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古田新太

古田新太

いまや“舞台出身の実力派”という説明が不要なほどTVドラマに映画、CMやバラエティ番組でも活躍し、老若男女から幅広く愛されている古田新太さん。フットワーク軽くジャンルを横断する古田さんにこの秋オススメの演劇を聞いてみると、一見意外な作品たちが挙がった。しかし、じっくり聞いてみれば、思わずうならされる理由が。とびきりの役者であると同時に、とびきりの観劇巧者でもある古田さんが語る、気になる舞台を紹介。

取材・文:佐藤さくら / 撮影:吉田タカユキ(SOLTEC)

パントマイムのワークショップにあこがれて

9月13日まで上演中の舞台『ふくすけ』では、大竹しのぶさん演じるエキセントリックな妻に振り回される中年男役の古田さん。12月から来年1月にかけては、ホームベースである劇団☆新感線の舞台SHINKANSEN☆RX『ZIPANG PUNK~五右衛門ロックⅢ』の主演も控えている。どちらもしっかりと身体能力が要求される舞台。さらに稽古と本番の合間にはさまざまな映像作品の収録も続く多忙な毎日。ベテランと呼ばれるようになると、劇場に足を運ぶことも少なくなる俳優も多いと聞くが、古田さんにとってそんな話は無縁のようだ。

古田新太

「この秋は、まず『が~まるちょば サイレントコメディー JAPAN TOUR 2012』を観たいです」という古田さんに理由を聞くと、「一昨年、ウチの劇団でが~まるちょばさんと大道芸のコラボをしたことがあったので、一度劇場で客席から観たいと思って」としごくまっとうな答えが返ってきた。なぜ当たり前のことを聞くのか、というような不思議そうな表情。いい舞台を見つけたら、いち観客として存分に楽しみたい。そんな当たり前の気持ちを、古田さんは売れっ子になった今も持ち続けている。

「コラボの後、が~まるちょばさんが主宰するワークショップにも参加したかったんですけど、おいらが地方公演に行っていて無理だったんです。このワークショップは“が~まるちょば劇団を作ろう”というようなプロジェクトだったので、おいら、出られねぇかな?と思って。でも次にあったら絶対参加したい。オリジナルのパントマイムも面白いし、身体の使い方なんかはどうなっているんだろう?と、とても興味がありますね」

が~まるちょばは、ケッチ!とHIRO-PONという2人のパントマイマーからなるサイレントコメディー・デュオ。1999年の結成以来、パントマイムの高い技術と国籍や年代を問わず誰もが楽しめるストーリー、さらにシンプルながら高い美意識で貫かれたステージングで、英国BBC放送で特集が組まれるなど、海外でも注目を集めている。真面目な表情で「彼らにいろいろ教えてもらいたいんですよ」と話す古田さんなら、その成果を披露する日もそう遠くないのかもしれない。

大学時代からクラシックバレエは特別な存在

「身体の使い方に興味がある」と話した古田さんが次に選んだのは、『熊川哲也 Kバレエ カンパニー Autumn Tour 2012「ドン・キホーテ」 』。こちらもが~まるちょば同様、演じ手の肉体がダイレクトに表現のクオリティに関わる舞台だ。実は古田さん、事務所のプロフィール欄には今も「特技:ジャズダンス、クラシックバレエ」という文字が。大阪芸術大学のミュージカルコースに在籍していた頃から、古田さんにとってバレエは特別なものだという。

古田新太

「元々、大学でミュージカルをやるにはダブル(2回転)やトリプル(3回転)くらい回れないとカッコつかないしと思って始めたバレエでしたけど、実際にバレエ公演を見始めたら『何これ、すげぇな』とビックリしたことがきっかけ。そこらのダンスよりよっぽどアクロバティックなことをしているし、片足を軸にして32回転を一気に回る(グラン・フェッテ)なんて、誰が見たってテンションが上がりますよ」

