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「2006Jリーグヤマザキナビスコカップ」のファイナルを直前に控えた
10月22日(日)、青山ベルコモンズに渦中の選手が登場しトークで激突!
「ナビスコカップ決勝」、そしてクライマックスに突入した「J1リーグ」への
熱い決意を語った注目のトークバトルの模様をフルバージョンでお届けします。

ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2006 Vol.55
「どうなる!? ナビスコカップFINAL」ダイジェスト

Supported by:
ヤマザキナビスコ
協賛:
朝日新聞 PUMASUNTORY
協力:社団法人 日本プロサッカーリーグ青山ベルコモンズ
ダミー写真

<ホスト>
中西哲生(スポーツジャーナリスト)
1969年、愛知県生まれ。同志社大から1992年に名古屋グランパス入り。1997年に川崎フロンターレへ移籍してからはキャプテンを務め、1999年のJ2優勝・J1昇格に貢献した。Jリーグ通算95試合7得点。現在はスポーツジャーナリストとして「ズームインSUPER」(日本テレビ系)、「GET SPORTS」(テレビ朝日系)などに出演中。

<ゲスト>
原博(サッカー解説者)
1958年、栃木県生まれ。三菱重工業サッカー部(現・浦和レッドダイヤモンズ)に所属。日本代表としては、国際Aマッチ75試合に出場、歴代3位の37ゴールを挙げる。1992年に現役を引退し、コーチ・ユース監督等を経て1998年に浦和レッドダイヤモンズの監督に就任。2002年からFC東京の監督に就任し、2004年のナビスコカップでは初のJリーグタイトル獲得に貢献した。昨シーズンでFC東京監督を勇退後、スカイパーフェクTV!の欧州サッカー中継などでサッカー解説者として活躍中。

坂本將貴(ジェフユナイテッド市原・千葉)

1978年、埼玉県生まれ。浦和東高から日本体育大を経て、2000年にジェフユナイテッド千葉に入団。2年目からレギュラーに定着し、’02年と’03年は全試合出場を果たす。オシム監督就任後、3年間は右サイドの定位置を務めていたが、昨季より左サイドにポジションを変更。またボランチを務めるなど、幅広いポジションをこなせる。チームのムードメーカーとしても欠かすことができない存在。

岩政大樹(鹿島アントラーズ)

1982年、山口県生まれ。186cm、82kg。大島JSC、岩国高、東京学芸大学を経て'04年鹿島アントラーズ入り。同年4月の名古屋グランパス戦でJリーグ初出場。フィジカルコンタクトとヘッドに無類の強さを誇るディフェンダー。パワフルなヘッドは、攻撃時にも発揮される。昨季よりプロ2年目にして、鹿島の最終ラインに定着。今季から背番号が15番から3番に。

司会:みなさん、こんばんは。「ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2006 Vol.55 Supported by ヤマザキナビスコ~どうなる!? ナビスコカップFINAL!」。 11 月3 日決勝を迎えるナビスコカップ、今年は鹿島アントラーズとジェフユナイテッド市原・千葉の対戦となりました。今日はたっぷり2 時間、トークで前哨戦を戦っていただきたいと思います。本日の協賛各社をご紹介させていただきます。まず、J リーグヤマザキナビスコカップ、今回のぴあトークバトル特別協賛のヤマザキナビスコ株式会社からのインフォメーションです。レッドパッケージのヤマザキナビスコチップスター。みなさんも記憶に昔からあると思うんですけども、子供から大人まで愛される成型ポテトチップのナンバーワンブランドですよね。ポテトの風味がしっかり生きていて、飽きのこないおいしさ。そして、オレオビッツサンド「オレオ」。こちらはロングセラーブランド「オレオ」のミニタイプで、食べやすい一口サイズのココアクッキーとバニラクリームの絶妙なハーモニーは、食べはじめると止まりません。携帯にも便利な食べきりパッケージなので、ぜひオレオビッツサンドをいろいろな場所で楽しんでください。続きまして、Jリーグオフィシャルスポンサー、今回のぴあトークバトルの協賛、サントリー株式会社からのインフォメーションです。9月にサントリーから新発売された「カクテル カロリ。」。健康意識の高いお客様に「カロリ。」から“カロリーオフカクテル”という新提案です。これまでの「チューハイ カロリ。」とは違う「カクテル カロリ。」。カシスオレンジ、ソルティードッグ、ベリーミックススプモーニの3 種類をご用意しています。さらに、サントリーボスからは、ボス<いこい>。それから、リプトン スパークル アップルティーソーダ。この2製品は10月17日に発売の新製品です。そして、そして、ご好評いただいている「伊右衛門 濃いめ」。以上4 種類のドリンクを用意しております。続いてJリーグからのお知らせです。「2006J リーグヤマザキナビスコカップ決勝」に向けて、プロモーションの一環として、総武線でADトレインを展開しております。総武線のADトレインは、ヤマザキナビスコカップ決勝に出場する鹿島アントラーズ、ジェフユナイテッド市原・千葉の選手のコメントが掲載されたポスター、全部で各7 種類ありますが、これが車両内をジャックしているというものです。10月19日から11月3 日の決勝まで、三鷹駅~千葉駅間を走行しています。選手のコメントのうち、鹿島アントラーズの柳沢選手、本山選手、新井場選手、ジェフユナイテッド市原・千葉は阿部選手、巻選手、羽生選手のバージョンはスタジアムなどで掲示されていますが、岩政選手、坂本選手を含む、残りの4選手のポスターは総武線でしか見られないバージョンとなっております。さて、決勝戦のチケットは完売していますが、試合の様子はフジテレビ系列で14:05~全国生中継されます。残念ながらチケットを持ってない方はテレビの前で、応援するチームにエールを送ってください。「ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2006 Vol.55 Supported by ヤマザキナビスコ~どうなる!? ナビスコカップFINAL!~」。今日はみなさまどうぞ最後までお楽しみください。それでは、本日のホスト役、スポーツジャーナリストの中西哲生さんです。
会場:拍手
司会:Jリーグのリーグ戦も佳境に向かっておりますが、もう一つ、Jリーグの中でも大切なヤマザキナビスコカップFINAL が2006年11月3日に迫ってまいりました。今日は両選手、そして優勝経験監督をお迎えして、試合の前のトークで前哨戦を戦っていただきたいと思います。
中西:2人ともナイスキャラクターですから大丈夫ですよ。
司会:それではさっそく出演者のみなさんをお迎えします。まずは、鹿島アントラーズ、バックナンバー3 岩政大樹。
会場:拍手
司会:続いてジェフユナイテッド市原・千葉、バックナンバー2 坂本將貴。
会場:拍手
司会:ゲストにはサッカー解説者として活躍されております原博実さんです。
会場:拍手
中西:原さん、今日は一緒に盛り上げていただきたいと思うんですけれど。ナビスコカップには思い出はありますよね? 優勝されてますからね。
原:一応ね。
中西:一応って。その話も後ほど、たっぷりお願いします。
原:はい。
中西:岩政選手はどうですか? トークバトルは。
岩政:緊張します。
中西:この間もトークバトルをやったじゃないですか、一緒に。
岩政:ちょうど1年前ぐらいじゃないですか。
中西:それから体も成長して。あ、してない?
岩政:してないです。
中西:相変わらずお洒落で。服を買いに行くのが好きですから。
岩政:はい。
中西:そして、坂本選手。トークバトルは? 
坂本:馴れてません。
中西:本当? みんな馴れてると言ってましたよ、周りの人は。
坂本:よく喋るんですけど、トークバトルは馴れてないです。
中西:では、今日は話を引き出したいと思いますんで。よろしくお願いします。
坂本:はい。よろしくお願いします。
中西:ナビスコカップ第1回大会で僕は第3位です、実は(1992年ナビスコカップ、名古屋グランパスエイト第3位)。決勝には行ってませんけど。
原:サッカーやってたの?
会場:笑い
中西:それ、原さんだけでなくみんなに言われるんで。サッカーやってました。
原:へ~ん。
中西:Jリーグは1993年に開幕してますけど、実はJリーグよりもナビスコカップの方が歴史はあるんですね。1992年4月にJリーグの最初の10チームが作られて、そこから9 月までの半年間はずっと各チームは強化をしていて、9月からナビスコカップが始まりました。その大会に僕は大卒1 年目で出場したんですが、原さんその頃は?
