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8月9日(月)奥大介、中村俊輔、高木琢也、中西哲生の4人が顔を揃え、横浜F・マリノス トークスペシャルが行なわれた。ここでは特別編として、その模様をレポート。

横浜F・マリノス トークスペシャル
「宣戦布告」
特別レポート

前編

<ホスト>
中西哲生
'69年、愛知県生まれ。同志社大から'92年に名古屋グランパス入り。'97年に川崎フロンターレへ移籍してからはキャプテンをつとめ、'00年にJ1昇格を果たした。Jリーグ通算95試合7得点。現在はスポーツジャーナリストとして「ズームイン!!SUPER」(日本テレビ系)、「ニュース23」(TBS系)などに出演中。

<ゲスト>
奥大介
'76年、兵庫県生まれ。神戸弘陵高から’94年にジュビロ磐田入りし、レギュラーとして4度のステージ制覇、2度の年間王座獲得に貢献。’02年に磐田から横浜F・マリノスへレンタル移籍し、シーズン終了後に完全移籍。日本代表にはトルシエ監督の初采配となった’98年10月のエジプト戦でデビューし、以降26試合2得点。

中村俊輔
'78年、神奈川県生まれ。横浜マリノス・ジュニアユースから桐光学園を経て横浜マリノス入り。ユース、五輪代表としても世界大会に出場し、Jリーグでは'00年にMVPを受賞。'02年にイタリア・レジーナへ移籍を果たす。'04年アジアカップでもMVPとなり優勝の原動力となった。

高木琢也
'67年、長崎県生まれ。国見高、大阪商業大を経て、'90年フジタ工業(現湘南ベルマーレ)入社。'91年にマツダ(現サンフレッチェ広島)に移籍し、'92年日本代表デビュー。同年のアジアカップでは決勝でゴールを決め、日本を初優勝へ導く。広島、ヴェルディ川崎でJリーグ通算191試合64得点。日本代表通算45試合27得点。


中西:皆さんこんにちは。F・マリノスクラブ、スペシャルイベント第2弾「横浜F・マリノストークスペシャル 宣戦布告!!」。めちゃめちゃ人いますね。今日のゲストはなかなかないでしょう、ここに来られてうれしいです。僕、朝の番組で「今日トークショーがあるんですよね、奥選手と中村選手の」って言ってしまいました。もうチケット売ってないのを知ってて言いました。プレー以外でもすてきなおふたりですから。そして、すばらしいコメンテーターの方もいらっしゃいますし。よろしくお願いします。それではゲストの方をお迎えいたしましょう。フットボールコメンテーターの高木琢也さん。
会場:拍手
高木:多いですね。
中西:出てくる前とちょっと違いますね。
高木:違います、違います。
中西:満席ですよ。
高木:今日はマリノスのファンクラブのイベントの一環ということで。僕は、トリコロールの三色のカラーに全く染まってないですけど、今日はちょっといろいろ客観的にチームを見ながら、感想など話していきたいと思います。
中西:よろしくお願いします。それでは、スペシャルプレーヤーゲストをご紹介いたしましょう。奥大介選手、そして中村俊輔選手。
奥:よろしくお願いします。
中西:どうですか。さっき裏で話してましたけど。
奥:ビックリした。
中西:ちょっと人が多いっすよね、多いですよね。
奥:はい。
中西:奥選手はこういうトークショーはけっこうするんですか。
奥:2回目です。
中西:少ないですね。
奥:苦手なんです。しゃべれないですから、あんまり。
中西:本当ですか。でも、いろいろなお話を伺えたらと思うんですけど。俊輔君はどうですか。トークショーはやるんですか。
中村:やらない。
中西:初めて? やってたことはある?
中村:マリノス時代に何回か。
中西:でも、久しぶりでしょ。
中村:そうっすね。
中西:目を合わせられなくなってますけど、客席の方に。今日はいろんな話を聞きたいと思うんですけど、最初はまず、アジアカップ中国2004。
高木:ですね。
中西:優勝おめでとうございます。
会場:拍手
中西:そしてMVP受賞もおめでとうございます。これから聞きたいんですけど、怖くなかったですか。決勝戦が終わった後。
中村:なかなかバスが出なかったり、移動したと思ったら石とかペットボトルとか。
中西:本当に投げられるんですか、石を、窓にガンッて。
中村:けっこう当たってました。
中西:大きい石ですか。
中村:いや、よくわかんないですけど、ゴンッと。
中西:割れないんですか。
中村:ヒビみたいなのは入ってましたけど。
中西:怖いですよね。
高木:すごいですね。そこまではね。
中西:僕らわからないですもん。実際、バスに乗ったわけじゃないし、見ているわけじゃないですから。
高木:じゃあ、防弾ガラスだったのかな。
中村:バスの窓なんで、防弾ではないでしょ。
中西:どれぐらい出られなかったんですか、試合が終わってから。
中村:2時間か3時間ぐらいずっとバスにいました。
中西:試合が終わって、けっこうきついじゃないですか。
中村:まだ優勝したから、バスの中でも余裕がありましたけど。あれで負けてたら、もうみんな、もっとイライラしてたと思います。
中西:アジアカップは最初からずっと勝っていったわけですけど、一番苦しかったのはどの辺ですか。みんな、疲れてましたよね。
中村:2日おき、3日おきに試合をするっていうのは。
中西:6試合ですよ。しかもフルタイムで出てたじゃないですか。
中村:そんなにないじゃないですか。
中西:ないですね。
中村:リーグ戦以外でもありませんし。ましてや去年はあんまり試合に出らなかったので。久しぶりだったので。日程に体を合わせていくのがきつかったです。
中西:連戦がきつかったですか。
中村:そうですね。
中西:あとは暑さとか。めちゃくちゃ暑そうだったんですけど。
中村:湿度の方が体にはきつかったですけど。
中西:体重とかどうなんですか。さっき「やせたね」って、会った瞬間に言ったんですけど。
中村:試合終わった後は、人によるんですけど、僕は3.5kgぐらいは落ちてます。
中西:毎回?
