいと思いますよ。
青島:厳しいかぁ。
金子:というのは、サッカーっていうのは、雑菌の中を生き抜いた優秀な生命体が集まった時、強いんだと思うんですね。
青島:作家的表現だなあ。
金子:僕、作家だから・・・。
青島:OK。
金子:オリンピックのメダル数と、ワールドカップの勢力図って全く一致しないですよね。
青島:うん。そうですね。
金子:オリンピックっていうのは、無菌状態を作って、その中で純粋培養していくことが、一番手っとり早い成功への道だと思うんですね。中国もそうですし、旧ソ連、東ドイツもそう。東ドイツと西ドイツ、同じ民族ですよ、もともとは。なのに、圧倒的に東ドイツの方がメダルを取っていたわけですよね、オリンピックでは。じゃあ、その東欧圏。ワールドカップで1回も優勝したことがない。決勝に進んだこともない。
青島:うん。
金子:ソ連が'66年にベスト4に行ったのが精一杯。それって、何て言うんでしょうか。サッカーというのは、フィールドも広いですし、プレイする選手も11人と多い。要は、どれほど練習でパターンを経験していても、必ずどこかで「アラッ、こんな状況になったことないや」っていう状況に遭遇してしまう。その時に、無菌状態で育った選手っていうのは、経験の幅がすごく狭いじゃないですかね。
青島:うん。
金子:雑菌状態の中を生き抜いてきた選手って、タフなんですよね。タフだし、似たような経験をどこかでしてるから、アジャストしていくことができる。
青島:うん、うん。日本のプロ野球選手とメジャーの選手みたいなものか。
金子:かもしれないですね。それで、韓国のサッカーっていうのは、今一生懸命内部でも変えようとしてる方がいるみたいですけども、基本的にオリンピック。それも、共産圏のオリンピック・スタイルなんですよ。小学校で100人サッカーをやってる選手がいました。中学校でやれるのは20人。あとの80人はやれないんです。やらないんじゃなくて。で、中学校から高校になっていきます。やれるのは10人。高校から大学へ行きます。やれるのはひとり。
青島:うん。
金子:じゃあ、例えば今はねえ、ちょっと消えちゃったような状態ですけど、岡野(雅行・浦和レッズ)君のような選手というのは、韓国のシステムとしてあり得ないんですよ。彼は神奈川県の日吉で育ったのに、こっちの高校じゃちょっとシンドイということで、山陰まで行ったわけですよね。それから日大に入学。日大は決して強い学校ではなかったけど。もう、本当に一芸を持ってただけの選手。ただ、そういう選手にもサッカーを続ける環境っていうのが、日本の場合あるわけですよ。韓国にはそれがない。だから、どうしても似たタイプ、同じようなタイプの選手ばかり出てきてしまうし。Kリーグをご覧になられた方がいらっしゃるかもしれませんけれども、区別つかないんですよ。やってるサッカーの。
青島:なるほど。
金子:リーグの中でも同じサッカーでぶつかり合っている。対日本という目標を絞った時には強いかもしれないですけれど、ワールドカップはシンドイでしょうね。まあ、ワールドカップの対戦相手が決まって、予選リーグの3チームを徹底的に分析するというやり方を彼らはするでしょうけれども、基本的にそれは韓国のポテンシャルを上げようとする作業とは、ちょっと違う。カンフル剤を打ってる作業だと思うんですね。いつかは、切れてしまう時が来るし、このままだと相当厳しいかなあと。
青島:よく言われてるのは、韓国は非常に優秀なエリートは育てるけれども、自由にこどもたちがサッカーを楽しめる環境はないと。とにかく勝たなきゃいけないということで、勝つサッカー、勝つサッカーですよね。
金子:そうですね、韓国で小学校、中学校のサッカーを観に行ったことがあるんですけど、未だにボコボコに殴りますからね。
青島:はあー。
金子:これは、いい悪いではなくて、韓国の文化なんでしょうけれども。やっぱり自由な発想っていうのが、出てきにくい環境じゃないかな。おもしろいなぁと思う選手が出てきても、メディアは嫌うわけですよ。監督も嫌うし。そうすると、ドンドン退屈な選手になっちゃうんですよね。
