チケットのことならチケットぴあチケットぴあ

こんにちは、ゲストさん。会員登録はこちら

稲垣純一 日本代表チームディレクターの月イチレギュラー対談
すべてはラグビー界の未来のために



Vol.5 ゲスト
LIXIL 石橋 和之 部長
-後編-

日本ラグビー協会の稲垣純一理事が、毎回ラグビーに造詣が深いゲストを迎えて、ラグビーの魅力やラグビー界の未来について語り合う対談企画。第5回のゲストは、今季よりトップリーグのプレーオフトーナメントの冠スポンサーとなったLIXIL(リクシル)から日本マーケティング統括部イベント推進部の石橋和之部長が登場。鹿島アントラーズやラグビー女子日本代表、馬術など、多岐に亘りスポンサードしてきたLIXILとラグビーの親和性を探る。
>>前編はこちら

稲垣理事・LIXIL 石橋和之部長

――LIXILは前身のトステム時代の1994年から鹿島アントラーズをサポートされていますね。

LIXIL 石橋和之部長 石橋 アントラーズは選手の育成に非常に熱心で、目先の結果を追うだけではなく、きちんと世代交代を考えながら将来的にチームを支える若手を育てていました。ですから、コンスタントに強さを発揮しています。スポンサーとして非常に恵まれていると感じましたし、幸運だったと考えています。
 Jリーグのチームは地元ファンが多いのが特徴的ですが、アントラーズは、全国的に好感度が高いと言えます。それは、チームが掲げるビジョンや理念に共感される方が多いことを示しているのでしょうね。

稲垣 私もアントラーズには非常に興味を持っています。
 今、石橋さんがおっしゃられたように、指導者を選ぶ指針にしても、選手の育成に関しても、一貫した文化を築いています。地域的に大都会からは離れていますが、スポンサードされている各企業もアントラーズからほとんど離れません。非常に勉強になるチームです。

――2011年3月11日の東日本大震災のあと、6月にカシマスタジアムでチャリティーマッチやファンキーモンキーベイビーズのミニコンサートを行った震災復興チャリティイベント「SMILE AGAIN」を、アントラーズと共同開催できたのは、そうした長年の信頼関係が築けていたからでしょうか。

石橋 はい。 震災が3月に起こった直後、まだ私たちも混乱しているときに、茨城でも被害が大きくてアントラーズが練習もままならない状況にいることを知りました。当時私たちは、企業としてどんな復興支援ができるかを考えていましたし、また、日本の至るところでさまざまな支援活動が行われていましたが、そのなかでアントラーズは、被災している茨城の人たちにとっての「灯台」のような役割を果たそうとしていました。そうしたアントラーズの強い熱意と、私たちの「何かできることはないか」という熱意が一致して生まれたのが、「SMILE AGAIN」 というサッカーと音楽が融合したチャリティイベントでした。

稲垣 ラグビーも、2011年4月17日に秩父宮ラグビー場で復興支援のイベントを行いました。もともとは秩父宮で7人制ラグビーの国際大会を行う予定だったのですが、中止になってラグビー場が空いてしまった。そこで何かをやろうと考えているときに、トップリーグのキャプテン会議が中心になって選手たちが手を挙げてくれました。準備も満足にできないような短期間でしたが、とにかく「ラグビー界からメッセージを発信して、被災したみなさんを元気づけることをやりましょう」とひとつになりました。結果的に大成功で、多くの方に来ていただき、チャリティーもかなり集まりました。
 ああいう大変なときに、選手たちがすぐに立ち上がってくれる文化が根づいていると確かめられて、私自身、非常に嬉しかったですね。今年の3月にはキャプテン会議が立ち上げた「トップリーグオールスターFOR ALL チャリティーマッチ2015」を岐阜県で行いますが、こうした活動が、シーズンを締めくくる「LIXIL CUP 2015」にも必ずいい影響を与えてくれると、私は信じています。
 トップリーグには「日本のラグビーを強くする」、「日本にラグビーを広めて競技者やファンを増やす」、「ラグビーを通じて日本の社会に貢献する」という、三つの使命があります。私としては、スポンサーのみなさまにもそうしたコンセプトをご理解いただいて、お互いの理念の実現につながればいいと考えています。

――ラグビーの価値を高めるために一人ひとりの選手たちにはどういうことが求められますか。

稲垣理事 稲垣 まず、トップリーグの選手は日本で一番高いスキルを持ったプレーヤーであれ、ということです。もうひとつは人格。人格的にも日本で一番質の高い選手たちであることが求められます。
 今、スポーツが人々に感動を与え、元気にすると言われていますが、それは選手たちが技術的に高いレベルにあり、かつ人格的にも優れているからでしょう。
 私自身は、横綱白鵬関が大鵬さんの通算優勝32回に並んだときのインタビューを聞いて、非常に感銘を受けました。モンゴルから日本に来て、どうやって今の地位に上り詰めたかを淡々と話した語り口が、「相撲っていいな、スポーツっていいな」と人に思ってもらえるところにつながっていると思いました。ラグビーの選手たちも同様に、そうした目で一般の人から見られていることを忘れてはいけないし、そういう資質が備わらないと、いい選手には育たないように思います。
 位が高くなるほど責任が重くなると言われますが、トップリーグの選手たちが、日々の行動でそれを具現化してくれれば嬉しいし、それはまた、キャプテン会議や新人研修会で常に選手たちに伝えていることでもあります。
 ラグビーの場合、トップリーグの選手たちや日本代表の選手たちが、選手同士のミーティングで「挨拶をきちんとしよう」といったことを話し合っていますし、先輩から後輩へと伝えられています。押しつけられるのではなく、自らそういったことを話し合っている。私はその点を、非常に嬉しく思っています。