原:浦和レッズのコーチをやってて。それこそアマチュアからプロに変わっていく過渡期で、環境が全然変わっちゃってね。
中西:いきなり変わりましたからね。
原:変わりましたね。
中西:お客さんがいきなり死ぬほど入ってましたもんね。その前は本当に誰も入ってなかったの。“誰も”はちょっと言いすぎですけど。
原:それは言いすぎ。
中西:日本リーグの最後の方はあまり入ってなかったです、実際。それがナビスコカップになっていきなり。僕は瑞穂陸上競技場でやったんですけども、満席です。ビックリしましたもの。
原:そうだね、あの頃の瑞穂はそうだった。
中西:ちょっと待ってください。なんでそうトゲのある言い方なんですか。
原:というか……
中西:僕がいた頃は満員でしたよ。ベンゲル監督(アーセン、イングランド・アーセナル監督)がいた頃はね。
原:そうだよね。
中西:常に満員で、チケットが取れないみたいな感じだったんで。
原:あの頃はね。
中西:語弊があるじゃないですか、そういうのね。でも、いきなり盛り上がってましたよね、1992年。
原:盛り上がってた。もう驚いた。
中西:選手もプレーがかなり変わりましたもんね。見られてるということで。
原:注目度が全く変わっちゃったね。
中西:坂本選手は1992年は何をしてたんですか? 何歳ですか? 今28歳ですね。
坂本:当時は14歳です。
中西:ナビスコカップは記憶にあります? 
坂本:知りませんでした。
中西:知りませんでした?
原:浦和だよね? 
坂本:浦和東高校です。
中西:でも、中学生でしたよね、その時は。
坂本:そうです。
中西:Jリーグの前の年ですけれど、観に行ってました? 
坂本:行ってませんでした。
会場:笑い
中西:その次の年、Jリーグ開幕の年はどうでした? 
坂本:行ったことありません。
中西:興味がなかったんですか?
坂本:いや、興味はありましたけど、行ったことないですね。
中西:サッカーは?
坂本:好きでした。
中西:全然結びついてないんですけど。
原:違う、浦和レッズがちょうど弱かったんだよ、あの頃。
中西:確かに最初、名古屋グランパスと浦和レッズは、「お荷物だ」って言われてましたから。
会場:笑い
中西:はい、そうです。それで、なんでサッカーを観ないんですか? 
坂本:いやあんまり、サッカーを観ない人でしたね。プロに入ってから観るようになったってぐらいですか。
中西:ちょっと待ってください。プロに入るまでJリーグとかも観てないんですか? 
坂本:あまり観てないですね。ワールドカップもあまり。
中西:本当ですか!? 
坂本:はい、僕は海外の選手もあまり知らないんですよ。
原:走ってたんだよ。
中西:そんなわけないじゃないですか、まだ。
原:サッカーをやっていたんでしょ。
坂本:そうです。観るよりもやってました。
中西:ひたすらサッカーをやる方が好きだったんですか?
坂本:そうですね、観るよりも。
中西:それから日本体育大学に行きますよね。その後Jリーグに入るわけですから、どのチームがいいかとか意識するじゃないですか。サッカーを観たりしないんですか?
坂本:大学4 年生になってやっと、少しずつ。生で見たのは、ジェフと浦和レッズ。
中西:おぉ。
坂本:駒場スタジアムで(1999年11月7 日、駒場スタジアム、浦和レッズ1-0 ジェフユナイテッド市原)。
中西:すごく運命的な。
原:浦和と千葉でしょ、浦和ホームだよね。
坂本:中西永輔さん(横浜F ・マリノス、元ジェフユナイテッド市原)が退場しちゃった試合なんですけど。うちがその当時、残留争いしていて。 

中西:千葉が? 
坂本:はい。僕は入団がもう決まってたんですよ。
中西:決まってて観にいったんですか? 決まる前は一度も観にいったことない?
坂本:いえ、決まる前に一度、FC東京とジェフの。西が丘でやった試合があるんですけど(1999年6 月12日、ヤマザキナビスコカップ、西が丘サッカー場、FC東京1-2 ジェフユナイテッド市原)。それは観にいったことあります。
坂本:林(丈統、京都パープルサンガ、元ジェフユナイテッド市原・千葉)が点取って。FC東京の監督は大熊さん(清、日本代表コーチ)でした。
中西:それは覚えてる? 
坂本:はい、覚えてます。
原:声、デカかった? 
中西:あれは集音マイクの近くで喋ってるからですよ。確かに大熊さん、声がデカいですけどね。じゃあ、岩政選手は見てました? 1992年ですよ。14年前。
岩政:僕は1 回目から、テレビで観てましたね。
中西:10歳でしょ? 4 年生? 
岩政:4 年生か5 年生だと思うんですけど。
中西:当時のナビスコカップの決勝はヴェルディ対エスパルスですよ(1992年11月23日、国立競技場、ヴェルディ川崎1-0 清水エスパルス)。
岩政:エスパルスは覚えてないですけど、ヴェルディは好きで観てましたね。
中西:山口県でしょ? まだその当時は。
岩政:はい。
中西:山口なのにヴェルディが好きだったんですか? 
岩政:いや……
原:テレビ、映ったの?
会場:笑い
原:よく地方の方って映らないよね、NHK しか。
岩政:“一部地域”に入る時はありますけど。なんとか映ったときは観てましたけど。
中西:1992年、1993年、1994年とヴェルディはナビスコカップ3 連覇ですよ。
岩政:嬉しかったです、当時は。ヴェルディを応援してましたから。
中西:何でヴェルディなんですか? 
岩政:当時はほとんどのサッカー少年が、ヴェルディを応援していたんじゃないですか?  キングカズ(三浦知良、横浜FC)とラモス(瑠偉、東京ヴェルディ1969監督)と。
中西:北澤さん(豪、サッカー解説者)、武田さん(修宏、サッカー解説者、JFA アンバサダー)とか。ヴェルディの試合を観てました? 
岩政:でも、試合を観にいったのはアントラーズなんですよ、一番最初は。サンフレッチェとアントラーズの試合を観にいって(1994年5 月14日、広島ビッグアーチ、サンフレッチェ広島2-0 鹿島アントラーズ)。
中西:広島は近いですもんね。
岩政:それが初めてで。
中西:それは何年生ぐらいですか?
岩政:サンフレッチェが優勝した年だから。
中西:Jリーグ開幕2 年目。
岩政:1994年ですか。それを観にいったときにジーコ(トルコ・フェネルバフチェ監督)が出ていたのを見て。僕、ジーコのユニフォームを着ていったんですよ、そのとき、アントラーズのユニフォームを。
中西:その頃から大きかったんですか? 
岩政:同世代よりは大きかったですね。
中西:結構、目立つ感じで。
岩政:そうですね。広島なのにアウェイチームのユニフォームを着て。
中西:あ、そうですよね。
岩政:ジーコはその前の試合までケガで出てなかったんですけど、その試合に勝たないとサンフレッチェが優勝しちゃうみたいな雰囲気で。それで試合に出て、ヒールキックとかしていて、憧れましたね。
中西:プレースタイルが違うでしょ。
岩政:ま、そうなんですけど。
中西:当時はどういうプレースタイルだったんですか? 
岩政:え、今と同じです。
中西:当時から、ヘディングでクリアみたいな? 
岩政:そうですね。小学校でサッカーを始めた時からセンターバックなんで。
中西:珍しいですよね。  
原:そうなの? 
岩政:そうなんです。
中西:センターフォワードじゃないですか、普通は。
岩政:そうなんですけど、させてもらえなかったんですよね。
中西:ずっとセンターバック? 
岩政:はい。
中西:坂本選手は?
坂本:えー、フォワード。
中西:フォワードでしょうね。
坂本:そうですね。ディフェンスはできなかったです。
中西:できなかったの?
坂本:大学までは。
中西:大学で変わったんですか? 
坂本:大学のときもできなかったです。岩政さんに聞いてもらえば多分・・・・・・
中西:あ、分からないですか、4 年違いで入れ違いですか。
岩政:入れ代わりですけど。坂本さんはトップ下とかでしたよね。
坂本:トップ下をやっていて。
原:そうそう。大学のときは守備しなかった。早稲田大学に手伝いに行ったことがあって、そのとき「坂本っていうすごいいい選手がいる」って聞いて。見てみると、守備しねぇなぁ。
会場:笑い
中西:今を考えるとありえないですよね、それは。
坂本:そうなんですよ。
原:あったよね。大学の2 部同士で。
坂本:原さん、いらしたんですよね。
原:俺は浦和を辞めた後、暇だったの。それで「早稲田をちょっと見てくれないか」っていうから、時々行ってたら「坂本という凄い選手がいる」って。ビデオを観てたら、守備しねぇじゃん。本当に守備しなかったよね。でも、巧かった。
中西:攻撃的なところでは。
坂本:あの当時は攻撃がメインでした。守備は本当にしなかったです。
中西:大学までそうだったら、普通はプロになってもそうじゃないですか。
坂本:いや、トップ下ではやっていけないって自分で気づいて。何か変えないとって自分で思ったんですよね。
中西:それが守備ですか? 