中村:はい。
中西:戻らないじゃないですか、2日で。
中村:戻る前に減って、戻る前に減って。
中西:だんだん減っていくじゃないですか。
中村:減っていきましたけど。今、高校のときと同じ体重になっちゃって。戻してますけど。
中西:本当ですか?
高木:食事とかは?
中西:現地のコックさん?
中村:いや、Jビレッジの方から日本人のコックさんが来てくれて、日本食に近いものを作っていただいてましたけど。たまにカエルが出たりとか。
中西:カエル? えっ、それは日本人の方がカエルを調理するんですか?
中村:一応、向こうのコックもいるんで、たぶん。
高木:明らかに。
中村:はい。
高木:ササミみたいなやつだね。
中村:カエルの足がこう。
中西:グロテスクな感じで。
中村:でもみんな、おもしろがって食べてましたよ。
中西:食べてたんですか。おいしかったんですか。
中村:魚の白身みたいな感じですね。おいしかったです。
中西:まあ微妙な感じ。
中村:はい。
中西:奥選手は今回のアジアカップを見ていて、日本代表での俊輔君はどうでしたか。
奥:すごいよかったと思います。
中西:見ていて、普通に感動しましたよね。
奥:そうですね。あのPK戦('04 年7 月31日、重慶オリンピックスタジアム、アジアカップ準々決勝 日本1-1 ヨルダン)はちょっと感動しました。
会場:笑い
中西:なんで笑うんですか。今、笑うところじゃないじゃないですか。
奥:俊が外したからじゃないですか。
中西:でも芝を踏み固めてたじゃないですか、入念に。
中村:PKのポイントのところだけ、つぎはぎみたいになってたんで、怪しいなと思っていっぱい踏んでたんですけど。いざ自分が、斜めから軸足が入ったら、自分の軸足は滑らなかったんですけど、周りのところがズルッと。
中西:組織ごと、一区画全部が。
中村:はい。そのときはもう「しょうがねえや」って思いましたけど、でもこれからは、踏むときはもっと強く踏もうって。
中西:確かにその後はコーナーキックのときもかなり踏んでましたもんね。フリーキックのときも、かなり踏んでましたもんね。
中村:そうですね。
高木:あのPKの順番は自分たちで決めたの? ジーコ監督?
中村:ジーコが決めてました。前の日とかにPK練習をやっていて、やっぱり、決める人と決めない人の差が激しかったりしたのもあって、それを見てジーコが決めたんじゃないですか。
中西:一応、決める確率が高い順に並んでたんですか。
中村:たぶんそうだと思います。
会場:笑い
中西:で、一番最初の決める確率の高いふたりが罠にはまって。あとは全員、入ってましたけど。でもあのときは実際、最初のふたりがPKを外した時点で厳しいなと、俊輔君、思ったんじゃないですか。
中村:負けたときに、もちろん、自分の責任になると思いましたけど。
中西:でも、まだチャンスはあると。
中村:もちろん。
中西:能活(川口、デンマーク・ノアシェラン)君ならやってくれると。
中村:能活さんなら。
奥:笑い
中西:なんで笑うんですか。能活君はそういうタイプじゃないですか、神がかり的なところが。
奥:だけどやっぱり、止める雰囲気はありました。
中西:ありましたよね。
奥:1本止めた後から、そういう雰囲気は。
中西:最初は全然ボールに触れてなかったから。ちょっと厳しいなと僕も思いましたけど。3本目まで1本も触れてなかったんで。
高木:集中の度合いが違うでしょ、彼の場合。1本、2本がダメでも、次を狙っていってるでしょ。
中西:すごかったですよね。日本代表の話は尽きないと思いますけど、その後ですよ。俊輔君は帰ってきて、なんであんなにいっぱい試合に出るんですか。本当に失礼ですけど、昨日の試合('04年8月8日、横浜国際総合競技場、横浜F・マリノス2-1レッジーナ)は出てほしいですけど、たぶん日本全国の全員が「ちょっと休んでもいいのに」と思っていたと思いますよ。
中村:スポンサー様ですかね。
中西:そういうことじゃ…
高木:「せっかくだから」って言えば、俊輔もいいのにね。
中西:で、何か試合前に監督(マッツァーリ・ヴァルテル)と話をしたんでしょ。
中村:しました、着いて。
中西:初めてなんじゃないですか。
中村:そうですね。選手もほぼ移籍して。
中西:昨シーズンの選手は5人ぐらいしか残ってないじゃないですか。
