チケットのことならチケットぴあチケットぴあ

こんにちは、ゲストさん。会員登録はこちら




ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2007 vol.60
どうなる!? FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2007~Supported by
ACミランの優勝で幕を閉じた「TOYOTA プレゼンツ FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2007」。
開幕が9日後に迫った11月28日(水)、日本サッカーミュージアムにて4人の豪華ゲスト陣が今大会の見どころを
2時間たっぷり語り尽くしました。トークバトルの模様をフルバージョンでお届けします!

<ホスト>
中西哲生(スポーツジャーナリスト)
1969年、愛知県生まれ。同志社大から1992年に名古屋グランパスエイト入り。1997年に川崎フロンターレへ移籍してからはキャプテンを務め、1999年のJ2優勝・J1昇格に貢献した。Jリーグ通算95試合7得点。現在はスポーツジャーナリストとして「ズームイン!!SUPER」(日本テレビ系)、「サンデーモーニング」(TBS系)「GET SPORTS」(テレビ朝日系)などに出演中。

<ゲスト>

武田修宏(サッカー解説者)
'67年静岡県生まれ。'86年清水東高から読売クラブ(現・東京ヴェルディ1969)入り。'01年の引退までにジュビロ磐田、京都パープルサンガ、さらにパラグアイの名門スポルティボ・ルケーニョなど延べ7チームでプレーした。Jリーグ通算237試合出場94得点(歴代4位)、日本代表通算18試合出場1得点。現在は各メディアで活躍し、JFAアンバサダーも務める。

北澤豪(サッカー解説者)
'68年東京都生まれ。修徳高校から本田技研を経て'91年読売クラブ(現・東京ヴェルディ1969)へ移籍。Jリーグ初年度の'93年と'94年の優勝メンバー。日本代表としてもフランス「W杯」出場に貢献した。'03年に引退。現在は月曜日の「スポんちゅ」(日本テレビ系)に出演する他、日本サッカー協会国際委員としてサッカーの発展・普及につとめている。

都並敏史(サッカー解説者)
'61年東京都生まれ。'80年に読売FC(現東京ヴェルディ1969)に入団。その後、アビスパ福岡、ベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)でプレー。'81年に19歳で日本代表に選出。国際Aマッチ78試合に出場し、2得点を挙げた。98年に現役を引退。引退後は東京ヴェルディ1969ユース監督を経て、ベガルタ仙台、セレッソ大阪の監督に就任。来季からは横浜FC監督として指揮を執る。


前編
司会:「ぴあトークバトル スポーツ快楽主義2007 VOL.60 supported by adidas どうなる!? FIFAクラブワールドカップジャパン2007~クラブ文化が世界を制す」。このイベントは、アディダスジャパン株式会社の特別協賛でお送りします。本日の進行役をご紹介します。みなさま大きな拍手でお迎えください。スポーツジャーナリストの中西哲生さんです。
会場:拍手
司会:中西さん、『ズームイン!!SUPER』(日本テレビ系)で朝のコーナー、もう連日やっておりますけれど、我々もずっと何年間一緒にやらせていただいていたんですよね。
中西:朝ツートップを組んでいたんですけど。全然一緒にならないですからね。
司会:そうですね。隔週、1週間交代で。
中西:僕が月~金曜をやったら、また次に月~金曜をやってね。
司会:そうなんですよね。今週『ズームイン!!SUPER』はクラブワールドカップコーナーやっていました。
中西:はい。今週から始まりました。僕も毎朝やってます。
司会:明日も朝2時か3時ですよね。
中西:完全に寝不足ですよ。
司会:今日は若干寝不足気味ですが、最後まで2 時間、たっぷりとトークバトルしていただきたいと思います。「TOYOTA プレゼンツ FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2007」ですが、簡単にこの大会をご説明していきたいと思います。4年に1度行われる国のワールドカップに対して、こちらはクラブのワールドカップ。
中西:そうです。
司会:6大陸のチャンピオンが集うと言うことですよね。
中西:そうですね。
司会:6大陸は、アジア、アフリカ、北中米カリブ海、南米、オセアニア、ヨーロッパの6大陸で、今年から開催国枠というのが設けられまして、Jリーグチャンピオンが出られるということになりましたが、アジアチャンピオンに浦和レッズがなりました。
中西:いやもう、本当にこれは嬉しいですね。
司会:嬉しいですね。
中西:Jリーグ枠で出るのと、アジアチャンピオンで出るのとでは話が違いますから。本当に嬉しいです。
司会:そしてこのJリーグ枠というのは、今回は「AFC チャンピオンズリーグ2007」で2位のセパハン(イラン)というチームが出場することになっていますね。それでは今日はすてきなゲストの方々をお迎えしています。そろそろお呼びしましょう。都並敏史さん、武田修宏さん、北澤豪さんです。どうぞみなさま大きな拍手でお迎えください。
会場:拍手
司会:北澤さんは何とACミラン(イタリア)のジャージ姿で登場です。なかなか珍しいですね。それでは、まずはみなさんから一言ずついただきましょう。都並さんからお願いします。
都並:今回のクラブワールドカップでは、解説者として頑張っていきたいと思っています。今日はいろいろな話をみなさんとともに楽しんでいきたいと思います。よろしくお願いします。
会場:拍手
司会:さぁそれでは『SPORTS うるぐす』(日本テレビ系)でもお馴染みの武田さん。一言お願いします。
武田:今日は久々に北澤くんと都並さんと一緒で、現役時代を思い出すんですけど、楽しく2時間、自分が思っていること、わかっていることだけをしっかり喋っていきたいと思います。よろしくお願いします。
会場:拍手
司会:そして、北澤さん。『NEWS ZERO』(日本テレビ系)でもお馴染みですけど、今日はACミランのジャージ姿で。
北澤:さっきそこで「関係者以外、入らないでください」って言われちゃって。Gパンだったらよかったんですけど、雰囲気的にちょっとアンバランスになってしまいましたが。これは今回の大会用の新しいACミランのジャージで、ここにマークが入ってますよ、ちゃんと。
司会:入ってますね。何で北澤さんはそれをお持ちなんですか? いち早く入手して。
中西:格好いいですね、これ。
北澤:いいと思うんですよ。ですから、みなさんもぜひ。
中西:これはクラブワールドカップバージョンですか?