坂本:そうですね。
中西:今、躊躇したじゃないですか。
坂本:1 年目は全く試合に関与してなかったんで。もう紅白戦とかは空いてるポジションを「ここやれ、ここやれ」って言われて。それから守備の楽しさを少しずつ覚え始めて、今に到っているんですね。
中西:本当に試合出てなかったんですか? 
坂本:1 年目はゼロですね。
中西:ゼロ!? 
坂本:リーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯も出てないですね。
原:監督は誰だったっけ?  
坂本:ザムフィールさん(ニコラエ)から……
中西:途中で変わったでしょ? 
坂本:ズデンコ(ベルデニック)に。で、2 年目の途中からですね、運良く中西永輔さんが累積でナビスコカップに出れないというときに「やってみろ」と言われて。
中西:右のウィングバック。
坂本:その翌週あたりにリーグ戦があって(2001年6 月16日、万博記念競技場、ガンバ大阪3-4 ジェフユナイテッド市原)、ベンチスタートだったんですけど、開始5 分ぐらいで茶野君(隆行、ジュビロ磐田)がケガしてくれて。
会場:笑い
坂本:それで永輔さんがセンターバックになって、僕が右に入って。それがJリーグのデビューです。
中西:知られざる秘話。それからずっと右のウィングバックなんですか? 
坂本:はい。左に村井(慎二、ジュビロ磐田)がいて、もうほぼずっと右ですね。
中西:なんで左もできるようになったんですか? 
坂本:村井がいなくなったから。
会場:笑い
中西:左、できないですよ、普通。でも、結構左足で蹴れるじゃない?
坂本:僕、右より左のほうが好きですね。
中西:本当!? 
坂本:シュートも飛んでいくと思いますね。
中西:飛んでいくって。
坂本:多分、今までのJリーグ、ナビスコカップを含めて、僕のゴールもアシストもほとんど左だと思います。右でのゴールは少ないです。
原:それがね、すごいフェイントなの。左は蹴れなさそうだろ? 
会場:笑い 
原:それで、本当に左にきた時に大丈夫かなと思ったら、意外と左の方がいいんだよ。
中西:僕も見ていて、左が巧いからビックリしたんですよ。最初、左をやった時に。左できるじゃないと思って。
坂本:はい、左の方がいいです、多分。
中西:昔から左が得意だったの? 
坂本:いえ、右足ばっかりケガしてたというのもありますね。それで、左しか蹴れなかったので。左ばっかり練習してたら、左の方が。
中西:大学の時ですか? 
坂本:高校から大学にかけてですかね。右はケガしかないんですよ。それからですね。
中西:トップ下でずっとやってたんですよね? 
坂本:はい、テクニシャンでした。
会場:笑い
中西:どんな感じで?
坂本:右に左に。
中西:ドリブル? 
坂本:ドリブルは、右しか使わないですね。
中西:シュートは? 
坂本:シュートは、左の方がいいですね。
中西:クロスボールは? 
坂本:左の方がいいですね。
中西:やっぱりそうなんだ。僕もそうなんですよ。左の方がいいんですよ、右利きなんですけど。僕がサッカーやってたのを知らないと思うんですけど。
原:サッカーやってたの? 
中西:やってました、ちゃんと。
原:ベンチにいたのに退場になったとか。
中西:なんでそれを知ってるんですか。
原:有名だったもん、それ。
中西:あれは僕のせいじゃないですよ。
原:あの頃から口は達者だったんだよな。
中西:違います。全員文句を言ってたのに、たまたまレフェリーがこっちを向いた瞬間に僕の顔を見たんですよ。最悪ですよ。しかもベンチにいたのが、口の悪いヤツばかりじゃないですか? 
原:すごいメンバーだね。
中西:当時のグランパス、すごいベンチでしたもん。あとは望月重良さん(元横浜FC)と西ケ谷さん(隆之、東京ヴェルディ1969ユースコーチ)とか。まぁ、そういう事もあったんです。じゃあこの当時は坂本選手は全然サッカーを観ていなくて、岩政選手は観ていたわけですけど、Jリーグに対する憧れはあったんですか?
岩政:憧れはありましたけど、遠い存在ですよね。
中西:岩政君ってプロになる可能性が限りなく無かったんですよね、原さん。
原:なかったな。
中西:なかったらしいですよ、自分曰く。
原:いや、そんなことないよ。
岩政:大学の頃の僕しか多分、みなさんは知らないと思いますよ。
中西:高校でサッカーを辞めようとしたじゃないですか? 
岩政:そうですね、高校から大学に入るときは。
中西:辞めようとして、たまたま拾ってもらったっていったら変ですけど。
岩政:そうですね。急にサッカーを大学で続けようと。
中西:辞めようと思ってたのに続けようとして。
岩政:ケガがあったっていうのもあるんですけど。サッカーを辞められる状況じゃなくなって、自分の中で。続けようと思って、急に東京に出ようと。
中西:東京に、岩国から。
岩政:山口だと、僕の高校(岩国高校)もそうなんですけど、あまり全国に出たことがなかったので。全国レベルというのも味わいたくて、関東かなという感じで出てきたんですけどね。
中西:その前は全国レベルに一度も来てなかったじゃないですか。Jリーグを観ていて、ナビスコカップを観ていて「出たいな」という気持ちは少しはあったんですか?
岩政:ないと思いますね、多分。
中西:でも出るんですよ、今度。ナビスコカップの決勝に。 
岩政:そうですよね。そう考えると本当に、うちの近所の人たちがビックリしてるんじゃないですか。山口県って、最近ですと田中達也選手(浦和レッズ)とか高松大樹選手(大分トリニータ)とかいますけど。僕らの上の年代ではJリーガーはほとんどいないので。
中西:誰かいます、上には。
岩政:安永聡太郎さん(元柏レイソル)。
中西:宇部市出身ですよね。
岩政:安永さんが、一番有名なくらいですかね。なので、あまり現実的にプロになろうと思っていた人がいなかったと思いますね、僕の年代では。
中西:なるほど。現実とリンクしてなかったということですか? 
岩政:はい。そうですね。
中西:坂本選手はどうですか? プロになって試合に出てなかったわけじゃないですか。ナビスコカップとかJリーグとか、トップチームの試合に出るという意識は。
坂本:去年のナビスコカップの決勝(2005年11月5 日、国立競技場、ジェフユナイテッド市原・千葉0(5 PK 4)0ガンバ大阪)は、あまり実感なかったんですね。当日、入場するまで。「今日、決勝なんだ」というのが。まぁ、言われてはいましたけど。
中西:周りは騒ぎますよね。
坂本:あまり実感なかったですね。入場する時、スタジアムの雰囲気にはかなりしびれて、その時に初めて沸いてくるものはあったんですけど。それまでは普段と変わらず。
中西:それで、実際に試合が始まってどうだったんですか? 
坂本:始まってですか?
中西:ゲームの内容としては拮抗して、PK戦までいったじゃないですか。タイトルを獲りたかった?
坂本:獲りたかったですね。前日、前夜祭があるじゃないですか? そのときに優勝カップがあったんで。欲しいなぁと思いました。僕はあまりタイトルというのを獲ったことないので、全国レベルで。
中西:2人とも、国立競技場そのものにも思い入れはあるんですか? 僕らの年代というか、今サッカーをやっている年代にとって国立競技場は一番憧れじゃないですか。
岩政:そうかもしれないですね。でも、あまり意識しことないですね。
中西:僕はすごくそういう気持ちはあったんですけどね。天皇杯で初めて優勝したんですけど(1995年度第75回天皇杯で名古屋グランパスエイトが優勝)、優勝した時に国立の決勝ってすごいなっていう。雰囲気がいいというか。
岩政:そうですね。まだ観てる側でしかないですからね。テレビの前だけですからね。
中西:やっぱり決勝となると雰囲気が変わると思うので。どうですか? 初の決勝。
岩政:いや楽しみですね、その雰囲気でサッカーできるというのは。初めてですから。ましてや、去年の優勝争いはありましたけど、決勝の舞台も初めてですけど。そういう試合がないのであまり。すごく楽しみですね。
中西:原さんはどうですか? 決勝の雰囲気は。FC東京を率いてナビスコカップで優勝されてますけれど。
原:決勝? やっぱりリーグ戦とは全く違うよね。その雰囲気の中で。あそこでやれるっていうのは恵まれた人というか、選ばれた人しかできないから。いいんじゃないの、あの雰囲気は。すごい雰囲気になると思うし。鹿島もジェフもサポーターがすごく熱いから、楽しみだね、今から。
中西:2004年のナビスコカップ決勝(2004年11月3 日、国立競技場、FC東京0(4 PK 2)0浦和レッズ)のときは国立競技場ですか? 
