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赤川次郎

赤川次郎

「三毛猫ホームズシリーズ」、「三姉妹探偵団シリーズ」、「セーラー服と機関銃」など、幅広い世代の読者の心をつかんでいるベストセラー作家・赤川次郎さん。LPレコード全盛の時代から巨匠の録音と親しんできたという赤川さんは、クラシックの演奏家たちとの対談集を出版されたほど、その交流も幅広い。多くの名演奏家の成長のプロセスを見続けてきた赤川さんだからこそ「いま注目する」コンサートを紹介してもらおう。

取材・文:小田島久恵

一枚のLPレコードを何度も何度も聴いていた

作家の赤川次郎さんのクラシック・ファン歴は長い。ご本人は「全然詳しくなくて」と謙遜するが、話を聞けば聞くほどその知識は奥深く「知る人ぞ知る伝説のコンサート」にもちゃんと足を運んでいる。年間に観るオペラの本数だけでも10本以上、と根っからの音楽愛好家なのだ。

「会社員になって、初めてステレオを買って、『せっかくステレオがあるんだから』とクラシックを聴き始めたんです。でも(今から40年も前の)当時はレコードがとても高くて。買ったものは丸暗記しちゃうくらい聴いていました。バーンスタインのシベリウスの交響曲第2番とか。アイザック・スターンのメンデルスゾーンチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲もよく聴いてたなぁ。最近はCDも安くなって、輸入盤ではロストロポーヴィチの28歳のときのバッハの無伴奏ライブレコーディングとか、ポリーニが1960年のショパン・コンクールで優勝した直後に録音したショパンの練習曲集とか、珍しい掘り出しものが時々あります。優勝した頃のポリーニの写真を見たことがありますが、本当に初々しくてね」

成長を追い続けてきたポリーニのベートーヴェン

今回、赤川さんがおすすめする公演のひとつが、マウリツィオ・ポリーニの来日公演「ポリーニ・パースペクティヴ」だ。

「僕は、ポリーニを聴くまでピアノの音楽って、全然わからなかったんですよ。ヴァイオリンのようにひとつのメロディを追っていけばいいわけじゃなく、和音の楽器だし。どちらかというと弦やオーケストラの方が好みだった。ところが、1974年に初来日したポリーニが弾いたショパンの『24の前奏曲』をFMで聴いて、これはすごい!と驚いたんです。それ以来、来日したときは、できるだけ生で聴くようにしていますね。東京文化会館の一番前の席で聴いたこともありますよ。ピアノの位置をどこにするか本人が決められなくて、30分も開演時間が遅れてしまって。客席ぎりぎりまでピアノがせり出して『これが落ちてきたら死ぬな』と思った(笑)」

最前列で聴いたコンサートならではの、印象深い思い出のエピソードも。

「まだポリーニのお子さんが小さかった頃で、彼が袖に引っ込むと『わーっ』って駆けてきて抱きついたりするんですよ。ポリーニもお父さんなんだな。と思いました(笑)。芸術家を長く見ていると、面白いですね。成長がわかります。ポリーニみたいに追い続けているピアニストは少ないんですが、(エフゲニー・)キーシンもずっと聴いていますね。今や巨匠になってしまいましたが」

注目のオペラ『トスカ』『ピーター・グライムス』

オペラは3公演をセレクト。新国立劇場の「トスカ」は、オペラを初めて観る人にもおすすめ、と赤川さん。

「編集者の中にもオペラを観たことがない、という人がいるので、引っ張って観に行くんですよ。新国立劇場の『トスカ』は舞台も豪華絢爛だし、話も短いし、初心者にはぴったり。特に一幕は30~40分しかないし、主な役も3人しかいないでしょ?(笑) 今回も4、5人に勧めてますよ。本当にイタリア・オペラらしいですよね。悪役は徹底して悪役で、こんなにわかりやすい話もない。僕が初めて買ったオペラの全曲レコードが『トスカ』だったんです。歌手はトスカがマリア・カラスで、カヴァラドッシがカルロ・ベルゴンツィ。指揮はジョルジュ・プレートルで、2枚組のレコードというのは、当時はすごい贅沢だった。今は便利な時代ですよね。ダウンロードとか、僕はそういうこと一切できないんだけど」

初心者向けが「トスカ」なら、オペラ中級者以上におすすめなのが、イギリスの作曲家ブリテンの「ピーター・グライムズ」。日本で上演されることが少ない英語のオペラだけに、新国立劇場での上演には注目が集まっている。