日本を代表する天才ダンサーであり、近年は自ら芸術監督も兼ねる熊川哲也が率いるKバレエカンパニーは、衣裳やセットのクリエイティビティあふれる美しさはもちろん、世界の頂点に立った彼ならではの新演出を古典作品にもほどこし、バレエ初心者にもわかりやすく観られると評判だ。

「おいらは『くるみ割り人形』より、やっぱり『ドン・キホーテ』や『海賊』が好き。要は男性舞踊手が活躍する作品ですね。彼らが高く飛んだり、力強く回っているのを見ているだけで、文句なしに楽しいですもん」

そういえば、と話してくれたのが、『ふくすけ』東京公演中のシアターコクーン楽屋での出来事。

「隣のオーチャードホールで上演している『カム・フライ・アウェイ』(フランク・シナトラの楽曲を使ったダンス・ミュージカル)が映ってるモニターをたまたま観てたんです。そしたら隣にいた(共演の)阿部サダヲが、『ダンスの公演って観たことなかったけど、こうして観ると面白いんですね』っていうから、思わず『面白いんだよ、ダンスって!』って言っちゃいました。『クラシックバレエが一番わかりやすいし面白いんだから。バレエ見ろよ!』って。阿部なんかは元野球少年なんだけど、そういう人や、普段クラシックバレエに興味がない人にこそ、こういう世界もあることを知ってほしい。きっと何か得るものがあると思うから」

歌もダンスも出来るイケメンたちのミュージカル

古田さんが選んだ3つ目の公演は、ミュージカル『RENT』の日本バージョン。ニューヨークを舞台に、家賃(RENT)も滞納してしまうような日々を過ごしている若者たちが、ドラッグや同性愛、HIVなどの問題を抱えながらも成功を夢見る姿をリアリティ豊かに描く。1996年に米国で初演以来、これまで日本バージョンも何度か製作されてきた舞台の、今回は最新版。キャストが等身大のキャラクターを体当たりで演じるということもあり、若い役者にとって、いわばミュージカルというフィールドへ向かう登竜門のような作品だ。メインキャストである映像作家のマークを賀来賢人、マークの同居人で元ロッカーのロジャーを中村倫也(Julianとダブルキャスト)が演じる。

古田新太

「おいらはこういう、キャスト自身の個性が丸ごと舞台に出るミュージカルより、『エリザベート』のように緻密な楽曲や荘厳な舞台セットで作り込んだタイプのほうが好きなんだけど。でも普段から仲良くしている賀来賢人くんと中村倫也くんが名作として長年愛されているミュージカルに初めて出るというので、これは見なければと。普段はおちゃらけた舞台でばかり共演しているけれど、歌もダンスも、芝居も出来て、笑いもわかるイケメンというのは貴重。大切に育てなきゃならんですからね(笑)」

演技力はもちろんのこと、歌やダンスのテクニックといった身体能力を重要視する発言は、先に挙げたが~まるちょばやKバレエと通じる。それは理由があってのことだ。

「歌やダンスなんかの“芸”はなるべく持っているほうが、演技や笑いの幅がグンと広がるんですよ。ウチの劇団はそういうことが出来る人ばかりだから、『エリザベート』の名曲『闇が広がる』(黄泉の帝王トートがハプスブルク家の皇太子ルドルフを死に誘うナンバー)のパロディ『お湯にのぼせる』をハイクオリティで歌い上げることが出来るわけで(笑)。9月にシアターコクーンで上演する『騒音歌舞伎(ロックミュージカル) ボクの四谷怪談』でも、佐藤隆太くんや小出恵介くんたちがロックを歌うでしょうけど、テレビで活躍するイケメンたちにはどんどんそういう作品に出て、歌やダンスの技術を身に付けてほしい。カッコいい人たちが理屈ぬきに面白いモンを見せてくれる舞台には、たくさんのお客さんがワーッと集まるはずなんです。結局舞台って、そういうことが大切だと思うんですよね」

第一線で活躍する古田さんだからこそ、選んだ作品にはどれも深い理由があった。これらの作品を初めて観る人も、また何度目かに観る人にも、新しい視点を与えてくれた古田さんのインタビュー。舞台への愛情から生まれた彼の言葉を思い出しつつ、この秋は足しげく劇場へ向かってしまいそうだ。