原:国立だよ。
中西:国立競技場で、相手がレッズで、バリバリにお客さんが入っていて。あのときも雰囲気がすごかったじゃないですか? 
原:雰囲気、良かったね。レッズのサポーターが多いし、FC東京も初めてだったので、盛り上がってたね。
中西:PKだったんですけども。PKは見てました? 自分で。
原:見てたよ。加地(亮、ガンバ大阪、元FC東京)は外すかなぁとか思いながら。
会場:笑い
原:だって、5 番目を蹴る人がいないんだもん。「蹴るかー?」って聞いても。で、その時も「誰かいるか」って言ったら、加地が人がいいから仕方がなく「じゃあ、僕いきまーす」って。
会場:笑い
中西:人がいいからなんですか。
原:でも、加地だけはやめた方がいいんじゃないかと。
会場:笑い
原:「大丈夫か?」、「大丈夫です」って言うから、仕方がないから。
中西:どうやって決めたんですか、PKのキッカーは。
原:目を見て。みんな目をそらしてんの。
会場:笑い
原:あのときはルーカスとか、途中から入った梶山(陽平)、馬場(憂太)、今野(泰幸)とか。
中西:若い人が蹴ったじゃないですか? 
原:そう。若い人に蹴らせちゃったの。
中西:蹴らせちゃった。
原:ベテランだといろいろ考えちゃうかなと思ったのと、途中から入ってちょっと元気がある人の方がいいかなと思って。その時はね。
中西:で、5 人目がいなかったんですか? 
原:5 人目がいないんだよ。俺が蹴ろうかなと思った。
会場:笑い
中西:原さん、PK蹴ってましたよね? 
原:蹴ったよ。ヘディングはしないよ、PKでは。
中西:知ってますよ。
原:外したときもあるけどね。
中西:でも、いつも右じゃないですか。右にインサイドじゃないですか。
原:そんなことないよ。
中西:結構右にインサイド多くなかったですか? 
原:ていうか、俺、左足で蹴ったときもあるもん。
中西:本当ですか!? 
原:うん。いろいろ。
中西:自信があるってことですか?
原:自信はあんまりないな。
中西:ないのになんで蹴るんですか。
原:止まってるボールを蹴らないから俺は、基本的に。岩政とかもそうだろうけど、動いたボールしか蹴らないんだよ。フリーキックかPK。止まってるのを蹴るのはPKだけ。あとはボールをもらう方だからね。そういう感じだったの。
中西:で、加地が……
原:あぁ。もう諦めたね。
会場:笑い
原:諦めたけど、PKが入った瞬間、走ってた。何だか分からないけど、こうダッシュしてたよ。後で見たら「こんなダッシュ、俺できるんだ」って。
会場:笑い
原:あれはちょっと驚いた。
中西:肉離れしなかったですか? 
原:しない。鍛えてるから、日頃から。
中西:追われてなくても肉離れしないってことですね。喜んでるときは肉離れはしないと。でも、PK戦で決まるの嬉しいですよね。
原:まぁ、本当は流れで……
中西:決めたいですけど。あの試合は1 点も入ってなかったですからね。
原:そうだね。あの試合も前半20分くらいで退場になっちゃったのね(前半29分、FC東京・ジャーンが退場)。退場じゃないけど、なっちゃったのよ。なっちゃったから、もう仕方がなかったな。
中西:耐えるという感じですか? 
原:耐えるっていうかね。あの頃のまたレッズは、エメルソン(カタール・アル・サード)と田中達也がいて、一番速い浦和だった。
中西:キレキレだった時ですか。
原:今のワシントンの浦和とはちょっと違う感じだった。
中西:速くてキュンキュンくる感じでしたもんね。
原:そうだったね。それを耐えてというか、まぁたまたまだな。だって去年の決勝、オシム監督(イビチャ)、帰っちゃったんでしょ?
中西:PKを見ないじゃないですか。
原:PKを見ないね。
坂本:そうですね。「PKはサッカーじゃない」とかなんとか言ってますよね。
中西:言ってますね。
坂本:ガンバ大阪のフェルナンジーニョが、もう足がつってボールを蹴れない状態だったので、ベンチに帰っちゃったんですよ。で、PK戦のグラウンドに立てるのが相手チームと同じ人数だけなんで、僕は試合に120 分出たのに、あの場にはいられなかったんです。
会場:笑い
坂本:だから、ベンチのところでみんなと一緒に肩組んで応援してたんですけど、その役になったのが僕だったんですよ、去年の決勝。他にもディフェンスとか「蹴らないだろ」っていう選手がいたのに、ベンチにいたんです、あの時は。
中西:そうなんですか。
原:そうか、そりゃ貴重な経験だね。なかなかできないよそれは。
中西:10人だったら10人しか相手はいられないんだ。
坂本:そのルール、僕も初めは知らなかったんですよ。
中西:僕も知らなかった。
原:知らないの!? だけど、グラウンドにもいていいんじゃないか。ベンチに返ってこないで。
坂本:そうですよね。蹴らないのは蹴らないで、あの雰囲気にいたかったんですよ。
原:そうだよ。
坂本:120 分間戦ったのに、なんでベンチなの!? 
中西:ちょっとブルーになりますよね。
坂本:なります、なります。
中西:センターサークルのところにいたいよね、手つないでね。
坂本:やりたいじゃないですか。
中西:試合に出れなかったみたいな俺。そんなイメージで。
坂本:そうなんですよ。
中西:PKはどうやって決めたの? ジェフは。
坂本:監督が1 番から4 番ぐらいまではある程度決めたんですけど、5 番目は巻(誠一郎)か斎藤大ちゃん(斎藤大輔)かというので、最後は2 人でジャンケンです。
中西:ジャンケン? 
坂本:はい。で、巻が勝って行きました。
原:蹴りたかったんだ、2 人とも。蹴りたいからジャンケンしたんだよね。
坂本:そうですね。
原:よくそういうとき譲るのがいるんだよね。そういうときに限って。
坂本:そうですよね。2 人とも蹴りたかったんでしょうね。
原:そういうことだよね。
中西:全員PKを決めてたもんね。
坂本:そうですね。5-4 ですよね
中西:5-4 ですよね。ガンバって誰が外しましたっけ。
坂本:遠藤君(保仁、ガンバ大阪)。
原:遠藤だよ。遠藤のあの、やる気があるんだかないんだかみたいな。
中西:違うんです。あれは逆を取ろうとしてるんです。何でそういう事を言うんですか。
原:いやそうなの。あれは90分の中だと効くんだけど、もう疲れてるから。で、キーパーも疲れてるから動かないの。だから駄目だなと思ったら外しちゃった。初めて外したって言ってたね、PKを。
中西:彼はほとんど外さないじゃないですか、PK。
原:巧い、巧いよ、キーパーを見てる。
中西:しかもギリギリまでためてますからね。
原:ためてる。だけど動けないのキーパーも。疲れてるから。ちょっと嫌な予感はしたな。
中西:見ててどうでした。最後、巻選手が蹴る時にこう、「外すな、こいつは」とか思ったんじゃないですか? 大丈夫ですか? 
坂本:いや、信じてましたよ。結構うちも若い選手が蹴ったんですよ。
中西:そうですよね。
坂本:阿部(勇樹)は馴れてるんですけど、工藤(浩平)だとか、水野晃樹とか。あと誰だっけ。タケ(林丈統)。
原:若い人が蹴ってたらね。あと、途中から出てた選手とか。やっぱり疲れていて、蹴れない人がいるよ。
中西:延長までやっちゃって。
原:だって痙攣してたもんな。去年暑かったんだよな、決勝戦。
中西:大体、11月3 日頃って結構、天気がいいですよね。つってた人もいたんですか?
坂本:僕の周りは結構つってましたよ。
中西:坂本君はつらずに? 