司会:シンプルなんですね。
北澤:そうですよ。途中で脱ぐので、中も楽しみにしてください。よろしくお願いします。
会場:拍手
司会:それではみなさんにすわっていただきたいと思うんですけど、後ろに何やら物体がありまして、布をかぶっています。これは実はスゴイんです。今大会からチーム用ベンチが新しくなるということで、試合中に選手が実際に座る椅子の実物を、今日特別にこちらに持ってきました。
中西:ヨーロッパに行くと、スペインとかみんなドライバーシートみたいなベンチに座ってますよね。
司会:そうですね。カンプ・ノウ(スペイン・バルセロナのホームスタジアム)とか、サンチャゴ・ベルナベウ(スペイン・レアル・マドリードのホームスタジアム)とか。
中西:そういうのを用意しているんですけど、日本ではなかなかなかったじゃないですか。
司会:ないですよ。
中西:これはちょっと楽しみですね。
司会:これは果たしてどんなベンチなのか。都並さんちょっと見ようとしてますけど。触った感じはかなりいい感じです。さぁ、それではみなさんに布を引いていただきたいと思うんですが、準備はよろしいでしょうか。都並さん、まだ見ちゃダメですって。
会場:笑い
司会:それでは、いよいよベンチシートのお披露目です。お願いします!
中西:ノーリアクションじゃないですか。
会場:笑い
司会:どうでしょう、まずは触った感じから。都並さんどうですか。
都並:サイドのサポートが揺れる時に非常にいいんですけど。
司会:車じゃないですから。ちょっとみなさんに実際に座っていただきましょう。いいなぁ。4つしかないんですよね。
都並:座り心地いいですよ、非常に。肉厚、肉厚。
司会:ちょっとここで、ウンチクを述べてみたいんですけど。これは色がジャパンブルーになっていまして、選手、スタッフによりよい環境を提供するために、日本サッカー協会が世界最高レベルを目指して作ったものです。今回の製作にあたっては、トヨタ紡織株式会社様に全面的にご協力をいただいたということですね。スゴイのは、シートにヒーティング加工が施されていて、ほぼ1分以内に設定温度に達するということですね。
中西:これは冬はいいですね。
北澤:冬は寒くて動き出しにくくなるから。
中西:僕はよくベンチに座ってましたら寒かったです。
武田:ももの裏とか冷えてね。
中西:武田さんはいつも試合に出てたじゃないですか。いつも僕はベンチに座ってたから。
司会:考えてみたら、ここにいらっしゃるみなさんはほとんど試合に出てたから、北澤さんもベンチに座ったことはないでしょう。
北澤:そんなことないよ。
中西:そんなことなくないですよ。ほとんど座ってないですよ。僕が一番座ってますよ。半分以上座ってましたから。
都並:でも、もも裏が温かくなっていいよね。練習前にちゃんと温めたりするじゃないですか。それを自然とやってくれるわけでしょ。
司会:肉離れの持病があったりするといいんじゃないですかね、温まって。
中西:実際に使うものですからね。これ、この後スタジアムに持っていくんですよね。
司会:この後持っていきますね。まず、国立競技場でお披露目になりまして。
中西:第1試合でね。
司会:その後の浦和レッズの初戦ですけど、豊田までは持って行けないんです。
中西:レッズはひとつ勝てばいい。
司会:そうですね。ひとつ勝てばこのベンチに座れるということで。大会後は国立競技場に設置しまして、国内の主要大会で使用と。いいですよね。
中西:いいですね。
司会:高校サッカーの決勝も、このベンチになるわけですよ。
中西:スゴイですね。これからはこういうサッカーのシートが日本でも当たり前になるかも知れないですね。
司会:武田さんどうですか、座り心地は。
武田:これいいけど、あんまり座り心地がいいと試合に出たくなくなっちゃう。すごく気持ちいいもん。普通ベンチって「試合出してくれ、出してくれ」っていう場所なのに、これだと気持ち良すぎちゃって。
都並:フィジカルコーチが「アップ行け」って言っても、「イヤです」みたいな。
北澤:ピッチに出た時に、よりいいパフォーマンスを上げられるようにいいベンチにしたわけで、居心地が良くなるようにっていうわけじゃないですよね。世界の人たちが来るんだから、こういったベンチが用意されるのはいいよね。
司会:今日はみなさんこのベンチに座って、2時間よろしくお願いします。
中西:それでは順にお話をうかがっていきたいと思うんですが。
都並:この椅子すごくももにぴったりサポート。いい感じ。
北澤:トークバトルが終わった後、最後にみなさんこの椅子に自由にすわっていただいてもいいんじゃない?