中村:ほとんどが初めての選手だったんで。で、何を言われるかなと思ったら、すごく守備的な。「守備はこうやって動け」って、戦術的なことをいっぱい話されて。
中西:いきなり。
中村:でも、攻撃は自由にやっていいということで。ただ「前半で合図してくれ」って言って。
中西:替えてくれと。
中村:はい。そしたら替えると。20分ぐらいになって合図したんですけど、見てくれないんです。
中西:俊輔君の中では、試合に出ても20分ぐらいかなと。
中村:そうそう。なんか一回センタリングを上げたのと、コーナーキックを蹴って。一応、やったかなって。
中西:結果的に51分ぐらい出たんですか。倍以上。イタリアも、ジェスチャーが通じなかったんですか。
中村:なんなんですかね。
高木:僕、それ見てたんですよ、昨日ピッチで解説してたんで。俊輔君が交代のサイン送ったなと思って。監督もそれは大体わかったみたいで、選手をアップさせてたんですけど、選手のアップが全然上がっていかないの、ストレッチが長くて。「あれ、これずっとやるのかな」と思って見てて。
中西:後半に出ていったときに、きっとみんな「まだやるの?」、「体、大事にしてくれればいいよ」と思っていたと思いますけど。奥選手、そう思いませんでしたか。
奥:そうですね。帰ってきてすぐだったので、僕だったらできないなと思って。
中西:普通、やらないじゃないですか。日本にいたって2試合連続ってないですよ。
奥:しかも飛行機に乗ってて。
中西:移動してきて。寝てないんですよね。
中村:ホテルで1時間と、飛行機で1時間。
中西:昨日は寝ましたか。
中村:はい、一応。
中西:一応って。寝れましたか。
中村:なんか足が熱い。
中西:体内の温度が。
中村:そういう疲れが。なんて言うか。最初寝れなかったんですけど、いつの間にかコロッと寝てました。
中西:奥選手、久しぶりに俊輔君のプレーを間近で見てどうでしたか。いきなりね、疲れてたのはありますけど。しかも初めての選手に囲まれてでしたけど。
奥:あんまり久々って感じがしなかったです。テレビとかで観てたから。
中西:そうですよね。アジアカップも観てるし。レッジーナの試合やセリエAの試合は観るんですか。
奥:えっ。あんまり観ない。
中西:サッカー選手は、観る人と観ない人にわかれますよね、高木さん。いつも観てる人と。
高木:そうですね。
中西:全く観ない人と。
高木:でも、なかなか観られないでしょ、遅い時間だし。あとは録画だと、逆に観ないよね、あんまり。
奥:J2はよく観ますけど。
中西:なんでJ2は観るんですか。
奥:ちょうどお昼とかにやってるじゃないですか。練習が終わった後に、スカパーで。それはよく観てますね。
中西:ふたりはF ・マリノスで1年間、いっしょにやってるじゃないですか。俊輔君から見た奥選手の印象は、どういうものなんですか。最初、F ・マリノスに来たとき。いっしょにやったのは初めてですか。代表とかでやってましたか。
中村:やってますね。
奥:ちょこっと。
中村:こう、来て、すぐにいろんな人としゃべったりとか、気さくな人だなって。熊本合宿でいっしょの部屋だったんですけど、ほぼ部屋にいなかったですね。
会場:笑い
中村:スパとか健康ランドにすぐバーッ出かけたりとか。いろんな人と話してた。
中西:いきなりF ・マリノスに溶け込みましたか。F ・マリノスってあまり、移籍して入る選手って少ないじゃないですか。
奥:でも普通に入れました。なんか、昔、高校時代にいっしょにやってた選手が多かった。マツ(松田直樹)とかアキ(遠藤彰弘)とか。だから、すぐに入り込めましたけど。
中西:仲がいいのは誰ですか。
奥:今は、タツ(久保竜彦)ですかね。
会場:笑い
中西:なんで笑うんですか。久保選手とはプライベートでも。
奥:そうですね。試合が終わった後はほぼ、飯食いに行ったり。
中西:いっしょに。
奥:はい。
中西:家族の方と。
奥:家族ぐるみで。
中西:どうなんですか、プライベートの久保選手は。いろいろ、お酒を飲むとか言われてますけど。
奥:飲みますけど、けっこうしゃべります、思ったより。
中西:「飲みますけど、しゃべります」? しゃべりますか。
奥:飲むよりしゃべります。
中西:テレビ業界の方々は、久保選手にインタビューするのは大変だっていうふうに見ているようですけど。
奥:嫌いって言ってました。