青島:なるほどねえ。やっぱり’90年代に入って、日本がJリーグを作ってからは、韓国の方が先にKリーグをスタートさせているけども、状況が変わってきてるし。例えばその、昔は一触即発みたいなね、危険な匂いがする日韓戦っていうものがあって、ある意味でそれがまた、妙な楽しみでもあったんだけれども。そういうものが緩和される材料として一番端的なのは、今回の日韓戦にも出場するけれど、Jリーグにたくさん韓国の代表選手が来ていることじゃないですか。
金子:はい。
青島:私なんかも、洪明甫(ホン・ミョンボ、柏レイソル)とか大好きでね、カッコイイしね。それから、柳想鉄(ユ・サンチョル、柏レイソル)とか、尹晶煥(ユン・ジョンファン、セレッソ大阪)。               
金子:はい。
青島:そうやって韓国の代表が日本でプレイしているわけだから、代表チームに帰ったら、それは自国のために彼らもバーッと爆発するんだろうけど、でもいい意味でお互いわかるようになってきているし。
金子:はい。
青島:サッカーを越えて、お友達になってるわけだし。そういう交流っていうのは、ドンドン進んでるじゃないですか。
金子:そうですね。韓国のサッカーが変わるきっかけになるとしたら、彼らだと思うんですよね。今、日本でやっている韓国人Jリーガー。彼らが今度ワールドカップで、韓国史上一度もまだやったことがない決勝トーナメント進出を達成したら、発言権っていうのが、ある程度韓国サッカー界の中で保証されると思うんです。そうなった時に、日本での実情、あるいはヨーロッパでの実情を知っている彼らの発言が先輩に対して通るようになってくる。そうすると、韓国のサッカーは劇的に変わるかもしれない。
青島:プロスポーツだから、もうひとつわかりやすいファクターで考えたら、例えば野球の選手がなぜメジャーに行くのかって言ったら、成功した時の報酬がものすごいからですよね。やっぱりゼロがひとつ違うんですから。スケールがでかいんですもん。
金子:はい。
青島:それじゃ、今韓国の選手が日本に大挙して来てるってことは、こっちのステージの方がおいしいからですよ。日本の方が繁盛してるわけですよ。
金子:はい。
青島:そこにいい選手が集まって、いいレベルだから、また儲かる。だから、韓国の代表選手が日本にいっぱい来てるってことは、それだけでも、日本は頑張ってるじゃないかっていう、評価はできるんだと思うんですよね。
金子:まあ、いつかはねえ、NHLとかメジャーリーグがそうであるように、極東サッカーリーグを作って欲しいなと思うんですよね、いつかは。そうしたら、ホーム&アウェイ、すごくはっきりしてきますし。
青島:野球もそれやって欲しいなあ。
金子:だって、アビスパとかは東京に来るよりもソウルに行った方が絶対近いですよね。
青島:マジ、マジ。
金子:だって今、韓国の新婚カップルが一番行くの別府温泉ですよ。
青島:そうそう。大分で野球チームやサッカーチームがキャンプやったりするしねえ。福岡の企業の忘年会って釜山に行ったりするらしいから。
金子:安いし。
青島:北海道に行くより、全然安いからね。
金子:いずれ、そういう時代になっていくんじゃないのかなって。なって欲しいなと思いますね。
青島:うーん。金子さんが懸念している日韓戦の持つべき熱。やっぱりそれはもう、バリバリのナショナリズムを背景に、やる方も応援する方も、やって欲しいと思うし。日韓戦だけは、いつの時代も熱いゲームであってくれると思うんですけどね。
金子:やっぱり、日韓戦で一番楽しいのは、コリアンの友達とお互いに対するタブー意識を取っ払って観ることですけどね。
青島:うーん。全然また話違うんだけど、この前あるシンポジウムみたいなところへ行ったらね。筑波大学の佐伯先生がおっしゃってたけど、「もう、ハングリーからヒーローは生まれない時代だ」って。
金子:はい。