坂本:僕も。
原:俺、今でも覚えてる。阿部とかかかなり早く、後半に入ってすぐくらいから足がピクピクしていて、伸ばしてるの。緊張感もあると思う。あれだけの大舞台で、気持ちもあるし。普段だったら絶対に痙攣なんかしないのに、やっぱりつっちゃうんだよ。
中西:つるかもしれませんよ?
岩政:そうですよね……俺、結構緊張しますから。
中西:つったら、ここにいた人全員に言われますよね、「岩政つってるぞ」って。
原:岩政は痙攣したことあるの? 
中西:なさそうですよね。僕、見たことない。
岩政:僕、途中でピリっときたら、大体押さえてヘディングしますから。
原:あのジャンプが一番くるんだよね、くるときはね。
岩政:きますね。
中西:スタンディングジャンプが一番くるんじゃない?
岩政:きますね。でも、大学時代の方がヘディングが多かったから、そっちに馴れてるんですよね。大学のときはボンボン蹴り合うから、ヘディングをすごくするので。当時の方がつってましたね。
原:あ、そっか。
中西:プロになってから、あんまりそういう場面は見てないですよね。
原:動かないもんね。後ろでドシッとしてるから。
岩政:あんまり僕の方に蹴ってくれないんですよね。ゴールキックもすぐ向こう側に行っちゃって。
原:あぁ、避けてるんだな。
中西:避けられてますよね、完全に。
岩政:つまらないんですよ。
中西:自分が一番目立てる場がなくなってしまうみたいなね。ボールこないもんね。キーパーキックとかで。確かに。
岩政:たまにこっちに蹴ってくれたら、少々短くても「ボランチどけ」って言って行きますから。 
中西:ストレス、たまってんじゃない。
岩政:みんなすぐ避けますからね。
原:確かにそうだよ。巻とかヘディングの強い人も、岩政じゃない方に行く。
中西:そういう風に言われてるでしょ? 岩政選手のところに蹴ってもね。
坂本:やっぱり、できるだけ可能性ある方には行きますよね。
原:岩政とか、分かりやすいんだよ。最初のヘディングでドーンとやると、その試合はすごく調子がいい。だから、そこにやらせないように、みんな違う方に違う方に入っていくんだよ。
岩政:そうです、そうです。
中西:ヘディングをすると気持ちがのるタイプ? 
岩政:のりますね。やっぱり、試合の一発目がこないと、なかなかのれないです。
原:そうなんだよ。
中西:原さんもそうなんですか、やっぱり。
原:ノーコメント。
中西:原さんだってヘディングするじゃないですか。
原:いや、俺はいろいろあるから。相手にやらせとく作戦とかさ。
中西:現役じゃないから、どっちでもいいじゃないですか。隠してどうするんですか。
原:だからまぁ、いろいろあるからね。
中西:ちょっとフォワードは違いますよね。
原:フォワードはね、いろいろ駆け引きというか、わざとそこらへんはやらせとくかなというときはあるよ。ただ横から来たり、相手の前に入ったり、裏に行くときだけはもう絶対っていう入り方。一か八かでいいからな、フォワードは。ディフェンダーは全部対応しなきゃいけないからな。
中西:10回きても1 回だけゴール前で勝って、点を取ればいいんですもんね、フォワードは。ディフェンスは違いますもんね。
原:違うな、それがやっぱ大変だな、ディフェンダーは。
中西:ジェフは岩政選手に気持ち良くヘディングさせなきゃいいんですよ、最初にね。
坂本:巻ですね。
岩政:巻君も本当にね……。
中西:どうなんですか? 巻選手とのヘディングは。結構いい競り合いでしょ? やりがいがあるでしょ?
岩政:そうですね、でも巻君とは大学の時からもう10回近く試合してますからね。
中西:でしょ? 
岩政:最近は巻君も避けて向こう側に行くから、あんまり競らないですけど、大学時代は駒沢大学って全部、巻君の頭から深井選手(正樹、鹿島アントラーズ)へというパターン。
中西:そのパターンでしたね。
岩政:うち(東京学芸大学)もそれに対応して、僕がまず巻君を潰すという役でした。当時の方がよく競ってたので、最近はちょっと寂しいくらい。あまりやりあわないんで。
中西:楽しいよね、そういうの。強い人とやるの。
岩政:そうですね。特に勝ってる時は。1 回勝つと、その後は大体、勝てるんで。
中西:あ、そうなんですか。最初。
岩政:1 回勝てないとちょっと。不安があると勝てないんです基本的に。1 回勝てるともう大体、勝てるんですけど。
中西:僕は大学時代にヘディングがすごい得意だったので、よくストッパーしてたんですよ、同志社大学の時。長谷川祥之さん(鹿島アントラーズユースコーチ)といつもやってて、大阪経済大学にいたときの。
岩政:はい。
中西:長谷川さん、メチャ強いのよ。空中で止まりますからね。
原:滞空時間が長かった。彼はヘディンガーとして本当に素晴らしかったね。怖がらないんだよな。多分ディフェンダーはみんなそうだけど、怖がらないでつっこんでくるのってかなりね。
中西:怖いんですよね。長谷川さん、スタンディングジャンプでもすっごい高いんですよ。一緒にやってません?
岩政:やってないです。
原:入れ代わりだな。
中西:他に最近。誰かいます? Jリーグで嫌なヘディンガー。でも、一番強いと思ってるでしょ? 自分が。
岩政:いやぁ……
中西:負けてないでしょ? 高松大樹選手とかは? 
岩政:高校時代(多々良学園高校)から知ってるんで、あいつも僕から避けていくんですけど。
中西:嫌なんだね。
岩政:多分、チョ・ジェジン(清水エスパルス、韓国代表)が一番強いんじゃないですか? 僕の感じでは。
原:ツボに入ったとき、強いかもね。 
岩政:結構あいつ、ゴール前でも、うまく何回も入れ代わったりするので。
中西:ポジション取り細かくしている? 
岩政:結構やってるんですよね。あいつが一番嫌かな。
中西:チョ・ジェジン選手はあまりヘディングのゴールというイメージないじゃないですか。足元うまいし、くさびもうまいし、懐も深いし。やりにくいでしょ?
岩政:そうですね。
原:ここんとこの千葉はよく見てるよ、俺。しかも生で。でも、それ作戦だよ。
中西:作戦なんですか? 
原:鹿島もそれからさらに深い作戦に行ってるね。あんまりここで言えないけど。アウトゥオリ監督(パウロ)はかなりの勝負師だな。
中西:メンバーを替えたじゃないですか。本番の11月3 日どういうメンバーでくるか。
原:分からないよね。ただ明らかなのは、フェルナンドは出場停止で出れないし、内田(篤人)はU-19代表に招集されていなくなるから、鹿島と千葉がやった時(2006年10月14日、カシマサッカースタジアム、鹿島0-4 ジェフユナイテッド市原・千葉)それを想定していろいろ試した。新井場(徹)を右にもってきたり、ダ・シルバを使ったりとかやってるよね。あれで勝ったらどうしよう、負けてもこうしようとか、メンバーも競争させようとか。いい選手を俺は使うよとか、かなりやってるから読めないね。で、ジェフも昨日(2006年10月21日、フクダ電子アリーナ、ジェフユナイテッド市原・千葉1-3 大宮アルディージャ)結構隠してるから読めないなぁ。
会場:笑い
中西:あれ、隠してるんですか? 
原:隠してると思う、ジェフとしては。読めなかったもん。ナビスコカップ決勝が読めなくなっちゃった。
中西:本当に読めないですよね。
原:読めない。多分ね、リーグ戦がもうちょっと難しいでしょ? 
中西:確かに。上が抜けちゃいましたからね、3 つね。
原:今年のナビスコカップ決勝がおもしろいのは、この両チームはこれだけに懸けてるの。
中西:分かりますよ。タイトルが欲しいですからね。
原:去年は、やっぱりナビスコあったけど、ガンバもジェフも鹿島もリーグ戦もあったの、最後まで。だけど、今年はないの。
中西:だから、何でないんですか。鹿島はまだ数字上はあるんですよ。
原:数字上じゃないんだよ、こういう世界は。数字上あっても、思ってないだろ? 