中西:僕が朝やっている「ズームイン!!SUPER」で、いっしょにやってるスポーツ担当のアナウンサーで、田邊(研一郎)君っているんですけど、日本代表のイングランド遠征( '04年5月30日~6月1日)で試合が終わった後にインタビューしたんです。日本に帰ってきたら、日本テレビの人にめちゃめちゃ怒られてましたよ。「お前、同じことを何回も聞くな!」って。それぐらいしゃべんないから。でも、しゃべるんですよね。
奥:カメラに向かってしゃべるのが嫌いらしいです。
中西:なんでですかね。普段はちゃんといろいろしゃべりますか。
奥:普通にしゃべります。
中西:で、奥選手はどうなんですか。テレビに向かってしゃべるのはイヤですか。
奥:あんまりしゃべらないです、僕も。
中西:それはなんでイヤなんですか。
奥:なんか、どう伝わってるのかわかんないから。
中西:確かに怖い部分はありますよね、選手って。
高木:思ったことを話せば、全然問題ないですよ。
奥:思ったことと、違う言葉をしゃべっているときがあるんです。
中西:ちょ、ちょっと待って。
奥:そういうときがあります、たまに。
中西:キャプテンやってるんですから、しゃべらないといけないじゃないですか。
奥:言おうとしていることと、ちゃうときがあるんです。
中西:じゃあ、試合が終わった後に「奥選手にインタビューです」ってやってるじゃないですか。あれでしゃべってるのは半分嘘だなって思った方がいいんですか。
奥:もっとちゃうこと、言おうとしてるんだなって思ってください。
中西:そうじゃないこと言ってる。それは自分が言いたいことと違うことを言っちゃうんですか。
奥:大体、呼ばれるんです。あの…
中西:マネージャーや広報の人に呼ばれて「ちょっとインタビューやって」って。
奥:その間に考えてるんですけど、カメラの前になると違うことを言ってるんです。
中西:じゃあ、今度から考えたことを言ってください。
奥:はい。
中西:違うことはなるべく。
奥:わかりました。
中西:俊輔君はどうなんですか。インタビューとか。テレビとか見てるとあんまりしゃべんないですけど。
中村:好きじゃないですね。
中西:好きじゃないんですか。聞いていると、けっこう考えてしゃべるじゃないですか。「こう言えば伝わるのかな」とか思ってるんですか。
中村:う~ん。
中西:そう、そういうふうに、「う~ん」ってよく考えてるじゃないですか。
中村:なんだろう。難しい言葉を知らないから、選んで。
中西:そんなことないでしょ。
中村:それで、伝わるかなって。
中西:サッカーって、奥選手の場合もそうですけど、伝えるのが難しいですよね。
奥:難しいです。
中西:なんかこう、自分が思ってることとか、これを言ってわかるのかなとか。
奥:ああ。そこまで深くは考えてないです。
中西:でも、サッカーの細かい技術を伝えるのは難しいじゃないですか。
奥:はい、そういう部分はあります。
中西:聞いてくれてる人がわかってるのかなっていうのはけっこう大事じゃないですか。
奥:だけど、わかりやすく言ってるつもりなんですけど、伝わってない。
中西:いや、僕には伝わってますよ。
奥:あ。
中西:僕はわかります。
高木:みんなわかりますよ。
中西:全然、伝わってると思うんで。
奥:頑張ってしゃべります。
高木:いやでも、あんまりしゃべりすぎてもね。
中西:すみません。
中西:現役のとき、めちゃくちゃしゃべってましたから。
高木:中西君はね、しゃべれないとね。
中西:今はそうですけど、しゃべるのが仕事なんで。夜とか、ご飯を食べるときは僕、あんまりしゃべんないですよね。
中村:そんなことないんじゃない。
中西:俊輔君とご飯を食べに行くと、一人しゃべる人が別にいるんですよ。俊輔君のマネージャーが。マシンガンのようにしゃべるんで。
高木:後ろにいる人ですね。
中西:いつも新聞とかでも後ろに写っている人なんですけど。その人がしゃべるから、僕、あんまりしゃべんないじゃないですか。でも、僕、そんなに食事している時とかしゃべりますか。
中村:しゃべらないですね。
中西:テレビのときほどしゃべらないですよね。高木さんはテレビに出てないときの方がしゃべりますよね。
高木:出てないときの方が? えっ、そう? 嘘!
中西:そうですよ。
高木:解説が多いでしょ、やってるのが、大体。解説のとき、しゃべってない?