青島:なるほどっていう思いもあってね。何て言うのかなあ、ある意味日本はもうJリーグがスタートして、恵まれてると思うんだよね。ただ、どうでしょう。これは、僕の個人的な感想だけど、例えば野球なんかで韓国行った時に、こどもたちが集まって来て、「硬球くれ、硬球くれ」って言ってたわけですよ。   
金子:こどもの頃を思い出しますね。
青島:だけど、韓国も今ものすごく豊かになってるじゃないですか。ソウルなんかに行ったら、たまげるほど、ビルができてますよ、僕が20年前に行った時と比べたら。最近は韓国が日本に負けてることが多くなったっていう部分で言えば、韓国が豊かになったんですよ。
金子:それは、韓国サッカー界の関係者がみんな言いますよね。
青島:そう。
金子:根性がないって。
青島:だって、また水沼さんの話だけど、「昔の韓国の選手って、何て言われてたか知ってます? マンマークに付いたヤツは便所まで付いて行け」って。これ有名な話かな。
金子:そうですね。
青島:それでね、彼らの鼻息が耳元で聞こえるんだって。ハアー、ハアーって。そんなのが、1試合ずーっと付きっぱなしで。もうそろそろ敵も疲れただろうって思っても、まだ付いてくるって。何が何でもやっつけようっていうひとつの表れだと思うんですけどね。そういう意味で、韓国も豊かになってきて変わってきた。日本だってJリーグがスタートして、今は裕福ですよ。オフト呼んだり、フランスの監督呼んできたりさあ。日本はすごく恵まれてるんだけど、でもこのままじゃ勝てないわけじゃないですか。
金子:ただ、ハングリー精神と経済性って、あんまり関係ないんじゃないかなあって思うんですよ。じゃあ、マイケル・ジョーダンどうするのって思いますし、ボリス・ベッカーどうすんのって。
青島:いや、だからそういうものを背景にしても、もうダメな時代ってことじゃないかな。
金子:勝利に対するハングリーな選手を育てなければいけない時代ですよね。
青島:お金を使ってやるべきことはやって、環境をきちんと用意して、それで戦わなくちゃ、なかなか勝てないってことなんじゃないかなって、気がするんですけどね。
金子:確かに。
青島:根性だけじゃ、もう勝てないって。
金子:ねえ。まあ、根性でも世界では勝てなかったですからね。
金子:それでは、質問タイムに入りたいと思います。何かご質問のある方いらしゃいましたらお願いします。
客:天皇杯は70年続いていますし、Jリーグも100 年構想と言ってきましたが、2002年以降、サッカーは野球を凌駕できるんでしょうか。
金子:野球を凌駕できる日が来るかどうか、それはわからないです。ただ、僕自身今一番言ってるのは、2003年どうするのってこと。日本サッカー協会の方の中にもですね、「2002年まではこの役職にいたいんだ」って、公言してはばからない人がたくさんいますし。彼らは、その先は知ったこっちゃない状態。ほとんど九州・沖縄サミットに出たい、出たいと言っていた小渕(恵三・前総理大臣)さん状態ですよね。これじゃあ、本当にヤバいと思うんですけど。ただ、そういう問題がありつつも、依然として草の根レベルでは、サッカーの場合は広がりを見せている。そこに僕は、未来を見い出しています。ここを間違えないようにしていけば、そんなにヒドイことにはならないんじゃないかなあと。ただ、もっと飛躍できる可能性を潰してしまってるとは思いますけどね。よく言うんですけど、これから東京で生まれるこどもたちは、日本ハムファイターズとFC東京、どっちに親近感を覚えるか。10年前であれば、FC東京、東京ガスなんていうサッカーチームを応援するこどもはゼロですよ。日本ハムを応援しているこどもも少なかったけど、10人や50人いたかもしれない。それが、もう明らかに比率として変わっちゃうわけですよね、これからは。このあたり、プロ野球は本当に考えていかないと。僕はプロ野球も大好きな人間なんで、シンドイと思います。どっちも上層部に問題があるってことですかね。