会場:拍手
中西:そうですね。
都並:収拾つかなくなるから勝手なことを言わないように。
北澤:一瞬だけでも。
中西:そうですね。せっかくですから座っていただいて楽しんで欲しいと思いますけど。それでは、FIFAクラブワールドカップの話を進めていきたいんですけど、都並さん、今回は3度目です。なんだか今年は違う気がしませんか。
都並:違う。完全に違う。明らかに違いますね。
中西:まずクラブワールドカップにつながる戦いという意味でも、「AFCチャンピオンズリーグ」が非常に盛り上がりましたね。
都並:そうですね。何しろ浦和がチャンピオンになったということで、今までの大会とはちょっとステータスが変わってきた感じですね。それとともに、やっぱりACミランという強豪チームが。この大会は全世界のクラブチャンピオンを決めると言いながら、やっぱりヨーロッパの大会への思い、気持ちの違いというのがどうしても前大会まではあったような気がしますけど。今回は完全にそれがないというのがはっきりわかってるし、ACミランの本気が見られるし、なおかつそれに浦和が絡んでいく。これは本当に1サッカーファンとしてもわくわくしてきますね。
中西:今ACミランの話があったんですが北澤さん、ACミランはどうやら本気ですよ。
北澤:国内リーグのイタリア・セリエAの試合を1試合減らして日本に来ますからね。日本に入る日が早い。
中西:大会1週間前の12月6日に来日。
北澤:国内リーグのスケジュール変更は、ACミランだけではどうにもならないですからね。イタリア全体が応援しないとそうはならないから。それだけに意気込みはすごい。もちろん素晴らしいメンバーがいるというのもありますけど、キャプテンのパオロ・マルディーニ(イタリア・ACミラン)が現役中にタイトルを取っていないので、彼にみんなでタイトルを取らせようという。
中西:最後の花道じゃないですけどね。
北澤:またそれが、強さをさらに引き出すんじゃないかなと思いますけどね。昨日もカリアリとの試合(2007年11月25日、イタリア・スタディオ・サンテリア、ACミラン2-1カリアリ)がありましたけど、ロナウド(イタリア・ACミラン、ブラジル代表)が復活したりしてますから。
中西:出てましたね。
北澤:ちょっと太ったかな、髪の毛が伸びたなって印象はあるんですけど。
都並:髪長いね。中途半端に。
北澤:だけど、一瞬のゴールに抜けた瞬発力。あのへんは変わってない。
中西:一発ポストに当ててましたけど。あのサイドキックでシュートを打ってあそこまで飛ぶか!っていう切れ味はありますよね。
北澤:今は点の取れないACミランで、セリエAの方では順位を落としてるんですけど。ただ、タイトルを絶対に取らなきゃいけないというUEFAチャンピオンズリーグでは、必ず勝ち上がっているところもあるじゃないですか。そういった意味では、調子が悪くても「タイトルを取りたい」と思った時のACミランはまた違いますから。
中西:勝負強いですからね。武田さん、このクラブワールドカップに向けて、ヨーロッパと南米以外の国が、世界一の座をかけて戦えるようになったというモチベーションの高さは、この大会で非常に大きいですよね。
武田:そうですね。浦和も、来年ももちろんありますけど、アジアでチャンピオンになればこの大会に出られるというのはありますし。そういった意味では、浦和が優勝したことによってJリーグのチームが3チーム出られる。本当に他のチームもアジアの大会に出られるということで楽しみにしていましたから。僕はACミランとかボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)の取材も行かせていただきましたけど、インタビューでは1カ月前からもう浦和レッズのことを知ってましたし、普通はインタビューに行く時は知らないんですよ。「浦和?」って。そしてリーグで調子の悪い分、この大会でタイトルを取らないと。ロナウドも復帰してきてる感じですし。ACミランのカルロ・アンチェロッティ監督は、リーグでもほとんど優勝が厳しいので、そういう意味で今大会3回目ですけど、ヨーロッパのチームの本気というのが、話を聞いていてもすごいなと実感できる。あとボカ・ジュニアーズにも行かせていただいたんですけど、リケルメ(フアン・ロマン、ボカ・ジュニアーズに移籍予定、元スペイン・ビジャレアル)がいなくなってどうかなと思ったんですけど、本当に若い20歳代の代表選手がいっぱいいて、すごいなと思いましたから本当に。非常に楽しみです。
中西:今お話をうかがったように、強いところは本気ですし、ワールドカップは当然予選があって本大会があって、どこの国でも世界一を目指せる道しるべがあったんですけど。このクラブワールドカップができたことで、全世界のクラブがヨーロッパや南米のトップクラブと戦えるようになったことも非常に大きいんじゃないかなと思います。クラブと国の代表というチームが2つあるわけですけど、みなさん世界のいろいろなクラブに行っていらっしゃいますよね。日本のクラブというのは、Jリーグができてまだ10数年ですから、クラブ文化というものが、当然芽生えて来ているところもたくさんありますけど、100年くらい歴史のあるところに比べればまだまだかなと思うところもあります。都並さんが感じたクラブ文化、どのクラブでも構いませんが、何かありますか。
都並:僕もいろんなチームに勉強に行ったり取材に行ったりしてますけど、100年以上の歴史を重ねているクラブというのは、本当に積み重ねられて熟成されてきた何か、それはグラウンドの上で行う練習もそうでしょうし、あるいは戦術的なこともそうでしょうけど、いろんなところで感じるんですよ。僕はメキシコのパチューカというクラブに取材に行きまして、スタジアム自体が非常に見ているお客さんに楽しめるようにできている。
中西:例えばどこですか。
