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稲垣純一 日本代表チームディレクターの月イチレギュラー対談
すべてはラグビー界の未来のために



Vol.8 ゲスト
甲斐 よしひろ
-後編-

日本ラグビー協会の稲垣純一日本代表チームディレクターが、毎回ラグビーに造詣が深いゲストを迎えて、ラグビーの魅力やラグビー界の未来について語り合う対談企画。第8回のゲストは、ロックミュージシャンの甲斐よしひろ氏。小学生の頃からラグビーを観戦し、ラガーマンたちと交友を深め、花園ラグビー場での伝説のライブも行った甲斐氏。9月に開催される『ラグビーワールドカップ(RWC)』、2019年に日本で行われる『RWC』への熱い思いを語り合った。
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稲垣純一氏・甲斐よしひろ氏

――甲斐さんは、これまで現地でRWCをご覧になったことはありますか。

甲斐 まだナマで見たことはないのですよ。2019年には日本でRWCが開催されますから、今回はそろそろロンドンに見に行こうかと思って、一応観戦ツアーの料金を調べました。もう半年ぐらい前の話ですが。でも、値段がかなり高かった(笑)。だから、見に行く気持ちはあるのですが……。
 僕は2003年のオーストラリア大会の準決勝、決勝をテレビで見たときに、「これは見に行かないとダメだな」と思いました。試合もそうですが、本当に雰囲気がすごく良かった。

稲垣 エディー・ジョーンズがオーストラリア代表の監督をしていたときですね。私は、あの決勝戦の現場にいましたよ。

甲斐よしひろ氏 甲斐 現場にいたのですか。決勝戦は試合もすごかったし、会場も、すごく見やすそうなスタジアムでしたね。観客席が、イングランドのサポーターの白と、オーストラリアのサポーターのゴールド(黄色)に分かれていて、きれいでした。

稲垣 本当に見やすいスタジアムでした。

甲斐 ああいう光景を見ていると、僕は、ラグビーが、サポーター同士の距離が一番近い競技だと感じます。サポーターと選手との距離も非常に近いですし。他の競技と比べると、何か不思議な感じですよね。他の競技はサポーター同士の乱闘があったりするので。ラグビーだけは、敵・味方に分かれず、会場全体に完全な一体感がある。その「近い感じ」こそが、ラグビーですよね。

稲垣 日本でも、Jリーグなどでは、それぞれのチームのサポーターが座るゾーンを分けますが、ラグビーはまったくそういうことがありません。違うジャージーを着たサポーターが、隣同士に座って試合を楽しめるのがラグビーの良さです。

甲斐 一番理想的な形ですよね。日本では「ノーサイドの精神」が語られているので、そういう形で観戦するのは理解できるのですが、RWCという場でもそうなるところがすごい。世界には民族や宗教の対立があるにもかかわらず、奇跡のように隣り合って座っている。なかなかそこまで上手くはいかないと思います(笑)。

稲垣 2019年のRWC日本大会は、ラグビーという競技を日本中に広めるのが目的ですが、同時にそうしたラグビー精神をみなさんに伝える役割もあると考えています。

甲斐 それを伝えないとダメだと思います。
 今はまだ一般のスポーツファンが、ラグビー日本代表が世界ランキングで何位なのか知らないと思いますが、13位であることをひとりでも多くの人に知ってもらいたいし、2020年の東京オリンピックの前に、日本で開催される大きな大会がある――それを、ひとりでも多くの人に伝えたいですね。まあ、新国立競技場の建設問題で、ようやく2019年にRWCが開催されることを知った人もいるとは思いますが。

稲垣 おっしゃる通りです。

甲斐 僕は仕事を早く終わらせて、週の半分以上は夜の9時にはバーにいるのですが、男達が集まると、どうしても濃厚なスポーツ談義になる。ラグビーの話になると、「2019年のRWCを広く浸透させないと」という話題になる。今回の対談のお話を頂いてこの場にいるのも、それを広めるためにお役に立てれば、という気持ちからです。