青島:野球はやっぱり、自分は野球出身なんですけど、あんまり楽観視できないなっていうか、結構悲観的に考えてますね。今はまだいいんですけど、今のこどもたちが、金子さんが言うように、何やってるのかっていうことが、多分20年後、30年後の答えだと思うんですよ。こどもたちが今サッカーをやってることは、2002年後の問題に対して追い風になってくるだろうと、僕は思うんですけど。例えば今、サッカーはチームのフランチャイズが全国に散らばってますよね、見事なまでに。札幌にもあれば、甲府にも、山形、水戸、徳島にも。J1だったりJ2だったりしますが、散らばっている。こどもたちにとって、地元の憧れる存在としてのチームが広がってるじゃないですか。でも、野球って大都市に限られているから、こどもに対する影響力の与え方が今のままでいいのかってことを思うと、地元にあるサッカーチームにドンドンこどもたちが向かっていく気がして、すごく心配ですね。じゃあ、具体的に野球は何をやらなくちゃいけないかって言ったら、札幌にチームを持つべきですよね。四国にもやっぱり、チームを持ちたいですよね。だって、そこには野球をやるこどもがいるんだもん。新潟あたりにもあっていいかな。日本海側にねえ、私の出身地ですから。地元にどんなレベルであれ、オラがチームがあれば。こどもたちにとって、J2の選手だって絶対憧れの的ですよね。そういうものが身近で見られるように、うまく散らばっているというのが大事な要素で、そういうことを今の野球はできてない。ある意味、それは今までは社会人野球が代わりになってた部分があると思うんですよ。でも、社会人も撤退している。だから、そうした状況を受けて、今ベイスターズはファームのチーム名を変えて、シーレックスを横須賀に持っていったり。ブルーウェーブのファームチーム、サーパスも四国に持っていこうかっていう話を始めた。明らかにそういう戦略は、サッカーの方が先に行ってるのでね。これからの日本ってコンピュータの上手な子と、サッカーの上手な子しか作らないんじゃないのっていう気がして、すごく心配してます。
金子:納得していただけけました? では、次の質問。はい、何かございますでしょうか?
客:今、企業は会社がヤバイからスポーツ部をやめてますよね。日立のバレー部とか。日本におけるスポーツの地位って、あやふやだと思うんです。その時その時だけ盛り上がって、ちょっと日陰になるといらない。サッカーに関して言えば、企業とは別として考えてるよって言ってるけれども、どうしても企業頼み。レッズは考えてるけども、まだ51パーセントは三菱自動車だよみたいな。日本のスポーツっていうと、どうしても野球がメインに考えられますが、果たしてこれから、サッカーはチームと企業と地域住民がうまくやっていけるのか。サッカーが日本のスポーツ界の中心になれるのかどうか。その点を金子さん、青島さんはどう思われますか。
金子:野球中心、サッカー中心っていうよりも、企業中心から地元中心っていう形にはなっていくんじゃないかなあと思います。時代の流れって、ドンドン速くなっていってるじゃないですか。50年前には大企業って言われてた会社が、今どうなっているか。ドンドンドンドン不確かになってますよね。その不確かなものにスポーツの未来のすべてを託してしまっていたのが、今までの日本だったと思うんです。そうなると、彼らに全部おんぶに抱っこしてた以上、彼らが下りると言った時、何も言えないですよね、ファンは。多分、日立はこれから先ね、どんなに財政が厳しくなってもレイソルを潰すなんて言えないと思うんですよ。言ったら、地元のファンが大変になっちゃうから。
青島:でも、フリューゲルス潰したよ。
金子:だから、潰したというイメージを極力出さないために、合併とうたいましたよね。
客:サッカーくじはどうなると思いますか。日本のスポーツ界にどのぐらい影響を与えるんでしょうか。