中西:しゃべってますけど、「スーパーサッカー」のときとか、あんまりしゃべってないじゃないですか。
高木:いやあれは、いろいろ、ね。順番があるから。話す順番っていうか。
中西:話す順番。
高木:役割としては、俺は充分なんです、あれで。
中西:奥選手、去年、岡田武史監督が来てから、F ・マリノスは変りましたかね。これで3ステージ連続優勝ですけど。
奥:そうですね、やっぱり。練習がすごい集中してできている。
中西:この間、那須(大亮)選手と坂田(大輔)選手に聞いたんですけど、練習が集中してできるというのは、練習の内容がいいんですか。それとも時間が短いんですか。
奥:内容もいいし、時間も短いんですけど。やっぱり、そういう雰囲気を作ってくれる、監督が。ピリピリした。
中西:結局、どういうことを言うんですか。
奥:やっぱり、軽率なプレーをしたらすごい怒られるし。ちょっと見てなかったんちゃうかなと思ってても、見てた、みたいな。
中西:ちょっと気を抜いて、マークに付いていくのをさぼったりしたら。
奥:「走れー!」って。勇蔵(栗原)とか、よく怒られてます。勇蔵はそういうところでかなり怒られますね。
中西:それは本人がやってないからですか、それとも怒られキャラなんですか。
奥:たまにボーッとしてるときがあって、それをたまたま見られてたり。
中西:今言ったように、練習の中でいい雰囲気を作ってくれる。練習は納得してできてるんですか。僕が現役時代、ベンゲル(アーセン、アーセナル監督、元名古屋グランパスエイト監督)監督のときは、納得して練習してたんで。「今日はこういうことをやるよ」って。例えばフィジカルな練習をするときがあるじゃないですか。「今は体力がちょっと落ちていて、お前らの体力強化のために、今日はこれを何本、何秒で走れ」とちゃんと言うんですよ。だから納得するんですよね、「ああ、俺ら、走らなきゃいけないんだ」。それからサブの連中は「お前らは試合に出てないから、今日はトレーニングするけど、明日休みにしてやるから、ちゃんとここでトレーニングして自分を追い込め」とか、全部説明してくれるから。僕はそのとき、納得して練習できてた。だからすごくいいなと思ったんだけど。そういう説明はあるんですか。
奥:練習が始まる前に一応、説明して、「こうやって、ポゼッション率を高めるから」と。
中西:ボールキープ率を高めるために、こういう練習をすると。
奥:「試合中に回せるところに回せなかったから、こういう練習する」って、一番最初に言ってから練習に入ります。やっぱり去年まではツータッチでポゼッションしてたんですけど、今はワンタッチでできるようになったり、すごい難しくなったり。
中西:練習の中で。
奥:はい。
中西:それはいっしょですよ。僕もベンゲル監督のときに、最初は練習でずっとスリータッチだったんですよ。なんでかと言うと、ヨーロッパではツータッチでやっていたと言うんですけど、日本はツータッチでできない。コントロールと方向転換が一回でできないって言うんですよ。パスは一発でできるけど、方向転換とトラップを同時に、止めるのと違う方向を向くのが同時にできない。いい選手だと止めて、こっちから来たボールを、こうやって止めるじゃないですか。2回で出せる。でも日本はできないから、ボールを止めて、向いてから出すという練習を最初の1 年間。で、次の年からは方向転換をワンタッチでできるようになってるから、ツータッチの練習に変ったんですけど。そういう練習のスキルアップみたいのは言われてました、僕らも。そういうのはありますか。
奥:考え方はいっしょです。
中西:似てますよね、そう考えたら。
奥:はい。
中西:それから緻密じゃないですか。練習のメニューの内容だったりとか。飴とムチみたいなところが。
奥:ありますね。根性練みたいなところもあります。
中西:根性練。例えば。
奥:走るときに海に行ったら、むっちゃ暑かったんです、そのとき。「あ~暑いな」って思って。「でも、海に行ったらお前ら、こんなに暑くても天気がよくてよかったって思うやろ」って言って。
中西:遊びで海に行ったら、暑いのに天気よかったって思いますよね。
奥:「それといっしょで、涼しいと思って行け」って。
会場:笑い
奥:「目の前にお姉ちゃんがおると思って走れ」とか。
中西:俊輔君どうですか、今の。すごい冷ややかな目で見てましたけど。
中村:フフフ。ぜひ、練習したいです。
中西:俊輔君から見て、マリノス変わったなという感じはありますか。
中村:うーん。僕がいたときより全然強くなってるというイメージがありますけど。
中西:それは。
中村:すごいいい選手が揃ってますし、岡田監督の練習とか、教えもあると思うんですけど、戦う集団になってるという感じですね。
中西:後は、例えば松田選手とか代表に行ったときに変ったところとかあるんですか。前と違うなっていう。
中村:松さんはまあ、同じです。同じって、いい意味ですけど。高いレベルの。
中西:常に。
中村:はい。
中西:でも、強くなったなと感じるのはどういうところですか。
中村:個人個人の能力プラス、戦術と組織的な動きで、よりひとりひとりの選手の能力を引き出してるなって感じがします。
中西:高木さんが見ていてどうですか。F ・マリノス、3ステージ連続制覇ですけど。
高木:岡田さんは、僕もコンサドーレ札幌でいっしょにやっていて。
中西:あ、そうですよね。
高木:そのときはディフェンシブなチーム。カウンターが非常に多かった。岡田さんが入るまでのF ・マリノスというのは、ポゼッションはできるんだけども、速くいくときがちょっと少ない。
中西:ボールキープはしてるけど、速攻ではこう…
高木:少なかったんですね。それが岡田さんが入ってからはすごく変りましたね。確かにポゼッションというのは、長くすればいいってわけじゃないんですけど。岡田さんが入ったことによって、できるだけ速くボールを前に進めるっていう意識がチームの中に出てきて、その流れで、やっぱり今まで3ステージ、数を積み重ねてきたものが形になって表れてきたなと。
中西:僕は、選手の個々のレベルが上がって、試合に出ている選手だけが強くなったんじゃなくて、下からバックアップの選手も全員、チーム全体のレベルが上がったと思うんですよ。
奥:そうですね。出てない選手もすごい高いモチベーションで練習できてる。やっぱり誰が出ても、変わりなく試合ができるというのは優勝したときにありました。
中西:僕、試合に出てないときってけっこうくさりがちだったんですけど。そういうのはないんですか。
奥:いや、すごいモチベーションは高いです。チャンスは絶対にくれると思っているし。
中西:やっぱり、そういうチャンスをくれたりするっていう可能性があるという。
奥:そうですね。監督は、実際、いろいろ使ってみたりとかしてるし。そういうのがあるとみんなわりとモチベーションを高くやっていける。
中西:逆に奥選手なんかはこう、試合に出れなくなるんじゃないかなっていう不安もあおられるんじゃないですか。
奥:あります。僕も必死になって一応、頑張ってます。
中西:一応って。
高木:岡田さんは絶対に見てるんですよ、選手ひとりひとりのことを。必ず見てますよね。本当にもう。『巨人の星』じゃないですけど、飛馬のお姉さんの明子みたいに木の陰から見てて。
中西:木の陰から見てるかはわかんないですけど。
高木:でもね、本当に選手ひとりひとりを見てますからね。
中西:ああ、選手を細かく。
高木:コンディションとかもね。
中西:でも中村俊輔君は、去年、出られない立場だったじゃないですか、1 年間。どうだったんですか?