「新国立劇場の芸術監督の尾高忠明さんは、BBCウェールズのオーケストラをずっと指揮してらして、多分イギリス音楽をやりたかったと思うんですよね。その情熱をぜひ拝見したい。ブリテンの作品では比較的聴きやすいですし。『ねじの回転』あたりになると、音楽的にとても難解になりますからね。『ピーター・グライムス』は話もわりと日本的で、漁村の村八分の話なんですね。その辺が、イギリスは演劇の国なんだなって思います。イタリア・オペラって話はいい加減だったりするけど、イギリスはお芝居としてちゃんとしてなきゃダメなんだろうなと。イタリア・オペラやワーグナーをいくつもご覧になっている方は、こういうオペラもあるという意味で、足を運ばれるといいと思いますよ」

伝説的ディーヴァの引退公演『アンナ・ボレーナ』

3つ目のおすすめオペラは、「アンナ・ボレーナ」ウィーン国立歌劇場の来日公演のハイライトだ。

「ソプラノのエディタ・グルベローヴァ最後の日本公演の演目が、この『アンナ・ボレーナ』なんですね。グルベローヴァは日本に初めて来た頃から聴いています。本当に安心して聴いていられる歌手ですね。例えば『ランメルモールのルチア』の狂乱の場(※)などは、あの人が出てきてから、その意味が変わったと思うんです。ただ音符通り歌えばいいんじゃなくて、心理的に表現が出来ていなくてはダメだという。この『アンナ・ボレーナ』も歌手にとって難しいオペラですから、彼女がいなかったら舞台は実現しなかったんじゃないでしょうか。ウィーン国立歌劇場では、もうひとつ『フィガロの結婚』も聴いてみたいですね。これは演出が、巨匠ジャン=ピエール・ポネルが手がけた伝統的なもの。ドイツ系の劇場はよく斬新なことをやるけれど、これは安心(笑)。僕がオペラを見始めた頃は、ポネルとストレーレルとゼッフィレッリという3人のオペラ演出家が全盛期でした。良い時代にオペラと出会えたなと思いますね」

(※)「ランメルモールのルチア」は、イタリアの作曲家ドニゼッティが1835年に作曲したオペラ。政略結婚により引き裂かれた恋人たちの悲劇を描く。正気を失ったヒロインが延々と歌い続ける「狂乱の場」が有名。数あるオペラ作品の中でも、特に超絶的な歌唱テクニックを要する難曲として知られている。

海外でクラシックを楽しむことも多いという赤川さん。なかでもウィーンはお気に入りの都市で、これまでに20回以上訪れているという。ウィーン国立歌劇場とウィーン・フィル、オペレッタをメインに上演するウィーン・フォルクスオーパーは何度聴いたか数えられないそうだ。

「それでも、日本ほどこんなにたくさんのオペラハウスやオーケストラがやってくる国はないと思うんですよ。毎年10月、11月は特にすごい。クラシックファンはよく冗談で『東京でオーケストラ・サミットが出来る』なんて言ってますけど。去年は震災の影響でクラシック界も大変でしたが、日本が大変な時期だからこそ、みんなベートーヴェンみたいな確かなものを聴きたいと思うのではないでしょうか」

名指揮者ヤンソンスの全曲ベートーヴェンは必聴

そこで、赤川さんが「今年最大のイベント」とおすすめするのが、マリス・ヤンソン指揮バイエルン放送交響楽団の「ベートーヴェン交響曲全曲演奏会」だ。

「来年はウィーン・フィルクリスティアン・ティーレマン指揮で同じ全曲演奏会を東京でやるので、これと聴き比べが出来たら贅沢ですよね。バイエルンは『第九』のために合唱団まで連れてくるから、チケット代は高くても仕方ないのかな(笑)。僕は、第6番(『田園』)と第7番の日のチケットを買いました。マリス・ヤンソンスは好きなんです。この人の音楽を聴いてがっかりしたことがない。毎年のように違うオーケストラを連れてきて振ってますが、いい指揮者だと思います。ベートーヴェンの曲も昔から好きですね。最近、交響曲全曲CDボックスがたくさん出て、いくつか買いましたけど、まだ聴けていないものがほとんど。ティーレマンとウィーン・フィル、ケンペとミュンヘン・フィル。それからLP時代に話題になったのは、ラファエル・クーベリックが全曲違うオーケストラで録音したことがあったんです。それぞれの曲に合ったオーケストラを振るというプロジェクトで、それがCDで再発されたときは、懐かしかったな」

生き生きと目を輝かせる赤川さん。コンサートやオペラだけではなく、お芝居や文楽も愛し、歌舞伎の公演は地方まで出向いて見るという。生のパフォーマンスの醍醐味を知る「達人」のおすすめ、ぜひ足を運んでみては?