都並:クラブの色が紺と白を基調としているんですけど、いたるところにそのストライプを使うわけです。ゴールのネットも白と紺とか、シンボルの色になっている。細かいところにそれが入っているだけで愛着の沸き方が変わってくるし、例えばグッズコーナーにも当然いろんな種類のものがあるんですけど、日本で発想がないような物まである。例えば僕がおみやげに買ってきたのは、紺色と白のストライプのソーイングセット。そんな物までクラブのシンボルを描いたものを持たせる。あとは、スタジアムっていろんな売店があるじゃないですか。我々が味の素スタジアムでカップヌードルを買ったりするようなもので。でも、売っている方も実はサッカーを見たいわけですよね。テレビとかで見る人もいますけど、基本的に売り子さんは試合を見られないじゃないですか。それがメキシコのパチューカのスタジアムは、売店で売っている人の後ろ側が全部ガラス張りになっていて、振り返ったら試合が見られるんですよ。それを見た時に、これは改装の時に考えて手を入れたと聞いて、あぁやっぱりと思いましたね。「よくわかってるなぁ」とね。そういうことも感じますね。
中西:実際そういうスタジアムってあんまりないですよね。
都並:ないでしょ。売店の子の気持ちまで考えてくれるチームなんてないんじゃないですか。ホットドッグを売ってるところで。
中西:しかも、買う人もカウンター越しに試合見られますもんね。
都並:見られる。ホントにすごい。簡単なことだけど、すごく深い話だなと思った。
中西:パチューカはサッカー大学もあるんですよね。
都並:そうです。クラブが持っている大学なんですけど、10面くらいのグラウンドでサッカーの授業するんですけど、みんなトップチームと同じ練習着で、プロを目指す選手もいれば、アマチュアのまま勉強してトレーナーになる人もいる。日本のサッカーの専門学校の拡大版みたいなところに、プロが入って練習したりしてるんですよ。その一体感というか、町を挙げてのクラブへの愛情というのをいやが上にも感じるんですよ。これはすごく楽しいだろうなという気がしましたね。
中西:そのチームが日本に来るとなると、メキシコの方も大変なんじゃないですか。メキシコのサポーター、来ちゃいそうな感じじゃないですか。
都並:なんだけど…
中西:お金がね。来るのが大変なんですよね。
都並:そうなんですよね。どこまでの人が来るのかというのがね。メキシコってやや内弁慶的なところがありそうで。浦和レッズともし試合するようなことになったら、絶対にヤバいという感じがしますけどね。
中西:でも、そういう文化が根づいているというのがわかりますね。武田さんは何か感じるところはありますか。
武田:僕もいろいろなところに行かせてもらって。去年ビジャレアル(スペイン)の試合を見に行った時に、非常に小さい町なんですけど、お客さんも年配の方が多くて、一家揃ってビジャレアルの試合を見に来ている。そういった意味では本当にみんなで応援しているという実感がすごくあって。僕が一番思うのは、ユニフォームの誇りというか、ユニフォームの重みというのかな。だいたいスタジアムに行くとユニフォームが飾ってあって、それを見るとて1枚のユニフォームの重みというのをすごく感じますね。ボカ・ジュニアーズに行ったらマラドーナのユニフォームが飾ってあるわけじゃないですか。そのクラブの歴史とか重みをすごく大事にしているんだなって思って。日本には確かにいろんなチームがありますけど、そういったのものはまだ育ってないじゃないですか。Jリーグは15年ですけど、セリエAは100年以上ですし、メキシコだって60年、70年の歴史がありますから。そういった積み重ねでクラブの大事さがわかってるなというのと、日本のチームが歴代のユニフォームを飾ったりとか、そういうふうになっていったらもっと変わっていくのかなと僕は思いますね。
中西:去年出場したバルセロナ(スペイン)も、ホームスタジアムのカンプ・ノウに行くと、ずっと前に使っていた選手のスパイクとか、その当時の点を取った時のスパイクが全部ありますよね。
北澤:そうそう。点を取った時のスパイクを大事にするんだよね。タイトルをモノにしたっていうことだよね。
中西:「このスパイクで、このボールが入ってタイトル取れました」みたいな。
都並:結構、昔の選手とか大事にするじゃない。
中西:それを踏まえて僕は不安なんですけど、果たして日本の各クラブは「天皇杯を初めて取った時のゴールのスパイクはこれだ」なんて残してるんですかね。残してないと思うんですよ。
都並:残しておいたほうがいよ。最後にそういうところに気づくから。いまは日本は一生懸命に走ってる段階だからそういうことを忘れているだけで、後で気がつくわけですよ。その時にないと困るから、ちゃんと取っておいた方がいいですね。
北澤:残しておいたほうがいいですよ。
中西:僕はもし川崎フロンターレがナビスコカップで優勝したら「取っておいた方がいいよ」と言おうと思ったのに、負けちゃったんで言えなかったんですけど。僕が名古屋グランパスにいた時、初めて天皇杯のタイトルを取った(1995年度)じゃないですか。ベンゲル監督(アーセン、イングランド・アーセナル監督)やストイコビッチ(ドラガン、名古屋グランパス監督)がいて。その時にベンゲルが着たグラウンドコートとか残してるのかなぁと思って。
都並:大切なことだよね。
中西:ピクシー(ストイコビッチ)がその時に履いていた靴とか残してるのかなと思って。多分残してないはずなんですよ。そういうのは残した方がいいですよね、絶対。
都並:絶対そうだと思う。
中西:武田さんがさっきおっしゃったように、後で歴史を振り返って「このスパイクはクーマン(ロナルド、スペイン・バレンシア監督、元バルセロナ)のスパイクだ」って。ヨーロッパ選手権で優勝した時の靴が残ってるんですよ。