金子:言われてる通り、本当にお金が回って行ったら、素晴らしいことになると思うんですけど、どっかで抜くヤツがいるんじゃないかなあっていうのが一番心配。
客:イタリアのように。
金子:ただひとつサッカーに関していいことはですね、サッカーくじができるようになると、1部から2部まで、全試合のゴールがテレビでハイライトで見られるようになるわけですよ。
青島:そうだね。競馬だって、見せなきゃいけないんだもんね。
金子:はい。要は、スポーツニュースにおけるサッカーの扱いがすごく増える。もちろん、サッカーがそれだけ増えてしまっても、野球を削るわけにはいかないですよね。だから、必然的にスポーツ番組の時間が長くなると思うんです。これを、僕は一番楽しみにしています。それと、「レフェリー、お前がここでオフサイド取っておけば、俺は1億円ゲットだったよ」って言うヤツが絶対出てくるわけです。あるいは「それPKかよ」っていうのが、出てくるわけですよね。そうなると、レフェリーに対する関心がものすごく高くなる。関心が高くなれば、レベルは絶対上がりますから。
客:マスコミのレベルも上がりますか?
金子:お金がかかってると、みんな真剣に見るようになるじゃないですか。そうすると、お金がかかってない時の記事では、物足りなくなるかなっていうのは、あると思うんです。それが、レベルがどうこう、上がるか下がるかはわからないですけれども、記事のクオリティー、あるいは、本質を変えていく可能性はあると思いますよ。
青島:多分それって、すごくいい質問っていうかね、皆で考えていかなきゃいけないことだと思うんですよ。よく、そういう話し合いに、最近招かれるんですよね。特に社会人野球をやってましたから。簡単なことだと思うんですよ。要は、今まで日本のスポーツっていうのは、親のスネをかじらないとやっていけないわけ。水泳なんかはスイミングスクールに入れてもらわないとできないわけだし、サッカーだってサッカースクールに入らないとね。つまり、親の庇護っていうか、親の経済的なサポートがあって、初めてスポーツができる。企業スポーツも、まさにそういう感じですね。お金出してもらってんだから。だけど、もう大人なんだら、自分でやりたいことは、自分で金稼いでやろうやっていう話になってきてるんだと思うんですよ。今の状況は。多分、潰れるところはたくさんありますよ。うまくお金を集められなくて。お金がないとスポーツできないですから。そういう必然もあって、サッカーくじって出てきてたんだと思うんですよ。やっぱり、スポーツはお金がかかるから、どこかで財源持たなきゃならない。そりゃ、ギャンブルっていうことで反対する声があるのも、わかるじゃないですか。でも、やんなきゃいけない、やるべきだ、やったらおもしろくなりそうだっていうのは、お金が必要だからだと思うのね。例えば、この前ヴェルディの坂田社長と話させてもらったんですけど、川崎を撤退して東京に移る一番の理由は何だって聞いたら、川崎じゃお客さんが入らないと。カズ(三浦知良)だって、柱谷だって放出したのは、お給料払えないからですよ。ヴェルディがあんなスター選手たちを切ったのはね。プロスポーツだろうが、どんなチームだろうが、やりたい人が集まってスポーツをやるなら、道具だ何だって、絶対お金がかかるわけだから。そういうお金を集められるレベルでやるっていうことになるわけだと思うんですよ。
金子:ひとつ、日本のサッカーファンが決定的に誤解してるんじゃないかなと思うのは、企業スポーツは悪だとしてる方が多い。それが大きな間違いだと思うんです。FCバルセロナを市民が支えてるって言いますけど、じゃあ企業スポンサーはついてないかと言うと、ついてます、もちろん。企業のお金は絶対必要です、これだけスポーツが大きくなると。ただ、それに全面的に頼ってしまうのはリスクが大きいということだけだと思うんですよね。ということで、次の質問にいってよろしいですか。