PROFILE

赤川次郎(あかがわじろう)
1948年、福岡県生まれ。1976年、『幽霊列車』で第15回オール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。以後、続々とベストセラーを刊行する。著書は「三毛猫ホームズ」シリーズ、「天使と悪魔」シリーズ、『死者の学園祭』『セーラー服と機関銃』『ふたり』『記念写真』他多数。2006年、第9回日本ミステリー文学大賞を受賞。著書が550冊を超えた現在も精力的に執筆活動を続け、最近では著者にとって初の時代小説「鼠」シリーズが話題に。

赤川次郎さんオススメ

マウリツィオ・ポリーニ
(c)Cosimo Filippini

  • マウリツィオ・ポリーニ
    - ポリーニ・パースペクティヴ2012 -
  • 現代最高のピアニスト。自身の生誕70年を記念し、世界各地で展開中のプロジェクトを日本でも開催
  • [日程]10/23(火)~11/14(水)
    [会場]サントリーホール(東京都)

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世界の人気ピアニストが続々来日

クリスチャン・ツィメルマン
楽曲の本質を徹底的に追求する“孤高の完璧主義者”
ラドゥ・ルプー
魂の奥深くに訴える“千人に一人のリリシスト”
アリス=紗良・オット
いま世界を席巻する新鋭女流ピアニスト

新国立劇場オペラ「トスカ」
新国立劇場オペラ「トスカ」(2009年)
撮影:三枝近志

  • 新国立劇場オペラ「トスカ」
  • プッチーニのオペラの中でも最もドラマティックで、「歌に生き、恋に生き」「星は光りぬ」など数々の名アリアに彩られた傑作。
  • [日程]11/11(日)~11/23(金・祝)
    [会場]新国立劇場 オペラパレス(東京都)

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イタリア・オペラの傑作「トスカ」を聴き比べ

ソフィア国立歌劇場
世界的歌手を輩出するブルガリアの名門オペラハウス
バーデン市劇場
ウィーンの保養地にある劇場。日本での通算公演は300回以上!

新国立劇場オペラ「ピーター・グライムズ」
モネ劇場2003/2004シーズン公演より
(c)Johan Jacobs

  • 新国立劇場オペラ「ピーター・グライムズ」
  • 荒涼とした海の情景と胸迫る人間ドラマ。英国を代表する作曲家ブリテンの代表作にして、現代オペラ最高傑作のひとつ
  • [日程]10/2(火)~10/14(日)
    [会場]新国立劇場 オペラパレス(東京都)

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開館15周年!今秋の新国立劇場は英国舞台芸術で開幕

新国立劇場バレエ「シルヴィア」
世界的振付家ビントレーが贈るロマンティック・コメディ
新国立劇場演劇「リチャード三世」
シェイクスピアが綴る、壮大な歴史絵巻

ウィーン国立歌劇場「アンナ・ボレーナ」
photo:Wiener Staatsoper Michael Poehn

  • ウィーン国立歌劇場「アンナ・ボレーナ」
  • 高音と超絶技巧を駆使する“コロラトゥーラの女王”エディタ・グルベローヴァ。ついに日本での最後の舞台へ
  • [日程]10/27(土)・10/31(水)・11/4(日)
    [会場]東京文化会館(東京都)

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オペラの舞台に咲く“名花”たち

バルバラ・フリットリ
美声・美貌・歌唱力とも当代一! イタリアが誇る現代最高のソプラノ
ナタリー・デセイ
観客を物語の世界に引き込む“演技力”はオペラ界随一。

マリス・ヤンソンス指揮
(c)BR

  • マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団
  • その評価はウィーン・フィル、ベルリン・フィルと互角。オーケストラ界の最高峰に君臨する名楽団
  • [日程]11/26(月)~12/1(土)
    [会場]サントリーホール(東京都)
  • [日程]12/2(日)
    [会場]横浜みなとみらいホール(神奈川県)
    ※京都・兵庫公演もあり。

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こんなに凄い!世界のオーケストラ

ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
現存するオケでは世界で2番目の古さ!いぶし銀のサウンドが光る
マリインスキー歌劇場管弦楽団
現代指揮界のカリスマ、ゲルギエフが率いるロシアの名門
ロンドン交響楽団
古典から映画音楽まで。どんな楽曲でも演奏クオリティは最高水準


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