中村:うつ病にでもなりそうでした。ずっと部屋にとじこもってましたけどね。やること全部がダメでしたし。ケガが重なったりとか。それがケガのレベルが、向こうにはちょっと理解できなかったり、してもらえなかったり。腰が痛いから練習を休ませてくれと言っても、「歯を食いしばれ」の一言だったり。
中西:「歯を食いしばれ」って言うんですか。
中村:今、人数足りないからって。
中西:人数足りないから頑張れって感じですか。
中村:MR撮りに行っても何も出ないじゃないですか。
中西:レントゲンみたいなやつですね。
中村:「ほら、出てねえじゃねえか。じゃあ、ちょっと練習に出てくれ」って。
中西:でも、そういう状況でも痛みはあるわけですよね、ずっと。
中村:そうですね。まあ、いい意味でいろいろな経験をしましたけど。
中西:出られないのは一番辛いですからね、サッカーやってて。
中村:そうですね、初めてですね。自分の所属クラブであんなに試合に出ていないシーズンを送るというのは。
中西:レッジーナに行っても、ずっと出てましたからね。
中村:そうですね。
中西:でもそういう中で、これはよかったなと思うことは何かありましたか。耐えることを覚えたとか、自分自身のコンディショニング作りで。
中村:サブのときに自分が何をすべきかっていうのを、今まで考えことがなかったので。
中西:それはないですよね。
中村:自分がいざ、そういう立場になったときに、例えばレギュラーの奴を脅かすように練習からどんどんアピールしたりとか、ちょっと試合前に盛り上げたりとか。チームのために何をすべきか。個人的に、じゃあレギュラーを奪うために何をするか。そういうところを勉強しましたね。
中西:その期間中、例えば、キックのいろんなトレーニングをしたりとか、そういうのはなかったんですか。今までのキックのバリエーションに、これ加えていこうとか。
中村:いや、自分に何かを肉付けしようというよりも、自分に何が足りなくて今、試合に出られないのかということばっかり考えて。それを補うので頭がいっぱいでした。
高木:試合に出る、出ないっていうと、レッジーナは監督が途中で代わることが多いですよね。そういう意味では今シーズンはまた新しい監督になって。監督というのは、一つ、レッジーナの場合はポイントになると思うし。そういう意味では、今シーズンは期待とか不安とか。監督が代わることによってやっぱり、いろんな考えってありますか。
中村:本当に監督によって違うんですけど、練習も考え方も。去年は選手の能力を生かしたフォーメーションや戦術を使っていたんですけど、今年はけっこうボールをボンボン蹴らないで「つなげ、つなげ」と練習から言っていたので、そういった意味では、多少、自分に合っているかなという気はしますけど、いざ開幕したら、また始まりそうで怖いんですけど。
中西:前、言ってましたね。「いつもボールが上を通っていきますよ」と。
中村:何なんですかね。「ボールをここでくれよ」と言っても、僕の後ろから来てるわけですよ。でも僕は足元でチョンとやってというイメージがあるから「ここに出して」といつも言ってるんですけど。ここに出して相手に取られたら、出した選手も監督に怒られる。それが怖いし、リスクがあるから、どうせだったらフォワードを走らせて。そういう単純な。
中西:リスクを回避するプレー。
中村:そう。練習中からそうなので、自分の持ってる感覚が間違いなんじゃないかなとか。自分がそれに合わせてサッカーしないと今度はレギュラーを取れないんで。そのへんがすごい難しい。
中西:奥選手、やっぱりそういうのはわかりますよね。自分がボールをもらえない苦しさ。ボールを持って、表現するわけじゃないですか。
奥:そうですね。そうなるときつくなりますね。
中西:ですよね。やることがなくなるじゃないですか。中盤の選手がボールをもらえなかったら。後ろに付いててもくれなかったら、自分は自信があっても。そういう局面がよくあるじゃないですか。右足に出してくれたら大丈夫とか。
奥:ああ、あります。
中西:左じゃなくて右に出してくれれば、自分は受けられるのにとか。
奥:今はそういうことはないですけど。やっぱり意思統一がある程度できてるんで。俊みたいになったらたぶん、わからなくなると思いますね。
中西:いろんな要素があると思うんですけど、今回のアジアカップで俊輔君が再び光り輝けたのは、やっぱり自分が思っていたものが正しかったというのを証明したと思うので、そのスタイルを崩してほしくないんですけど。その中で特に一番伝えたいのはフリーキック。やっと最近、いい状態で蹴れるようになった感じですかね、足首の痛みが取れて。
中村:そうですね。去年一年間、ずっと右足首にテーピングを巻かないとダメだったので。曲がらないし。
中西:全然曲がらないんですか、やっぱり。
中村:曲がらないですね。
中西:完全に固めて。
中村:固めないと、もう練習が終わった後、痛いんで。
中西:毎日?