――そういうライフスタイルですと、今回のRWCをパブリックビューイングのような形で見ることができますね。

甲斐 今からそういうお店を探せばいいのですね。僕は、雑踏のなかで気配を消すのがどちらかと言うと上手い方だと思うのですが、街中でいかにもミュージシャンという風情が苦手なので(笑)。ですから、どこかのお店で見ようと思っています。

――時期的には、10月から始まる『愛のろくでなしツアー3』と期間がダブりますが、大丈夫ですか。

甲斐 RWCを戦う日本代表のプレーから熱をもらって、ツアーに突入するので大丈夫ですよ。

稲垣 コンサートで、甲斐さんから聴衆のみなさんに「日本、勝ったぞ!」と言っていただきたいですね。

甲斐 コンサートの合間に、MCでバッチリ話しますよ。

稲垣氏 ――日本代表の最終戦(対アメリカ)が、日本時間で12日(月)午前4時キックオフになります。

甲斐 ライブの終わった翌日の早朝なのですが、できるだけ生で見たい。打ち上げが長引いてもね(笑)。
 ところで、僕は博多のど真ん中で生まれ育ったのですが、福岡の人間はみんなラグビーが好きだし、またラグビーが盛んな土地です。僕の長兄の息子も、昔「みやけヤングラガーズ」でラグビーをやっていて、五郎丸歩選手の15年ぐらい先輩でした。ですから、五郎丸選手が、佐賀工業高校にいた頃から、「すごい選手がいる!」というウワサを聞いていました。五郎丸選手には、もっと前面に出てもらって、日本中にラグビーを広めてもらいたいですね。

稲垣 今や日本代表の、押しも押されもせぬ大黒柱です。

甲斐 中学生の頃、彼は学校の部活ではサッカー部に入っていたと聞いていますが、グラウンドの端の角度のないところからでもゴールを決める蹴り方は、絶対にサッカーからヒントを得たような蹴り方ですよね。ラグビーの蹴り方は、どうしてもまっすぐにボールを飛ばすのが基本のようなイメージがしますけど、それでは角度のないところからのゴールはなかなか決められない。五郎丸選手はサッカーの要素を取り入れ、上手くボールに角度をつけているように思います。

稲垣 そうですね、サッカーの蹴り方です。

甲斐 正確に蹴れるのは、『忍者ハットリくん』のポーズのおかげだけではなくて(笑)、サッカー流に角度をつけて蹴っているからでしょう。

稲垣 忍者で思い出しましたが(笑)、エディーは、「侍スピリッツ」と「忍者ボディ」を持て、と言っています。侍のような心を持ち、忍者のように、倒れてもすぐに起きる、また倒されてもすぐに立ち上がる、ということを伝えるためのキャッチフレーズです。あるときエディーから「忍者の道場を探してくれ」と言われました(笑)。「あれは架空の話だから……」と言いながらも一応探しましたが、ちょっと困りましたね(笑)。

甲斐 でも、ああいう小走りや、すり足が、昔から日本人に伝わる特質ですよね。相撲もそうだし、昔の日本が陸上競技で強かったのも、その影響があったからでしょう。そういう伝統を受け継ぐことは大切だと思います。きっかけがRWCであれ、海外の人に日本人の考え方や文化を知ってもらうことが非常に大事ですからね。

稲垣 ものすごく大事だと思います。

甲斐 さらに、日本でRWCをやる上で大切なのは、日本代表の選手がどういうプレーをするかに、国民のみんなが熱中することでしょう。選手には血潮とかスピリットを見せてもらいたいし、みんなにもそれを感じ取って欲しい。そうしたプレーぶりが見られて、「あの大会のあのプレーはすごかったね!」と語り継がれるような試合が生まれればいい。その点で、僕は、RWCは結果も大事だが、それだけではないと思っています。

――たとえば9月19日(土)のRWC第1戦の南アフリカ戦に日本が勝って、感動した甲斐さんが曲を作って、10月からの『愛のろくでなしツアー3』でお披露目する、みたいな流れになれば理想的ですね。