――そうした競技が持つ文化や雰囲気も、スポンサードするときの要件になりますか。

石橋 はい。今、稲垣さんがおっしゃられた「人に感動を与える」という部分は、最後の「決め手」だと考えています。
 私たちはスポーツを協賛する際に、競技が持つパワー、ファンの皆様のご支持、社内の結束に有効かどうか、ビジネス上のサービスに活用できるかどうかといった四つの指標をもとに協賛するか否かを判断します。そして、その過程を、社内やステイクホルダーに説明していきます。
 ただ、それらがすべてではなく、その競技にどれぐらい感動のポテンシャルがあるかが、最終的な判断を下す際の重要な決め手になります。
 言葉で具体的に説明するのは難しいのですが、人々の想像を超えたような努力やプレーは、多くの人に感動を与えるという点で、こうした決め手になり得ますね。

稲垣理事・LIXIL 石橋和之部長 稲垣 ラグビーでそうした感動をいかに伝えられるか。単純にお客様がたくさん集まるだけにはとどまらない、たとえば強烈な感動といった、違った要素がラグビーにはあることを、お客様にご理解いただけるかどうか。「今日は試合を見に来て良かった」と、心から思っていただけるかどうか。ご支援いただくスポンサーの皆様のご期待に応えられるかどうかを考えると、そうした点が大切なポイントになります。
 逆に、試合中にラフプレーがあったり、選手がレフェリーに暴言を吐いたり、選手がファンサービスを怠るようなことがあれば、それらは非常に大きなマイナスになりますし、スポンサーの皆様のご期待を裏切ることにもつながります。
 そうしたことまで含めて、スポンサーのみなさまのご期待にしっかり応えていくことが、私たちの責任だと考えています。

石橋 今はSNSが発達して、「自分自身が行うスポーツ」「観戦して見るスポーツ」にとどまらず、フェイスブックやツイッターで「感動をシェアする」ことも、スポーツの楽しみになっています。20年ほど前は、感動的なプレーを見ても、一緒にテレビを見ている家族や友人としかリアルタイムで感動はシェアできませんでしたが、今はSNSで、たとえば友だちが200人いれば瞬間的に200人とシェアできます。そういう伝播力や拡散力がスポーツは非常に強いと考えています。
 今回「LIXIL CUP 2015」を協賛すると発表して以来、私のところに「昔ラグビーをやっていました」とか「今、子どもと一緒にラグビーを楽しんでいます」といった声が社内からも聞こえるようになりました。ラグビーが好きな人や、プレーしている人たちが意外なほど多いという印象を持ちました。しかも、年齢的に、社会人のなかでも中枢を担っている人たちが多い。私たちの購買層にまさに合致する層です。今後日本で世界的な大会が開催される際には、そうした人たちが家族そろって観戦できるようなイベントにしていただきたいと考えています。

稲垣 まさにおっしゃる通りで、これまでのRWCは、どの国で行われてもすごい盛り上がりでした。今年9月に大会が行われるロンドンに先日行ってきたのですが、もうすでに大変な盛り上がりで、街中を走る2階建てバスにRWCのロゴが描かれていました。決勝戦の一番高いチケット(約14万円)も、30分で売り切れてしまう状態です。
 私たちとしては、そういう大きな大会が日本にやってくるということを、もっと多くの日本の方々に知っていただかなければならないと考えています。それが私たちの責任でもあります。一番効果的な宣伝方法は、今年の大会で日本代表が勝つことですが、単なる勝敗だけではなく、いかに素晴らしいイベントであるかを、これからの4年間、特にここ1、2年で知らせる活動にもっともっと取り組まなければいけないと痛感しています。
 今回の「LIXIL CUP」で戦った選手たちの多くが、おそらく9月の日本代表の主力選手になります。ですから、「LIXIL CUP」からサクセスストーリーが始まっていることを、みなさんに知っていただかないといけない。その価値を大きく広げて行くことが、私たちの仕事になります。

――どうも、ありがとうございました。

取材・構成●永田洋光
撮影●大崎聡

>>前編はこちら
PROFILE

石橋和之●いしばしかずゆき
1962年、神奈川県生まれ。1984年青山学院大学卒業。広告代理店でコピーライターとして家電メーカー等の広告制作を担当した後、1989年、トステム(現LIXIL)入社。2011年4月からトステム・INAX・新日軽・サンウエーブ・TOEXという住宅設備・建材メーカー5社が統合した新会社「LIXIL」の認知向上プロモーションも展開した。
トステムが1994年から協賛を開始したサッカーJリーグ「鹿島アントラーズ」については2002年よりスポンサード責任者として従事し、企業とスポーツのより良いマーケティング構築を展開。今年度より日本馬術連盟やジャパンラグビー トップリーグ プレーオフトーナメント(日本ラグビー協会主催)、およびラグビー女子日本代表のスポンサードも開始し、LIXILのスポーツ協賛のフィールドを広げている。

稲垣純一●いながきじゅんいち
1955年、東京都生まれ。1978年慶應義塾大を卒業し、サントリーに入社。1980年ラグビー部・サンゴリアス設立と同時に参加、初代主将となる。その後、慶應ラグビー部コーチ、サントリー副部長、ディレクターを経て、2002年にGMに就任。2007年にトップリーグCOOに就任。現在は日本ラグビー協会理事を務める。



日本ラグビー協会、稲垣純一・日本代表チームディレクターの月イチレギュラー対談、すべてはラグビー界の未来のために。ラグビーの魅力やラグビー界の未来について語り合う対談企画。2019年ラグビーワールドカップの成功のヒントがここに!