中村:それだけでもストレスなのに、練習中に、ボールが上を通ってって。
中西:足元にくれないし。
中村:腰が痛いのをわかってくれないし。どんどんストレスが溜まっていって、危なかったですね。
中西:でも足首のテーピングが取れたら、やっぱりキックは変りましたよね、実際。
中村:段々、戻ってきましたね。
中西:5月ぐらいでしたっけ、やっと取れたって話をしたじゃないですか。もう大丈夫だって。
中村:やっと取れた頃にはシーズン終わってました。
中西:ねえ。
中村:アジアカップはよかったです。巻かないでできたのでよかったです。
中西:奥選手も巻いてないですか。
奥:僕は巻かないです。
中西:巻かないんですかね、フリーキックを蹴る人は。高木さん、僕らはわかんないですよね、蹴らないですから。
高木:僕も蹴ったことないですからね。
中西:僕も蹴ったことないですから。足首、軸足には巻かない方がいいんですか。奥選手もフリーキック、うまいじゃないですか。
奥:いやあ、そんなにうまくはないですけど。試合で入ってるだけですから。
中西:でもけっこう入ってますよね。
奥:そうっすね。
中西:「そうっすね」じゃなくて。練習してるでしょ。けっこうゴールに入ってるイメージがある。
奥:練習はしてるんですけど、練習中はあんまり入らないんですけど。
中西:入らないんですか。
奥:試合になると入るんですよね。
中西:なんでですか。
奥:試合中の方がイメージで「あ、ここに蹴ろう」と思って。
中西:練習では練習のイメージしか湧かないんですか。
奥:壁ってなんか…
中西:あ、人形。人形がダメ。
奥:雰囲気が出ないんですよ。
中西:ああ。壁が本物だったらいいんだ。じゃあ、ボーッとしてる選手とかに立ってもらえばいいんじゃないですか。
奥:勇蔵とか。
中西:そのへんに練習が終わって暇そうにしてる人がいたら、「ちょっと悪いけど、ボーッとしてるんなら立ってよ」って言って。試合では決まりますよね。
奥:なんか入る。
中西:キックには自信があるわけじゃないですか。
奥:特に、そこまでないですけど。
中西:なくても入ってるから。
奥:監督がフリーキックを蹴ろって言うから、一応練習して。俊がいたときは俊が蹴ってたんですけど。ジュビロ磐田戦のとき、一回譲ってくれそうだったんですけど、僕が「いいよ、いいよ」って言って。ジュビロとやったとき俊とふたりで並んで立って。
中西:なんて言ったんですか、そのときは。「蹴っていいよ」って言ったんですか。
中村:はい。
会場:笑い
中村:角度とかやっぱり考えます。
中西:奥選手が蹴った方が。
中村:そうそう。キーパーも僕が蹴るって読んでたかもしれないし。
奥:気を使ってくれたんやね。
中西:で、結局、蹴らなかったんですか。
奥:蹴らなかったです。
中西:蹴ればいいじゃないですか。で、そのときは入ったんですか。
奥:入らなかった。
中村:入ってないです。ウィル(ロブソン・エミリオ・アンドレード、元横浜F ・マリノス)がね、しゃしゃってくる。
中西:ウィルがいたときは、僕もウィルをよく知ってるんですけど。J2 でずっといっしょにやってたんで。相手ですけど。誰がいても自分が蹴ろうとするじゃないですか。
奥:俊といつも言い合ってました。
中村:もちろん、コンサドーレのときからすごい決めてるのは知ってましたし。
中西:うまいですよね。
中村:マリノスの練習中、そんなに調子がよくなかった。で、自分が蹴ったら、次に蹴らすからと言ってるんですけど、なんかこう。僕がボールを置いた後に、ちょっと触ったりとかして。「触るな」って。
中西:やっぱりフリーキックを蹴る人って、最後に自分で触りたいんですか。
中村:最近それはなくなって、代表でも置いてもらって自分が蹴ったりとか。その代わりゴチョゴチョ言ってますけど、近くで。「もうちょっと右」とか。「その芝生のきれいなところ」とか。
中西:軸足で踏み込むところがきれいなところに置いてもらって。
中村:とか、小細工しています。
中西:でも高木さん、やっぱりフリーキック蹴るのは、最後に触った人っていうのは、サッカー界の定説でもあるじゃないですか。
高木:ゴールキーパーとか考えてるでしょうね。読みやすいというかね。
中西:ですよね。で、ウィルが来て、触ろうとすると「なんで触るんだよ」という感じになるじゃないですか。