客:カウンターサッカーは否かっていう論理があるんですけれども、例えばボクシングだったら、カウンターはテクニックであるというとらえ方をされるのに、サッカーのカウンターっていうのは、やられて、やられてやり返すみたいな、ものすごく弱い立場にあるようなイメージが強いんですけど。それに関して、今後の日本のサッカーがどうなるのかっていうのと合わせて、教えてもらいたいんですが。
金子:僕自信、カウンターサッカーというのはあんまり好きじゃないんです。ただ、何て言うんでしょうね。日本人って何かひとつ大きな決まり事がないと、創造していけないというか、完全な白紙の上で何かするのはそれほど得意な国民ではないと思うんですね。これ、あくまで僕の個人的な意見ですけど。とにかくボールを持ったら、この選手とこの選手がこう動いて、こう行くぞっていうのを決めといた方が、やりやすいんじゃないのかなぁという気はするんです。あまりにも日本人に、ブラジル人のような創造性を求め過ぎちゃいけないなって気がするんですよね。カウンターサッカーがひとつできるようになると、そこからバリエーションを増やしていく能力は、日本人にあると思いますんで。何かひとつ決定的な形。最終的にはもちろん、何もないところから練り上げていって、美しいハーモニーを奏でられるようなサッカーができれば、言うことないですけど。現時点で日本はシンドイかなってことです、僕が思うのは。
客:テクニックという面から見た時に、カウンターサッカーっていうのはどうですか。
金子:テクニックに関しては、日本代表も問題ないレベルまできてると思います。要は頭の中。全員に何も言わないで、11通りのことを考えていて、それでもサッカーになっちゃうのが、ブラジル人なんですよ。日本人は何か約束事を決めないと。ドイツ人もそうなんですよ、やっぱり。何か柱がないと。彼らも柱から派生させていく形ですよね。
客:例えば、ブラジルはドゥンガ選手(元ジュビロ磐田)がボランチとして、柱になっているのでは。
金子:選手を柱にするのではなくて、意識です。どういうサッカーをやるのかっていう約束事。サッカーって、基本的に11人の思いつきの連続ですよね。もちろん、いろんな練習はしますけれど、バラバラになっちゃうんですよ。そうなると日本人は、何も出てこなくなっちゃうんです。
客:ありがとうございました。
金子:はい。今のでいいですかねぇ。
青島:やっぱり、サッカーに限らず、基本的に我々が持つ態度っていうんですかねえ。どこかで、やっぱり守備っていうことをまず、原点に、出発点にして。それから攻撃に入っていくっていう考え方が、どうも日本人には馴染むような気がするんですよ。野球も守備を非常に大事にしますよね。例えば、知らない人に会う時でも、どっかで自分を守るような態度から始まるみたいなね。ヤー、ヤーみたいに、いきなりフランクに入っていかないところとか、みんなありますよね。基本的に自分たちの肌に合うとか、価値観とか、生活感とか、いろんなところにピッタリくるスタイルっていうのがあると思うんです。それは多分、守るってことを基本にしてる部分のような気がするんです。柔道しかり。無茶にガーッっていくよりも、相手にどう技をかけられないかっていう部分から入っていく。守りがまず初めにあるっていう発想だと思うんですよね。
金子:身も蓋もない言い方をしちゃうと、ブラジル以外、世界中どこの国もカウンターサッカーだと思うんですよね、今は。で、世界中でお城がない国ってあんまりないんですけど、ブラジルってそういう国なんです。お城がある国っていうのは、基本的にまず守り。自国の守りを固めて、それから侵略に行くっていう発想があると思うんですよ。日本ももちろんそうですよね。だから、ブラジル人と同じことを日本人がやっても、無理だと思うんですよ。そういうことで、ちょっとは納得していただけました? 最後にもうひとりいきましょう。
客:今度、韓国の代表監督が変わりますが、それによって韓国のサッカーがどう変わっていくと思われますか。