甲斐 そうですね。さまざまな表現者が本当に何かを感じて、「書きたい」というような衝動がこみあげてくるような試合になればいいですね。

稲垣 音楽を作るのも、やはりそうした魂を揺さぶられるような何かがきっかけになりますか。

甲斐 なります。どんな小さなものでもいいですから、そうした衝動がないと無理です。

稲垣 そういうきっかけを、私たちラグビーが作り出せればいいですね。

甲斐 今回の大会には、次のRWCが日本開催ということもあって、一番気運が高まっているように感じます。

稲垣 7月からリポビタンDのCMに日本代表の選手が出るようになりましたし、JALの機内でも「がんばれ日本代表」という映像を流してもらっています。日本テレビにも、いろいろなプロモーションに協力していただいていますし、現在、機運を高めているところです。

甲斐よしひろ氏 甲斐 だからこそ、僕は今回のイングランド大会がすごく大事だと考えています。今回の大会でいいプレーをして注目を集め、日本代表の息吹を全国に伝えて、初めて2019年の日本大会につながるように思います。日本大会の2年前ぐらいから盛り上げようとしても、それでは遅すぎます。この大会でいい結果を残して、ようやくみんなが意識してくれるでしょうから。
 選手のみなさんも大変だとは思いますが、本当にいいプレーをしていただきたい。僕のようなファンは、もう絶対にラグビーについていきますけど(笑)、今回の大会でさらに新たな人たちをファンに巻き込んでもらいたいですね。

稲垣 新しいファンを作るためには、まず勝つことが必要ですからね。その点では、もう結果がすべてだと思っています。

甲斐 一般のファンは、大会が始まる前に、日本が世界ランキングでどのぐらいにいるかを知って、「えっ、そんなに高いの?」と驚くのではないでしょうか。

稲垣 まあ、現在ランキングで13位になっているのは、5月のアウェーでの香港戦が豪雨のために試合が中止になって、規定によって引き分け扱いにされたためです。

甲斐 そうだったのですか。僕はずっと11位だと思っていたのに、なぜ13位になったのかがわからなかった。

稲垣 現在、猛烈に抗議しているところです(笑)。

甲斐 でも、今回の大会で日本代表が素晴らしいパフォーマンスを見せて、そこから2019年につなげていくというのは、ラグビーが好きな人間に共通する思いですよね。

稲垣 はい。今回の大会で日本ラグビーの歴史を変えるというのが、選手・スタッフに共通している思いです。もちろん、みんな頑張ってくれると期待しています。

甲斐 本当に今、歴史のページがめくられるのではないか、という予兆を感じていますし、また、そういう気配がさらに濃厚になっていって欲しいですね。

稲垣 新しい歴史を作ることを、お約束します!

――どうもありがとうございました。

取材・構成●永田洋光
撮影●大崎聡 >>前編はこちら

PROFILE

甲斐よしひろ●かいよしひろ
1953年、福岡県生まれ。1974年、甲斐バンドを結成し、『バス通り』でデビュー。1978年発売の『HERO(ヒーローになる時、それは今)』でシングルチャート1位を獲得。ソロで活躍するとともに、甲斐バンドとして昨年40周年を迎えた。昨年、野音で行われたLIVEのDVD『Complete 日比谷野音 LIVE』が36ページ豪華ブックレット付き2枚組で好評発売中。2015年10月より『甲斐よしひろ 2015 愛のろくでなしツアー3』を開催。

稲垣純一●いながきじゅんいち
1955年、東京都生まれ。1978年慶應義塾大学を卒業し、サントリーに入社。1980年ラグビー部・サンゴリアス設立と同時に参加、初代主将となる。 その後、慶應大ラグビー部コーチ、サンゴリアス副部長、ディレクターを経て、2002年にGMに就任。2007年にトップリーグCOOに就任。現在は日本ラグビー協会・日本代表チームディレクターを務める。



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