PROFILE

古田新太(ふるたあらた)
1965年12月3日生まれ、兵庫県出身。劇団☆新感線の看板俳優。また、舞台以外にもTVや映画など幅広く活躍している。主人公の冴えない中年男を演じる話題の舞台『ふくすけ』の大阪公演が9月6日(木)よりシアターBRAVA!にて上演。小西真奈美や長澤まさみなど毎回豪華ゲストを迎え、盟友・生瀬勝久と“劇団作り”を目指すドキュメンタリードラマ『勝・新(KATSUARA)』の2nd.シーズンも絶賛オンエア中。また、TBS10月クールの木曜連続ドラマ「レジデント~5人の研修医」で研修医を見守る形成外科専門医・田淵育男役で出演する。

INFORMATION

【TVドラマ】
「レジデント~5人の研修医」[TBS]10月より毎週木曜21時より放送
ドキュメンタリードラマ「勝・新(KATSUARA)」2nd.シーズン[WOWOW]8月19日(日)より放送開始。毎週日曜23:00~(全5回)
【舞台】
「ふくすけ」 9月6日(木)~13日(木) シアターBRAVA!(大阪府) ※東京公演は終了
劇団☆新感線 SHINKANSEN☆RX「ZIPANG PUNK~五右衛門ロックⅢ」12月19日(水) ~ 2013年1月27日(日) 東急シアターオーブ(東京都)
【DVD】
「勝・新(KATSUARA) ディレクターズカット」8月2日発売 \11,970(税込)
「奥様お尻をどうぞ」8月31日発売 ¥5,800(税込)

古田新太さんオススメ

『が~まるちょば サイレントコメディー JAPAN TOUR 2012』

  • 『が~まるちょば サイレントコメディー JAPAN TOUR 2012』
  • グルジア語で「こんにちは」という意味の“が~まるちょば”。言葉や文化を超えたパフォーマンスが評価され、国内外で活躍中のサイレントコメディー・デュオの全国ツアー。
  • [日程]11/27(火) ~ 12/2(日)
    [会場]天王洲 銀河劇場(東京都)※その他、全国公演あり

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パフォーマンスで魅せるステージ

『THRILLER Live/スリラーライブ』
マイケル・ジャクソンのヒット曲とダンスを凝縮したライブ・ステージパフォーマンス
バーン・ザ・フロアAround the World Tour 2012
ブロードウェイを始め世界各地で絶賛されたダンスカンパニーが待望の再来日

熊川哲也

  • 『熊川哲也 Kバレエ カンパニー Autumn Tour 2012「ドン・キホーテ」 』
  • 2004年に熊川版が誕生して以来、Kバレエ カンパニーの極めつきレパートリーともなった無敵の最高傑作が、5年ぶりに待望の上演。
  • [日程]10/6(土) ~ 10/28(日)
    [会場]オーチャードホール(東京都) 、東京文化会館 大ホール(東京都)ほか地方公演あり

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海外の有名バレエ団も日本で堪能

マリインスキー・バレエ
世界の至宝と謳われるバレエ団が3年ぶりに来日
キエフ・バレエ
名門バレエ団の記念すべき来日40周年公演

ミュージカル『RENT』

  • ミュージカル『RENT』
  • 1996年の初演以来、ブロードウェイでロングラン上演された伝説のミュージカルが新演出により新しく生まれ変わった。
  • [日程]10/30(火) ~ 12/2(日)
    [会場]シアタークリエ(東京都) ※兵庫公演あり

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来日ものから話題作まで多彩なラインナップのミュージカル

フランス招聘版 ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」
全世界で500万人の観客を動員したフランス版が日本初上陸
「ウィズ-オズの魔法使い-」
宮本亜門演出。主役ドロシーはAKB48の増田有華が演じる
ミュージカル「アリス・イン・ワンダーランド」
ブロードウェイで上演したファンタジーミュージカル


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