都並:そのクラブの100年の歴史をいろいろ陳列してますけど、その時からやってたんじゃないと思うよ。ある程度年月がいって、「そういうものを大事にしよう」という話が出てきた時に、「そういうものを作ろうよ」って、それで出来てきたはず。
中西:北澤さんはクラブ文化について何かありますか。
北澤:ビッグクラブのサポーターを見ていると異常だよね。ボカの人たちなんか、「どうしてそこまですべてを捧げる?」くらいにクラブを応援するもん。さっきサッカー協会の方とも話しましたけど、生まれながらにクラブを応援するという。
中西:先ほど僕たちがお話を聞いたんですけど、出生届を出す前にボカ・ジュニアーズのソシオの会員になるのが当たり前なんですって。それで会員届をだしてから出生届を出しに行く。
北澤:自分の判断が関係ない。その地域に生まれたら、無理矢理ボカのファンになってしまう。
中西:アルゼンチンはそうだって。
北澤:で、ある程度の年令になったら年間シート。
中西:お父さんとお母さんが子供に年間シート買ってあげるらしいですよ。ある程度子供として認めてきたら。
北澤:何となくいろんなことがわかりはじめた頃にそうなってたら、全然入り方は違いますよね。ただ、今のレッズの進み方を考えると、あり得るかなと思う。
中西:確かにそうですね。
北澤:あのお父さん、お母さんたちが生まれた子供に「いいかお前、ここに生まれたらレッズのファンが当たり前だぞ」って言えば、そうやってインプットされていくよね。そう考えたら、ビッグクラブ100年という流れに繋がっていくんじゃないかな。そういうスタート段階がこれまではなかったから、日本のクラブとの比較は難しいけど、段々とそれをやってきた人もいるし、見て育ってきた人たちが、15年が経てば自分の子供を持つようになる。二世代に渡ってサッカーを応援しようとする人が出て。そこまで行ってスタートじゃないかな。ACミランの100年も、そうなってるわけでしょ。チームに入ってくる人もそうだけど、出ていった人間、特にOBの人たちを大事にするよね。またOB会で得たものをクラブに還元するような仕組みを作っていくと、クラブとしてもOBが必要だという形になる。必ずそのプレーヤーには家族がいて子供がいて、お爺ちゃんになってもファミリーがいっぱいいると、必ずそのチームを応援するわけだよね。支える人間になるわけ。それがたくさん出てくれば、それだけでもクラブの運営に必要なお金みたいなものにも繋がってくるところがありるよね。
中西:当然ファンもそういうふうに愛情を持つことも大事ですけど、逆に言うと選手やチームも、地域の人に愛情を持っていくのも大事なんじゃないですか。自分がいつもご飯を食べに行ってる店に「試合見にきてください」と。「じゃあ、いつもご飯を食べに来てくれるから行くわよ」なんてね。そういう繋がりができるとすごくいいと思うし。
都並:応援されて、お金を払って見に来ていただいて、自分たちの給料が生まれてると。それでその方たちに返していくために、まず精一杯ファイトあふれる戦う姿を見せる。それ以外のところでも、なるべくお客さまに対して積極的に関わっていく。そういうことも100年の歴史を持つチームの選手は当然わかってるわけだよね。そういう意味で日本は歴史が浅い。追いついてないですね。そのへんはちゃんと考えていかないといけないし、言っていかないといけない部分だと思います。
中西:そういう循環として、選手も逆に還元していく。
北澤:地域として、クラブがどう必要とされているのかということがないと、地域密着も作れないから。今それが作り始められている中で生まれて来るんじゃないですか。
中西:これから、今回の大会でもいろいろ見て、どんどん学んでいけばいいですね。
北澤:今回、こういう大会がある中で、クラブの試合を見るだけではなくて、クラブの裏側にある背景を見るのも強さの秘訣だったりするよね。ACミランもそうだろうし、ボカもそうだろうし、パチューカもそうだろうし。そういうのを見ると、今後Jリーグのクラブを応援する時も、応援の仕方が変わってくるから。例えば、日本のサッカーミュージアムを見ることによって歴史を振り返ると、試合の見方も変わってくる。そういうのも必要とされるんじゃないですか。
中西:クラブの文化というのを一言で言うのは難しいものなんですけど、やっぱり触れるといいなと思うところがたくさんあるから。なるべく積み重ねていけるように、残すものは残して、どんどん積み上げるものは積み上げていくとができれば、日本にもクラブ文化が育ちますよね。
都並:やっぱり作って壊し作って壊しを結構してるんですよね、世界では。南米とか北中米とか、あっちの人たちって陽気だし、言って言われて何か作っていく感じがあるんですけど、日本人は抑えるでしょう。どうしたって積み上げていくのが遅くなったりするから。勇気を持って意見交換していくのは、本当に大事だと思いますよ。そうすれば、さらに早くできると思います。
中西:ここでちょっと写真を見ていただきたいんですけど、例えばこんなシーン。これはニュージーランドのワイタケレの試合前ウォーミングアップの風景で。
都並:スタンドがないですね。
中西:ここで試合してるという。今ホームスタジアムが工事中らしくって。
武田:のどかですね。
中西:なんかこう社会人チームの試合を家族が見守っているような。
都並:裸足だよ、スゴイな。
北澤:日本から見れば笑えるシーンかも知れないけど、これがニュージーランドのサッカー文化というか、そういうものかもしれないからね。
中西:一昨年、シドニーFC(オーストラリア)が日本に来た時にも、国内リーグを「あれっ?」みたいなところでやっているところがありましたよね、オセアニアの地域は。これもまた一つの文化として根付いてる。
武田:そうだね。こういったチームがまたクラブワールドカップに来て。
都並:あれ、武ちゃんはフィジーに行ったっけ?