会場:笑い
中西:分かりました。すみませんでした。
原:だからこそ余計におもしろいんだよ。
中西:これに懸けてくるのは間違いないじゃないですか。タイトルが絶対に欲しいし、鹿島は10冠目だし、ジェフは連覇がかかってるし。
原:そうだね。本当にここんとこのメンバーを見ると、何をやってくるのかが読めないっていうのが、おもしろいな。
中西:アウトゥオリ監督は本当に分からないですよね。今、若い選手に替えたじゃないですか。大岩剛選手が出てなかったり、新井場選手もちょっと出てなかったり。でも、蓋を開けたらスタメン全部が経験のあるメンバーを並べる可能性だってありそうですよね。
原:あるかもね。
中西:やっぱり決勝戦という雰囲気とか、あとリーグ戦が1 試合ありますしね。
原:あるね。
中西:来週、鹿島は大分でしょ? 日曜日(2006年10月29日、九州石油ドーム、大分トリニータ- 鹿島アントラーズ)。1 日遅いのは損ですよね。しかも、ジェフは名古屋だから(2006年10月28日、豊田スタジアム、名古屋グランパスエイト- ジェフユナイテッド市原・千葉)、移動は短いし、1 日早いし、2 時キックオフでしょ? 鹿島は3 時キックオフで大分で石油ドームで。
岩政:大分、遠いですからね。
中西:遠いでしょ? 本当に。これ結構キツいと思うんですよ。
原:キツくないよ。
中西:理屈じゃない? 
原:だって、ここまできたらもう関係ないの。あのね、現場の人はそんなこと考えてない、多分。
中西:まぁ、僕が余計なお世話という。
原:うん。そうだね。
会場:笑い
原:どうやってこの状況で勝つかということだけを考えてるから、今からそれを言い訳にしたり、ここがキツいなんて思ってないと思うよ。いかにしてそこにいいコンディション持っていって、どういうメンバーでいくか。誰を使うか。で、ジェフはどう出てくるかとか、鹿島はどう出てくるかということに全てを集中していると思うよ。
中西:ナビスコカップの決勝は金曜日ですよね。だから、結構あいてますもんね。
原:大丈夫だよ、全然。それが日曜で次の水曜だったらちょっとキツいよね。
中西:キツいですね。
原:だけど2004年のナビスコカップの前は日曜日だったの。相手は土曜日だったの。
中西:それキツいですね。
原:広島のアウェイだったの(2004年10月31日、広島ビッグアーチ、サンフレッチェ広島1-1 FC東京)。関係ないって。だけど置いてったけどね、何人か。
会場:笑い
中西:やってるじゃないですか。
原:だから、それは作戦じゃない。ほら、ケリー(UAE ・アル・アイン)とか三浦文丈とかとか、疲れそうな人を置いていった。
会場:笑い
原:監督がいいんじゃない? 退場になっちゃたりとかいろんなこと考えれば、そこは置いていって、その分、若いのでやるかとか、そういう風に考えるよ。アウトゥオリも。
中西:多分、考えてるでしょうね。
原:そういうことも含めて。そこも勝負だもん。この決勝だけじゃなくて、その前の週末のJリーグも、それを考えて観たらすごくおもしろいよね。
中西:ですよね。どういうメンバーでやるんだろうという。
原:多分、自分たちも分かってないと思うよ。あの監督たち、よく分からないもん、俺。あの監督たち、考えれば考えるほどよく分からないな。アウトゥオリ監督もなんか読めない、あの親父は。
中西:でもあの人、ブラジル人の監督っぽくないですよ。
原:どういうところが?
中西:ちょっとヨーロッパっぽいです。
原:ただ、タイトルへのこだわりというか、絶対にそこを取るっていうのはすごいと思う。
中西:僕もそう思います。それは去年サンパウロのときも思いました(アウトゥオリ監督はブラジル・サンパウロFC監督として2005年FIFAクラブワールドチャンピオンシップトヨタカップジャパン優勝)。
原:それもそうだし、俺の目から見ると、この前の鹿島対千葉で、4-0 になっちゃったわけ。3-0 、4-0 。動かないもん。もう出さない、もう今日は何も出さないという感じで。あれはなかなかできない。監督だったら、はっきり言うけど格好だけでもちょっと動いて、なんか動いたよとかって見せたいんだよ。
中西:なんとなくこう、手は尽くしたぞみたいな。
原:そう。そういうのがあるの。だけど後半の頭から柳沢(敦)を使って、でも3 点目取られちゃった。そこからもう全然動こうとしなかったもんね。
中西:今日は出さない。手の内を見せない。
原:あれをやれるというのはすごいよ。ブーイングされようが何しようが、このタイトルを獲りたいという表れだと思ったね。
中西:確かに替えるのはいつでも替えられますからね。監督って、我慢するのが難しいですからね。
原:だからそういうことができちゃうというのは、やっぱりタイトルを多く獲ってきてるだけはあると思う。すごくこれに懸けてるなという風に思う。
中西:それは見ていて思いますよね。
原:アマルさんも読めない。昨日の試合も動かないからな。ジーッと頬に手を当ててるしさ。あれはちょっと読めないな。昨日はかなり隠してたなという感じだよね。
中西:鹿島とやっていたわけじゃないじゃないですか。
原:そうだけど、始まってるんだよ、もう。間違いないよ、本当に。だから、それだけ今年はナビスコカップに懸ける思いは例年より強いと思う。
中西:戦術的な話になりますけど。出場停止の選手がいるじゃないですか。それはどうですか、実際は。アントラーズはフェルナンド選手がいないって。
岩政:痛い部分は多いですよね。彼は今年、結構点も取っているし。まぁ、前半戦出てなかった分、後半戦は調子が良くて。いつも前半で息切れするんですけど。
中西:きてたのに、出られない。
岩政:ちょっと残念ですけど。
中西:まぁボランチは、できる選手結構いますから。
岩政:どうするかは、監督次第ですけどね。分からないですね。楽しみです、僕も。
中西:一方、ジェフのクルプニコビッチ選手も出られないじゃないですか? いた方がいいですよね? 途中に使うカードとしても。
坂本:そうですね。
中西:とんでもないシュートをいきなり決めたりしますからね。
坂本:そうですね。いるに越したことはないですけど。
中西:昨日はちょっと、人にパスしたりしてたから。
原:あれはだから、考えてるんだよ。
会場:笑い
原:だって昨日の、本人がいるから聞きたいけど、坂本だってあれ止められたんだよ。
中西:俺もそう思いました。アリソン選手(大宮アルディージャ)、あれはないでしょ。
原:あれはわざとやめてるのよ。
中西:やめたの? 
原:そう、いろいろあるのよ。退場になっちゃったらいけないとか。
坂本:いや、やめたってことはないですけど。
中西:でも速いね。
原:速い。思ったより速い。
坂本:油断しました。いや、油断というのもおかしいですけど、まさかあそこで横パスで取られるとは思ってなかったんで。
中西:まずクイック・リスタートだよね。
坂本:そうですね。
中西:ファウルというかとりあえずそこで止めて、流れを切りたいみたいな。
坂本:というのもあったんですけど。
中西:レッドカードもあるからね、あそこで行っちゃうと。
坂本:そうですね。まぁ止めるべきでしたね。
中西:速かったんだけど、その後のシュートがすごかったですね。あそこから同サイドを上で右足だよ。あれは蹴れないでしょ。
坂本:そうですね。
中西:思いきり蹴っただけかもしれないけど、すごいシュートだった。アリソン、すごいなと思いました。
坂本:そうですね。初めてだったんで。
原:いきなりハーフラインぐらいからドリブルされちゃったときに、水野が対応してたんだよ。だけど、あんなに速いとは思ってないから、最初ちょっと驚いて余裕をもって見てたの。そこからクロスを上げられちゃって、入っちゃった。
坂本:そうですね。あれは勉強になりました。
原:作戦だろ?
坂本:はい。
中西:1 点目のとき、あわててマークしに行ってましたもんね。
坂本:そうですね。自分のマークも捨てて。 
中西:背中にマークがいたのに、小林慶行選手(大宮アルディージャ)、フリーだったでしょ? 
坂本:そうですね、あれは自分のマークを捨てないと。
中西:なんでフリーだったの? 作戦? 