金子:僕、ちょっとヒディングはシンドイと思うんです。彼のサッカー、実は僕、感心してなくって。素材をうまく当てはめていく監督だなって気がするんですよね。だから、彼がどうこうしたって言うよりも、フランス・ワールドカップの時にチームの根っこになったアヤックスのサッカーをあまりいじらず、アヤックスに足りないなと思う点をポン、ポンって穴埋めしていったのがヒディングだと思うんですよ。アヤックスのサッカーっていうのは、非常に締めつけが強いサッカーではあるんですけど、それを補っている部分というのが多種多様な民族ですよね。いろんな民族が集まっているということで、抑えてもいろんな壊れ方をする。しかも、同じような壊れ方はしないんです。それが多様なサッカーになって表れてくる。それがワールドカップの時のオランダの強みだったと思うんですが、韓国は単一民族ですよね。同じような素材しかいない。ですから、誰が組み合わせてもほとんど同じ形になっちゃうと思うんです。ヒディングはむしろ中国に行けばおもしろかったなって思うんですけれど。逆にボラ・ミルティノヴィッチ(中国代表監督)が韓国に来た方が、両方のために良かったんじゃないかなと思うんですよ。ボラが行った後はもう草が生えないって言うぐらい、彼は徹底してひとつのチームを鍛えあげる。韓国は今、そういう状況でしか勝てないと思うんですけど。今からいろんな才能をピックアップして、どうこう言っても出てくる選手のクオリティーが非常に似通ってますから、選択肢が非常に少ないでしょ。だから、相当厳しい。また、韓国人の心は外国人にはわからないって言う意見がすぐ出てきますからね。日本人は東京でもウエディングドレスを着て結婚する。韓国人はニューヨークでもチマチョゴリを着て結婚式する。それぐらい違いますから。序盤でつまづくと、マスコミはすぐ袋叩きにしますよね。マスコミがそうするってことは、ファンはもっと袋叩きにしますから、あの国。そこがちょっと、日本と決定的に違うところなんですけど。僕の結論、ヒディングは厳しいです。
客:もうひとつだけいいですか。来年、浦和レッズは期待していいんですか。
金子:ツゥットを取ったら、本当に行くと思いますよ。今年、コンサドーレ圧勝でしたよね。J2は。ただ、やってるサッカーは本当にカウンター1本なんですよ。カウンター1本、頼むぞブラジル人っていうサッカーだったんで。そのブラジル人がいなくなっちゃいまいしたから、ミッドフィールドを補強してきちんとボールをキープできるサッカーをしていかないと、相当苦しいのがコンサドーレだと思うんです。一方、レッズはボールキープ率ではほとんどの試合で圧倒的に勝ってた。だけど、点を取る選手いなかったですよ、あそこは。J1から落ちたのも、それが原因ですよね。あれだけいいミッドフィルダーがいるんですから。そこにツゥットが入った。ストライカーを取る、それも能力のある、縦に強いストライカーを取るっていうのが、レッズが上位に行く一番の条件だと思ってたんで。ツゥットが来れば、もしかしたら優勝もあるかなっていう気がします。コンサドーレに優勝の可能性はないと思いますけど。
青島:最後にひと言だけいいですか? ヒディングが今回の日韓戦を観に来るんですよね、確か。指揮はとれないけどねえ。そうしたら、韓国の選手たちは自分をアピールするためにもものすごいモチベーションで来るでしょうね。
金子:ものすごいモチベーションできますかねえ。
青島:だって、代表落ちしたくないじゃないですか。張り切るんじゃないかなと思うんだよね、そういう意味では。
金子:ハッスルして欲しいですよね。話をしていたら、日本と韓国を比べると随分日本の方が上のような空気になっちゃってますけど、日本は前回負けてますからね。そんなに差はないんですよ。これから先、出てくるかもしれないですけど、現時点ではそんなに差はないですから、2002年までどうなるか楽しみですね。

構成・文:CREW
撮影:源賀津己

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