武田:行ってないです。
都並:オセアニアの決勝はフィジーとやったじゃないですか(2007年4月29日、ニュージーランド・ワイタケレ、ワイタケレ1-0フィジー・バ)。その昔、読売クラブは優勝旅行で試合を兼ねてフィジーに行ったんですよ。そしたらチームドクターとか裸足でしたもん。裸足で治療してました、ホントですよ。この間ワイタケレの決勝戦見てたら、相手がフィジーのチームだったんで、だいぶ変わったんだなぁと思って。普通に我々の文化とは違う。
中西:そんなことはあり得ないですからね。だいたいピッチレベルで試合を見る環境自体もあんまり考えられないですからね。普通に考えたら。
都並:だって、日本テレビでワイタケレの取材に行ったら、ゴールキーパーの人が学校の先生なんですよ。生徒たちも先生が選手だって知らなかったらしいですよ。「先生出るの?」って、すごく盛り上がったという。本当らしいですよ。ほとんどの方がアマチュアで仕事を持たれていて、生徒たちは先生が副業としてサッカーをやってるって知らなかったって。「先生そんなの出るんだ!」って、そこで一躍スターになったというレベル。その割にはしっかりしたチームなんですよ。
中西:守備もしっかりしてる。
都並:いろいろなチームがあっておもしろいですね。
中西:いろんなチームが出場してくるっていうのが、こういうのを見ていただくとわかると思います。では、実際に今回の対戦について順番に見ていきたいと思うんですけど、まずは一つ目の試合(2007年12月7日、国立競技場)。浦和レッズがAFC チャンピオンズリーグで敗れていたとすれば、ここはJリーグの枠だったんですが、ワイタケレ対セパハン(イラン)という試合になります。武田さんどうですか、このゲームは。
武田:そうですね。僕も都並さんと一緒にオセアニアの決勝を見させてもらいましたけど、やっぱりそれぞれの大陸のスタイルがありますよね、本当に。どちらかというと体が大きくて、直線的な動きをするのはオセアニア代表で。
中西:セパハンのゲームを見てると、すごくしっかり繋いでくる、ビルドアップもできる。技術がしっかりしているという印象があるんですけど。
武田:面白さは、セパハンってどちらかというとコーナーキックとロングスローで、高さと巧さという感じがこの間の浦和レッズとの2試合(2007年11月7日、イラン・イスファハン、セパハン1-1浦和レッズ/2007年11月14日、埼玉スタジアム2002、浦和レッズ2-0セパハン)でもあったんで、そのあたりがオセアニア代表にどう通用するのかなと。まぁ、普通に行ったらセパハンじゃないですか。
北澤:勝ち負けで言えば、セパハンはいいサッカーをするけど、組み合わせとしては全然違う同士だから、試合内容としては面白くなるんじゃないかな。
中西:どういう反応を示すかとていうのが。
北澤:だって、同じタイプのチームが来たらバチンとやってるだけになる。
中西:完全にマッチアップしちゃって。
北澤:セパハンが個人で抜いてくる。ただオセアニアはフィジカル能力が強いから、あの個人技に対して、ある程度押さえ切れるところもあるわけだから。でも、同じような戦いをセパハンはするだろうね。
中西:セパハンは川崎フロンターレとやった時(2007年9月19日、イラン・イスファハン、セパハン0-0川崎フロンターレ/2007年9月26日、等々力陸上競技場、川崎フロンターレ0(PK4-5)-0セパハン)と、浦和レッズとやった時とはあからさまに違いましたからね。何でこんな短期間に変わったんだろうと思ったんですけど。
北澤:決勝で、浦和でやった時は勝たなきゃいけなかったから少しアグレッシブに来たけど、イランのチームって、引き分け狙いとかすごく上手だからね。
中西:そういう試合巧者的な部分がありますよね。
北澤:巧い。それはイラン代表にもつながるところだよね。だって、1998年フランスワールドカップの第3代表決定戦のジョホールバル(1997年11月16日、マレーシア、日本3-2イラン)でアジジっていう選手、前日に車椅子乗ってたもんね。
都並:あぁ、役者だったよね、あれ。
北澤:ギブスまで巻いてましたよね。
都並:それで、翌日思いっきり出てた。
北澤:先発だったからね、その後。そこまでするかみたいな。
都並:役者だよ。
中西:普通そういうのやらないですよね。
都並:南米っぽいよね。ラテンの匂いがする、イランは。
中西:僕は今回セパハンの選手を見ていて、彼らをJリーグに呼んでも・・
武田:絶対呼んだ方がいいと思う。
都並:5番(ハディ・アギリ)とかスーパーでしょ、だって。
中西:4番のモハラム・ナビドキア、日本に呼んだ方がいいです。
北澤:呼んだ方がいい。すばらしい。
中西:あと、前のセンターフォワードの小さくて速い選手(マフムド・カリミ)。
北澤:けっこう苦しめられた。
中西:今まではヨーロッパから選手を呼んでくる、南米から選手を呼んでくるでしたけど。クラブワールドカップによって、AFC チャンピオンズリーグがこれだけ注目されてきたことによって、アジアのチームから補強しようっていうのは僕はありだと思うんですけど。そういうのはどうですか。
都並:もちろん前から考えている人はいると思うんだけど、仲介役になる人が積極的になってないだけじゃないですか。
北澤:具体的な話ですね。
都並:まず、早いところから安く入れた方がという流れがあるじゃないですか。主流がブラジルになっていて。少しずつ韓国の選手も流れてきましたけど。
中西:そうですね。
都並:やっぱり手っ取り早く仕事にしたい人たちがいる。そういう世界がありますからね。
中西:セパハンはカップ戦の優勝チームですからね。別にイランのリーグ戦の優勝チームではないですからね。
北澤:もっといいチームといい選手がいるはずですよね。
中西:いるはずですよね。だって4番のナビドキアも、センターバック(モーセン・ベンガー)もいい選手ですからね。あのセンターバックの選手、190cm以上あるんですよ。デカい。
北澤:向こうで試合やった時、ワシントン(浦和レッズ)がほとんど仕事できなかったからね。
中西:あのワシントンが。
北澤:ねぇ。
中西:相手の体に押されてました。
北澤:押されてたよね。
中西:センターバック2人とも190cmくらいあるでしょ。デカいし巧いし、ビルドアップもできるし。
北澤:よく勝ったよね、レッズ。本当にいいチームだもんね。
中西:フロンターレとやった時は全然ダメだったんですよ。何でフロンターレが勝てないのっていうくらいのゲームだったんです、どっちも。日本でやった時は0-0だったんですけど。入らないのがおかしいっていうくらいで。でも、あのキーパー(アバス・モハマディ)はスーパーですね。レッズの時はあまりよくなかったですけど。
北澤:ワシントンを中東のチームでも取りたいという話も出てきたみたいだし。ACLの効果ですよね。相互交流というか。
中西:そうですね。アジアは世界で一番横に広い地域だから。
北澤:西と東ではわからないから。
中西:ほとんど情報交換がなくて、ある意味どんな選手がいるかわからない状態ですけど、「こいつ結構いい選手じゃない」みたいに思われてくるんじゃないですか。
北澤:将来的には、外国人枠の中でアジア枠みたいなものがまたひとつの交流だったりとか、チームの水準を高められるひとつになるかもしれないですね。
中西:僕は逆に言うと、セパハンや例えばサウジアラビアのチームから、日本人が「来ないか」と呼ばれる時代になれば嬉しいと思う。
都並:そうなると最高ですね。
中西:そういう日がきっといつか来る可能性があると思う。武田さん、そういうのはどうですか?
