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稲垣純一 日本代表チームディレクターの月イチレギュラー対談
すべてはラグビー界の未来のために



Vol.5 ゲスト
LIXIL 石橋 和之 部長
-前編-

日本ラグビー協会の稲垣純一理事が、毎回ラグビーに造詣が深いゲストを迎えて、ラグビーの魅力やラグビー界の未来について語り合う対談企画。第5回のゲストは、今季よりトップリーグのプレーオフトーナメントの冠スポンサーとなったLIXIL(リクシル)から日本マーケティング統括部イベント推進部の石橋和之部長が登場。鹿島アントラーズやラグビー女子日本代表、馬術など、多岐に亘りスポンサードしてきたLIXILとラグビーの親和性を探る。
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稲垣理事・LIXIL 石橋和之部長

LIXIL 石橋和之部長 ――今回、ジャパンラグビートップリーグのプレーオフトーナメントの冠スポンサーとなり、「LIXIL CUP」として開催されることになりました。まず、その経緯からお教え下さい。

石橋 まずは、このプレーオフトーナメント2015を、「LIXIL CUP」として開催させて頂けたことを、ラグビーファンの皆様、関係者の皆様に心より感謝申し上げたいと思います。私たちLIXILは、住まいと暮らしの総合住生活企業として「暮らしの中の絆」を非常に大切にしており、ラグビーのチームプレーが持つお互いを信頼して真摯に戦う姿勢は、とても感動的だと思っています。こういったラグビーの持つ魅力に強く共感し、このたび冠協賛させて頂くこととなりました。

またラグビーは、今後国際試合が更に増え、これからオールジャパン態勢で応援していくスポーツになると思います。ラグビーを通じてLIXILという企業をよく知って頂くには、冠大会の存在が非常に大きいのでは、と考えています。

――冠大会を協賛する、というのは非常に大きな判断も必要だったと思いますが?

石橋 私たちはスポーツを協賛するときに四つの指標で判断しているのですが、ひとつは、まずその競技がどのぐらいのパワーを持っているか、ということです。先日のマオリオールブラック戦でも肌で感じましたが、ラグビーにはとても熱心なファンが多い。しかもお互いのチームを常にファン同士がリスペクトしている。これはとても特筆すべき特徴だと思っています。
 ふたつ目は、私たちが協賛することをファンの方にご支持して頂けるかどうかです。 そういった点では、今回のような冠スポンサーは、広くラグビーファンのみなさまにご支持をして頂けると考えています。
 三つ目は、協賛することで社内の結束につながるかどうか、社員がひとつになれるかどうか、という点ですね。スポーツを協賛することでお客様や一般の方に「ファンになって下さい」と発信するわけですが、それ以前に我々社員が一番のファンになっている状況を作りたい。チームや競技を応援する一番コアなファンが社員であることを、三つ目の柱にしています。
 そして、四つ目は、ビジネス上のお客様やユーザーのみなさまにチケットを活用していただくようなサービスを考えています。
こういった四つの視点で、スポーツ協賛をとらえて、期待値といいますか、効果の指標を設定して、すべての条件を満たさなければダメだというオール・オア・ナッシングではなく、総合的にスポーツコンテンツを判断しようというスタンスでいるのです。

稲垣理事 稲垣 私たち運営サイドは、トップリーグのプレーオフトーナメントには非常に価値があると考えています。私自身もチームの運営に携わった経験がありますが、プレーオフの舞台に立つのは大きな目標です。ただ、その価値を一般の方々にきちんと伝えられなかったのは大きな課題でした。
 ですから「LIXIL CUP」で、リーグ戦を戦って勝ち残った4強が激突し、そこで勝ったチームが日本一であり、同時に戦った選手たちが日本代表に、さらには世界につながっていく、というところを世の中に発信して、その価値をもっと知っていただきたい。今回「LIXIL CUP」という形で応援していただけるのは、非常に大きな支えになると思います。
 今、スポーツに関して、「やるスポーツ」「見るスポーツ」に続いて「支えるスポーツ」という言葉が出てきています。「支えるスポーツ」は、大会ボランティアのような形で運営に携わるという意味もありますが、企業の皆様に資金の面も含めて支えていただくという意味も含まれています。ですから、私たち日本ラグビー協会の立場から申し上げれば、支えていただけるような活動をきちんとして、価値を生み出していかなければならない。また、それが私たちが担う重責だと思います。

――トップリーグのプレーオフはご覧になったことがありますか。

石橋 あります。高校生の頃に少しラグビーを経験した私から見ると、ラグビー自体が変わった、という印象を受けました。ルールやレフェリング、試合の進め方といった部分が非常に変わって、見ていてスピーディーだし、改めて面白いスポーツだと感じました。

稲垣 今、トップリーグでは、試合が終わったあとに選手たちがファンを送り出すサービスに取り組んでいますし、それが楽しみでいらっしゃる方もいます。現在行われているセカンドステージでは、足湯やウルトラマン・デーのようなサービスも行っています。日本経済新聞でも、そうした活動が取り上げられましたし、私たちの今までの苦労が少しずつ花開きつつある手応えを感じています。
 これまでのラグビーは、日本に根づいた観戦文化が少し独特な方向に発展した結果、「ラグビーは黙って見るものだ」といった思い込みがあって、それが悪い方に作用した面がありました。今はようやくそうした思い込みを脱して、皆様に観戦を楽しんでいただけるように変わってきましたが、そのきっかけとなったのがJリーグの誕生でした。サッカーからいろいろなことを学ばせていただいたと私は考えています。