中村:触った後、僕がもう一回触る。
中西:「俺、蹴るよ」って。この間、木村和司(サッカー解説者)さんが言ってましたけど、「そんなの先に蹴っちゃえばいいんだよ、人が触ったって」。
中村:落ち着かないじゃないですか、なんか。「あれ、なんで今、最後に触ったんだろう。こいつ蹴る気なのかな」って。
中西:はい。
中村:「わかってんのかな」って。
奥:蹴りそうな勢いだもんな、ウィル。
中西:信頼を置けないぐらい。
中村:同じ左利きだから、同じ横とかにいる。肘でこう、グイッと。
中西:「なんでいるんだよ」って。僕は代表の試合を観ていて、三都主(アレサンドロ、浦和レッズ)選手が蹴るのかなっていつも思います。思わないですか。蹴りたそうな顔をしてるじゃないですか、いつも。
中村:2回に1回ぐらいはアレックスが蹴りますね。
中西:でも、俊輔君が蹴るって決まってるんでしょ。
中村:いや、一応話します。で、ちょっとコーナーキックとか当たりがおかしいときには、やっぱり2本に1本は。
中西:譲ってるんですか。
中村:はい。けっこう持ってる。
中西:持ってますよね。
中村:この間、キリンカップ( '04年7月13日、横浜国際総合競技場、日本1-0セルビア・モンテネグロ)のポストに当たったやつも、たぶんキーパーは僕が蹴ると思ってたと思うんですけど。
中西:そうですよね。
中村:キーパー、一歩も動かなかったですし。そういうのをどんどん。誰が絶対に蹴るっていうのは、逆によした方が。
中西:そういうのがやっぱりいいですかね。
中村:で、自分が蹴ったときには、またキーパーが読めてないから。
中西:逆に反応しづらい。
中村:そうですね。
中西:この間のタイの試合(‘04年7月24日、重慶オリンピックスタジアム、、日本4-1タイ)のときのフリーキックが好きだったんですけど。納得してないですよね。
中村:なんか、悪い雰囲気がすごく流れて。まずいなという。
中西:そうそう。
中村:チーム内でもなんか焦っていたんです。
中西:先に点を取られて。
中村:とりあえず1-1にするという。
中西:そう。
中村:そういうタイミングを考えれば、あのフリーキックも価値はあったと思うんですけど、コースとかはもう。壁もこんなに逃げてたし。あれがセリエAだったらピッと笛を鳴らされても、こっちにズルズルと壁が出てきて、しかも絶対にジャンプするんですよ。だから絶対に壁に当たるんですよ。
中西:あのコースだと当たってましたよね。
中村:当たってますね。
中西:本当はもっと上に蹴りたいわけじゃないですか。
中村:そうです。
中西:セリエAだったら背もでかいし。ジリジリと前に出てきてジャンプするし。
中村:はい。
中西:セリエAで蹴る方が難しいですかね。
中村:難しいですね。もう全然、前に出てきちゃう。
中西:けっこう、9.15じゃねえだろってところにきますよね。
中村:そうですね。アウェイだったらなおさらですよ。相手が前に出てきて自分が止めたら、普通は壁にイエローカードが出るじゃないですか。僕にイエローカードが出たりするんですよ、遅延行為だって。
中西:遅いって。
中村:「遅い」って言って。「いや、壁が出てるじゃん」って言ってもダメです。そのへん、汚いです。ずる賢い。
中西:ずる賢いですよね。ギリギリを狙うようになったと言っていたじゃないですか、日本にいるときより。
中村:はい。キーパーが大きい分、反応は低いボールに対しては遅くても、高いボールには、セリアエAのゴールキーパーはみんなレベルが高いと思います。
中西:キーパーのサイズがやっぱりでかいから。
中村:日本人には届かないところにも届く。
中西:これ入ったなと思うようなボールでも。
中村:触りますね。チームメイトのゴールキーパーも。
中西:チームメイトのゴールキーパーも、練習で。
中村:ただやっぱり、低いのは弱かったりしますけどね。キーパーによります。
中西:じゃあ、あえて低く蹴ってるのは、狙って蹴っているんですか。地面ギリギリに落ちるようなボールを蹴っているときがあるじゃないですか。あれは狙って蹴っているんですか、低いボールも。蹴りわけてるんですか、低いのと高いのと。感覚?
中村:蹴りわけてはないですけど、たまたま。
中西:大体、あの辺という。
中村:そうです。

後編につづく

通訳:平田晴行、赤坂弘昭
取材・文:CREW
撮影:木村将