武田:いやぁ、厳しいかな。
中西:厳しいですか。
武田:僕みたいに南米のパラグアイとか、海外に行った経験からすると、外国人枠が3名だと、どうしてもブラジル、アルゼンチン。少しずつ変わってはきましたけど、国の名前だけで、「日本」というだけで扱いがちょっと違うかなというのをすごく感じられたので。もう少し時間が経っていくと通るかもと思うんですけど、僕は現状が3枠だったらアルゼンチン、ブラジルを取っちゃうのかなというのはありますけど。だけど、ワールドカップに出て活躍したりして、日本のイメージっていうのは巧い選手がいて、それだけ変わってきているとは思いますけど。
中西:でも、直接対戦したことがある相手、例えば「AFC チャンピオンズリーグ」で見たことがある相手だったら信頼感もね。
都並:「これは使える」って。ある程度踏み出せる部分もある。
中西:相手サポーターにしても、「あいつにやられたんだ。あいつ取ろうぜ」みたいな雰囲気になる可能性もあるだろうし、「AFC チャンピオンズリーグ」が今回新しい可能性を見せてくれた。そして、来年はまた3チームが出るわけですから。これでまたレッズが出て、ガンバ大阪が出て、鹿島アントラーズが出て。これはまたいろんなことが見えてくるんじゃないですか。
北澤:変わってきますよね。
中西:日本の新しい行き方も考えられるんじゃないかと。でもやっぱり、開幕戦のマッチ1はセパハンが上がってきてレッズと再戦と。
都並:ワイタケレは最終的にはクロスにドンだから。あのでっかいのが真ん中に控えてると、なかなかチャンスができないんじゃないかな。中央突破の精度はそれほどないんで。センターバック2人が控えてると、なかなか崩しようがないんではないかという気がします。
中西:0-0っぽいですよ。そういうのはないですか、PKとか。
都並:いやいや。逆にそのセンターバックもちょっともろい感じがしますね。ちょっと遅い部分があるから。でも、まぁそれだけじゃわからない。ファイトが試合を変えるから。
中西:蓋を開けてみないとわからないですからね。
都並:今話せることは、多分そっちの方。
中西:そして、マッチ2(2007年12月9日、国立競技場)ですね。マッチ1のワイタケレ対セパハンの試合は国立競技場で、金曜日の19時45分。会社が終わった後に見に行ける時間ですからね。土曜日はゲームがなくて、日曜日にマッチ2のエトワール・サヘル(チュニジア)とパチューカ。こちらは昼です。14時45分キックオフ。北澤さん、エトワール・サヘルはみんな予想していなかったと思うんですけど。
北澤:そうね。僕は1回大会、2回大会と、ずっとアル・アハリ(エジプト、現チーム名アハリ・スポーティング・クラブ)を応援してましたからね。
中西:いいチームでしたよね。
都並:いいチームだよ。アル・アハリは本当にいいチーム。
北澤:本当に持っているものの半分くらいしか出してないんだよ、日本に来て。本当にアフリカ大会とかの試合を見てると、スゴイんだ、攻撃力が。コーナーキックがないくらいにゴールラインでギリギリでも持ったりするよね。で、パンチ力もあって、シュート力もあったりして、非常に魅力あるチームだったよね。
中西:なんで力を発揮できなかったんですか?
北澤:最後、守備が堅いですもん。
都並:カッチガチの守りだからね。ちょっとドタ引きのような。もうペナルティエリアの前に7、8人固めて。それで運動能力を使ってはね返して。そのうち焦れて、という感じです。で、最後に退場と。PKを取ってくれないみたいな展開があって。
中西:ちょっと不本意だったアル・アハリ。
都並:力的にはアル・アハリのほうが上だったと思いますけど、これもサッカーだからどうしようもない。結果的には3-1(2007年11月9日、エジプト・カイロ、エトワール・サヘル3-1アハリ・スポーティング・クラブ)。最終的には敗北ですので。
中西:このエトワール・サヘルはチュニジアのチームで、日本が2002年ワールドカップで対戦して勝ちましたけど(2002年6月14日、長居スタジアム、日本2-0チュニジア)。都並さんはどういう印象ですか。
都並:個人個人はやっぱり非常に身体能力も高くて、テクニックもあるし。レベルは高いと思うんですね。エトワール・サヘルのそれぞれの選手も面白い選手がいるんですけど。とにかく勝つための作戦だとは思うんですけど、やりあうような試合にはならないかなと思うんですけど。パチューカはけっこうイケイケだから逆に恐い。カウンターで。
中西:パチューカは逆にはまる可能性が。攻めちゃったらドンと行かれちゃう。
都並:そうなんですよ。エトワール・サヘルの19歳、アミン・チェルミテ。あれがすごく速いからね。それにやられるっていう可能性もちょっと。僕はパチューカをメキシコで見てきてファンになってるんで、恐いなという気がします。
北澤:メキシコ目線ですか?