石橋 LIXILは馬術競技にも協賛していますが、たとえば競馬はフランスやイギリスでは女性が着飾って観戦に訪れるスポーツです。私たちは、日本でもそういう形になればいいと考えていますが、これからは、ただ試合を見るだけではなく、その場を楽しもうという発想が必要になるでしょう。

 先ほど稲垣さんが「支えるスポーツ」とおっしゃいましたが、今後日本が立ち向かう世界での舞台に向かって、我々見る側の姿勢も変わっていくのではないでしょうか。そうした流れを踏まえて、「LIXIL CUP」で一緒にラグビーを支えていくお手伝いをできればいいですね。
 私たちがスポンサーとして鹿島アントラーズを応援するときには、スポンサー側も協力して、チームを一緒に強くしていくというスタンスを保つことが重要だと考えています。もちろんスポンサーに出来ることは限りがありますが、たとえば、近隣の工場などから職場単位で大勢の社員を応援に動員したり、遠方の社員向けにも観戦バスツアーを企画して参画させるなどすることで、具体的に応援する姿勢をチームや選手の皆様にも感じてもらうように努力してきました。ですから、「LIXIL CUP」も同様に、スポンサードする以上、社員が率先して応援に行くような形にしたいですね。

LIXIL 石橋和之部長・稲垣理事 稲垣 そうしたお気持ちにどうお応えできるか。それが、私たちが提供できるコンテンツの価値につながると考えています。試合の中身もそうですし、会場の雰囲気も、「LIXIL CUP」になって変わったということを、会場に来たファンの方々にも知っていただく努力を当然やらなければならない。それが、私たちにとっても非常に重要な活動だと思います。
 スポンサーがいらっしゃるからこそ、さまざまなファンサービスが可能になります。今までは、そういうことがなかなか実現できませんでしたが、「LIXIL CUP」となった今季は、LIXIL様と一緒にファンの方と向き合えると思います。先ほど「一般の方にも良い企業イメージを持っていただくためのラグビー」とおっしゃっていましたが、その部分をどう表現するかが、私たちの大きな責任になると痛感しています。

――LIXILはラグビー女子日本代表もスポンサードされていますね。

石橋 女子7人制日本代表は多くの国際大会で表彰台にのぼり、非常に世界のトップに近いところにいます。
 日本人全体が応援することを考えると、日本代表というチームの持つパワーは非常に大きい。ラグビー女子日本代表は、今後の可能性を含めて、非常に協賛し甲斐があると思っています。
 もうひとつ、LIXILが女性の活躍やダイバーシティ(多様性)を重視していこうと考えているなかで、お子さんがいるにもかかわらず代表選手として頑張っておられる選手がいたり、海外まで行ってラグビーに取り組まれている選手の存在が、我が社の社員のダイバーシティにとっても非常に参考になります。そういう意味で、女子ラグビーはLIXILにとって親和性があるのです。
 冒頭でも簡単に触れましたがLIXILが扱う住宅設備は、簡単に購入できるものではありません。それだけに、ひとつのブランドを選ぶ際に、「この会社は信頼できるのか」という部分が選んで頂く際に一番大切なのではないかと思い、私たちは「信頼の絆」をキーワードにしています。ラグビーでは「One for All, All for One」の精神で、お互いの信頼のなかでプレーを進めていきますし、私たちが協賛している馬術も、選手が馬を信頼していないと障害物は跳べません。同じように、建築家やハウスメーカーといったプロの皆様にも私たちの商品を信頼して使って頂くことが、お客様からの信頼につながっていきます。そういうことを考えていくなかで、「信頼の絆」が強いスポーツを、これからも協賛させていただくつもりです。

稲垣 協賛される企業には、それぞれ選定の基準があることは私も理解しています。ですから、それにお応えするのが私たちの使命になります。今、石橋さんがおっしゃられたように「信頼の絆」がキーワードならば、どのようにラグビーを通じて「信頼」を表現していくか。そこに、私たちがご期待に応えられるかどうかがかかっていると思います。
 トステム時代から20年間アントラーズを協賛されているということは、そうした信頼関係が築かれているからこそだと思いますし、私たちもまた、そういう信頼関係を築いていかなければならないと、非常に重く感じています。

取材・構成●永田洋光
撮影●大崎聡

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PROFILE

石橋和之●いしばしかずゆき
1962年、神奈川県生まれ。1984年青山学院大学卒業。広告代理店でコピーライターとして家電メーカー等の広告制作を担当した後、1989年、トステム(現LIXIL)入社。2011年4月からトステム・INAX・新日軽・サンウエーブ・TOEXという住宅設備・建材メーカー5社が統合した新会社「LIXIL」の認知向上プロモーションも展開した。
トステムが1994年から協賛を開始したサッカーJリーグ「鹿島アントラーズ」については2002年よりスポンサード責任者として従事し、企業とスポーツのより良いマーケティング構築を展開。今年度より日本馬術連盟やジャパンラグビー トップリーグ プレーオフトーナメント(日本ラグビー協会主催)、およびラグビー女子日本代表のスポンサードも開始し、LIXILのスポーツ協賛のフィールドを広げている。

稲垣純一●いながきじゅんいち
1955年、東京都生まれ。1978年慶應義塾大を卒業し、サントリーに入社。1980年ラグビー部・サンゴリアス設立と同時に参加、初代主将となる。その後、慶應ラグビー部コーチ、サントリー副部長、ディレクターを経て、2002年にGMに就任。2007年にトップリーグCOOに就任。現在は日本ラグビー協会理事を務める。



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