坂本:いや、ミスです。
原:でもあれで、大宮がすごく元気になっちゃったよね。ここんところ、8 試合勝ってなかったから。今は降格争いのこともそうだし。だから、決勝なんて一つのプレーで変わっちゃうんだよ。ああいうのがもしあったら、本当にガラっと流れが変わっちゃうね。だから一発勝負はやっぱり怖いし、そういう面では昨日ジェフもまた学んでくれたんじゃないのという感じはするね。
中西:お互いの話を聞きたいんですけども、岩政選手はジェフに対してどういうイメージ
なんですか? 前節(2006年10月14日、カシマサッカースタジアム、鹿島アントラーズ 0-4 ジェフユナイテッド市原・千葉)は4-0 で負けちゃいましたけど。
岩政:やっぱり2 列目からの飛び出し、ですよね。ディフェンスの立場から見てですけど。坂本君もうそうですけど、たくさんの選手が飛び出してくるんで。特に僕が1 年目や2 年目で試合に出始めた頃は、あまりそういうチームはJ リーグにはなかったので。今はすごく多くなりましたけど。真似してるのかわからないですけど。すごくアグレッシブなチームが増えたので、だいぶ馴れてきましたけど。当時はすごく戸惑いましたね。
中西:ディフェンダーの選手もバンバン追い越してきますもんね、ボールを持った一番いい状態の選手が追い越してきますし。今はどうですか。この間対戦してみて。
岩政:まぁ……
中西:この間の試合は、ちょっとね。僕が観ても、あんまりジェフも調子良かったわけじゃないし。セットプレーというところもあったと思うんだけど。
岩政:多少やり方も変わってるのかな。まぁ、あんまり言えないと思うんですけど。
中西:坂本選手にちょっと聞いてみたら?
会場:笑い
岩政:どうなんですかね。
坂本:鹿島との試合の時ですか? 最近ですか? 
中西:いや、アマル監督になってから。
坂本:多少はもちろん変わってますね、毎試合。
中西:どういう事ですか? 
坂本:こんな話をしていいのかどうか分からないですけど。
中西:うまく駆け引きしてください。
会場:笑い
坂本:そうですね、これ大事ですよね。
中西:これ結構、大事ですよ。
原:大事だよ。
坂本:いや、昨日(2006年10月21日、フクダ電子アリーナ、ジェフユナイテッド市原・千葉1-0 大宮アルディージャ)のまさに1 点目なんか。すごく象徴してたと思います。変わったのが裏目に出たかな、という。戦い方を変えるんで。
中西:なるほどね。
原:変えてたね。鹿島戦の時と、昨日の大宮戦と違うよ。
中西:それは原さんが観ていて?
原:俺は言ってもいいんだけど、言わない。
会場:笑い
中西:言わない方がいい。
原:お互いに考えてやってくれると思う。まぁ、それもう分かってるよ、監督さんは。
中西:監督は観ればわかりますからね。でも、どうですか? アマル監督になってから。当然オシム(イビチャ、日本代表監督)さんの良さもあるだろうし、アマル・オシムさんの良さもあるだろうし。
坂本:そうですね。この間うちが鹿島から取った4 点目のようなプレーが数多くできればいいなと。ああいうのを狙ってるんだろうなっていう。
中西:羽生(直剛)選手から、山岸(智)選手へ。
坂本:そうですね。
中西:ヘディングシュートでしたよね。
坂本:ああいう、結構高い位置でボールが取れたっていうところ。それを結構やりたいんじゃないかなと思いますね。
原:あの時のボールの繋ぎはよかったよね。坂本が絡んでたの? あれ。
坂本:ええ、僕が。
原:珍しくね。右サイドね。
中西:なんでそういう言い方なんですか。
会場:笑い  
坂本:いや、珍しくないです。ただボールを取っただけです。
原:そうそう。取って、ポーンって繋いだんだよな。
坂本:取って巻(誠一郎)にパス出しただけです。
原:そう。でも、それがすごくはいいリズムだったの。
坂本:あそこで取りたいんでしょうね、アマルさんは。多少オシムさんと違うのかな。
中西:高いところで、より高いところで取りたいと。
坂本:そうですね。
中西:ボールを取って後ろから出ていくのではなくて、前で、高いところで取ってもっと前へ行きたいと。
坂本:そうですね。今は結構、ブロックを作って守るチームが多いじゃないですか。ハーフウェーラインまで徹底して下がるチームが多いじゃないですか。うちはもうそういうことをあんまりしないんですね。
中西:アグレッシブに。
坂本:そういう練習ばっかりですね、全面使って。6-6、7-7で。
中西:そういうアグレッシブさも要求される。
坂本:そうですね。やっぱり運動量が上がりました。
中西:また上がったんですか!? 前よりも?
坂本:いや、もうアマルさんが来た時から、オシムさんよりも練習が厳しいことは分かっていたんで。
中西:それくらい走る。
坂本:走るし、練習が長いし。ゲーム形式でずっとやるんで。キツいですね、オシムさんより。
原:そうなんだ。
坂本:はい。
中西:内容はどうなんですか? 近いですか? 練習内容は。
坂本:練習内容はそんなに変わらないですね。それよりもキツイかな。
中西:時間が長い。
坂本:長いですね。話も長いですね。
会場:笑い
原:話、長いの? 
坂本:練習の中での話が長い。通訳がいるんですけど、1 人1 人に何か言うんですよ。みんなを集めて言えばいいところを、外国人に言ったり。その外国人に言ってることを僕たちに伝えてくれればいいんですけど、それが伝わってこないから、練習内容が伝わってこなくて。そういうのが多いですね。
中西:まだうまくいってないってことですか? 
坂本:そうですね。オシムさんの時は結構もう、休んでる時間が少なかったんで。もう次から次へと練習がどんどん入ってきて、要領的にはオシムさんの方が常に動いいてた感じはするんですけど。もうやる時は、アマルさんの方が厳しいですね。
中西:逆に、ジェフから見たアントラーズのイメージはどうですか? 相性はどうなんですか? 対戦成績は五分五分ぐらいですか?
原:トータルでいうと、長い期間で数えると鹿島の方がいいんだけど、オシムさんが来たこの3 年ぐらいは、ほぼ五分五分。俺の記憶が正しければ。
中西:坂本選手にとって鹿島はどういう印象ですか? ずっと出てるじゃないですか、この3 年間ぐらいは。
坂本:巧いですよね。当たり前なことなんですけど、ボールポゼッションが巧い。ボールを簡単に取られないし。下手にうちがディフェンスすると、うちが体力消耗するだけだし。そのへん勝ち目がない。
中西:ボールを回されるからね。
坂本:回しは巧いですよね。個人技があるし。フォワードの受け方も巧いので、そこをしっかりと潰しにいかないといけないかなと。それと真ん中にデカい選手がいるので、そこはちょっと攻略しないと。
中西:ボールを上げるのは、下で行きたい感じですか? 横に揺さぶりたい?
坂本:やっぱり単純に上げるのもダメだと思うし。低いのを使ったり、裏に通したり。いろいろ作戦を練らないと。巻1 枚じゃなかなか勝てないと思うし。
中西:一番イヤな選手というか、気をつけたい選手って誰ですか? 今だったら。
坂本:鹿島でですか? うーん・・・サイドバックの上がりというのはかなり特徴だと思うんですよ。
原:そうだね。
坂本:うちがどうそこを潰すかとか。システムがお互いにやっぱり合わないんで。
中西:噛み合わないシステムですからね。
坂本:4-4-2と、うちは3-5-2か3-6-1かちょっと分からないですけど。なので、サイドの主導権をどっちがどう握るかというのは重要なポイントになるかなと。
中西:坂本選手もどちらのサイドか分からないし。真ん中かもしれないし。
坂本:そうですね。試合の中で変わっちゃいますもんね。
中西:試合の中で変わるというのは、意図的に変えてるんですか? それとも勝手に変わるんですか?
坂本:いや、意図的に変えたり、「変われ」と言われたり。基本的に変わるようにしてます。「自分たちで判断してやれ」と言われてるんで。マークの付き方とかはもう勝手に変えてますね。
中西:バランスを変えて、ちょっと左側に寄るとか。
坂本:僕は攻撃のところにいるよりも、下がってた方がいいだろうとか。そういうことを考えながら。
中西:ナビスコカップの準決勝(2006年9 月3 日、等々力陸上競技場、川崎フロンターレ2-2 ジェフユナイテッド市原・千葉、2006年9 月20日、フクダ電子アリーナ、ジェフユナイテッド市原・千葉3-2 川崎フロンターレ)で坂本選手は1 点ずつ取ってるじゃないですか。
坂本:まぁ、うまい具合に入りました。
中西:だから坂本選手が前に出ていけば、リズムがいいんじゃないですか? 前に出られる時は。
坂本:出られれば一番いいと思うんですけどね。システムが合わない分、自分の役割を徹底するしかないですね。
中西:それはどういうことですか? 
坂本:僕よりも、やっぱり山岸が上がったほうがいいと思うし。水野が前にいた方がいいと思うし。なおかつ僕が、追い越せるような試合状態になれば一番いいんですけどね。
中西:前にいる選手がボールを持って、しかも自分が前に出ていけるくらいに厚みがあれば。
坂本:一番いいと思うんですけども。試合の状況を見ながらいかないといけないし。それはずっと言われてるんで、もう前監督の時から。「自分がどこで何をするべきか考えろ」と言われてるし、「チームプレーに徹しろ」というか「チームのためにやることに徹しろ」と言われてるんで。それはもう常に考えながら。
中西:自分ではその答えは何なんですか? 