都並:メキシコ目線ですよ。
武田:僕も去年、チュニジアに行ったことがあるんですけど、本当にアフリカといっても、上の方はどちらかというとヨーロッパスタイルのパスを繋ぎながらのサッカーで。
中西:アフリカ大陸の一番上ですよね、チュニジアは。
武田:そう。一番上で、そういった意味ではヨーロッパスタイルのサッカーで、要所要所に黒人の選手がいて、国籍を見るとアフリカのいろんな国の選手がいて。そういった身体能力の高い選手は、国の名前を見ても覚えられないような国の代表とか、チュニジアじゃないアフリカの小さい国のいろんな代表選手がいるんですよ。そういった選手が2、3人いてけっこう巧くて、そういった意味では非常にまとまりのあるチームだなと思いますけど。都並さんが言ったように、メキシコのチームはどちらかというと攻撃的に来ると思うんで、そのへんをカウンターで。初戦は僕もメキシコに勝ってもらいたい。正直パチューカとボカ・ジュニアーズの試合が見たいんで。メキシコは初戦をとにかく乗り切って欲しい。あとはエジプトではなくて、チュニジアのチームが出るということ、アフリカの違う国の代表が来るということは日本にとってまたいいことかなとも思います。
中西:パチューカはどうですか。試合としてはどういう風に進めていきたいですか。相手はしっかり引いてくるかもしれないですけど、それでもガンガン行きますかね。
都並:パチューカの監督(エンリケ・メサ)と話したんですけど、完全な横綱相撲系の人なんですよ。「我々のサッカーは変えない。どんなに相手が来ても自分たちのサッカーを押し通す」。本当に華麗な攻撃。サイドを使いながら中央突破する。もし“攻撃の教科書”と言うのがあるとすれば、マニュアルはもう完璧です。サイドを使いながら、真ん中が空いたら中央突破できる。相手が引いたらミドルシュートを決められる。サイドが空いたらクロスから飛び込め。全てできるんだけど、いかんせん今は守備が弱い。キーパーのミゲル・カレロっていう選手が壊れて、センターバックも売っちゃった。カレロは血管がつぶれて神経がおかしくなって手術して。間に合うか、間に合わないかという状態。センターバックの選手はセビリア(スペイン)に行っちゃって、そこが完全な弱体。僕はパチューカを応援してるんだけど、明らかに今それでおかしくなってますね。リーグでもそれでやられているし。攻撃陣は本当に面白いけど。
中西:じゃ、懸念は守備で。
都並:監督と話してる時にも「11月26日までに必ず補強をするから」って。もう締め切り終わってるんです。ディレクターも「それ23日までですけど」ってあわてて言ったんですけど、それを通訳の人が話してくれなくて。やっぱり結局間に合わなかったです。
中西:補強はしないまま?
都並:間違いなくそのままです。ちょっと心配です。
北澤:けど、全体でやるじゃないですか、攻撃も守備も。
都並:コンパクトで非常にいいサッカー。華やかで楽しいサッカーなんだけど、懸念はその部分と、あとはメキシコのサッカーチームは、非常にリーグは華やかで楽しめる工夫がされていて、お客さんもものすごい盛り上がるんですよ。ホームゲームは結構後押しされて、ノリノリになって攻めていくっていうイメージなんですよ。対戦相手の方から逆にカウンターで一発決めてやろうみたいなチームも少なくて、ちょっとおとなしめに戦っちゃうような雰囲気がある。で、あのサポーターがいないとちょっとノリが減っちゃうんじゃないかなっていう気がするの。
中西:ヤバいですね。
都並:基本的にヨーロッパに出たい人もたくさんいるんですよ、選手の意識としては。インタビューすると「やっぱりやってみたいけど」って。昔の日本人みたい。「でも海外で通用するかな、俺・・・」とか。
北澤:へえ。
都並:そういう遠慮がある。行ってみたら出来るのに、そこでちょっと困ってるっていう感じがある。お金もいいし、リーグが華やかだからそこに留まっていて。
北澤:あんまり出ないんでしょうね、メキシコから。
都並:実際にやってみて、ACミランとやって「カカがいた!」となると、それだけで気後れしちゃいそうな。そういうメンタルがありますよ、メキシコは。ちょっとそのあたりをこの間学んで来た。
中西:そうなんですか。
都並:非常に親近感があったね。
武田:都並さん、どこに行っても親近感ありますね。
都並:自分と似てる。
中西:北澤さんは?
北澤:ボカ・ジュニアーズと戦うならどっちがいいのかなと思ったりして。
中西:そっちを先に考えますか。
北澤:うん。だって向こうのブロックの3試合面白くないですか?
中西:マニアックな感じですね。楽しみです。どこが出てきます?
北澤:まぁ、謎の大陸で言えばアフリカが出て来て、パチューカだとだいたい見えるかなというのがあって。僕はエトワール・サヘルが勝ち上がってくれた方が、試合としはボカ・ジュニアーズとの試合が面白くなるかなって。1990年イタリア・ワールドカップのカメルーンみたいに、何かこう、アフリカがきっかけを起こすじゃない。そろそろこのクラブワールドカップも、どこかがきっかけを起こさないかなと。そこがまずひとつでしょう。
都並:驚異的な身体能力とか、それだけでも。
中西:その試合は日曜日の昼間、国立競技場です。こちらもぜひ。結構見たことのない国のチームの試合見るの楽しいですからね。足を運んでほしいです。みんなボカ・ジュニアーズとかACミランとか浦和とかに気が行きがちですけど、この2つの試合も面白いですよね。
北澤:小学校6年からトヨタカップを見続けてきて、全部行っていて。1試合だったじゃない。僕としては世界のサッカーが一堂に見られるのが嬉しいよ。
中西:特にお子さんとかいらっしゃる方はお子さん連れて行って、「子どもの頃にクラブワールドカップ見た」なんてね。そういうのはこれからの文化として大切ですよね。全然違う国のサッカーが生で見られるんですからね。それは楽しみですよ。
都並:楽しみですよ。しかも、日本のチームが出てるんですからね。
中西:ワイタケレとセパハンのゲームも、エトワール・サハルとパチューカのゲームもアクセスいいですからね。ぜひ行って欲しいですね。そして、マッチ3(2007年12月10日、豊田スタジアム)。19時30分キックオフ。浦和レッズ対・・・相手はセパハン?
都並:またかよ、みたいな。でも、それは間違いないでしょう。

取材・構成/CREW 撮影/新関雅士

→後編へ