坂本:とりあえず相手チームのフォワードではない選手。中盤でも一番ゴールに近づいて来る、野沢君(拓也)だったり、本山君(雅志)だったり、次、深井君(正樹)かもしれないし。そういう一番ゴールに近づいてくる中盤に対してきっちり付くところですかね。システムが合わないのがあるから、トップ下が2 人になるかもしれないし、その時は僕と阿部(勇樹)だったりだとか、前回は勇人(佐藤)と僕が付いたり、というように相手の攻撃の選手を1 枚必ずつかむことですかね。
中西:難しいですよね。鹿島の選手はボックスになっている時もあるし、台形みたいに外に張る時もあるし。
坂本:形の上でいくと僕はサイドバックのところに行けば一番いいんでしょうけど。それは一番うちにとって良くないことなので。
中西:良くないことなんですか?
坂本:攻撃の選手が真ん中でちょっと守備的になる可能性がありますんで。クルプニ(クルプニコビッチ)だって。次は出られないですけど。
中西:なるほどね。
坂本:羽生がちょっと下がらないといけないとかあると思うんで。その時は、右というよりも真ん中に入ってボランチのポジションになったり。
原:多分ね……じゃあ言おうか? 
中西:何をためているんですか?
原:いや、これ言っていいのかなぁって。間違いないんだよ、これは。さっき坂本が言ったように、鹿島はポゼッションがあるし、巧い。そういう中でブラジル代表もそうだけど、4 バックのサイドバックが上がる。例えば内田(篤人)は決勝は出られないけど、内田と新井場(徹)が上がるのは売りなんだよ。で、2 トップでしょ? まぁ、2 トップも1 トップもいろいろやるんだけど。昨日の大宮戦で、ジェフはその前の鹿島戦とは違って、巻とハースを真ん中に置いたんだよ、真ん中に。大宮はゾーンでしっかりラインを取って守っている。そうするとサイドバックのところに誰が行くのかと当てはめていくと、そのサイドバックの付き方がすごく難しくなる。
中西:一番難しいですよね。
原:そこが一番得意なのが、鹿島なの。だから鹿島戦の時はジェフはハースを左に置いて、新井場とある程度やりながら、もちろん全部付いていくわけじゃないんだけど。むしろハースがあそこで受けて、そこでタメを作って、坂本とか2 列目が上がれていけたの。だけど昨日の大宮戦では、力関係も考えて完全な2 トップにしたんだよ。それによって、その2 トップにボールが入らなかった。先に点を取られたのもあるし、ゾーンでうまくやられて、行けばボールを取られて。だからそれをどうするかというのを、アマル・オシム監督も考えてるし、鹿島もジェフがそこをどうやって来るのか、「俺らはどうやって行くか」ということを考えてるし、そこらへんがひとつの分かれ目になると思う。
中西:そうですね。
原:あとはリスタートだよ。鹿島がこの前、千葉に負けた時は、あれだけリスタートでや
られたというのはちょっと珍しい。むしろ鹿島はリスタートで勝つ。
中西:得意ですよね。
原:苦しい時にはいっつもそうだ。俺が監督をやっていて負ける時は大体そうだ。
中西:あのフリーキックね。
原:いい試合をやってても、ポンッとやって、「あ、入っちゃった」っていう。
会場:笑い
原:その武器を持っていた、鹿島は。だけどここのところ負けてるの。今年ちょっと調子が悪いと思うのは、リスタートでむしろやられている。本当はこのチームは、リスタートの守備がすごく強くて、むしろ少ないチャンスでもリスタートで決めちゃう。まぁ、小笠原(満男、イタリア・メッシーナ)がいたというのもあるけど、フェルナンドもそうだし、そのキッカーがいなくなる。だからここをどうするかというところが、大きな2つ目のポイントだと思うよ。
中西:おっしゃる通りだと思いますね。そこはやっぱりサイドバックに。基本的に、鹿島がボールを持つでしょうからね。
原:そう。持つことは多いかもしれない。で、内田を使えないのはやっぱり痛い。
中西:痛いですね。
原:彼はもう若武者というかさ、もう思いっきり・・・
中西:ガンガン行くじゃないですか。
原:それは、ちょっと疲れちゃったりもあるけど。でも、彼がいればという思いは確かにあったと思う。それで、新井場もサイドを行くというのが鹿島のバランスではあるから。そこ使えないというのをどうするか。まぁ、昨日(2006年10月21日、日産スタジアム、横浜F ・マリノス2-1 鹿島アントラーズ)は名良橋(晃)を使ったりとかね、本当にいろいろ試しをしてる。
中西:誰が一番適任か。
原:そう。どういう風にするかというのは、本当に当日になるまで分からないくらい。で、多分秘密練習とか、そういう風になるんじゃないかな。
中西:非公開で。
原:特にセットプレー、リスタートなんかは。それをやるメンバーとかさ、新しいことをちょっとやってみるとか。そういう可能性は高いんじゃないかな。
中西:でも本当に、数が、システムが噛み合わないと、やっぱり余ってくるのは必ずサイドバックとかウィングバックですからね。あとは中盤の枚数が3 枚のところが真ん中4 枚とか。その数合わせをどうするかとか、そういうところになると思うんで。 
原:あとね、もう1 つ大きなポイントを付け加えるとすれば、ジェフには今、代表選手が6 人もいるでしょ。6 人いて、この前の鹿島戦は本当にすごく疲れてたのに頑張った。アウェイでね。観ていて涙が出るくらいすごかったよ、本当。もうみんな試合が終わったら崩れ落ちてたもん。喜ぶよりも疲れて。だけど、その疲れが昨日の試合に出ちゃったのね。というか、仕方がない。あれだけの試合をやってきて、初めてインドに行ったり(2006年10月11日、AFC アジアカップ2007予選大会、インド・バンガロール、インド0-3 日本)。
原:そう。巻なんかも、これだけのスケジュールでやってきて、やっぱり動きがちょっとおかしいぐらい。昨日の試合でもなんかへんな倒れ方しちゃって、「替えた方がいい」って、解説でそういうことを言っていっていいかどうか分からないけど、「休ませた方がいい」と思った、俺は。回復がどういう風にできるか。代表選手が多いから。
中西:そうですね。
原:で、練習がやっぱり激しいのはわかる。
中西:激しい。
原:それをどうやってリカバリーさせて、コンディションをピークに持っていくかという勝負。ジェフはそれが大事だと思う、俺。
中西:そうですね。
原:羽生だって、腹を壊しちゃうでしょ? 
会場:笑い
中西:今までのジェフの練習だけやっている部分であればいいんです。
原:いいんだよね。
中西:代表に6 人行っちゃって、しかもその6 人は休みが無くて。当然ジェフにいる時も休みはないんでしょうけど。移動があって、代表チームでレギュラーにもなりたい、試合にも出たい、しかも練習もオシム監督だから頑張らなきゃいけない。それで今までの倍くらいの疲れがたまってんじゃないですか。
原:それとやっぱり今まででいえば、ジェフは去年のナビスコカップ決勝のガンバ戦(2005年11月5 日、国立競技場、ジェフユナイテッド市原・千葉0(5 PK 4)0ガンバ大阪)もそうだけど、向かっていくぞという感じできたのに、逆になりつつあるんだよ、今。日本代表が6 人もいるということは、他のチームは・・・
中西:ターゲットですよね。
原:そこに勝てば自分も日本代表に近づけると思うじゃない。だから、立場が逆になってる。ジェフはこれを乗り越えていくのは大変だよ。今まではチャレンジャーで「俺らは強い相手だったらどんどんいけるよ」というのが、今度は向かってこられちゃうから。それをはじき返していくのは大変。でも、そこを乗り越えていけば、
またチームも強くなるし、個人も強くなるんじゃないかな。鹿島に日本代表選手が誰もいないなんていうのははないよ、今まで。
中西:そうですね。
原:だから、そういう気持ちで。だってこの岩政だってさ、代表に入ってもおかしくないじゃない。
中西:入ってほしいですよ。どうですか? 岩政選手は聞いていて。ずーっと考えたでしょ、いろいろ。
岩政:いや、最初はずっとジェフの話を聞きながらいろいろ、僕も作戦を。
会場:笑い

後編へつづく

取材・構成:CREW
撮影:新関雅士